JP4257498B2 - 含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルの製造方法 - Google Patents

含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
化学式:CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)nCF2CF2SO2F(式中、nは0又は1である)で表される含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルは、イオン交換膜材料などの工業原料として有用な化合物である。
【0003】
該含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテル等のスルホニルビニルエーテルの製造方法としては、例えば、ヘキサフルオロプロピレンオキシドをFCOCF2SO2Fに付加させた後、得られた酸フロリド誘導体を熱分解する方法が知られている(下記特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを2分子以上付加したものからは、CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)nCF2CF2SO2Fで表されるスルホビニルエーテルを得ることは可能であるが、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを1分子付加したものからは、下記式
【0004】
【化1】
Figure 0004257498
【0005】
で表される環化体が主生成物として生じ、化学式CF2=CFOCF2CF2SO2Fで表される含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルをほとんど得ることができない。
【0006】
また、FCOCF(CF3)OCF2CF2SO2Fを原料として用い、その環化体
【0007】
【化2】
Figure 0004257498
【0008】
を形成した後、CH3ONaを用いて開環させてCF2=CFOCF2CF2SO3Naとし、その後、末端のSO3Na基を塩素化してCF2=CFOCF2CF2SO2Clとし、更に、フッ素化してSO2F基に変換する方法も知られている(下記特許文献2参照)。ここに記載されているフッ素化工程は、溶媒としてスルホランを用い、フッ素化剤としてNaFを用いる方法であるが、溶媒として高融点、高沸点を有するスルホランを用いるため、反応中に分解して生じたCF2=CFOCF2CF2SO3Naなどの有効成分や、未反応原料のNaF、副生成物であるNaClとの分離が困難であり、スルホランと固体の有効成分を回収する工程が非常に複雑となる。このため、この方法は、工業的実施は困難であり、産業廃棄物が多量に生じるという問題もある。
【0009】
その他に、含フッ素スルホン酸クロリドのフッ素化方法としては、パーフルオロアルキル基を有する化合物であるC8F17SO2Clを原料とする場合には、KFを用いてフッ素化することによりC8F17SO2Fが得られることが報告されている(下記非特許文献1参照)。この方法では、高収率でフッ素化物を得るためには、スルホラン、ホルムアミドなどを溶媒として用いることが必要であり、単純な反応系が期待できる水を溶媒とした場合には、100℃でフッ素化しても、C8F17SO2Fの収率は25%程度に過ぎず、工業的実施化には不適切である。
【0010】
【特許文献1】
英国特許1,034,197号
【0011】
【特許文献2】
米国特許第3,560,568号
【0012】
【非特許文献1】
S.Benefice-Malouet, H. Blancou, R. Teissedre and A. Commeyras, J. Fluorine Chem. 31 (1986) 319-332
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルを、工業的に有利な方法で安価に、しかも簡便に収率良く製造できる方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記した問題点に鑑みて鋭意研究を重ねてきた。その結果、興味深いことに、CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)nCF2CF2SO2Cl(式中、nは0又は1である)で表される含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルを出発原料とする場合には、水を溶媒としてフッ素化剤と反応させることにより、含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルを高収率で得ることができ、簡便な製造方法によって、低コストでしかも収率良く含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルを製造することが可能となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、下記の含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルの製造方法を提供するものである。
1. 水を溶媒として用い、化学式:CF=CFOCCFSO Clで表される含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルを、化学式:MF(式中、Mは、アルカリ金属である。)で表されるフッ素化剤と反応させることを特徴とする、化学式:CF=CFOCCFSO Fで表される含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルの製造方法。
2. フッ素化剤が、上記化学式:MFにおいて、MがKの化合物及びMがNaの化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種である上記項1に記載の製造方法。
3. 上記項1又は2の方法によって含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルを製造した後、得られた水溶液層から化学式:CF=CFOCCFSOM(式中、Mはアルカリ金属である)で表されるスルホン酸塩を回収し、これを塩素化して化学式:CF=CFOCCFSO Clで表される含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルに変換し、原料として再利用する工程を含む、上記項1又は2に記載の製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルの製造方法は、公知物質であるCF2=CFO(CF2CF(CF3)O)nCF2CF2SO2Cl(式中、nは0又は1である)で表される含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルを原料として用い、これを水溶媒中でフッ素化剤と反応させて、CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)nCF2CF2SO2F(式中、nは上記に同じ)で表される含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルとする方法である。
【0017】
原料として用いる化学式:CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)nCF2CF2SO2Cl(式中、nは上記に同じ)で表される含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルの内でn=0の化合物は、例えば米国特許第3,560,568号公報に記載の方法により、公知物質のFCOCF(CF3)OCF2CF2SO2Fを原料として用い、その環化体を形成した後、CH3ONaを用いて開環させてCF2=CFOCF2CF2SO3Naとし、その後、末端のSO3Na基を塩素化することによって得ることができる。この方法で得られる含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルは、単離、精製したものを使用してもよく、或いは、上記反応で発生させた粗反応混合物をそのまま使用してもよい。
【0018】
本発明方法では、溶媒として水を用いることが必要である。水を溶媒として用いて、上記した含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルをフッ素化剤と反応させることによって、高い転化率で、選択性良く目的とする含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルを得ることができる。
【0019】
水の使用量については、特に限定的ではなく、フッ素化剤を均一に溶解乃至分散できる量であればよい。通常、含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテル100重量部に対して、10〜500重量部程度とすればよい。
【0020】
フッ素化剤としては、化学式:MF・(HF)(式中、Mは、アルカリ金属であり、mは0〜5である。)で表される化合物を用いることができる。フッ素化剤としては、上記化学式において、MがKの化合物又はMがNaの化合物であるアルカリ金属フッ化物、酸性フッ化アルカリ金属等が好ましい。フッ素化剤は一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0021】
フッ素化剤の使用量は、通常、含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテル1モルに対して0.5〜10モル程度とすれば良く、1〜5モル程度とすることが好ましい。
【0022】
本発明の製造方法では、更に、必要に応じて、その他の添加剤を加えることができる。この様な添加剤としては、反応に関与しない水溶性の有機溶媒、例えば、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等や相関移動触媒、例えば、C6H5CH2N(CH3)3・Clのような四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩等、包接分子、例えば、18−クラウン−6のような環状エーテル等、を用いることができる。これらの添加剤を加えることによって、反応速度を向上させることが可能である。
【0023】
添加剤の使用量は、水性有機溶媒については、原料とする含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテル100重量部に対して、1〜50重量部程度とすることが好ましい。
【0024】
また、相間移動触媒については、原料とする含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテル100重量部に対して、0.1〜10重量部程度とすることが好ましい。
【0025】
本発明の製造方法では、水溶媒中で上記した原料とフッ素化剤を反応させれば良い。反応条件の一例としては、反応温度10〜200℃程度、好ましくは15〜100℃程度とすればよい。反応圧力については、減圧、大気圧、加圧のいずれでもよいが、大気圧とすることが好ましい。反応時間は、通常、0.5〜24時間程度である。
【0026】
以上の方法によって、化学式:CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)nCF2CF2SO2F(式中、nは上記に同じ)で表される含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルを得ることができる。
【0027】
得られた粗化合物は、二層に分液する。下層は、上記化学式で表される含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルとなり、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどの公知の方法で精製できる。
【0028】
この様にして得られる含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルは、燃料電池電解質ポリマー用のモノマー成分等として有用な物質である。
【0029】
また、本発明方法によって得られる二層に分液した溶液の内で、上層は、上記化学式で表される含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルが加水分解されて得られるスルホン酸塩(CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)nCF2CF2SO3M(式中、nは0又は1であり、Mはアルカリ金属である))やMF、MClなどを含む水溶液となる。この様な上層溶液から該スルホン酸塩と、H2O、MF及びMClとを分離し、得られたスルホン酸塩を公知の方法で塩素化することによって、本発明方法の原料である化学式:CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)nCF2CF2SO2Cl(式中、nは上記に同じ)で表される含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルとして再利用することができる。
【0030】
上層からスルホン酸塩(CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)nCF2CF2SO3M)を分離する方法としては、公知の方法を適宜適用すれば良く、例えば、上層溶液中に存在する固体をろ過する方法、上層溶液を限外ろ過する方法や、上層溶液を乾固後、有機溶媒に溶解させ該スルホン酸塩を抽出する方法などを採用できる。
【0031】
該スルホン酸塩(CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)nCF2CF2SO3M)を塩素化する方法としては、例えば、塩素化剤としてPCl5を用いる方法などを挙げることができる。
【0032】
この方法の一例を記載すると、塩素化剤であるPCl5の仕込量は、原料であるスルホン酸塩(CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)nCF2CF2SO3M)に対して、1〜10倍モル程度とすることができる。反応圧力は大気圧、減圧、加圧のいずれでもよい。反応温度は0〜200℃程度が好ましく、反応を加速させるために、反応の進行とともに徐々に加熱していってもよい。生成したCF2=CFO(CF2CF(CF3)O)nCF2CF2SO2Cl(式中、nは上記に同じ)で表される含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルの分離方法は、反応をさせながら該含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルを含む溜出物を蒸留しながら抜出す方法が好ましいが、反応終了後に生成した含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルを公知の方法、例えば蒸留、抽出、ろ過などで分離する方法でもよい。
【0033】
また、前述した米国特許第3,560,568号公報に記載の方法によって得られる含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテル(CF2=CFOCF2CF2SO2Cl)を本発明方法の原料とする場合には、該米国特許に記載された製造方法の途中工程において、開環体から得られるCF2=CFOCF2CF2SO3Na、NaFなどを含む混合物中に、上記したスルホン酸塩(CF2=CFOCF2CF2SO3M)を含む上層溶液を精製することなくそのまま添加し、その後、該米国特許の方法に従って、塩素化反応を行っても良い。この様な再利用方法は、本発明方法によって得られる上層溶液を精製することなく、そのまま再利用することが可能となる点で有利である。
【0034】
【発明の効果】
本発明方法によれば、取り扱いの容易な水を溶媒として用いて、煩雑な操作を要することなく工業的に有利な方法により、目的とする含フッ素フルオロスルホニルエーテルを高収率で製造することができる。
【0035】
また、本発明方法は、得られる生成物の内で、有用な副反応生成物を容易に再利用できる点においても、非常に工業的に有利な方法である。
【0036】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0037】
実施例1
25mlの3つ口フラスコに撹拌子、温度計差込管、蛇管式冷却管を取り付け、水5.0g、KF 4.2g、及びCF2=CFOCF2CF2SO2Cl 10.5gを仕込んだ。撹拌しながら反応器を加熱し、95℃で還流させた。反応中に白色固体が発生した。2時間反応させると還流温度は81℃へ変化した。反応後、水を加え白色固体を溶解させ、二層からなる反応溶液を得た。生成物を二層に液液分離し、得られた有機層をガスクロマトグラフィー内部標準法で定量したところ、CF2=CFOCF2CF2SO2Cl転化率79%、選択率92%でCF2=CFOCF2CF2SO2Fが生成していることがわかった。
【0038】
また、得られた水層を19F NMR内部標準法で定量したところ、KF、KClの他にCF2=CFOCF2CF2SO3Kが選択率3%で、CF3CHFOCF2CF2SO3Kが選択率2%で得られたことが確認できた。CF2=CFOCF2CF2SO2Fの分析結果を以下に示す。
19F NMR (CCl4, CFCl3) δ 45.36 (-SO2 F), -84.04 (-OCF 2-), -112.38 (-CF 2SO2F-), -120.61 (CF 1 F2=CF-), -135.49 (CF1 F 2 =CF-), -135.49 (CF1F2=CF-)
参考例1
5リットルの4つ口フラスコに撹拌機、温度計差込み管、5段オールダショーを介して接続された蒸留装置を取りつけ、スルホラン1.86kg、NaF 1.33kg、及びCF2=CFOCF2CF2SO2Cl 3.26kgを仕込んだ。撹拌しながら反応器を加熱し、内温87℃,蒸留装置頭頂部温度76℃から溜出物を取り始め、頭頂部温度85℃までの溜出物を集めた。得られた無色透明液体の溜出物は純度96.2%のCF2=CFOCF2CF2SO2Fで収量は2.8kg(収率88%)であった。

Claims (3)

  1. 水を溶媒として用い、化学式:CF=CFOCCFSO Clで表される含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルを、化学式:MF(式中、Mは、アルカリ金属である。)で表されるフッ素化剤と反応させることを特徴とする、化学式:CF=CFOCCFSO Fで表される含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルの製造方法。
  2. フッ素化剤が、上記化学式:MFにおいて、MがKの化合物及びMがNaの化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項1に記載の製造方法。
  3. 請求項1又は2の方法によって含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルを製造した後、得られた水溶液層から化学式:CF=CFOCCFSOM(式中、Mはアルカリ金属である)で表されるスルホン酸塩を回収し、これを塩素化して化学式:CF=CFOCCFSO Clで表される含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルに変換し、原料として再利用する工程を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
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