JP4255655B2 - 高抵抗化スズドープ酸化インジウム膜の成膜方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はスズドープ酸化インジウム膜(以下、ITOと略す)の成膜方法に関するものであり、特にタッチパネルの透明電極として用いられるITO膜の高抵抗で均一性に優れた成膜方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
ITO膜は透明導電膜であり、ガラス基板上に成膜したITOガラスは、例えば液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、面発熱体、タッチパネルの電極等に広く使用されている。この様に広い分野で使用されると、使用目的によってITO膜の抵抗値は種々のものが要求される。すなわち、フラットパネルディスプレイ用のITO膜では低抵抗のものが要求されるが、タッチパネル用のITO膜では逆に高抵抗の膜が要求される。抵抗値をコントロールする方法の中で最も普通に行われる方法は膜厚を変えることであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記のように膜厚を変化させて抵抗値をコントロールすると、当然可視光透過率が変化する。
シート抵抗=比抵抗/膜厚
高抵抗ITOを得ようとする場合は膜厚を薄くする必要があるが、通常の製法で成膜すると200〜1000Ω/□のシート抵抗の膜を得るためには20Å〜100Åの膜厚にする必要があるが、この場合は膜厚を均一にコントロールするのは難しく、面内の抵抗値の均一性は悪くなる傾向にある。また、可視光透過率を所定の値にしようとすると、膜厚が決定され、その膜厚で所定の抵抗値の膜とするためには比抵抗をコントロールすることが必要であった。
【0004】
ITO膜が導電性を発現するメカニズムは、酸化インジウム結晶中の微量の酸素欠陥と、In−O結晶格子にSnが置換して生じる電子がキャリアとなり、それが、電界中で移動することによる。従って、比抵抗(ρ)はキャリア密度(n)と移動度(μ)によって決定され、次式が成り立つ。
ρ=6.24×1018/(n×μ) ・・・・・(1)
ここで、ρ:Ωcm,n:cm-3,μ:cm2/V・sec である。
【0005】
ITO膜の場合、通常300Å以上の膜厚では100Ω/□以下のシート抵抗の膜となり、キャリア密度として1020〜1021、移動度として20〜50、比抵抗は1×10-4〜3×10-4の値をとる。先に述べたタッチパネル用のITO膜の抵抗値は200〜1000Ω/□程度のものが要求され、この場合、膜厚を考慮すると、均一性に優れた膜を得るためには比抵抗値は5×10-4以上が必要とされるが、この範囲での比抵抗のコントロールは難しかった。
【0006】
本発明は、前述の実情からみてなされたもので、シート抵抗値が200〜1000Ω/□であって、かつ、均一性に優れたITO膜を成膜する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはITO膜を高比抵抗化する方法について鋭意検討した結果、膜中スズドープ量をインジウムに対し10〜40重量にすること、また、該方法と酸素を含有雰囲気中で200℃以上の温度で加熱処理を併用することにより高抵抗な均一性に優れたITO膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)スパッター法又はパイロゾル法で膜中のスズ含有量がインジウムに対して10〜40重量%となるように成膜して、膜のシート抵抗が200〜1000Ω/□、シート抵抗の均一性が6.1%以内かつ比抵抗が5×10 −4 以上となるようにすることを特徴とするスズドープ酸化インジウム膜の成膜方法、及び
(2)成膜後、酸素を含む雰囲気中で200℃以上の温度で加熱処理することを特徴とする(1)記載のスズドープ酸化インジウム膜の成膜方法
に関する。
【0008】
比抵抗をコントロールする方法は二通りあって、一つは(1)式のキャリア密度をコントロールする方法と、もう一つは移動度をコントロールする方法である。キャリア密度をコントロールする方法としては酸素欠陥量を変化させる方法と、スズドープ量を変化する方法がある。酸素欠陥量は、雰囲気、温度によって変化し、次式に示すように可逆的な反応を利用する。
In2O3→In2O3-X+X/2 O2→In2O3 ・・・・・(2)
この反応は、高温で酸素を含む雰囲気においては酸素欠陥量(X) が減少し、キャリア密度が減少するために高抵抗化し、逆に高温、還元雰囲気では酸素欠陥量が増加し、キャリア密度が増加するために低抵抗化する。
【0009】
スズドープ量とキャリア密度の関係は、Sn=0のとき n≒1019 であるが、Snが微量ドープされると飛躍的に増加し、Sn=1重量%(In=100)のとき n≒2×1020 となり、Sn=3〜10重量%のとき最大値n≒1021 を示す。更にドープ量が増加するとnは単調減少する傾向を示し、Sn=20重量%のとき n≒5×1020 となる。
【0010】
移動度(μ)はキャリア(電子又は正孔)の動き易さに対応しており、主として、ITO結晶性に依存する量である。すなわち、結晶性が良好であって、不純物が少なければキャリアの移動度は高い値となるが、一方結晶性が悪く、結晶欠陥、転位、結晶粒界が多いとキャリアがトラップされてしまうために低い値となる。また、不純物はキャリアの移動を阻害する大きな要因であり、通常微量のドープで移動度に大きな影響を与える。
【0011】
Snドープ量と移動度の関係は、Sn微量ドープのとき移動度は40以上の高い値を示すが、2重量%以上のドープ量では単調に減少し、10重量%以上では30以下の値となってしまう。
【0012】
これらの検討結果より、200〜1000Ω/□の均一性に優れたITO膜を得る方法として、Snドープ量をコントロールする方法を見出した。すなわち、均一性を良くするには150Å以上の膜厚が必要であり、このとき比抵抗は3×10-4以上の値でコントロールしなければならない。方法としてSnドープ量がInに対し10〜40重量%であるITO膜とすることで高抵抗の膜となる。
【0013】
Snドープ量がInに対して10〜40重量%の膜は、キャリア密度が約5×1020個/cm3であり、移動度は30以下の値をとり、比抵抗は5〜8×10-4Ωcmの値となる。この場合Snドープ量は数%オーダーの精度で良く、微量ドープの場合に比べてドープ量の許容範囲が広く成膜し易い条件である。しかしながら、このSnドープ量で8×10-4Ωcm以上の比抵抗を得たい場合は、酸素欠陥量のコントロールにより、高比抵抗化する必要がある。すなわち、成膜したITO膜を、酸素を含む雰囲気中で200℃以上に加熱することで比抵抗をより増加することができる。250℃×30分の処理で約1.5倍、300℃×30分で約2倍、350℃×30分で約2.5倍に増加するので最終的な比抵抗のコントロールが可能となる。
【0014】
ITO膜を成膜する方法としては、一般に知られている方法を採用できる。すなわち、スパッター法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成膜法(CVD法)、パイロゾル法等において、ITO膜中に前記の量Snがドープされるよう成膜することで、高抵抗ITO膜が成膜される。得られる膜の透明性、化学エッチングのし易さなど成膜方法によって条件は異なるが、一般的にLCD用の低抵抗ITO膜を成膜する条件でSnのドープ量を変えることで対処することが可能である。
【0015】
すなわち、スパッター法では、ターゲットのSn組成を変え、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法ではペレットのSn組成を変え、CVD法、パイロゾル法では原料中のSn組成を変えれば良い。その結果いずれの方法を用いて成膜しても、高抵抗の所定の値にコントロールされたITO膜が得られる。
【0016】
また、Snドープ量が10〜40重量%のITO膜で8×10-4Ωcm以上の比抵抗を得たい場合は、スパッター法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法の場合は、成膜終了と共に、真空の成膜室に酸素を含むガスを導入し、所定時間200℃以上の温度で処理することにより、均一性の良好な高抵抗ITO膜を得ることができる。パイロゾル法の場合は成膜終了後、酸素含有ガスを成膜室に導入し、所定時間200℃以上の温度で処理することにより、均一性の良好な200〜1000Ω/□のITO膜を得ることができる。
【0017】
通常の方法で得られるITO膜の比抵抗は3×10-4Ωcm以下であり、200〜1000Ω/□の抵抗の膜を得るためには、極端に膜厚を薄くしなければならず、このため均一性の悪い膜しか得られなかった。本発明はSnドープ量を10〜40重量%にする方法であり、簡単に均一性の良好な高抵抗の膜を得ることができる。
【0018】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
実施例1
平均粒径0.2μm のIn2O3 粉末と平均粒径0.6μm のSnO2 粉末とをInに対して30重量%になるよう配合し、ボールミル中で5時間粉砕した後、この混合粉末を800℃、400Kg/cm2の条件でホットプレスして焼結体を得た。これをターゲットとして用い、スパッター成膜を行った。
【0019】
スパッター条件は、RFスパッター装置を用い、ガラス基板上に成膜した。ガラス基板は厚さ1mmで10cm角のソーダライムガラス上に800ÅのSiO2 膜がコートされたものを用いた。RF出力200W,ガス組成はAr:O2 =98:2、基板温度=300℃、成膜時間4分で行った。
【0020】
得られたITO膜は、膜中のSnをICP発光分光法で分析したところ24.6重量%であり膜厚220Å、シート抵抗350Ω/□、比抵抗7.7×10-4Ωcmであった。また、シート抵抗の均一性は±20Ω/□以内(5.7%)であり良好な膜であった。
【0021】
実施例2
超音波霧化による常圧CVD法(パイロゾル成膜法)によりITO膜を成膜するに際し、インジウム原料としてInCl3 のメチルアルコール溶液を使用した。濃度は0.15mol/lで、ドープ用錫原料としてSnCl4 のメチルアルコール溶液(濃度は0.2mol/l)を用いInに対して25重量%Snを添加した溶液を調製した。基板には厚さ1mmで10cm角のソーダライムガラス上に1000ÅのSiO2 膜がコートされたものを用いた。パイロゾル成膜装置に基板をセットし500℃に加熱し、超音波により2ml/min霧化させ基板に導入し、2分間成膜した。
【0022】
得られたITO膜は、膜中のSnが19.6重量%であり膜厚240Å、シート抵抗270Ω/□、比抵抗6.5×10-4Ωcmであった。この膜を空気雰囲気中で電気炉にて300℃30分加熱処理を行ったところ、シート抵抗490Ω/□、比抵抗1.2×10-3Ωcmに増加した。また、シート抵抗の均一性は±30Ω/□以内(6.1%)であった。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、膜中のSnドープ量をコントロールすることで比較的容易に均一性の良好な200Ω〜1000Ω/□のシート抵抗のITO膜を得ることができる。また、該方法と酸素含有雰囲気中で200℃以上の温度で加熱処理することで、より高抵抗の膜を得ることができるので、その実用的価値は極めて大である。
Claims (2)
- パイロゾル法により膜中のスズ含有量がインジウムに対して10〜40重量%、かつ膜厚が150Å以上となるように成膜後、酸素を含む雰囲気中で200℃以上の温度で加熱処理して、膜のシート抵抗が200〜1000Ω/□、シート抵抗の均一性が6.1%以内かつ比抵抗が5×10−4 Ωcm以上となるようにすることを特徴とするスズドープ酸化インジウム膜の成膜方法。
- タッチパネル用の膜であることを特徴とする請求項1記載のスズドープ酸化インジウム膜の成膜方法。
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