JP4259844B2 - 導管保持用ブラケット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体圧を利用した装置の作動流体が流通する導管、例えば油圧式動力舵取装置の作動油が流通する導管を保持するための導管保持用ブラケットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のブラケットとして、特許文献1に開示されたブラケットがある。このブラケットは、動力舵取装置のシリンダに固定される取付具と、ポンプからの圧力流体を導く配管を保持する配管固定用ブラケットとからなり、取付具は、鋼板で一体成形された固定部と、組付けの際にブラケットをシリンダに対して位置決めする位置決め部とからなる。円形に曲げられた固定部は、その一端部に設けられた溶接ナットに、他端部に設けられた孔に挿通されるボルトがねじ込まれることにより、シリンダに固定される。配管固定用ブラケットは、固定部の一部に形成されて内側に溶接ナットが設けられる凸部にボルトにより固定される。固定部から突出してシリンダの軸線方向に延びる位置決め部の先端部には半円形の溝または円孔が形成され、圧力流体をシリンダ内に導く配管を取り付けるためにシリンダに形成された円筒状のポート部に位置決め部を差し込むことにより、取付が位置決めされる。
【0003】
【特許文献1】
実公平7−6063号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記従来技術では、配管固定用ブラケットは、固定部の凸部にボルトにより固定されるため、部品点数および組立工数が多くなっていた。また、ブラケットのシリンダへの組付時には、シリンダに対してブラケットを位置決めするために、位置決め部がポート部に差し込まれたのち、ブラケットには軸線方向に、かつ周方向での一方方向に押圧力が加えられた状態で、固定部がシリンダに固定される。しかしながら、ポート部に位置決め部を差し込み易くするために、半円形の溝または円孔の径を大きくすると、位置決め部とポート部とが1箇所で接触することから、ブラケットが周方向にずれ易くなる。そこで、そのようなずれを防止しようとすると、半円形の溝または円孔の加工精度を高める必要があるので、ブラケットの製造コストが高くなり、しかもポート部の外径が異なるシリンダに対して、そのブラケットを使用することができず、部品の共通化によるコストの削減ができない。
【0005】
さらに、位置決め部は固定部からシリンダの軸線方向に沿って延びて形成されることから、位置決め部の半円形の溝または円孔と固定部との間の距離が長くなって、ブラケットが大型のものとなる。そのうえ、位置決め部の長さが長くなることで位置決め部自体が捩れ易くなるため、半円形の溝または円孔とポート部との間で周方向でのずれが、固定部では増幅されて、周方向での大きなずれとなって現れるので、精度のよい位置決めが困難になる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、請求項1から請求項5記載の発明は、円筒状部材に対する導管保持用ブラケットの位置決め精度の向上、製造コストの削減およびブラケットの小型化を図ることを目的とし、さらに、位置決めを容易にすることおよびブラケットの汎用性を高めることを目的とし、請求項記載の発明は、さらに、導管を安定して保持することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1記載の発明は、円筒状部材を周方向に囲んで前記円筒状部材を締め付けて把持する帯状の把持部を有する取付部と、導管を保持する保持部とを備え、前記取付部にて前記円筒状部材に取り付けられる導管保持用ブラケットにおいて、前記把持部には、前記円筒状部材の外周面から突出する突出部を収容する切欠きが形成され、前記把持部において前記切欠きが形成される切欠き形成部が、前記突出部との接触により前記円筒状部材に対する前記取付部の周方向での位置を規定し、前記把持部は、前記切欠きが形成されたことにより軸線方向での幅が狭くされた幅狭部を、前記切欠き形成部の一部として有し、前記保持部は前記把持部に溶接されており、前記切欠き形成部は、前記切欠きの周方向での一側で前記把持部から突出して設けられた突出片を有し、前記突出片が前記円筒状部材に対する前記取付部の周方向での位置を規定し、前記突出片は屈曲可能であり、前記突出部は、前記切欠きに収容された状態で、前記突出片との接触を含む周方向での2箇所および軸線方向での1箇所で前記切欠き形成部に同時に接触する導管保持用ブラケットである。
【0008】
これにより、ブラケットの位置決めを行う切欠き形成部は、円筒状部材を周方向に囲むと共に該円筒状部材を締め付ける帯状の把持部自体から構成されるので、切欠き形成部と突出部との間にずれが生じたとしても、取付部の円筒状部材に対する周方向へのずれは小さい値に抑えられ、しかもブラケットが小型化される。また、保持部は把持部に溶接されているので、取付部と保持部とをボルトにより結合する必要がない。
【0009】
この結果、請求項1記載の発明によれば、次の効果が奏される。すなわち、円筒状部材を締め付ける帯状の把持部には円筒状部材の突出部を収容する切欠きが形成され、把持部自体から構成される切欠き形成部が、円筒状部材に対する取付部の周方向での位置を規定することにより、切欠き形成部と突出部との間にずれが生じたとしても、取付部を含むブラケットの周方向へのずれは小さな値に抑えられるので、円筒状部材に対するブラケットの位置決め精度が向上するうえ、ブラケットを小型化できる。さらに、保持部は把持部に溶接されていることにより、ブラケットの組立工数および部品点数が削減されて、ブラケットのコスト削減ができる。
【0010】
また、前記切欠き形成部は、前記切欠きの周方向での一側で前記把持部から突出して設けられた突出片を有し、前記突出片が前記円筒状部材に対する前記取付部の周方向での位置を規定するものである。
【0011】
これにより、突出片が突出部に接触することにより、ブラケットの周方向での位置決めがなされると共に、位置決めの際に、突出片を、突出部に周方向から当接させて、突出部が切欠き内に容易に収容されるようにブラケットを案内する案内部として機能させることができる。
【0012】
この結果、切欠き形成部は、切欠きの周方向での一側で把持部から突出して設けられた突出片を有し、突出片が円筒状部材に対する取付部の周方向での位置を規定することにより、ブラケットの周方向での位置決めをする突出片が、突出部が切欠き内に収容されるようにブラケットを案内するので、ブラケットの位置決めが容易になる。
【0013】
また、前記突出片は屈曲可能であり、前記突出部は、前記切欠きに収容された状態で、前記突出片との接触を含む周方向での2箇所および軸線方向での1箇所で前記切欠き形成部に同時に接触するものである。
【0014】
これにより、切欠き形成部が3点で突部に接触するので、位置決め時にブラケットに周方向の押圧力を加えることなく位置決めすることができる。しかも、突出片を屈曲させることにより、突出部との間に間隙が形成されないように調整できるので、突出部の、切欠きに収容される部分の大きさの影響を受けることなく、突出片を突出部に接触させることができる。
【0015】
この結果、突出片は屈曲可能であり、突出部は、突出片との接触を含む周方向での2箇所および軸線方向での1箇所で切欠き形成部に同時に接触することにより、位置決めが一層容易になる。さらに、突出片は突出部の大きさに合わせて屈曲することにより突出部に接触するように調整できるので、切欠き形成部を高い精度で形成する必要がなく、ブラケットのコスト削減ができる。しかも、切欠き形成部が種々の大きさの突出部に対応できるので、ブラケットの汎用性を高めることができる。
【0016】
請求項記載の発明は、請求項1記載の導管保持用ブラケットにおいて、前記保持部は、前記取付部の溶接部に溶接される溶接部と、前記導管を把持する導管用把持部とを有し、前記取付部の前記溶接部は、前記取付部の前記把持部から該把持部に対して傾斜して延びており、前記保持部の前記溶接部は、前記保持部の前記導管用把持部から該導管用把持部に対して傾斜して延びているものである。
【0017】
これにより、保持部の導管用把持部が溶接部に隣接して位置し、しかも両溶接部が両把持部に対してそれぞれ屈曲しているので、取付部の把持部と保持部の導管用把持部との間の捩り剛性が高くなる。
【0018】
この結果、請求項記載の発明によれば、引用された請求項記載の発明の効果に加えて、次の効果が奏される。すなわち、取付部の溶接部は、取付部の把持部から該把持部に対して傾斜して延びており、保持部の溶接部は、保持部の、導管を把持する導管用把持部から該導管用把持部に対して傾斜して延びていることにより、取付部の把持部と保持部の導管用把持部との間の捩り剛性が高くなるので、ブラケットが振動を受ける箇所に取り付けられる場合にも、保持部の振動が抑制されて、導管を安定して保持することができる。
【0019】
請求項記載の発明は、請求項記載の導管保持用ブラケットにおいて、前記取付部の前記溶接部は、前記幅狭部から突出して該幅狭部に一体成形されて設けられるものである。
【0020】
これにより、取付部の把持部において、他の部分よりも軸線方向での幅が狭い幅狭部の剛性が、両溶接部により高められる。
この結果、請求項記載の発明によれば、請求項記載の発明の効果に加えて、次の効果が奏される。すなわち、取付部の溶接部は、把持部の幅狭部から突出して幅狭部に一体成形されて設けられることにより、幅狭部の剛性が高くされるので、把持部が円筒状部材を強固に把持することができて、ブラケットが強固に円筒状部材に取り付けられて、この点でも導管の保持の安定化に寄与できる。
請求項4記載の発明は、請求項3項記載の導管保持用ブラケットにおいて、前記保持部の前記溶接部の一部は、前記幅狭部に溶接されているものである。
この請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明の効果に加えて、次の効果が奏される。すなわち、取付部の溶接部は、幅狭部の一部を含んだものとなり、把持部と導管用把持部との間の捩り剛性および幅狭部の剛性が一層高くなる。
請求項5記載の発明は、請求項1項記載の導管保持用ブラケットにおいて、前記保持部は、前記取付部の溶接部に溶接される溶接部と、前記導管を把持する導管用把持部とを有し、前記保持部の前記溶接部は、前記幅狭部に溶接されているものである。
【0021】
なお、この明細書において、「軸線方向」、「周方向」および「径方向」は、特に断らない限り、それぞれ、円筒状部材を基準としたときの「軸線方向」、「周方向」および「径方向」を意味する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図1ないし図6を参照して説明する。
図1〜図4は、本発明の実施例である第2実施例と共通する構成を備える第1実施例を説明するためのものであり、第1実施例において、導管保持用ブラケットBが使用される装置は、車両に搭載されるラック・ピニオン型の油圧式動力舵取装置である。該動力舵取装置は、操舵補助力を発生するパワーシリンダ機構と、該パワーシリンダ機構に対する作動流体としての作動油の給排を操舵トルクに応じて制御する制御弁とを有するギヤボックスを備える。
【0023】
パワーシリンダ機構は、図1〜図3にその一部が示される円筒状のシリンダ1と、ラック軸2に結合されてシリンダ1内で往復動自在なピストンとから構成され、シリンダ1内には、前記ピストンを挟んで1対の作動室3(図2,図3に一方の作動室が示される。)が形成される。
【0024】
前記制御弁には、油圧ポンプがリザーバタンクから汲み上げて前記制御弁に供給する高圧の作動油が流通する供給管4と、前記制御弁から前記リザーバタンクに帰還する低圧の作動油が流通する戻り管5とが接続される。そして、前記制御弁およびシリンダ1には、前記制御弁により前記1対の作動室3に対して給排される作動油が流通する1対の油管6(図1〜図3に一方の油管が示される。)がそれぞれ接続される。該各油管6は、シリンダ1においては、その外周面1aから径方向に突出してシリンダ1に一体成形されて設けられた円筒状の突出部としての管継手部7に、フレアナット8により結合される。
【0025】
導管としての供給管4および戻り管5は、円筒状部材としてのシリンダ1に取り付けられた導管保持用ブラケットBに保持される。板状の素材で形成されるブラケットBは、シリンダ1を周方向で囲んでシリンダ1に取り付けられる取付部10と、供給管4および戻り管5を保持する保持部20とを備え、取付部10と保持部20とが一体化された部材である。
【0026】
1つの帯状の鋼製板材からなる第1素材で形成される取付部10は、シリンダ1の外形に合わせて円筒状に曲げられてシリンダ1を周方向に囲んで把持する把持部11と、前記第1素材の両端部により構成されて、把持部11から径方向で外方に延びる1対の第1,第2締付部12,13とからなる。
【0027】
第1締付部12にはボルト14が挿通される挿通孔が形成され、第2締付部13には溶接ナット15が設けられる。そして、該挿通孔に挿通されたボルト14が溶接ナット15に螺合されて、両締付部12,13が所定間隙を形成するまでボルト14が締め付けられることにより、把持部11は、その内周面11cの全面がシリンダ1の外周面1aに接触する状態で、シリンダ1を締め付けて把持する。このようにして、取付部10にてブラケットBがシリンダ1に固定された状態で取り付けられる。
【0028】
図4を併せて参照すると、把持部11には、周方向で所定長さW1、および軸線方向で所定幅W2の矩形状の切欠き16が形成される。把持部11の一部分であって、この切欠き16が形成される部分である切欠き形成部11aは、第1,第2締付部12,13に径方向で対向する位置にあり、周方向での1対の縁部11a1,11a2および軸線方向での1つの縁部11a3を有する。
【0029】
切欠き16の大きさは、切欠き16にその一部が収容される管継手部7の大きさに基づいて決定される。好ましくは、所定長さW1は、外径が異なる複数の管継手部7が切欠き16に収容されるように、収容可能な最大外径を有する管継手部7の外径よりも僅かに大きく設定される。また、所定幅W2は、管継手部7が切欠き形成部11aの縁部11a3に接触した状態で、切欠き形成部11aの1対の縁部11a1,11a2が、管継手部7の外径に少なくとも等しい間隔をおいてその外周面7aに接触することができるように、所定長さW1の1/2付近の値に設定される。
【0030】
また、切欠き16を形成するために、把持部11を形成する前記第1素材は、切欠き16の周方向での一側を形成する部分を除く切断線で切断され、切断された部片が、切欠き16の前記一側で径方向外方に切り起こされた切起こし片17とされる。切欠き形成部11aの両縁部11a1,11a2の一方の縁部11a1を構成すると共に屈曲可能な突出片としての切起こし片17は、必要であれば、管継手部7に周方向で接触することができる範囲で、径方向での所定長さを有するように切断されてもよく、この第1実施例では、元の長さの1/2より短くなるように切断されている。
【0031】
さらに、把持部11には、保持部20の溶接部28に溶接される溶接部18が、周方向で切欠き16と重なる位置に設けられる。具体的には、溶接部18は、周方向での切欠き16の形成範囲内に、把持部11に一体成形されて把持部11から軸線方向に突出すると共に、図1に示されるように、把持部11に対して径方向で外方に屈曲して延びている。そして、溶接部18は、把持部11に対して鈍角を形成する角度で傾斜している。それゆえ、溶接部18は、把持部11において、切欠き16の形成により軸線方向での幅が狭くされた幅狭部11bに連なって形成される。ここで、幅狭部11bの一部は切欠き形成部11aの一部でもある。それゆえ、把持部 11 は、幅狭部 11b を、切欠き形成部 11a の一部として有する。
【0032】
一方、複数の導管である供給管4および戻り管5を保持する保持部20は、本体部21と押え部31とを備える。
1つの帯状の鋼製板材からなる第2素材で形成される本体部21は、基部22と溶接部18に溶接される溶接部28とを備える。押え部31は、基部22とは別の1つの帯状の鋼製板材からなる第3素材から形成される。そして、供給管4および戻り管5は、基部22と押え部31との間に挟まれて保持される。そのため、基部22および押え部31は、それぞれ、供給管4および戻り管5の外形に沿う形状をそれぞれ有する湾曲した凹部からなる1対の第1,第2導管用把持部23,24;33,34と、両把持部23,24;33,34の間の第1,第2締付部25,35とを有する。
【0033】
第1締付部25には溶接ナット27が設けられ、第2締付部35にはボルト26が挿通される挿通孔が形成される。そして、該挿通孔に挿通されたボルト26が溶接ナット27にねじ込まれて、両締付部25,35が所定間隙を形成するまで締め付けられることにより、両第1把持部23,33が供給管4を挟持し、両第2把持部24,34が戻り管5を挟持する。
【0034】
一方、溶接部28は、前記第2素材の一端部により構成されて、第1把持部23から屈曲して延びている。そして、第1把持部23に対して鈍角を形成する角度で傾斜していて、溶接部18に面接触した状態で溶接される。
【0035】
次に、ブラケットBをシリンダ1に取り付けるに当たっては、先ず、取付部10の第1,第2締付部12,13の間隔が広げられた状態で、把持部11がシリンダ1に嵌められる。その後、ブラケットBは、切起こし片17を管継手部7の外周面7aに周方向で接触させつつ、軸線方向に押圧されて、管継手部7が切欠き16内に収容されるようにする。管継手部7が切欠き16内に収容された後、ブラケットBは、管継手部7が縁部11a3に接触するように軸線方向に押圧されると同時に、切欠き16内の管継手部7に周方向で切起こし片17が接触するように周方向に押圧される。
【0036】
このような切欠き形成部11aと管継手部7との軸線方向および周方向での接触により、シリンダ1に対するブラケットBの軸線方向および周方向での位置が規定されて、シリンダ1にブラケットBが位置決めされる。この状態で、ボルト14が溶接ナット15にねじ込まれて、取付部10が締め付けられることにより、把持部11がシリンダ1を把持した状態で固定されて、ブラケットBがシリンダ1に固定される。それゆえ、切欠き形成部11aは、ブラケットBの位置決め部となっている。
【0037】
次いで、保持部20において、基部22の第1把持部23および第2把持部24に供給管4および戻り管5がそれぞれ収容された後、第1把持部33および第2把持部34に供給管4および戻り管5がそれぞれ収容されるように、押え部31が基部22に重ねられる。そして、第1締付部25と第2締付部35とが、溶接ナット27にねじ込まれたボルト26により締め付けられることにより、供給管4および戻り管5が、第1把持部23,33同士および第2把持部24,34同士によりそれぞれ挟持された状態で固定され、保持部20に保持される。
【0038】
次に、前述のように構成された第1実施例の作用および効果について説明する。
帯状の把持部11にはシリンダ1の管継手部7を収容する切欠き16が形成され、把持部11の切欠き形成部11aを構成する切起こし片17が、管継手部7に接触して、シリンダ1に対する取付部10の周方向での位置を規定することにより、切欠き形成部11aは把持部11自体から構成されるため、切欠き形成部11aと管継手部7との間にずれが生じたとしても、取付部10の周方向へのずれ、ひいてはブラケットBの周方向へのずれ小さな値に抑えられるので、シリンダ1に対するブラケットBの位置決め精度が向上するうえ、ブラケットBを小型化できる。さらに、保持部20は把持部11に溶接されていることにより、取付部10と保持部20とをボルトにより結合する必要がないので、ブラケットBの組立工数および部品点数が削減されて、ブラケットBのコスト削減ができる。
【0039】
切欠き形成部11aは、切欠き16の周方向での一側で把持部11から突出して設けられた切起こし片17を有し、切起こし片17がシリンダ1に対する取付部10の周方向での位置を規定することにより、切起こし片17が管継手部7に接触することで、ブラケットBの周方向での位置決めがなされると共に、位置決めの際に、切起こし片17を、管継手部7に周方向から当接させて、管継手部7が切欠き16内に容易に収容されるようにブラケットBを案内する案内部として機能させることができるので、ブラケットBの位置決めが容易になる。しかも、切起こし片17は、把持部11に切欠き16を形成する際に得られる部片であるので、その形成が簡単である。
【0040】
取付部10の溶接部18は、把持部11から該把持部11に対して傾斜して延びており、保持部20の溶接部28は、供給管4を把持する第1把持部23から該第1把持部23に対して傾斜して延びていることにより、保持部20の第1把持部23が溶接部28に隣接して位置し、しかも両溶接部18,28が両把持部11,23に対してそれぞれ屈曲しているため、把持部11と第1把持部23との間の捩り剛性が高くなるので、ブラケットBが振動を受ける箇所に取り付けられる場合にも、保持部20の振動が抑制されて、供給管4および戻り管5を安定して保持することができる。
【0041】
取付部10の溶接部18は、把持部11の幅狭部11bから突出して幅狭部11bに一体成形されて設けられることにより、把持部11の他の部分よりも軸線方向での幅が狭い幅狭部11bの剛性が、両溶接部18,28により高められて、把持部11がシリンダ1を強固に把持することができるので、ブラケットBが強固にシリンダ1に取り付けられて、供給管4および戻り管5の保持の安定化に寄与できる。さらに、把持部11は、その内周面11cの全面がシリンダ1の外周面1aに接触する状態で、シリンダ1を締め付けて把持することにより、この点でもブラケットBが強固にシリンダ1に固定される。
【0042】
次に、図5,図6を参照して、本発明の実施例である第2実施例を説明する。この第2実施例は、第1実施例とは、管継手部7が切欠き形成部11aに3点で接触する点が主として相違し、その他は基本的に同一の構成を有するものである。そのため、同一の部分についての説明は省略または簡略にし、異なる点を中心に説明する。なお、第1実施例の部材と同一の部材または対応する部材については、同一の符号を使用した。
【0043】
この第2実施例では、切欠き形成部11aの切起こし片17(縁部11a1)と縁部11a2との周方向での間隔が、両者が管継手部7の外周面7aに同時に接触する大きさになるように、屈曲可能な切起こし片17の屈曲の程度が調整されることにより設定される(図5には、屈曲する前の切起こし片17が二点鎖線で示されている。)。そのため、シリンダ1に対してブラケットBを位置決めする際には、第1実施例と同様に、切起こし片17を利用して管継手部7が切欠き16内に収容されて、周方向で切起こし片17および側縁11a2の2箇所P1,P2で接触し、軸線方向で縁部11a3の1箇所P3で接触することにより、直ちに、ブラケットBがシリンダ1に位置決めされる。
【0044】
それゆえ、この第2実施例によれば、第1実施例と同様の作用および効果が奏されるほか、次の作用および効果が奏される。すなわち、管継手部7は、切起こし片17との接触を含む周方向での2箇所P1,P2および軸線方向での1箇所P3で切欠き形成部11aに同時に接触することにより、位置決め時にブラケットBに周方向の押圧力を加えることなく位置決めすることができるので、シリンダ1に対するブラケットBの位置決めが一層容易になる。さらに、屈曲可能な切起こし片17は管継手部7の大きさに合わせて屈曲することにより、管継手部7との間に間隙が形成されないように調整できるので、管継手部7の、切欠き16に収容される部分の大きさの影響を受けることなく、切起こし片17を管継手部7に接触させることができる。その結果、切欠き形成部11aを高い精度で形成する必要がなく、ブラケットBのコスト削減ができる。しかも、切欠き形成部11aが種々の大きさの管継手部7に対応できるので、ブラケットBの汎用性を高めることができる。
【0045】
以下、前述した実施例の一部の構成を変更した実施例について、変更した構成に関して説明する。
切欠き形成部11aは、前記各実施例では、切起こし片17を有するものであったが、切起こし片17を持たないものであってもよい。また、突出片は、切起こし片17ではなく、把持部11に溶接等の固着手段により固着されたものでもよい。さらに、突出部は、シリンダ1の外周面から突出する管継手部以外の部分であってもよい。
【0046】
図1,図4に二点鎖線で示されるように、保持部20の溶接部28の一部28aが、幅狭部11bの一部にも溶接されていてもよく、その場合には、取付部10の溶接部18は、幅狭部11bの一部を含んだものとなり、把持部11と第1把持部23との間の捩り剛性および幅狭部11bの剛性が一層高くなる。
【0047】
ブラケットBが取り付けられる装置は、油圧式動力舵取装置以外の装置であって、作動油を含む作動流体が流通する導管が接続される流体圧を利用した装置であってよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例である第2実施例と共通する構成を備える第1実施例を示し、本発明のブラケットが油圧式動力舵取装置のシリンダに取り付けられた状態の要部正面図である。
【図2】図1のII−IIでの断面図および矢視図である。
【図3】図1のIII−IIIでの断面図および矢視図である。
【図4】管継手部とブラケットとの位置関係を示すための図1のIVでの矢視図である。
【図5】 本発明の実施例である第2実施例を示し、図2に相当する断面図および矢視図の要部拡大図である。
【図6】第2実施例のブラケットにおいて、図4に相当する矢視図の要部拡大図である。
【符号の説明】
1…シリンダ、1a…外周面、2…ラック軸、3…作動室、4…供給管、5…戻り管、6…油管、7…管継手部、8…フレアナット、
10…取付部、11…把持部、11a…切欠き形成部、11b…幅狭部、12,13…締付部、14…ボルト、15…溶接ナット、16…切欠き、17…切起こし片、18…溶接部、
20…保持部、21…本体部、22…基部、23,24…把持部、25…締付部、26…ボルト、27…溶接ナット、28…溶接部、
31…押え部、33,34…把持部、35…締付部、
B…ブラケット、W1…長さ、W2…幅、P1〜P3…箇所。

Claims (5)

  1. 円筒状部材を周方向に囲んで前記円筒状部材を締め付けて把持する帯状の把持部を有する取付部と、導管を保持する保持部とを備え、前記取付部にて前記円筒状部材に取り付けられる導管保持用ブラケットにおいて、
    前記把持部には、前記円筒状部材の外周面から突出する突出部を収容する切欠きが形成され、
    前記把持部において前記切欠きが形成される切欠き形成部が、前記突出部との接触により前記円筒状部材に対する前記取付部の周方向での位置を規定し、
    前記把持部は、前記切欠きが形成されたことにより軸線方向での幅が狭くされた幅狭部を、前記切欠き形成部の一部として有し、
    前記保持部は前記把持部に溶接されており、
    前記切欠き形成部は、前記切欠きの周方向での一側で前記把持部から突出して設けられた突出片を有し、
    前記突出片が前記円筒状部材に対する前記取付部の周方向での位置を規定し、
    前記突出片は屈曲可能であり、
    前記突出部は、前記切欠きに収容された状態で、前記突出片との接触を含む周方向での2箇所および軸線方向での1箇所で前記切欠き形成部に同時に接触することを特徴とする導管保持用ブラケット。
  2. 前記保持部は、前記取付部の溶接部に溶接される溶接部と、前記導管を把持する導管用把持部とを有し、
    前記取付部の前記溶接部は、前記取付部の前記把持部から該把持部に対して傾斜して延びており、
    前記保持部の前記溶接部は、前記保持部の前記導管用把持部から該導管用把持部に対して傾斜して延びていることを特徴とする請求項1記載の導管保持用ブラケット。
  3. 前記取付部の前記溶接部は、前記幅狭部から突出して該幅狭部に一体成形されて設けられることを特徴とする請求項記載の導管保持用ブラケット。
  4. 前記保持部の前記溶接部の一部は、前記幅狭部に溶接されていることを特徴とする請求項3項記載の導管保持用ブラケット。
  5. 前記保持部は、前記取付部の溶接部に溶接される溶接部と、前記導管を把持する導管用把持部とを有し、
    前記保持部の前記溶接部は、前記幅狭部に溶接されていることを特徴とする請求項1項記載の導管保持用ブラケット。
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