JP4257778B2 - 吸水性樹脂の製造装置および製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸水性樹脂の連続的製造装置に関するものである。詳しく述べると、吸水倍率が大きく、かつ可溶分の少ない吸水性樹脂を生産性よく製造する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自重の数十倍から数百倍の水を吸収する吸水性樹脂が開発され、生理用品や紙おむつ等の衛生材料分野をはじめとして農園芸用分野、鮮度保持等の食品分野、結露防止や保冷材等の産業分野等、吸水や保水を必要とする用途に種々の吸水性樹脂が使用されてきている。
【0003】
このような吸水性樹脂としては、例えば、デンプン−アクリルニトリルグラフト重合体の加水分解物(特許文献1、特公昭49−43395号)、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物(特許文献2、特開昭51−125468号)、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物(特許文献3、特開昭52−14689号)、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物(特許文献4、特公昭53−15959号)、またはこれらの架橋体、逆相懸濁重合によって得られた自己架橋型ポリアクリル酸ナトリウム(特許文献5、特開昭53−46389号)、ポリアクリル酸部分中和物架橋体(特許文献6、特開昭55−84304号)等が知られている。
【0004】
従来、吸水性樹脂を製造する方法としては、水溶液重合法などの技術が知られており、この例としては、特定容器内で親水性ビニル系単量体水溶液を断熱重合する方法(例えば、特許文献7、特開昭55−108407号公報等)、双腕ニーダー内で、攪拌により重合ゲルを砕断しながら重合する方法(例えば、特許文献8,特開昭57−34101号公報等)等を挙げることができる。
【0005】
また、液状反応成分の厚さを少なくとも1cmの層として可動性無端回転支持ベルト上に適用して重合させるものにおいて、該液状反応成分を該支持ベルトから連続的に形成される凹部に収容するとともに、該反応成分の重合中に該支持ベルトの凹部形状を延ばされた平坦なベルト形状に連続的に転化し、および生成したポリマーリボンゲルが該支持ベルトの曲げられた凹部形状を延ばされた平坦なベルト形状に転化する際側端部から該支持ベルトから形成された凹部の中心に向かって連続的に分離されることを特徴とする水溶性モノマーから重合体および共重合体を連続的に製造する方法および装置が提案されている(特許文献9,特開昭62−156102号公報)。
【0006】
しかしながら、このような装置を用いる場合には、凹部横断面が椀状形状となるために、供給される液状原料および生成する吸水性樹脂の断面形状も椀状形状となりその中央部と両端部とでは厚みが異なり、このため、例えば下面よりの冷却の速度が異なり均一な品質の吸水性樹脂は得られ難いという欠点があった。ベルト式連続重合器においては、ベルト上の堰が設置された範囲内で重合を開始し重合ゲルが確実に出来る様に反応速度を常に一定にコントロールする必要があり、万一、堰の設置された範囲内で重合ゲルが出来ないときはベルト上から液状原料の重合性混合物が漏れ出す欠点があった。ニーダーと解砕を組み合わせた装置は特許公報第3145461号で知られいるが、この公報では、多孔板は、孔径6.5〜18mmの範囲のものであることが必要であり、孔径が6.5mm未満であると、破砕条件が強すぎるため、押し出し機械壁面と含水ゲル状重合体との摩擦が大きく、生産性が悪いばかりか、重合体ゲル自身が摩擦熱や物理力(剪断力)などにより物性が低下すると記載されている。一方、孔径が18mmよりも大きいと、得られる粒子状重合体ゲルの粒度が揃わないものとなるばかりか、吸水倍率が高く、水可溶分の少ない粒子状重合体ゲルを得ることが困難になる。
【0007】
【特許文献1】
特公昭49−43395号
【特許文献2】
特開昭51−125468号
【特許文献3】
特開昭52−14689号
【特許文献4】
特公昭53−15959号
【特許文献5】
特開昭55−84304号
【特許文献6】
特開昭55−108407号
【特許文献7】
特開昭57−34101号
【特許文献8】
特開昭62−156102号
【特許文献9】
特許第3145461号
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、液状原料の重合性混合物が装置から漏れ出すことなく、重合ゲル化反応熱と解砕時の摩擦熱除去が出来、均一な形状で吸水倍率が大きく、かつ可溶分の少ない吸水性樹脂を得るための連続製造装置を提供することおよびそれを用いる吸水性樹脂の連続的製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記諸目的は、下記(1)〜(7)により達成される。
(1) 少なくとも、重合性混合物をニーダーおよび/またはポンプへ供給する供給装置と、該混合物を移送できる、25℃、21.6kgの荷重でオリフィス径2.09mmのMI計から押し出せる粘度内で重合ゲル化するニーダーおよび/またはポンプ、および該ニーダーおよび/またはポンプから移送された重合体ゲル中に残留する重合性混合物を加熱または冷却しながら重合ゲル化し、該重合体ゲルを排出する熱交換器から構成された吸水性樹脂連続製造装置。
(2) 重合体ゲルを熱交換機へ移送するギアポンプをニーダーおよび/またはポンプの後に設けた前記(1)記載の吸水性樹脂連続製造装置。
(3) ニーダーおよび/またはポンプはその内部の重合性混合物および/または重合体ゲルの滞留時間が15分以下で、且つ、温度を10〜90℃に加熱または冷却出来る前記(1)または(2)に記載の吸水性樹脂連続製造装置。
(4) 熱交換器は多管式チューブ熱交換器または二重管式熱交換器であり、冷却水の入り口温度が0〜100℃、チューブ内の重合体ゲルの滞留時間が5分〜3時間である前記(1)〜(3)いずれか1項に記載の吸水性樹脂連続製造装置。
(5) ポンプがスクリューポンプ、ロータリーポンプ、またはベーンポンプである前記(1)〜(4)いずれか1項に記載の吸水性樹脂連続製造装置。
(6) 熱交換器の排出側に乾燥機が接続された前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の吸水性樹脂連続製造装置。
(7) 前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の装置を用いる吸水性樹脂の連続的製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
つぎに、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図1、図2は、本発明による吸水性樹脂の連続製造装置の説明図である。吸水性樹脂の連続製造装置は、液状原料の重合性混合物供給装置(1)を備えたレベル計付き(レベル計は図示せず)重合性混合物受け入れ口(3)とVVVF(インバーター)モーターまたは、変速機付きモーターまたは変速機付きVVVFモーター(2)によって駆動される混合機能と送液機能を備えた一軸およびまたは複数の軸をもつニーダーおよび/またはポンプ(4)からなる。
【0011】
ニーダーおよび/またはポンプに供給された液状原料の重合性混合物は、ニーダーおよび/またはポンプ内で重合ゲル化反応が開始する。重合ゲル化反応開始直後の重合体ゲルは、ニーダーおよび/またはポンプ(4)でギヤポンプ(5)へ送られ、ギヤポンプで重合ゲル移送二重管式短管または短管(6)を経由して、多管式チューブ熱交換器または二重管式熱交換器(9)へ送られる。この多管式チューブ熱交換器または二重管式熱交換器内で重合体ゲルは、シェル側に流される温水または冷却水で加熱または冷却され、温度を一定に保ちながら未反応単量体を反応させると同時に重合ゲル化反応を進める。温水や冷却水の代わりに加熱、冷却溶媒を用いても良い。
【0012】
多管式チューブ熱交換器内にチューブへ重合体ゲルを均一分散させるための分散板(11)を設けることによって、重合体ゲルを各チューブに均一に分散させてもよい。含水率が20〜80重量%で重合率が60%以上まで高められた重合体ゲルは、多管式チューブ熱交換器または二重管式熱交換器(9)のチューブの形状で熱交換器出口から排出されるとすぐに解砕機モーター(12)によって回転する解砕機回転歯(13)で解砕される。解砕された重合体ゲルは、解砕機の不活性ガス供給口(14)から供給された不活性ガスによって表面を乾かされることによって重合体ゲル同士の付着性が低下される。解砕された重合体ゲルは重合体ゲル排出口(10)から排出されベルト式乾燥や流動層乾燥機などに送られ乾燥される。供給される不活性ガスは、水分を含まない不活性ガスが好ましいが、加熱された不活性ガスを用いることはさらに好ましい。
【0013】
多管式チューブ熱交換器または二重管式熱交換器(9)の出口に平板の多孔板や半球状の多孔板を設けてもよい。この多孔板の好ましい孔径は3〜30mmである。孔径3〜30mmを有する多孔板出口から排出された含水率が20〜80重量%、重合率が60%以上の重合体ゲルは、解砕することなくベルト式乾燥機や振動式乾燥機、竪型乾燥機等に送られ乾燥され、重合体ゲルの含水率が20重量%以下の重合体ゲルとなる。
【0014】
ニーダーおよび/またはポンプに供給された液状原料の重合性混合物は、ニーダーおよび/またはポンプ内で重合ゲル化反応が開始し重合体ゲルとなる。重合体ゲルのニーダーおよび/またはポンプ内での滞留時間が長いと、重合体ゲルはこんにゃく状またはゴム状重合体ゲルとなり流動しなくなる。ニーダーおよび/またはポンプ内での滞留時間が短いと、重合ゲル化反応が進行しない。また、ニーダーおよび/またはポンプのみでは、重合体ゲル中にショートパスした重合ゲル化反応が開始していない重合性混合物が混入し吸水性能が低い、可溶分の多い吸水性樹脂しか得られない。
【0015】
重合体ゲル中のショートパスした重合性混合物の重合ゲル化反応を起こさせ、重合ゲル化反応を実質的に完結するため反応ゾーンが必要である。本装置は、反応を実質的に完結するための反応ゾーンとして、ニーダーおよび/またはポンプの出口に熱交換器を設け、その中でショートパスした単量体原料の重合ゲル化反応を起こさせ重合ゲル化反応を完結すると同時に、重合ゲル化反応熱を除去することが出来る。
【0016】
重合ゲル化反応の反応熱を効率的に除去し、吸水倍率が大きく、可溶分の少ない吸水性樹脂は得るためには、ニーダーおよび/またはポンプ内の液状原料の重合性混合物または重合体ゲルの滞留時間は15分以下が好ましい。より好ましくは、10分以下に、さらに、好ましくは5分以下である。単量体原料の重合ゲル化反応を開始させ重合ゲル化反応をコントロールして重合体ゲルの粘度をニーダーおよび/またはポンプで移送できる粘度範囲内とする必要がある。ニーダーおよび/またはポンプ内の重合性混合物または重合体ゲルの滞留時間が15分以上となると重合ゲル化反応の反応熱を効率的に除去することが出来ず吸水倍率が大きく、可溶分の少ない吸水性樹脂は得られない。さらに、重合ゲル化反応で得られた重合体ゲルは流動しにくいものとなる。流動しにくい重合体ゲルは熱交換機内での重合体ゲルの配管抵抗が大きくなり、最終的にはニーダーおよび/またはポンプでは送れなくなる。
また、滞留時間は、少なくとも0.25分以上とすることが好ましい。
【0017】
ニーダーおよび/またはポンプ内の液状原料の重合性混合物および/または重合体ゲル温度は、90℃以下とすることが好ましい。より好ましくは10〜90℃、さらに好ましくは30〜80℃である。ニーダーおよび/またはポンプのジャケットに温水または冷却水等を流し10〜90℃以下に加熱または冷却することによって、重合性混合物の重合ゲル化反応を促進や重合ゲル化反応熱が除去される。重合体ゲルの温度が10℃以下の場合、液状原料の重合性混合物の重合ゲル化反応が進みにくくなる。また、重合体ゲルの温度が90℃以上では、重合体ゲルから水が蒸発するため重合体ゲルが発泡し、ニーダーおよび/またはポンプでの移送がしにくくなる。
こうして、ニーダーおよび/またはポンプ内での重合率を好ましくは50%以上とすることができる。
【0018】
ニーダーおよび/またはポンプ内の重合体ゲルの粘性は粘度計(16)または、圧力計(17)を設け測定することが出来る。圧力計で粘度を確認する時は、別途、粘度と圧力の相関を調べ測定圧力より粘度を確認する。簡易な粘度測定法としては、MI計が使用できる。25℃、オリフィス径2.09mmで荷重を換え重合体ゲルの流動性を測定することが出来る。ニーダー、ポンプ内の重合体ゲルの粘性は21.6Kgの荷重で2.09mmのオリフィスから押し出せる重合体ゲルとすることが好ましい。さらに、好ましくは、10.5Kg荷重で2.09mmのオリフィスから押し出せる重合体で、最も好ましいのは、2.16Kgの荷重で押し出せる重合体である。粘度換算は、ポリカーボネート等のポリマーの粘度と流動性の関係を求めておきそのデータと対比して行うことが出来る。
【0019】
ニーダーのスクリューは、スクリューのみ、混練りとスクリュー機能の組み合わせ、さらにバックフロー防止パドルを途中に入れたものが使用できる。内部のセルフクリーニング性が有ることは好ましい。好ましいニーダーは、二軸のスクリューを有しセルフクリーニング機能を持つものである。スクリューの溝とピッチは設計時の粘度により選択する。
ニーダーおよび/またはポンプの移送配管はジャケットを有し加熱または冷却出来るものが好ましい。
【0020】
ニーダーおよび/またはポンプと熱交換器の間にはギヤポンプを取り付けてもよい。重合体ゲル入口粘度が高すぎると、ギヤポンプ内で重合体ゲルの流動性が悪くなり軸受けが焼き付く場合があるので、ギヤポンプを使用するときは、手前に、スクリューポンプ、ロータリーポンプまたはベーンポンプを設け、ポンプの使用粘度範囲に合ったギヤポンプを選定することが好ましい。
ポンプ出口には二軸のスクリューを有し重合体ゲルの長期滞留を防止出来るセルフクリーニング機能を有すニーダーと熱交換器設けた組み合わせが好ましい。
【0021】
ニーダーの重合体ゲル出口は、どの方向でもかまわない例えば、横向きまたは下向きである。工場の休転や機器補修時の為に、予備の排出口を設けても良い。多管式チューブ熱交換器または二重管式熱交換器の長さは好ましくは10m以下、さらに、好ましくは7m以下、最も好ましくは、4m以下である。長くなると重合体ゲル自身の配管抵抗が大きくなるので好ましくない。また、その長さは、少なくとも0.1m以上とするのが好ましい。これより短いと十分な冷却または加熱効果が得られ難い。
【0022】
多管式熱交換器のチューブまたは二重管式熱交換器の内径は、好ましくは200mm以下、さらに好ましくは、100mm以下、最も好ましくは、50mm以下である。
内径が、200mm以上になると重合体ゲルの冷却または加熱効率が悪くなるので好ましくない。
また、内径は少なくとも5mm以上とするのが好ましく、これより細いと、圧損が大きすぎて重合体ゲルを押し出しにくくなる。
【0023】
本発明において、前記多管式チューブ熱交換器または二重管式熱交換機(9)の出口に設けてもよい多孔板の開孔率は、25%以上であることが好ましい。開孔率が25%未満では、含水ゲル状重合体が押し出されにくくなり生産性が低下する。また押し出されにくくなる。さらに、好ましい開孔率は30〜90%である。なおここで、開孔率とは多孔板の総面積に対する孔の合計面積の比率をいう。
【0024】
多管式チューブ熱交換器または二重管式熱交換器の排出口には、排出口に実質的に接触して作動するカッター(解砕器)を備えていることが好ましい。本発明において含水ゲル状重合体は、多管式チューブ熱交換器のチューブ出口または二重管式熱交換器出口に取り付けられた多孔板より押し出すことで解砕されるが、より小さいサイズで粒径の揃った粒子状重合体ゲルを所望する場合には、カッターを設けることが好ましい。
【0025】
含水量の多い重合体ゲルの解砕は解砕された重合体ゲル同士の付着性を低下させるためには熱交換器出口を窒素で置換することが好ましい。
重合体ゲルの乾燥は、100〜130℃で0.5時間以上乾燥を行った後、0.5時間以上130〜160℃で乾燥することが好ましい。重合体ゲルの乾燥を最初から160℃以上で行うことは乾燥した重合体の表面が風船をふくらましたような薄膜状態になり、乾燥後、重合体を粉砕した時嵩密度の低い物しか得られないので好ましくない。
【0026】
本発明の重合体ゲルの乾燥は、従来公知の方法を採用することができる。例えば、箱型乾燥機、通気箱型乾燥機、通気バンド乾燥機、通気竪型乾燥機あるいは回転乾燥機等が挙げられる。
本発明において、粉粒状の吸水性樹脂を得るにあたり、従来公知の粉砕装置を採用することができる。例えば、高速回転式粉砕機(ピンミル、ハンマミル等)、スクリューミル(コーヒーミル)、ロールミル等が挙げられる。
【0027】
なお、本発明の製造装置によって得られる吸水性樹脂に従来公知の表面処理装置を用いて表面処理を実施してもよい。例えば、吸水性樹脂と吸水性樹脂の有する官能基と反応し得る少なくとも2個の官能基を有する架橋剤とを混合、反応させ吸水性樹脂の表面近傍の架橋密度を高くすることにより吸水性樹脂の改質が行なわれる。
【0028】
本発明の装置により重合出来る液状原料の重合性混合物としては、吸水性樹脂を生成するものであればいずれも使用できる。すなわち、吸水性樹脂を形成する液状の重合性混合物であれば制限はない。一例を挙げると、例えば、アクリル酸アンモニウムおよびまたは、アクリル酸とアクリル酸ナトリウムのようなアクリル酸塩類との混合物に少量の架橋剤および重合開始剤を配合したもの等がある。
【0029】
つぎに、本発明による連続製造装置により吸水性樹脂を製造する方法の例を説明する。
ニーダーおよび/またはポンプに供給された液状原料の重合性混合物は、ニーダーおよび/またはポンプ内で重合ゲル化反応が開始する。重合ゲル化反応開始直後の重合体ゲルは、ニーダーおよび/またはポンプ(4)でギヤポンプ(5)へ送られ、ギヤポンプで重合ゲル移送二重管式短管または短管(6)を経由して、多管式チューブ熱交換器または二重管式熱交換器(9)へ送られる。この多管式チューブ熱交換器または二重管式熱交換器内で重合体ゲルは、シェル側に流される温水または冷却水で加熱または冷却され、温度を一定に保ちながら未反応単量体を反応させると同時に重合ゲル化反応を進める。温水や冷却水の代わりに加熱、冷却溶媒を用いても良い。
【0030】
多管式チューブ熱交換器内にチューブへ重合体ゲルを均一分散させるための分散板(11)を設けることによって、重合体ゲルを各チューブに均一に分散させてもよい。含水率が20〜80重量%で重合率が60%以上まで、好ましくは重合が実質的に完結された重合体ゲルは、多管式チューブ熱交換器または二重管式熱交換器(9)のチューブの形状で熱交換器出口から排出されるとすぐに解砕機モーター(12)によって回転する解砕機回転歯(13)で解砕される。解砕された重合体ゲルは、解砕機の不活性ガス供給口(13)から供給された不活性ガスによって表面を乾かされることによって重合体ゲル同士の付着性が低下される。解砕された重合体ゲルは重合体ゲル排出口(10)から排出されベルト式乾燥や流動層乾燥機などに送られ乾燥される。供給される不活性ガスは、水分を含まない不活性ガスが好ましいが、加熱された不活性ガスを用いることはさらに好ましい。
【0031】
多管式チューブ熱交換器または二重管式熱交換器(9)のチューブの出口に平板の多孔板や半球状の多孔板を設けるときの多孔板の好ましい孔径は3〜30mmである。孔径3〜30mmを有する多孔板出口から排出された含水率が20〜80重量%、重合率が60%以上の重合体ゲルは、解砕することなくベルト式乾燥機や振動式乾燥機、竪型乾燥機等に送られ乾燥され、重合体ゲルの含水率が20重量%以下の重合体ゲルとなる。
【0032】
本発明の製造方法において、粉粒状の吸水性樹脂を得るにあたり、従来公知の粉砕方法を採用することができる。例えば、高速回転式粉砕機(ピンミル、ハンマミル等)、スクリューミル(コーヒーミル)、ロールミル等の装置を用いる方法が挙げられる。
なお、本発明の製造方法によって得られる吸水性樹脂に従来公知の表面処理方法を実施してもよい。例えば、吸水性樹脂と吸水性樹脂の有する官能基と反応し得る少なくとも2個の官能基を有する架橋剤とを混合、反応させ吸水性樹脂の表面近傍の架橋密度を高くすることにより吸水性樹脂の改質を行う方法が挙げられる。
【0033】
また本発明の製造方法によって得られる吸水性樹脂あるいは上記の表面処理を施した吸水性樹脂に従来公知の造粒方法を実施してもよい。
実施例中で「部」とは特にことわりがない限り「重量部」を表すものとする。[吸水倍率]吸水性樹脂(A)0.2gを不織布製のテイーバック式袋(50*70mm)に均一に入れ0.9重量%塩化ナトリウム水溶液中に浸積した。60分後にテイーバック式袋を引き上げ、一定時間水切りを行った後、ティーバック式袋の重量(WW)を測定した。同様の操作を吸水性樹脂を用いずに行ない、そのときの袋の重量B(g)を測定した。そして、得られた重量から次式にしたがって、吸水性樹脂の吸収倍率を算出した。
吸水倍率(g/g)=(WW(g)−B(g)−A(g))/A(g)
【0034】
[可溶分]吸水性樹脂C(g)(約0.5g)を1000gの脱イオン水中に分散し、20時間攪拌した後、濾紙で濾過した。次に、得られた濾液50gを100mlビーカーにとり、該濾液に0.05N−水酸化ナトリウム水溶液2ml、N/100−メチルグリコールキトサン水溶液5ml、および0.2%トルイジンブルー水溶液3滴を加えた。次いで、上記ビーカーの溶液を、N/400ポリビニル硫酸カリウム水溶液を用いてコロイド滴定し、溶液の色が青色から赤紫色に変化した時点を滴定の終点として滴定量D(ml)を求めた。また、濾液50gに代えて脱イオン水50gを用いて同様の操作を行ない、ブランクとして滴定量E(ml)を求めた。そして、これら滴定量と吸水性樹脂を構成する単量体の平均分子量Fとから、次式にしたがって可溶分(重量%)量を算出した。
可溶分(重量%)=(E(ml)−D(ml))*0.005/C(g)*F
【0035】
[残存単量体]脱イオン水1000gに吸水性樹脂0.5gを加え、攪拌下で2時間抽出した後、膨潤ゲル化した吸水性樹脂を濾紙を用いて濾別し、濾液中の残存単量体を液体クロマトグラフィーで分析した。一方、既知濃度の単量体標準溶液を同様に分析して得た検量線を外部標準とし、濾液の希釈倍率を考慮して、吸水性樹脂中の残存単量体量を求めた。
【0036】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明の範囲がこれらの例により限定されるものではない。
【実施例1】
ニーダーは栗本鐵工所のジャケット付きKRCニーダーS1KRC、内容量120mlを使用し内部のパドルはすべてスクリューとした。ニーダーの重合体ゲル排出口は、横向きで先端に、内径19mm、長さ2mの二重管式熱交換機を取り付けたものを使用した。二重管のジャケットには、75℃の温水を通水した。アクリル酸10.70部、37%アクリル酸ナトリウム水溶液70.07部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量478)8部、および脱イオン水19.15部からなる水溶液を調製し、窒素ガスを導入し脱気した。上記水溶液965g/分と窒素ガスを導入し脱気し脱気した0.982%V−50(和光純薬工業製アゾ系重合開始剤)水溶液9g/分、0.982%過硫酸ナトリウム水溶液9g/分、および0.088%L−アスコルビン酸水溶液9g/分をラインミキシングした後、さらに窒素ガスを導入し脱気した0.0707%過酸化水素水を9g/分でラインミキシングし窒素置換されたニーダーに供給した。ニーダーのジャケットには40℃の温水を通水した。ニーダーの回転数を150rpmにした。約1分後に重合が開始し、反応系温度は40℃であった。そのまま、重合性混合物の供給を続けると約41分後に二重管出口から重合体ゲルが出始めた。ニーダーでの滞留時間は1〜7.2分、また熱交換器での平均滞留時間は34分であった。得られた重合体ゲルを解砕し140℃で120分間熱風乾燥機で乾燥後、粉砕器で粉砕し、粉状(パウダー状)の吸水性樹脂(1)を得た。
吸水性樹脂(1)は、吸収倍率65倍、可溶分12%および残存単量体470ppmであった。
【0037】
【実施例2】
実施例1と同一条件で、二重管出口に、4.5mm径の穴の空いた半円球状の多孔板を取付て重合を行った。二重管出口の重合体ゲルは、解砕せずに、130℃で1Hr、150℃で1Hr熱風乾燥機で乾燥した。乾燥後、粉砕器で粉砕し粉状の吸水性樹脂(2)を得た。
吸水性樹脂(2)は、吸収倍率65倍、可溶分12%および残存単量体470ppmであった。
【0038】
【実施例3】
[原料1の調整]98%アクリル酸36.28部、25%アンモニア水20.14部を30℃以上にならないよう冷却しながら反応させアクリル酸アンモニウム水溶液を調合した。この溶液に、脱イオン水を使用して調合した18.9%カセイソーダ水溶液43.55部を30℃以上にならないように冷却しながら加えた。次ぎに、30℃、10torrの条件で液中のアンモニアを除去した。液中のアンモニアを除去後、窒素ガスを導入した。さらに、上記水溶液に窒素ガスを導入しながらN,N‘−ビスメチレンアクリルアミド0.0228部、アスコルビン酸0.00041部を加えた。
【0039】
[原料2の調整]過硫酸ナトリウム0.6157部を脱イオン水約99.38部で溶解して水溶液を調製し、窒素ガスを導入し脱気した。
[重合、乾燥、粉砕]スクリューポンプの後に、栗本鐵工所のジャケット付きKRCニーダーS1KRC、内容量120mlを使用し内部のパドルはすべてスクリューにした。ニーダーの重合体ゲル排出口は、横向きで先端に、内径10mm、長さ1.5m、チューブの本数は、5本の多管チューブ式熱交換器を取り付けた。スクリューポンプ、ニーダーのジャケットには、それぞれ30℃、40℃の温水を流した。熱交換器の冷却水として70℃の温水を通水した。窒素置換を十分に行った後、原料1を686g/Hr、原料2を84.6g/Hrでスクリューポンプ、ニーダー、熱交換器からなる吸水性樹脂連続重合装置へ供給した。重合が1分後に開始し、反応系温度は30℃であった。滞留時間は、ポンプが2分、ニーダーが9分、熱交換器が45分であった。なお、その他接続配管の容量の影響で約1時間後に、多管式チューブ熱交換器の出口から重合体ゲルが出て来た。得られた重合体ゲルを解砕し140℃で120分間熱風乾燥機で乾燥後、粉砕器で粉砕し、粉状(パウダー状)の吸水性樹脂(3)を得た。
吸水性樹脂(3)は、吸収倍率66倍、可溶分11%および残存単量体470ppmであった。
【0040】
【実施例4】
実施例3のニーダーをギヤポンプに変えて、実験を行ない吸水性樹脂(4)を得た。
吸水性樹脂(4)は、吸収倍率66倍、可溶分12%および残存単量体480ppmであった。なお、滞留時間は、ポンプ2分、ギアポンプ1分、熱交換器45分であった。
【0041】
【比較例】
実施例1の条件で、熱交換機を使用せず、ニーダーのみで実験を行い吸水性樹脂(5)を得た。
吸水性樹脂(5)は、吸収倍率40倍、可溶分15%および残存単量体800ppmであった。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の吸水性樹脂連続装置によれば、低粘度の重合性混合物を、連続的にゲル状重合物にし解砕または解砕することなく、安定して製造することができ、しかも製造された吸水性樹脂はその吸水性に優れ、可溶分が少なくまた残存単量体も少ないという吸水性樹脂としての性能も優れている。
【0043】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の吸水性樹脂の連続的製造装置の実施例の説明図。
【図2】同上別の実施例の説明図。
【0044】
【符号の説明】
図1
1→単量体原料供給装置
2→VVVFモーターまたは、変速機付きモーターまたは変速機付きVVVFモーター
3→レベル計付き(レベル計は省略)単量体受け入れ口(ジャケット付き)
4→一軸または複数の軸をもつニーダー(ジャケット付き)
5→ギヤポンプ(装置によっては設置しなくても良い)
6→重合体ゲル移送短管(装置よっては設置しなくても良い)
温水または冷却水または加熱溶媒入出口は省略
7→温水または冷却水およびまたは加熱溶媒入口
8→温水または冷却水およびまたは加熱溶媒出口
9→多管式チューブ式熱交換器または二重管式熱交換器
10→重合体ゲル排出口
11→重合体ゲル分散板
(装置によっては設置しなくても良い)
12→解砕機モーター
(VVVFモーター、変速機の付いたVVVFモーター、変速機のついたモーター)
13→解砕機回転歯
14→不活性ガス供給口
15→解砕機カバー
16→粘度計
17,18→圧力計
図2
1→単量体原料供給装置
2→VVVFモーターまたは、変速機付きモーターまたは変速機付きVVVFモーター
3→レベル計付き(レベル計は省略)単量体受け入れ口
4→スクリューポンプまたはロータリーポンプまたはベーンポンプ
5→ギヤポンプ(装置よっては設置しなくても良い)または、ニーダー
6→重合ゲル移送二重管式短管または短管(装置よっては設置しなくても良い)
温水または冷却水およびまたは加熱、冷却液入出口は省略
7→温水または冷却水およびまたは加熱溶媒入口
8→温水または冷却水およびまたは加熱溶媒出口
9→多管式チューブ式熱交換器または二重管
10→重合体ゲル排出口
11→重合体ゲル分散板
(装置よっては設置しなくても良い)
12→解砕機モーター
(VVVFモーター、変速機の付いたVVVFモーター、変速機のついたモーター)
13→解砕機回転歯
14→不活性ガスおよびまたは加熱不活性ガス導入口
15→解砕機カバー
16→粘度計
17,18→圧力計
Claims (7)
- 少なくとも、重合性混合物をニーダーおよび/またはポンプへ供給する供給装置と、該混合物を移送できる、25℃、21.6kgの荷重でオリフィス径2.09mmのMI計から押し出せる粘度内で重合ゲル化するニーダーおよび/またはポンプ、および該ニーダーおよび/またはポンプから移送された重合体ゲル中に残留する重合性混合物を加熱または冷却しながら重合ゲル化し、該重合体ゲルを排出する熱交換器から構成された吸水性樹脂連続製造装置。
- 重合体ゲルを熱交換機へ移送するギアポンプをニーダーおよび/またはポンプの後に設けた請求項1記載の吸水性樹脂連続製造装置。
- ニーダーおよび/またはポンプはその内部の重合性混合物および/または重合体ゲルの滞留時間が15分以下で、且つ、温度を10〜90℃に加熱または冷却出来る請求項1または2に記載の吸水性樹脂連続製造装置。
- 熱交換器は多管式チューブ熱交換器または二重管式熱交換器であり、冷却水の入り口温度が0〜100℃、チューブ内の重合体ゲルの滞留時間が5分〜3時間である請求項1〜3いずれか1項に記載の吸水性樹脂連続製造装置。
- ポンプがスクリューポンプ、ロータリーポンプ、またはベーンポンプである請求項1〜4いずれか1項に記載の吸水性樹脂連続製造装置。
- 熱交換器の排出側に乾燥機が接続された請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸水性樹脂連続製造装置。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置を用いる吸水性樹脂の連続的製造方法。
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