JP4255613B2 - タイヤ成形用金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤ成形用金型に関する。さらに詳しくは、タイヤを金型成形するに際し、タイヤ表面におけるスピュー(ひげ状の突起部)やバリ状のはみ出し部の発生を防止して、得られるタイヤの初期性能や外観を良好な状態に保持することが可能であるとともに、金型そのものの製造コストの低減化及び保守点検作業の簡便化を図ることが可能なタイヤ成形用金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
タイヤ成形用金型は、タイヤのデザイン(表面形状)がシャープなコーナー部やブレードと称する薄肉の突起物を数多く有する複雑な形状であることに対応して、複雑な形状の形成に適した鋳造によって製造される場合が多い。
【0003】
このような鋳造によって製造されるタイヤ成形用金型は、通常、部分金型に分割され、タイヤ成形時にこれらの部分金型を全体的に組合わせて全体金型として用いられている。このような金型の分割方法としては、円周に沿って、中心軸方向に切断して7〜11個の部分金型に分割する方法(上下一体型)、及び中心軸に垂直な方向(タイヤの径方向)に切断して、2個の部分金型に分割する方法(上下分割型)があるが、製造条件等に応じて適宜選択することができる。
【0004】
このような金型を用いたタイヤの成形は、通常、成形前(デザインを施される前)の重合ゴム素材等からなるタイヤ原材料(グリーンタイヤ)を金型に押圧することによる成形(コンプレッション成形)により行われている。
【0005】
このようなコンプレッション成形の成形過程においては、グリーンタイヤを金型に押圧したときに、骨やブレード等の凹凸が形成された金型の表面とグリーンタイヤとの間に閉じた空間(閉塞空間)が形成され、成形中に閉塞空間内の空気が排出されず、最終的に得られるタイヤ成形品に気泡が内包されて、いわゆる「ベア」と呼ばれる気泡欠陥が発生するという問題がある。
【0006】
また、成形後においては、タイヤ用成形金型が、繰り返し使用される間に油脂類等の付着により肌荒れを伴うため、通常は、定期的にクリーニング等の保守点検を行う必要があり、金型によっては、このクリーニング等が煩雑となり、長いクリーニング作業時間や高価な設備の導入等が必要となり、成形品の製造コストが増大するという問題がある。
【0007】
上述の「ベア」の発生を防止するためには、通常、金型から空気を抜く方法を講じることにより対処している。
【0008】
このような空気抜きの方法としては、従来から、2種類の方法(ベントホールタイプ、及びノンスピュータイプ又はスリットベントタイプ)が採用されている。
【0009】
ベントホールタイプは、金型に、閉塞空間に連通する空気抜き孔(ベントホール)を設け、このベントホールを経由させて閉塞空間内の空気を外部に排出する方法で、金型そのものの製造コストが安価であるとともに、保守、点検についても、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、ドライアイスペレット等のメディアを高圧エアーで吹き付ける、簡易なブラスト法を採用することが可能であるという利点を有する。しかし、ベントホールタイプを用いた場合には、空気の排出に伴って、ベントホール中にタイヤ原材料(グリーンタイヤ)も流出するため、最終的なタイヤ成形品(タイヤ製品)にスピュー(ひげ状の突起部)が形成され、タイヤ成形品としての外観や初期走行性能が損なわれるという不都合もある。
【0010】
ノンスピュータイプ又はスリットベントタイプは、部分金型を全体金型に組み立てた際の、部分金型相互間に形成される隙間、又は所定箇所に設置されたスリット状の空気抜きから閉塞空間内の空気を外部に排出する方法で、タイヤ成形品としての外観性に優れ、また、初期の走行性能に支障をきたすことはないという利点を有する。しかし、ノンスピュータイプ又はスリットベントタイプを用いた場合には、スピューの発生は防止することができるが、通常、バリ状のはみ出し部の形成までは防止することはできず、また、金型そのものの製造コストが高く、さらに、金型使用時に目詰まりが発生し易いという不都合がある。上記に加え、保守、点検に関し、金型を一個の部分金型単位まで分解しない限り簡易なブラスト法を採用することができないこと(ブラストによるクリーニングでは工数が掛かってしまうこと)、また、スリット部がブラストの繰り返しにより目詰まりしてしまい易くスリット部に入り込んだ汚れを除去することが困難であること等から、化学洗浄やプラズマクリーニングといった特殊なクリーニング方法を用いざるを得ないため、長いクリーニング作業時間や高価な設備の導入等が必要となり、成形品の製造コストが増大するという不都合もある。
【0011】
上述のように、これら2種類の空気抜き方法には、それぞれに利点と不都合とがあり、結局は、タイヤの用途、製造コスト等を考慮して使い分けられているのが現状である。すなわち、タイヤの外観や初期性能を重視する必要がある場合には、生産コストの上昇を甘受しつつノンスピュ−タイプを採用し、それよりも金型の製作コストやタイヤ成形のランニングコストを重視する必要がある場合には、外観や初期の走行性能の低下を甘受しつつベントホールタイプの金型を採用しているのが現状であり、タイヤの外観や初期性能の面、及び生産コストの面のいずれにおいても満足する対策が切望されている所以である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、タイヤを金型成形するに際し、タイヤ表面におけるスピュー(ひげ状の突起部)やバリ状のはみ出し部の発生を防止して、得られるタイヤの初期性能や外観を良好な状態に保持することが可能であるとともに、金型そのものの製造コストの低減化及び保守点検作業の簡便化を図ることが可能なタイヤ成形用金型を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明は、以下のタイヤ成形用金型を提供するものである。
【0014】
[1] 2以上の部分金型に分割され、タイヤ成形時にこれらの部分金型を全体的に組合わせて全体金型として用いられるタイヤ成形用金型であって、前記部分金型のそれぞれが、成形前のタイヤ原材料(グリーンタイヤ)を前記部分金型のそれぞれの表面に押圧してタイヤを成形する際(タイヤ成形時)に、前記グリーンタイヤと前記部分金型の表面とが形成する閉塞空間から空気を排出し得る空気抜き孔(ベントホール)と、前記ベントホールの前記部分金型表面側に設けられた、前記グリーンタイヤと化学的に不活性で融着することがなくかつ100〜200℃の温度で繰り返し使用が可能な可撓性材料から構成された、前記グリーンタイヤを前記部分金型のそれぞれの表面に押圧してタイヤを成形する際、前記閉塞空間の縮小に伴う空間内の圧力増加に対応して隙間なく当接した閉状態から解放されて開状態となって空間内の空気を排出するとともに、空気の排出後、空間内の圧力減少に対応して隙間なく当接した閉状態に戻ってグリーンタイヤの流出を阻止する自己開閉機構を有するベントピースと、を備えてなり、さらに、前記ベントピースが、前記自己開閉機構として前記ベントピースの厚さ方向に貫通するとともに隙間なく当接した所定形状の切れ目を備えてなることを特徴とするタイヤ成形用金型。
【0015】
[2] 前記ベントピースが、可撓性の板状部材からなる前記[1]に記載のタイヤ成形用金型。
【0016】
[3] 前記ベントピースと前記部分金型表面との間に、前記ベントピースよりも剛性が大で、前記ベントピースの切れ目に対応した位置にスリットを有する裏打部材を、さらに備えた前記[1]又は[2]に記載のタイヤ成形用金型。
【0017】
[4] 前記ベントピースが、シリコーン系エラストマー又はフッ素系エラストマーからなる前記[1]〜[3]のいずれかに記載のタイヤ成形用金型。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0019】
図1(a)に示すように、本発明のタイヤ成形用金型10は、二以上の部分金型10aに分割され、タイヤ成形時にこれらの部分金型10aを全体的に組合わせて図1(a)に示す態様で全体金型として用いられる。図1(b)は、そのA−A線断面図である。図1においては、金型の分割方法として上下一体型を採用し、円周に沿って七個に分割した場合を示すが、上下分割型であっても同様である。
【0020】
なお、本発明のタイヤ成形用金型を形成する材料としては、例えば、アルミ合金や鉄系合金を挙げることができる。中でも、鋳物の緻密さ、金属組織の健全性から、鋳造用アルミ合金(AC4C等)や鋳鉄(FCD600等)等が好ましい。
【0021】
図2(a)に示すように、本発明のタイヤ成形用金型は、部分金型10aのそれぞれが、成形前のタイヤ原材料(グリーンタイヤ)11を部分金型10aのそれぞれの表面に押圧してタイヤを成形する際(タイヤ成形時)に、タイヤ原材料(グリーンタイヤ)11と部分金型10aの表面とが形成する閉塞空間12から空気13を排出し得る空気抜き孔(ベントホール)1と、ベントホール1の部分金型表面側に設けられた、自己開閉機構を有するベントピース2とを備えている。
【0022】
空気抜き孔(ベントホール)1としては、空気13を閉塞空間12から外部へ円滑に排出することが可能なものであれば、その寸法等において特に制限はないが、例えば、その直径を0.6〜2.0mmとすることが好ましい。
【0023】
ベントピース2は、自己開閉機構を有している。この自己開閉機構としては、タイヤを成形する際、自ら開状態となることによって、空気13を閉塞空間12からベントホール1を経由して外部に排出することを可能にするとともに、自ら閉状態となることによって、グリーンタイヤ11が閉塞空間12からベントホール1を経由して外部に流出するのを阻止することができるものであれば特に制限はない。
【0024】
このような自己開閉機構は、グリーンタイヤ11を部分金型のそれぞれの表面に押圧してタイヤを成形する際、閉塞空間12の縮小に伴う閉塞空間12内の圧力増加に対応して、隙間なく当接した閉状態(図2(a)に示す状態)から解放されて開状態(図2(b)に示す状態)となって、空気13を閉塞空間12からベントホール1を経由して外部に排出して、「ベア」と呼ばれる気泡欠陥の発生を防止することができるとともに、空気13の排出後、閉塞空間12内の圧力減少に対応して、隙間なく当接した閉状態(図2(c)を経て図2(d)に示す状態)に戻ってグリーンタイヤ11がベントホール1側に流出するのを阻止して、スピューやバリ状のはみ出し部の発生を防止することができる。
【0025】
なお、上記「隙間なく当接した閉状態」における「隙間なく」とは、実質的に隙間がない状態、すなわち、グリーンタイヤ11がベントホール1側に流出するのが阻止される状態であればよく、物理的に隙間が皆無であることを意味するものではない。
【0026】
図3に示すように、このベントピース2としては、可撓性の板状部材からなり、かつ、自己開閉機構としてベントピース2の厚さ方向に貫通するとともに隙間なく当接した所定形状の切れ目3を備えてなるものを好適例として挙げることができる。
【0027】
図4(a)、(b)に示すように、ベントピース2に切れ目を形成する方法として、例えば、I字状の切れ目を形成する方法として、刃物14を用いるものを挙げることができる。この方法は、ベントピース2の材質がエラストマーである場合に特に有効で、この方法によると、隙間なく当接した切れ目を簡易かつ安価に形成することができる。
【0028】
また、I字状又はX字状の切れ目を形成する他の方法としては、2〜4分割したベントピースを分割面で突き合わせて一つのベントピースとする方法であってもよい。例えば、I字状の切れ目を形成する方法として、2個の半月形のピースを直線部分で突き合わせて一つのベントピースする方法、及びX字状の切れ目を形成する方法として、4個の扇形状ピースを直線部分で突き合わせて一つのベントピースとする方法等を挙げることができる。 この方法によると、ベントピースの材質として、後述するエラストマーに限らず、あらゆる可撓性材料を用いることが可能となる。
【0029】
このベントピースは、可撓性であるとともに、タイヤ成形時に、タイヤ原材料(グリーンタイヤ)(例えば、天然ゴムもしくはブタジエン重合物(BR)、ブタジエン・スチレン重合物(SBR))等の合成ゴム又はこれらの混合物)と化学的に不活性で融着することがなくかつ100〜200℃の温度で繰り返し使用が可能な特性を有するものが好ましい。具体的には、シリコーン系エラストマー、フッ素系エラストマー、アクリル系エラストマー又はフロロシリコーン系エラストマー、及び0.2mm程度以下の薄肉の金属等を好適例として挙げることができる。中でも、シリコーン系エラストマー又はフッ素系エラストマーが好ましい。
【0030】
上記の特性を有するベントピースは、例えば、エラストマーを用いた場合、金型を用いた注型成形や加熱硬化成形によって製造することができる。このため、従来の、金属製ベントピースの場合には対応が困難であった、部分金型の表面が複雑なデザイン形状を有する場合(例えば、ケガキ線状や鋸刃状の凸形状が存在する場合)であっても、注型成形や加熱硬化成形によって比較的簡易かつ安価に製造することができ、金型そのものの製造コストの低減化を図ることができる(ベントピース設置部位においても、金型表面形状を損なうことなく空気抜き機構を設置することができる。)。
【0031】
また、本発明に用いられるベントピースは、エラストマー製の場合、簡易な嵌め込み方式を採用することが可能で、部分金型への固定を簡素化することができる。すなわち、図5(a)、(b)に示すように、部分金型10a表面に、鋳出し又は機械加工により作製したアンダーカット形状Uを利用して、同一形状に形成したベントピース2を押し込む(嵌め込む)ことによって簡易に固定することができる。従って、金属製ベントピースにおけるような特別な接着手段を不要とするとともに、ベントピースの交換作業を簡易化することができ、金型そのものの製造コストの低減化を図ることができる。
【0032】
また、本発明に用いられるベントピースは、金型のクリーニング等の保守、点検に対する対応を簡易化することができる。すなわち、従来の金属製ベントピースを用いた場合は、高圧エアーと砥粒とを利用したサンドブラスト法を用いると、ベントピース表面に性状変化やダレ、ツブレが発生し易く、折角のスリット形状も長く維持することが困難であるのに対し、本発明に用いられるベントピースは、サンドブラスト法を用いることにより、簡易に切れ目を開状態にさせることが可能であり、切れ目に付着した油脂分等を容易に除去することができる。なお、エラストマー製の場合には、化学薬品を用いた化学洗浄に対して金属製のものよりも抵抗力が高いという利点を有する。
【0033】
また、本発明に用いられるベントピースは、タイヤ成形時、ベントピースの切れ目に、万一、ゴムバリが差し込んだ場合でも、タイヤ脱型時にゴムバリが千切れ目詰まりを発生させるといった不具合の発生を有効に防止することができるという利点を有する。すなわち、ベントピースのヤング率がタイヤゴム材に近いため、差し込んだゴムバリが引抜かれようとする際に、ゴムバリに過剰な力が作用するとベントピースそのものも変形し、作用する力を緩和して、千切れの発生を有効に防止することができるという利点を有する。
【0034】
本発明に用いられるベントピースとしては、前述のように、自己開閉機構を有し、タイヤ成形時に閉塞空間から空気を円滑に排出し、かつグリーンタイヤを流出させないことが可能なものであれば特に制限はないが、例えば、図6(a)〜(e)に示すように、ベントピース2(材質:シリコーン系エラストマー、厚さT:0.06〜0.1cm、切れ目から支持端までの長さL:0.03〜0.07cm、切れ目の長さb:0.5〜2.0mm、ヤング率E:1.5〜50kgf/cm2)を用いたときにタイヤ成形時の閉塞空間(金型)内圧 w(一般的な、タイヤ成形圧力10〜20kgf/cm2)が作用した時の、切れ目の開口量(2ΔC)は、3/1000〜1/100mmに制御すればよいことが材料力学的計算及び特願2000−309962の記載により導出される。なお、図6(a)においては、I字状の切れ目、図6(b)においては、X字状の切れ目を有するベントピースをそれぞれ示している。
【0035】
なお、ベントピース2の物性のみを利用して、グリーンタイヤ11がベントホール1側に流出するのを阻止しようとすると、ベントピース2の厚さTを増大する必要があるが、厚さTを増大すると可撓性が減少し、閉状態から開状態への解放が不十分となり、空気を閉塞空間からベントホール1を経由して外部に排出するのが困難になることがある。
【0036】
このような場合には、図7(a)に示すように、ベントピース2と部分金型10a表面との間に、ベントピース2よりも剛性が大で、ベントピース2の切れ目3に対応した位置にスリット5を有する裏打部材4を、さらに備えたものとしてもよい。このように構成することによって、ベントピース2の厚さを最小に留めた状態(空気を排出し易くした状態)で、グリーンタイヤ11のベントホール1側への流出を有効に阻止することができる。このような裏打部材4としては、例えば、ステンレス鋼板のような金属の板状物を好適例として挙げることができる。このような金属製の裏打部材4におけるスリット5は、その幅が0.3〜2.0mm程度であるので、汎用のレーザー加工等によって簡易かつ安価に形成することができ、金型そのものの製造コストの低減化を図ることができる。
【0037】
また、図7(b)に示すように、ベントピース2の厚さTと、裏打部材4のスリット5の幅Wとを調整することによって、ベントピース2の自己開閉機構の設定における調整範囲及び自由度を格段に高めることができる。
【0038】
本発明のタイヤ成形用金型の製造方法としては特に制限はなく、汎用されている方法を用いることができる。以下その一例を説明する。
【0039】
図8に、タイヤ成形用金型(以下、「金型」ということがある)を製造するに当たって使用されるマスターモデル(原型)100を示す。このようなマスターモデル100の外側面における溝形状、デザインは、タイヤ製品(成形品)における溝形状、デザインと同等である。金型の製造に当たっては、通常、このマスターモデル形状の鋳型を必要数複製し、これを円環状に組み立てて用いる。
【0040】
図9に、マスターモデル100を用いた場合の金型の製造工程を示す。ただし、図9におけるマスターモデル100の断面は、図8に示すものよりも簡略化されている。
用意したマスターモデル100の凸部111表面の所定の位置にベントピース原型112を配設する(図9(a))。
ベントピース原型112は、ベントピースの埋設がぐらつきがない程度で、しかも容易となるように、ベントピースよりも若干大きめとすることが好ましい(図9(b))。
次に、ベントピース原型112が配設されたマスターモデル100を用いて、反転型であるゴム型114を製造する(図9(c))。
次に、ゴム型114の反転型である鋳型215を製造する(図9(d))。鋳型115は、ゴム型114を変形させたり傷めたりすることのない材料であって、金型に用いる金属材料の鋳造を容易に行うことができる材料、例えば、石膏やセラミックから形成する。
次に、鋳型115を用いて、その反転型である金型116を鋳造により製造する(図9(e))。
次に、ドリル等を用いた機械加工により、凹部117の底面から金型外部へ向けて外気と連通するようにベントホール118を形成する(図9(f))。
次に、ベントホール118が形成された凹部117に、ベントピース119を固定する。ベントピース119の固定には、先に記述したような、アンダーカットを利用した嵌め込みや、接着剤による接合、又はベントピース上から金属製の薄板をあてがい、これを金型本体に溶接・固定するといった方法を採用することができる。
【0041】
上述した金型の製造方法においては、ベントホールを機械加工により形成していたが、ベントホールは図10に示すような方法によっても形成することができる。すなわち、作製した鋳型115に、金型116に形成するベントホール118と同一外径を有するピン129を所定位置に固定する(図10(a))。
このピン129としては、金型116を製造する鋳造の際に、溶融金属に溶損・融着しない材質のものを用いる必要がある。例えば、アルミ鋳造の場合は鋼材のピン、鉄鋼材鋳造の場合はセラミックコーティングした鋼材ピンなどを用いることが好ましい。
次に、鋳型115にピン129を固定した状態で鋳造を行うことにより、ピン129は、鋳型115から金型116側へ取り込まれる(図10(b))。
次に、金型116に鋳包みされたピン129を金型116から抜き取ることで(図10(c))、ベントホール118を容易に形成することができる(図10(d))。
【0042】
【実施例】
以下本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によっていかなる制限を受けるものではない。
【0043】
実施例1
図1に示すような上下一体型で円周に沿って七個に分割した金型(七個の部分金型で1セットの全体金型を構成)を、石膏鋳型を用いたアルミ合金鋳造法(石膏鋳造法)(鋳型材:発泡石膏及びアルミ合金材AC4C(Si7%、Cu0.8%、Mg0.4%、残りAl))によって作製した。この場合、ベントホールの初期設定個数は1セット当たり1376個とした。
次に、図11(a)に示すベントホール201及び座グリ206を上記作製過程で鋳出しによって形成した部分金型200aに、図11(b)に示す切れ目203を有するベントピース202(材質:付加型シリコーンゴム 東レシリコーン(株)製 商品名:SH9555)及び図11(c)に示すスリット205を有する裏打部材204(材質:SUS304)を、図11(d)、(e)に示すように嵌め込んだ。この場合、ベントピース202は特別な接合手段を用いることなくアンダーカットを利用して部分金型200aの座グリ206に嵌め込み、ベントピース202と裏打部材204とは、切れ目203とスリット205とを対向させた状態でシアノアクリレート系の接着剤を用いて接合した。
なお、図11(a)〜(c)に示す寸法は全て室温(25℃)における数値を用いた。タイヤ成形時の金型使用温度は約180℃であるため、金型より熱膨張率の大きいシリコーンゴムを用いたベントピース202はその寸法を座グリ206の寸法よりも一回り小さく形成した。また、ベントピース202の切れ目203は図4に示す方法(刃物により切断加工する方法)を用いて形成し、裏打部材204のスリット205はレーザー加工によって形成した。
上記のようなベントホール構造を持った(ベントホールタイプの)タイヤ成形用金型を作成し、タイヤを連続成形したところ、「ベア」の発生もなく、また、ベントピース部におけるバリの発生も殆どないタイヤを成形することができた。さらに、連続成形で約20000本のタイヤ成形後も、初期の空気抜き特性を維持することができた。なお、バリの発生に関しては、高さ0.3mm程度の軽微なものが発生するようになったが、外観品質上は殆ど問題にならないレベルであった。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によって、タイヤを金型成形するに際し、タイヤ表面におけるスピュー(ひげ状の突起部)やバリ状のはみ出し部の発生を防止して、得られるタイヤの初期性能や外観を良好な状態に保持することが可能であるとともに、金型そのものの製造コストの低減化及び保守点検作業の簡便化を図ることが可能なタイヤ成形用金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のタイヤ成形用金型の一の実施の形態を模式的に示す説明図で、(a)は平面図、(b)はそのA−A線断面図である。
【図2】 本発明のタイヤ成形用金型の一の実施の形態に用いられるベントピースの成形時における自己開閉機構を模式的に示す断面図で、(a)は閉状態、(b)は開状態、(c)及び(d)は閉状態をそれぞれ示す。
【図3】 本発明に用いられるベントピースの一例を模式的に示す説明図である。
【図4】 本発明に用いられるベントピースの製造方法の一例を模式的に示す説明図で、(a)は切れ目を入れる前の状態、(b)は切れ目を入れた後の状態をそれぞれ示す。
【図5】 本発明に用いられるベントピースの部分金型への固定方法の一例を示す断面図で、(a)及び(b)はアンダーカットの形状に沿った固定方法をそれぞれ示す。
【図6】 本発明に用いられるベントピースの設計上の寸法関係を模式的に示す斜視図である。
【図7】 本発明に用いられる裏打ち部材の使用を模式的に示す斜視図である。
【図8】 本発明のタイヤ成形用金型の製造方法の一例に用いられるマスターモデルを模式的に示す斜視図である。
【図9】 本発明のタイヤ成形用金型の製造方法の一例を工程順((a)〜(h))に模式的に示す断面図である。
【図10】 本発明のタイヤ成形用金型の製造方法の他の例を工程順((a)〜(d))に模式的に示す断面図である。
【図11】 本発明のタイヤ成形用金型の一の実施例におけるベントピースの部分金型への設置方法を模式的に示す断面図で、(a)は用いた部分金型、(b)は用いたベントピース、(c)は用いた裏打部材、(d)及び(e)は設置(嵌め込み)の状態をそれぞれ示す。
【符号の説明】
1…ベントホール、2…ベントピース、3…切れ目、4…裏打部材、5…スリット、10…全体金型(金型)、10a…部分金型、11…タイヤ原材料(グリーンタイヤ)、12…閉塞空間、13…空気、14…刃物、100a…部分金型、100…マスターモデル、111…凸部、112…ベントピース原型、113…溝部、114…ゴム型、115…鋳型、116…金型、117…凹部、118…ベントホール、119…ベントピース、129…ピン、200a…部分金型、201…ベントホール、202…ベントピース、203…切れ目、204…裏打部材、205…スリット、206…座グリ、w…タイヤ成形時の閉塞空間内圧、W…裏打部材のスリットの幅、b…切れ目の長さ、T…ベントピースの厚さ、L…ベントピースの切れ目から支持端までの長さ、U…アンダーカット。
Claims (4)
- 2以上の部分金型に分割され、タイヤ成形時にこれらの部分金型を全体的に組合わせて全体金型として用いられるタイヤ成形用金型であって、
前記部分金型のそれぞれが、
成形前のタイヤ原材料(グリーンタイヤ)を前記部分金型のそれぞれの表面に押圧してタイヤを成形する際(タイヤ成形時)に、前記グリーンタイヤと前記部分金型の表面とが形成する閉塞空間から空気を排出し得る空気抜き孔(ベントホール)と、
前記ベントホールの前記部分金型表面側に設けられた、前記グリーンタイヤと化学的に不活性で融着することがなくかつ100〜200℃の温度で繰り返し使用が可能な可撓性材料から構成された、前記グリーンタイヤを前記部分金型のそれぞれの表面に押圧してタイヤを成形する際、前記閉塞空間の縮小に伴う空間内の圧力増加に対応して隙間なく当接した閉状態から解放されて開状態となって空間内の空気を排出するとともに、空気の排出後、空間内の圧力減少に対応して隙間なく当接した閉状態に戻ってグリーンタイヤの流出を阻止する自己開閉機構を有するベントピースと、を備えてなり、
さらに、前記ベントピースが、前記自己開閉機構として前記ベントピースの厚さ方向に貫通するとともに隙間なく当接した所定形状の切れ目を備えてなることを特徴とするタイヤ成形用金型。 - 前記ベントピースが、可撓性の板状部材からなる請求項1に記載のタイヤ成形用金型。
- 前記ベントピースと前記部分金型表面との間に、前記ベントピースよりも剛性が大で、前記ベントピースの切れ目に対応した位置にスリットを有する裏打部材を、さらに備えた請求項1又は2に記載のタイヤ成形用金型。
- 前記ベントピースが、シリコーン系エラストマー又はフッ素系エラストマーからなる請求項1〜3に記載のタイヤ成形用金型。
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