JP4258144B2 - 廃蛍光管等の水銀除去方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、寿命終了後の廃蛍光管や廃水銀灯管、あるいは蛍光灯や水銀灯の製造工程で生じる不良品(以下「廃蛍光管等」と総称することもある)を構成する構成部材(ガラス管部、口金部分等:以下「蛍光管等構成部材」と総称することもある)からそれらに付着している水銀を除去する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
寿命終了後の蛍光灯や蛍光灯の製造工程で発生する不良蛍光灯では、ガラス管内に水銀が封入されているので、これを除去することが公害防止上重要な課題である。また省資源の面から蛍光管に使われているガラスや、口金部分に使われているアルミニウムなどを回収再利用することが望まれている。
【0003】
従来、廃蛍光管の処理方法としては、電極を有する口金部分を切除し、残ったガラス管部分を適当な大きさに破砕し、得られた破砕ガラス片を水または薬液で洗浄する湿式法や、破砕ガラス片をふるい分けや加熱あるいは振動コンベアなどにより機械的に除去する乾式法がある。近年、技術改良によって蛍光灯の寿命が長くなったことや、種々の使用状況、水銀使用量の多少などにより蛍光灯のガラス管内に封入されている水銀が同ガラス管の内面に緊密に結合もしくは吸着するものが多く、そのため上記従来法では、処理後のガラス片をリサイクルもしくは廃棄処分しようとするときの基準となる水銀の溶出濃度(0.005mg/l)をクリアできないケースがよくある。
【0004】
また、最近、廃蛍光管の破砕ガラス片を硝酸で洗浄する方法が提案されているが(特開2000−303125号公報参照)、この方法では硝酸濃度が非常に高いため、運転コストが高くつく上に、設備を高価な耐酸材質で構成する必要があり、設備も複雑で大型化が難しく、薬剤の取扱いに危険が伴う等の問題があった。
【0005】
また、洗浄液として5%以下の硝酸水溶液を用いても、十分な洗浄効果が得られず、洗浄後の破砕ガラス片中の水銀含有量が十分に低下せず、水銀溶出基準をクリアできないものが多数発生する。
【0006】
このような実状から、新たに効率の良い洗浄剤および洗浄方法の開発が急がれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、廃蛍光管等のガラス管部分や口金部分等の蛍光管等構成部材の内面に結合もしくは吸着などにより付着している水銀を効率よくかつ安価に取り除くことができる廃蛍光管等の水銀除去方法を提供することにある。
【0008】
本発明は、寿命終了後の廃蛍光管や廃水銀灯管、あるいは蛍光灯や水銀灯の製造工程で生じる不良品の水銀除去方法において、寿命終了後の廃蛍光管や廃水銀灯管、あるいは蛍光灯や水銀灯の製造工程で生じる不良品の構成部材またはこれを破砕して得られた破砕ガラス片を、10〜5,000mg/ L のフッ化水素酸と、500〜10,000mg/ L の硝酸との混酸を含む洗浄液で洗浄することにより、該構成部材またはその破砕ガラス片に付着する水銀を同液に溶解させ、除去することを特徴とする。
【0009】
本発明の水銀除去方法によれば、表面の水銀を単に洗い流したり、キレート剤で固定化するのでなく、ガラス表面等の微細な凹凸面に付着していて洗い流せない水銀を洗浄液で溶解し、被洗浄物中の水銀含有量そのものを減少させ、水銀溶出量を基準値以下まで効率よく低下させることができる。
【0010】
フッ化水素酸の濃度は好ましくは1〜10,000mg/L、より好ましくは10〜5,000mg/Lである。この濃度が1mg/L未満であると洗浄効果が十分でなく、10,000mg/Lを越えても特に水銀の除去効率が向上せず、経済的でない。1〜5,000mg/Lの範囲ならば後工程の中和処理で使われる中和液の量が少なくて済み、また洗浄機や配管、タンクなどの材質に汎用金属が使用できる。
【0015】
フッ化水素酸と酸化剤を含む洗浄液の例として、10〜5000mg/Lのフッ化水素酸と10〜10,000mg/Lの硝酸を含む液が挙げられる。
【0016】
環境保全の観点から、水銀を含む排水は基本的に系外に出さないことが求められる。フッ化水素酸を含む洗浄液での洗浄後に、蛍光管等構成部材またはその破砕ガラス片を中和剤溶液で洗浄することが好ましい。これにより、その表面に付着している洗浄液を中和すると共に、洗浄液に含まれる水銀を酸化物、硫化物等の水不溶性化合物に変えることができる。生じた水不溶性化合物は濾過その他の固液分離によって容易に除去できる。さらに溶解したまま洗浄液中に残っている水銀は、この洗浄液をキレート樹脂充填塔に通したりキレート剤処理をすることにより除去でき、水銀除去後の洗浄液は循環再使用できる。中和剤の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、硫化ナトリウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0017】
廃蛍光管等内の水銀の多くは、蛍光体に吸着もしくは混入しているため、本発明を実施する前に予め、蛍光管等構成部材またはその破砕ガラス片の表面に付着もしくは滞留している蛍光体を機械的に剥離するか、もしくは従来の水洗法などで除去しておくことが好ましい。この前処理により、洗浄液中の薬剤の消費量を低減することができる。
【0018】
本発明を実施するに当たっては、電極を有する口金部分を付けたままの廃蛍光管等の破砕物に上記方法を適用してもよいが、予め口金部分を取り除いて、ガラス管部分を適当な大きさに破砕しておいた後、上記方法を適用する方がリサイクルの容易さから効率的である。本発明による水銀除去方法は口金部分からの水銀除去にも適用できる。
【0019】
また本発明の洗浄方法は、廃蛍光管以外にも廃水銀灯などの水銀が付着したガラス管部分や口金部分から水銀を除去する洗浄にも適用できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
廃蛍光管から口金部分を取り除いて、ガラス管部分を適当な大きさに破砕した後、破砕ガラス片を、そのまま、もしくは機械的手段や洗浄方式で蛍光体を剥離した。この破砕ガラス片を、図1に示す洗浄装置の洗浄機(1) にその一端のホッパ(2) から投入し、他端側より供給される所定濃度に調整された洗浄液によって洗浄する。使用後の洗浄液は、一旦、洗浄液タンク(3) に蓄えられる。洗浄液中の固形分が洗浄に支障を来すようであれば、洗浄濾過機(5) で固形分除去を行ってもよい。洗浄剤は破砕ガラス片に付着している蛍光体や水銀などとの反応によって消費されるので、必要量を補充する。こうして濃度を調整した洗浄液をポンプ(4) で洗浄機(1) へ戻し再使用に供する。
【0021】
次いで、洗浄機(1) において洗浄された洗浄ガラス片を、中和機(6) にその一端のホッパ(7) から投入し、他端側より供給される所定濃度に調整された中和液によって、ガラス片表面に付着している洗浄液を洗浄中和する。使用後の中和液は、一旦、中和液タンク(8) に蓄えられる。中和液中の固形分が中和に支障を来すようであれば、中和濾過機(10)で固形分除去を行ってもよい。中和剤は破砕ガラス片に付着している洗浄液との反応によって消費されるので、必要量を補充する。こうして濃度を調整した中和液をポンプ(9) で中和機(6) へ戻し再使用に供する。
【0022】
このように洗浄液も中和液も循環使用が可能であり、これらの液を系外へ排出しなくてよい。
【0023】
中和処理後の処理ガラス片を乾燥機で乾燥し、処理ガラス片を得る。
【0024】
洗浄機および中和機の例としては、回転型洗浄機、攪拌型洗浄機、一台で洗浄、中和、乾燥など全てを行う装置の他、破砕ガラス片を籠状の容器に入れて洗浄液または中和液に浸漬して洗浄する装置、ベルトコンベアで移送する破砕ガラス片に洗浄液または中和液を散水または噴霧する装置などが挙げられるが、洗浄機および中和機はこれらに限定されるものではない。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。
【0026】
実施例1〜3、比較例1〜3
A社製の廃蛍光管から口金部分を取り除いて、ガラス管部分を適当な大きさに破砕した後、得られた破砕ガラス片を蛍光体剥離機に投入して、表面に付着している蛍光体を機械的に剥離した。こうして得られた蛍光体除去後の破砕ガラス片をテストサンプルとし、洗浄液として水のみ(比較例2)、硝酸を含む水溶液(比較例3)、および硝酸とフッ化水素酸を含む水溶液(実施例1〜3)をそれぞれ用い、図1に示す洗浄装置を用いて、テストサンプルの洗浄を行った。洗浄後の破砕ガラス片の水銀含有量(環境庁低質調査方法)および水銀溶出濃度(環境庁告示第13号)を分析した。また、ブランクとして、蛍光体を剥離した後(洗浄なし)のサンプル(比較例1)についてもその水銀含有量および水銀溶出濃度を分析した。
【0027】
これらの分析結果を表1にまとめて示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1に示すように、洗浄後の破砕ガラス片に残っている水銀の量は、水のみ、または、硝酸を含む水溶液で洗浄した場合に比べ、硝酸とフッ化水素酸を含む水溶液で洗浄した場合に、より低くなっており、水銀溶出基準を十分クリアしている。
【0030】
実施例4〜12、参考例1、比較例4〜6
B社製の廃蛍光管から口金部分を取り除いて、ガラス管部分を適当な大きさに破砕した後、得られた破砕ガラス片を蛍光体剥離機に投入して、表面に付着している蛍光体を機械的に剥離した。こうして得られた蛍光体除去後の破砕ガラス片をテストサンプルとし、洗浄液として、水のみ(比較例5)、硝酸を含む水溶液(比較例6)、および硝酸とフッ化水素酸を異なる濃度で含む水溶液(実施例4〜12)、およびフッ化水素酸を含む水溶液(参考例1)をそれぞれ用い、図1に示す洗浄機装置を用いて、テストサンプルの洗浄を行った。洗浄後の破砕ガラス片の水銀溶出濃度(環境庁告示第13号)および水銀含有量(環境庁低質調査方法)を分析した。また、ブランクとして、蛍光体を剥離した後(洗浄なし)のサンプル(比較例4)についてもその水銀含有量および水銀溶出濃度を分析した。
【0031】
これらの分析結果を表2にまとめて示す。
【0032】
【表2】
【0033】
表2に示すように、水洗浄や硝酸溶液洗浄では、十分に水銀を除去できなかったものが、フッ化水素酸の添加により、その濃度にほぼ比例して、水銀含有量、水銀溶出濃度共に低下していることがわかる。
【0034】
また同じフッ化水素酸濃度では、硝酸との混合液の方が、フッ化水素酸単独より効果が高いことがわかる。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、蛍光灯や水銀灯のガラス管部分の内面に結合もしくは吸着している水銀を効率よくかつ安価に取り除くことができ、したがって、蛍光管の破砕ガラスおよび水銀の再利用が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 破砕ガラス片の洗浄工程と洗浄液の中和工程を示すフローシートである。
【符号の説明】
1:洗浄機
3:洗浄液タンク
5:洗浄濾過機
6:中和機
8:中和液タンク
10:中和濾過機
Claims (7)
- 寿命終了後の廃蛍光管や廃水銀灯管、あるいは蛍光灯や水銀灯の製造工程で生じる不良品の水銀除去方法において、
寿命終了後の廃蛍光管や廃水銀灯管、あるいは蛍光灯や水銀灯の製造工程で生じる不良品の構成部材またはこれを破砕して得られた破砕ガラス片を、10〜5,000mg/ L のフッ化水素酸と、500〜10,000mg/ L の硝酸との混酸を含む洗浄液で洗浄することにより、該構成部材またはその破砕ガラス片に付着する水銀を同液に溶解させ、除去することを特徴とする方法。 - 前記混酸がフッ化水素酸と硝酸のみからなる、請求項1に記載の方法。
- 前記構成部材がガラス管部分や口金部分である請求項1または2に記載の方法。
- フッ化水素酸を含む洗浄液での洗浄後に、前記構成部材またはその破砕ガラス片を中和剤溶液で洗浄することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
- 洗浄前に前記構成部材またはその破砕ガラス片から蛍光体を機械的剥離処理または水洗により除去しておくことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 洗浄液を系外に排出しないで循環使用することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 寿命終了後の廃蛍光管や廃水銀灯管、あるいは蛍光灯や水銀灯の製造工程で生じる不良品の構成部材またはこれを破砕して得られた破砕ガラス片から水銀を取り除く水銀除去装置であって、該構成部材またはその破砕ガラス片を、10〜5,000mg/ L のフッ化水素酸と、500〜10,000mg/ L の硝酸の混酸を含む洗浄液で洗浄することにより、該構成部材またはその破砕ガラス片に付着する水銀を同液に溶解させ、除去する洗浄機を備えることを特徴とする装置。
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