JP4258058B2 - 円盤状記録媒体の検査装置及び検査方法 - Google Patents

円盤状記録媒体の検査装置及び検査方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、円盤状記録媒体の信号記録面の表面形状を検査する円盤状記録媒体の検査装置及び検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
円盤状記録媒体は、信号記録層を備えて構成されており、この信号記録層に対して、記録再生装置によって記録信号の記録及び/又は再生(以下、記録再生という。)が行われる記録媒体である。円盤状記録媒体としては、例えば、磁気ギャップを有する磁気ヘッドによって磁界が印加されて、記録信号に対応した磁区が信号記録層に書き込まれる磁気ディスクや、記録再生装置の光学ヘッドによってレーザ光が照射されることによって記録再生が行われる光ディスクが知られている。光ディスクには、記録信号に応じた凹凸パターンとしてピットが信号記録層に形成された再生専用の光ディスクや、記録信号の記録再生が可能な光磁気ディスク及び相変化型光ディスク等の種類がある。
【0003】
円盤状記録媒体は、通常、信号記録層に形成された記録トラックに沿って記録信号が記録される。具体的には、例えば、上述した再生専用の光ディスクの場合に、記録トラックに沿ってピットが並んでいる。
【0004】
例えば、従来から用いられているCD(Compact Disc)は、記録トラック同士の間隔(以下、トラックピッチと称する。)が1600nmであり、このトラックピッチの変動精度が50nm以下であることが要求されている。これに対して、高記録密度化に対応したDVD(Digital Versatile Disc)の場合には、トラックピッチが740nmであることから、トラックピッチの変動精度が23nm程度以下であることが要求されることとなる。すなわち、円盤状記録媒体は、高記録密度化に対応して狭トラックピッチ化が図られることによって、信号記録面での表面形状が高精度に形成されることを要求されるようになる。
【0005】
したがって、このような円盤状記録媒体の表面形状を検査する検査装置としては、10nm以下の精度での測定が可能であることが必要とされる。検査装置としては、走査型トンネリング顕微鏡(STM)が用いられていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、円盤状記録媒体の検査にSTMを用いる場合には、試料サイズが限定されることから、この円盤状記録媒体の一部を切り出す必要があり、いわゆる破壊検査になってしまうといった問題があった。
【0007】
また、STMは、測定に長時間を要する。したがって、円盤状記録媒体の信号記録面を広範囲に亘って測定することが困難であった。また、長いターンアラウンド時間が必要となり、例えば原盤記録プロセス等に対して検査結果を有効にフィードバックすることが困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、非破壊検査が可能であるとともに、高精度且つ高速に検査することが可能な円盤状記録媒体の検査装置及び検査方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る円盤状記録媒体の検査装置は、円盤状記録媒体の信号記録面における表面形状を検査する検査装置であって、上記信号記録面に対して遠紫外波長域の光を照射するとともに、この光が当該信号記録面に反射して戻ってきた戻り光を、上記遠紫外波長域の光を検出可能である固体撮像素子によって撮像し、光路中に、上記光の空間コヒーレンスを低減する回転拡散板を有する撮像手段と、上記撮像手段の出力画像を演算処理する演算手段とを備える。上記撮像手段は、上記演算手段の処理結果に基づいて、上記光の照射位置及び/又は焦点位置を調整する。上記演算手段は、上記撮像手段の出力画像に対して記録トラック方向に平均化処理を施して、記録トラックを横断する方向の平均信号レベルの変化を示す平均化トラック横断信号を生成するとともに、上記平均化トラック横断信号を数値微分して微分
信号を生成し、上記微分信号のゼロクロス点に基づいて、上記信号記録面の記録トラック中心位置を検出し、上記信号記録面の表面形状を検査する。
【0010】
以上のように構成された円盤状記録媒体の検査装置は、撮像手段の出力画像を演算手段により演算処理することによって、この出力画像に含まれているノイズを効果的且つ高速に除去することができる。また、撮像手段は、この円盤状記録媒体に対して光を照射することによって信号記録面の表面形状を撮像することから、この円盤状記録媒体を非破壊で検査することができる。
【0011】
また、本発明に係る円盤状記録媒体の検査方法は、円盤状記録媒体の信号記録面の表面形状を検査する検査方法であって、上記信号記録面に対して所定の遠紫外波長域の光を上記光の空間コヒーレンスを低減する回転拡散板を通して照射して、この光が当該信号記録面に反射して戻ってきた戻り光を、上記遠紫外波長域の光を検出可能である固体撮像素子によって撮像する撮像ステップと、上記撮像ステップで得られた出力画像を演算処理する演算ステップとを有する。上記撮像ステップでは、上記演算ステップでの演算結果に基づいて、上記光の照射位置及び/又は焦点位置を調整する。上記演算ステップでは、上記撮像ステップでの出力画像に対して記録トラック方向に平均化処理を施し、記録トラックを横断する方向の平均信号レベルの変化を示す平均化トラック横断信号を生成するとともに、上記平均化トラック横断信号を数値微分して微分信号を生成し、上記微分信号のゼロクロス点に基づいて、上記信号記録面の記録トラック中心位置を検出し、上記信号記録面の表面形状を検査する。
【0012】
上述のような円盤状記録媒体の検査方法によれば、撮像ステップで得られた出力画像を演算ステップで演算処理することによって、この出力画像に含まれているノイズを高精度且つ高速に除去することができる。また、撮像ステップでは、この円盤状記録媒体に対して光を照射することによって信号記録面の表面形状を撮像することから、この円盤状記録媒体を非破壊で検査することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、本発明を適用した円盤状記録媒体の検査装置として、図1に示すような検査装置1について説明することとする。
【0014】
検査装置1は、円盤状記録媒体2(以下、ディスク2という。)の信号記録面の表面形状を検査する装置である。検査装置1は、試料となるディスク2を載置する試料台3と、レーザ発振器4と、撮像部5と、演算処理部6と、画像表示部7とを備える。また、レーザ発振器4と撮像部5とは、光ファイバ8によって光学的に接続されている。すなわち、検査装置1においては、レーザ発振器4から出射したレーザ光が光ファイバ8を通じて撮像部5に伝送される構成とされている。
【0015】
なお、ディスク2としては、例えば、基板上に信号記録層等が積層されて形成されて記録再生が可能な光磁気ディスクや相変化型光ディスクであってもよいし、信号記録層にピットが形成された再生専用の光ディスクであってもよい。また、ディスク2としては、例えばハードディスク等の磁気記録媒体であってもよいし、各種円盤状記録媒体を作製するための原盤であってもよい。
【0016】
検査装置1は、レーザ発振器4から撮像部5へレーザ光を光ファイバ8によって伝送することにより、撮像部5と比較して大きくて重いレーザ発振器4を自由な位置に設置できる構成とすることができる。また、検査装置1は、レーザ光を光ファイバ8によって伝送することにより、このレーザ光の空間コヒーレンスを低減することができ、スペックル雑音を低減することができる。なお、光ファイバ8は、例えば合成石英等の遠紫外波長域で高い透過率を有する材料によって形成されていることが望ましい。これにより、後述するような遠紫外レーザ光を伝送する際に、損失を少なくすることができる。
【0017】
また、検査装置1においては、撮像部5がディスク2の径方向に移動自在とされるとともに、試料台3が回転自在とされており、ディスク2上の任意の位置に対してレーザ光を照射することができるように構成されている。
【0018】
レーザ発振器4は、遠紫外光を発振する遠紫外レーザ発振器であることが望ましい。具体的には、例えば、ネオジミウムYAGレーザの第4高調波発生を利用した、全固体型で縦横単一モードの266nmの単一波長のレーザ光を発振するレーザ発振器等を用いればよい。なお、以下の説明において、遠紫外光とは、200〜300nmの波長を有する電磁波のことをいう。
【0019】
検査装置1は、ディスク2に対して照射する光の波長が短いほど、光学的な解像度を向上させることができる。しかし、この光が短波長すぎると、承知の光学系の設計が困難となってしまう。したがって、ディスク2に照射する光は、波長が200〜400nm程度の遠紫外領域の光が望ましい。ただし、本発明は、上述したネオジミウムYAGレーザ発振器に限定されるものではなく、他の各種レーザ発振器等を用いてもよい。
【0020】
また、レーザ発振器4としては、全固体型であるレーザ発振器を用いることが望ましい。これにより、レーザ光の発振効率を向上することができるとともに、装置全体を小型化することができる。
【0021】
撮像部5は、図1に示すように、回転拡散板10と、コリメータレンズ11と、ビームスプリッタ12と、対物レンズ13と、集光レンズ14と、固体撮像素子15とを備える。回転拡散板10と、コリメータレンズ11と、ビームスプリッタ12と、対物レンズ13とは、レーザ光の光路上に順次配設されている。
【0022】
回転拡散板10は、レーザ光の空間コヒーレンスを低減する機能を有している。検査装置1においては、レーザ光を直接ディスク2に照射する構成とした場合に、レーザ光が一般的に高いコヒーレンスを有していることから、固体撮像素子15からの出力画像にスペックル雑音が生じてしまう。そのため、検査装置1においては、レーザ光の光路上に回転拡散板10を配設することによって、スペックル雑音の発生を抑制する構成とされている。
【0023】
対物レンズ13は、光ファイバ8と同様に、例えば合成石英等の遠紫外光に対して高い透過率を有する材料によって形成されていることが望ましい。また、対物レンズ13は、例えば開口数NAが0.9程度の高開口数を有していることが望ましい。これにより、ディスク2に照射するレーザ光の解像度を向上させることができる。
【0024】
また、対物レンズ13を通じてディスク2上に集光されたレーザ光は、ディスク2上の信号記録面で反射して、入射光路を戻ってくる戻り光となる。戻り光は、対物レンズ13を通り、ビームスプリッタ12に入射されると、入射方向に対して90゜方向に向けて反射され、集光レンズ14を介して固体撮像素子15に入射される。すなわち、集光レンズ14及び固体撮像素子15は、戻り光の光路上でビームスプリッタ12の後段に配設されている。
【0025】
固体撮像素子15は、レーザ光の波長領域で十分な感度と信号雑音比とを有する撮像素子であることが望ましい。これにより、固体撮像素子15は、高い信号精度で画像を出力することができる。また、固体撮像素子15は、多くの画素を有していることが望ましい。具体的には、例えば100万画素以上であることが望ましい。固体撮像素子15は、多くの画素を有していることによって、ディスク2の信号記録面を一度により広範囲に撮像することができるとともに、より高精度に撮像することができる。このような固体撮像素子15としては、例えば電荷供給素子(CCD:Charge Coupled Device)等を用いればよい。固体撮像素子15によって撮像された画像は、デジタル信号によって演算処理部6に伝送される。
【0026】
演算処理部6は、固体撮像素子15の出力画像に対して各種の演算処理を施すことによって、ディスク2のトラックピッチやピット形状等の測定を高速で行う。演算処理部6での具体的な演算処理については、後述することとする。演算処理部6は、例えばマイクロプロセッサやメモリ等を組み合わせて構成される。また、演算処理部6での処理結果は、画像表示部7に表示される。なお、演算処理部6及び画像表示部7は、検査装置1の他の各部と一体に構成されてもよいし、他の各部とは別体に構成されて撮像部5に接続されたコンピュータ等であってもよい。
【0027】
以下では、上述した検査装置1について、具体的な数値を挙げて詳細に説明することとする。なお、本発明は、以下で説明する例に限定されるものではなく、検査対象とするディスク2に応じて各部の数値等を決定すればよい。
【0028】
上述したような検査装置1においては、例えば、レーザ光の波長λを266nm、対物レンズ13の開口数NAを0.9とするとき、このレーザ光を、エアリー半径(スポット半径)が0.61λ/NA=180(nm)となるまで集光することができる。また、対物レンズ13の有効視野半径を100μmとし、この対物レンズ13を含むカメラ系の倍率が1000倍であるとき、100万画素を有する固体撮像素子15における1画素は、画素のサイズを10μmとすると、信号記録面での10nmに相当する。以下では、上述したように、レーザ光のスポット半径が180nmであり、固体撮像素子15の画素数が100万であるとして説明する。
【0029】
ところで、例えば、高記録密度化に対応したディスクであるDVDの場合には、記録トラック上に形成される最短の記録マークの長さは400nmであり、トラックピッチは740nmである。検査装置1は、スポット半径が180nmであるレーザ光を用いて、このDVDを測定する場合に、上述したように100万画素を有する固体撮像素子15から出力される画像を、例えば8ビットのデジタル画像信号を処理することによって、このDVD上の記録トラックの中心位置及びピットのエッジ形状を10nm程度の精度で測定し、検査することが可能となる。
【0030】
固体撮像素子15からの出力画像の一例を、図2に示す。ただし、図2においては、出力画像のうちの一部である200×200画素だけを示す。すなわち、図2で示す固体撮像素子15の出力画像は、DVDの信号記録面における2000nm四方の領域を示す画像である。なお、図2において、黒く示す部分は、DVDの信号記録面に形成されたピットを示す。DVDは、ピットが信号記録面上に物理的な形状の変化として形成されており、これらピットの列が記録トラックとされている。また、図2において、記録トラック間の位置では、白く示されており、この部分が信号記録面の基準面とされている。
【0031】
また、図2に示した出力画像に対して、演算処理部6によって演算処理を施し、輪郭抽出を行った結果を図3に示す。図2及び図3からは、DVDの最短記録マークである400nmの長さを有するピットを十分に識別することが可能であるが、このピットの形状を10nmの精度まで測定できているか否かは図2及び図3からは明らかではない。図3に示す輪郭抽出図では、図2と比較してピットの輪郭が明瞭であるが、測定の限界はノイズによって支配されていることが分かる。
【0032】
つぎに、図2に示した出力画像について、記録トラック間位置、すなわち、信号記録層の基準面位置におけるこの画像の信号レベルを、記録トラック方向に沿って測定したトラック方向信号を図4に示す。また、このトラック方向信号の5画素にわたる移動平均を図4上に重ねて示す。図4は、横軸に記録トラック方向の位置、すなわち、図2における縦方向に200画素分の位置を示し、縦軸に図2に示す出力画像の信号レベルを示す。なお、図2で示す出力画像は、8ビットであるとし、画像の最大信号レベルは256であるとする。図4に示す結果から、トラック方向信号の平均信号レベルは、229.25であった。
【0033】
また、この移動平均からのトラック方向信号の差分をとった信号を図5に示す。すなわち、図5は、トラック方向信号の画素単位での不規則ノイズを示し、高周波成分のノイズを示している。なお、図5は、図4と比較して縦軸を10倍に拡大して示す。図5に示す結果から、この信号の標準偏差は6.4であった。
【0034】
ところで、DVDの信号記録面は、基準面位置で同じ高さを有していることから、図4及び図5は、理想的には平坦なグラフとなるはずである。したがって、図4及び図5の結果から、固体撮像素子15からの出力画像にはノイズが含まれていることが分かり、このノイズには、画素単位に含まれる不規則ノイズと、5画素以上の周期の長周期ノイズとに大別することができる。図4及び図5の結果から、不規則ノイズの標準偏差は5.0であり、長周期ノイズの標準偏差は4.0である。
【0035】
これらノイズの原因としては、固体撮像素子15の素子ノイズと、レーザ光のコヒーレンスに起因するスペックルノイズとが考えられる。素子ノイズは、固体撮像素子15におけるショットノイズ、暗電流ノイズ及び感度むら等が原因として考えられる。そして、画素単位の不規則ノイズは素子ノイズであり、長周期ノイズはスペックルノイズであると考えられる。
【0036】
ところで、検査装置1では、回転拡散板10を通してレーザ光を試料に照射すると、固体撮像素子15上に結像する試料パターンに、この回転拡散板10の回転速度で移動するスペックルノイズパターンが重畳される。したがって、固体撮像素子15の各画素の受光量は、スペックルノイズ分だけ時間変動するが、回転拡散板10の回転速度を固体撮像素子15の露光時間と比較して十分に速くすることによって、露光時間内にスペックルノイズを時間的に平均化することができる。したがって、検査装置1は、回転拡散板10を備えていることによって、上述したスペックルノイズを時間的に平均化することができる。したがって、図4で示すように、上述した演算処理で検出されたスペックルノイズは、回転拡散板10によって十分に平均化されずに残った残留ノイズであると考えられる。
【0037】
また、これら不規則ノイズ及び長周期ノイズは、いずれも時間的に変動する性質を有していることから、例えば、試料の同じ位置を固体撮像素子15でn回撮像し、n枚の出力画像を用いて平均化処理をおこなうことによって、n-1/2に低減させることができる。例えば、試料の同じ位置を撮像した200枚の出力画像に対して平均化処理を行うことによって、上述した各ノイズを200-1/2、すなわち1/14に低減させることができる。したがって、上述したように6.4の標準偏差を有する素子ノイズを1/14に低減して0.45とすることができる。これにより、ノイズの影響を量子化ノイズレベル(1)以下に低減することができる。一方、出力画像に含まれるノイズ以外の信号成分は、規則性を有しているために平均化処理を行っても低減してしまうことがない。
【0038】
本発明に係る検査装置1のように、対物レンズ13の解像度等ではなく、ノイズによって測定限界が支配されている系では、このノイズが空間的に不規則なノイズであれば、ノイズパターンの有している規則性に着目して統計処理を行うことによって、ノイズレベルを低減することが可能となる。
【0039】
つぎに、図2に示した出力画像について、この画像の信号レベルを、記録トラック方向に沿って積分し、平均化処理を施して生成した平均化トラック横断信号を図6に示す。また、この平均化トラック横断信号に対して数値微分を行って生成した微分信号を図6上に重ねて示す。すなわち、図6において、平均化トラック横断信号は、画像信号の記録トラックを横断する方向の変化の平均を表し、微分信号はその微分値を示す。図6から明らかであるように、固体撮像素子15から出力された画像の情報が記録トラック方向に積分される過程で、不規則ノイズが平均化されて低減され、平均化トラック横断信号が良好な信号雑音比を示していることが分かる。
【0040】
微分信号のゼロクロス点は、平均化トラック横断信号のピーク位置を示している。したがって、検査装置1は、微分信号のゼロクロス点を検出することにより、試料であるディスク2の記録トラックのピーク位置を検出することができる。したがって、検査装置1は、微分信号に基づいて平均化トラック横断信号のピーク位置を検出し、トラックピッチのむらを検出することができる。
【0041】
具体的には、図7に示すように、平均化トラック横断信号のゼロクロス点を中心に、その前後の数画素分の平均化トラック横断信号を直線で近似し、得られた近似直線からゼロクロス点を求めればよい。ここで、このゼロクロス点近傍での平均化トラック横断信号に残存しているノイズの影響を評価するために、図7に示すデータについて、得られた直線からの標準偏差を計算すると、5.7であった。なお、図7では、平均化トラック横断信号の信号レベルを10倍にして示していることから、実際の標準偏差は0.57である。これは、上述した不規則ノイズの期待値である0.45にほぼ一致している。
【0042】
つぎに、この信号の標準偏差がゼロクロス点の検出精度に与える影響を検証するために、標準偏差5.7を微分信号の平均勾配値である8.054/画素で除すと、0.709画素となる。ここで、1画素が試料であるディスク2上での10nmに相当していることから、10nm以下の精度でトラックピッチを測定可能であることが分かる。
【0043】
また、図2に示す3つの記録トラックについて、それぞれ、記録トラックの中心位置と、この中心位置近傍での微分信号の平均勾配値と、近似直線からの標準偏差とを求めた結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
Figure 0004258058
【0045】
この表1の結果から、各記録トラック間のトラックピッチは、それぞれ60.892画素と59.679画素であり、両トラックピッチに約2%の誤差があることが分かる。一方、記録トラックの中心位置の測定誤差の推定量は、1%〜1.5%であることから、両トラックピッチ間の誤差である2%は有意であると云える。ちなみに、円盤状記録媒体の一種であるCD(Compact Disc)の規格で定められているトラックピッチの許容誤差は、3%である。
【0046】
ところで、上述した記録トラックの中心位置を検出する精度は、検出した平均化トラック横断信号の変化率にも依存している。この変化率は、平均化トラック横断信号のコントラストに影響を受けている。したがって、平均化トラック横断信号に基づいてピットのエッジ位置を検出する場合には、ピットのエッジ付近での平均化トラック横断信号の変化率が、記録トラックのピーク位置での変化率と比較して大きいことから、比較的簡単な平均化処理を施すだけでノイズを影響を排除することができる。
【0047】
つぎに、図2に示した出力画像について、図6及び図7で示すようにして求めた記録トラックの中心位置における、この画像の信号レベルを、記録トラック方向に沿って測定したトラック方向信号を図8に示す。また、図8には、図4と同様に、このトラック方向信号の5画素にわたる移動平均を重ねて示すとともに、このトラック方向信号の数値微分を行って生成した微分信号を重ねて示す。
【0048】
検査装置1は、この記録トラックの中心位置でのトラック方向信号に基づいて、図7に示した記録トラックの中心位置の検出と同様にして、微分信号のゼロクロス点を検出することによって、ピットのエッジ位置を検出することができる。
【0049】
また、図8に示す結果から、トラック方向信号は、その移動平均からの標準偏差が3.5であった。これは、上述した基準面位置でのトラック方向信号の不規則ノイズの標準偏差である5.0と比較してやや小さいことが分かる。一方、このトラック方向信号の記録トラック方向に沿っての信号レベルの変化は、画素あたり最大で16であった。したがって、トラック方向信号の不規則ノイズ示す標準偏差3.5を信号レベルの最大変化16で除した値は、0.23画素となる。このことから、ピットのエッジ位置を検出する際の誤差は、上述した記録トラックの中心位置を検出する際の誤差と比較して、およそ1/3であるといえある。すなわち、検査装置1は、5nm以下の精度でピットのエッジ位置を検出することができる。
【0050】
検出装置1は、このピットのエッジ位置の検出と同様にして、図2に示したような出力場像について、記録トラックを横断する方向に沿って測定したトラック横断信号を生成し、このトラック横断信号の微分信号のゼロクロス点を検出することによって、ピットの幅を検出することができる。
【0051】
以下では、上述の説明を整理して、検査装置1の処理動作を図9を参照しながら説明することとする。
【0052】
先ず、検査試料としてのディスク2を試料台3上に載置し、レーザ発振器4から出射したレーザ光を撮像部5によって、ディスク2の表面に照射する。そして、レーザ光がディスク2の表面に反射されて戻ってきた戻り光を、撮像部5の固体撮像素子15によって撮像し、出力画像を演算処理部6に伝送する。
【0053】
次に、ステップS20において、演算処理部6は、撮像部5から伝送された出力画像を取り込む。
【0054】
次に、ステップS21において、演算処理部6は、取り込んだ出力画像を解析して、この出力画像のフォーカスが適正となるように撮像部5に指示を出して、レーザ光の照射位置や焦点位置等を調整するとともに、試料台3を回転させる。こうしてディスク2上の所望の位置を、適正なフォーカスで再度撮像部5によって撮像する。これにより、演算処理部6は、適正な出力画像に基づいて、記録トラックの中心位置やピット形状を正確に検出することが可能となる。
【0055】
次に、ステップS22において、演算処理部6は、フォーカスが適正に調整された出力画像を、再度撮像部5から取り込む。
【0056】
次に、ステップS23において、演算処理部6は、出力画像の信号レベルを記録トラック方向に沿って積分し、平均化処理を施して平均化トラック横断信号を生成する。
【0057】
次に、ステップS24において、演算処理部6は、平均化トラック横断信号に対してゲーティングを行い、記録トラックのピーク位置近傍で、この平均化トラック横断信号を数値微分して生成した微分信号のゼロクロス点を抽出する。これにより、後のステップにおいて、ピーク位置とは無関係なゼロクロス点で誤った演算処理を行ってしまうことを防止することができる。
【0058】
次に、ステップS25において、ステップS24で抽出したゼロクロス点近傍で、微分信号を直線で近似する。
【0059】
次に、ステップS26において、ステップS25で近似した直線に基づいて、ゼロクロス点を検出し、記録トラックの中心位置を検出する。
【0060】
次に、ステップS27において、ステップS26で検出した記録トラックの中心位置で、出力画像の信号レベルを記録トラック方向に沿って測定したトラック方向信号を生成するとともに、このトラック方向信号の移動平均をとる。
【0061】
次に、ステップS28において、ディスク2の信号記録面の基準面位置で、同様にトラック方向信号を生成するとともに、そのトラック方向信号の移動平均をとり、基準面位置でのノイズを検出する。また、ステップS27で生成した記録トラックの中心位置でのトラック方向信号から、基準面位置で検出したノイズ量に基づいて、ノイズを除去する。
【0062】
次に、ステップS29において、ステップS27で生成したトラック方向信号を数値微分して生成した微分信号のゼロクロス点近傍で、この微分信号を直線で近似する。
【0063】
次に、ステップS30において、ステップS29で近似した直線に基づいて、ピットのエッジ位置を検出する。
【0064】
次に、ステップS31において、ステップS30で検出したエッジ位置間の距離を求め、ピットの長さを計算する。
【0065】
検査装置1においては、上述したように、固体撮像素子15からの出力画像に、素子ノイズが原因と思われる画素単位のノイズが生じてしまう。そのノイズの標準偏差は、信号記録面の基準面位置で5.0程度、記録トラック位置で3.5程度である。基準面位置でのノイズが大きいことは、測定試料となるディスク2の基準面での平面性の荒れによって影響を受けているためであると考えられる。
【0066】
また、固体撮像素子15の出力画像に含まれている、素子ノイズの標準偏差の2倍乃至3倍を超えるノイズは、スペックルノイズ又はディスク2上の点欠陥であると考えることができる。
【0067】
検査装置1では、例えば、回転拡散板10の回転速度を速くする、固体撮像素子15の露光時間を長くする、固体撮像素子15からの出力画像を多数用いて平均化処理を施す等の手段を組み合わせることによって、素子ノイズやスペックルノイズを十分に低減することができ、測定試料であるディスク2の欠陥識別能力を向上させることができる。
【0068】
また、検査装置1は、上述したピットのエッジ位置や長さの測定と同様にして、ピットの幅や側壁の勾配等を容易に測定することができる。
【0069】
さらに、検査装置1は、試料であるディスク2に対して、レーザ光を照射することによって信号記録面の表面形状を測定することができることから、ディスク2としては、例えば、ピットを有する光ディスクをはじめとする各種円盤状記録媒体の原盤や、ハードディスク等の磁気記録媒体等であってもよい。
【0070】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明に係る円盤状記録媒体の検査装置は、撮像手段の出力画像に含まれているノイズを効果的且つ高速に除去することができる。そのため、ノイズを除去した画像に基づいて、信号記録面の表面形状を高精度に測定することができる。また、本発明に係る円盤状記録媒体の検査装置は、照射手段及び撮像手段が、円盤状記録媒体に対して光を照射することによって信号記録面の表面形状を撮像することから、この円盤状記録媒体を非破壊で検査することができる。したがって、本発明に係る円盤状記録媒体の検査装置は、高密度化に対応して狭トラックピッチ化が図られた円盤状記録媒体に十分対応して高精度に検査することができるとともに、ターンアラウンド時間を短縮して、この円盤状記録媒体の製造工程に検査結果を有効にフィードバックすることができる。
【0071】
また、本発明に係る円盤状記録媒体の検査方法によれば、撮像ステップで得た出力画像に含まれているノイズを効果的且つ高速に除去することができる。そのため、ノイズを除去した画像に基づいて、信号記録面の表面形状を高精度に測定することができる。また、本発明に係る円盤状記録媒体の検査方法によれば、円盤状記録媒体に対して光を照射することによって信号記録面の表面形状を撮像することから、この円盤状記録媒体を非破壊で検査することができる。したがって、本発明に係る円盤状記録媒体の検査方法によれば、高密度化に対応して狭トラックピッチ化が図られた円盤状記録媒体に十分対応して高精度に検査することができるとともに、ターンアラウンド時間を短縮して、この円盤状記録媒体の製造工程に検査結果を有効にフィードバックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る検査装置を示す概略構成図である。
【図2】同検査装置の固体撮像素子から出力される出力画像の一例を示す図である。
【図3】同出力画像を演算処理して輪郭を明瞭にした輪郭抽出図である。
【図4】同出力画像の基準面位置における記録トラック方向の信号レベルを示す図である。
【図5】同出力画像に基づくトラック方向信号と、その移動平均との差分を測定した結果を示す図である。
【図6】同出力画像に基づく平均化トラック横断信号を示す図である。
【図7】同出力画像に基づく平均化トラック横断信号のゼロクロス点近傍を示す図である。
【図8】同出力画像の記録トラック中心位置におけるトラック方向信号を示す図である。
【図9】本発明に係る検査装置の処理動作を説明するために示すブロック図である。
【符号の説明】
1 検査装置、2 ディスク、4 レーザ発振器、5 撮像部、6 演算処理部、7 画像表示部、8 光ファイバ、10 回転拡散板、13 対物レンズ、15 固体撮像素子

Claims (9)

  1. 円盤状記録媒体の信号記録面における表面形状を検査する検査装置であって、
    上記信号記録面に対して遠紫外波長域の光を照射するとともに、この光が当該信号記録面に反射して戻ってきた戻り光を、上記遠紫外波長域の光を検出可能である固体撮像素子によって撮像し、光路中に、上記光の空間コヒーレンスを低減する回転拡散板を有する撮像手段と、
    上記撮像手段の出力画像を演算処理する演算手段とを備え、
    上記撮像手段は、上記演算手段の処理結果に基づいて、上記光の照射位置及び/又は焦点位置を調整し、
    上記演算手段は、上記撮像手段の出力画像に対して記録トラック方向に平均化処理を施して、記録トラックを横断する方向の平均信号レベルの変化を示す平均化トラック横断信号を生成するとともに、
    上記平均化トラック横断信号を数値微分して微分信号を生成し、
    上記微分信号のゼロクロス点に基づいて、上記信号記録面の記録トラック中心位置を検出し、上記信号記録面の表面形状を検査する円盤状記録媒体の検査装置。
  2. 上記撮像手段は、上記光を上記信号記録面に集光する集光手段として、合成石英によって形成された対物レンズを備えてい請求項1記載の円盤状記録媒体の検査装置。
  3. 上記撮像手段は、上記光の空間コヒーレンスを低減する空間コヒーレンス低減手段を備えてい請求項1記載の円盤状記録媒体の検査装置。
  4. 上記空間コヒーレンス低減手段は、光ファイバであ請求項記載の円盤状記録媒体の検査装置。
  5. 上記演算手段は、上記撮像手段の出力画像に基づいて、記録トラック方向の信号レベルの変化を示すトラック方向信号を生成するとともに、
    上記トラック方向信号を数値微分して微分信号を生成し、
    上記微分信号のゼロクロス点に基づいて、記録トラックに形成されたピットのエッジ位置を検出す請求項1記載の円盤状記録媒体の検査装置。
  6. 上記演算手段は、上記撮像手段の出力画像に基づいて、記録トラックを横断する方向の信号レベルの変化を示すトラック横断信号を生成するとともに、上記トラック横断信号を数値微分して微分信号を生成し、上記微分信号のゼロクロス点に基づいて、記録トラックに形成されたピットの幅を検出す請求項1記載の円盤状記録媒体の検査装置。
  7. 円盤状記録媒体の信号記録面の表面形状を検査する検査方法であって、
    上記信号記録面に対して所定の遠紫外波長域の光を上記光の空間コヒーレンスを低減する回転拡散板を通して照射して、この光が当該信号記録面に反射して戻ってきた戻り光を、上記遠紫外波長域の光を検出可能である固体撮像素子によって撮像する撮像ステップと、
    上記撮像ステップで得られた出力画像を演算処理する演算ステップとを有し、
    上記撮像ステップでは、上記演算ステップでの演算結果に基づいて、上記光の照射位置及び/又は焦点位置を調整し、
    上記演算ステップでは、上記撮像ステップでの出力画像に対して記録トラック方向に平均化処理を施し、記録トラックを横断する方向の平均信号レベルの変化を示す平均化トラック横断信号を生成するとともに、
    上記平均化トラック横断信号を数値微分して微分信号を生成し、
    上記微分信号のゼロクロス点に基づいて、上記信号記録面の記録トラック中心位置を検出し、上記信号記録面の表面形状を検査する円盤状記録媒体の検査方法。
  8. 上記演算ステップでは、上記撮像手段の出力画像に基づいて、記録トラック方向の信号レベルの変化を示すトラック方向信号を生成するとともに、上記トラック方向信号を数値微分して微分信号を生成し、上記微分信号のゼロクロス点に基づいて、記録トラックに形成されたピットのエッジ位置を検出す請求項記載の円盤状記録媒体の検査方法。
  9. 上記演算ステップでは、上記撮像手段の出力画像に基づいて、記録トラックを横断する方向の信号レベルの変化を示すトラック横断信号を生成するとともに、上記トラック横断信号を数値微分して微分信号を生成し、上記微分信号のゼロクロス点に基づいて記録トラックに形成されたピットの幅を検出す請求項記載の円盤状記録媒体の検査方法。
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