JP4256009B2 - 組立てマンホール構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地盤沈下、地震等による地盤の変位によるマンホールの破損、及びそれに伴って生じる地下水や土砂のマンホール内への侵入を防ぐ、組立てマンホールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
組立てマンホールは、図7に示すものが知られている。図7は、かかる組立てマンホールの縦断面図である。この組立てマンホール24は、管取付壁25と直壁26と斜壁27とが縦方向に継ぎ合わされて形成されている。管取付壁25と直壁26、直壁26と斜壁27との各継目28,29は、エポキシ樹脂等の接着剤により接ぎ合わされ、一体化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、かかる組立てマンホールの接合部28,29が破壊され易く、特に、地震等による地盤の変位が大きくなると、接合部28,29にズレが生じ、土砂や地下水等がマンホール24内に侵入することを解明した。
【0004】
本発明は、耐震性に優れた組立てマンホールを得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数の筒状壁材を具える組立てマンホール構造であって、縦方向に継ぎ合わされる複数の筒状壁材と、前記各筒状壁材の継目に設けられる弾性体と、止水材とを備え、前記各筒状壁材の継目のそれぞれの対向面が凸部及び凹部の少なくとも一方を有しており、前記各対向面が前記凸部及び前記凹部を介して相互に嵌合しており、前記弾性体が、弾性体本体と、前記弾性体本体から張り出している一対の鍔部とを有し、前記鍔部が蛇腹部を有しており、前記弾性体本体が前記継目の外周側で前記各対向面に圧着しており、前記各鍔部が前記止水材を介して前記筒状壁材の外周面に締め付けバンドによって圧着されており、前記継目が止水されている、組立てマンホール構造に係るものである。
【0006】
本発明者は、組立てマンホールの接合部が破壊されないよう、種々の接合手段を検討した。その結果、本発明者は、組立てマンホールの各壁材の継目をエポキシ系接着剤で接着した場合、剛性の高い接合部が形成され、却って、接合部の破壊を招くことを見出した。
【0007】
つまり、かかる剛性の高い接合部は、強度限界以内であれば、組立てマンホールを一体化し、変位荷重を受け止めるが、接着強度以上の大きな外力が加わった時は、接合部の強度がコンクリート製の壁材に比べて相対的に弱くなり、接着面が破壊され、ズレが発生して止水できなくなり、土砂や地下水がマンホール内に侵入することになる。
【0008】
かかる知見の下、鋭意検討した結果、本発明者は、縦方向に継ぎ合わされる複数の筒状壁材と、これらの筒状壁材の継目に設けられている弾性体と、止水材とから得られる所定の組立てマンホール構造が、地盤の変位に対して極めて柔軟に対応し、止水性を保ち得ることを突き止め、本発明を完成させた。
【0009】
本発明の組立てマンホール構造では、各筒状壁材の対向面が凸部及び凹部の少なくとも一方を有しており、各筒状壁材の対向面が凸部及び凹部を介して相互に嵌合しており、弾性体が、弾性体本体と、弾性体本体から張り出している一対の鍔部とからなり、継目の外周側で、弾性体本体が各対向面に圧着しており、各鍔部が、止水材を介して、筒状壁材の外周面に圧着しており、継目が止水されている。
【0010】
本発明では、地震等の地盤の変位に対して、筒状壁材の対向面の嵌合、及び弾性体本体と鍔部とを備える弾性体によって、組立てマンホールの止水性を保持する。
【0011】
本発明にかかる筒状壁材は、対向面でかみ合い、嵌合しているため、組立てマンホールに剪断応力が加わっても、各筒状壁材が互いに逆方向に変位することなく、各筒状壁材の横ずれが防止され、接合部の破壊を抑制することができる。
【0012】
また、本発明にかかる弾性体は、継ぎ合わされた筒状壁材が屈曲して、筒状壁材の継目に離れが生じた場合、弾性によって伸び、筒状壁材の外周面に圧着された鍔部によって、組立てマンホール構造の止水性を保持する。さらに、かかる弾性体は、継ぎ合わされた筒状壁材が屈曲して、筒状壁材の継目に縮みが生じた場合、継目の外周側に設けられる弾性体本体によって、筒状壁材を支持し、筒状壁材の対向面の破壊を防止する。
【0013】
このように、本発明にかかる弾性体は、小さな地盤の変位にあっては、弾性体本体と鍔部との両方によって継目を止水し、大きな地盤の変位にあっては、より一層鍔部が柔軟に変形し、各筒状壁材の変位に追従することによって、より一層効果的に、継目を止水することができる。
【0014】
本発明の組立てマンホール構造によれば、地盤の変位に対し、筒状壁材の対向面の横ずれが抑制され、弾性体が、三次元的に柔軟に変形し、各筒状壁材の三次元的な変位に追従することで、筒状壁材の対向面が破壊されるのを防止し、十分な止水性を保持する。
【0015】
【発明の実施の形態】
図面を参照して、本発明をより一層詳細に説明する。図1は、本発明の一参考例の組立てマンホール構造の斜視図である。図2は、図1の組立てマンホール構造の部分縦断面図である。図3は、本発明の例の組立てマンホール構造の部分縦断面図である。
【0016】
本発明では、図1及び図2に示すような、複数の筒状壁材1,2が縦方向に継ぎ合わされ、組立てマンホール構造3が形成される。このマンホール構造3は、筒状壁材1,2と、筒状壁材1,2の継目4に設けられている弾性体5と、止水材6a,6bとからなる。
【0017】
筒状壁材1の対向面1aは、凸部1bを有しており、筒状壁材2の対向面2aは、凹部2bを有している。各対向面1a,2aは、凸部1b及び凹部2bを介して相互に嵌合している。
【0018】
弾性体5は、弾性体本体5aと、弾性体本体5aから張り出している一対の鍔部5b,5cとからなる。弾性体本体5aは、継目4の外周側で、対向面1a,2aのそれぞれに圧着している。
【0019】
鍔部5bは、止水材6aを介して、筒状壁材1の外周面に圧着しており、鍔部5cは、止水材6bを介して、筒状壁材2の外周面に圧着しており、継目4が止水されている。
【0020】
図1及び図2に示すように、本発明では、組立てマンホール構造は、継目が凹凸のかみ合い構造となっており、弾性体の弾性体本体が筒状壁材の対向面の外周側に圧着しており、鍔部が止水材を介して筒状壁材の外周面に圧着している。かかる組立てマンホール構造では、マンホールに剪断の変位が加わっても、筒状壁材の接続部の継目に、横ずれ変位が発生するのを防ぐことができ、筒状壁材の対向面を破壊から保護できると同時に、弾性体が、その三次元的な変形によって、筒状壁材の離れや捩れに追従し、継目を十分に止水することができる。
【0021】
本発明にかかる筒状壁材は、組み合わされてマンホールの側壁を構成するものである。かかる筒状壁材は、コンクリート等の種々の材質から形成することができる。
【0022】
本発明では、かかる筒状壁材として、予め筒状に形成された壁材を用いることができる。かかる壁材は、斜壁、直壁、管取付壁等の所定の形状のものを、土中で、所望の形状に積み重ねることによって、組立てマンホールを形成することができる。
【0023】
また、かかる壁材は、土中で、下から順に、コンクリート等を打設することで得ることができる。この場合、各壁材の継目には、本発明にかかる帯状の弾性体を設ける。
【0024】
本発明にかかる壁材の凸部又は凹部は、特に限定されることなく、種々の形状又は数で形成することができる。かかる壁材の凸部及び凹部は、各壁材の対向面で互いに嵌合し、壁材の継目の横ずれを効果的に防止できるよう、複数の凸部及び凹部が互いに嵌合するように形成されていてもよい。また、かかる凸部又は凹部を芯材等を用いて強化することもできる。
【0025】
本発明にかかる弾性体は、各筒状壁材の継目の外周部を取り巻いて止水できるように、帯状や環状の形状を有することができる。かかる弾性体は、圧着された状態で組立てマンホール構造を止水することができ、地震等の地盤の大きな変位に追従できれば、特に、形状、材質等が制限されない。
【0026】
本発明にかかる止水材は、止水性を発揮する種々の材質からなるものを用いることができる。かかる止水材としては、ブチル粘着材を用いるのが好ましい。かかるブチル粘着材は、コンクリートとの接着性に優れ、コンクリート製の筒状壁材と帯状弾性体の鍔部との間で、良好な圧着状態を保持することができるからである。
【0027】
また、止水材として、水膨張性粘着材を用いることができる。かかる水膨張性粘着材は、水を吸収することで膨張し、筒状壁材と鍔部との間を十分に止水することができるからである。
【0028】
本発明では、図3に示すような帯状弾性体を用いて、組立てマンホール構造を形成することができる。組立てマンホール構造7は、図2に示す組立てマンホール構造3と同様に、対向面1a,2aに凸部1b、凹2bを有する筒状壁材1,2を備えている。
【0029】
図3に示す組立てマンホール構造7では、筒状壁材1,2の継目4に、帯状の弾性体8が設けられている。この弾性体8は、弾性体本体8aと、弾性体本体8aから張り出している一対の鍔部8b,8cとからなる。鍔部8b,8cは、蛇腹部9a,9bを有している。
【0030】
帯状弾性体8は、図2に示す弾性体5と同様に、弾性体本体8aが、継目4の外周側で、対向面1a,2aのそれぞれに圧着しており、鍔部8b,8cが、止水材6a,6bを介し、筒状壁材1,2の外周面に圧着しており、継目4が止水されている。
【0031】
本発明にかかる蛇腹部は、地震等の地盤の大きな変位に、より一層柔軟に追従できる鍔部を形成させる。かかる蛇腹部は、鍔部の変位追従を行ない易くすることで、さらに大きな地盤の変位でも、継目の止水を確実に行なうことができる。かかる蛇腹部の形状は、特に制限されるものでなく、種々の伸縮自在な形状とすることができる。
【0032】
また、本発明では、図1〜図3に示すように、筒状壁材の対向面には、シール材10を用いることができる。かかるシール材は、筒状壁材の嵌合面を補強し、筒状壁材の横ずれを抑制し、組立てマンホール構造の止水性を高めるのに有効である。かかるシール材は、種々の材質からなるものを用いることができ、接着性や止水性が高く、望ましくは、強度の高いものが好ましい。
【0033】
かかるシール材は、筒状壁材同士の接合と止水の効果を持つが、筒状壁材に大きな変位が生じ、ずれが生じた場合には破壊される。その場合、本発明にかかる弾性体が三次元的に伸縮し、組立てマンホール構造の止水効果を保持する。
【0034】
さらに、本発明では、図1〜図3に示すように、鍔部5b,5c,8b,8cと筒状壁材1,2とを止水材6a,6bを介して圧着する際に、締め付けバンド11a,11bを用いることができる。締め付けバンド11a,11bは、鍔部5b,5c,8b,8cを、止水材6a,6bを介して、筒状壁材1,2に確実に圧着し、組立てマンホール構造に、より一層確実な止水性を与えることができる。
【0035】
【実施例】
図面を参照して、本発明を実施例に基づいて説明する。
図4は、本発明の一例の組立てマンホール構造の製造直後の状態を示す部分縦断面図である。図5は、マンホールと管とを接続する継ぎ手構造の部分縦断面図である。図6は、図4の組立てマンホール構造が変位を受けた状態を示す縦断面図である。
【0036】
(組立てマンホール構造の製造)
この例では、図4に示す組立てマンホール構造を製造した。この組立てマンホール構造12には、斜壁としての筒状壁材13と、管取付壁としての筒状壁材14を用いた。筒状壁材13は、対向面13aに1つの凸部13bを備え、筒状壁材14は、対向面14aに凸部13bと勘合する1つの凹部14bと凸部14cとを備えている。
【0037】
この組立てマンホール構造12では、筒状壁材13,14の継目4に、図3に示すようにして、帯状の弾性体8を、継目4を取り囲むようにして設けた。
【0038】
鍔部8b,8cと筒状壁材1,2との間には、ブチル粘着材からなる止水材を設け、鍔部8b,8cをそれぞれ、締め付けバンド11a,11bを用いて筒状壁材13,14の外周面に圧着させた。なお、この例では、図3に示すようなシール材10は、使用しなかった。
【0039】
また、この組立てマンホール構造では、図5に示すマンホールと管の継ぎ手構造を採用した。図5に示すように、この継手構造15は、管取付壁である筒状壁材14に設けられた削孔16と可とう継手17と管18とからなる。可とう継手17は、円筒部17aと鍔部17bと管保持部17cとからなる。
【0040】
継ぎ手構造15では、円筒部17aを、筒状壁材14の削孔16に、鍔部17bが当たるまで押し込み、円筒部17aの溝17dに収めた拡張バンド19を拡張し、円筒部17aの外側を、筒状壁材14の削孔16に圧着することで止水性を確保した。
【0041】
また、継ぎ手構造15では、管保持部17cの端で、管18との間に、ブチル粘着材20を配し、締め付けバンド21を外側から締め付けることで、管18を固定した。
【0042】
(耐震性試験)
図4の組立てマンホール構造12を大きく変位させ、組立てマンホール構造の止水性を試験した。
【0043】
図6に示すように、筒状壁材13,14の継目に屈曲変位が生じた場合、筒状壁材13が浮く部分22では、帯状の弾性体8がその弾性によって伸び、また、形状的に、特にその蛇腹部9a,9bが、縦方向及び横方向に伸縮し、筒状壁材の離れや捩れに三次元的に追従し、止水部となるブチル粘着材6a,6bの止水性能に悪影響はなかった。さらに大きな変位が生じた場合、ブチル粘着材6a,6bは、そのズリ変形により、止水性能を保持した。
【0044】
逆に、図6に示すように、筒状壁材13,14が圧縮される部分23では、弾性体8の弾性体本体8aが支点となって、筒状壁材13を支持し、組立てマンホール構造12の継目の破損を防いだ。その時、蛇腹部9a,9bは、筒状壁材13,14の圧縮変位に追従するよう縮み、ブチル粘着材6a,6bの止水性能を保持した。
【0045】
また、この例の継ぎ手構造は、可とう継ぎ手が用いられ、円筒部17a、鍔部17b及び管保持部17cは、それぞれゴム弾性体からなり、管18と筒状壁材14とが相対的に変位しても追従し、止水性を保持できた。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、地震等の大きな地盤の変位に対して、筒状壁材の対向面の横ずれが抑制され、弾性体が三次元的に柔軟に変形し、各筒状壁材の三次元的な変位に追従することで、筒状壁材の対向面が破壊されるのを防止し、十分な止水性を保持する、組立てマンホール構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一参考例の組立てマンホール構造の斜視図である。
【図2】 図1の組立てマンホール構造の部分縦断面図である。
【図3】 本発明の例の組立てマンホール構造の部分縦断面図である。
【図4】 本発明の一例の組立てマンホール構造の製造直後の状態を示す部分縦断面図である。
【図5】 マンホールと管とを接続する継ぎ手構造の部分縦断面図である。
【図6】 図4の組立てマンホール構造が変位を受けた状態を示す縦断面図である。
【図7】 従来の組立てマンホール構造の縦断面図である。
【符号の説明】
1,2 筒状壁材
1a,2a,13a,14a 筒状壁材の対向面
1b,13b,14c 凸部
2b,14b 凹部
3,7,12 組立てマンホール構造
4 継目
5 弾性体
5a 弾性体本体
5b,5c,8b,8c 鍔部
6a,6b 止水材
8 帯状の弾性体
8a 弾性体本体
9a,9b 蛇腹部
10 シール材
11a,11b,21 締め付けバンド
13 斜壁
14 管取付壁
15 継手構造
16 削孔
17 可とう継手
18 管
17a 円筒部
17b 鍔部
17c 管保持部
17d 溝
19 拡張バンド
20 ブチル粘着材
22 筒状壁材が浮く部分
23 筒状壁材が圧縮される部分

Claims (2)

  1. 複数の筒状壁材を具える組立てマンホール構造であって、縦方向に継ぎ合わされる複数の筒状壁材と、前記各筒状壁材の継目に設けられる弾性体と、止水材とを備え、前記各筒状壁材の継目のそれぞれの対向面が凸部及び凹部の少なくとも一方を有しており、前記各対向面が前記凸部及び前記凹部を介して相互に嵌合しており、前記弾性体が、弾性体本体と、前記弾性体本体から張り出している一対の鍔部とを有し、前記鍔部が蛇腹部を有しており、前記弾性体本体が前記継目の外周側で前記各対向面に圧着しており、前記各鍔部が前記止水材を介して前記筒状壁材の外周面に締め付けバンドによって圧着されており、前記継目が止水されていることを特徴とする、組立てマンホール構造。
  2. 筒状壁材の嵌合面にシール材が用いられることを特徴とする、請求項1記載の組立てマンホール構造。
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