JP4254298B2 - ベルト式無段変速装置およびその製造方法 - Google Patents

ベルト式無段変速装置およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属ベルトを入出力軸に夫々配置した可変プーリの一対の円錐ディスクに巻掛けるベルト式無段変速機およびその製造方法に関し、特に、金属ベルトおよび円錐ディスクの摩耗抑制に好適なベルト式無段変速機およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からベルト式無段変速機における可変プーリの摩擦接触面および金属ベルト側のエレメントの摩耗の発生を抑制するため、円錐ディスクの挟圧面(プーリシーブ面)の低速側変速比の領域にショットピーニング処理を施こすものが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、ベルト式無段変速機に用いられているV型プーリに対し、低速側変速比の領域のみにショットピーニング処理等を施すことで、低速側変速比ではプーリの摩耗を抑制し、高速側変速比では金属ベルトのエレメントフランク面の摩耗を抑制するようにしている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−65651号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例では、低速側変速比の領域のみに表面処理を施すという構造となっているため、表面処理が施されている領域とそうでない領域では、表面性状が異なるために境界線が発生したり、表面処理の有無による機械的な境界線(段差等)が発生し、その境界線上に金属ベルトがかかるとエレメントフランク面が偏摩耗する可能性がある。
【0006】
また、表面処理を施す領域での表面性状が均一となるという構造となっているため、表面処理を施した領域の外径側ではシーブ面の硬度が必要以上に大きくなり、エレメントフランク面の摩耗が発生するという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、金属ベルトおよび円錐ディスクの摩耗を効果的に抑制可能なベルト式無段変速機を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一対の円錐ディスクを対向配置して形成したV溝の溝幅を変更可能な可変プーリを、オフセット配置の入力軸側および出力軸側それぞれに設け、これら入出力軸の可変プーリ間に金属ベルトを巻掛けたベルト式無段変速機であり、回転状態の円錐ディスクのプーリシーブ面にバニシングローラを押圧して表面加工するローラバニシング加工により、前記円錐ディスクのプーリシーブ面を、硬度が高く且つ表面粗さが小さい内径端から硬度が低く且つ表面粗さが大きい外径端に向かって連続的に硬度と表面粗さを変化させて形成した。
【0009】
【発明の効果】
したがって、本発明では、回転状態の円錐ディスクのプーリシーブ面にバニシングローラを押圧して表面加工するローラバニシング加工により、前記円錐ディスクのプーリシーブ面を、硬度が高く且つ表面粗さが小さい内径端から硬度が低く且つ表面粗さが大きい外径端に向かって連続的に硬度と表面粗さを変化させて形成したため、プーリシーブ面の摩耗が発生する径領域では摩耗の程度によって硬度を上げ且つ表面粗さを小さくして、シーブ面の摩耗を抑制することができる。
また、プーリシーブ面の摩耗が小さい径の範囲では硬度をあまり上げず且つ表面粗さを大きくして、シーブ面がエレメントフランク面を摩耗させることを抑制することができる。
そして、プーリシーブ面の硬度向上代及び表面粗さを径方向に連続的に変化させることによって、全てのベルト巻き付き径においてシーブ面及びエレメントフランク面の摩耗を効果的に抑制することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図3は、本発明を適用可能なベルト式無段変速機の一例を示し、図1はベルト式無段変速機の概略側面図、図2は金属ベルトと可変プーリとの接触状態を示す部分断面図、図3は本実施形態の円錐ディスクの断面図および硬度並びに表面粗さの分布図である。
【0012】
図1および図2に示すように、ベルト式無段変速機は、対向配置した一対の円錐ディスク1A、1B(2A、2B)により形成されたV溝の溝幅を変更可能な可変プーリから構成した入力プーリ1および出力プーリ2を、オフセット配置した入力軸4および出力軸5にそれぞれ配置して備える。そして、これら入力プーリ1および出力プーリ2のV溝間に金属ベルト3を巻掛けし挟圧することにより、これら入力プーリ1および出力プーリ2間で動力を伝達可能としている。前記金属ベルト3は、金属製の駒状の多数のエレメント3Aと無端の積層されたリング3Bとからなり、リング3Bに掛け渡して多数のエレメント3Aを隙間無く配列して構成されている。
【0013】
前記入力プーリ1の一対の円錐ディスク1A,1Bは、一方の円錐ディスク1Aを入力軸4と一体となる固定ディスクとし、他方の円錐ディスク1Bを入力軸4上に摺動自在な可動ディスクとしている。同様に、出力プーリ2の一対の円錐ディスク2A,2Bは、他方の円錐ディスク2Bを出力軸5と一体となる固定ディスクとし、一方の円錐ディスク2Aを出力軸5上に摺動自在な可動ディスクとしている。そして、入力プーリ1および出力プ−リ2に形成するV溝の溝幅を夫々の可動ディスクを軸方向に移動させることで変更して、無段階に変速比を変更可能としている。なお、図1は、矢印Aの向きが入力プーリ1の回転方向を示し、低速の変速比とした場合における金属ベルト3の巻付き状態を示し、入力プーリ1側では金属ベルト3の巻付き径が小さくなり、出力プーリ2側では金属ベルト3の巻付き径が大きくなっている。
【0014】
各ディスク1A、1B(2A,2B)は、SCM420程度の材質で形成された金属製であって、金属ベルト3との摩擦接触面、即ち、プーリシーブ面1C、1D(2C,2D)は、図3に示すように、硬度および表面粗さに仕上げられる。
【0015】
前記プーリシーブ面1C、1D(2C,2D)の硬度は、内径側で最も高く、外径側で最も低く、内径側から外径側に向かって連続的に硬度を低下させて形成する。これは、図4に示すように、プーリシーブ面の摩耗に影響するエレメントフランク面3Cとプーリシーブ面1C,1D(2C,2D)の面圧が、入力プーリ1にあっては内径側で高くなり、プーリシーブ面1C、1Dの摩耗も大きくなることに起因する。従って、プーリシーブ面1C,1D(2C,2D)の摩耗が発生する径領域(内径側)では摩耗の程度によって硬度を高くしてプーリシーブ面1C,1D(2C,2D)の摩耗を抑制する。また、プーリシーブ面1C,1D(2C,2D)の摩耗が小さい径(外径側)の範囲では硬度を高くしないことで、プーリシーブ面1C,1D(2C,2D)によりエレメントフランク面3Cを摩耗させることを抑制する。さらに、プーリシーブ面1C,1D(2C,2D)の硬度を径方向に連続的に変化させることにより、全てのベルト巻付き径においてプーリシーブ面1C,1D(2C,2D)およびエレメントフランク面3Cの摩耗を効果的に抑制する。
【0016】
また、プーリシーブ面1C,1D(2C,2D)の表面粗さは、内径側で最も小さく、外径側で最も大きく、内径側から外径側向かって連続的に表面粗さを大きくして形成する。これは、プーリシーブ面1C,1D(2C,2D)の面圧の高い箇所(内径側)ではプーリシーブ面1C,1D(2C,2D)の表面粗さを小さくすることによって、プーリシーブ面1C,1D(2C,2D)によりエレメントフランク面3Cを摩耗させることを抑制する。また、プーリシーブ面1C,1D(2C,2D)の面圧の低い箇所(外径側)ではプーリシーブ面1C,1D(2C,2D)によるエレメントフランク面3Cの摩耗が小さいことから、プーリシーブ面1C,1D(2C,2D)の表面粗さを小さくしないで、加工コストを低減させる。
【0017】
以上の構成のプーリシーブ面1C、1D(2C,2D)は、バニシング加工、特に、ローラバニシング加工により、以下に記載する製造方法により形成することができる。図5はローラバニシング加工の要領を示すものであり、円錐ディスク1A(1B、2A、2B)を回転させた状態で、バニシングローラBRをプーリシーブ面1C(1D、2C、2D)に押圧してバニシング加工を行う。そして、その押圧力をプーリシーブ面1C(1D、2C、2D)の内径端で最も高くし、バニシングローラBRを外径側に移動させつつ押圧力を減少させ、外径端で押圧力が最も低くなるように設定する。このように押圧力をバニシングローラBRの移動と共に変化させる方法として、例えば、液圧によって加工荷重を変化させる液圧式ローラバニシング加工を適用することが望ましい。
【0018】
以上のように設定して加工することにより、図6に示すように、プーリシーブ面1C(1D、2C、2D)の内径端側でその硬度が最も高く、外径側へ移るに連れて硬度を徐々に低下させ、外径端で硬度が最も低くなるように形成することができる。また、プーリシーブ面1C(1D、2C、2D)の表面粗さも、バニシングローラBRの押圧力に比例することから、プーリシーブ面1C(1D、2C、2D)の内径端で最も表面粗さが小さくなり、外径側へ移るに連れて表面粗さが大きくなり、外径端で表面粗さが最も大きくなるよう形成することができる。
【0019】
このようにプーリシーブ面1C(1D、2C、2D)が加工された円錐ディスク1A、1B、2A、2Bにより可変プーリを形成して入力プーリ1および出力プーリ2とし、入出力プーリ1、2のV溝に金属ベルト3を巻掛けると、加工荷重を外径側より大きくして硬度を大きくしたプーリシーブ面1C(1D、2C、2D)の内径側では、プーリシーブ面1C(1D、2C、2D)の摩耗を抑制することができる。また、加工荷重を高くすると表面粗さが小さくなるため、硬度の大きいプーリシーブ面1C(1D、2C、2D)の内径側の表面粗さは小さくなり、プーリシーブ面1C(1D、2C、2D)がエレメントフランク面3Cを摩耗させることを抑制することができる。結果として、プーリシーブ面1C(1D、2C、2D)とエレメントフランク面3Cの両方の摩耗を抑制するプーリシーブ面1C(1D、2C、2D)の硬度および表面粗さをプーリシーブ面1C(1D、2C、2D)全域にわたって連続的に得ることができる。
【0020】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0021】
(ア)可変プーリを構成する一対の円錐ディスク1A、1B、2A、2Bのプーリシーブ面1C、1D、2C、2Dを硬度の高い内径端から硬度の低い外径端に向かって連続的に硬度を変化させて形成したため、プーリシーブ面1C、1D、2C、2Dの摩耗が発生する径領域では摩耗の程度によって硬度を上げ、シーブ面1C、1D、2C、2Dの摩耗を抑制することができる。また、プーリシーブ面1C、1D、2C、2Dの摩耗が小さい径の範囲では硬度をあまり上げず、シーブ面1C、1D、2C、2Dがエレメントフランク面3Cを摩耗させることを抑制することができる。そして、プーリシーブ面1C、1D、2C、2Dの硬度向上代を径方向に連続的に変化させることによって、全てのベルト巻き付き径においてシーブ面1C、1D、2C、2D及びエレメントフランク面3Cの摩耗を効果的に抑制することができる。
【0022】
(イ)可変プーリを構成する一対の円錐ディスク1A、1B、2A、2Bのプーリシーブ面1C、1D、2C、2Dを、表面粗さが小さい内径端から表面粗さが大きい外径端に向かって連続的に表面粗さを変化させて形成したため、プーリシーブ面1C、1D、2C、2Dの面圧の高い箇所ではシーブ面1C、1D、2C、2Dの表面粗さを小さくすることができ、シーブ面1C、1D、2C、2Dがエレメントフランク面3Cを摩耗させることを抑制することができる。また、プーリシーブ面1C、1D、2C、2Dの面圧の低い箇所ではプーリシーブ面1C、1D、2C、2Dの表面粗さを大きいままとしても、プーリシーブ面1C、1D、2C、2Dによるエレメントフランク面3Cの摩耗が抑えられる。
【0023】
(ウ)溝幅を変更可能な可変プーリを構成する一対の円錐ディスク1A、1B、2A、2Bを対向配置して備えるベルト式無段変速機の円錐ディスク1A、1B、2A、2Bのプーリシーブ面1C、1D、2C、2Dを、回転状態の円錐ディスク1A、1B、2A、2Bのプーリシーブ面1C、1D、2C、2DにバニシングローラBRを押圧し、その押圧荷重をプーリシーブ面1C、1D、2C、2Dの内径端で最大とし、内径端から外径端に向かって連続的に減少させ、外径端で最小とすることで形成するため、加工荷重を外径側より大きくして硬度を大きくしたプーリシーブ面1C、1D、2C、2Dの内径側では、プーリシーブ面1C、1D、2C、2Dの摩耗を抑制することができる。また、加工荷重を高くすると表面粗さが小さくなるため、硬度の大きいプーリシーブ面1C、1D、2C、2Dの内径側の表面粗さは小さくなり、プーリシーブ面1C、1D、2C、2Dがエレメントフランク面3Cを摩耗させることを抑制することができる。結果として、プーリシーブ面1C、1D、2C、2Dとエレメントフランク面3Cの両方の摩耗を抑制するプーリシーブ面1C、1D、2C、2Dの硬度および表面粗さをプーリシーブ面1C、1D、2C、2D全域にわたって連続的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すベルト式無段変速機の概略側面図。
【図2】同じく金属ベルトと可変プーリとの接触状態を示す部分断面図。
【図3】本実施形態の円錐ディスクの断面図(A)および硬度(B)並びに表面粗さ(C)の分布図。
【図4】エレメントフランク面とプーリシーブ面の面圧分布図。
【図5】プーリシーブ面の加工方法を示す概略図。
【図6】図5の加工方法により得られるプーリシーブ面の表面状態を示す概略図。
【符号の説明】
BR バニシングローラ
1 入力プーリ
1A、1B、2A、2B 円錐ディスク
1C、1D、2C、2D プーリシーブ面
2 出力プーリ
3 金属ベルト
3C エレメントフランク面
4 入力軸
5 出力軸

Claims (2)

  1. 一対の円錐ディスクを対向配置して形成したV溝の溝幅を変更可能な可変プーリを、オフセット配置の入力軸側および出力軸側それぞれに設け、これら入出力軸の可変プーリ間に金属ベルトを巻掛けたベルト式無段変速機において、
    回転状態の円錐ディスクのプーリシーブ面にバニシングローラを押圧して表面加工するローラバニシング加工により、前記円錐ディスクのプーリシーブ面を、硬度が高く且つ表面粗さが小さい内径端から硬度が低く且つ表面粗さが大きい外径端に向かって連続的に硬度と表面粗さを変化させて形成したことを特徴とするベルト式無段変速機。
  2. オフセット配置の入力軸側および出力軸側それぞれに金属ベルトが巻掛けられるV溝の溝幅を変更可能な可変プーリを備え、可変プーリは一対の円錐ディスクを対向配置して備えるベルト式無段変速機の製造方法であって、
    回転状態の円錐ディスクのプーリシーブ面にバニシングローラを押圧し、その押圧荷重をプーリシーブ面の内径端で最大とし、内径端から外径端に向かって連続的に減少させ、外径端で最小として、
    円錐ディスクのプーリシーブ面を、硬度が高く且つ表面粗さが小さい内径端から硬度が低く且つ表面粗さが大きい外径端に向かって連続的に硬度と表面粗さを変化させて形成することを特徴とするベルト式無段変速機の製造方法
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