JP4251833B2 - コーヒー抽出液の精製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コーヒー抽出液の精製方法に関し、さらに詳しくは、コーヒー豆の水性溶媒抽出液に微生物を接触処理せしめ、異味、異臭またはその原因物質などの夾雑物を除去することを特徴とするコーヒー抽出液の精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コーヒー豆、特にコーヒー生豆中には、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸、ネオクロロゲン酸、カフェー酸、フェルラ酸などが含まれており、これらの成分の抗酸化作用等を利用して各種の飲食品、化粧品、保健・医薬品等に応用されている。例えば、色素の褪色防止剤(特公昭59−50265号公報、特公平1−22872号公報、特許第2904968号公報)、天然香料の劣化防止剤(特許第3039706号公報)、飲料の香味劣化防止剤(特開平8−23939号公報)、美白化粧料(特開平8−92057号公報、特開平8−26967号公報)、高血圧の予防・改善・治療剤(特開2002−87977号公報)などとして応用されている。
【0003】
コーヒー豆からクロロゲン酸などの有用物質を採取する方法としては、例えば、生コーヒー豆粉の水性スラリーをプロテアーゼ及び/又はセルラーゼの存在下に処理する方法(特開昭58−138347号公報)、生コーヒー豆粉を還流下に水抽出する方法(特公昭61−30549号公報)、生コーヒー豆を粗粉砕し、脱脂し、次いで微粉砕した後脱脂し、熱水抽出する方法(特開昭62−111671号公報)などが提案されている。また、コーヒー豆抽出液中のクロロゲン酸などの有用成分の精製方法としては、例えば、コーヒー生豆の水性溶媒抽出物を多孔性重合樹脂と接触処理し、次いで該樹脂を稀アルカリ水溶液で溶離採取する方法(特許第2665990号公報)などが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した如き従来提案の方法によって得られるコーヒー豆抽出液は、コーヒー豆由来のエグ味、生臭い香気などの異味、異臭があるため飲食品、化粧品、保健・医薬品などへの使用が制限されるなどのトラブルがあった。一般に、植物抽出液などの異味、異臭を除去する方法としては活性炭による脱臭が採用されているが、コーヒー豆抽出液を活性炭で処理した場合には、有用成分であるクロロゲン酸なども吸着除去され問題があった。
従って、本発明の目的は、コーヒー豆抽出液中のクロロゲン酸などの有用成分への影響がなく、異味、異臭またはその原因物質などの夾雑物を除去し、飲食品、保健・医薬品、化粧品等に広く使用できるコーヒー抽出液の精製方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記のごとき従来型のコーヒー抽出液の精製方法について、その欠点を解決すべく鋭意研究を行った結果、今回、コーヒー豆の水性溶媒抽出液に微生物を接触処理したところ、クロロゲン酸などの有用成分の含有量等には影響を及ぼさず、異味、異臭またはその原因物質などの夾雑物を効率よく除去できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば、コーヒー豆、特にコーヒー生豆の水性溶媒抽出液に酵母などの微生物を接触処理せしめ、異味、異臭またはその原因物質などの夾雑物を除去することを特徴とするコーヒー抽出液の精製方法が提供される。
【0007】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において利用しうるコーヒー豆は、特に制限されるものでなく、例えば、アラビカ種、ロブスタ種及びリベリカ種等のいずれでも良く、その種類、産地を問わずいかなるコーヒー豆でも利用することができる。コーヒー豆は、生豆でも通常採用されている焙煎方法によって焙煎されたコーヒー豆のいずれでも利用できるが、有用成分であるクロロゲン酸などの含量の高いコーヒー生豆が好ましい。
【0009】
かかるコーヒー豆からクロロゲン酸などの有用成分を抽出する水性溶媒としては、例えば、水又は含水水混和性有機溶媒、例えば、含水率約5重量%以上、好ましくは含水率約5〜約90重量%のメタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン等の含水水混和性有機溶媒を例示することができる。殊に含水エタノールを好ましく挙げることができる。これらの水または含水水混和性有機溶媒は通常、コーヒー豆粉砕物1重量部あたり約2〜約50重量部を使用し、温度約20〜約80℃にて抽出を行う。抽出操作はバッチ式又はカラムによる連続式等の従来既知の抽出方法をそのまま採用することができる。
【0010】
本発明のコーヒー豆抽出液は、上述した方法によって得られるコーヒー豆抽出液そのものでも良いし、また例えば、減圧濃縮などの適宜な濃縮手段を採用して濃縮した濃縮物とすることもできる。また更に、例えば、特許第2665990号公報に記載されているスチレン・ジビニルベンゼン系多孔性樹脂吸着剤、メタクリル酸エステル系合成樹脂吸着剤などの合成樹脂吸着剤などを用いてクロロゲン酸などの有用成分を精製した精製液も使用することができる。
【0011】
本発明で使用しうる微生物は、酵母類として、サッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、チゴサッカロマイセス・ルキシイ(Zygosaccharomyces rouxii)を使用することができる。かかる酵母類の例としては、例えば、市販のパン酵母あるいはサッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)JCM1818、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)IFO0433、チゴサッカロマイセス・ルキシイ(Zygosaccharomyces rouxii)IFO0320などの公知自由分譲菌を挙げることができ、さらに好ましくは、例えば、サッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)JCM1818を例示することができる。
【0012】
また、カビ類としては、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)を挙げることができ、また、細菌類としては、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)などの公知自由分譲菌を挙げることができる。
【0013】
これらの酵母類、カビ類、細菌類などの微生物は直接添加することもできるし、あらかじめ前培養した後添加することもでき、さらに、微生物培養物からメンブランフィルターなどによってろ過分離した菌体を添加することもできる。この前培養を例示すれば、前記した如き酵母類、例えば、サッカロミセス属に属するパン酵母を、例えば、pH3〜7の無機培地、ポテトデキストロース培地もしくはMY培地等の複合培地に接種し、10℃〜40℃、好ましくは20℃〜35℃にて、12時間〜72時間好気的もしくは嫌気的条件下に行う方法を挙げることができる。また前記した如きカビ類、例えば、アスペルギルス・オリゼーを、例えば、蒸米のごとき培地に接種し、30℃で3〜7日間静置培養する方法を例示することができる。
【0014】
上記した如きコーヒー豆抽出液に、前記に例示した酵母類、カビ類、細菌類などの微生物を接触処理せしめる方法には特別の制限はなく、例えば、前記のコーヒー豆抽出液に上記の酵母類、カビ類、細菌類などの微生物を接触処理して異味、異臭またはその原因物質などの夾雑物を除去する。微生物による接触処理条件は、微生物の種類により異なるが一般的には接触処理する微生物としては、前記した如き酵母類、カビ類、細菌類などの微生物の前培養液が好ましく、その使用量には特別の制限はないが抽出液100重量部あたり、通常、0.1重量部〜10重量部程度を例示することができる。また、接触処理条件についても特に制限はなく、一般に、20℃〜35℃の温度範囲で、12時間〜72時間、静置または攪拌する方法が挙げられる。また、微生物を接触処理する際に、微生物の栄養源として、例えば、糖類などを添加することもできる。接触処理後、分離濾過した後、適宜な殺菌条件を採用して殺菌し、菌体残骸を遠心分離、ろ過により除去することにより精製されたコーヒー豆抽出液を得ることができる。
【0015】
上述の如き精製方法によって得られる本発明のコーヒー豆抽出液は、クロロゲン酸などの有用成分には影響がなく、異味、異臭またはその原因物質が除去され、このままの形で、あるいは乳化、粉末化した形態で広い分野において使用可能である。乳化方法は通常、アラビアガム、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤、多価アルコール等を添加して、ホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザーなどを用いて乳化することにより行うことができる。さらに、粉末化は通常、乳糖、デキストリン、アラビアガムなどの賦形剤を添加し、真空乾燥、噴霧乾燥などの乾燥手段を用いて行うことができる。このようにして得られるコーヒー豆抽出液は、クロロゲン酸などの有用成分を含有しているため、各種飲食品類、嗜好品類、餌飼料類、保健・医薬品類、化粧品類などの広範囲な利用分野において有用である。例えば、ドロップ、キャンディー、チョコレート、アイスクリーム、シャーベット、ゼリー、清涼飲料、乳飲料、飴、畜肉加工食品、焼き肉のたれ、漬け物などの如き飲食品、嗜好品類;例えば、錠剤、液状経口薬などの如き保健・医薬品類;あるいは、皮膚化粧料、石鹸、シャンプーの如き化粧品類などに有用である。
【0016】
次に実施例、比較例および参考例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0017】
【実施例】
参考例1:コーヒー生豆抽出液の調製
コーヒー生豆粉砕物1Kgを1Lカラム3本に分けて仕込み、蒸気で1時間蒸した。4Lの熱水で抽出し、約3Lの抽出液(Bx10°)を得た。
【0018】
実施例1
参考例1で得られたコーヒー生豆抽出液1000gにサッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)JCM1818の培養液(GYP培地にて、25℃、24時間静置培養)10gを添加して、25℃にて24時間攪拌処理した後、90℃にて10分間殺菌後、No.2濾紙濾過(ケイソウ土プレコート)し、得られた濾液を85℃にて15分間殺菌しコーヒー抽出液(本発明品1)965gを得た。
【0019】
実施例2
実施例1において、サッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)JCM1818の培養液の代わりに、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)IFO0433の培養液(GYP培地にて、25℃、24時間静置培養)を使用した以外は実施例1と同様に処理し、コーヒー抽出液(本発明品2)を得た。
【0020】
実施例3
実施例1において、サッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)JCM1818の培養液の代わりに、チゴサッカロマイセス・ルキシイ(Zygosaccharomyces rouxii)IFO0320の培養液(NaCl5%含有GYP培地にて、25℃、24時間静置培養)を使用した以外は実施例1と同様に処理し、コーヒー抽出液(本発明品3)を得た。
【0021】
実施例4
実施例1において、サッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)JCM1818の培養液の代わりに、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)IFO4075の培養液(GYP培地にて、30℃、24時間振盪培養)を使用した以外は実施例1と同様に処理し、コーヒー抽出液(本発明品4)を得た。
【0022】
実施例5
実施例1において、サッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)JCM1818の培養液の代わりに、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)JCM1149の培養液(普通培地にて、30℃、24時間静置培養)を使用した以外は実施例1と同様に処理し、コーヒー抽出液(本発明品5)を得た。
【0023】
比較例1
参考例1で得られたコーヒー生豆抽出液200gをNo.2濾紙濾過(ケイソウ土プレコート)し、得られた濾液を85℃にて15分間殺菌しコーヒー抽出液(比較品1)190gを得た。
【0024】
比較例2
参考例1で得られたコーヒー生豆抽出液200gに活性炭ZN−50(北越炭素社製)2gを添加して、25℃にて24時間攪拌処理した後、90℃にて10分間殺菌後、No.2濾紙濾過(ケイソウ土プレコート)し、得られた濾液を85℃にて15分間殺菌しコーヒー抽出液(比較品2)180gを得た。
【0025】
比較例3
比較例2において、活性炭ZN−50の使用量を2gから6.7gに変更した以外は比較例2と同様に処理しコーヒー抽出液(比較品3)を得た。
(コーヒー抽出液の香気・香味比較)
本発明品1〜5および比較品1〜3のコーヒー抽出液について、専門パネラー10名にて、下記に示す評価基準で評価し、専門パネラー10名の平均的な評価を表1に示す。
香気・香味評価基準
◎:異味・異臭を感じない
○:異味・異臭を僅かに感じる
△:異味・異臭をやや強く感じる
×:異味・異臭を強く感じる
(クロロゲン酸の残存率)
本発明品1〜5および比較品1〜3のコーヒー抽出液中のクロロゲン酸を以下に示す方法で測定し、参考例1で得られたコーヒー抽出液中のクロロゲン酸を100%としたときの残存率で示し、その結果を表1に示す。
クロロゲン酸の測定方法
各抽出液約0.3gをイオン交換水にて1Lに希釈し、325nmの吸光度を測定した。未処理の抽出液の吸光度を100%として各抽出液のクロロゲン酸の残存率を求めた。
【0026】
【表1】
表1
Figure 0004251833
【0027】
表1の結果から明らかなとおり、本発明のコーヒー抽出液は、比較品に比べクロロゲン酸の含有率には影響を受けず、異味・異臭は感じられなかった。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたとおり、本発明はコーヒー豆抽出液から異味、異臭またはその原因物質などの夾雑物を除去し、飲食品、化粧品等に広く使用できるコーヒー抽出液の精製方法を提供することができる。

Claims (2)

  1. コーヒー豆の水性溶媒抽出液にサッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、チゴサッカロマイセス・ルキシイ(Zygosaccharomyces rouxii)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)およびラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)から選ばれる少なくとも1種の微生物を接触処理せしめ、コーヒー豆由来の異味・異臭を除去することを特徴とするコーヒー抽出液の精製方法。
  2. コーヒー豆がコーヒー生豆である請求項1に記載の精製方法。
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