JP3743902B2 - ベルト駆動システム - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、一対のプーリ間に高負荷伝動用のブロックベルトを掛け渡してなるベルト駆動システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
従来より、CVTと呼ばれる自動車等用の無段変速機に使用されるベルトは、極めて高いトルクの伝動能力を必要とするため、各種の高負荷ベルトが知られている(例えば特開昭55−27595号、特開昭56−76745号、特開昭59−77147号の各公報参照)。
また、エンドレスの一対の張力帯と、多数のブロックとで構成され、ブロックを張力帯に対しベルト長手方向に係止固定してなるブロックベルトと呼ばれる高負荷伝動用ベルトについても提案がなされている(特開昭60−49151号、特開昭61−206847号、特開昭62−54348号の各公報参照)。
【0003】
この種のブロックベルトにおいては、伝動可能な負荷に関連するプーリ推力を各ブロックで受ける構造であり、各ブロック左右両側の当接部とプーリのベルト溝面との間の動摩擦係数(以下、単に摩擦係数μという)は、摩擦伝動能力を高める観点から、通常0.3以上の値に設定されている。
すなわち、自動車用のCVTシステムでは、エンジンルーム内に配置される関係からコンパクト化及び軽量化が要求されるが、同じ変速比を得るためにベルトの軸方向の移動量が小さく、従ってシステム全体の軸方向に沿った大きさが小さくて済むことから、プーリの楔角は小さく設定され、望ましくは30°以下とされている。そして、一般的に、上記摩擦係数μには、この楔角により決まる最適範囲があるが、これまでのCVTシステムでは、高馬力のトルク伝動を優先する観点から、摩擦係数μが0.3以上の領域で使用しているのが現状である。
【0004】
しかし、このように摩擦係数μを高く設定すると、ベルト走行時の騒音レベルが高くなるとともに、プーリからのベルトの抜け性が悪くなり、ブロックに異常な力が発生してその早期破壊や張力帯の切断等を招くという不具合がある。
そのため、プーリとベルトとの間の摩擦係数μを、伝動能力からと騒音レベルからの中間点に設定するため、騒音レベルが十分低い点に摩擦係数μを設定できないという問題点がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、請求項1の発明では、多数のブロックが張力帯に対しベルト長手方向に係止固定されてなる高負荷伝動用ブロックベルトを、駆動プーリ及び従動プーリの各ベルト溝面に当接状に巻きかけてなるベルト駆動システムにおいて、上記ブロックベルトのブロックのベルト溝面に対する当接面は樹脂材で構成され、上記プーリのうち、少なくとも一方のプーリのベルト溝面の面粗度を、円周方向の面粗度がRa0.25以下になるように設定し、半径方向の面粗度がRa0.35以上になるように設定した構成としている。
【0006】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明の一実施例に係る高負荷伝動用のベルト駆動システムAを模式的に示し、このベルト駆動システムは例えば自動車の変速機(CVT)として使用される。1,2はそれぞれ互いに並行に配置支持された駆動軸及び従動軸であって、上記駆動軸1には可変プーリからなる駆動プーリ3が、また従動軸2には同様の従動プーリ7がそれぞれ設けられている。
上記駆動プーリ3は、駆動軸1に回転一体にかつ摺動不能に固定されたフランジ状の固定シーブ4と、該固定シーブ4に対向するように駆動軸1に摺動可能にかつ回転一体にスプライン等により結合されたフランジ状の可動シーブ5とからなり、これら両シーブ4,5間には所定の楔角(例えば26°)を有する断面V字状のベルト溝面6が形成されている。
【0007】
一方、従動プーリ7は、上記駆動プーリ3と同様の構成であり、従動軸2に回転一体にかつ摺動不能に固定された固定シーブ8と、該固定シーブ8に、上記駆動プーリ3における固定シーブ4に対する可動シーブ5の対向方向と逆方向でもって対向するように従動軸2に摺動可能にかつ回転一体に結合された可動シーブ9とからなり、これらの両シーブ8,9間には、上記駆動プーリ3と同じ楔角を有するベルト溝面10が形成されている。
【0008】
そして、上記駆動プーリ3及び従動プーリ7のベルト溝面6,10間には、図2および図3に示すようなブロックベルトBが巻き掛けられている。
ブロックベルトBは、上下面にそれぞれ長手方向に並んで形成された多数の契合部を有し、かつ内部に心線が埋設されたエンドレスの平ベルトからなる一対の張力帯11,11と、左右側面に上記張力帯11,11を嵌合する切欠状の嵌合溝と、左右側面にプーリのベルト溝面6,10に当接する当接面12b,12bとを有する多数のブロック12,12で構成されている。尚、各ブロック12の当接面12b,12bは樹脂材12aで構成されている。
【0009】
図示しないモーター等からなる変速機構により駆動及び従動プーリ3,7の各可動シーブ5,9をそれぞれ固定シーブ4,8に対して接離させて各プーリ3,7のプーリ径(ベルトBに対する有効半径)を変更する。例えば駆動プーリ3の可動シーブ5を固定シーブ4に接近させ、かつ従動プーリ7の可動シーブ9を固定シーブ8から離隔させた時には、駆動プーリ3のプーリ径を従動プーリ7よりも大きくすることにより、駆動軸1の回転を従動軸2に増速して伝動することができる。一方、逆に、図示のように、駆動プーリ3の可動シーブ5を固定シーブ4から離隔させ、かつ従動プーリ7の可動シーブ9を固定シーブ8に接近させたときには、駆動プーリ3のプーリ径を小にし、従動プーリ7のプーリ径を大きくすることにより、駆動軸1の回転を減速して従動軸2に伝えることができるものである。
【0010】
なお、発明者らは、ベルト溝面6,10の面粗度Raを変えたプーリを作成して、摩擦係数μを測定したところ、図4のような結果が得られ、この結果から、面粗度Raが粗くなると摩擦係数μが低くなることが判明した。
【0011】
次に、発明者らは、駆動プーリ3と従動プーリ7とを図1に示すようなレイアウトに配置し、これらプーリ間にブロックベルトBを巻き掛けてベルト走行させ、騒音テストを行った。
【0012】
騒音テストにおいて、例1では、駆動プーリ3及び従動プーリ7とも、ベルト溝面6,10の、半径方向の面粗度Raを3.0、円周方向の面粗度Raを0.2に設定したところ、ベルト騒音は67dBであった。また、この条件でのブロックベルトBの伝達能力は十分であった。(図5のスリップテストのa線で示す。)
【0013】
次に、例2では、駆動プーリ3及び従動プーリ7とも、ベルト溝面6,10の、半径方向の面粗度Raを1.0、円周方向の面粗度Raを0.2に設定したところ、ベルト騒音は73dBであった。また、この条件でのブロックベルトBの伝達能力は十分であった。(図5のスリップテストのa線で示す。)
【0014】
また、例3では、駆動プーリ3のベルト溝面6の半径方向の面粗度Raを1.0、従動プーリ7のベルト溝面10の半径方向の面粗度Raを0.2とし、駆動プーリ3及び従動プーリ7ともベルト溝面6,10の円周方向の面粗度Raは0.4に設定したところ、ベルト騒音は75dBであった。また、この条件でのブロックベルトBの伝達能力は十分であった。(図5のスリップテストのa線で示す。)
【0015】
また、例4では、駆動プーリ3及び従動プーリ7とも、ベルト溝面6,10の、半径方向の面粗度Raを0.2、円周方向の面粗度Raを0.2に設定したところ、ベルト騒音は80dBであった。また、この条件でのブロックベルトBの伝達能力は十分であった。(図5のスリップテストのa線で示す。)
即ち例4では、半径方向の面粗度Raと円周方向の面粗度Raを同じにした従来例の設定であり、騒音レベルが高いことがわかる。
【0016】
また、例5では、駆動プーリ3及び従動プーリ7とも、ベルト溝面6,10の、半径方向の面粗度Raを1.0、円周方向の面粗度Raを1.0に設定したところ、ベルト騒音は73dBであった。また、この条件でのブロックベルトBの伝達能力は不十分であった。(図5のスリップテストのb線で示す。)
即ち例5では、騒音レベルは低いが、スリップが発生することが確認された。
【0017】
上記の結果を参考にして、伝動能力を高く維持でき、かつ騒音レベルを十分低くするため、発明者らは、駆動プーリ3と従動プーリ7のうち、少なくとも一方のプーリのベルト溝面6,10の面粗度Raを、円周方向はRa0.25以下となるように設定し、半径方向はRa0.35以上となるように設定した。
なお、上記駆動プーリ3と従動プーリ7のベルト溝面6,10には、摩擦係数安定化のため、無電解Ni−Pメッキ等のコーティングを施すことが望ましい。
【0018】
【発明の効果】
本発明は、多数のブロックが張力帯に対しベルト長手方向に係止固定されてなる高負荷伝動用ブロックベルトを、駆動プーリ及び従動プーリの各ベルト溝面に当接状に巻きかけてなるベルト駆動システムにおいて、ブロックベルトのブロックのベルト溝面に対する当接面は樹脂材で構成され、プーリのうち、少なくとも一方のプーリのベルト溝面の面粗度を、円周方向の面粗度がRa0.25以下になるように設定し、半径方向の面粗度がRa0.35以上になるように設定したことにより、プーリのベルト溝面の面粗度を円周方向と半径方向で設定を変えて、ベルト走行時の騒音レベルを低くすることができ、また、スリップの発生を低減させて満足いく伝動能力を確保することができ、自動車用の無段変速機におけるベルト駆動システムにおいて有効に用いることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ベルト駆動システムを模式的に示す概略図である。
【図2】 ブロックベルトの斜視図である。
【図3】 ブロックの断面図である。
【図4】 摩擦係数とプーリの面粗度との関係を示す特性図である。
【図5】 スリップテストの結果を示す特性図である。
【符号の説明】
A 無段変速システム
B ブロックベルト
3 駆動プーリ
6,10 ベルト溝面
7 従動プーリ
12 ブロック
12b 当接面
Claims (1)
- 多数のブロックが張力帯に対しベルト長手方向に係止固定されてなる高負荷伝動用ブロックベルトを、駆動プーリ及び従動プーリの各ベルト溝面に当接状に巻きかけてなるベルト駆動システムにおいて、上記ブロックベルトのブロックのベルト溝面に対する当接面は樹脂材で構成され、上記プーリのうち、少なくとも一方のプーリのベルト溝面の面粗度を、円周方向の面粗度がRa0.25以下になるように設定し、半径方向の面粗度がRa0.35以上になるように設定したことを特徴とするベルト駆動システム。
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