JP4257552B2 - 吸気ダクト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンへ空気を供給する通路としての吸気ダクトに関し、詳しくは吸気時の騒音が低減された吸気ダクトに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車エンジンの吸気系では、吸気時にエアクリーナホースあるいは吸気ダクトなどの吸気ダクトにおいて騒音が発生するという問題がある。この吸気騒音は、特にエンジンの低速回転時に耳障りである。そこで従来より、図8に示すように、吸気ダクト 100にサイドブランチ 101及び/又はレゾネータ 102を設け、ヘルムホルツの共鳴理論などに基づいて計算される特定周波数の騒音を低減することが行われている。
【0003】
ところがサイドブランチ 101は、長いものでは約30cmの長さにもなり、レゾネータ 102の容積は大きいものでは14リットルもの大きさとなる。そのためこれらの吸音装置のエンジンルーム内に占めるスペースが大きくなり、他の部品の搭載の自由度が低くなるという不具合が生じる。
そこで実開昭64-22866号公報には、吸気ダクト内にオリフィスを配置し、オリフィスの位置で吸気を絞ることで吸気騒音を低減することが開示されている。このように吸気通路を絞ることにより、音響質量が大きくなり、低音域の吸気音を低減することができる。
【0004】
また実開平3-43576号公報には、エアクリーナケースに並列に接続された2本の吸気ダクトと、2本の吸気ダクトからそれぞれ分岐した分岐管と、各分岐管が共に連結された共通のレゾネータを有し、一方の吸気ダクトにおける分岐管の接続部の上流側に運転状態に応じて選択的に開く開閉弁を備えた吸気音低減装置が開示されている。
【0005】
この実開平3-43576号公報に開示の装置によれば、エンジン回転数に応じて開閉弁を制御して吸気ダクトを1本又は2本に切り替えることにより、エンジン回転数に応じて吸入空気量を制御し、かつ吸気騒音を低減することができる。
ところが上記した吸気通路を絞る方法では、エンジンの高速回転時に吸入空気量が不足して出力が低下するという不具合がある。
【0006】
また実開平3-43576号公報に開示の装置では、開閉弁を駆動するために電子制御回路、電磁開閉弁、あるいはダイヤフラムアクチュエータなどを用いているので、コスト面から好ましいものではない。また電子制御回路や電磁開閉弁などが必要であるため、複雑な装置となり高価となるばかりかメンテナンス工数も多大である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは、吸気ダクトの材質と発生する騒音との関係を鋭意研究した結果、所定の通気性をもつ通気性材料から管壁を形成することにより、定在波が生じにくく、吸気騒音が著しく低減されることを見出した。そして単純で安価な構成でエンジンの低速回転時の吸気騒音を低減することを目的とし、鋭意研究の結果、熱可塑性樹脂繊維を少なくとも含む不織布から圧縮成形により形成された吸気ダクトを開発した。
【0008】
管壁を不織布成形体から構成することで吸気音が低減される理由の詳細は不明であるが、以下の三つの理由が考えられ、これらの相乗効果によって吸気騒音が低減されると考えられる。
(1)不織布は弾性体であるので制振作用を有し、管壁の振動による音波の発生が抑制される。
(2)不織布の繊維間の多数の隙間に入り込んだ音波は、隙間の粘性と熱伝導の作用によりそのエネルギーが弱まり、また音圧の変動に伴い繊維自身が共振して音エネルギーが減衰する。
(3)管壁の少なくとも一部がある程度の通気性を有することにより、音波の一部がその管壁を通過することで定在波の発生が抑制される。
【0009】
ところで筒状体を圧縮成形で製造する場合には、半割形状などの分割体をそれぞれ圧縮成形で形成し、その後接合して一体とされるのが通常である。また分割体の接合強度を増すために、分割体には両側にフランジ部を形成しそのフランジ部どうしを接合することで接合面積を大きくするのが一般的である。不織布から吸気ダクトを形成する場合も同様の方法が採用され、分割体の両側のフランジ部どうしを接合して一体化するのが好ましい。
【0010】
ところがこのような方法で製造された吸気ダクトでは、フランジ部どうしの接合部分は一般部分に比べて約2倍の厚さとなるために剛性が高くなる。そのため使用時の振動吸収が困難となり、耐久性や振動騒音に不具合が生じることが考えられる。
またフランジ部以外の部分では、剛性が不足して形状保持性が低く、大きな負圧や外力が作用した場合に座屈したり、相手部材への組付け時に位置決め精度が低いという不具合がある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、熱可塑性樹脂バインダを含む不織布から圧縮成形により形成された吸気ダクトにおいて、目的に応じて剛性を自在に調節できるようにすることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する請求項1に記載の吸気ダクトの特徴は、自動車の外気取り入れ口とエンジンのインテークマニホールドとの間に配置される吸気ダクトにおいて、熱可塑性樹脂バインダを含む不織布から圧縮成形により形成され、圧縮率が大きく線状に延びる硬質部と圧縮率の小さな軟質部とをもつことにある。
【0013】
また請求項2に記載の吸気ダクトの特徴は、自動車の外気取り入れ口とエンジンのインテークマニホールドとの間に配置される吸気ダクトにおいて、熱可塑性樹脂バインダを含む不織布から圧縮成形により形成され、圧縮率が大きく相手部材と係合可能な係合部をもつ硬質部と圧縮率の小さな軟質部とをもつことにある。
そして請求項3に記載の吸気ダクトの特徴は、自動車の外気取り入れ口とエンジンのインテークマニホールドとの間に配置される吸気ダクトにおいて、熱可塑性樹脂バインダを含む不織布から圧縮成形により形成された断面略半円形状をなし両側にフランジ部をもつ複数の分割体のフランジ部どうしが接合されて筒状とされ、フランジ部の少なくとも一部に変形可能な波形状の撓み部をもつことにある。
【0014】
【発明の実施の形態】
吸気時に生じる騒音は、主として吸気ダクトの内部で発生する音波の定在波に起因し、定在波の周波数は吸気ダクト長、吸気ダクト径及び吸気ダクトの材質などによって決まる。そこで本発明では、不織布よりなる成形体から吸気ダクトの管壁の少なくとも一部を形成している。
【0015】
不織布成形体の通気性が高すぎると、吸気ダクト内の音波が管壁を透過して外部に漏れるため、騒音が増大するという不具合がある。そこで成形体の通気性の程度は、圧力 343Paのときの空気の通気量が1m2 当たり 170m3/h以下とすることが望ましい。単位面積当たり 170m3/h以下という限定は、もちろん圧力 343Paの空気の場合の限定であり、吸気の圧力が異なれば通気量の限定数値も異なることはいうまでもない。
【0016】
不織布成形体の1m2 当たりの通気量が 170m3/hを超えると、吸気ダクトの管壁を通過する音波が多くなって透過音が大きくなる。また通気量がゼロであると、 200Hz以下の低周波数域の騒音の抑制作用が小さくなるが、従来の吸気ダクトに比べれば騒音は小さい。通気量がゼロの不織布成形体とするには、不織布成形体の外側表面に膜状の表皮層を形成すればよい。内側表面に表皮層を形成しても通気量をゼロとすることはできるが、上記した(2)の理由による騒音の低減が困難となるので好ましくない。なお不織布成形体の1m2 当たりの通気量は、圧力 343Paのときにゼロ以上で85m3/h未満であることが特に好ましい。
【0017】
本発明の吸気ダクトに用いられる不織布は、熱可塑性樹脂バインダを含むものであり、熱可塑性ではない繊維に熱可塑性樹脂製バインダを含浸させた不織布、あるいは熱可塑性樹脂繊維をバインダとして含む不織布などを用いることができる。なかでも熱可塑性樹脂繊維を含む不織布を用いることが望ましい。熱可塑性樹脂繊維製の不織布を用いれば、複雑な形状の吸気ダクトでも容易に賦形して成形することができる。この場合、熱可塑性樹脂繊維は不織布の一部を構成していてもよいし、不織布全体が熱可塑性樹脂繊維から構成されていてもよい。
【0018】
吸気ダクト全体を不織布よりなる成形体から形成する場合、分割体の両側のフランジ部どうしを接合して一体化するのが好ましいが、フランジ部どうしの接合部分は一般部分に比べて約2倍の厚さとなるために剛性が高くなり、上記したような不具合が発生する。
そこで請求項1に記載の吸気ダクトでは、圧縮率の大きな硬質部と圧縮率の小さな軟質部をもつ。このように構成したことにより、軟質部は可撓性に富むため変形しやすく、外力に応じて追従し易い。したがって使用時の振動を軟質部によって吸収することができ、耐久性が向上するとともに振動による騒音の発生を抑制することができる。また軟質部と硬質部の位置や大きさを選択することで、種々の特性を付与することができる。
【0019】
なお硬質部と軟質部との圧縮率の差は少しでもあれば特に制限がなく、用途や使用条件などに応じて適宜設定することができる。また硬質部は線状に延びた構成としている。このようにしたことで硬質部が補強リブと同様に作用し、形状保持性が向上する。例えば硬質部を吸気ダクトの円周方向に形成すれば、過大な負圧あるいは外力が作用しても座屈が防止される。また硬質部を吸気ダクトの延びる方向に形成すれば、形状保持性が向上し相手材への組付け精度が向上する。
【0020】
また請求項2に記載したように、硬質部に相手部材と係合可能な係合部をもつように形成することも好ましい。係合部としては、例えば係合爪、取付フランジなどが例示されるが、このように硬質部から係合部を形成することにより別部品が不要となり、部品数の低減により工数を小さくできるとともにコストを安価とすることができる。またリサイクル時の分別が容易となり、リサイクル性が向上する。なお係合部を圧縮率の大きな硬質部に形成することで係合部の強度は十分に確保できる。また、係合部の圧縮率のみをさらに高くすることも好ましい。
【0021】
そして請求項3に記載の吸気ダクトでは、フランジ部の少なくとも一部に変形可能な波形状の撓み部をもつ。したがって振動時には撓み部が変形して振動が吸収されるため、耐久性が向上するとともに振動による騒音の発生を抑制することができる。
この撓み部の形状としては、山部と谷部とが交互に連続した波形状が代表的に例示される。なお、フランジ部のみでなく、筒状の一般部にも撓み部を設けることも好ましい。これにより一層変形し易くなるので、制振性が一層向上する。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
図1に本実施例の吸気ダクトの斜視図を示す。この吸気ダクトは、半割形状に分割された第1分割体1及び第2分割体2とから形成されている。第1分割体1及び第2分割体2は、それぞれ両側にフランジ部10,20をもち、フランジ部10とフランジ部20が対向して接合されることで一体化されている。そして第1分割体1及び第2分割体2には、それぞれ一部に他の部位より膨出し圧縮率が小さな軟質部11,21が形成され、軟質部11,21に沿うフランジ部10,20には波形状の撓み部12,22が形成されている。以下、この吸気ダクトの製法を説明して、構成の詳細な説明に代える。
【0023】
先ずPET繊維から形成され、厚さ約35mmの不織布シートを用意した。この不織布シートには、低融点PET繊維よりなるバインダ繊維が30体積%含まれ、目付量は1400g/m2である。次に、この不織布シートをプレス成形型に配置し、バインダ繊維の融点に加熱しながら、一般部が3mmの厚さとなるように熱プレス成形して、第1分割体1及び第2分割体2をそれぞれ形成した。
【0024】
このとき、プレス成形型の所定部分の間隔を他より拡げることで厚さ5mmの軟質部11,21を形成し、所定部分の型面を所定の波形状とすることで撓み部12,22を形成した。
次に第1分割体1及び第2分割体2を、フランジ部10とフランジ部20が対向するように合わせ、超音波溶着により一体的に接合して本実施例の吸気ダクト(管長: 700mm、内径:66mm)を得た。
【0025】
この吸気ダクトでは、軟質部11,21は圧縮率が他より小さいために軟質であり、かつ撓み部12,22を有しているので、軟質部11,21及び撓み部12,22の存在する部分の可撓性が高い。したがって使用時に振動が加わっても、軟質部11,21及び撓み部12,22の存在する部分が変形して振動が吸収されるため、耐久性が高く騒音の発生も抑制される。
【0026】
(実施例2)
図2に示す本実施例の吸気ダクトは、軟質部11,21の代わりにその部分にも撓み部13,23を形成したこと以外は実施例1と同様の構成である。この吸気ダクトでは、撓み部13,23が軟質部11,21と同様に作用するので、実施例1の吸気ダクトと同様の作用効果が奏される。
【0027】
(実施例3)
図3及び図4に示す本実施例の吸気ダクトは、実施例1と同様の不織布シートを用いて形成されている。この吸気ダクトは第1分割体3及び第2分割体4からなり、実施例1と同様にそれぞれフランジ部30,40で接合されている。そしてフランジ部30,40と平行にそれぞれ厚さ 1.5mmの凹状の幹部31,41が形成され、さらに幹部31,41と直交し円周方向に延びる厚さ 1.5mmの枝部32,42が形成されている。幹部31,41と枝部32,42を除く部分は、実施例1の軟質部11,21を除く部分と同じ厚さ3mmに形成され、幹部31,41と枝部32,42は圧縮率が高く特に硬質となっている。
【0028】
したがって本実施例の吸気ダクトによれば、硬質の幹部31,41及びフランジ部30,40により曲がり形状の保持性に優れ、変形による組付工数の増大が防止されている。また硬質の枝部32,42により内径の保持性に優れ、過大な負圧や外力が作用しても座屈するのが防止されるため、常に安定した空気量を確保することができる。
【0029】
(実施例4)
図5に示す本実施例の吸気ダクトは、実施例1と同様の不織布を用いて形成されている。この吸気ダクトは第1分割体5及び第2分割体6からなり、実施例1と同様にそれぞれフランジ部50,60で接合されている。そして第1分割体5及び第2分割体6の端部にはそれぞれ硬質の係合爪51,61が形成され、反対側の端部のフランジ部50,60には凸部52,62が形成されている。凸部52及び凸部62は互いに積層されて一体化され、相手部材に取り付けるためのブラケットとして機能する。
【0030】
係合爪51,61は、図6に示す断面形状をなし、相手部材7の係合孔70と係合するように構成されている。また係合爪51,61の厚さは 1.5mmと一般部の厚さ3mmに比べて圧縮率が高く、硬質であるため弾性変形により係合孔70と係合して元の形状に復帰しているので、係合後の抜けが防止されている。
なお係合爪51,61は、先ずその断面形状を有する半円筒部として第1分割体5及び第2分割体6と一体的に成形され、それを切断することで所定幅となるように形成されたものである。
【0031】
また凸部52,62の厚さは、それぞれ 1.5mmと一般部の厚さ3mmに比べて圧縮率が高く、十分な強度が確保されている。なお、図7に示すように凸部52,62の表面にリブ53,63を形成することも好ましい。これにより凸部52,62の強度が一層向上し、ブラケットとして一層十分な強度が確保される。
したがって本実施例の吸気ダクトは、相手部材への係合部及びブラケットをもつため別部品を不要として相手部材に組み付けることができ、コストが安価となる。またリサイクル性にも優れている。
【0032】
【発明の効果】
すなわち請求項1に記載の吸気ダクトによれば、軟質部と硬質部の位置や大きさを変更することで剛性を自在に調節でき、目的に応じた特性をもつ吸気ダクトとすることができる。
また請求項4に記載の吸気ダクトによれば、撓み部の位置や大きさを変更することで剛性を自在に調節でき、目的に応じた特性をもつ吸気ダクトとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の吸気ダクトの斜視図である。
【図2】本発明の第2の実施例の吸気ダクトの斜視図である。
【図3】本発明の第3の実施例の吸気ダクトの斜視図である。
【図4】本発明の第3の実施例の吸気ダクトの断面図である。
【図5】本発明の第4の実施例の吸気ダクトの斜視図である。
【図6】本発明の第4の実施例の吸気ダクトを相手部材に組み付けた状態で示す要部断面図である。
【図7】本発明の第4の実施例の吸気ダクトの他の態様を示し、凸部を一部断面で示す斜視図である。
【図8】従来の吸気ダクトの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
1:第1分割体 2:第2分割体 10,20:フランジ部
11,21:軟質部 12,22:撓み部
Claims (3)
- 自動車の外気取り入れ口とエンジンのインテークマニホールドとの間に配置される吸気ダクトにおいて、熱可塑性樹脂バインダを含む不織布から圧縮成形により形成され、圧縮率が大きく線状に延びる硬質部と圧縮率の小さな軟質部とをもつことを特徴とする吸気ダクト。
- 自動車の外気取り入れ口とエンジンのインテークマニホールドとの間に配置される吸気ダクトにおいて、熱可塑性樹脂バインダを含む不織布から圧縮成形により形成され、圧縮率が大きく相手部材と係合可能な係合部をもつ硬質部と圧縮率の小さな軟質部とをもつことを特徴とする吸気ダクト。
- 自動車の外気取り入れ口とエンジンのインテークマニホールドとの間に配置される吸気ダクトにおいて、熱可塑性樹脂バインダを含む不織布から圧縮成形により形成された断面略半円形状をなし両側にフランジ部をもつ複数の分割体の該フランジ部どうしが接合されて筒状とされ、該フランジ部の少なくとも一部に変形可能な波形状の撓み部をもつことを特徴とする吸気ダクト。
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