JP4251357B2 - 前立腺癌発現プロファイル - Google Patents

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Description

本願明細書は、2002年8月1日に速達ラベル番号EV092300383USで出願された、出願番号が未だ指定されていない米国特許出願、2001年8月2日に出願された米国特許仮出願第60/309,581号、および2001年11月15日に出願された米国特許仮出願第60/334,468号に優先して請求される。本発明は、米国国立衛生研究所(NIH)から与えられた研究助成金番号5 P50 CA69568を基に米国政府の支援により行われた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
発明の技術分野
本発明は、癌マーカーを含むがこれらに限定されるものではない、癌診断のための組成物および方法に関する。特に本発明は、前立腺癌に関連した遺伝子発現プロファイルを提供する。本発明は更に、前立腺癌の診断、特徴決定、および治療に有用な新規マーカーを提供する。
発明の背景
前立腺癌(PCA)は、65歳を超える男性の9名に1名が罹患し、男性の癌に関連した死因では肺癌に次ぐ大きい原因である(Abate-ShenおよびShen、Genes Dev、14:2410[2000];Ruijterら、Endocr Rev、20:22[1999])。アメリカ癌協会(ACS)は、2001年には、約184,500名のアメリカ人男性が前立腺癌と診断され、39,200名が死亡すると推定している。
前立腺癌は、典型的には、直腸指診および/または前立腺特異抗原(PSA)スクリーニングで診断される。上昇した血清PSAレベルは、PCAの存在を示すことができる。PSAは、前立腺細胞によってのみ分泌されるので、これは前立腺癌のマーカーとして使用される。健康な前立腺は安定した量(典型的には4ng/ml未満の、または「4」以下のPSA読み値)を生成するのに対し、癌細胞はその癌の重症度に対応して上昇する量を生成する。レベル4〜10の間で、医師は患者が前立腺癌を有することを疑い始め、50を超える量は、腫瘍が体内で異所に広がったことを示している。
PSAまたは指診が癌が存在する強い可能性を示す場合、経直腸超音波断層検査(TRUS)を用い、前立腺を写像(map)し、疑わしい領域を示す。前立腺の様々な区画(sector)の生検を用い、前立腺癌が存在するかどうかを決定する。治療の選択肢は癌病期に応じて決まる。低いグリーソンスコアを有しおよび腫瘍が前立腺以外に広がっていない推定余命が10年またはそれ未満である男性は、慎重な経過観察(watchful waiting)により処置されることが多い(無治療)。より急速進行性の癌の治療の選択肢は、前立腺を完全に摘出する根治的前立腺切除術(RP)(神経温存または非温存術)のような手術療法、ならびに体外から前立腺へ線量を導く外部ビームが適用された、または癌細胞を局所的に殺傷するために前立腺内に移植された低線量放射性核種による放射線療法を含む。抗アンドロゲンホルモン療法も使用され、単独で、または手術もしくは放射線と併用される。ホルモン療法は、下垂体がテストステロン産生を刺激するホルモンを産生することを阻止する、黄体形成/放出ホルモン(LH-RH)アナログを使用する。患者は、生きている限りはLH-RHアナログの注射を受け続けなければならない。
手術療法またはホルモン療法は、限局的PCAにとって有効であることが多いが、進行した疾患は、本質的に不治である。抗アンドロゲン療法(androgen ablation)は、進行したPCAにとって最も一般的療法であり、アンドロゲン依存型悪性細胞の大量のアポトーシスおよび一時的腫瘍退縮につながる。しかしほとんどの症例において、腫瘍は、報復的(vengeance)に再発し、かつアンドロゲンシグナルとは無関係に増殖し得る。
前立腺特異抗原(PSA)スクリーニングの出現は、PCAのより早期の検出およびPCAによる死亡の有意な低下をもたらしている。しかしPSAスクリーニングの癌-特異性死亡率に与える影響は依然不明であり、プロスペクティブ無作為化スクリーニング試験の結果は未だ確定されていない(Etzioniら、J. Natl. Cancer Inst.、91:1033[1999];Maattanenら、Br. J. Cancer、79:1210[1999];Schroderら、J. Natl. Cancer Inst.、90:1817[1998])。血清PSA試験の主な限界は、特にPSA検出の中間範囲(4〜10ng/ml)における、前立腺癌の感度および特異性の欠如である。上昇した血清PSAレベルが、良性前立腺肥大(BPH)および前立腺炎のような悪性でない状態の患者において検出されることが多く、検出された癌の急速進行性についての情報はほとんど提供しない。増大した血清PSA試験と同時に実施される前立腺穿刺生検の数が劇的に増加している(Jacobsenら、JAMA、274:1445[1995])。このことは、不確かな前立腺穿刺生検の急増を招いている(EpsteinおよびPotter、J. Urol.、166:402[2001])。従って、PSAスクリーニングを補完する追加的血清バイオマーカーおよび組織バイオマーカーの開発が必要とされている。
発明の概要
本発明は、癌マーカーを含むがこれらに限定されるものではない、癌診断の組成物および方法に関する。特に本発明は、前立腺癌に関連した遺伝子発現プロファイルを提供する。本発明は更に、前立腺癌の診断、特徴決定、および治療に有用な新規マーカーも提供する。
一部の態様において、本発明は、対象由来の前立腺組織試料を提供する工程;および、試料中のヘプシン発現の存在または非存在を検出し、これにより、前立腺組織試料を特徴決定する工程を含む、対象の前立腺組織を特徴決定する方法を提供する。一部の態様において、ヘプシン発現の検出は、ヘプシンmRNAの存在を検出する工程を含む。別の態様において、ヘプシンmRNA発現の存在の検出は、ヘプシンmRNAを、ヘプシンmRNAに相補的な核酸プローブへ曝露する工程を含む。更に別の態様において、ヘプシン発現の存在の検出は、ヘプシンポリペプチドの存在を検出する工程を含む。一部の態様において、ヘプシンポリペプチドの存在の検出は、ヘプシンポリペプチドの、ヘプシンポリペプチドに特異的な抗体に対する曝露、および抗体のヘプシンポリペプチドへの結合の検出を含む。一部の態様において、対象は、ヒト対象を含む。一部の態様において、試料は腫瘍組織を含む。一部の態様において、腫瘍組織試料は、術後腫瘍組織試料を含み、この方法は更に、c)ヘプシンの発現の存在または非存在の検出を基に前立腺特異抗原再上昇(PSA failure)のリスクを確定する工程を含む。一部の態様において、前立腺組織の特徴決定は、組織中の前立腺癌の病期の確定を含む。一部の態様において、この病期は、高度の前立腺上皮内腫瘍、良性前立腺肥大、前立腺癌、および転移性前立腺癌を含むが、これらに限定されるものではない。一部の態様において、この方法は更に、c)対象に予後判定を提供する工程を含む。一部の態様において、予後判定は、前立腺特異抗原発現再上昇が発生するリスクを含む。別の態様において、予後判定は、前立腺癌発症のリスクを含む。
本発明は、対象由来の前立腺組織試料を提供する工程;および、試料中のpim-1発現の存在または非存在を検出し、これにより前立腺組織試料を特徴決定する工程を含む、対象の前立腺組織を特徴決定する方法も提供する。一部の態様において、pim-1発現の存在の検出は、pim-1 mRNAの存在を検出する工程を含む。別の態様において、pim-1 mRNA発現の存在の検出は、pim-1 mRNAを、pim-1 mRNAに相補的な核酸プローブに曝露する工程を含む。更に別の態様において、pim-1発現の存在の検出は、pim-1ポリペプチドの存在を検出する工程を含む。一部の態様において、pim-1ポリペプチドの存在の検出は、pim-1ポリペプチドを、pim-1ポリペプチドに特異的な抗体に曝し、抗体のpim-1ポリペプチドへの結合を検出する工程を含む。一部の態様において、対象はヒト対象を含む。一部の態様において、試料は腫瘍組織を含む。一部の態様において、腫瘍組織試料は、術後の腫瘍組織試料を意味し、この方法は更に、c)pim-1発現の存在または非存在の検出を基に前立腺特異抗原再上昇のリスクを確定する工程を含む。一部の態様において、前立腺組織の特徴決定は、組織における前立腺癌の病期を確定する工程を含む。一部の態様において、この病期は、高度の前立腺上皮内腫瘍、良性前立腺肥大、前立腺癌、および転移性前立腺癌を含むが、これらに限定されるものではない。一部の態様において、この方法は更に、c)対象に予後判定を提供する工程を含む。一部の態様において、予後判定は前立腺特異抗原再上昇を生じるリスクを含む。別の態様において、予後判定は前立腺癌発症のリスクを含む。
本発明は更に、前立腺組織試料を提供する工程;および、
Figure 0004251357
からなる群より選択される2種またはそれよりも多いマーカーの、非癌性前立腺組織対照に対する減少または増加した発現を検出し、これにより前立腺組織試料を特徴決定する工程を含む、対象の前立腺組織を特徴決定する方法を提供する。一部の態様において、検出は、3種またはそれよりも多いマーカーを検出する工程を含む。別の態様において、検出は、5種またはそれよりも多いマーカーを検出する工程を含む。より更なる態様において、検出は、10種またはそれよりも多いマーカーを検出する工程を含む。
加えて本発明は、前立腺癌と診断された対象由来の腫瘍試料を提供する工程;および、IGFBP5、MADH4、NBL1、SEPP1、RAB2、FAT、PP1CB、MPDZ、PRKCL2、ATF2、RAB5A、およびカテプシンHからなる群より選択される、2種またはそれよりも多い癌マーカーの非癌性前立腺組織対照に対する減少した発現を検出する工程であり、ここで減少した発現は、転移性前立腺癌の診断である工程を含む、対象の前立腺癌を特徴決定する方法を提供する。一部の態様において、検出は、3種またはそれよりも多いマーカーを検出する工程を含む。別の態様において、検出は、5種またはそれよりも多いマーカーを検出する工程を含む。更に別の態様において、検出は、10種またはそれよりも多いマーカーを検出する工程を含む。
本発明は更に、前立腺癌と診断された対象由来の腫瘍試料を提供する工程;および、
Figure 0004251357
からなる群より選択される2種またはそれよりも多いマーカーの、非癌性前立腺組織に対する増加した発現を検出し、ここで増加した発現は、転移性前立腺癌の診断である工程を含む、対象における前立腺癌を特徴決定する方法を提供する。一部の態様において、検出は、3種またはそれよりも多いマーカーを検出する工程を含む。別の態様において、検出は、5種またはそれよりも多いマーカーを検出する工程を含む。より更なる態様において、検出は、10種またはそれよりも多いマーカーを検出する工程を含む。
一部の態様において、本発明は、ヘプシン発現の非存在の存在の特異的検出が可能な試薬;および、対象における癌の特徴決定のキットの使用のための指示書を備えた、対象の前立腺癌を特徴決定するキットを提供する。一部の態様において、試薬はヘプシンmRNAに相補的な核酸プローブを含む。別の態様において、この試薬はヘプシンポリペプチドへ特異的に結合する抗体を含む。一部の態様において、指示書は、インビトロ診断用医薬品の使用に関して、米国食品医薬品局が要求する指示書を含む。
別の態様において、本発明は、pim-1発現の非存在の存在の特異的検出が可能な試薬;および、対象における癌の特徴決定のキットの使用のための指示書を備える、対象の前立腺癌を特徴決定するためのキットを提供する。一部の態様において、この試薬はpim-1 mRNAに相補的な核酸プローブを含む。別の態様において、この試薬はpim-1ポリペプチドへ特異的に結合する抗体を含む。一部の態様において、この指示書は、インビトロ診断用医薬品の使用に関して、米国食品医薬品局が要求する指示書を含む。
より更なる態様において、本発明は、
Figure 0004251357
からなる群より選択される2種またはそれよりも多いマーカーの発現レベルを特異的に検出することが可能な2種またはそれよりも多い試薬;および、対象における癌の特徴決定のキットの使用のための指示書を備える、対象の前立腺癌を特徴決定するためのキットを提供する。一部の態様において、このキットは、3種またはそれよりも多いマーカーの発現レベルの特異的検出が可能な試薬を備える。別の態様において、このキットは、5種またはそれよりも多いマーカーの発現レベルの特異的検出が可能な試薬を備える。より更なる態様において、このキットは、10種またはそれよりも多いマーカーの発現レベルの特異的検出が可能な試薬を備える。一部の態様において、この指示書は、インビトロ診断用医薬品の使用に関して、米国食品医薬品局が要求する指示書を含む。
更に別の態様において、本発明は、IGFBP5、MADH4、NBL1、SEPP1、RAB2、FAT、PP1CB、MPDZ、PRKCL2、ATF2、RAB5A、およびカテプシンHからなる群より選択される2種またはそれよりも多いマーカーの減少した発現レベルを特異的に検出することが可能な2種またはそれよりも多い試薬;および、対象における癌の特徴決定のキットの使用に関する指示書を備える、対象の前立腺癌を特徴決定するためのキットを提供する。一部の態様において、このキットは、3種またはそれよりも多いマーカーの減少した発現レベルを特異的に検出することが可能な試薬を含む。別の態様において、このキットは、5種またはそれよりも多いマーカーの減少した発現レベルを特異的に検出することが可能な試薬を含む。より更なる態様において、このキットは、10種またはそれよりも多いマーカーの減少した発現レベルを特異的に検出することが可能な試薬を含む。一部の態様において、この指示書は、インビトロ診断用医薬品の使用に関して、米国食品医薬品局が要求する指示書を含む。
追加の態様において、本発明は、
Figure 0004251357
からなる群より選択される2種またはそれよりも多いマーカーの増大した発現レベルを特異的に検出することが可能な2種またはそれよりも多い試薬;および、対象における癌の特徴決定のキットの使用に関する指示書を備える、対象の前立腺癌を特徴決定するキットを提供する。一部の態様において、このキットは、3種またはそれよりも多いマーカーの減少した発現レベルを特異的に検出することが可能な試薬を含む。別の態様において、このキットは、5種またはそれよりも多いマーカーの減少した発現レベルを特異的に検出することが可能な試薬を含む。より更なる態様において、このキットは、10種またはそれよりも多いマーカーの減少した発現レベルを特異的に検出することが可能な試薬を含む。一部の態様において、この指示書は、インビトロ診断用医薬品の使用に関して、米国食品医薬品局が要求する指示書を含む。
本発明は、前立腺細胞試料;および、1種または複数の被験化合物を提供する工程;ならびに、前立腺細胞試料を被験化合物と接触させる工程;ならびに、被験化合物非存在下に対する被験化合物の存在下における前立腺細胞試料中のヘプシン発現の変化を検出する工程を含む、化合物のスクリーニング法も提供する。一部の態様において、検出はヘプシンmRNAの検出を含む。別の態様において、検出はヘプシンポリペプチドの検出を含む。一部の態様において、細胞はインビトロにある。別の態様において、細胞はインビボにある。一部の態様において、被験化合物はアンチセンス化合物を含む。別の態様において、被験化合物は薬剤を含む。
本発明は更に、前立腺細胞試料;および、1種または複数の被験化合物を提供する工程;ならびに、前立腺細胞試料を被験化合物と接触させる工程;ならびに、被験化合物非存在下に対する被験化合物存在下での前立腺細胞試料中のpim-1発現の変化を検出する工程を含む、化合物のスクリーニングの方法を提供する。一部の態様において、検出はpim-1 mRNAを検出する工程を含む。別の態様において、検出はpim-1ポリペプチドを検出する工程を含む。一部の態様において、細胞はインビトロにある。別の態様において、細胞はインビボにある。一部の態様において、被験化合物はアンチセンス化合物を含む。別の態様において、被験化合物は薬剤を含む。
本発明は、
Figure 0004251357
からなる群より選択される、2種またはそれよりも多いマーカーに関する遺伝子発現レベル情報を含む、前立腺癌発現プロファイルマップを提供する。一部の態様において、マップはコンピュータメモリーに保存されたデジタル情報である。一部の態様において、マップは3種またはそれよりも多いマーカーに関する情報を含む。別の態様において、マップは5種またはそれよりも多いマーカーに関する情報を含む。より更なる態様において、マップは10種またはそれよりも多いマーカーに関する情報を含む。
本発明は更に、IGFBP5、MADH4、NBL1、SEPP1、RAB2、FAT、PP1CB、MPDZ、PRKCL2、ATF2、RAB5A、およびカテプシンHからなる群より選択される2種またはそれよりも多いマーカーに関する遺伝子発現レベル情報を含む、前立腺癌発現プロファイルマップも提供する。一部の態様において、マップはコンピュータメモリーに保存されたデジタル情報である。一部の態様において、マップは3種またはそれよりも多いマーカーに関する情報を含む。別の態様において、マップは5種またはそれよりも多いマーカーに関する情報を含む。より更なる態様において、マップは10種またはそれよりも多いマーカーに関する情報を含む。一部の態様において、前立腺癌は転移性である。
本発明は更に、
Figure 0004251357
からなる群より選択される2種またはそれよりも多いマーカーに関する遺伝子発現レベル情報を含む、前立腺癌発現プロファイルマップを提供する。一部の態様において、マップはコンピュータメモリーに保存されたデジタル情報である。一部の態様において、マップは3種またはそれよりも多いマーカーに関する情報を含む。別の態様において、マップは5種またはそれよりも多いマーカーに関する情報を含む。より更なる態様において、マップは10種またはそれよりも多いマーカーに関する情報を含む。一部の態様において、前立腺癌は転移性である。
一部の態様において、本発明は、対象由来の前立腺組織試料を提供する工程;および、試料中のEZH2発現の存在または非存在を検出し、これによりその前立腺組織試料を特徴付ける工程を含む、対象の前立腺組織を特徴決定する方法を提供する。一部の態様において、EZH2発現の存在の検出は、EZH2 mRNAの存在を検出する工程(例えば、ヘプシンmRNAの、ヘプシンmRNAに相補的な核酸プローブへの曝露による工程を含むが、これらに限定されるものではない)を含む。別の態様において、EZH2発現の存在の検出は、EZH2ポリペプチドの存在を検出する工程(例えば、EZH2ポリペプチドをEZH2ポリペプチドに特異的抗体への曝露し、抗体のEZH2ポリペプチドへの結合の検出する工程を含むが、これらに限定されるものではない)を含む。一部の態様において、対象はヒト対象を含む。一部の態様において、試料は腫瘍組織を含む。一部の態様において、前立腺組織の特徴決定は、前立腺組織中の前立腺癌の病期を確定する工程を含む。ある態様において、病期は、高度の前立腺上皮内腫瘍、良性前立腺肥大、前立腺癌、および転移性前立腺癌からなる群より選択されるが、これらに限定されるものではない。一部の態様において、この方法は更に、予後判定(例えば、転移性前立腺癌発症のリスク)を対象へ提供する工程を含む。
更なる態様において、本発明は、EZH2の発現の非存在の存在を特異的に検出することが可能な試薬;および、対象における癌の特徴決定のキットの使用のための指示書を備える、対象の前立腺癌を特徴決定するためのキットを提供する。一部の態様において、試薬はEZH2 mRNAに相補的な核酸プローブを含む。別の態様において、試薬はEZH2ポリペプチドに特異的に結合する抗体を含む。ある種の態様において、指示書はインビトロ診断用医薬品の使用に関して、米国食品医薬品局が要求する指示書を含む。
更に別の態様において、本発明は、前立腺細胞試料;および、1種または複数の被験化合物を提供する工程;ならびに、前立腺細胞試料を被験化合物と接触させる工程;ならびに、被験化合物の非存在下に対する被験化合物存在下の前立腺細胞試料中のEZH2発現の変化を検出する工程を含む、化合物のスクリーニングの方法を提供する。一部の態様において、検出は、EZH2 mRNAを検出する工程を含む。別の態様において、検出は、EZH2ポリペプチドを検出する工程を含む。一部の態様において、細胞はインビトロにあり;他方別の態様においては、細胞はインビボにある。一部の態様において、被験化合物は、アンチセンス化合物を含む。ある種の態様において、被験化合物は薬剤を含む。
更に別の態様において、本発明は、対象由来の決定的でない前立腺生検組織を提供する工程;および、試料中のAMACRの発現の存在を検出し、これにより決定的でない前立腺生検組織試料を特徴決定する工程を含む、対象において決定的でない前立腺生検組織を特徴決定する方法を提供する。一部の態様において、AMACR発現の存在の検出は、AMACR mRNAの存在の検出(例えば、AMACR mRNAの、AMACR mRNAの少なくとも一部に相補的な核酸プローブへの曝露による)を含む。別の態様において、AMACR発現の存在の検出は、AMACRポリペプチドの存在の検出(例えば、AMACRポリペプチドの、AMACR ポリペプチドに特異的な抗体への曝露、およびその抗体のAMACRポリペプチドへの結合の検出による)を含む。一部の態様において、対象は、ヒト対象を含む。一部の態様において、決定的でない生検組織中のAMACR発現の存在は、対象における前立腺癌の指標である。ある種の態様において、この方法は更に、34βE12およびp63からなる群より選択される基底細胞マーカーの発現を検出する工程を含み、基底細胞マーカー発現の非存在およびAMACR発現の存在は、対象における前立腺癌の指標である。
本発明は更に、対象由来の体液;および、体液中のAMACR発現を検出するための試薬を提供する工程;ならびに、試薬が体液中のAMACR発現を検出するような条件下で、体液を試薬と接触させる工程を含む、体液中のAMACR発現を検出する方法を提供する。一部の態様において、体液は、血清、尿、全血、リンパ液、および粘液からなる群より選択される。ある種の態様において、体液中のAMACRの存在は、癌(例えば、前立腺癌)の指標である。
加えて本発明は、AMACRの発現の存在または非存在を特異的に検出することが可能な試薬;および、対象中の決定的でない生検組織を特徴決定するためのキットを使用するための指示書を備える、対象中の決定的でない前立腺生検組織を特徴決定するキットを提供する。一部の態様において、試薬は、AMACR mRNAの少なくとも一部と相補的な核酸プローブを含む。別の態様において、試薬は、AMACRポリペプチドに特異的に結合する抗体を含む。更に別の態様において、キットは更に、第二の試薬を含み、この第二の試薬は、34βE12およびp63からなる群より選択される基底細胞マーカーの発現を特異的に検出することが可能である。一部の態様において、指示書は更に、第二の試薬および対象中の決定的でない生検組織を特徴決定するための試薬を使用するための指示書を含む。一部の態様において、指示書は、インビトロ診断用医薬品について、米国食品医薬品局が要求する指示書を含む。
本発明は更に、対象由来の組織試料を提供し、この組織試料は、乳房組織、卵巣組織、リンパ組織、および骨髄腫組織からなる群より選択される工程;ならびに、試料中のAMACR発現の存在または非存在を検出し、これにより乳房組織試料を特徴決定する工程を含む、対象の組織を特徴決定する方法を提供する。
本発明は更に、対象由来の組織試料を提供し、この組織試料が乳房組織、卵巣組織、リンパ組織、および骨髄腫組織からなる群より選択される工程;および、ここで対象は、癌を有する疑いがあり;ならびに、試料中のAMACR発現の存在を検出し、これにより対象の組織試料中の癌を診断する工程を含む、対象において癌を診断する方法を提供する。
本発明は、癌を有する疑いのある対象由来の血液試料を提供する工程;および、血液試料中のAMACRに対する免疫応答を検出し、これにより対象の癌を診断する工程を含む、対象における癌を診断する方法を提供する。一部の態様において、癌は前立腺癌である。ある種の態様において、免疫応答の検出は、血液試料中のAMACRに対する抗体の検出を含む。
加えて本発明は、EZH2を発現する細胞;および、細胞におけるEZH2発現を阻害する試薬を提供する工程;ならびに、細胞中のEZH2発現が阻害されるような条件下で、細胞を試薬と接触させる工程を含む、細胞成長を阻害する方法を提供する。一部の態様において、試薬はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。別の態様において、試薬はRNA二重鎖である。一部の態様において、試薬は薬剤である。一部の態様において、細胞は前立腺癌細胞である。一部の態様において、細胞はインビトロにあり;一方、別の態様において、細胞はインビボにある。一部の態様において、接触は細胞増殖の減少をさらに生じる。
ある種の態様において、本発明は、前立腺癌を有する疑いのある対象由来の前立腺組織試料を提供する工程;および、試料中のアネキシン発現の減少を検出し、これにより前立腺組織試料を特徴決定する工程を含む、対象の前立腺癌を特徴決定する方法を提供する。一部の態様において、アネキシン発現の減少は、対象における転移性前立腺癌の存在の指標である。ある種の態様において、アネキシンは、アネキシン1、アネキシン2、アネキシン4、アネキシン6、アネキシン7、およびアネキシン11からなる群より選択されるが、これらに限定されるものではない。
別の態様において、本発明は、前立腺癌を有する疑いのある対象由来の前立腺組織試料を提供する工程;および、試料中のc末端結合タンパク質の発現の増加を検出し、これにより前立腺組織試料を特徴決定する工程を含む、対象の前立腺癌を特徴決定する方法を提供する。一部の態様において、c末端結合タンパク質は、c末端結合タンパク質1およびc末端結合タンパク質2からなる群より選択される。ある種の態様において、c末端結合タンパク質発現の増加は、対象における転移性前立腺癌の存在の指標である。一部の態様において、c末端結合タンパク質の発現は、PSA再上昇の増大したリスクの指標である。
別の態様において、本発明は、前立腺癌を有する疑いのある対象由来の前立腺組織試料を提供する工程;および、GP73発現の増加または減少を検出し、これにより前立腺組織試料を特徴決定する工程を含む、対象の前立腺癌を特徴決定する方法を提供する。一部の態様において、gp73の発現の増加は、限局性前立腺癌の指標である。別の態様において、前立腺組織試料は、前立腺癌であり、およびgp73発現の減少は、転移性前立腺癌の指標である。
全般的説明
急速進行性PCAから緩徐進行性PCAを識別する分子回路網の探索は、予後判定マーカーおよび新規治療標的の発見につながる可能性がある。前立腺の発癌機序に関する洞察も、このような全般的分子アプローチにより探り出されている。乳癌同様(Lopez-OtinおよびDiamandis、Endor. Rev.、19:365[1998])、PCAは、ステロイドホルモンシグナル伝達が中心的役割を果たしている遺伝的要因および環境要因の複雑な環境において発生する。PCAの原発性前駆病巣である高度の前立腺上皮内腫瘍(HG-PIN)は、他の初期の侵襲性癌腫に類似したいくつかの特徴(すなわち、染色体異常および細胞学的特徴)を有する。Nkx3.1、PTEN、Rb、およびp53のような腫瘍抑制遺伝子の喪失および突然変異に随伴した、特異的染色体領域(例えば、8p21、10q、13q、17p)の喪失は、前立腺癌の開始および進行に関与している(Abate-ShenおよびShen、前掲)。全般的プロファイリング戦略の登場より、現在、PCAに関連した遺伝子の系統的分析が可能である。ポストゲノム時代において基本的生物学的問題が解決される方法で、DNAマイクロアレイ技術は革新されつつある。一度にひとつの遺伝子に焦点を当てた従来のアプローチよりもむしろ、ゲノムスケールの方法論が、全体的予想への到達を可能にしている。この方法の力は、mRNA発現のゲノムワイドのパターンを多少とも分析するその能力にある(BrownおよびBotstein、Nat. Gent.、21:33[1999])。腫瘍の大規模遺伝子発現プロファイルを得ることは、予後判定用疾患マーカーまたは治療的反応の生物学的予測因子として機能する遺伝子サブセットの同定を可能にする(Emmert-Buckら、Am. J. Pathol.、156:1109[2000])。Golubらは、急性白血病の分子分類においてDNAアレイを使用し(Golubら、Science、286:531[1999])、新規癌のクラスの同定(クラス発見)および公知のクラスへの腫瘍割当て(クラス予測)のために、マイクロアレイを使用することの実現可能性を明らかにした。同様の方法を用い、Alizadehらは、散在性大規模B細胞リンパ腫が、遺伝子発現プロファイリングにより、ふたつの予後範疇に細分されることを示した(Alizadehら、Nature、403:503[2000])。彼らは、胚中心B細胞を特徴とする遺伝子発現のサイン(signature)を有するリンパ腫が、活性化された末梢B細胞を特徴とする遺伝子を発現しているものよりも、好ましい予後を有する証拠を提供した。同様の乳癌および骨髄腫の大規模分類が成されており、他の試験同様、分子分類が主要な焦点である(Alizadehら、前掲)。
従って本発明は、良性および悪性の前立腺組織における遺伝子発現プロファイルの分析を提供する。PCAのDNAマイクロアレイ分析により同定された3種の候補遺伝子AMACR、ヘプシン、およびpim-1を、PCA組織マイクロアレイを用いタンパク質レベルで特徴決定した。正常および新生物性前立腺の差次的遺伝子発現プロファイルの分析は、PCAの分子サインを定義する遺伝子の選択セットの同定をもたらしている。本発明の発現プロファイリング実験は、新生物性表現型として最終的に顕在化する複数の協同遺伝子発現の変更に関する役割を明らかにしている。正常組織および新生物性組織の直接的比較ハイブリダイゼーションを行うことにより、良性組織を悪性のものから分子的に識別する遺伝子が同定される。
α-メチルアシル-CoAラセミ化酵素(AMACR)は、胆汁酸の生合成および分枝鎖脂肪酸のβ-酸化において重要な役割を果たす酵素である(Ferdinandusseら、J. Lipid Res.、41:1890[2000];Kottiら、J. Biol.Chem.、275:20887[2000])。AMACR遺伝子の突然変異は、成人で発症する感覚運動ニューロパシーを引き起こすことが示されている(Ferdinandusseら、Nat. Genet.、24:188[2000])。診断的にチャレンジする前立腺生検症例において、病理学者は、基底細胞マーカー34βE12またはp63を使用することが多いが、これらは悪性の腺には存在せず良性の腺の基底細胞層を染色する。従って病理学者は、多くの生検標本において、前立腺癌の最終診断を行うために、染色の非存在に頼らなければならない。本発明の開発時に実施された実験は、癌性生検組織において発現されるマーカーとしてAMACRを同定した。従って、前立腺穿刺生検におけるAMACRの臨床的有用性は大きい。例えば、University of Michigan Medical Centerにおいては、毎年およそ400例の前立腺穿刺生検が行われており、ならびにおよそ20%が、少量の非定型腺により特徴付けられた困難な病巣を評価するために、基底細胞特異マーカーの使用を必要としている。従って、本発明の方法によるAMACR発現のスクリーニングは、34βE12またはp63のような基底細胞特異マーカーと組合わせて、「確定診断を伴わない非定型」と診断される症例を少なくすることが企図されている。
前立腺癌におけるAMACR過剰発現の同定は、診断的用途を超える臨床的有用性がある。本発明の開発時に行われた実験は、有意レベルのAMACRタンパク質を発現する唯一の非癌性組織は、ヒト肝臓であることを明らかにした。本発明は、特定の機序に限定されない。実際、機序の理解は、本発明の実践には必要ない。それにもかかわらず、AMACR活性は、前立腺癌成長に必要であり、およびその特異性によって、治療標的として役立つと考えられる。
本発明の開発の過程において行われた追加実験は、限局化された疾患における新ホルモン補助療法の離脱の局面を含む、様々な前立腺癌群においてAMACR発現を調べた。AMACR発現は、細胞培養実験において、ホルモン非依存性であることがわかった。アンドロゲンにより調製されることが分かっている遺伝子であるPSAは、同じ条件下での発現においてホルモンが関連した変化を明らかにした。本発明は、特定の機序に限定されない。実際、機序の理解は、本発明の実践には必要ではない。それにもかかわらず、これらの知見は、AMACRは、アンドロゲン経路により調節されないことの証拠を提供すると考えられる。これは更に、ホルモン抵抗性組織において減少したAMACR発現は、ホルモン抵抗性に関する生体マーカーとしてのAMACRの使用を可能にすることが企図されている。ホルモン離脱の手段におけるホルモン療法は、細胞培養物中のAMACR発現に影響を及ぼさないという事実が示されるならば、アンドロゲン経路以外のいくつかの他の機序が、癌組織の完全性におけるAMACRダウンレギュレーションに寄与することも企図されている。
本発明は、特定の機序に限定されない。実際、機序の理解は、本発明の実践には必要ない。それにもかかわらず、代わりに、AMACRが、癌の発生において過剰発現され、おそらく新生物細胞にエネルギーを提供する重要な役割を果たしていると考えられる。しかし、腫瘍は脱分化され始めるので、これらは最早これらのエネルギー給源は必要ではない。貧弱に分化された腫瘍は、分枝した脂肪酸の酸化のこの同じ活性を達成するために、他の経路を辿ることができることが企図されている。腫瘍細胞の増殖率とAMACR発現の間に関係はない。
AMACR発現は、同じく他の癌においても試験される。他の腫瘍における試験は、結腸癌が最も高いAMACR発現を有することを明らかにした。結腸直腸癌は、ホルモン性の調節は知られていないので、脱分化および減少したAMACR発現はPCAにおいて相関されるという事実は、脱分化が、ホルモン抵抗性転移性PCAにおいて減少したAMACR発現につながるという仮説をさらに裏付けている。ホルモン療法は、転移性前立腺癌の第一の療法でもあるが、効能は失われホルモン非感受性結腸を選択することが分かっている。本発明は、特定の機序に限定されない。実際、機序の理解は、本発明の実践には必要ない。それにもかかわらず、この現象は、強力なホルモン療法作用は、潜在的により脱分化した細胞を選択するので、減少したAMACR発現と一致するという知見を説明すると考えられる。
AMACR遺伝子産物は、胆汁酸生合成および分枝鎖脂肪酸のβ-酸化において重要な役割を果たす酵素である(Kottiら、J. Biol. Chem.、275:20887[2000];Ferdinandusseら、J Lipid Res、42:137[2001])。AMACR過剰発現は、PCAおよび結腸直腸癌のような脂質の割合が高い腫瘍において生じる。脂肪酸消費と癌の間の関係は、PCAおよび結腸直腸癌の発生において議論の多い問題である(Moyad、Curr Opin Urol、11:457[2001];Willett、Oncologist、5:393[2000])。胆汁酸中間体の酸化におけるAMACRの本質的役割が明らかにされている。AMACRは、α-メチル分枝したカルボキシルCoAチオエステル(carboxylic coenzyme A thioester)のラセミ化を触媒する酵素をコードしており、ならびにペルオキシソームおよびミトコンドリアに局在化している(Schmitzら、Eur J Biochem、231:815[1995])。本発明は、特定の機序に限定されない。実際、機序の理解は、本発明の実践には必要ない。それにもかかわらず、AMACRは脂質代謝に関与しているので、これは細胞の酸化体平衡の変更につながると考えられる。これは更に、これらの変化が、DNA損傷、悪性転換、および他の細胞障害のパラメータと関連していることが企図されている。
本発明の開発過程において実行された追加実験は、AMACR mRNAおよびタンパク質産物が、結腸直腸、前立腺、乳房、および卵巣を含む多くの腺癌ならびに骨髄腫において過剰発現されることを明らかにした。結腸直腸および前立腺由来の腺癌は、一貫したAMACR過剰発現(各々、腫瘍の92%および83%)を示した。従って、AMACRは、結腸新生物の診断において使用される。例えば、本発明の一部の態様において、AMACRは、形成異常の診断に使用される。詳細に述べると、形成異常の同定が診断上難点であり得るような炎症性腸疾患(IBD)の状況において、それらのAMACRタンパク質発現強度に関して推定病巣を評価する。一部の態様において、これは、大腸腺腫性ポリポーシス遺伝子の分析と組合わせて行われ、その理由は、同じくこの遺伝子の突然変異は、結腸直腸新生物の発生の初期に生じるとも考えられているからである(KinzlerおよびVogelstein、Cell、87:159[1996];TsaoおよびShibata、Am J Pathol、145:531[1994])。
結腸腺腫(KinzlerおよびVogelstein、前掲;TsaoおよびShibata、前掲)および高度PIN(McNealおよびBostwick、Hum Pathol、17:64[1986];McNealら、Lancet、1:60[1986])は、各々、侵襲性の結腸癌および前立腺癌の周知の前駆型である。本発明の開発過程において実行された実験は、AMACRは、結腸直腸腺腫(75%)および高度PIN(64%)において過剰発現されたことを示している。更に初期新生物病巣におけるAMACR発現を裏付けるものは、一部の萎縮性前立腺病巣における病巣性AMACR発現の存在である。 一部の萎縮性病巣(すなわち、増殖性炎症アトロフィーおよび萎縮後肥大)が、初期の新生物変化を示唆している事実上分子変更を伴う増殖として最近認められた(De Maxzoら、Am J Pathol、155:1985[1999];Shahら、Am J Pathol、158:1767[2001])。いくつかの形態学的に良性の前立腺も病巣性の中等度のAMACR染色を有することが観察された。本発明は、特定の機序に制限されない。実際、機序の理解は、本発明の実践には必要ない。それにもかかわらず、AMACRは、癌発生の初期段階において役割を果たし得ると考えられる。
結腸直腸癌、前立腺癌、および乳癌を含む、AMACR過剰発現に関連しているいくつかの癌は、高脂肪食に関連している。いかにして高脂肪食がこれらの臓器系における腫瘍形成に寄与しているかの正確な機序は不明であるが、しかしペルオキシソーム増殖応答性受容体(PPAR)が媒介した経路が、重要な役割を果たしていることを示唆する証拠が出現しつつある(Debrilら、J. Mol. Med.、79:30[2001])。食事の脂肪酸は、ペルオキシソーム増殖剤として機能し、ならびに核内受容体型転写因子ファミリーであるPPARに結合および活性化することが示されている(Zomerら、J. Lipid Res.、41:1801[2000])。PPAR媒介した経路の活性化は、次に細胞増殖および分化を制御する。加えて、細胞の酸化体平衡も変更することができる(Yeldandiら、Mutat. Res.、448:159[2000])。本発明は、特定の機序に限定されるものではない。実際、機序の理解は、本発明の実践には必要ない。それにもかかわらず、これらの作用は、いくつかの癌の腫瘍形成に寄与するように協調して作用すると考えられる。この仮説は、ペルオキシソーム増殖剤が、マウスへ投与された場合、マウスにおける結腸腺腫様ポリープの発生を増強するという知見により裏付けられる(Saezら、Nat. Med.、4:1058[1998])。加えて、PPARは、いくつかの前立腺癌細胞株およびそれらのリガンドにおいて発現され、およびぺルオキシソーム増殖剤が培養物へ添加された場合、これらの細胞株に影響を及ぼす(Shappellら、Cancer Res.、61:497[2001];Muellerら、PNAS、97:10990[2000])。臨床試験第II相も、PPARγアクチベーターであるトログリタゾンは、前立腺癌患者においてPSAレベルを安定化することを示している(Kubotaら、Cancer Res.、58:3344[1998];Hisatakeら、Cancer Res.、60:5494[2000])。
AMACRは、プリスタン酸のβ-酸化に関連している(Ferdinandusseら、J. Lipid. Res.、41:1890[2000])。プリスタン酸は、PPARαアクチベーターとして機能することができ、細胞成長を促進する(Zomerら、J. Lipid Res.、41:1801[2000])。本発明は、特定の機序に限定されるものではない。実際、機序の理解は、本発明の実践には必要ない。それにもかかわらず、β-酸化経路経路の機能亢進は、分子還元の消耗につながり、および細胞の酸化体の状態を変更する(Yeldandiら、Mutat. Res.、448:159[2000])。
本発明は更に、癌療法における治療標的としてAMACRを標的化する方法を提供する。AMACRは、結腸直腸、前立腺、乳房、および骨髄腫において高い割合で過剰発現するが、隣接正常組織においてはそうではなく、これは、抗体または酵素インヒビターを用いて標的化される。毒性は、大きな問題であるとは考えられず、その理由は、この酵素が先天的に存在しない個体は、臨床の症状発現がないかまたはほんのわずかであるからである(Claytonら、Biochem. Soc. Trans.、29:298[2001])。
本発明の開発過程で実行された実験は、AMACRは前立腺癌患者の血清中に存在することをさらに明らかにした。加えて、AMAGRに対する体液性反応が、前立腺癌患者の血清中のAMACRに対する抗体の存在を基に同定された。
アネキシンは、カルシウム結合タンパク質に構造的に関連した群であり、これはリン脂質に結合するドメインおよび特異性を決定するアミノ末端ドメインを有する(Smithら、Trends. Genet.、10:241[1994];Mailliardら、J. Biol. Chem.、271:719[1996])。これらのアネキシンは、膜輸送の調節、細胞接着、そしておそらくは腫瘍形成に関連している。本発明の開発過程において行われた実験は、PCA進行におけるそれらの役割を決定することを目的とし、広範な前立腺組織試料中の複数のアネキシンファミリーのメンバーの発現パターンを研究するために、cDNAマイクロアレイを使用した。遺伝子発現データのメタ解析を、cDNA発現アレイの知見の更なる確証を補助するために使用した。最後に、高-密度組織マイクロアレイを用い、免疫組織化学によりアネキシンタンパク質発現レベルを評価した。
良性前立腺組織、限局性ホルモンナイーブPCAおよび転移性ホルモン抵抗性PCAの試料において、8種のアネキシンを、それらのmRNA発現レベルについて評価した。5種のアネキシン(1、2、4、7および11)は、良性前立腺組織から限局性PCAへ、ホルモン抵抗性PCAへと次第に進行性の転写産物レベルのダウンレギュレーションを示した。これら5種のアネキシンファミリーメンバーのcDNA発現アレイの知見を確証するために、メタ解析を行い、少なくとも2種の試験が結果を報告した4回の試験について調べた場合に、限局性PCA試料においてアネキシン1、2、4、および6が、良性前立腺組織と比べ有意にダウンレギュレーションされたことを確認した。従って、メタ解析は、アネキシン1、2、および4の結果を確認した。これらの例において、全てのデータセットを横断する要約統計は、これらのアネキシンが、cDNAレベルで有意にダウンレギュレーションされたことを認めた。しかし、これら4回の試験全てが有意なダウンレギュレーションを有したわけではない。例えば、アネキシン4は、4回の試験中2回においては有意にダウンレギュレーションされたが、得られた要約統計は、評価した試料数も考慮すると、これは統計学的に有意であった。アネキシン7、8、および13は、有意に発現が低下したことは認められなかった。図1に示したように、アネキシン7は、限局性PCAおよび転移性PCAを比べた場合に、有意には減少しない。
前述の5種全ての試験したアネキシンのタンパク質発現レベルは、ホルモン抵抗性PCA試料において、限局性PCAまたは良性前立腺組織のいずれかと比較した場合に、統計学的に有意に減少した。5種のアネキシン中4種は、良性前立腺組織と比べ、臨床的限局性PCAにおけるタンパク質発現の低下も明らかにした。しかしこれらの症例のいずれにおいても、有意に減少したタンパク質発現は認められなかった。このタンパク質レベルでの第二の確証法は、アネキシン1、2、4、7、および11に関するcDNA発現アレイデータを確認した。
本明細書において説明された遺伝子発現アレイデータを基に、限局性PCA細胞は、それらのアネキシンmRNAレベルをダウンレギュレーションしたが、対応するタンパク質発現レベルは維持した。本発明は、特定の機序に制限されない。実際、機序の理解は、本発明の実践には必要ない。それにもかかわらず、翻訳後変更は、mRNAの減少を補償し、良性試料において認められるレベルを維持するのに十分なタンパク質を産生し得ると考えられる。アネキシンは、細胞接着の維持において重要な役割を果たしているので、一旦細胞が最終的にその能力を喪失すると、腫瘍進行が生じ得る。従って予想されるように、進行したホルモン抵抗性PCA試料においては、アネキシン発現レベルは、有意に減少する。これは、免疫組織化学により明らかにされたような有意な減少により、タンパク質レベルで確認された。
転移性PCA試料における転写および翻訳レベルの両方でのアネキシンの一連のダウンレギュレーションが認められた。アネキシン1はリポコルチンとも称されるが、これは、ホスホリパーゼA2インヒビターとしても説明されており、および上皮増殖因子受容体の基質として利用される(Pepinskyら、Nature、321:81[1986];Wallnerら、Nature、320:77[1986])。タンパク質レベルの有意な低下は、食道および前立腺腫瘍細胞において認められる(Paweletzら、Cancer Res.、60:6293[2000])。アネキシン2はp36とも称され、プロテインキナーゼCおよびSrc pp60の有効な基質と思われる(Hubaishyら、Biochemistry、34:14527[1995])。アネキシン4はエンドトキシンとも称され、カルモジュリンキナーゼII(CaMKII)活性を媒介することにより、Cl-流入を調節する(Chanら、J. Biol. Chem.、269:32464[1994])。シネキシン(synexin)であるアネキシン7は、デュシェーヌ型筋ジストロフィーに関連している(Selbertら、Exp. Cell. Res.、222:199[1996])。その遺伝子は、ヒト10q21番染色体に位置し、およびそのタンパク質発現は、ホルモン抵抗性腫瘍細胞において減少される。結論として、本発明の開発過程において行われた実験の結果は、いくつかのアネキシンファミリーメンバーのダウンレギュレーションが、致命的PCA表現型の発生において役割を果たし得ることを示唆している。
本発明の開発過程において行われた追加実験は、前立腺癌において変更された(例えば増加または減少した)発現を示した追加マーカーを同定した。追加マーカーは、EZH2、アネキシン1、2、4、7、および11、CTBP1および2、GP73、ABCC5(MDR5)、ASNS、TOP2A、ならびにVav2を含むが、これらに限定されるものではない。特に、EZH2は、前立腺癌において、特に転移性前立腺癌において過剰発現されたマーカーとして同定された。EZH2は更に、臨床的失敗に関連づけて同定された(例えば増大したPSAレベル)。加えて、EZH2のsiRNA阻害は、前立腺癌細胞株の細胞増殖の減少を生じた。
従って本発明は、様々な癌における診断的および治療的物質のためのマーカーおよび標的を同定する。
定義
本発明の理解を進めるために、多くの用語および表現を以下に定義する。
本明細書において使用される「エピトープ」という用語は、特定の抗体との接触をもたらす抗原の一部を意味する。
タンパク質またはタンパク質断片が宿主動物の免疫処置に使用される場合、そのタンパク質の多くの領域は、そのタンパク質の所定の領域または三次元構造へ特異的に結合する抗体の産生を誘導することができ;これらの領域または構造は、「抗原決定基」と称される。抗原決定基は、抗体への結合に関して、完全な抗原(すなわち、免疫応答を誘起するために使用される「免疫原」)と競合することができる。
「特異結合」または「特異的に結合」という用語は、抗体およびタンパク質またはペプチドとの相互作用に関して使用される場合、相互作用がタンパク質上の特定の構造(すなわち、抗原決定基またはエピトープ)の存在によって左右されること;別の表現をすると、抗体は、一般にタンパク質よりもむしろ、特定のタンパク質構造を認識しおよび結合されることを意味する。例えば、抗体がエピトープ「A」へ特異的である場合、標識した「A」および抗体を含む反応において、エピトープA(または遊離、標識されないA)を含むタンパク質の存在は、抗体に結合した標識したAの量を減少させる。
本明細書において使用される「非特異的結合」および「バックグラウンド結合」という用語は、抗体およびタンパク質またはペプチドの相互作用において使用される場合、特定の構造の存在に左右されない相互作用を有する (すなわち、抗体は、エピトープのような特定の構造よりもむしろ一般にタンパク質に結合する)。
本明細書において使用される「対象」という用語は、ヒト、非ヒト霊長類、齧歯類などを含むが、これらに限定されるものではない、特定の治療のレシピエントである、任意の動物(例えば哺乳類)を意味する。典型的には、本明細書において「対象」および「患者」という用語は、ヒト対象に関して互換的に使用される。
本明細書において「癌を有する疑いのある対象」という用語は、癌を示す1種または複数の症状(例えば、顕著なしこりまたは塊)を呈する対象または癌についてスクリーニング(例えば日常的健康診断時に)される対象を意味する。癌を有する疑いのある対象は、1種または複数のリスク因子も有することがある。癌を有する疑いがある対象は一般に、癌について試験されていない。しかし「癌を有する疑いのある対象」は、最初の診断(例えば、塊を示すCTスキャンまたは増大したPSAレベル)を受けたが、癌の病期は不明であるような個体を包含している。この用語は更に、かつて癌を有した個人を含む(例えば寛解期の個人)。
本明細書において使用される「癌のリスクのある対象」という用語は、特定の癌発症の1種または複数のリスク因子を伴う対象を意味する。リスク因子は、性別、年齢、遺伝素因、環境曝露、癌の既往、癌以外の疾患の既往、および生活スタイルを含むが、これらに限定されるものではない。
本明細書において使用される「対象における癌の特徴決定」という用語は、良性、前癌性または癌性組織の存在、癌の病期、および対象の予後判定を含むが、これらに限定されるものではない、対象の癌試料の1種または複数の特性を同定することを意味する。癌は、本明細書に明かにされた癌マーカーを含むが、これらに限定されるものではない、1種または複数の癌マーカー遺伝子の発現の同定により特徴決定することができる。
本明細書において使用される「対象における前立腺組織の特徴決定」という用語は、前立腺組織試料の1種または複数の特性の同定を意味する(例えば、癌性組織の存在、おそらく癌になりつつある前癌性組織の存在、およびおそらく転移している癌性組織の存在を含むが、これらに限定されるものではない)。一部の態様において、組織は、本明細書に説明された癌マーカーを含むが、これらに限定されるものではない、1種または複数の癌マーカー遺伝子の発現の特徴決定により特徴付けられる。
本明細書において使用される「癌マーカー遺伝子」という用語は、発現レベルが、単独でまたは他の遺伝子と組合わせて、癌または癌の予後判定に関連していることを意味する。この相関は、遺伝子の増大したまたは減少した発現のいずれかに関する。例えば、遺伝子の発現が、癌の指標であるか、または遺伝子発現の欠損が、癌患者の予後不良に関連することがある。癌マーカー発現は、下記実施例1〜15に例証するように説明されたものを含むが、これらに限定されるものではない、適当な方法を用いて特徴決定することができる。
本明細書において使用される「発現レベルを特異的に検出する試薬」という用語は、1種または複数の遺伝子の発現を検出するために使用される試薬を意味する(例えば、本発明の癌マーカーを含むが、これらに限定されるものではない)。適当な試薬の例は、関心対象の遺伝子に特異的にハイブリダイズすることが可能な核酸プローブ、関心対象の遺伝子を特異的に増幅することが可能なPCRプライマー、および関心対象の遺伝子により発現されたタンパク質に特異的に結合することが可能な抗体を含むが、これらに限定されるものではない。他の限定的でない例は、下記の説明および実施例に見ることができる。
本明細書において使用される「非癌性前立腺対照と比べ減少または増大した発現の検出」という用語は、非癌性前立腺対照試料におけるレベルに対する、遺伝子発現のレベル(例えば、mRNAまたはタンパク質のレベル)を測定することを意味する。遺伝子発現は、本明細書に説明されたものを含むが、これらに限定されるものではない、任意の適当な方法で測定することができる。
本明細書において使用される「被験化合物非存在下と比べた、被験化合物の存在下での前立腺細胞試料中における遺伝子(例えば、ヘプシン、pim-1、またはAMACR)発現の変化の検出」という用語は、被験化合物非存在下と比べた、被験化合物の存在下での発現の変更された(例えば、増加または減少された)レベルを測定することを意味する。遺伝子発現は、下記実施例1〜5に説明されたものを含むが、これらに限定されるものではない、任意の適当な方法を用いて測定することができる。
本明細書において使用される「対象における癌を検出するためのキットの使用に関する指示書」とは、対象由来の試料中の癌を検出および特徴決定するキットに備えられた試薬を使用するための指示書を含む。一部の態様において、この指示書は更に、インビトロ診断用医薬品のラベリングにおいて米国食品医薬品局(FDA)が要求する意図された用途の説明を含む。FDAは、体外用診断薬を医療機器として分類し、およびそれらが510(k)の手続きにより承認されることを要求している。510(k)に基づく承認申請に必要な情報は以下を含む:1)製品の商標または一般名、共通名または通称、および分類名を含む、インビトロ診断用医薬品の名称;2)製品の意図された用途;3)入手可能であるならば、510(k)申請を提出する所有権者または認証人(operator)の確定された登録番号;米国食品・医薬品・化粧品法第513節に従い、当該インビトロ診断用医薬品が属するクラスがわかっているならば、その適当なパネル、もしくは、所有権者または認証人が、当該製品がそのような項目に分類されないと判断するならば、そのインビトロ診断用医薬品がそのように分類されないという決定とその決定の基となる事項に関する供述書;4)インビトロ診断用医薬品を説明するのに十分な提唱されたラベル、ラベリングおよび広告、およびその意図された用法、ならびに用法に関する指示。利用可能であるならば、写真または技術図面が添付される。;5)当該製品が、米国において市販されている他の同型のインビトロ診断用医薬品と類似しているおよび/または異なることを示す供述書、その供述書を裏付ける添付データ;6)実質的に同等であるという決定の基となった安全性および有効性データに関する510(k)要約;または、実質的に同等であるというFDA見解を裏付ける510(k)安全性および有効性に関する情報は、書面による請求後30日以内に誰もがが入手できることに関する供述書;7)申請者は、自分たちの最良の知識において、市販前通知に提出された全てのデータおよび情報が真実かつ正確であり、およびいかなる事実も省略していないと考える旨の供述書;8)FDAが実質的に同等であると決定する上で必要なインビトロ診断用医薬品に関するあらゆる追加情報。追加情報は、米国食品医薬品局(FDA)のインターネットウェブページ上で入手できる。
本明細書において使用される「前立腺癌発現プロファイルマップ」という用語は、前立腺組織の特定の型(例えば、原発性、転移性、および前癌性前立腺組織)における発現レベルの表示を意味する。このマップは、図面による表示(例えば紙上もしくはコンピュータスクリーン上)、物理的表示(例えば、ゲルもしくはアレイ)またはコンピュータメモリーに保存されたデジタル表示で示すことができる。各マップは、前立腺組織の特定型(例えば、原発性、転移性、および前癌性)に相当しており、従って、患者試料と比較するための鋳型を提供する。好ましい態様において、マップは、同じ型の組織を持つ複数の患者を含む組織試料を含むプールされた試料から作成される。
本明細書において使用される「コンピュータメモリー」および「コンピュータメモリー装置」という用語は、コンピュータプロセッサーにより読取り可能なあらゆる保存媒体を意味する。コンピュータメモリーの例は、RAM、ROM、コンピュータチップ、デジタルビデオディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、ハードディスクドライブ(HDD)、および磁気テープを含むが、これらに限定されるものではない。
本明細書において使用される「コンピュータで読取り可能な媒体」という用語は、情報(例えば、データおよび指示)をコンピュータプロセッサーに保存および提供する装置またはシステムを意味する。コンピュータ読取り可能な媒体の例は、DVD、CD、ハードディスクドライブ、磁気テープならびにネットワーク上のストリーミングメディアのためのサーバーを含むが、これらに限定されるものではない。
本明細書において使用される「プロセッサー」および「中央処理装置」または「CPU」という用語は、互換的に使用され、ならびにコンピュータメモリー(例えば、ROMまたは他のコンピュータメモリー)からプログラムを読みとることができ、およびプログラムに従い工程セットを実行する装置を意味する。
本明細書において使用される「癌の病期」という用語は、癌の進行レベルの定性的または定量的評価を意味する。癌の病期決定に使用される判定基準は、腫瘍の大きさ、腫瘍が体の他の部位へ広がっているかどうか、および癌がどこにひろがっているか(例えば、同じ臓器もしくは体の領域内または他の臓器へ)を含むが、これらに限定されるものではない。
本明細書において使用される「予後判定の提供」という用語は、対象の今後の健康に対する癌の存在の影響に関する情報(例えば、本発明の診断法による決定)を提供することを意味する(例えば予想される罹患率または死亡率、癌となる確率、および転移のリスク)。
本明細書において使用される「前立腺特異抗原再上昇」という用語は、前立腺癌療法(例えば手術)後の患者における、高い前立腺特異抗原レベルの発生を意味する。いかにして前立腺特異抗原再上昇が決定されるかについては実施例3および4を参照のこと。本明細書において使用される「前立腺特異抗原再上昇発生のリスク」という用語は、前立腺癌療法後の前立腺特異抗原再上昇の発生の対象の相対リスク(例えば、見込み(chance)の割合または相対スコア)を意味する。
本明細書において使用される「術後腫瘍組織」という用語は、対象から摘出された(例えば、手術時)癌性組織(例えば前立腺組織)を意味する。
本明細書において使用される「癌と診断された対象」という用語は、試験され、癌性細胞を有することが分かった対象を意味する。癌は、任意の適当な方法用い診断することができ、これは生検、x-線撮影、血液検査、および本発明の診断法を含むが、これらに限定されるものではない。
本明細書において使用される「最初の診断」という用語は、最初の癌診断(例えば、癌性細胞の存在または非存在)の結果を意味する。最初の診断は、前立腺特異抗原再上昇のリスクの癌の病期に関する情報を含まない。
本明細書において使用される「生検組織」という用語は、試料が癌性組織を含有するかどうか決定する目的で対象から摘出された組織(例えば、前立腺組織)の試料を意味する。一部の態様においては、対象は癌を有することが疑われるので、生検組織が摘出される。次に生検組織は、癌の存在または非存在について試験される(例えば、顕微鏡で)。
本明細書において使用される「決定的でない生検組織」という用語は、組織学的検査が、癌の存在または非存在について決定していない生検組織を意味する。
本明細書において使用される「基底細胞マーカー」という用語は、良性前立腺の基底細胞層中に存在するタンパク質に結合するマーカー(例えば、抗体)を意味する。基底細胞マーカーの例は、34βE12およびp63を含むが、これらに限定されるものではない(例えば、O'Malleyら、Virchows Arch. Pathol. Anat. Histopathol.、417:191[1990];Wojnoら、Am. J. Surg. Pathol.、19:251[19951];Googeら、Am. J. Clin. Pathol.、107:219[1997];Parsonsら、Urology、58:619;および、Signorettiら、Am. J. Pathol.、157:1769[2000]参照)。
本明細書において使用される「非ヒト動物」という用語は、非ヒト動物の全てを意味し、これは齧歯類、非ヒト霊長類、ヒツジ、ウシ、反芻動物、ウサギ、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、鳥類などを含むが、これらに限定されるものではない。
本明細書において使用される「遺伝子導入システム」という用語は、核酸配列を含有する組成物を細胞または組織へ送達するいずれかの手段を意味する。例えば、遺伝子導入システムは、ベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、および他の核酸ベースの送達システム)、裸の核酸の微量注入、ポリマーベースの送達システム(例えば、リポソームベースのおよび金属粒子ベースのシステム)、遺伝子銃注入などを含むが、これらに限定されるものではない。本明細書において使用される「ウイルス遺伝子導入システム」という用語は、試料の望ましい細胞または組織への送達を促進するための、ウイルスエレメント(例えば、完全なウイルス、修飾されたウイルス、および核酸またはタンパク質のようなウイルス成分)を含有する遺伝子導入システムを意味する。本明細書において使用される「アデノウイルス遺伝子導入システム」という用語は、アデノウイルス科(Adenoviridae)に属する完全なまたは変更されたウイルスを含む遺伝子導入システムを意味する。
本明細書において使用される「位置指定組換え標的配列」という用語は、組換え因子の認識配列および組換えが生じる位置を提供する核酸配列を意味する。
本明細書において使用される「核酸分子」という用語は、DNAまたはRNAを含むが、これらに限定されるものではない分子を含む核酸を意味する。この用語は、DNAおよびRNAの公知の塩基アナログのいずれかを含む配列を包含しており、これは4-アセチルシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、プソイドイソシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンチルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルプソイドウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキューオシン、5'-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキサ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキサ酢酸、プソイドウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、および2,6-ジアミノプリンを含むが、これらに限定されるものではない。
「遺伝子」という用語は、ポリペプチドの産生に必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNA)配列、前駆体、またはRNA(例えば、rRNA、tRNA)を意味する。ポリペプチドは、完全長もしくは断片の望ましい活性または機能特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達、免疫原性など)が維持される限りは、完全長コード配列によりまたはコード配列のいずれかの部分によりコードすることができる。この用語は、構造遺伝子のコード領域、ならびにその遺伝子が完全長mRNAの長さに相当するようにいずれかの末端上の約1kbまたはそれよりも大きい距離の5'末端および3'末端の両側のコード領域に隣接した配列も包含している。コード領域の5'側に位置しmRNA上に存在する配列は、5'非翻訳配列と称される。コード領域の3'側または下流に位置しmRNA上に存在する配列は、3'非翻訳配列と称される。「遺伝子」という用語は、遺伝子のcDNAおよびゲノム形の両方を包含している。遺伝子のゲノム形またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と称される非コード配列で中断されたコード領域を含む。イントロンは、核RNA(hnRNA)へ転写される遺伝子のセグメントであり;イントロンは、エンハンサーのような調節エレメントを含むことがある。イントロンは、核または一次転写産物から除去または「スプライシング」され;その結果イントロンは、メッセンジャーRNA(mRNA)転写産物内には存在しない。翻訳時にmRNAは、発生期のポリペプチドのアミノ酸の配列または順番を特定するように機能する。
本明細書において使用される「異種遺伝子」という用語は、その天然の環境にはない遺伝子を意味する。例えば、異種遺伝子は、別の種に導入されたある種由来の遺伝子を含む。異種遺伝子は、何らかの方法(例えば、突然変異、複数コピーの追加、未変性でない調節配列への連結など)で変更されている生物に対し未変性の遺伝子も含む。異種遺伝子配列は、典型的には、染色体内の遺伝子配列に天然に会合しては認められないDNA配列または天然には認められない染色体の一部に会合しているDNA配列(例えば、遺伝子が通常発現されない遺伝子座において発現された遺伝子)に連結している点で、異種遺伝子は、内因性遺伝子から識別される。
本明細書において使用される「遺伝子発現」という用語は、遺伝子にコードされた遺伝情報が、RNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNA、またはsnRNA)へ、遺伝子の「転写」(すなわち、RNAポリメラーゼの酵素作用を介して)を通じて転換される過程、ならびにタンパク質をコードしている遺伝子については、mRNAの「翻訳」を通じてタンパク質へ転換される過程を意味する。遺伝子発現は、この過程の多くの段階で調節することができる。「アップレギュレーション」または「活性化」は、遺伝子発現産物(すなわち、RNAまたはタンパク質)の産生を増大する調節を意味する一方、「ダウンレギュレーション」または「抑制」は、産生を減少する調節を意味する。アップレギュレーションまたはダウンレギュレーションに関連している分子(例えば、転写因子)は、各々、「アクチベーター」および「リプレッサー」と称されることが多い。
遺伝子のゲノム形は、イントロンを含むことに加え、RNA転写産物上に存在する配列の5'および3'両末端に位置した配列も含んでよい。これらの配列は、「フランキング」配列または領域と称される(これらのフランキング配列は、mRNA転写産物上に存在する非翻訳配列の5'または3'側に位置する)。5'側フランキング領域は、遺伝子の転写を制御または影響を及ぼすプロモーターおよびエンハンサーのような調節配列を含んでもよい。3'側フランキング領域は、転写終結、転写後切断、およびポリアデニル化を指示する配列を含んでもよい。
「野生型」という用語は、天然の給源から単離された遺伝子または遺伝子産物を意味する。野生型遺伝子は、最も頻繁には集団で認められるものであり、従って遺伝子の「正常」または「野生型」の形は、任意にデザインされる。対照的に、「修飾された」または「突然変異体」という用語は、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に、配列および/または機能特性に修飾(すなわち、変更された特徴)を示す遺伝子または遺伝子産物を意味する。天然の突然変異体は単離することができ;これらは、野生型遺伝子または遺伝子産物と比べた場合に、変更された特徴(変更された核酸配列を含む)を有するという事実により同定されることが注目される。
本明細書において使用される「コードしている核酸分子」、「コードしているDNA配列」、および「コードしているDNA」という用語は、デオキシリボ核酸の鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順番または配列を意味する。これらのデオキシリボヌクレオチドの順番は、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順番を決定する。従ってこのDNA配列は、アミノ酸配列をコードしている。
本明細書において使用される「遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」および「遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド」という用語は、遺伝子のコード領域を含む核酸配列、または別の表現をすると遺伝子産物をコードしている核酸配列を意味する。コード領域は、cDNA、ゲノムDNA、またはRNA形で存在しても良い。DNA形で存在する場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、一本鎖(すなわち、センス鎖)または二本鎖であることができる。エンハンサー/プロモーター、スプライシング接合部、ポリアデニル化シグナルなどのような適当な制御エレメントは、転写の適切な開始および/または一次RNA転写産物の正確なプロセシングができることが必要である場合は、遺伝子のコード領域に密接に近接して位置することができる。あるいは、本発明の発現ベクターにおいて利用されるコード領域は、内因性エンハンサー/プロモーター、スプライシング接合部、介在配列、ポリアデニル化シグナルなど、または内因性および外因性の両方の制御エレメントの組合せを含んでも良い。
本明細書において使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、長さが短い一本鎖ポリヌクレオチド鎖を意味する。オリゴヌクレオチドは、典型的には、長さが200残基未満(例えば、15〜100個の間)であるが、本明細書において使用されるように、この用語は、より長いポリヌクレオチド鎖も包含する。オリゴヌクレオチドはしばしば、それらの長さで称される。例えば、24残基のオリゴヌクレオチドは、「24-mer」と称される。オリゴヌクレオチドは、自己ハイブリダイズまたは他のポリヌクレオチドとのハイブリダイズにより、二次構造および三次構造を形成することができる。このような構造は、二重鎖、ヘアピン型、十字型、湾曲型(bend)、および三重鎖を含むが、これらに限定されるものではない。
本明細書において使用される「相補的」または「相補性」という用語は、塩基対則に関係したポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチド配列に関して使用される。例えば、配列「A-G-T」は、配列「T-C-A」に相補的である。相補性は、「部分的」であっても良く、ここでは核酸の塩基のいくつかのみが、塩基対則に従い合致されている。または、核酸間に「完全な」または「全」相補性が存在することもできる。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強さに関して重要な作用を有する。これは、増幅反応、更には核酸間の結合に応じて決まる検出法において特に重要である。
「相同性」という用語は、相補性の程度を意味する。部分的相同または完全な相同(すなわち、同一)であることができる。部分的相補配列は、部分的に完全な相補性の核酸分子が、「実質的に相同」である標的核酸にハイブリダイズすることを少なくとも阻害する核酸分子である。完全な相補配列の標的配列へのハイブリダイゼーションの阻害は、低ストリンジェンシー条件下でのハイブリダイゼーションアッセイ法(サザンまたはノーザンブロット、液中ハイブリダイゼーションなど)を用いて試験することができる。実質的相同配列またはプローブは、完全相同核酸分子の標的への低ストリンジェンシー条件下での結合(すなわち、ハイブリダイゼーション)を競合または阻害するであろう。これは、低ストリンジェンシー条件が、非特異的結合をもたらさないようなことを意味するものではなく;低ストリンジェンシー条件は、ふたつの配列の一方の他方への結合は特異的(すなわち選択的)相互作用であることを必要とする。非特異的結合が存在しないことは、実質的に非相補的(例えば、約30%未満の同一性)である第二の標的の使用により試験することができ;非特異的結合の非存在下では、プローブは第二の非相補的標的とハイブリダイズしない。
「実質的に相同」という用語が、cDNAまたはゲノムクローンのような二本鎖核酸配列に関して使用される場合、これは、前述のような低ストリンジェンシー条件下で、二本鎖核酸配列のいずれかまたは両方の鎖にハイブリダイズすることができるプローブを意味する。
遺伝子は、一次RNA転写産物の差次的スプライシングにより作成される複数のRNA種を産生することができる。同じ遺伝子のスプライシング変種であるcDNAは、配列同一性または完全相同性の領域(両方のcDNA上に同じエキソンまたは同じエキソンの一部が存在することを表わす)および完全に非同一の領域(例えば、cDNA 2が代わりにエキソン「B」を含む場合の、cDNA 1上のエキソン「A」の存在を表わす)を含むであろう。ふたつのcDNAは配列同一の領域を含むので、これらは両方共、両方のcDNAにおいて認められた配列を含む全遺伝子または遺伝子の一部に由来したプローブへハイブリダイズするであろう;従って、これらふたつのスプライシング変種は、このようなプローブと、および互いに実質的に相同である。
「実質的に相同」という用語は、一本鎖核酸配列について使用される場合、前述の低ストリンジェンシー条件下で一本鎖核酸配列とハイブリダイズすることができる(すなわち、相補的である)プローブを意味する。
本明細書において使用される「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的核酸の対形成に関して使用される。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション強度(すなわち、核酸間の会合の強さ)は、核酸間の相補性の程度、関連する条件のストリンジェンシー、形成されたハイブリッドのTm、および核酸内のG:C比のような因子により影響を受ける。その構造内に相補的核酸の対形成を含む単独の分子は、「自己ハイブリダイズされた」と称される。
本明細書において使用される「Tm」という用語は、「融解温度」に関して使用される。融解温度は、二本鎖核酸分子の集団が一本鎖へと半分解離する温度である。核酸のTmの計算式は当技術分野において周知である。標準の参考文献により示されるように、Tm値の単純な推定は、下記式により計算することができる:Tm=81.5+0.41(%G+C)、これは核酸が1M NaClの水溶液中にある場合(例えば、AndersonおよびYoung、Quantitative Filter Hybridization、Nucleic Acid Hybridization [1985]参照)。別の参考文献は、Tmの計算に配列特性に加え構造特性を考慮するより洗練されたコンピュータ処理を含んでいる。
本明細書において使用される「ストリンジェンシー」という用語は、核酸ハイブリダイゼーションが実行される、温度、イオン強度、および有機溶媒のような他の化合物の存在に関して使用される。「低ストリンジェンシー条件」下では、関心対象の核酸配列は、その正確な相補体、単独の塩基ミスマッチを伴う配列、密に関連した配列(例えば、90%以上相同の配列)、および部分的相同のみを有する配列(例えば、50〜90%相同の配列)とハイブリダイズする。「中等度のストリンジェンシー条件」下では、関心対象の核酸配列は、その正確な相補体、単独の塩基ミスマッチを伴う配列、および密に関連した配列(例えば、90%以上相同の配列)とハイブリダイズする。「高ストリンジェンシー条件下」では、関心対象の核酸配列は、その正確な相補体、および(温度のような条件に応じて)単独の塩基ミスマッチを伴う配列とハイブリダイズする。別の表現をすると、高ストリンジェンシー条件下では、温度を上昇させ、単独の塩基ミスマッチを伴う配列とのハイブリダイゼーションを除くことができる。
核酸ハイブリダイゼーションに関して使用される場合、「高ストリンジェンシー条件」は、約500ヌクレオチド長のプローブが使用される場合は、5X SSPE (43.8g/l NaCl、6.9g/l NaH2PO4 H2O、および1.85g/l EDTA、pHはNaOHにより7.4に調節)、0.5%SDS、5X Denhardt試薬、および100μg/ml変性サケ精子DNAからなる溶液中42℃での結合またはハイブリダイゼーション、それに続く0.1X SSPE、1.0% SDSを含有する溶液による42℃での洗浄と同等の条件を含む。
核酸ハイブリダイゼーションに関して使用される場合、「中等度のストリンジェンシー条件」は、約500ヌクレオチド長のプローブが使用される場合は、5X SSPE (43.8g/l NaCl、6.9g/l NaH2PO4 H2O、および1.85g/l EDTA、pHはNaOHにより7.4に調節)、0.5%SDS、5X Denhardt試薬、および100μg/ml変性サケ精子DNAからなる溶液中42℃での結合またはハイブリダイゼーション、それに続く1.0X SSPE、1.0% SDSを含有する溶液による42℃での洗浄と同等の条件を含む。
「低ストリンジェンシー条件」は、約500ヌクレオチド長のプローブが使用される場合は、5X SSPE (43.8g/l NaCl、6.9g/l NaH2PO4 H2O、および1.85g/l EDTA、pHはNaOHにより7.4に調節)、0.1%SDS、5X Denhardt試薬[50X Denhardtは、500ml当り、5gのFicoll(400型、Pharamcia社)、5g BSA(フラクションV;Sigma社)を含有する。]、および100μg/ml変性サケ精子DNAからなる溶液中42℃での結合またはハイブリダイゼーション、それに続く5X SSPE、0.1% SDSを含有する溶液による42℃での洗浄と同等の条件を含む。
当業者は、低ストリンジェンシー条件を含む多くの同様の条件を使用することができることを知っている;プローブの長さおよび性質(DNA、RNA、塩基組成)、標的の性質(溶液中に存在するまたは固定された、DNA、RNA、塩基組成など)、ならびに塩および他の成分の濃度(例えば、ホルムアミド、硫酸デキストラン、ポリエチレングリコールの存在または非存在)のような因子が考慮され、ハイブリダイゼーション溶液は、前記条件と異なるが同等である低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションの条件を作製するように変更しても良い。加えて当業者には、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイゼーションを促進する条件(例えば、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄工程の温度の上昇、ハイブリダイゼーション溶液なかでのホルムアミドの使用など)がわかっている(前記「ストリンジェンシー」に関する定義参照)。
「増幅」は、鋳型特異性に関連している核酸複製の特別な場合である。これは、非特異的鋳型複製(すなわち、鋳型依存性であるが特異的鋳型には依存しない複製)とは対照的である。鋳型特異性は、ここでは、複製の忠実性(すなわち、適当なポリヌクレオチド配列の合成)およびヌクレオチド(リボまたはデオキシリボ-)特異性から区別される。鋳型特異性は、「標的」特異性に関して説明されることが多い。標的配列は、標的配列が他の核酸から選別されることが求められるという意味で「標的」である。増幅技術は、主にこの選別のためにデザインされる。
鋳型特異性は、酵素の選択によりほとんどの増幅技術において実現される。増幅酵素は、それらが使用される条件下で、核酸の不均質混合物中で、核酸の特定配列のみを処理する酵素である。例えば、Qβレプリカーゼの場合、MDV-1 RNAは、このレプリカーゼの特異的鋳型である(Kacianら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、69:3038[1972])。他の核酸は、この増幅酵素により複製されない。同様に、T7 RNAポリメラーゼの場合、この増幅酵素は、それ自身のプロモーターについてストリンジェントな特異性を有する(Chamberlinら、Nature、228:227[1970])。T4 DNAリガーゼの場合、この酵素は、ライゲーション連結接合部でのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド基質と鋳型との間のミスマッチが存在する、ふたつのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと連結することはない(WuおよびWallace、Genomics、4:560[1989])。最後に、TaqおよびPfuポリメラーゼは、高温で機能するそれらの能力のために、結合した配列について高い特異性を発揮し、その結果プライマーにより定義されることが分かっている;高温は、標的配列とのプライマーハイブリダイゼーションには有利に働くが、非標的配列とのハイブリダイゼーションには有利に働かない熱力学的条件を生じる(H.A. Erlich (編集)、PCR Technology、Stockton Press [1989])。
本明細書において使用される「増幅可能な核酸」という用語は、いずれかの増幅法により増幅することができる核酸に関して使用される。「増幅可能な核酸」は、通常「試料鋳型」を含むことが企図されている。
本明細書において使用される「試料鋳型」という用語は、「標的」の存在について分析される試料を起源とする核酸に関する。対照的に、「バックグラウンド鋳型」は、試料中に存在することも存在しないこともある試料鋳型以外の核酸に関して使用される。バックグラウンド鋳型は、ほとんどの場合不注意によるものである。これは、キャリーオーバーの結果であるか、または試料から精製除去されることが求められる核酸夾雑物の存在に起因することがある。例えば、検出されるもの以外の生物由来の核酸は、被験試料中バックグラウンドとして存在することがある。
本明細書において使用される「プライマー」という用語は、核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下(すなわち、ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼのような誘導剤の存在下、ならびに適当な温度およびpHで)に配置した場合に、合成開始点として作用することが可能である、精製した制限消化物のように天然に生じるかまたは合成により作成された、オリゴヌクレオチドを意味する。プライマーは、増幅効率を最大にするために、好ましくは一本鎖であるが、代わりに二本鎖であってもよい。二本鎖の場合、プライマーは、伸長産物を調製するために使用される前に、最初にその鎖を分離するように処理される。好ましくは、プライマーは、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘導剤の存在下で、伸長産物を合成することをプライミングするのに十分な長さでなければならない。プライマーの正確な長さは、温度、プライマー給源、およびその方法の用途を含む、多くの因子により変動する。
本明細書において使用される「プローブ」という用語は、別の関心対象のオリゴヌクレオチドの少なくとも一部にハイブリダイズすることが可能である、精製した制限消化物のように天然に生じるか、または合成的、組換え的に、もしくはPCR増幅により作成された、オリゴヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチド配列)を意味する。プローブは、一本鎖または二本鎖であることができる。プローブは、特定の遺伝子配列の検出、同定、および単離に有用である。本発明において使用されたプローブが、「レポーター分子」により標識され、その結果これが、酵素(例えば、ELISA、更には酵素ベースの組織化学アッセイ法)、蛍光、放射性、およびルミネセンスシステムを含むが、これらに限定されるものではないような検出システムにおいて検出可能であることが企図されている。本発明は、特定の検出システムまたは標識に限定されることは意図されていない。
本明細書において使用される「部分」という用語は、ヌクレオチド配列に関する場合(「所定のヌクレオチド配列の一部」のような)、その配列の断片を意味する。これらの断片は、4個のヌクレオチドから、全ヌクレオチド配列から1個のヌクレオチドを差し引いたもの(10個のヌクレオチド、20、30、40、50、100、200個など)のようなサイズの範囲であってよい。
本明細書において使用される「標的」という用語は、プライマーにより結合された核酸の領域を意味する。従って、「標的」は、他の核酸配列から選別されることが求められる。「セグメント」は、標的配列内の核酸の領域と定義される。
本明細書において使用される「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)という用語は、本明細書に参照として組入れられている、K.B. Mullisの米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、および第4,965,188号の方法を意味し、これらは、クローニングまたは精製せずにゲノムDNAの混合物中の標的配列のセグメントの濃度を増大する方法を開示している。この標的配列を増幅する方法は、非常に過剰なふたつのオリゴヌクレオチドプライマーの、望ましい標的配列を含むDNA混合物への導入、それに続くDNAポリメラーゼの存在下でのサーマルサイクリングの正確な連続からなる。これらふたつのプライマーは、二本鎖標的配列のそれらの各鎖に対して相補的である。増幅に作用するために、この混合物は変性され、次にプライマーは、標的分子内のそれらの相補的配列へアニーリングされる。アニーリング後、プライマーは、ポリメラーゼにより伸長され、その結果相補鎖の新規対を形成する。高濃度の所望の標的配列の増幅されたセグメントを得るために、変性、プライマーアニーリング、およびポリメラーゼ伸長の工程は、複数回反復することができる(すなわち、変性、アニーリング、および伸長は、1回の「サイクル」を構成し;複数の「サイクル」が存在することができる)。所望の標的配列の増幅されたセグメントの長さは、プライマーの互いの相対位置により決定され、従ってこの長さは、制御可能なパラメータである。これらのプロセスの反復する局面により、この方法は、「ポリメラーゼ連鎖反応」(以後「PCR」)と称される。標的配列の所望の増幅されたセグメントは、混合物中で優勢な配列(濃度に関して)となるので、これらは「PCR増幅された」と称される。
PCRにより、ゲノムDNA中の特異的標的配列の単独のコピーを、いくつかの異なる方法(例えば、標識したプローブとのハイブリダイゼーション;ビオチン化されたプライマーの取込み、それに続くアビジン-酵素複合体の検出;32P標識したデオキシヌクレオチド三リン酸、例えばdCTPまたはdATPの、増幅セグメントへの取込み )により検出可能なレベルにまで、増幅することが可能である。ゲノムDNAに加え、いずれかのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列を、プライマー分子の適当なセットで増幅することができる。特に、PCR法で作製された増幅されたセグメントは、それ自身が、引き続きのPCR増幅の効率的鋳型である。
本明細書において使用される「PCR産物」、「PCR断片」、および「増幅産物」という用語は、変性、アニーリング、および伸長のPCR工程の2回またはそれよりも多いサイクルが完了後に得られる化合物の混合物を意味する。これらの用語は、1種または複数の標的配列の1種または複数のセグメントの増幅が行われる場合を包含している。
本明細書において使用される「増幅試薬」という用語は、プライマー、核酸鋳型、および増幅酵素以外の、増幅に必要な試薬を意味する(デオキシリボヌクレオチド三リン酸、緩衝液など)。典型的には、増幅試薬は、他の反応成分と共に反応容器(試験管、マイクロウェルなど)内に配置および含有される。
本明細書において使用される「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」という用語は、その各々が、特異的ヌクレオチド配列でまたはその近傍で、二本鎖DNAを切断する細菌酵素を意味する。
本明細書において使用される「機能的組合せ」、「機能的順番」、および「機能的連結」という用語は、所定の遺伝子の転写および/または所望のタンパク質分子の合成を指示することが可能である核酸分子が形成されるような、核酸配列の連結を意味する。この用語は更に、機能的タンパク質が産生されるような方式でのアミノ酸配列の連結も意味する。
核酸について使用される「単離された」という用語は、「単離されたオリゴヌクレオチド」または「単離されたポリヌクレオチド」のように、同定され、ならびにその天然の給源においてそれが通常会合されている少なくとも1種の成分または夾雑物から分離された核酸配列を意味する。単離された核酸は、それが天然に認められるものとは異なる形または状況における存在である。対照的に、単離されない核酸は、それらが天然に存在する状態で認められるDNAおよびRNAのような核酸である。例えば、所定のDNA配列(例えば、遺伝子)は、隣接遺伝子の近傍で、宿主細胞染色体上に認められ;RNA配列、例えば特異的タンパク質をコードしている特異的mRNA配列は、多数のタンパク質をコードしている多くの他のmRNAとの混合物として、細胞内に認められる。しかし、所定のタンパク質をコードしている単離された核酸は、ほんの一例として、核酸が天然の細胞とは異なる染色体位置にある、さもなければ、天然に認められるものとは異なる核酸配列が側方にある、所定のタンパク質を通常発現している細胞内にあるような核酸を含む。単離された核酸、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖形で存在することができる。単離された核酸、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドがタンパク質を発現するために利用される場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、最小のセンス鎖またはコード鎖を含む(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは一本鎖であることができる)が、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含んでもよい(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは二本鎖であることができる)。
本明細書において使用される「精製された」または「精製する」という用語は、成分(例えば、夾雑物)を、試料から除去することを意味する。例えば、抗体は、夾雑している非免疫グロブリンタンパク質を除去することにより精製され;これらは、標的分子に結合しない免疫グロブリンの除去によっても精製される。非免疫グロブリンタンパク質の除去および/または標的分子に結合しない免疫グロブリンの除去は、試料中の標的-反応性の免疫グロブリンの割合の増加を生じる。別の例において、組換えポリペプチドは、細菌宿主細胞において発現され、およびこのポリペプチドは、宿主細胞タンパク質の除去により精製され;これにより、試料中の組換えポリペプチドの割合が増大される。
「アミノ酸配列」および「ポリペプチド」または「タンパク質」のような用語は、そのアミノ酸配列を、言及されたタンパク質分子に関連した完全な未変性のアミノ酸配列に限定することを意味するものではない。
本明細書において使用される「未変性のタンパク質」という用語は、タンパク質が、ベクター配列によりコードされたアミノ酸残基を含まないことを示し;すなわち、未変性のタンパク質は、天然に生じるようなタンパク質中に認められるそれらのアミノ酸のみを含む。未変性のタンパク質は、組換え手段により作製されるか、または天然の給源から単離された形であることができる。
本明細書において使用される「部分」という用語は、タンパク質に関する場合(「所定のタンパク質の一部」のような)は、そのタンパク質の断片を意味する。これらの断片のサイズは、4個のアミノ酸残基から全体のアミノ酸配列から1個のアミノ酸を差し引いたものまで変動することができる。
「サザンブロット」という用語は、サイズに従いDNAを分画するための、アガロースまたはアクリルアミドゲル上でのDNAの分析、その後のニトロセルロースまたはナイロン膜のような固相支持体へのゲルからのDNAの移動を意味する。次に固定されたDNAは、標識したプローブでプロービングし、使用したプローブに相補的なDNA種を検出する。このDNAは、電気泳動前に制限酵素により切断することができる。電気泳動後、DNAは、固相支持体へ転移前またはその間に、部分的に脱プリン(depurinate)および変性される。サザンブロットは、分子生物学者の標準の道具である(J. Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press社、NY、9.31-9.58頁、[1989])。
本明細書において使用される「ノーザンブロット」という用語は、サイズに従いRNAを分画するための、アガロースゲル上でのRNAの電気泳動によるRNAの分析、その後のニトロセルロースまたはナイロン膜のような固相支持体へのゲルからのRNAの移動を意味する。次に固定されたRNAは、標識したプローブでプロービングし、使用したプローブに相補的なRNA種を検出する。ノーザンブロットは、分子生物学者の標準の道具である(J. Sambrookら、前掲、7.39-7.52頁、[1989])。
「ウェスタンブロット」という用語は、ニトロセルロースまたは膜のような支持体上に固定されたタンパク質(またはポリペプチド)の分析を意味する。タンパク質は、アクリルアミドゲル上を流してそのタンパク質を分離し、その後、タンパク質をゲルからニトロセルロースまたはナイロン膜のような固相支持体へと移動させる。その後固定されたタンパク質は、関心対象の抗原に対する反応性を伴う抗体に曝される。抗体の結合は、放射標識された抗体の使用を含む様々な方法で検出することができる。
本明細書において使用される「導入遺伝子」という用語は、例えば、外来遺伝子の新たな受精卵または初期胚への導入により、生物内に配置された外来遺伝子を意味する。「外来遺伝子」という用語は、実験的操作により動物のゲノムに導入され、および導入された遺伝子が天然の遺伝子の場合と同じ位置に存在しない限りは、その動物内に認められた遺伝子配列を含むことができるような、いずれかの核酸(例えば、遺伝子配列)を意味する。
本明細書において使用される「ベクター」という用語は、DNAセグメントをひとつの細胞から別の細胞へと移動させる核酸分子を意味する。時折「ベヒクル」という用語が、「ベクター」と互換的に使用されることがある。ベクターは、プラスミド、バクテリオファージ、または植物もしくは動物ウイルスに由来することが多い。
本明細書において使用される「発現ベクター」という用語は、所望のコード配列および特定の宿主生物における機能的に連結されたコード配列の発現に必要な適当な核酸配列を含む組換えDNA分子を意味する。原核生物における発現に必要な核酸配列は、通常、プロモーター、オペレーター(選択的)、およびリボソーム結合部位を、時には他の配列と共に含む。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、終結シグナルおよびポリアデニル化シグナルを含むことが分かっている。
「過剰発現」および「過剰発現している」という用語、ならびに文法的な同等物は、対照または非トランスジェニック動物の所定の組織において認められるレベルよりも、およそ3-倍高い(または大きい)発現レベルを示す、mRNAのレベルについて使用される。mRNAレベルは、ノーザンブロット分析を含むが、これらに限定されるものではない、当業者に公知の多くの技術のいずれかを用いて、測定される。分析される各組織から負荷されたRNA量の差異を照らし合わせるために、適当な対照がノーザンブロットに含まれる(例えば、各試料に存在し、全ての組織において本質的に同量存在する豊富なRNA転写産物である28S rRNAの量は、ノーザンブロットにおいて観察されたmRNA特異シグナルの正規化または標準化の手段として使用することができる)。正確にスプライシングされた導入遺伝子RNAにサイズが相当するバンドに存在するmRNAの量が定量され;導入遺伝子プローブにハイブリダイズしているその他の少量のRNA種は、トランスジェニックmRNAの発現の量とはみなされない。
本明細書において使用される「トランスフェクション」という用語は、外来DNAの真核細胞への導入を意味する。トランスフェクションは、リン酸カルシウム-DNA共沈、DEAE-デキストラン媒介型トランスフェクション、ポリブレン媒介型トランスフェクション、電気穿孔、微量注入、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染、および遺伝子銃を含む、当技術分野において公知の様々な手段により実現することができる。
「リン酸カルシウム共沈」という用語は、核酸を細胞へ導入する技術を意味する。細胞による核酸の取込みは、核酸がリン酸カルシウム-核酸共沈物として存在する場合に増強される。Grahamおよびvan der Ebの当初の技術(Grahamおよびvan der Eb、Virol.、52:456[1973])は、特定の細胞型について条件が最適となるように、いくつかのグループにより変更されている。当業者は、これらの多くの変更について熟知している。
「安定したトランスフェクション」または「安定してトランスフェクションされる」という用語は、外来DNAのトランスフェクションされた細胞のゲノムへの導入および組込みを意味する。「安定したトランスフェクタント」という用語は、外来DNAがそのゲノムDNAへ安定して組込まれた細胞を意味する。
「一過性トランスフェクション」または「一過性にトランスフェクションされた」という用語は、外来DNAのトランスフェクションされた細胞への組込みを失敗したような外来DNAの細胞への導入を意味する。この外来DNAは、数日間トランスフェクションされた細胞の核に留まる。この間に、外来DNAは、染色体内の内因性遺伝子の発現を起動する調節制御を受ける。「一過性のトランスフェクタント」という用語は、外来DNAを取込んでいるがこのDNAの組込みには失敗した細胞を意味する。
本明細書において使用される「選択マーカー」という用語は、さもなければ必須栄養素であるものを欠いている培地において生育する能力を付与する酵素活性をコードしている遺伝子(例えば、酵母細胞におけるHIS3遺伝子)の使用を意味し;加えて、選択マーカーは、その選択マーカーを発現している細胞に、抗生物質または薬剤に対する抵抗性を付与する。選択マーカーは、「ドミナント」であることができる;ドミナントな選択マーカーは、いずれの真核細胞株においても検出することができる酵素活性をコードしている。ドミナントな選択マーカーの例は、哺乳類細胞において薬剤G418に対する抵抗性を付与する細菌のアミノグリコシド3'ホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo遺伝子とも称す)、抗生物質ヒグロマイシンに対する抵抗性を付与する細菌のヒグロマイシンGホスホトランスフェラーゼ(hyg)遺伝子、およびミコフェノール酸の存在下で生育する能力を付与する細菌のキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gpt遺伝子とも称する)がある。その他の選択マーカーは、それらの使用を関連した酵素活性を欠いている細胞株と組合わせなければならない点でドミナントではない。非ドミナント選択マーカーの例は、tk細胞株と組合わせて使用されるチミジンキナーゼ(tk)遺伝子、CAD欠損細胞と組合わせて使用されるCAD遺伝子、およびhprt細胞株と組合わせて使用される哺乳類ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hprt)遺伝子がある。哺乳類細胞株における選択マーカーの使用に関する総説は、Sambrook, J.らの「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press社、New York (1989)、16.9-16.15頁に記されている。
本明細書において使用される「細胞培養」という用語は、細胞のインビトロ培養を意味する。この用語に含まれるのは、連続する(continuous)細胞株(例えば、不死化表現型を持つ)、初代細胞培養物、形質転換された細胞株、有限の細胞株(例えば、形質転換されない細胞)、およびいずれか他のインビトロにおいて維持された細胞集団である。
使用される「真核生物」という用語は、「原核生物」から区別することができる生物を意味する。この用語は、その中に染色体があるような、核膜で境界が示された真の核の存在、膜に結合した細胞小器官の存在、および通常真核生物において認められる他の特徴のような、真核生物の通常の特徴を示す細胞を持つ全ての生物を包含することが意図されている。従ってこの用語は、真菌、原生動物、および動物(例えば、ヒト)のような生物を含むが、これらに限定されるものではない。
本明細書において使用される「インビトロ」という用語は、人工的環境、および人工的環境内で生じる処理または反応を意味する。インビトロ環境は、試験管および細胞培養物からなるが、これらに限定されるものではない。「インビボ」という用語は、天然の環境(例えば、動物または細胞)、および天然の環境内で生じるプロセスまたは反応を意味する。
「被験化合物」および「候補化合物」という用語は、疾患、疾病、病気、または体の機能障害(例えば、癌)の治療または予防に使用するための候補である、化学的実体、医薬品、薬剤などを意味する。被験化合物は、公知のおよび可能性のある治療的化合物の両方を含む。被験化合物は、本発明のスクリーニング法を用いるスクリーニングにより、治療的であることを決定することができる。本発明の一部の態様において、被験化合物はアンチセンス化合物を含む。
本明細書において使用される「試料」という用語は、その最も広範な意味で使用される。ひとつの意味において、これは、生物学的および環境的試料に加え、いずれかの給源により得られた標本または培養物を含むことを意味する。生物学的試料は、動物(ヒトを含む)から得ることができ、液体、固形物、組織、および気体を包含している。生物学的試料は、血液産物、例えば血漿、血清などを含む。環境的試料は、地表物質(surface matter)、土壌、水、結晶および工業用試料のような環境材料を含む。しかしこのような例は、本発明に適用可能な試料の種類を制限すると解釈されるものではない。
発明の詳細な説明
本発明は、癌マーカーを含むがこれに限定されるものではない癌診断のための組成物および方法に関連している。特に本発明は、前立腺癌に関連した遺伝子発現プロファイルを提供する。従って本発明は、前立腺組織を特徴付ける方法、マーカー検出用キットに加え、薬剤スクリーニングおよび治療的適用を提供する。
I. 前立腺癌マーカー
本発明は、その発現が癌性前立腺組織において特異的に変更されるマーカーを提供する。そのようなマーカーは、前立腺癌の診断および特徴決定において用途が認められる。
A. マーカーの同定
本発明の開発時に行った実験は、その発現レベルがPCAにおいて変更される(例えば、増加または減少)遺伝子の同定をもたらした。これらの方法は、正常および癌性前立腺組織に加え、およそ5000種の公知の名前のついた遺伝子、4400種のEST、および500種の対照エレメントが含まれる、ガラススライドcDNAマイクロアレイを使用した。差次的に発現された遺伝子は、機能クラスターに分類した。関連遺伝子の発現は、ウェスタンブロット分析により確認した。前立腺組織におけるタンパク質発現は、関心対象のいくつかの遺伝子について測定した。
本発明の方法(例えば実施例2参照)を用い、PCA、良性前立腺組織、前癌性組織、および正常前立腺においてアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションされた遺伝子のクラスターを同定した。これらのクラスターから、ふたつの遺伝子ヘプシンおよびpim-1を、特に関連のある遺伝子として同定した。免疫組織化学(例えば実施例4参照)を用い、前立腺組織におけるヘプシンおよびpim-1タンパク質の存在を特徴付けた。ヘプシンは、前癌性組織(HG-PIN)において強く染色することが分かった。加えて、ヘプシンは、PSA再上昇(術後に増大したPSA)により測定された転移のリスクが増大したことがわかった男性のPCA組織においては余り強力には染色しないことがわかり、従ってヘプシンの診断的有用性が確認された。加えて、PCA組織におけるpim-1の減少した発現も、PSA再上昇のリスク増大に関連することがわかった。従って一部の態様において、本発明は、前立腺組織を検出しおよび特徴決定する方法を提供する。
本発明の方法は、PCAにおいて発現されるが、良性前立腺組織においては発現されないことがわかった、更なる遺伝子α-メチル-CoAラセミ化酵素(AMACR)も同定した(例えば実施例5参照)。AMACRは、前立腺または膀胱癌患者の血清および尿中に存在することが分かった。加えて、AMACRに対する体液性反応が同定された。より更なる態様において、本発明の方法は、EZH2遺伝子を特徴決定するために使用した。EZH2は、転移性前立腺癌においてアップレギュレーションされることが分かった。前立腺細胞におけるEZH2発現の阻害は、インビトロ細胞増殖を阻害し、加えて様々な遺伝子の転写抑制を誘導した。本発明の方法は更に、CtBP1およびCTBP2、更にGP73は、転移性前立腺癌において、限局性前立腺癌および良性組織と比べ過剰発現されることを確定した。
より更なる態様において、本発明の方法は、アネキシン1、2、4、7、および11が、限局性ホルモンナイーブPcaと比べた場合に、ホルモン抵抗性PCAにおいて有意に減少されることを確定した。組織マイクロアレイ分析は、限局性PCAと比べて、ホルモン抵抗性PCAにおいてアネキシン1、2、4、7および11のタンパク質発現が有意に減少することを明らかにした。臨床的に限局性のPCAと非癌性前立腺組織の間では、有意差は検出されなかった。
B.マーカー検出
一部の態様において、本発明は、癌マーカー(例えば、前立腺癌マーカー)の発現を検出する方法を提供する。好ましい態様において、発現は、直接測定される(例えば、RNAまたはタンパク質のレベル)。一部の態様において、発現は、組織試料(例えば、生検組織)において検出される。別の態様において、発現は、体液(例えば、血漿、血清、全血、粘液、および尿を含むが、これらに限定されるものではない)中で検出される。本発明は更に、マーカー検出のためのパネルおよびキットを提供する。好ましい態様において、癌マーカーの存在を用い、対象に予後判定を提供する。例えば、前立腺組織におけるヘプシンまたはpim-1の検出は、転移する可能性のある癌の指標であり、ヘプシンの発現は、癌性となり始めている可能性のある前癌性組織の指標である。加えて、AMACRの発現は、癌性組織の指標である。提供された情報は、治療過程を方向付けるためにも使用される。例えば、対象が高い転移性腫瘍の指標であるマーカーを有することがわかった場合、追加療法(例えば、ホルモン療法または放射線療法)を、より効果があると思われるより早い時点に開始することができる(例えば、転移前)。加えて、対象がホルモン療法に反応しない腫瘍を有することが分かった場合は、このような療法の経費および不都合さを避けることができる。
本発明は、前述のマーカーに限定されない。癌または癌の進行と相関している任意の適当なマーカーを利用することができ、これは、下記の例証的な実施例において説明されるものを含むが、それらに限定されるものではない(例えば
Figure 0004251357
)。追加のマーカーも、本発明の範囲内であることが企図されている。任意の適当な方法を、本発明の方法での使用に適した癌マーカーの同定および特徴決定のために利用することができ、これは下記の例証的な実施例1-15において説明されるものを含むが、これらに限定されるものではない。例えば、一部の態様において、本発明の遺伝子発現マイクロアレイ法を用いPCAにおいてアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションされることが同定されたマーカーは、更に組織マイクロアレイ、免疫組織化学、ノーザンブロット分析、siRNAまたはアンチセンスRNA阻害、突然変異分析、臨床転帰の表現の調査、更には本明細書に説明された以外の方法を用いて特徴決定される。
一部の態様において、本発明は、複数のマーカーの分析のためのパネルを提供する。このパネルは、発癌および/または転移に関連している複数のマーカーを同時分析することができる。例えば、パネルは、癌性組織、転移性癌、転移する可能性のある限局性癌、癌性となる可能性のある前癌性組織、および癌性となる可能性のない前癌性組織と相関することが同定されたマーカーを含むことができる。対象に応じて、パネルは、可能な限り最良の診断および予後判定を提供するために、単独で、または組合わせて分析することができる。パネルに含むマーカーは、下記の例証的な実施例において説明されるものを含むが、これらに限定されるものではない適当な方法を用い、それらの推定値をスクリーニングすることにより選択される。
別の態様において、本発明は、様々な病期または予後(例えば、今後の転移の可能性)の癌の発現プロファイルを含む、発現プロファイルマップを提供する。このようなマップを、患者試料の比較のために用いることができる。一部の態様において、実施例2に説明された方法を用いて比較が行われる。しかし本発明は、実施例2に説明された方法に限定されるものではない。任意の適当な方法を利用することができ、これはデジタル化されたデータのコンピュータ比較を含むが、これらに限定されるものではない。比較データを用いて、診断および/または予後判定を患者へ提供する。
1. RNAの検出
一部の好ましい態様において、前立腺癌マーカーの検出(例えば、本明細書に明らかにされたものを含むが、これらに限定されるものではない)は、組織試料(例えば、前立腺組織)中の対応するmRNAの発現の測定により検出される。mRNA発現は、以下に明らかにされたものを含むが、これらに限定されるものではない、任意の適当な方法で測定することができる。
一部の態様において、RNAは、ノーザンブロット分析により検出される。ノーザンブロット分析は、RNAの分離および相補的な標識されたプローブのハイブリダイゼーションに関連している。ノーザンブロット分析の方法の例は、実施例3に示されている。
別の態様において、RNA発現は、特異構造の酵素的切断により検出される(INVADERアッセイ法、Third Wave Technologies;例えば、米国特許第5,846,717号、第6,090,543号;第6,001,567号;第5,985,557号;および、第5,994,069号参照;これらは各々本明細書に参照として組入れられている)。INVADERアッセイ法は、重複するオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションにより形成された複合体を切断するために、構造特異的酵素を用いることにより、特異的核酸(例えば、RNA)配列を検出する。
より更なる態様において、RNA(または対応するcDNA)は、オリゴヌクレオチドプローブへのハイブリダイゼーションにより検出される。ハイブリダイゼーションおよび検出のための様々な技術を使用する、様々なハイブリダイゼーションアッセイ法が利用可能である。例えば、一部の態様において、TaqManアッセイ法(PE Biosystems社、Foster City、CA;例えば、米国特許第5,962,233号および第5,538,848号参照、これらは各々本明細書に参照として組入れられている)が利用される。このアッセイ法は、PCR反応時に行われる。TaqManアッセイ法は、AMPLITAQ GOLD DNAポリメラーゼの5'-3'エキソヌクレアーゼ活性を活用する。5'側レポーター色素(例えば、蛍光色素)および3'側消光色素を伴うオリゴヌクレオチドからなるプローブが、PCR反応液中に含まれる。PCRの間に、このプローブがその標的へ結合したならば、AMIPLITAQ GOLD ポリメラーゼの5'-3'ヌクレオチド切断(nucleolytic)活性は、このプローブを、レポーター色素と消光色素の間で切断する。消光色素からのレポータ色素の分離は、蛍光の増加を生じる。このシグナルは、各PCRサイクルで蓄積し、および蛍光光度計でモニタリングすることができる。
更に別の態様において、RNA発現を検出するために、逆転写PCR(RT-PCR)が使用される。RT-PCRにおいて、RNAは、相補的DNAまたは「cDNA」へ、逆転写酵素を用いて酵素的に転換される。次にこのcDNAが、PCR反応の鋳型として使用される。PCR産物は、任意の適当な方法により検出することができ、これはゲル電気泳動およびDNAに特異的な染色液による染色または標識したプローブへのハイブリダイゼーションを含むが、これらに限定されるものではない。一部の態様において、米国特許第5,639,606号、第5,643,765号、および第5,876,978号において開示された(これらは各々本明細書に参照として組入れられている)競合鋳型の標準化した混合物による定量的逆転写PCRが、利用される。
2. タンパク質検出
別の態様において、癌マーカーの遺伝子発現が、対応するタンパク質またはポリペプチドの発現を測定することにより検出される。タンパク質発現は、任意の適当な方法により検出することができる。一部の態様において、タンパク質は、実施例4の免疫組織化学的方法により検出される。別の態様において、タンパク質は、そのタンパク質に対して生じた抗体へのそれらの結合により検出される。抗体産生は以下に説明される。
抗体結合は、当技術分野において公知の技術により検出される(例えば、ラジオイムノアッセイ法、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ法、イムノラジオメトリックアッセイ法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ法、インサイチューイムノアッセイ法(例えば、コロイド状金粒子、酵素、または放射性同位元素標識物の使用など)、ウェスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ法(例えば、ゲル凝集アッセイ法、血球凝集アッセイ法など)、補体結合アッセイ法、免疫蛍光アッセイ法、プロテインAアッセイ法、および免疫電気泳動アッセイ法など)。
ひとつの態様において、抗体結合は、一次抗体の標識物を検出することにより検出される。別の態様において、一次抗体は、二次抗体または試薬の一次抗体への結合を検出することにより、検出される。更なる態様において、二次抗体は、標識される。イムノアッセイ法における結合を検出する多くの方法が当技術分野において公知であり、および本発明の範囲内である。
一部の態様において、自動化された検出アッセイ法が利用される。イムノアッセイ法の自動化法は、米国特許第5,885,530号、第4,981,785号、第6,159,750号、および第5,358,691号に開示されたものを含み、その各々は本明細書に参照として組入れられている。一部の態様においては、分析および結果の表示も自動化される。例えば、一部の態様において、癌マーカーに対応する一連のタンパク質の存在または非存在を基に予後判定するソフトウェアが利用される。
別の態様において、イムノアッセイ法は米国特許第5,599,677号および第5,672,480号に開示され、これらは各々本明細書に参照として組入れられている。
3. データ解析
一部の態様において、コンピュータベースの解析プログラムを用い、検出アッセイ法により作成された生データ(例えば、所定のマーカーまたはマーカー類の存在、非存在、または量)が、臨床医のために推定値データへと変換される。臨床医は、適当な手段を用いてこの推定値へアクセスすることができる。従って一部の好ましい態様において、本発明は、遺伝子または分子生物学に経験を積んでいない臨床医が、生データを理解する必要がないという更なる利益を提供する。このデータは、その最も有益な形で臨床医へ直接提示される。その後臨床医は、対象の治療を最適化するために、この情報を直ちに利用することができる。
本発明は、アッセイ法を行った実験室、情報提供者(information provide)、医療従事者、および対象へ、およびそれらから情報を受取り、処理し、および伝達することが可能である方法を企図している。例えば、本発明の一部の態様において、試料(例えば、生検標本または血清もしくは尿試料)は、対象から入手され、世界のいずれかの地域(例えば、対象の居住国またはその情報が最終的に利用される国とは異なる国)に位置するプロファイリングサービス(例えば、医療施設の臨床検査室、ゲノムプロファイリング業者など)へ提出され、生データが作成される。試料が組織または他の生物学的試料を含む場合、対象は、医療センターへ来院し、試料を採取されおよびプロファイリングセンターへ送付されるか、または対象は、試料を自身で採取し(例えば、尿試料)直接プロファイリングセンターへ送付することができる。試料が、先に決定された生物学的情報を含む場合、この情報は、対象がプロファイリングサービスへ直接送付することができる(例えば、情報を含む情報カードは、コンピュータにより走査することができ、およびこのデータは、プロファイリングセンターのコンピュータへ、電子通信システムを用いて伝送される)。一旦プロファイリングサービスにより受け取られた試料は処理され、および対象にとって望ましい診断または予後判定の情報に特異的なプロファイルが作成される(すなわち、発現データ)。
その後このプロファイルデータは、治療担当医による解釈に適したフォーマットで下処理される。例えば、生の発現データが提供されるよりもむしろ、下処理されたフォーマットは、対象の診断またはリスク評価(例えば、転移またはPSA再上昇の可能性)を、具体的な治療選択肢の推奨と共に示すことができる。このデータは、適当な方法により臨床医へ表示することもできる。例えば一部の態様において、プロファイリングサービスは、臨床医が印刷することができる報告書を作成するか(例えば、医療看護の地点で)、または臨床医へコンピュータモニター上で表示することができる。
一部の態様において、この情報は最初に、医療看護の地点でまたは地域の施設で解析される。その後生データは、更なる解析のために中央処理施設へ送付され、および/または生データは臨床医または患者にとって有用な情報へ変換される。中央処理施設は、プライバシー(全てのデータは、均等なセキュリティープロトコールの下で中央施設に保存される)、スピード、およびデータ解析の均質性という利点も提供する。従って中央処理施設は、対象の治療後のデータの運命も管理することができる。例えば、電子通信システムを用い、中央施設は、臨床医、対象、または研究者へデータを提供することができる。
一部の態様において、対象は、電子通信システムを用いデータへ直接のアクセスすることができる。対象は、これらの結果を基にした更なる処置またはカウンセリングを選択しても良い。一部の態様において、このデータは、研究用途のために使用される。例えば、データは、特定の病態または病期の有用な指標としてのマーカーの包含または除外を更に最適化するために使用することができる。
4. キット
更に別の態様において、本発明は、前立腺癌の検出および特徴決定のためのキットを提供する。一部の態様において、キットは、癌マーカーに特異的な抗体に加え、検出試薬および緩衝液を含む。別の態様において、キットは、mRNAまたはcDNAの検出に特異的な試薬(例えば、オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマー)を含む。好ましい態様において、キットは、全ての対照、アッセイ法実施に関する指示、ならびに結果の分析および提示に必要なソフトウェアを含む、検出アッセイ法を行うのに必要な構成要素の全てを含む。
5. インビボ造影
一部の態様において、インビボ造影技術を用い、動物(例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳類)における癌マーカーの発現を可視化する。例えば、一部の態様において、癌マーカーmRNAまたはタンパク質は、癌マーカーに特異的な標識された抗体を用いて、標識化される。特異的に結合したおよび標識された抗体は、放射性核種造影、陽電子射出断層撮影、コンピュータ連動断層撮影、X-線または磁気共鳴造影法、蛍光検出、および化学発光検出を含むが、これらに限定されるものではない、インビボ画像形成法を用い、個体において検出することができる。本発明の癌マーカーに対する抗体産生法は、以下に説明する。
本発明のインビボ造影法は、本発明の癌マーカーを発現する癌(例えば、前立腺癌)の診断に有用である。インビボ造影は、癌のマーカー指標の存在を可視化するために使用される。このような技術は、不愉快な生検を使用することなく診断をもたらす。本発明のインビボ造影法は、癌患者に予後判定を提供するためにも有用である。例えば、転移する可能性のある癌のマーカー指標の存在を検出することができる。本発明のインビボ造影法は、更に体の他の部分において転移性癌を検出するために使用することができる。
一部の態様において、本発明の癌マーカーに特異的な試薬(例えば、抗体)は、蛍光標識される。この標識された抗体は、対象へ(例えば、経口または非経口的に)導入される。蛍光標識された抗体は、任意の適当な方法を用いて検出される(例えば、米国特許第6,198,107号に開示された方法、これは本明細書に参照として組入れられている)。
別の態様において、抗体は、放射標識される。インビボ診断のための抗体の使用は、当技術分野において周知である。Sumerdonら(Nucl. Med. Biol、17:247254[1990])は、標識としてインジウム-111を使用する腫瘍のラジオイムノシンチグラフィ造影のために最適化された抗体-キレーターを説明している。Griffinら(J Chin Onc、9:631-640[1991])は、再発性結腸直腸癌を有することが疑われる患者において腫瘍を検出する物質の使用を説明している。磁気共鳴造影のための標識として常磁性イオンを伴う同様の物質の使用が、当技術分野において公知である(Lauffer、Magnetic Resonance in Medicine、22:339-342[1991])。使用される標識は、選択された造影様式によって決まるであろう。インジウム-111、テクネチウム-99m、またはヨウ素-131のような放射性標識は、平面走査(planar scan)またはシングルフォトンエミッションコンピュータ断層撮影(SPECT)のために使用することができる。フッ素-19のような陽電子放出標識も、陽電子断層撮影(PET)に使用することができる。MRIに関して、ガドリニウム(III)またはマンガン(II)のような常磁性イオンを使用することができる。
スカンジウム-47(3.5日)、ガリウム-67(2.8日)、ガリウム-68(68分)、テクネチウム-99m(6時間)、およびインジウム-111(3.2日)などの、半減期が1時間〜3.5日の範囲の放射性金属が抗体への結合に利用可能であり、この中でガリウム-67、テクネチウム-99m、およびインジウム-111はγ線カメラ造影に好ましく、ガリウム-68は陽電子断層撮影に好ましい。
このような放射性金属による抗体標識の有用な方法は、例えば、In-111およびTc-99mのためのKhawら(Science、209:295[1980])、およびScheinbergら(Science、215:1511[1982])により説明された、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)のような二官能性キレート剤を使う。別のキレート剤も使用することができるが、1-(p-カルボキシメトキシベンジル)EDTAおよびDTPAのカルボキシカルボン酸無水物が有利であり、その理由は、それらの使用は、 抗体の免疫活性に実質的に影響を及ぼすことなく結合することができるからである。
DPTAのタンパク質へのカップリングの別の方法は、Hnatowichら(Int. J. Appl. Radiat. Isot.、33:327[1982])に説明されたような、アルブミンのIn-111による標識のための、環式無水DTPAの使用によるが、これは抗体標識に適合することができる。DPTAとのキレートに使用しないTc-99mによる、抗体の標識に適した方法は、Crockfordらのpretinning法である(米国特許第4,323,546号、これは本明細書に参照として組入れられている)。
免疫グロブリンのTc-99mによる標識の好ましい方法は、血漿タンパク質に関して、Wongらにより説明されており(Int. J. Appl. Radiat. Isot.、29:251[1978])、最近、Wongら(J. Nucl. Med.、23:229[1981])により、抗体の標識のためにうまく適用されている。
特異的抗体に結合した放射性金属の場合、恐らくその免疫特異性を破壊することなく抗体分子へ可能な限り高い割合で放射性標識物を導入することが望ましいと考えられる。更なる改善は、抗体上の抗原結合部位が保護されていることを確実にするために、本発明の特異的癌マーカーの存在下で放射標識に作用することにより実現することができる。この抗原は、標識後に分離される。
より更なる態様において、インビボ生物光学的造影(Xenogen社、Almeda、CA)が、インビボ造影に利用される。この実時間インビボ造影は、ルシフェラーゼを使用する。ルシフェラーゼ遺伝子は、細胞、微生物、および動物へ組込まれる(例えば、本発明の癌マーカーとの融合タンパク質として)。活性である場合、これは光放出反応につながる。CCDカメラおよびソフトウェアを用い、画像を撮像し、これを分析する。
II. 抗体
本発明は、単離された抗体を提供する。好ましい態様において、本発明は、本明細書に説明された癌マーカー(例えば、ヘプシン、pim-1、AMACR、EZH2、CTBP)の少なくとも5個のアミノ酸残基で構成された単離されたポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。これらの抗体は、本明細書において説明された診断法における用途が認められる。
本発明のタンパク質に対する抗体は、タンパク質として認めることができる限りは、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であることができる。抗体は、通常の抗体または抗血清調製法に従い抗原として本発明のタンパク質を用い作製することができる。
本発明は、モノクローナルおよびポリクローナルの両抗体の使用を企図している。本明細書に含まれるがこれらに限定されるものではない任意の適当な方法を用い、本発明の方法および組成物において使用される抗体を作製することができる。例えば、モノクローナル抗体の調製のために、そのようなタンパク質がそのまま、または適当な担体もしくは希釈剤と共に、抗体産生をもたらすような条件下で動物(例えば、哺乳類)へ投与される。抗体産生能を増強するために、完全または不完全フロイントアジュバントを投与することができる。通常、このタンパク質は、2週間から6週間毎に、合計約2回から約10回投与される。このような方法での使用に適した動物は、霊長類、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどを含むが、これらに限定されるものではない。
モノクローナル抗体産生細胞を調製するために、抗体力価が確認された個体動物(例えば、マウス)を選択し、最終免疫処置後2日から5日に、その脾臓またはリンパ節を摘出し、その中に含まれる抗体産生細胞が、骨髄腫細胞と融合され、望ましいモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製する。例えば、以後に説明されるような標識されたタンパク質と抗血清の反応、その後の抗体に結合した標識物質の活性の測定により、抗血清中の抗体力価の測定を実行することができる。細胞融合は、例えば、KoehlerおよびMilstein(Nature、256:495[1975])により説明された方法のような公知の方法に従い実行することができる。融合プロモーターとして、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはセンダイウイルス(HVJ)、好ましくはPEGが使用される。
骨髄腫細胞の例は、NS-1、P3U1、SP2/0、AP-1などを含む。使用される抗体産生細胞(脾細胞)数 対 骨髄腫細胞数の比は、好ましくは約1:1〜約20:1である。PEG(好ましくはPEG1000-PEG6000)は、好ましくは約10%〜約80%の濃度で添加される。細胞融合は、両細胞の混合物を、約20〜約40℃、好ましくは約30〜約37℃で、約1分〜10分間インキュベーションすることにより効率的に行うことができる。
様々な方法を、抗体を(例えば、本発明の腫瘍抗原または自己抗体に対して)産生するハイブリドーマに関するスクリーニングに使用することができる。例えば、ハイブリドーマの上清を、抗体が直接または担体と共に吸着された固相(例えば、マイクロプレート)へ添加することができ、その後抗免疫グロブリン抗体(マウス細胞が細胞融合において使用される場合は、抗マウス免疫グロブリン抗体が使用される)または放射性物質または酵素で標識されたプロテインAが添加され、固相に結合したタンパク質に対するモノクローナル抗体を検出する。あるいは、ハイブリドーマの上清を、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAが吸着された固相へ添加し、その後放射性物質または酵素で標識されたタンパク質が添加され、固相に結合したタンパク質に対するモノクローナル抗体を検出する。
モノクローナル抗体の選択は、任意の公知の方法またはその変法に従い実行することができる。通常、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)が添加された動物細胞のための培地が使用される。選択および増殖培地は、ハイブリドーマが増殖することができる限りは使用することができる。例えば、1%〜20%、好ましくは10%〜20%ウシ胎仔血清を含有するRPMI 1640培地、1%〜10%ウシ胎仔血清を含有するGIT培地、ハイブリドーマ培養のための血清非含有培地(SFM-101、Nissui Seiyaku)などを使用することができる。通常、培養は、20℃〜40℃、好ましくは37℃で、約5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間、約5%CO2気体下で行われる。ハイブリドーマ培養物の上清の抗体力価は、抗血清中の抗タンパク質の抗体力価に関して前記と同じ方法に従い測定することができる。
モノクローナル抗体(例えば、本発明の癌マーカーに対する)の分離および精製は、免疫グロブリンの分離および精製のような通常のポリクローナル抗体の精製と同じ方法、例えば塩析、アルコール沈殿、等電点沈殿、電気泳動、イオン交換体(例えば、DEAE)との吸着および脱離、超遠心、ゲルろ過、または抗原結合性固相のような活性吸着体により抗体のみが収集される特異的精製法、プロテインAまたはプロテインG、ならびに抗体を得るための結合の解離により行うことができる。
ポリクローナル抗体を、患者から抗体を得ることを含む任意の公知の方法またはこれらの方法の変法により調製することができる。例えば、免疫原(タンパク質に対する抗原)および担体タンパク質の複合体が調製され、動物が、先にモノクローナル抗体調製について説明された方法と同じように、この複合体により免疫処置される。対する抗体を含有する物質は、免疫処置した動物から回収され、抗体が分離および精製される。
動物の免疫処置に使用される免疫原および担体タンパク質の複合体のように、担体上に架橋されおよび免疫処置に使用されるハプテンに対する抗体が効率的に産生される限りは、あらゆる担体タンパク質ならびに担体およびハプテンの混合割合を用いることができる。例えば、ウシ血清アルブミン、ウシシクログロブリン、キーホールリムペットヘモシアニンなどを、ハプテンに、ハプテン1部につき約0.1部〜約20部、好ましくは約1部〜約5部の質量比で結合することができる。
加えて、様々な縮合剤を、ハプテンおよび担体の結合に使用することができる。例えば、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、マレイミド活性化されたエステル、チオール基またはジチオピリジル基を含む活性化されたエステル試薬などは、本発明での使用が認められる。そのような縮合物はそのまままたは適当な担体もしくは希釈剤とともに、抗体産生をもたらす動物の部位へと投与される。抗体産生能を増強するために、完全または不完全フロイントアジュバントを投与することができる。通常、タンパク質は、2週〜6週毎に1回、合計約3回〜約10回投与される。
ポリクローナル抗体は、前述の方法で免疫処置された動物の血液、腹水などから回収される。抗血清中の抗体力価は、ハイブリドーマ培養物の上清に対して先に説明されたような方法で測定することができる。抗体の分離および精製は、前にモノクローナル抗体について説明されたような免疫グロブリンの同じ分離および精製法に従い行うことができる。
免疫原として本明細書において使用されるタンパク質は、特定の型の免疫原に限定されない。例えば、本発明の癌マーカー(更に、部分的に変更されたヌクレオチド配列を有する遺伝子を含む)を、免疫原として使用することができる。更にタンパク質断片を使用することができる。断片は、遺伝子断片の発現、タンパク質の酵素処理、化学合成などを含むが、これらに限定されるものではない、いずれかの方法により得ることができる。
III. 薬剤スクリーニング
一部の態様において、本発明は、薬剤スクリーニングアッセイ法を提供する(例えば、抗癌剤のスクリーニング)。本発明のスクリーニング法は、本発明の方法を用いて同定された癌マーカーを利用する(例えば、ヘプシン、pim-1、AMACR、EZH2、およびCTBPを含むが、これらに限定されるものではない)。例えば、一部の態様において、本発明は、癌マーカー遺伝子の発現を変更(例えば、増加または減少)する化合物のスクリーニング法を提供する。一部の態様において、候補化合物は、癌マーカーに対して示されたアンチセンス物質(例えば、オリゴヌクレオチド)である。アンチセンス療法に関する考察は、下記第IV項を参照のこと。別の態様において、候補化合物は、本発明の癌マーカーに特異的に結合する抗体である。
ひとつのスクリーニング法において、候補化合物は、化合物を癌マーカーを発現している細胞と接触させ、その後候補化合物の発現に対する作用をアッセイすることによる、癌マーカー発現を変更するそれらの能力について評価される。一部の態様において、候補化合物の癌マーカー遺伝子の発現に対する作用は、細胞により発現された癌マーカーmRNAのレベルを検出することによりアッセイされる。mRNA発現は、任意の適当な方法により検出することができる。別の態様において、候補化合物の癌マーカー遺伝子の発現に対する作用は、癌マーカーによりコードされたポリペプチドレベルを測定することによりアッセイされる。発現されたポリペプチドのレベルは、本明細書に説明されたものを含むが、これらに限定されるものではない、任意の適当な方法を用い測定することができる。
特に、本発明は、本発明の癌マーカーに結合し、例えば癌マーカー発現もしくは癌マーカー活性に対する阻害(または刺激)作用を有し、または例えば、癌マーカー基質の発現もしくは活性に対し刺激または阻害作用を有するモジュレーター、すなわち候補または被験化合物または物質(例えば、タンパク質、ペプチド、ペプチド擬態物、ペプトイド、小分子、または他の薬剤)を同定するスクリーニング法を提供する。こうして同定された化合物は、標的遺伝子産物の生物学的機能を精緻化するため、もしくは正常な標的遺伝子相互作用を破壊する化合物を同定するために、治療プロトコールにおいて直接または間接のいずれかで、標的遺伝子産物(例えば、癌マーカー遺伝子)の活性を変調するために使用することができる。癌マーカーの活性または発現を阻害する化合物は、増殖傷害、例えば癌、特に転移性(例えば、アンドロゲン非依存型)前立腺癌の治療において有用である。
ひとつの態様において、本発明は、癌マーカータンパク質もしくはポリペプチドまたはそれらの生物学的活性部分の基質である候補または被験化合物をスクリーニングするためのアッセイ法を提供する。別の態様において、本発明は、癌マーカータンパク質もしくはポリペプチドまたはそれらの生物学的活性部分に結合または活性を変調する候補または被験化合物をスクリーニングするためのアッセイ法を提供する。
本発明の被験化合物は、生物学的ライブラリー;ペプトイドライブラリー(ペプチドの機能性を有するが、新規の非ペプチド骨格を伴う分子のライブラリーであり、これは酵素分解に抵抗性があるが、それにもかかわらず生体活性を維持している。例えば、Zuckennannら、J. Med. Chem.、37:2678-85[1994]参照);空間的にアドレス可能なパラレル固相または液相ライブラリー;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;および、アフィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法を含む、当技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリーの多くの方法のいずれかを用いて得ることができる。生物学的ライブラリーおよびペプトイドライブラリー法は、ペプチドライブラリーと共に使用するために好ましいが、他の4種の方法は、化合物のペプチド、非ペプチドオリゴマー、または小分子のライブラリーに適用可能である(Lam、(1997)、Anticancer Drug Des.、12:145)。
分子ライブラリーの合成法の例は、当技術分野において、例えば:DeWittら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、90:6909[1993];Erbら、Proc. Nad. Acad. Sci. USA、91:11422[1994];Zuckermannら、J. Med. Chem.、37:2678[1994];Choら、Science、261:1303[1993];Carrellら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl.、33:2059[1994];Carellら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl.、33:2061[1994];および、Gallopら、J. Med. Chem.、37:1233[1994]において見ることができる。
化合物のライブラリーは、溶液中(例えば、Houghten、Biotechniques、13:412-421[1992])、またはビーズ(Lam、Nature、354:82-84[1991])、チップ(Fodor、Nature、364:555-556[1993])、細菌または胞子(米国特許第5,223,409号;本明細書に参照として組入れられている)、プラスミド(Cullら、Proc. Nad. Acad. Sci. USA、89:1865-1869[1992])、もしくはファージ(ScottおよびSmith、Science、249:386-390[1990];Devlin、Science、249:404-406[1990];Cwirlaら、Proc. Natl. Acad. Sci.、87:6378-6382[1990];Felici、J. Mol. Biol.、222:301[1991])上に提示することができる。
ひとつの態様において、アッセイ法は、癌マーカータンパク質またはそれらの生物学的活性部分を発現している細胞を被験化合物と接触させ、および癌マーカーの活性を変調する被験化合物の能力を決定するような、細胞ベースのアッセイ法である。被験化合物の癌マーカー活性を変調する能力の決定は、例えば、酵素活性の変化をモニタリングすることにより達成することができる。細胞は、例えば哺乳類起源であってよい。
被験化合物の、例えば癌マーカー基質のような化合物への癌マーカー結合を変調する能力も評価することができる。これは、例として化合物(例えば基質)と放射性同位元素または酵素標識との結合により実現され、その結果この化合物(例えば基質)の癌マーカーへの結合は、複合体中の標識された化合物、例えば基質の検出により決定することができる。
あるいは、癌マーカーは、放射性同位元素または酵素標識と結合させ、複合体中の癌マーカー基質への癌マーカー結合を変調する被験化合物の能力をモニタリングすることができる。例えば、化合物(例えば、基質)は、125I、35S、14C、または3Hにより直接または間接のいずれかで標識することができ、この放射性同位元素は、放射線放出の直接計測またはシンチレーション計数により検出することができる。あるいは、化合物は、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼにより、酵素的に標識することができ、この酵素標識は、適当な基質の生成物への転換を決定することにより検出される。
化合物(例えば、癌マーカー基質)の癌マーカーと相互作用する能力は、反応体のいずれかの標識を伴うまたは伴わずに評価することができる。例えば、マイクロフィジオメーターを用い、化合物または癌マーカーのいずれかの標識を伴わずに、化合物の癌マーカーとの相互作用を検出することができる(McConnellら、Science、257:1906-1912[1992])。本明細書において使用される「マイクロフィジオメーター」(例えば、Cytosensor)は、細胞がその周囲を酸性化する速度を、光アドレス可能の電位差測定分析センサー(light-addressable potentiometric sensor)(LAPS)用いて測定する分析装置である。この酸性化速度の変化は、化合物と癌マーカーとの間の相互作用の指標として使用することができる。
更に別の態様において、癌マーカータンパク質またはそれらの生物学的活性部分を被験化合物と接触させ、被験化合物の癌マーカータンパク質またはそれらの生物学的活性部分に結合する能力が評価されるような細胞非含有アッセイ法が、提供される。本発明のアッセイ法において使用される癌マーカータンパク質の好ましい生物学的活性部分は、基質または他のタンパク質、例えば、高表面可能性スコア(high surface probability score)を伴う断片との相互作用に関与する断片を含む。
細胞非含有アッセイ法は、ふたつの成分が相互作用および結合し、その結果除去および/または検出することができる複合体を形成することを可能にする条件下および十分な時間における、標的遺伝子タンパク質および被験化合物の反応混合物の調製に関連している。
ふたつの分子間の相互作用も、例えば、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を用いて検出することができる(例えば、Lakowiczら、米国特許第5,631,169号;Stavrianopoulosら、米国特許第4,968,103号;これらの各々は本明細書に参照として組入れられている)。発蛍光団標識は、第一のドナー分子が放出した蛍光エネルギーが、第二の「アクセプター」分子上の蛍光標識により吸収され、これが次に吸収されたエネルギーにより蛍光となることができるように選択される。
あるいは、「ドナー」タンパク質分子は、トリプトファン残基の天然の蛍光エネルギーを単純に利用することができる。「アクセプター」分子標識を「ドナー」のそれから区別することができるように、異なる波長の光を放出する標識が選択される。標識間のエネルギー転移効率は分子を隔てる距離に関連しているので、分子間の空間的関係を評価することができる。分子間に結合が生じる状況において、15アッセイ法内の「アクセプター」分子標識の蛍光放出は最大であるはずである。FRET結合事象は、通常当技術分野において周知の標準蛍光検出の手段により測定することができる(例えば、蛍光光度計の使用)。
別の態様において、癌マーカータンパク質の標的分子に結合する能力を決定することは、実時間生体分子相互作用分析システム(BIA)を用いて行うことができる(例えば、SjolanderおよびUrbaniczky、Anal. Chem.、63:2338-2345[1991]、ならびにSzaboら、Curr. Opin. Struct. Biol.、5:699-705[1995]参照)。「表面プラスモン共鳴」または「BIA」は、生体特異的相互作用を、反応体(例えば、BIAcore)の標識を伴わずに、実時間で検出する。結合表面での質量の変化(結合事象の指標)は、表面近くの光の屈折率の変更を生じ(表面プラスモン共鳴(SPR)の光学現象)、これは生物学的分子間の実時間反応の指標として使用することができる検出可能なシグナルを生じる。
ひとつの態様において、標的遺伝子産物または被験物質は、固相上に係留される。固相上に係留された標的遺伝子産物/被験化合物複合体は、反応の最後に検出することができる。好ましくは、標的遺伝子産物は、固体表面上に係留され得、および被験化合物(係留されない)は、本明細書において考察した検出可能な標識で、直接または間接に標識することができる。
一方または両方のタンパク質の複合化された形の複合化されない形からの分離を促進することに加え、アッセイ法の自動化に適応するために、癌マーカー、抗癌マーカー抗体またはその標的分子を固定することが望ましいことがある。候補化合物の存在下および非存在下での、被験化合物の癌マーカータンパク質への結合、または癌マーカータンパク質と標的分子の相互作用は、これらの反応体を含むのに適したいずれかの容器内で行うことができる。このような容器の例は、マイクロタイタープレート、試験管、およびマイクロ遠心管を含む。ひとつの態様において、一方または両方のタンパク質がマトリックスに結合することを可能にするドメインを追加する融合タンパク質が提供される。例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ-癌マーカー融合タンパク質またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical社、St. Louis、MO)またはグルタチオン誘導体化されたマイクロタイタープレート上に吸着することができ、その後これらは、被験化合物と、または被験化合物および吸着されない標的タンパク質もしくは癌マーカータンパク質のいずれかと混合され、この混合物は、複合体形成を行う条件下でインキュベーションされる(例えば、塩およびpHに関して生理的条件で)。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルは洗浄され、未結合の成分が除去され、ビーズの場合固定されたマトリックスは、例えば前述のように直接または間接的のいずれかで決定される。
あるいは、これらの複合体は、マトリックスから解離され、癌マーカーの結合または活性のレベルが、標準技術を用いて決定される。癌マーカータンパク質または標的分子のいずれかをマトリックス上に固定するその他の技術は、ビオチンおよびストレプトアビジン複合体の使用を含む。ビオチン化された癌マーカータンパク質または標的分子は、ビオチン-NHS(N-ヒドロキシ-スクシンイミド)から、当技術分野において公知の技術を用い調製することができ(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals社、Rockford、EL)、およびストレプトアビジンで被覆された96ウェルプレート(Pierce Chemical社)中に固定される。
このアッセイ法を行うために、固定されていない成分が、係留された成分を含む被覆された表面へ添加される。反応が完了した後、あらゆる形成された複合体が固体表面上に固定され続けるような条件下で、未処理の成分が除去される(例えば、洗浄により)。固体表面上に係留された複合体の検出は、多くの方法で行うことができる。先に固定されていない成分が予め標識されているならば、表面上に固定された標識の検出は、複合体が形成されたことの指標である。先に固定されていない成分が予め標識されていないならば、間接標識を用いて、表面上に係留された複合体を検出することができ;例えば、固定された成分に特異的な標識された抗体を使用する(抗体は次に、直接標識されるかまたは、例えば標識された抗IgG抗体で、間接標識される)。
このアッセイ法は、癌マーカータンパク質または標的分子とは反応性であるが、癌マーカータンパク質のその標的分子への結合は妨害しない抗体を用いて行われる。このような抗体は、プレートのウェルに誘導体化することができ、未結合の標的または癌マーカータンパク質は、抗体複合によりウェル内に捕獲される。このような複合体の検出法は、GST固定された複合体に関する先に説明されたものに加え、癌マーカータンパク質または標的分子と反応性の抗体を用いる複合体の免疫検出、および癌マーカータンパク質または標的分子に関連した酵素活性の検出に頼る酵素結合アッセイ法を含む。
あるいは、細胞非含有アッセイ法を、液相において行うことができる。このようなアッセイ法において、反応生成物は、差次的遠心分離(例えば、RivasおよびMinton、Trends Biochem Sci、18:284-7[1993]);クロマトグラフィー(ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー);電気泳動(例えば、Ausubelら編集、「Current Protocols in Molecular Biology」、1999年、J. Wiley社:New York参照);ならびに、免疫沈降(例えば、Ausubelら編集、「Current Protocols in Molecular Biology」、1999年、J. Wiley社:New York参照)を含むが、これらに限定されるものではない、多くの標準技法のいずれかにより、未反応の成分から分離される。このような樹脂およびクロマトグラフィー技術は、当業者に公知である(例えば、Heegaard、J. Mol. Recognit、11:141-8[1998];Hageand Tweed、J. Cbromatogr. Biomed. Sci. Appl、699:499-525[1997]参照)。更に、蛍光エネルギー転移も、本明細書に説明されたように、通常、更に溶液から複合体を精製することなく、結合を検出するために利用される。
アッセイ法は、癌マーカータンパク質またはそれらの生物学的活性部分を、癌マーカーと結合しアッセイ法混合物を形成する公知の化合物と接触させる工程、アッセイ混合物を被験化合物と接触させる工程、および被験化合物の癌マーカータンパク質と相互作用する能力を決定する工程を含み、ここで被験化合物の癌マーカータンパク質と相互作用する能力の決定は、公知の化合物と比べて癌マーカーもしくはそれらの生物学的活性部分へ優先的に結合する被験化合物の能力、または標的分子の活性を変調する被験化合物の能力を決定する工程を含む。
癌マーカーが、インビボにおいて、1種または複数の細胞または細胞外タンパク質のような巨大分子と相互作用する程度に対し、そのような相互作用のインヒビターは有用である。均一系アッセイ法を、インヒビターを同定するために使用することができる。
例えば、標的遺伝子産物および相互作用性の細胞または細胞外の結合パートナー産物の予め形成された複合体が、標的遺伝子産物またはそれらの結合パートナーのいずれかが標識されるが、標識により形成されたシグナルは複合体形成のために消光されるように、調製される(例えば、この方法をイムノアッセイ法に利用する、米国特許第4,109,496号を参照のこと。これは本明細書に参照として組み込まれる)。予め形成された種のひとつと競合および交換する被験物質の添加は、バックグラウンドを上回るシグナル形成を生じる。この方法において、標的遺伝子産物-結合パートナーの相互作用を破壊する被験物質が同定される。あるいは、癌マーカータンパク質は、ツー-ハイブリッドアッセイ法またはスリー-ハイブリッドアッセイ法において「バイトタンパク質」として使用し(例えば、米国特許第5,283,317号;Zervosら、Cell、72:223-232[1993];Maduraら、J. Biol. Chem.、268:12046-12054[1993];Bartelら、Biotechniques、14:920-924[1993];Iwabuchiら、Oncogene、8:1693-1696[1993];および、Brent、国際公開公報第94/10300号参照;これらは各々、本明細書に参照として組入れられている)、癌マーカーと結合するまたは相互作用し(「癌マーカー-結合タンパク質」または「癌マーカー-bp」)および癌マーカー活性に関与するような他のタンパク質を同定することができる。このような癌マーカー-bpは、癌マーカータンパク質によるシグナルのアクチベーターもしくはインヒビター、または例えば、癌マーカーが媒介したシグナル伝達経路の下流エレメントのような標的であることができる。
癌マーカー発現のモジュレーターも同定することができる。例えば、細胞または細胞非含有の混合物を、候補化合物と接触させ、候補化合物非存在下での癌マーカーmRNAまたはタンパク質の発現に対する、癌マーカーmRNAまたはタンパク質の発現レベルを評価する。候補化合物存在下での癌マーカーmRNAまたはタンパク質の発現が、非存在下よりも大きい場合、この候補化合物は、癌マーカーmRNAまたはタンパク質の発現の刺激因子として同定される。あるいは、候補化合物の存在下で癌マーカーmRNAまたはタンパク質の発現が、非存在下よりも低下する(すなわち、実質的に有意に低下する)場合、この候補化合物は、癌マーカーmRNAまたはタンパク質発現のインヒビターとして同定される。癌マーカーmRNAまたはタンパク質発現のレベルは、癌マーカーmRNAまたはタンパク質を決定するために本明細書において説明された方法により、決定することができる。
変調物質は、細胞ベースアッセイ法または細胞非含有アッセイ法を用いて同定することができ、この物質の癌マーカータンパク質の活性を変調する能力は、インビボにおいて、例えば、疾患の動物モデルのような動物(例えば、前立腺癌または転移性前立腺癌を伴う動物;または、動物(例えば、ヒト)由来の前立腺癌異種移植片、もしくは前立腺癌の転移(例えば、リンパ節、骨または肝臓への)から生じる癌由来の細胞、または前立腺癌細胞株由来の細胞を収容している動物)について確認することができる。
本発明は更に、前述のスクリーニングアッセイ法により同定された新規物質に関する(例えば、癌療法の下記説明参照)。従って、更に適当な動物モデル(本明細書に説明されたもののような)における、本明細書において説明されたように同定された物質(例えば、癌マーカー変調物質、アンチセンス癌マーカー核酸分子、siRNA分子、癌マーカー特異抗体、または癌マーカー結合パートナー)を使用し、そのような物質による治療の効能、毒性、副作用、または作用機序を決定することは、本発明の範囲内である。更に、前述のスクリーニングアッセイ法により同定された新規物質は、例えば、本明細書において説明された治療に使用することができる。
IV. 癌療法
一部の態様において、本発明は、癌(例えば、前立腺癌)の治療法を提供する。一部の態様において、治療法は、癌マーカー(例えば、ヘプシン、pim-1、AMACR、EZH2、およびCTBPを含むが、これらに限定されるものではない)を標的とする。
A. アンチセンス療法
一部の態様において、本発明は、癌マーカーの発現を標的とする。例えば、一部の態様において、本発明は、本発明の癌マーカーをコードしている核酸分子の機能を変調するため、最終的には発現された癌マーカーの量を変調するために使用する、オリゴマーアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチド(例えば、前述の薬剤スクリーニング法において同定されたもの)を含有する組成物を使用する。これは、本発明の癌マーカーをコードしている1種または複数の核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス化合物を提供することにより達成される。オリゴマー化合物のその標的核酸との特異的ハイブリダイゼーションは、その核酸の正常な機能を妨害する。この標的核酸のそれに特異的にハイブリダイズする化合物による機能の変調は、一般に「アンチセンス」と称されている。妨害されるDNAの機能は、複製および転写を含む。妨害されるRNAの機能は、例えば、RNAのタンパク質翻訳部位への転置、RNAからのタンパク質翻訳、1種または複数のmRNA種を得るためのRNAのスプライシング、およびRNAにより保証されたもしくは促進され得る触媒活性のような全ての生存機能を含む。このような標的核酸機能との干渉の全般的作用は、本発明の癌マーカー発現の変調である。本発明との関連において、「変調」は、遺伝子発現の増加(刺激)または減少(阻害)のいずれかを意味する。例えば、発現は、腫瘍増殖を強力に予防するように阻害することができる。
アンチセンスに関して、標的特異的核酸が好ましい。本発明との関連において、特定の核酸に対するアンチセンス化合物の「標的化」は、多工程のプロセスである。このプロセスは、通常、その機能が変調される核酸配列の同定から始まる。この核酸配列は、例えばその発現が特定の障害もしくは病態と関連づけられた細胞遺伝子(または遺伝子から転写されたmRNA)、または感染性物質由来の核酸分子であることができる。本発明において、標的は、本発明の癌マーカーをコードしている核酸分子である。この標的化プロセスは、望ましい作用、例えばタンパク質の発現の検出または変調が生じるように起こるアンチセンス相互作用に関するこの遺伝子内のひとつまたは複数の位置の決定も含む。本発明の状況において、好ましい遺伝子内の位置は、遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の翻訳開始コドンまたは終結コドンを包含する領域である。翻訳開始コドンは典型的には5'-AUG(転写されたmRNA分子において;対応するDNA分子においては5'-ATG)であるので、翻訳開始コドンは、「AUGコドン」、「開始コドン」、または「AUG開始コドン」とも称される。少数の遺伝子は、RNA配列が5'-GUG、5'-UUG、または5'-GUGである翻訳開始コドンを有し、ならびに5'-AUA、5'-ACG、および5'-CUGは、インビボにおいて機能することが示されている。従って、「翻訳開始コドン」および「開始コドン」という用語は、例え各場合において開始アミノ酸が典型的にはメチオニン(真核生物)またはホルミルメチオニン(原核生物)であっても、多くのコドン配列を包含している。真核および原核細胞遺伝子は、2種またはそれよりも多い代わりの開始コドンを有することがあり、そのひとつは、特定の細胞型もしくは組織において、または特定の条件設定下において、優先的に翻訳開始に使用される。本発明に関連して、「開始コドン」および「翻訳開始コドン」は、そのようなコドンの配列とは関わりなく、本発明の腫瘍抗原をコードしている遺伝子から転写されたmRNA分子の翻訳を開始するためにインビボにおいて使用されるコドンまたはコドン類と称される。
遺伝子の翻訳終結コドン(または「停止コドン」)は、3種の配列(すなわち、5'-UAA、5'-UAG、および5'-UGA;対応するDNA配列は、各々、5'-TAA、5'-TAG、および5'-TGAである)のひとつであることができる。「開始コドン領域」または「翻訳開始コドン領域」という用語は、翻訳開始コドンからいずれかの方向(すなわち、5'側または3'側)に約25〜約50個の連続ヌクレオチドを含んでいるmRNAまたは遺伝子の一部を意味する。同様に、「停止コドン領域」および「翻訳終結コドン領域」という用語は、翻訳終結コドンからいずれかの方向(すなわち、5'側または3'側)に約25〜約50個の連続ヌクレオチドを含んでいるmRNAまたは遺伝子の一部を意味する。
翻訳開始コドンと翻訳終結コドンの間の領域を意味するオープンリーディングフレーム(ORF)または「コード領域」は、効果的に標的化することができる領域でもある。別の標的領域は、翻訳開始コドンから5'方向のmRNA部分を意味する、5'側非翻訳領域(5'UTR)を含み、従って5'キャップ部位とmRNAまたは遺伝子上の対応するヌクレオチドの翻訳開始コドンの間のヌクレオチドを含み、ならびに3'非翻訳領域(3'UTR)は、翻訳終結コドンから3'方向のmRNA部分を意味し、従って翻訳終結コドンと、mRNAまたは遺伝子上の対応するヌクレオチドの3'末端の間のヌクレオチドを含む。mRNAの5'キャップは、5'-5'三リン酸連結を介して、mRNAの最も5'-側の残基に結合したN7-メチル化されたグアノシン残基を含む。mRNAの5'キャップ領域は、5'キャップ構造それ自身に加え、そのキャップに隣接している最初の50個のヌクレオチドを含むと考えられる。このキャップ領域は、好ましい標的領域でもある。
一部の真核生物mRNA転写産物は、直接翻訳されるが、多くは、それが翻訳される前に転写産物から切出される「イントロン」として公知の1個または複数の領域を含む。残りの(従って翻訳された)領域は、「エキソン」として公知であり、互いにスプライシングされ、連続mRNA配列を形成する。mRNAスプライシング部位(すなわち、イントロン-エキソン接合部)は、好ましい標的領域でもあり、異常なスプライシングが疾患に関係している状況、または特定のmRNAスプライシング産物の過剰産生が疾患に関係している状況において特に有用である。再配列または欠失による異常な融合接合部も好ましい標的である。同じく、イントロンも効果的であり、その結果例えばDNAまたはプレ-mRNAに対して標的化されたアンチセンス化合物の標的領域が好ましいこともわかっている。
一部の態様において、アンチセンス阻害の標的部位は、市販のソフトウェアプログラムを用いて同定される(例えば、Biognostik、Gottingen、独国;SysArris Software、Bangalore、インド;Antisense Research Group、University of Liverpool、Liverpool、英国;GeneTrove、Carlsbad、CA)。別の態様において、アンチセンス阻害のための標的部位は、本明細書に参照として組入れられている米国特許WO 0198537A2に開示された、アクセス可能な部位の方法を用いて同定される。
一旦1個または複数の標的部位が同定されたならば、標的と十分に相補的である (すなわち、十分良好にハイブリダイズし、十分な特異性を伴う)オリゴヌクレオチドが選択され、望ましい作用を生じる。例えば、好ましい本発明の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的化されるかまたは開始コドンの近傍にある。
本発明との関連において、「ハイブリダイゼーション」は、アンチセンス組成物および方法に関して、相補的ヌクレオシドまたはヌクレオチド塩基間のWatson-Crick、Hoogsteenまたは逆Hoogsteen水素結合であることができる、水素結合を意味する。例えば、アデノシンおよびチミジンは、水素結合形成により対形成する相補的核酸塩基である。アンチセンス化合物の配列は、特異的にハイブリダイズするためには、その標的核酸の配列と100%相補性である必要はないことは理解される。アンチセンス化合物は、この化合物の標的DNAまたはRNA分子との結合が、標的DNAまたはRNAの通常の機能を妨害し、利用性が喪失される場合に、特異的にハイブリダイズ可能であり、およびそこには、特異的結合が望ましいような条件下(すなわち、インビボアッセイ法または治療処置の場合には生理的条件下、およびインビトロアッセイ法の場合は、アッセイ法が行われる条件下)において、アンチセンス化合物の非標的配列への非特異的結合を避けるために十分な程度の相補性が存在している。
アンチセンス化合物は、通常研究用試薬および診断薬として使用される。例えば、特異的に遺伝子発現を阻害することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、特定の遺伝子の機能を説明するために使用することができる。例えば、生物学的経路の様々なメンバー間の機能を区別するためにも、アンチセンス化合物を使用することができる。
アンチセンスの特異性および感度は、治療的用途に適用することもできる。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、動物およびヒトの病態の治療において、治療的部分として使用される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヒトへ安全かつ効果的に投与され、ならびに多くの臨床試験が現在進行中である。従って、オリゴヌクレオチドは、細胞、組織、および動物、特にヒトの治療のための治療計画に有用であるように構成することができる治療様式において有用であることが確立されている。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンス化合物の好ましい形であるが、本発明は、以下に説明されたような、オリゴヌクレオチド擬態を含むが、これらに限定されるものではない、他のオリゴマーアンチセンス化合物を包含している。本発明のアンチセンス化合物は、好ましくは、約8〜約30個の核酸塩基(すなわち、約8〜約30個の連結した塩基)を含むが、より長い配列およびより短い配列の両方を、本発明で使用することも認められる。特に好ましいアンチセンス化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、更により好ましくは約12〜約25個の核酸塩基を含むものである。
本発明において有用な好ましいアンチセンス化合物の具体例は、修飾された骨格または非天然のヌクレオシド間連結を含んでいるオリゴヌクレオチドを含む。本明細書に定義されたように、修飾された骨格を有するオリゴヌクレオチドは、骨格にリン原子を保持するもの、および骨格にリン原子を有さないものを含む。本明細書の目的のために、それらのヌクレオシド間の骨格にリン原子を有さない修飾されたオリゴヌクレオチドも、オリゴヌクレオシドであると考えることができる。
好ましい修飾されたオリゴヌクレオチド骨格は、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3'-アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含むメチルおよび他のアルキルのホスホネート、ホスフィネート、3'-アミノホスホラミデートおよびアミノアルキルホスホラミデートを含むホスホラミデート型、チオノホスホラミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびに通常の3'-5'連結を有するボラノホスフェート(boranophosphate)、それらの2'-5'連結したアナログ、ならびにヌクレオシド単位の隣接対が、3'-5'から5'-3'または2'-5'から5'-2'連結された逆転した極性を有するものを含む。様々な塩、混合された塩、および遊離酸の形も含まれる。
その中にリン原子を含まない好ましい修飾されたオリゴヌクレオチド骨格は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間連結、混合されたヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間連結、または1個もしくは複数の短鎖ヘテロ原子もしくはヘテロ環式ヌクレオシド間連結により形成された骨格を有する。これらは、モルホリノ連結(一部ヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファミン酸骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホン酸およびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびに、混合されたN、0、S、およびCH2成分部分を有する他のものを有する骨格を含む。
別の好ましいオリゴヌクレオチド擬態において、ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間連結(すなわち、骨格)は、新たな基により交換される。これらの塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションの間は維持される。このようなオリゴマー化合物のひとつである、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド擬態は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格により交換される。これらの核酸塩基は維持され、および骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接または間接に結合される。PNA化合物の調製を開示している代表的米国特許は、米国特許第5,539,082号;第5,714,331号;および、第5,719,262号であり、これらは各々本明細書に参照として組入れられているものであるが、これらに限定されるものではない。PNA化合物に関する更なる開示は、Nielsenらの論文(Science、254:1497(1991))において見ることができる。
最も好ましい本発明の態様は、前述の米国特許第5,489,677号のホスホロチオエート骨格を伴うオリゴヌクレオチド、およびヘテロ原子骨格を伴うオリゴヌクレオシドであり、特に-CH2、-NH-O-CH2-、-CH2-N(CH3)-O-CH2- [メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として公知]、-CH2-O-N(CH3)-CH2-、-CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2-、および-O-N(CH3)-CH2-CH2- [ここで未変性のホスホジエステル骨格は、-0-P-O-CH2-として示される]、ならびに前述の米国特許第5,602,240号のアミド骨格である。前述の米国特許第5,034,506号に開示されているモルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドも、好ましい。
修飾されたオリゴヌクレオチドは、1個または複数の置換された糖部分も含む。好ましいオリゴヌクレオチドは、2'位に、OH;F;0-、S-、またはN-アルキル;0-、S-、またはN-アルケニル;0-、S-またはN-アルキニル;または、O-アルキル-O-アルキルの1つを含み、ここでアルキル、アルケニルおよびアルキニルは、C1からC10アルキルまたはC2からC10アルケニルおよびアルキニルで置換されてもされなくとも良い。特に好ましいのは、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2であり、ここでnおよびmは1〜約10である。別の好ましいオリゴヌクレオチドは、2'位に下記のひとつを含む:C1からC10の低級アルキル、置換された低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリルまたはO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換されたシリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善する基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学特性を改善する基、ならびに同様の特性を有する他の置換基。好ましい修飾は、2'-メトキシエトキシ(2'-O-CH2CH2OCH3、同じく2'-O-(2-メトキシエチル)または2'-MOEとしても公知)(Martinら、Helv. Chim. Acta、78:486[1995])、すなわちアルコキシアルコキシ基である。更に好ましい修飾は、2'-ジメチルアミノオキシエトキシ(すなわち、O(CH2)2ON(CH3)2基)であり、これは2'-DMAOE、および2'-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当技術分野において、2'-O-ジメチルアミノエトキシエチルまたは2'-DMAEOEとして公知)であり、すなわち、2'-O-CH2-O-CH2-N(CH2)2である。
他の好ましい修飾は、2'-メトキシ(2'-O-CH3)、2'-アミノプロポキシ(2'-OCH2CH2CH2NH2)、および2'-フルオロ(2'-F)を含む。同じく類似の修飾は、オリゴヌクレオチドの別の位置、特に3'末端ヌクレオチドまたは2'-5'連結されたオリゴヌクレオチドの糖の3'位、ならびに5'末端ヌクレオチドの5'位で行われる。オリゴヌクレオチドは、ペンタフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分のような糖擬態を有することもできる。
オリゴヌクレオチドは、核酸塩基(当技術分野において簡単に「塩基」と称されることも多い)の修飾または置換を含むこともできる。本明細書において使用される「未修飾」または「天然の」核酸塩基は、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含む。修飾された核酸塩基は、その他の合成および天然の核酸塩基、例えば、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキルの誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキルの誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニルウラシルおよびシトシン、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルおよび他の8-置換されたアデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換されたウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニンおよび3-デアザグアニン、ならびに3-デアザアデニンなどを含む。更なる核酸塩基は、米国特許第3,687,808号に開示された核酸塩基を含む。ある種のこれらの核酸塩基は、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性の増加に関して特に有用である。これらは、5-置換されたピリミジン、6-アザピリミジン、ならびにN-2、N-6、およびO-6置換されたプリンを含み、これは2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンを含む。5-メチルシトシン置換は、0.6〜1.2℃で核酸の二重鎖の安定性を増加することが示されており、特に2'-O-メトキシエチル糖修飾と組合わせてさえも、現在好ましい塩基置換である。
別の本発明のオリゴヌクレオチドの修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、または細胞取込みを増強する1種または複数の部分または複合体の、オリゴヌクレオチドへの化学連結に関連している。このような部分は、コレステロール部分、コール酸、チオエーテル、(例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール)、チオコレステロール、脂肪族鎖、(例えば、ドデカンジオール残基またはウンデシル残基)、リン脂質、(例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-0-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホン酸)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖もしくはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分のような脂質部分を含むが、これらに限定されるものではない。
当業者には、前述の修飾を含むオリゴヌクレオチドを作成する方法は周知である。本発明は、前述のアンチセンスオリゴヌクレオチドに限定されない。任意の適当な修飾または置換を利用することができる。
所定の化合物内の全ての位置について均質に修飾されることは必要ではなく、実際複数の前述の修飾を、単独の化合物内、またはオリゴヌクレオチド内の1個のヌクレオシドへさえも組込ませることができる。本発明は更に、キメラ化合物であるアンチセンス化合物も含む。「キメラ性」アンチセンス化合物または「キメラ」は、本発明との関連において、各々が、少なくとも1種のモノマー単位、すなわち、オリゴヌクレオチド化合物の場合ヌクレオチドで構成されている、2種またはそれよりも多い化学的に異なる領域を含む、アンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、典型的には、ヌクレアーゼ分解に対する増大した抵抗、増大した細胞取込み、および/または標的核酸への増大した結合親和性をオリゴヌクレオチドに付与するためにオリゴヌクレオチドが修飾されるような少なくとも1個の領域を含む。オリゴヌクレオチドの追加領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断することが可能な酵素のための基質として利用することができる。例として、RNaseHは、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。その結果、RNaseHの活性化は、RNA標的の切断を生じ、それにより遺伝子発現のオリゴヌクレオチド阻害の効率を大きく増大する。結果的に、キメラオリゴヌクレオチドが使用される場合、同じ標的領域にハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシオリゴヌクレオチドと比べて、同等の結果がしばしば、比較的短いオリゴヌクレオチドで得られる。RNA標的の切断は、慣習的にゲル電気泳動により、および必要であるならば、当技術分野において公知の関連した核酸ハイブリダイゼーション技術により検出することができる。
本発明のキメラアンチセンス化合物は、前述のような2種またはそれよりも多いオリゴヌクレオチド、修飾されたオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシドおよび/またはオリゴヌクレオチド擬態の複合構造として形成され得る。
本発明は更に、下記のような本発明のアンチセンス化合物を含有する薬学的組成物および処方も含む。
B. 遺伝子療法
本発明は、本発明の癌マーカーの発現を変調する際の遺伝子操作の使用を企図している。遺伝子操作の例は、遺伝子ノックアウト(例えば、例として組換えを使用する、染色体からの癌マーカー遺伝子の除去)、誘導可能なプロモーターを伴うまたは伴わないアンチセンス構築体の発現などを含むが、これらに限定されるものではない。核酸構築体の細胞へのインビトロまたはインビボにおける送達は、適当な方法を用いて行うことができる。適当な方法とは、核酸構築体を細胞へ導入し、その結果望ましい事象(例えば、アンチセンス構築体の発現)を生じさせる方法である。
遺伝情報を保持する分子の細胞への導入は、裸のDNA構築体の指定された注入、構築体を負荷した金粒子による衝撃、および例えば、リポソーム、生体高分子などの巨大分子に媒介された遺伝子導入を含むが、これらに限定されるものではない、様々な方法のいずれかにより達成される。好ましい方法は、アデノウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、およびアデノ随伴ウイルスを含むが、これらに限定されるものではないウイルスに由来した遺伝子送達の伝達体を使用する。レトロウイルスに比べて高い効率のために、アデノウイルス由来のベクターが、インビボにおいて核酸分子を宿主細胞へ導入するための好ましい遺伝子送達の伝達体である。アデノウイルスベクターは、動物モデルにおける様々な固形腫瘍へおよび免疫欠損マウス内のヒト固形腫瘍異種移植片への、非常に効率的なインビボ遺伝子導入を提供することがわかっている。アデノウイルスベクターおよび遺伝子導入法の例は、国際公開公報第00/12738号および国際公開公報第00/09675号、ならびに米国特許第6,033,908号、第6,019,978号、第6,001,557号、第5,994,132号、第5,994,128号、第5,994,106号、第5,981,225号、第5,885,808号、第5,872,154号、第5,830,730号、および第5,824,544号に開示されており、これらは各々その全体が本明細書に参照として組入れられている。
ベクターは様々な方法で対象へ投与することができる。例えば、本発明の一部の態様において、ベクターは、腫瘍または腫瘍へ関連した組織へ、直接注入を用いて投与される。別の態様において、投与は、血液またはリンパ循環を介する(例えば、その全体が本明細書に参照として組入れられている、国際公開公報第99/02685号を参照のこと)。アデノウイルスベクターの用量レベルの例は、灌流液へ添加される108〜1011個のベクター粒子が好ましい。
C. 抗体療法
一部の態様において、本発明は、本発明の癌マーカー(例えば、ヘプシン、pim-1、EZH2、アネキシン、CTBP、GP73、およびAMACR)を発現する前立腺腫瘍を標的とする抗体を提供する。任意の適当な抗体(例えば、モノクローナル、ポリクローナル、または合成抗体)は、本明細書に開示された治療的方法で利用することができる。好ましい態様において、癌療法に利用される抗体は、ヒト化された抗体である。抗体をヒト化する方法は、当技術分野において周知である(例えば、米国特許第6,180,370号、第5,585,089号、第6,054,297号、および第5,565,332号参照;これらは各々本明細書に参照として組入れられている)。
一部の態様において、治療的抗体は、本発明の癌マーカー(例えば、ヘプシン、pim-1、EZH2、アネキシン、CTBP、GP73、およびAMACR)に対して作成された抗体を含み、ここでこの抗体は、細胞傷害性物質に複合されている。このような態様において、腫瘍特異的な治療的物質は、正常細胞を標的化しないように作成され、その結果従来の化学療法の多くの有害な副作用を軽減する。ある種の適用について、治療的物質は、抗体への結合に有用な物質として役立つ薬学的物質、特に細胞傷害性物質、さもなければ内皮細胞を殺傷するかまたはその増殖もしくは細胞分裂を抑制する能力を有する抗細胞物質であることが想起されている。本発明は、抗体へ複合することができ、および活性型で送達されるいずれかの薬学的物質の使用を企図している。抗細胞物質の例は、化学療法剤、放射性同位元素および細胞毒を含む。本発明の治療的抗体は、放射性同位元素(例えば、ヨウ素-131、ヨウ素-123、テクネチウム-99m、インジウム-111、レニウム-188、レニウム-186、ガリウム-67、銅-67、イットリウム-90、ヨウ素-125またはアスタチン-211)、ステロイドのようなホルモン、シトシンのような代謝拮抗剤(例えば、アラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキセート、またはアミノプテリン;アントラサイクリン;マイトマイシンC)、ビンカアルカロイド(例えば、デメコルチン;エトポシド;ミトラマイシン)、ならびにクロラムブシルまたはメルファランのような抗腫瘍アルキル化剤を含むが、これらに限定されるものではない、様々な細胞毒性部分を含むことができる。他の態様は、凝集剤、サイトカイン、増殖因子、細菌内毒素または細菌内毒素のリピドA部分などの物質を含むことができる。例えば一部の態様において、治療的物質は、ほんのわずかな例として、植物由来、真菌由来、または細菌由来の毒素、例えばA鎖毒、リボソーム不活性化タンパク質、α-サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒、またはシュードモナス内毒素を含む。一部の好ましい態様において、脱グリコシル化されたリシンA鎖が利用される。
任意の事象において、これらのような物質を、望ましいならば、公知の複合技術使用の必要に応じて標的化された腫瘍細胞部位において血液成分に対するそれらの標的化、内在化、放出または提示をもたらす方法で、抗体とうまく複合されることが提唱されている(例えば、Ghoseら、Methods Enzymol.、93:280[1983]参照)。
例えば、一部の態様において、本発明は、本発明の癌マーカー(例えば、ヘプシン、pim-1、EZH2、アネキシン、CTBP、GP73、およびAMACR)を標的化した免疫毒を提供する。免疫毒は、典型的には腫瘍関連抗体または断片を特異的に標的化する物質の、例えば毒素部分のような細胞毒性物質との複合体である。この標的化物質は、毒素を方向付け、それにより標的化された抗原を保持する細胞を選択的に殺傷する。一部の態様において、治療的抗体は、高いインビボ安定性を提供するような架橋を利用する(Thorpeら、Cancer Res.、48:6396[1988])。
別の態様、特に固形腫瘍の治療に関連している態様において、抗体は、血管内皮細胞の増殖または細胞分裂を抑制することにより、腫瘍血管に対する細胞毒さもなければ抗細胞作用を持つようにデザインされる。この攻撃は、腫瘍に局在化された血管の崩壊、腫瘍細胞の酸素および栄養素の枯渇、特に血管から遠位の腫瘍細胞の枯渇へつながり、最終的には細胞死または腫瘍壊死へつながることが意図されている。
好ましい態様において、抗体ベースの治療は、以下のような薬学的組成物として処方される。好ましい態様において、本発明の抗体組成物の投与は、癌の測定可能な退縮(例えば、腫瘍の退縮または消滅)をもたらす。
D. 薬学的組成物
本発明は、更に薬学的組成物(例えば、先に説明したアンチセンスまたは抗体化合物を含有する)を提供する。本発明の薬学的組成物は、局所的または全身的治療の任意の望ましい形に応じて、および治療される領域に応じて、多くの方法で投与することができる。投与は、外用(眼ならびに膣および直腸送達を含む粘膜へを含む)、経肺(例えば、ネブライザーを含む、粉末またはエアロゾルの吸入または吹き入れ器;気管支内、鼻腔内、上皮および経皮的)、経口または非経口であることができる。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射もしくは注入;または、脳内、例えば髄腔内、もしくは脳室内投与を含む。
外用投与のための薬学的組成物および処方は、経皮的貼付剤、軟膏、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、液滴、坐剤、スプレー剤、液剤および散剤を含むことができる。従来の薬学的担体、水溶液、粉末または油性基剤、増粘剤などが、必要または望ましいことがある。
経口投与のための組成物および処方は、散剤または顆粒剤、水または非水性媒質中の懸濁剤または液剤、カプセル剤、サシェ剤または錠剤を含む。増粘剤、香料、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が望ましいことがある。
非経口、髄腔内、または脳室内投与のための組成物および処方は、緩衝剤、希釈剤、ならびに例えば浸透増強剤、担体化合物および他の薬学的に許容できる担体、または賦形剤であるがこれに限定されない他の適当な添加剤をも含有することができる、滅菌水溶液を含むことができる。
本発明の薬学的組成物は、液剤、乳剤、およびリポソーム-含有処方を含むが、これらに限定されるものではない。これらの組成物は、予め形成された液剤、自己乳化型固形物および自己乳化型半固形物を含むが、これらに限定されるものではない、様々な成分から作成することができる。
本発明の薬学的処方は、通常単位剤形で表わすことができ、これは製薬業界において周知の従来の技術に従い調製することができる。このような技術は、活性成分の、薬学的担体または賦形剤との会合をもたらす行程を含む。一般に、これらの処方は、活性成分を液体担体とまたは最終的に分割される固形担体もしくは両方と均一および密に会合させ、その後必要に応じて製品を成形することにより調製される。
本発明の組成物は、錠剤、カプセル剤、液体シロップ剤、軟質ゲル剤、坐剤および浣腸剤などであるが、これらに限定されるものではない、多くの可能性のある剤形のいずれかに処方することができる。本発明の組成物は、水性、非水性または混合された媒体中の懸濁剤として処方することもできる。水性懸濁剤は更に、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含む、懸濁剤の粘度を増大する物質を含むことができる。この懸濁剤は更に安定剤も含む。
ひとつの本発明の態様において、薬学的組成物は、泡剤(foam)として処方しおよび使用することができる。薬学的泡剤は、乳剤、マイクロエマルション、クリーム剤、ゼリーおよびリポソームのような処方を含むが、これらに限定されるものではない。これらの処方は性質が基本的に類似しているが、成分および最終製品のコンシステンシーは変動する。
細胞レベルでオリゴヌクレオチドの取込みを増強する物質も、本発明の薬学的組成物および他の組成物へ添加することができる。例えばカチオン性脂質、例えばリポフェクチン(米国特許第5,705,188号)、カチオン性グリセロール誘導体、およびポリカチオン性分子、例えばポリリシン(国際公開公報第97/30731号)も、オリゴヌクレオチドの細胞取込みを増強する。
本発明の組成物は、薬学的組成物中で通常認められる他の添加成分を追加的に含有することができる。従って例えば、組成物は追加の適合性のある薬学的活性のある物質、例えば、止痒剤、収斂剤、局所麻酔剤、もしくは抗炎症剤を含有することができるか、または色素、香料、保存剤、酸化防止剤、乳白剤、増粘剤および安定剤のような、本発明の組成物の様々な剤形の生理的処方に有用な追加材料を含有することができる。しかし、このような材料は、添加された場合に、本発明の組成物の成分の生物学的活性を過度に妨害してはならない。これらの処方は、滅菌することができ、および望ましいならば、この処方の核酸と有害に相互作用しないような賦形剤、例えば滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩、緩衝剤、着色剤、香料、および/または芳香剤などと混合することができる。
本発明のある態様は、(a)1種または複数のアンチセンス化合物、および(b)非アンチセンス機序により機能する1種または複数の他の化学療法剤を含有する薬学的組成物を提供する。このような化学療法剤の例は、抗癌剤、例えばダウノルビシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトマイシン、ナイトロジェンマスタード、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン(CA)、5-フルオロウラシル(5-FU)、フロキシウリジン(5-FUdR)、メトトレキセート(MTX)、コルヒチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、テニポシド、シスプラチンおよびジエチルスチルベストロール(DES)などを含むが、これらに限定されるものではない。非ステロイド系抗炎症剤およびコルチコステロイドを含むが、これらに限定されるものではない抗炎症剤、ならびにリビビリン、ビダラビン、アシクロビルおよびガンシクロビルを含むが、これらに限定されるものではない抗ウイルス剤も、本発明の組成物と共に使用することができる。他の非アンチセンス化学療法剤も、本発明の範囲である。2種またはそれよりも多い組合わせた化合物を、同時または逐次使用することができる。
投薬は、数日間から数ヶ月間、または治療が影響を受けるかもしくは病態の軽減が達成されるまで維持される治療経過により、治療される病態の重症度および応答性によって決まる。最適な投薬スケジュールは、患者の体内への薬物蓄積の測定から算出することができる。投与する医師は、適量、投薬法および反復回数を容易に決定することができる。適量は、個々のオリゴヌクレオチドの相対効能によって変動し、一般には、インビトロおよびインビボ動物モデルにおいて有効であると見なされるEC50を基にまたは本発明において説明された実施例を基に推定することができる。一般に、用量は、体重1kg当り0.01μg〜100gであり、および毎日、毎週、毎月、または毎年1回または複数回投与される。治療担当医師は、測定された滞留時間および体液または組織中の薬物濃度を基に投薬の反復回数を推定することができる。治療が成功した後、病態の再発を防止するために、対象は維持療法を受けることが望ましく、ここではこのオリゴヌクレオチドは、体重1kg当り0.01μg〜100gの維持量で、毎日1回または複数回から20年毎に1回までの範囲で、投与される。
V. 癌マーカー遺伝子を発現しているトランスジェニック動物
本発明は、本発明の外因性癌マーカー遺伝子またはそれらの突然変異体および変種(例えば、切断または一塩基多型)を含むトランスジェニック動物の作出を企図している。好ましい態様において、トランスジェニック動物は、野生型動物と比べて、変更された表現型を示す(例えば、増大または減少したマーカーの存在)。このような表現型の存在または非存在を分析する方法は、本明細書に説明されたものを含むが、これらに限定されるものではない。一部の好ましい態様において、トランスジェニック動物は更に、腫瘍の増大もしくは減少した成長または癌の証拠を示す。
本発明のトランスジェニック動物は、薬剤(例えば、癌療法)スクリーニングにおける用途を認める。一部の態様において、被験化合物(例えば、癌の治療において有用であると疑われる薬剤)および対照化合物(例えば、プラセボ)が、トランスジェニック動物および対照動物へ投与され、作用が評価される。
トランスジェニック動物は、様々な方法により作出することができる。一部の態様において、様々な発生段階の胚細胞を使用し、トランスジェニック動物作出のために、導入遺伝子が導入される。異なる方法が、胚細胞の発生段階に応じて使用される。接合子が、微量注入の最適の標的である。マウスにおいて、DNA溶液1〜2ピコリットル(pl)の再現性のある注入を可能にする雄の前核サイズは直径およそ20μmに達する。遺伝子導入の標的としての接合子の使用は、ほとんどの場合において、注入されたDNAは最初の卵割の前に宿主ゲノムに導入されるという大きい利点がある(Brinsterら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、82:4438-4442[1985])。結果として、トランスジェニック非ヒト動物の全ての細胞は、組込まれた導入遺伝子を保持する。これは一般に、生殖細胞の50%は導入遺伝子に収容されるので、創始者の子孫への導入遺伝子の効率的伝達も反映するであろう。米国特許第4,873,191号は、接合子の微量注入の方法を開示しており;この特許の開示は、その全体が本明細書に参照として組入れられている。
別の態様において、レトロウイルス感染が、非ヒト動物への導入遺伝子の導入に使用される。一部の態様において、レトロウイルスベクターが、レトロウイルスベクターの卵母細胞の卵黄周囲への注入による、卵母細胞のトランスフェクションに利用される(米国特許第6,080,912号、これは本明細書に参照として組入まれている)。別の態様において、非ヒト胚が、胚盤胞期までインビトロにおいて培養される。この間、割球は、レトロウイルス感染の標的となることができる(Janenich、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、73:1260[1976])。透明帯を除去するための酵素処理により、割球の効率的感染が得られる(Hoganら、Manipulating the Mouse Embryo、Cold Spring Harbor Laboratory Press社、コールドスプリングハーバー、NY、[1986])。導入遺伝子の導入に使用されたウイルスベクターシステムは、典型的には導入遺伝子を保持している複製欠損レトロウイルスである(Jahnerら、Proc. Natl. Acad Sci. USA、82:6927[1985])。トランスフェクションは、ウイルス産生細胞の単層上での割球の培養により、容易にかつ効率的に得られる(Stewartら、EMBO J.、6:383[1987])。あるいは、感染は後の段階で行うことができる。ウイルスまたはウイルス産生細胞は胞胚腔へ注入することができる(Jahnerら、Nature、298:623[1982])。ほとんどの創始者は、導入遺伝子についてモザイクであり、その理由は、組込みがトランスジェニック動物を形成する細胞のサブセット内でのみ生じるからである。更に創始者は、一般に子孫において離れているゲノムの異なる位置に、導入遺伝子の様々なレトロウイルス挿入断片を含むことができる。加えて、低効率ではあるが、導入遺伝子を生殖系列に、妊娠中期の胚の子宮内レトロウウイルス感染により、導入することも可能である(Jahnerら、前掲[1982])。当技術分野において公知のトランスジェニック動物を作出するためにレトロウイルスまたはレトロウイルスベクターを使用する追加の手段は、レトロウイルス粒子またはレトロウイルスを産生するマイトマイシンC処理した細胞の、受精卵または初期胚の卵黄周辺腔への微量注入を含む(PCT国際出願国際公開公報第90/08832号[1990]、ならびにHaskellおよびBowen、Mol. Reprod. Dev.、40:386[1995])。
別の態様において、導入遺伝子は、胚性幹細胞へ導入され、トランスフェクションされた幹細胞を用いて、胚が形成される。ES細胞は、適当な条件下での、移植前の胚のインビトロ培養から得られる(Evansら、Nature、292:154[1981];Bradleyら、Nature、309:255[1984];Gosslerら、Proc. Acad. Sci. USA、83:9065[1986];および、Robertsonら、Nature、322:445[1986])。導入遺伝子は、リン酸カルシウム共沈殿、プロトプラストまたはスフェロプラスト融合、リポフェクションおよびDEAE-デキストラン媒介したトランスフェクションを含む様々な当技術分野において公知の方法による、DNAトランスフェクションにより、ES細胞へ効率的に導入される。導入遺伝子は更に、レトロウイルス媒介した形質導入によって、または微量注入よっても、ES細胞へ導入される。このようなトランスフェクションされたES細胞は、その後、割球期の胚の胞胚腔へのそれらの導入後胚をコロニー形成し、得られるキメラ動物の生殖系列に寄与する(総説については、Jaenisch、Science、240:1468[1988]参照)。トランスフェクションされたES細胞の胞胚腔への導入前に、トランスフェクションされたES細胞には、導入遺伝子を組込んだES細胞を濃厚化するために、様々な選択プロトコールが施され、この導入遺伝子はこのような選択手段を提供することを前提とすることができる。あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応を用い、導入遺伝子が組込まれたES細胞をスクリーニングする。この技術は、トランスフェクションされたES細胞を、胞胚腔へ導入する前に、適当な選択条件下で増殖する必要がない。
更に他の態様において、遺伝子機能をノックアウトするため、または欠失突然変異体(例えば切断型突然変異体)を作出するために、相同組換えが使用される。相同組換えの方法は、米国特許第5,614,396号に開示されており、これは本明細書に参照として組入れられている。
実験
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい態様および局面を示しさらに説明するために提供するものであり、その範囲を限定するものと解釈すべきでない。
以下の実験の開示においては、以下の略語を使用する:N(規定濃度);M(モル濃度);mM(ミリモル濃度);μM(マイクロモル濃度);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);pmol(ピコモル);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);ng(ナノグラム);lまたはL(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);および℃(摂氏温度)。
実施例1
全RNAおよび参照プールの調製
前立腺外科標本は、ミシガン大学前立腺癌専門研究プログラム(Specialized Research Program in Prostate Cancer)(S.P.O.R.E.)腫瘍バンクから、治験審査委員会(Institutional Review Board)の承認を得て入手した。腫瘍試料は、臨床的限局性前立腺癌および進行性ホルモン抵抗性前立腺癌(clinically localized and advanced hormone refractory prostate cancer)を有する患者由来である。表1は、本研究に用いた試料を示す。術前PSA、直腸内触診、および前立腺針生検によって判断された臨床的限局性前立腺癌については、全患者が1993年から1998年の間に手術を受けた。さらに、一部の患者は、転移の広がりの可能性を調べるため骨スキャンおよびCATスキャンを受けた。患者はすべて、単独療法として根治的前立腺切除術を受けた(すなわち、ホルモン療法も放射線療法も行わない)。進行性前立腺腫瘍は、ミシガン大学において、ホルモン抵抗性前立腺癌で死亡した男性に対して行われた一連の12件の迅速剖検から収集した。簡潔に説明すると、これらの患者の大多数は、幅広い転移性前立腺癌を有しホルモン療法の後に化学療法により治療を受けたか、または進行した臨床的限局性疾患を示しホルモン療法および化学療法の両方の治療を受けたかのどちらかであった。大多数の症例では、多数の部位に複数の転移性の病変を有した。剖検はすべて、死後4〜6時間以内に行われた。これらの症例の臨床的および病理学的所見は、最近報告された(Rubinら、Clin. Cancer Res., 6:1038 [2000])。組織マイクロアレイ試験に使用する試料はすべて、10%ホルマリンで固定した。
Trizol(Gibco BRL)中でポリトロンホモジナイザー(Brinkman Instruments)を用いて組織をホモジナイズし、標準のTrizol手順に従い全RNAを単離した。得られた全RNAをさらにもう一度、フェノールクロロホルム抽出し、沈殿させ、RNAseフリー水に再懸濁した。分光光度(260/280nm)吸光度により全RNAを定量し、変性ホルムアルデヒドアガロースゲル電気泳動により完全性を評価した。4つの正常組織由来の全RNAを等濃度で混合し、参照プールを得た。市販の参照プールにおいて用いるヒト前立腺全RNAは、Clontech, Inc.から入手した。
(表1)前立腺試料
Figure 0004251357
Figure 0004251357
Figure 0004251357
表1. 本研究に用いた試料。ng/mlでのPSAレベル、器官源、およびグリーソンスコアを示す。正常隣接前立腺(NAP)、良性前立腺肥大症(BPH)、限局性前立腺癌(PCA)、およびホルモン抵抗性転移性前立腺癌(MET)。NAは「適用不可」を意味する。
実施例2
マイクロアレイ解析
本実施例は、癌性または良性前立腺組織において発現レベルの変化を示す遺伝子を同定するための、マイクロアレイ解析の使用について記載する。
A. 実験方法
遺伝子発現のマイクロアレイ解析は、基本的にBrownおよびDerisi研究室(インターネットサイトwww.microarrays.orgで利用可能)によって記載されるように行った。配列確認されたcDNAクローンのヒトcDNAマイクロアレイは、Research Geneticsのウェブサイトから入手可能である。用いた10KヒトcDNAマイクロアレイは、最新のUnigene buildに基づき、約5520個の既知の命名された遺伝子および4464個のESTをカバーしている。チップはすべて、例えばヒト、ラット、および酵母ゲノムDNA、SSC、酵母遺伝子、ならびに「ハウスキーピング遺伝子」を含む様々な対照成分を有する。さらに、クローン追跡のための独立した対照および品質管理のための複製物として、Research Genetics による500個の癌およびアポトーシス関連cDNAを用いた。3つの転移性前立腺癌細胞株:DU-145、LnCAP、およびPC3についても、遺伝子発現のプロファイルを行った。
各実験試料由来の全RNAから、蛍光標識した(Cy5)cDNAを調製した。本研究で用いた2つの参照試料は、第2の識別可能な蛍光色素(Cy3)を用いて標識し、これには4人の患者(実験試料に用いた患者とは異なる)の正常隣接前立腺組織のプール(NAP)および正常前立腺組織の市販のプール(CP)を含んだ。患者間の変動を最小限に抑えることに加え、正常前立腺組織のプールと比較することで、分子的に前立腺腫瘍を特徴づける遺伝子の発見が容易になる。2つの参照プールは、一方が正常隣接前立腺組織で構成され、PCAを介したパラ分泌効果の影響を受ける可能性があり、さらに隣接PCAと同じ環境因子および遺伝因子に曝されている点で異なる。これに対し、CPプールは既知の前立腺病態をもたない19名の個人由来であり、また再生可能な市販の参照供給源を表す。
鋳型としてクローン挿入断片を用いて作製した精製PCR産物を、羽軸型ピン(Majer Scientific、アリゾナ州)を供えたOmnigridロボット型アレイヤー(GeneMachines、カリフォルニア州)を用いて、ポリ-L-リジンコーティングした顕微鏡スライドグラスにスポットした。1回の完全な印刷操作により、約100枚のマイクロアレイが作製された。アレイの印刷および後処理の手順は、当技術分野において周知である。
B. データ解析
一次的な解析は、Genepixソフトウェアパッケージを用いて行った。マイクロアレイをスキャンした像にグリッドを据え、遺伝子印刷リストに連結させた。最初は、データをCy3強度対Cy5強度のスキャッタープロットとして見た。Cy3とCy5の比率を、様々な他の品質管理パラメータ(例えば、ローカルバックグラウンドを超える強度)と共に、個々の遺伝子について測定した。Genepixソフトウェア解析パッケージは、スポット特性に基づいて不在スポットにフラグを付ける(Axon Instruments, Inc.のウェブサイトを参照されたい)。異常なスポットまたは明らかに欠陥のあるアレイの領域には、手動でフラグを付けた。直径の小さいスポット(<50ミクロン)、およびより強いチャネルにおいてローカルバックグラウンドに対する蛍光強度単位が<350であるシグナル強度の低いスポットは、除外した。フラグ付けされたスポットは、それ以降の解析には含めなかった。全スポットの平均比率中央値がアレイ当たり1.0になるように標準化し、データを調整した。
次にこれらのファイルを、Microsoft Accessデータベースに取り込んだ。必要とする実験のデータを、各列がアレイの成分を表し、各段がハイブリダイゼーションを表し、かつ各セルが適切なハイブリダイゼーションのアレイ成分について測定された比率の標準化中央値を表す単一の図表形式で、データベースから抽出した。クラスタリングする前に、遺伝子の比率値の標準化中央値を2を底とする対数に変換し、存在に関してアレイにフィルターをかけ、記載した実験セットに応じて発現レベルおよび発現パターンについて選択した。プログラムCluster(Eisen ら、PNAS 95:14863 [1998])を用いて非心ピアソン相関類似度行列の平均連鎖階層的クラスタリングを適用し、結果を解析してプログラムTreeViewを用いて図を作成した。TreeViewおよびClusterは、ローレンスバークレイ国立研究所のMichael Eisen研究室から入手可能である。
C. 結果
40枚を超える10KヒトcDNAマイクロアレイを用いて、正常試料の2つの異なる参照プールに対して、4つの臨床状態の前立腺由来組織における遺伝子発現を評価した。図1は、解析した異なる組織試料における遺伝子発現の差異の概要を提供するものである。階層的クラスタリングアルゴリズムを用いて、試験した遺伝子および試料の全体にわたる遺伝子発現パターンの類似度に基づき、それぞれ遺伝子および実験試料を分類した。
1. 発現樹状図
実験試料間の関連性を樹状図としてまとめたが(図1a)、この図では、枝のパターンおよび長さが試料の関連性を反映している。図1aは、使用した2つの参照も含めた実験試料間の遺伝子発現パターンにおける差異を表す樹状図を示す。各群内の個々の試料は、METは紺色、限局性PCAはオレンジ色、NAPは水色、BPHは灰色、および細胞株はピンクという同じ色の枝によって示す。星印(*)は、最初はBPHとして記録されたが、後に5%の癌組織を有することが確認された試料を示す。本研究で用いた転移性試料の詳細は、以下のとおりである:MET 301は肺;MET 302および303は肝臓;MET 304は胃;MET 305は副腎;MET 306は前立腺;ならびにMET 307はリンパ節由来である。データの階層的クラスタリングから、解析した種々の群間で遺伝子発現のパターンが異なることが認められた。それぞれの列は、bで示される1520個の遺伝子およびcで示される1006個の遺伝子の単一遺伝子を表す。結果は、各実験mRNAから調製した蛍光cDNAプローブのハイブリダイゼーションとそれぞれの参照プールとの比を表す。これらの比は各実験試料における相対的な遺伝子発現の尺度であり、左下のカラースケールによって示される。行列内の赤色および緑色は、使用した参照プールと比較して、それぞれ上方制御および下方制御された遺伝子を表す。行列内の黒線は転写産物のレベルが変化しないことを示し、灰色の線は技術的に不適切なデータまたは欠落したデータを表す(NP、存在せず)。彩度は、各組の試料についての中央値に対する比率の大きさを反映している。
図1bは、参照としての正常隣接前立腺プールに対して比較した、様々な試料群のクラスター図を示す。発現プロファイル実験で得られたデータは、アレイに用いた各遺伝子のCBCR-t指数、クローン、ID、Unigene クラスターID、アクセッションID、NID、遺伝子記号、および名称欄を含んだ。名称欄は、相同性検索に基づいて、部分的にまたは完全に相同性を有する遺伝子を含む。さらにデータは、各遺伝子についての、発現レベルにおける参照プールと比較した数値上の差異を含む。階層的平均連鎖クラスタリングを行う前に、発現比において少なくとも2倍の変化という点でデータにフィルターをかけたが、50%の試料において比の測定値が示された。この方法により、NAP参照データセットから1520個の遺伝子が選択された。図1bの左側にある縦棒(b1〜b6)で示されるのは、特徴的な遺伝子発現特性で特定された領域である。クラスターb1およびb5は、限局性PCAでは上方制御されるが転移性PCAではされない遺伝子を示す。クラスターb2およびb4は、転移性PCAならびに細胞株DU145およびLnCAPにおいて下方制御される遺伝子を表示する。クラスターb3は、限局性PCAおよび転移性PCAの両方で下方制御される遺伝子を表す。クラスターb6は、主に転移性PCAのみで上方制御される遺伝子を表示する。クラスターb4およびb6の一部は、ヒトゲノム解析機構(HUGO)遺伝子命名法を用いて示される選択された遺伝子と共に、拡大して示す。
図1cは、市販の前立腺プール参照に対して比較した、様々な試料群のクラスター図を示す。階層的平均連鎖クラスタリングを行う前に、発現比において少なくとも3倍の変化という点でデータにフィルターをかけたが、75%の試料において比の測定値が示され、その結果全部で1006個の遺伝子が選択された。異なるパターンを有する領域(c1〜c6)を、図1cの右側の縦棒で示す。クラスターc1は、限局性PCAおよび転移性PCAの両方で下方制御される遺伝子を示す。クラスターc2は、転移性PCAのみで下方制御される遺伝子を表す。クラスターc3は、市販のプールで高く表される遺伝子を示す。クラスターc4は、限局性PCAおよび転移性PCAにおいて上方制御される遺伝子を表示する。クラスターc5は、市販のプールにおいて低く表される遺伝子を表す。クラスターc6は、転移性PCAにおいて下方制御されるが、使用した他の全試料において上方制御される遺伝子を表す。
BPHおよびNAPのような前立腺の良性病態は、使用した参照プールにかかわらず、悪性PCA細胞株または組織とは別々にクラスター形成する。PCAクラスター内では、転移性PCAと臨床的限局性PCAは異なる亜群を形成することも明らかである。同様に、「良性」分類において、BPHはNAPとは異なる傾向がある。興味深いことに、「BPH」試料の1つは、最初は限局性PCA群と共にクラスター形成した。しかし、さらなる組織病理学的再検査により、この試料は腫瘍性組織の小さな病巣を含み(約5%)、それが原因で最初に誤って分類されたことがわかった(現在、図1aにおいてPCA+BPHと示す)。
遺伝子発現の差異のEisen行列形式(Eisenら、前記)についても表す(図1bおよび1c)。データの全体的な観点から、転移性PCAが解析の中心となり、試験した試料の遺伝子発現において最も大きな差異を有することが明らかである。それぞれの行列の左側または右側にある縦棒は、協調して発現される遺伝子のクラスターを表し、試料間の相互関係を明らかにする。例えば、クラスターb3およびc1は、限局性PCAおよび転移性PCAの両方において下方制御される遺伝子を表す(図1bおよび1c)。これに対して、クラスターb6およびb4は、転移性PCAにおいてそれぞれ特異的に上方制御および下方制御される遺伝子を表示する(図1b)。IGFBP-5、DAN1、FAT癌抑制遺伝子、およびRAB5Aは、転移性PCAにおいて特異的に下方制御される遺伝子の例であり、これらはまた腫瘍形成における役割が提唱されている(図1bの「拡大」部分)。同様に、転移性PCAにおいて上方制御される癌関連遺伝子には、MTA-1(転移関連1)、MYBL2、およびFLS353(結腸直腸癌で優先的に発現される)が含まれる。この「転移特異的」クラスターにおける多くの遺伝子は、転移性PCA組織ならびに2つのPCA細胞株、DU145およびLnCAPの両方に共有される。
市販の前立腺参照プール(CPP)に対してプロファイルした、さらなる前立腺組織試料の発現プロファイルからも、データを得た。全部で53個の前立腺試料を、市販のプールに対してプロファイルした。これらには、4つの正常隣接前立腺組織(NAP)、14の良性前立腺肥大症(BPH)、1つの前立腺炎、14の限局性前立腺癌(PCA)、および20のホルモン抵抗性転移性PCA(MET)が含まれる。階層的平均連鎖クラスタリングを行う前に、Cy5/Cy3比において少なくとも3倍の変化という点でデータにフィルターをかけたが、75%の試料において比の測定値が示された。この方法により、1325個の遺伝子が選択された。データをさらなる40個の試料と共に図1cに拡張したが、これには図1bのすべてを含み、さらなる28個の前立腺試料も含む。
2. 的を絞ったクラスター
次に、既知の命名された遺伝子の機能群を調べることにより、データを評価した。癌関連機能クラスターを任意に定義したが、それには、細胞増殖/細胞死、細胞接着、抗プロテアーゼ/プロテアーゼ、フリーラジカルスカベンジャー、炎症/免疫、ホスファターゼ/キナーゼ、転写、およびその他が含まれる(図2および図6)。
さらなる調査のため、いくつかの利用可能な遺伝子選択方法のうちの1つを用いて、より限定した遺伝子セットを作成した。1つの方法において、それぞれの遺伝子について(MET/PCA対良性に基づく)t統計を計算した。細胞株試料は、この解析から除外した。また、20%の試料からデータが得られなかった遺伝子およびESTも、この解析から除外した。t統計は、2つの方法で順位づけた。まず第一に、t統計を絶対値より順位づけたが、これは発現比における試料内変動を考慮している。第二に、t統計を検定統計量の分子の大きさにより順位づけたが、これは発現比における生物学的相違に基づくもので、(MET/PCA対良性についての)「エフェクトサイズ」と称される。次に、最も大きいエフェクトサイズを有する200個の遺伝子、および最も大きいt統計を有する200個の遺伝子のスキャッタープロットを作成した(図7を参照のこと)。図7は、各遺伝子について計算したt統計に基づく遺伝子選択を示す。2つの群を解析に用いた:PCA/METおよび良性(NAP/BPH)。図7aは、NAPプールデータの解析を示す。図7bは、CPプールデータの解析を示す。選択された遺伝子の名前を挙げ、各データセットの200個の遺伝子を示す。それぞれの方法に基づく遺伝子選択を示す。選択された遺伝子の(ヒトゲノム解析機構(HUGO)遺伝子命名法により指定される)名称または記号を示す。
候補となり得る遺伝子を同定するため、両リストを作成した遺伝子を別々に考察した。この方法論を両方の参照プールデータセット(NAPおよびCP)について実行し、例えばヘプシン、pim-1、IM/ENIGMA、TIMP2、hevin、rig、およびトロンボスポンジン-1を含む遺伝子が得られた。遺伝子選択法を用いて同定されたいくつかの遺伝子を、図2に記載する「機能」クラスターとの関連においてより詳細に記載する。
図2は、前立腺癌における選択遺伝子の機能クラスターの差次的発現を示す。(ヒトゲノム解析機構(HUGO)遺伝子命名法により指定される)遺伝子名または遺伝子記号を示す。転写産物レベルにおいて示される変化について、図1と同様の規則を用いた。明確にするために、図1の試料の順番を保った。
図8は、PCA関連遺伝子の的を絞ったクラスターを示す。転写産物レベルにおいて示される変化について、図1と同様の規則を用いた。少なくとも2つの任意のクラスにおいて3.5倍の変化という点で選択することにより、この231個の遺伝子のクラスターを作成したが、75%の試料において比の測定値が示された。クラスには、PCA対NAP、MET対NAP、PCA対CP、およびMET対CPが含まれた。
階層的クラスタリングの信頼性は、3つの別々の方法:CalinskiおよびHarabasz (1974)、Hartigan (1975)、ならびにKrzanowskiおよびLai(1985)の方法を用いて評価した。これらの全方法により評価された「安定な」クラスターの数は2つである。CPプールデータセットおいて、これは有効な良性クラスター(NAPおよびBPH)および悪性クラスター(PCAおよびMET)を導く。
これらの「的を絞った」クラスターにおいて同定された遺伝子の多くは、直接的または間接的に、発癌の癌バイオマーカーまたは介在物質として関係づけられていた。いくつかは、PCAにおいて調節不全となることが示されていた。例えば、PCAのマイクロアレイ解析において、癌抑制遺伝子PTENは下方制御され、原癌遺伝子mycは上方制御された(図2)(Abate-ShenおよびShen、前記)。同様に、E-カドヘリンおよび脂肪酸合成酵素はどちらもPCAにおいて調節不全になることが示されていたが、E-カドヘリンの発現の減少および脂肪酸合成酵素の発現の増加が認められた(Tomitaら、Cancer Res., 60:3650 [2000]、およびShurbajiら、Hum. Pathol., 27:917 [1996])。特徴づけられていない発現配列タグ(EST)に加え、スクリーニングにより同定されたが以前はPCAとの関連性が未知であった遺伝子が多数存在する。これらの遺伝子には、癌マーカーとしての用途が見出されると考えられる。
的を絞ったクラスターにおいて同定された遺伝子のいくつかの例示的な核酸配列を、図9および図10に示す。本発明は、図9および図10に記載した特定の核酸配列に制限されない。当業者は、記載した配列のさらなる変種、相同体、および変異体も、本発明の実施において用途が見出されることを認識されよう。
3. NAPプールとCPプールの比較
NAPプールとCPプールの直接的比較も行い、遺伝子発現の顕著な相違が容易に明らかとなった。図5は、NAPプールとCPプールの比較を示す。転写産物レベルにおいて示される変化について、図1と同様の規則を用いた。各クラス、すなわち50%フィルターをかけた正常組織対NAPプールおよび正常組織対CPプールの任意の2つの試料において、少なくとも2.5倍の変化を有する遺伝子を選択することにより、クラスターを得た。解析した遺伝子のうち、この基準により59個の遺伝子が選択された。CPプールと比較してNAPプールにおいて上方制御されることが見出された遺伝子には、例えば結合組織増殖因子、EGR-1(初期増殖応答-1)、マトリリシン(MMP7)、CFLAR/I-FLICE(カスパーゼ8およびFADD様アポトーシス制御因子)、ルミカン、血清糖質コルチコイド制御キナーゼ、水晶体上皮由来増殖因子、PAI1(プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1型)、JUN、およびFOS Bが含まれる。血管内皮増殖因子(VEGF)、増殖停止特異的(GAS1)、コレシストキニン(CCK)、アミロライド結合タンパク質(ABP1)は、市販のプールと比較した場合に、正常隣接前立腺プールにおいて下方制御される遺伝子である。本発明は、特定の機構に限定されない。実際に、機序の理解は本発明の実施に必要ではない。それにもかかわらず、PCAに隣接した正常前立腺(NAP)と前立腺病態のない個人由来の正常前立腺組織(CP)との遺伝子発現の相違は、PCA自体に誘導される「周囲効果」に起因し得ると考えられる。
実施例3
ノーザンブロット解析
全RNA 30μgを変性ホルムアルデヒドアガロースゲルにより分離し、キャピラリー転写の設定によりHybond膜(Amersham)に転写した。ChurchおよびGilbert、1984によって記載される方法により、ハイブリダイゼーションを行った。シグナルは、ホスホイメージャー(phosphorimager)により可視化して定量化した。相対的倍率を評価するため、ヘプシンとGAPDHプローブから得られたシグナルの比率を計算した。
マイクロアレイ解析により同定され選択された遺伝子を、ノーザン解析により実証した。例えば、hevin、4 1/2 LIMドメインタンパク質、およびゲルソリンは、マイクロアレイによりそれぞれ3.2倍、3.2倍、および1.9倍下方制御されることが示され、ノーザン解析によりそれぞれ8.8倍、4.5倍、および3.5倍下方制御されることが示された。同様に、ヘプシンは、マイクロアレイにより4.3倍上方制御されることが示され、ノーザン解析により11.3倍上方制御されることが示された(図3a)。ヘプシンは、転写産物の発現が限局性PCAおよび転移性PCAにはっきりと限定されている細胞表面セリンプロテアーゼであるため、その発現についてタンパク質レベルでさらに詳細に試験した(以下の実施例4を参照のこと)。
実施例4
組織解析
本実施例は、正常および癌性前立腺組織におけるタンパク質発現の解析について記載する。
A. 組織マイクロアレイの作製
Kononenらは、単一のスライドグラス上で多数の腫瘍組織を評価する方法について記載した(Kononenら、Nat. Med., 4:844 [1998])。この高密度組織マイクロアレイにより、単一のスライドグラス上で最大で1,000個までの組織試料の解析が可能になる。このスライドグラスは、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で調製したスライドグラスならびに免疫組織化学染色したスライドグラスを、日常的な光学顕微鏡観察をすることにより評価することができる。したがって、遺伝子発現方法論により同定された候補の癌バイオマーカーを、臨床的に層別化した多数の腫瘍試料について、タンパク質レベルで評価することができる。
マイクロアレイ解析に用いた前立腺組織には、4つのBPH、8つのNAP、1つの(19人の個人由来の)正常前立腺組織の市販プール、1つの前立腺炎、11の限局性PCA、および7つの転移性PCA試料を含んだ。高密度組織マイクロアレイ(TMA)は、以前に記載されたように(Kononenら、Nat. Med., 4:844 [1998];Perroneら、J. Natl. Cancer Inst., 92:937 [2000])、手動の組織パンチャー/アレイ(Beecher Instruments、メリーランド州シルバースプリング)を用いて構築した。この装置は、内径約600μmの薄壁ステンレス製針、および針の内容物を移行させ空にするために用いるスタイレットからなる。この組立品は、デジタル・マイクロメータにより手動で調整するX-Y位置ガイドに支持されている。ドナー組織の選択した領域から小さな生検試料を回収し、新しいパラフィンブロックに正確に配置する。組織コアは直径0.6 mmであり、長さはドナーブロックの組織の深度に依存し1.0 mmから3.0 mmまで変動した。正常、HGPIN、およびPCAの複数の重複したコア試料を各症例の各組織ブロックから採取した。コアを45 x 20 x 12 mmのレシピエントブロックに挿入し、間隔は0.8 mmあけた。前立腺腫瘍の類別は、グリーソン(Gleason, Cancer Chemother Rep., 50:125 [1966])によって記載されるシステムを用いて行った。根治的前立腺切除の病理学的病期は、TNM病期分類システム(Schroderら、Prostate Suppl., 4:129 [1992])を用いて決定した。外科的縁は別々に評価し、腫瘍の病期分類には含めない。
B. 免疫組織化学法
免疫組織化学法のため、TMA切片を5ミクロンの厚さの間隔で切り出した。最初の切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、組織像を確認した。ホルマリン固定したパラフィン包埋組織から調製したTMAスライドグラスを、60℃で0.5〜1時間加熱した。全スライドグラスを10ミリモル濃度のクエン酸緩衝液(pH 6.0)中に置き、電子レンジで5分間加熱した。標準のビオチン-アビジン複合体免疫組織化学法を行った。この試験には、アフィニティー精製した、hヘプシンに対するポリクローナルウサギ抗体を、1:40希釈(元の濃度は0.2 mg/ml)で用いた。免疫染色強度は、熱心な尿生殖器病理学者によって、無、弱、中、または強としてスコアリングされた。スコアリングは、全体のグリーソンスコア(例えば腫瘍類別)、腫瘍の大きさ、または臨床転帰の情報なしでのブラインド様式の遠隔病理診断システムを用いて行われた(Perroneら、前記)。良性(n=205)、高度PIN(n=38)、限局性前立腺癌(n=335)、およびホルモン抵抗性前立腺癌(n=160)による全部で738個の組織試料を試験した。
同様に、135人の患者由来の合計810個のPCA試料による2つのTMAブロックを用いて、pim-1を解析した。各症例から6個のPCA試料を評価し、スコア中央値を計算した。さらに、良性前立腺組織(例えば、良性上皮および萎縮症)およびHG-PINの少数の試料も試験した。pim-1のN末端に対するウサギポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology)を1:100希釈で用いて、上記のように免疫組織化学法を行った。pim-1により細胞質染色が実証され、染色は無、弱、中、または強として類別した。試料はすべて、すべての関連病態および臨床データについてブラインドで試験した。
C. 統計学的方法
ノンパラメトリックなANOVA検定(マン・ホイットニー [2分類])を利用して、様々なパラメータ(組織型、グリーソンスコア、および腫瘍の大きさ)に基づき、前立腺試料がヘプシンおよびpim-1を異なるレベルで発現するか否かを評価した。カプラン・マイヤー解析を用いて、PSAなしの進行(「生存」)の累積率を測定した。ログランク検定を利用し、疾患なしの進行のヘプシン免疫染色における相違を評価した。多変量解析には、Cox比例ハザード回帰を用いた。この研究には、SPSS(イリノイ州シカゴ)による市販のソフトウェアを用いた。
D. 結果
1. ヘプシン
この研究で用いたマイクロアレイを図3bに示す。アフィニティー精製したヘプシンペプチド抗体(Tsujiら、J. Biol. Chem., 266:16948 [1991])を用いて、組織マイクロアレイ上で、700を超える良性および癌性前立腺組織を免疫組織化学的にプロファイルした(図3c〜e)。図3は、前立腺癌における、膜貫通セリンプロテアーゼであるヘプシンの過剰発現を示す。図3aは、ヒトヘプシン(上)およびGAPDHによる標準化(下)のノーザンブロット解析を示す。NATは正常隣接前立腺組織を表し、PCAは前立腺癌を表す。図3bは、ヘプシン解析に用いた組織マイクロアレイを示す。組織像を確認するため、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色を行った。
免疫組織化学染色により、良性前立腺では染色されないかまたは弱く染色されること(c1)、限局性前立腺癌では強く染色されること(c2〜c6)、および高度前立腺腫瘍でも強く染色されることが示された(全像とも拡大率100Xを使用、試料の大きさは直径0.6 mm)。良性前立腺は、分泌細胞、管腔細胞染色において弱く発現され、基底細胞染色において強く発現されることが示される。前立腺癌および良性前立腺が観察される領域内では、有意なヘプシン染色の相違が認められる。浸潤前立腺癌(d3〜d4)では、ヘプシンタンパク質の強い発現が示される。全像の拡大率は400Xである。図3cは、組織型によるヘプシンタンパク質発現のヒストグラムを示す。良性前立腺肥大症(BPH)。高度上皮内腫瘍(HG-PIN)。限局性前立腺癌(PCA)。ホルモン抵抗性前立腺癌(MET)。ヘプシン染色の相対的強度を質的に評価し、分類した。分類当たりのヘプシン染色の割合をy軸に示す。図3dはカプラン・マイヤー解析を示す。ヘプシンタンパク質発現のレベルにより、PSAなしの生存を2つの分類、無/低発現(丸)対中/強発現(四角)に層別化した。
内部標準から、以前に記載されているように、肝臓組織はヘプシンについて強く染色されることが示された。全体的に見て、ヘプシンは主に膜染色を示し、良性前立腺よりも腫瘍前立腺において優先的に発現された(マン・ホイットニー検定、p<0.0001)。重要なことには、PCA、HG-PINの前兆病変においてヘプシンが最も強く発現され、染色されないものはほとんどなかった(マン・ホイットニー、p<0.0001)。ヘプシン染色が低いまたはヘプシン染色されないほとんどの事例は、良性前立腺試料に見られた。また、ホルモン抵抗性転移性癌では、染色強度は限局性前立腺腫瘍と良性前立腺の中間であった。
根治的前立腺切除術の後にPSAレベルの上昇を起こす男性は、遠隔転移を発症する危険性が高く、前立腺癌が原因で死亡する(Poundら、JAMA, 281:1591 [1999])。したがって、潜在的なPCAバイオマーカーとしてのヘプシンの有用性を評価するために、PSA failureを、根治的前立腺切除術後のPSAレベルの0.2 ng/mlを上回る上昇として定義した。334個の限局性前立腺癌試料について、それぞれを独立した試料として扱い解析を行った。中程度から強度のヘプシン発現を有する腫瘍においては17%(28/141試料)のPSA failure率であるのに対して、ヘプシン免疫染色されないおよび染色が低い場合には28%(46/119試料)のPSA failure率であり、根治的前立腺切除術後のPSA上昇と有意に関連性があった(図3d、ログランク検定、P=0.03)。これらの結果が、PCAについての確立した組織学的類別システムであるグリーソンスコア(Gleason, Hum. Pathol., 23:273 [1992])と無関係であるのか否かを調べるため、多変量解析を行った。Cox比例ハザードモデルを適応させた結果に基づくと、PCAにおいてヘプシンタンパク質の発現が弱いまたは無いことは、高いグリーソンスコアと同様に、前立腺切除術後のPSA上昇の危険性の増加と関連性がある(対応するリスク比は、それぞれ2.9(p=0.0004)および1.65(p=0.037)であった)。ヘプシン発現が弱いまたは無いことはまた、大きな前立腺癌との関連性もあった;中程度から強度の発現を有する前立腺腫瘍の大きさの中央値は1.3 cmであるのに対して、染色されないまたは弱く染色される腫瘍の場合は1.5 cmであった(マン・ホイットニーランク検定、P=0.043)。総合すると、PCAにおけるヘプシンタンパク質の発現は、患者の予後の程度と逆の相関関係があった。
ヘプシンは、肝臓において最も高く発現される51 kDaの膜貫通タンパク質であり、PSAと同様にセリンプロテアーゼである(Kurachiら、Methods Enzymol., 244:100 [1994])。ヘプシンのプロテアーゼドメインは細胞外間隙と連絡があり、潜在的に他のプロテアーゼを活性化し得、または細胞外基質の成分を分解し得る。ヘプシンの機能はほとんど不明である。細胞増殖の制御(Torres-Rosadoら、PNAS, 90:7181 [1993])、細胞形態の制御、およびトロンビン形成をもたらす細胞表面上の外因性の凝固経路の活性化(Kazamaら、J. Biol. Chem., 270:66 [1995] )における役割を有することが提唱されている。さらに、ヘプシンmRNAレベルは、卵巣癌において上昇することが示された(Tanimotoら、Cancer Res., 57:2884 [1997])。本発明は、特定の機構に限定されない。実際に、機序の理解は本発明の実施に必要ではない。それにもかかわらず、良性前立腺ではなくHG-PINにおけるヘプシンの高発現により、ヘプシンがPINの構築またはHG-PINから癌腫への移行において役割を果たすことが示唆されると考えられる。大きな限局性癌およびホルモン抵抗性癌において見られる、その後のヘプシン発現の減少から、PCAの後の段階においてこのプロテアーゼの必要性が減少することが示唆される。または、進行性PCAを有する患者は、ヘプシンが重要な役割を果たす可能性のある汎発性血管内凝固(DIC)(Riddellら、J. Nucl. Med., 37:401 [1996] )を頻繁に発症する。
2. pim-1
前立腺の腫瘍形成増殖は、正常な恒常性制御機構の回避によって生じ、その場合細胞増殖が細胞死を上回る(BruckheimerおよびKyprianou、Cell Tissue Res., 301:153 [2000])。多くのPCAにおいて発癌遺伝子mycが過剰発現されることは周知であるが(Buttyanら、prostate 11:327-37 [1987];Abate-ShenおよびShen、前記)、本発明は、原癌遺伝子pim-1キナーゼが同様に上方制御されることを示す(細胞増殖/細胞死クラスター、図2)。pim-1とmyc間の相互作用によって、細胞周期の進行が促進されかつアポトーシスが抑制されることにより、リンパ球の形質転換が誘導され得ることが、これまでの研究から示唆される(Shiroganeら、Immunity 11:709 [1999])。本解析は、PCAにおいて相乗的な腫瘍形成効果を媒介する可能性がある、pim-1およびmycの同様の同時転写制御(または遺伝子増幅)を支持する。
PCAにおけるpim-1キナーゼタンパク質の発現についても、高密度TMAを用いて調査した。図4は、前立腺癌におけるpim-1の過剰発現を示す。免疫組織化学染色により、良性前立腺では染色されないかまたは弱く染色されること、および限局性前立腺癌においては細胞質が強く染色されることが示された。良性前立腺では、分泌細胞、管腔細胞染色において、発現されないかまたは弱く発現されることが示された。浸潤前立腺癌では、pim-1タンパク質が強く発現されることが示された。像の拡大率はすべて1000Xである。図4aは、810個の組織マイクロアレイ成分から評価した、組織型によるpim-1タンパク質発現のヒストグラムを示す。高度上皮内腫瘍(HG-PIN)。限局性前立腺癌(PCA)。pim-1染色の相対的強度を、枠内の判例に表す。分類当たりのpim-1染色の割合をy軸に示す。図4bは、pim-1発現が無いないしは弱いPCAを有する患者(下の線)が、前立腺切除術後にPSA failureを起こす危険性がより高いことを表すカプラン・マイヤー解析を示す(ログランク、p=0.04)。pim-1タンパク質発現のレベルにより、PSAなしの生存を2つの分類、無/低発現(下の線)対中/強発現(上の線)に層別化した。
pim-1タンパク質は、PCAにおいて顕著に過剰発現されることが見出された(図4)。良性前立腺上皮試料の大部分(97%)、前立腺萎縮症試料(73%)、および高度PIN試料(82%)においては、pim-1タンパク質発現が無いないしは弱いことが観察された(図4a)。これに対して、PCA試料の約半分において(51%)、中程度から強度のpim-1発現が見られた(図4a)。PSAなしの生存についてのカプラン・マイヤー解析により、前立腺外の積極的な拡大、精嚢浸潤、7を上回るグリーソンスコア、およびpim-1発現の減少が、PSA failureのより高い累積率と関連していることが示された(図4b)。一変量のCoxモデルから、pim-1発現はPSA再発の強い予測因子であることが見出された(ハザード比(HR)=2.1(95% CI 1.2〜3.8、p=0.01))。
試験した変量のうち、PSA再発の有意な予測因子は、グリーソンスコア(HR=1.8(95% CI 1.1〜3.0)、p=0.03)、グリーソンパターン4/5 PCA(HR=3.9(95% CI 1.8〜8.3)、p<0.001)、前立腺外拡大状態(HR=2.6(95% CI 1.6〜4.2)、p<0.0001)、外科的縁状態(HR=2.6(95% CI 1.2〜5.6)、p=0.01)、精嚢の状態(HR=3.5(95% CI 2.0〜6.2)、p<0.0001)、術前PSAレベルの自然対数(HR=2.5(95% CI 1.6〜3.8)、p<0.001)、HR=2.4、p<0.001)、および腫瘍の大きさの最大値(HR=2.7(95% CI 1.6〜4.7)、p<0.0001))であった。多変量Coxモデルから、グリーソンパターン4/5 PCA(HR=3.8(95% CI 1.4〜10.0)、p<0.01)、Ln(PSA)(HR=2.1(95% CI 1.1〜3.9)、p=0.02)の存在、およびpim-1タンパク質発現の減少(HR=4.5(95% CI 1.6〜15.2)、p=0.01)のどちらも、PSA再発の有意な予言因子であることが見出された。したがって、ヘプシンよりもなおさら、PCAにおけるpim-1キナーゼの発現の減少は、患者の予後不良の程度と有意に関連がある。
pim-1キナーゼは、サイトカイン受容体によって制御される原癌遺伝子である(Matikainenら、Blood 93:1980 [1999])。これは、最初はマウスのレトロウイルス誘発T細胞リンパ腫におけるプロウイルス組み込みの好発部位と記載され(Cuypersら、Cell 37:141 [1984])、以前は造血性の悪性腫瘍に独占的に関与すると考えられた(Breuerら、Nature 340:61 [1989])。pim-1およびmycの同時転写制御が、本明細書に記載した実験において認められた(図2、細胞増殖/細胞死クラスター)。トランスジェニックマウスの腹側前立腺におけるmycの慢性的過剰発現により、低度のPINに類似した上皮異常が誘導されたが、このモデルにおいて腺癌への進行は認められなかった(Zhangら、Prostate 43:278 [2000])。本発明は、いずれか一つの機構に限定されない。実際に、機序の理解は本発明の実施に必要ではない。それにもかかわらず、pim-1の過剰発現が、mycが誘発する前立腺発癌を増強し得ると考えられる。
図8は、DNAマイクロアレイ解析により同定された、PCAにおいて異なって発現される代表的な遺伝子の図式的概要を提供する。遺伝子を機能的に分類したが、矢印は、正常前立腺上皮と比較しての、転移性ホルモン抵抗性PCA(MET)および/または限局性PCA(PCA)における上方または下方制御を表す。遺伝子発現レベルについては、図2を参照されたい。
実施例5
AMACR発現解析
本実施例は、AMACRが前立腺癌において一貫して過剰発現されることを同定するための、上記の実施例1〜4に記載した遺伝子発現データの解析について記載する。
A. 組織試料
最も幅広い範囲の前立腺癌試料を調べるため、ミシガン大学の根治的前立腺切除術系および迅速剖検プログラム(Rapid Autopsy Program)から、臨床試料を得た。どちらのプログラムも、ミシガン大学前立腺癌専門研究プログラム(Specialized Program of Research Excellence)(S.P.O.R.E.)組織コア(Tissue Core)の一部である。
組織マイクロアレイ(TMA)効果アレイのための前立腺切除の症例は、臨床的限局性前立腺癌のために、1994年から1998年の間に、ミシガン大学で単独療法として(すなわち、ホルモン療法も放射線療法も行わない)恥骨後根治的前立腺切除術を受けた集団の632人の患者から選択した。全患者の臨床データおよび病理データは、ミシガン大学治験審査委員会の承認を得て入手した。詳細な臨床データ、病理データ、およびTMAデータは、安全リレーショナル・データベースに保存されている(Manleyら、Am. J. Pathol., 159:837 [2001])。
前立腺試料の処理は、外科的切除後約15〜20分以内に開始した。前立腺は部分的に試料採取し、組織の約50%を研究に用いた。この手順は、公式な研究において評価され、部分的な試料採取によって正確な病期分類および外科的縁の評価が損なわれないことが保証されている(Hollenbeckら、J. Urol., 164:1583 [2000])。簡潔に説明すると、前立腺の切片を一つおきに組織学的検査に供した。残りの切片は凍結し、SPORE組織コアに保管した。これらの試料は、IRB承認のインフォームドコンセントに署名した患者からのみ収集された。試料はOCT包埋剤中-80℃で直ちに凍結し、病理学報告書が完成されるまで、保管区域に保管した。適切な診断および病期決定がなされるまで、研究者はこれらの凍結試料を利用できなかった。cDNA発現アレイ解析およびRT-PCRに用いた試料は、すべて研究病理学者によって評価された。試料はすべて、試料の95%を上回る部分が所望の病変を表すように、おおまかに切り取った(例えば、前立腺癌、BPH、または良性前立腺)。分子解析に用いた試料に準じて、前立腺癌を有する試料にはまた、グリーソンスコアを割り当てた。
転移性前立腺腫瘍の貴重な材料源であるホルモン抵抗性前立腺癌を研究するため、迅速剖検プロトコル(Rapid Autopsy Protocol)を利用した。ワシントン大学(ワシントン州シアトル)およびジョーンズ・ホプキンス大学(メリーランド州ボルティモア)で開発された手順を手本にして、このプログラムにより、進行性前立腺癌を有する男性が、死後直後の剖検に同意することができる。これまでに、死後から剖検まで2時間の平均時間で、23件の完全な剖検が行われた。この手順は、すでに詳細に記載されている(Rubinら、Clin. Cancer. Res., 6:1038 [2000])。簡潔に説明すると、ホルモン抵抗性前立腺癌と診断された患者に、死後組織ドナープログラムに参加するように依頼する。組織提供の目的および手順を、患者に説明する。このIRB承認の腫瘍ドナープログラムに参加する同意が得られたら、患者または近親者による承諾により、生前に剖検の許可が得られる。ホルモン抵抗性原発性前立腺癌試料およびホルモン抵抗性転移性前立腺癌試料は、液体窒素を用いて収集した。同じ病変からの鏡像試料を、10%緩衝ホルマリン中に置いた。固定した試料をパラフィン中に包埋し、TMAの作製に用いた。前立腺切除試料と同様に、研究病理学者がスライドグラスを調査し、壊死した部分を避けて生存前立腺癌部分を円で囲み、TMA作製のための鋳型としてこのスライドグラスを用いた。
B. 病理および評価
外科的縁を評価する前に、前立腺に印付けをした。尖部および基部の外科的縁を、前立腺尿道軸に垂直に切除した。精嚢を前立腺への入り口に対して垂直に切除し、精嚢縁として供した。この研究のための前立腺はすべて部分的に包埋し、尖部、中間部、および基部の全面的な切片を一つおきに得た。詳細な前立腺切除病理報告には、腫瘍による外科的縁併発の有無(外科的縁状態)、前立腺外拡大の存在、および精嚢浸潤を含んだ。腫瘍は、前立腺外拡大および精嚢浸潤は含むが外科的縁状態を考慮しないTNMシステムにより、病期分類した(Bostwickら、Simin. Urol. Oncol., 17:222 [1999])。腫瘍は、グリーソン類別システムにより類別した(Gleason, Cancer Chemother. Rep., 50:125 [1966];Gleason, The Veterans Administration Cooperative Urological Research Group. Histologic Grading and Clinical Staging of Prostate Carcinoma. In: Tannenbaum M, editor. Urologic Pathology: The Prostate. Philadelphia: Lea & Febiger; 1977. p.171-98)。
TMA作製の準備として、全スライドグラスを再度調べ、良性前立腺、前立腺萎縮症、高度前立腺上皮内腫瘍、および前立腺癌の部位を同定した。これらの指定した組織のアレイへの移行を最適化するため、スライドグラス鋳型上で、各病変周囲にできるだけ密接して腫瘍関与部分を円で囲んだ。良性前立腺に隣接した浸潤腫瘍を有する部分は除いた。
C. RT-PCR
変性ホルムアルデヒドアガロースゲル電気泳動により、全RNAの完全性を判断した。cDNAは、前立腺組織試料から単離した全RNA 1μgから調製した。特定の遺伝子産物を増幅するために用いたプライマーは:
AMACRセンス、
Figure 0004251357
AMACRアンチセンス、
Figure 0004251357
GAPDHセンス、
Figure 0004251357
およびGAPDHアンチセンス、
Figure 0004251357
である。AMACRおよびGAPDHのPCR条件は、まず94℃で5分間、そして95℃で1分間、60℃で1分間(アニーリング)、および72℃で1分間の28サイクル、ならびに72℃で7分間の最終的な伸長段階を含む。PCR反応は、Taq DNAポリメラーゼ(Gibco BRL)1単位を含む50μl容量を用いた。増幅産物(5μl)を2%アガロースゲル電気泳動により分離し、紫外線により可視化した。
D. イムノブロット解析
代表的な前立腺組織試料を、ウェスタンブロット解析に用いた。組織は、50 mmol/Lトリス-HCl、pH 7.4、1% ノニデットP-40(Sigma、ミズーリ州セントルイス)、および完全プロテイナーゼ阻害剤混合物(Roche、米国インディアナ州)を含むNP-40溶解緩衝液中でホモジナイズした。タンパク質抽出物15μgをSDS試料緩衝液と混合し、還元条件下において、10% SDS-ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。分離されたタンパク質を、ニトロセルロース膜(Amersham Pharmacia Biotech、ニュージャージー州ピスカタウェイ)に転写した。この膜を、ブロッキング緩衝液(0.1% Tweenを添加したトリス緩衝食塩水(TBS-T)および5%ノンファットドライミルク)中で1時間インキュベートした。AMACR抗体(アムステルダム大学、R Wanders博士より分与)をブロッキング緩衝液で1:10,000に希釈して添加し、4℃で一晩インキュベートした。TBS-T緩衝液で3回洗浄した後、膜を、1:5000希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ロバ抗ウサギIgG抗体(Amersham Pharmacia Biotech、ニュージャージー州ピスカタウェイ)と共に、室温で1時間インキュベートした。ECL検出システム(Amersham Pharmacia Biotech、ニュージャージー州ピスカタウェイ)およびオートラジオグラフィーにより、シグナルを可視化した。
β-チューブリンのウェスタンブロットでは、AMACR抗体で探索した膜をウェスタンリプローブ緩衝液(Geno-tech、ミズーリ州セントルイス)を用いて剥がし、5%ノンファットドライミルクを添加した0.1% Tween添加トリス緩衝食塩水(TBS-T)中でブロッキングし、1:500希釈したウサギ抗β-チューブリン抗体(Santa Cruz Biotechnologies、カリフォルニア州サンタクルーズ)と共に2時間インキュベートした。ウェスタンブロットは、上記のように処理した。
E. 免疫組織化学法
標準的な間接的免疫組織化学法(IHC)を行い、ポリクローナル抗AMACR抗体を用いてAMACRタンパク質発現を評価した。タンパク質発現を、陰性(スコア= 1)、弱(2)、中(3)、および強(4)としてスコアリングした。AMACRタンパク質発現が前立腺癌増殖と関連しているか否かを評価するため、Ki-67のモノクローナルマウスIgG Mib-1抗体(1:150希釈、Coulter-Immunotech、フロリダ州マイアミ)を用いて、一部の試料を評価した。抗原検索のための電子レンジ加熱前処理(トリスEDTA緩衝液中で100℃で30分間)を行い、色素原として3,3’ジアミノベンジジン四塩酸塩を用いた。高いKi-67陽性が周知であるリンパ節組織を、対照として用いた。
F. 組織マイクロアレイの作製、デジタル画像の取得、および解析
本研究には、5枚のTMAを用いた。そのうち3枚は前立腺切除系による組織を含み、2枚は迅速剖検プログラムによるホルモン抵抗性前立腺癌を含んだ。TMAは、以前に記載されたように(Kononenら、Nat. Med., 4:844 [1998];Perroneら、J. Natl. Cancer Inst., 92:937 [2000])、手動の組織アレイヤー(Beecher Instruments、メリーランド州シルバースプリング)を用いて構築した。円で囲んだ部位(上記)の組織コアを、レシピエントアレイブロックに移行させるための標的にした。選択した組織型のそれぞれから、5個の重複組織コアを試料採取した。直径0.6 mmのTMAコアは、コアの中心から中心まで0.8 mmの間隔をそれぞれあけた。作製後、4μmの切片を切り出し、最初のスライドグラスにH&E染色を行い組織像を確認した。
BLISS画像処理システム(Bacus Labs、イリノイ州ロンバード)を用いて、TMA H&E画像を取り込んだ。AMACRタンパク質発現は、ブラインド様式で評価した。すべての像を、AMACRタンパク質発現強度についてスコアリングした。さらに、全TMA試料を診断(すなわち、良性、萎縮症、高度前立腺上皮内腫瘍、および前立腺癌)に割り当てた。標的にした組織が実際に移行した組織ではない可能性もあるので、このことが推奨される。したがって、各段階で検証を行った。CAS200細胞解析システム(Bacus Labs)を用いて、TMAスライドグラスを増殖指標について評価した。選択した部位を、40X対物レンズの下で評価した。測定値を、陽性染色された全核領域の割合として記録した。強度にかかわらず、陽性染色された核すべてを測定した。間質細胞および基底細胞の存在を最小限に抑えるように解析部位を選択し、腫瘍上皮のみを評価した。以前に記載されたように(Perroneら、J. Natl. Cancer Inst. 92:937 [2000])、Ki-67発現について試料を評価した。各測定値は、約50〜100個の上皮核に基づく。TMA試料の大きさが決まっているため、重複しない5回の繰り返し測定が達成可能な上限であった。
G. 前立腺針生検の解析
診断に用いる18ゲージ針生検試料におけるAMACR発現の有用性を評価するため、前立腺癌またはさらなる精密検査を必要とする異型性を有する100個の連続した生検試料を、AMACR発現について試験した。すべての症例について、2つの基底細胞特異的マーカー(34βE12およびp63)およびAMACRを用いて免疫染色した。癌の感度および特異性について、症例を評価した。これらの症例のうち26の症例は病理学者と相談して観察したが、診断上困難であり、専門家の検査およびさらなる特徴づけが必要であると考えられた。
H. 結果
図11は、前立腺癌においてAMACRの発見および特徴づけをもたらす、DNAおよび組織マイクロアレイパラダイムの概略図を示す。A) Abate-ShenおよびShenにより改作された前立腺癌進行(Genes Dev., 14:2410 [2000])。DNAマイクロアレイまたは「チップ」技術を用いて研究され得る特徴的な分子変化が、前立腺癌進行の各段階で起こる。B) 腫瘍(前立腺癌)試料および参照(良性前立腺組織)試料から作製したcDNAを識別可能な蛍光色素で標識し、一度の実験で何千もの遺伝子をモニターすることができるDNAマイクロアレイを用いて検索する。C) ハイブリダイゼーション後、スキャナーを用いてDNAマイクロアレイを解析し、各遺伝子について蛍光比率を測定する(この場合、前立腺癌/良性組織)。D) コンピューターのデータベースに比率を入力した後、様々な統計アルゴリズムを用いて解析する。データを調査する1つの例示的な方法では(Eisenら、PNAS 95:14863 [1998])、色強度を遺伝子発現比率に割り当てる。この場合、赤の色合いは前立腺癌において上方制御された遺伝子を表し(例えば、4.0の比率)、緑の色合いは下方制御された遺伝子を表す(例えば、0.1の比率)。腫瘍組織と良性組織との間で変化のない遺伝子は黒色で表し、欠落した成分は灰色で表す。E) DNAマイクロアレイにより同定された遺伝子を、次に転写物レベル(例えば、ノーザンブロットまたはRT-PCR)またはタンパク質レベル(例えばイムノブロット)で確認することができる。F) 前立腺癌組織マイクロアレイの作製により、(何百もの遺伝子ではなくて)何百人もの患者の研究が容易になる。G) 各組織マイクロアレイスライドグラスは、臨床および病理データベースに結び付けられた(図示せず)、臨床的に層別化された何百もの前立腺癌試料を含む。H) 次に、種々の分子的方法または生化学的方法を用いて(この場合は免疫組織化学法)、組織マイクロアレイスライドグラスを解析することができる。I) DNAマイクロアレイデータにも組織マイクロアレイデータにも、臨床応用がある。例としては、1. 患者の予後を予測するために遺伝子発現プロファイルを用いること、2. 臨床マーカーの同定、3. 新規治療標的の開発が含まれるが、これらに限定されない。
図12は、57の前立腺癌試料に対するDNAマイクロアレイ解析によって測定された、AMACR転写物レベルを要約したものである。組織型に基づいて試料(Dhanasekaranら、Nature 412:822 [2001])を分類し、平均した。実験試料をCy5チャネルで標識し、参照試料(良性前立腺組織のプール)をCy3チャネルで標識した。ボックスプロットは、各群内のAMACR発現の範囲を示す。組織は、以下の種類:良性(正常隣接前立腺組織)、良性前立腺肥大症(BPH)、臨床的限局性前立腺癌、および転移性前立腺癌に分類した。良性前立腺組織に対して、限局性前立腺癌および転移性前立腺癌は、それぞれ3.1倍(マン・ホイットニー検定、p<0.0001)および1.67倍(マン・ホイットニー検定、p<0.004)上方制御されていた(Cy5/Cy3比率として表される)。
AMACR mRNAレベルのDNAマイクロアレイの結果を、独立した実験方法論を用いて確認した。AMACR特異的プライマーを作製し、28個の前立腺組織試料および6個の前立腺細胞株由来の様々なRNA試料でRT-PCRを行った(図13A)。GAPDHは添加対照である。プールは、市販の材料源から得られた正常前立腺組織由来のRNAを表す。NAPは、前立腺癌を有する患者由来の正常隣接前立腺組織を表す。3+3、3+4、4+4は、試験した臨床的限局性前立腺癌(PCA)の大小のグリーソンパターンを表す。METは、転移性前立腺癌を表す。種々の前立腺細胞株も、同様に試験した。酵素なしのRT-PCRを、陰性対照とした。RT-PCR産物は、20個の限局性前立腺癌試料において明らかに認められるが、試験した良性試料には認められなかった。転移性前立腺癌および前立腺細胞株は、限局性前立腺癌と比較して、様々なレベルのAMACR転写産物を示した。
AMACRタンパク質レベルを測定するため、選択した前立腺組織抽出物に対してイムノブロット解析を行った。(図13B)。β-チューブリンは、試料添加の対照である。AMACR転写産物と同様に、良性前立腺組織と比較して、悪性前立腺組織においてAMACRタンパク質の過剰発現が認められた。
AMACRのタンパク質発現をインサイチューにおいて確認するため、cDNA発現アレイ解析に用いた試料とは別の集団の前立腺試料を用いた。これらの前立腺試料はミシガン大学前立腺SPORE組織コアから取得し、これらの試料から高密度組織マイクロアレイを作製した(図11F〜Hに模式的に図解する)。臨床的限局性前立腺癌試料において、中程度から強度のAMACRタンパク質発現が、主に細胞質に局在して認められた。悪性上皮では、隣接良性上皮と比較して、AMACRのレベルに大きな対比が見られた。おそらく前癌状態の病変であると考えられる前立腺上皮内腫瘍(PIN)およびいくつかの萎縮性病変は(Putziら、Urology 56:828 [2000];Shahら、Am. J. Pathol., 158:1767 [2001])、AMACRの細胞質染色を示した。高度前立腺癌も同様に、強い細胞質染色を示した。しかしながら、AMACR染色強度とグリーソン(腫瘍)スコアとの関連性は同定されなかった。転移性前立腺癌試料の多くは、弱いAMACR発現を示すのみであった。転移性試料は均一なPSA免疫染色を示し、これらの剖検試料の免疫原性が確認された。
何百もの前立腺試料のAMACRタンパク質発現を評価するため、組織マイクロアレイのデータを定量化した。良性前立腺、萎縮性前立腺、PIN、限局性前立腺癌、および転移性前立腺癌は、それぞれ1.0 (SE 0)、2.0 (SE 0.1)、2.5 (SE 0.1)、3.0 (SE 0)、および2.5 (SE 0.1)の平均AMACRタンパク質染色強度を示した(ANOVA p値<0.0001)。このデータを、各組織分類について95%の信頼区間を表すエラーバーを用いて、図式的に要約する(図14)。
次に、Ki-67を用いて(Perroneら、前記)、AMACRレベルと腫瘍増殖との関係を調査した。0.13の相関係数(p値=0.22)を有するAMACR発現とKi-67発現との間には、有意な関連性は存在しなかった。さらに、AMACRタンパク質発現と、根治的前立腺切除、グリーソンスコア、腫瘍の病期、腫瘍の大きさ(cm)、または外科的縁状態等の病理パラメータとの間にも、有意な関連性は同定されなかった。次に、120例の前立腺切除の症例において3年の平均経過観察時間で、AMACRタンパク質レベルを術後のPSA再発との関連性について評価した。統計学的に有意な関連性は同定されなかった。AMACRは、臨床的限局性前立腺癌において、腫瘍への高い感度および同様に高い特異性を有して、中程度から強度の均一な発現を示した。さらに、卵巣、肝臓、リンパ節、脾臓、精巣、胃、甲状腺、結腸、膵臓、大脳、および横紋筋を含む正常組織の予備調査により、正常肝臓においてのみ有意にAMACRタンパク質が発現されることが明らかになった。
正常分泌上皮細胞と悪性細胞との間のAMACRタンパク質レベルの大きな相違により、前立腺針生検試料におけるAMACR発現試験の臨床用途が提供される。診断上難しい症例において、病理学者は、良性前立腺の基底細胞層を染色する基底細胞マーカー34βE12(O'Malleyら、Virchows Arch A Patho. Anat. Histopathol., 417:191 [1990];Wojnoら、Am. J. Surg. Pathol., 19:251 [1995];Googeら、Am. J. Clin. Pathol., 107:219 [1997])またはp63(Parsonら、Urology 58:619 [2001];Signorettiら、Am. J. Pathol., 157:1769 [2000])を頻繁に使用する。悪性前立腺には、この第二の基底細胞層が存在しない。多くの疑わしい生検試料において、外科病理学者は、前立腺癌の最終的な診断をするために染色の非存在に頼らなくてはならない。94個の前立腺針生検試料における、AMACR免疫染色の臨床的有用性を評価した。結果を表2に示す。感度および特異性は、それぞれ97%および100%と算出された。これらの結果には、最終的な診断に基底細胞特異的免疫組織化学マーカー(すなわち、34βE12またはp63)の使用を必要とする、26例の症例も含まれている。
本実施例は、AMACRがPCAと関連性があること、および前立腺生検試料におけるAMACR発現が不確定な生検試料における癌の診断に有用であることを実証する。
(表2)前立腺針生検試料(n=94)におけるAMACRタンパク質評価の臨床的有用性
Figure 0004251357
実施例6
AMACRのホルモン制御
本実施例では、AMACR発現がホルモン非依存性であることを示す研究について記載する。
A. 試料の収集、cDNAアレイおよびTMAの作製、ならびに評価
臨床試料は、ミシガン大学の根治的前立腺切除術系および迅速剖検プログラム(Rapid Autopsy Program)から得た。どちらも、ミシガン大学前立腺癌専門研究プログラム(S.P.O.R.E.)の一部である。転移症例の原発PCAおよびリンパ節転移は、共同研究先のドイツ、ウルム大学から提供された。詳細な臨床解析および発現解析のデータならびにTMAデータは、両機関の治験審査委員会手順に従って、安全リレーショナル・データベースに取り込まれ保存されている。RNAレベルでの発現解析のための組織入手は、上記実施例に記載してある。TMAの作製のため、試料をパラフィンに包埋した。研究病理学者が全症例のスライドグラスを検査し、関心対象の部位を円で囲んだ。これらのスライドグラスを、本研究で用いる6枚のTMAを作製するための鋳型として使用した。TMAはすべて、手動の組織アレイヤー(Beecher Instruments、メリーランド州シルバースプリング)を用いて構築した。各ドナーブロックから、少なくとも3個の組織コアを試料採取した。最初のTMAスライドグラスを標準的なヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色することにより、組織コアの組織学的診断を確認した。ポリクローナル抗AMACR抗体(アムステルダム大学、Ronald Wanders)を用いて、標準的なビオチン-アビジン複合体免疫組織化学法(IHC)を行った。デジタル画像は、BLISS画像処理システム(Bacus Lab、イリノイ州ロンバード)を用いて取り込んだ。染色強度は、陰性(スコア= 1)、弱(2)、中(3)、および強(4)としてスコアリングした。根治的前立腺切除術前のホルモン除去手段による治療効果を調査するため、標準のスライドグラスを通常のH&E染色およびAMACR発現の検出のための連続切片に使用した。低分化結腸癌におけるAMACR発現を試験するため、明確な結腸腫瘍の集団による症例を用いた。分化型結腸癌に加えて、大細胞最小分化癌(large cell minimally differentiated carcinomas)と呼ばれる、最近になって記載された、特徴的な組織病理学的外観を有する低分化結腸癌の一部を用いた。これらの低分化結腸癌は、マイクロサテライト不安定性表現型を高頻度で有した。
B. 細胞培養およびイムノブロット解析
前立腺細胞株(RWPE-1、LNCaP、PC3、およびDU145)は、アメリカン・ティシュー・カルチャー・コレクションから入手した。細胞は、8%脱補体(decomplemented)ウシ胎仔血清、0.1%グルタミン、ならびに0.1%ペニシリンおよびストレプトマイシン(BioWhittaker、メリーランド州ウォーカーズビル)を添加したRPMI-1640中で維持した。細胞を75%コンフルエントになるまで増殖させた後、最終濃度20μMの抗アンドロゲン剤ビカルタミド(CASODEX、Zeneca Pharmaceuticals、ドイツPlankstadt)または最終濃度1 nMのメチルトリエノロン(合成アンドロゲン(R1881);NEN, Life Science Products、マサチューセッツ州ボストン)で、24および48処理した。細胞を回収し、50 mmol/Lトリス-HCl、pH 7.4、1%ノニデットP-40(Sigma、ミズーリ州セントルイス)、および完全プロテイナーゼ阻害剤混合物(Roche、米国インディアナ州)を含むNP-40溶解緩衝液中で溶解した。タンパク質抽出物15μgをSDS試料緩衝液と混合し、還元条件下において、10% SDS-ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。転写した後、膜(Amersham Pharmacia Biotech、ニュージャージー州ピスカタウェイ)をブロッキング緩衝液(0.1% Tweenおよび5%ノンファットドライミルクを添加したトリス緩衝食塩水)中で1時間インキュベートした。ブロッキング緩衝液で1:10,000に希釈したAMACR抗体を添加し、4℃で一晩インキュベートした。TBS-T緩衝液で3回洗浄した後、膜を、1:5000希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ロバ抗ウサギIgG抗体(Amersham Pharmacia Biotech、ニュージャージー州ピスカタウェイ)と共に、室温で1時間インキュベートした。ECL検出システム(Amersham Pharmacia Biotech、ニュージャージー州ピスカタウェイ)により、シグナルを可視化した。β-チューブリンのブロットでは、膜をウェスタンリプローブ緩衝液(Geno-tech、ミズーリ州セントルイス)を用いて剥がし、5%ノンファットドライミルクを添加した0.1% Tween添加トリス緩衝食塩水中でブロッキングし、1:500希釈したウサギ抗β-チューブリン抗体(Santa Cruz Biotechnologies、カリフォルニア州サンタクルーズ)と共に2時間インキュベートした。PSA発現については、上記した方法で膜をリプローブし、1:1000倍希釈したPSA抗体(ウサギポリクローナル;DAKO Corporation、カリフォルニア州カーピンテリア)を用いてさらに処理した。
C. 統計解析
cDNA発現データの一次的解析は、Genepixソフトウェアを用いて行った。プログラムクラスターを用いてのクラスター解析およびTreeViewを用いての図の作成は、上記のように行った。AMACRタンパク質発現は、各前立腺組織型(すなわち、良性前立腺、未処置の限局性または進行性前立腺癌、ホルモン治療後のホルモン抵抗性前立腺癌)についての平均スコアを用いて、統計的に評価した。全組織型間におけるAMACRタンパク質発現の有意な相違を調べるには、一元配置ANOVA検定を行った。全対間の相違の測定には、上記のように、シェッフェの方法を用いたポストホック解析を適用した。AMACRタンパク質発現についての未処置の原発部と相当するリンパ節転移との比較には、ノンパラメトリック解析(マン・ホイットニー検定)を行った。AMACR発現強度を、予め治療した限局性前立腺癌症例のスコアリングしたホルモン効果と比較するには、マンテル・ヘンツェルのカイ二乗検定を適用した。AMACR発現スコアは、95%信頼区間を有するエラーバーを用いて、図面に表す。P値<0.05を、統計的に有意であるとみなした。
D. 結果
良性、BPH、限局性PCA、および転移性PCAを含む76個の前立腺組織を階層的クラスタリングし、フィルターをかけて1.5倍以上の発現の相違を有する遺伝子のみを選別することにより、上記のように、試料を組織学的に異なる群にクラスタリングした。このデータのTreeView表示(図15)によって示されるように、AMACRは、良性前立腺組織に対して、PCA試料のcDNAレベルで過剰発現が実証されたいくつかの遺伝子のうちの一つであった。cDNA解析による最も高いレベルの過剰発現は、臨床的限局性PCA症例においてであった。
変動的分化をし、抗アンドロゲン治療に曝露された試料におけるAMACRタンパク質発現の役割をさらに調査するため、広範なPCAを有するいくつかのTMAを作製した:全部で119個の良性前立腺試料、365個の原発性ホルモン未処置PCA試料、37個の未処置前立腺癌リンパ節転移、および41個のホルモン抵抗性転移性PCA試料を評価した。さらに49個のホルモン治療した原発性前立腺癌(標準のスライドグラス上に22例を含む)を、抗アンドロゲン治療およびAMACRタンパク質発現に関連した組織学的変化について調査した。各組織分類の平均AMACRタンパク質発現レベルを、図16に示す。良性前立腺、未処置原発性前立腺癌、ホルモン治療した原発性癌、およびホルモン抵抗性転移組織は、それぞれ1.28(標準誤差SE 0.038、95%信頼区間CI 1.20〜1.35)、3.11(SE 0.046、CI 3.02〜3.20)、2.86(SE 0.15、CI 2.56〜3.15)、および2.52(SE 0.15、CI 2.22〜2.28)の平均染色強度を有した。一元配置ANOVA解析では、p値<0.0001を示した。異なる組織型間における相違を明確に調べるため、ポストホックペアワイズ比較を行った。臨床的限局性PCAは、良性前立腺組織と比較して、有意により強いAMACRタンパク質発現を示した(シェッフェ法を用いたポストホック解析、平均差=1.83、p<0.0001、CI 1.53〜2.13)。転移性ホルモン抵抗性PCA試料においては、臨床的限局性PCAと比較して、AMACRタンパク質発現の有意な減少が認められた(0.59、p=0.002、CI 0.15〜1.03)。ホルモン治療した原発部は2.86の平均AMACR発現を有し、これは未処置の原発部(3.11)とホルモン抵抗性症例(2.52)の発現レベルの間であった(シェッフェ法を用いたポストホック解析、p=0.51、CI−0.66〜0.16およびp=0.56、CI−0.23〜0.91)。37個の未処置の原発性前立腺試料と同じ患者由来のリンパ節転移とには、AMACR発現における有意な相違はなかった(マン・ホイットニー検定、p=0.8)。すなわち、対応する原発部およびリンパ節転移は、同様のAMACR発現パターンを示した。
患者が術前に様々な量および様々な種類の抗アンドロゲン治療を受けた、一部の22例のPCA症例を調査した。これらの症例を、治療手順に関してブラインド的に、ホルモン治療の組織学的証拠(H&Eスライドグラス)およびAMACRタンパク質発現について評価した。H&Eスライドグラス上で見られるホルモン効果を、1は「効果なし」 を表し4は「非常に強い効果」を示す、1から4までに分類した。13例の症例では効果なしまたは中程度のホルモン効果を示し、9例の症例では非常に強いホルモン効果を有した。統計解析により、AMACR発現強度に関する、これらの2つの群間の有意な相違が明らかになった(図17、マンテル・ヘンツェルのカイ二乗、p=0.009)。図17は、術前に、H&E上で認められる強力なホルモン効果を有する抗アンドロゲンの治療を受け、AMACRタンパク質発現が減少したPCA症例の例を示す(図17A)。このデータセットにおいて、治療期間とAMACR発現との間にも、治療の種類(単独療法またはホルモン欠乏のため完全なホルモン除去)とAMACR発現との間にも関連性はなかった。
AMACR発現へのホルモン効果をさらに調査するため、初代細胞培養実験およびウェスタンブロット解析を行った。図17パネルBに示すように、転移性病変由来であるがホルモン反応性であると考えられるLNCaP細胞は、どちらも転移性病変由来のホルモン非依存性細胞株であるPC3細胞およびDU-145細胞と比較して、より高いAMACR発現ベースラインを示した。良性細胞株、RWPE-1(Belloら、Carcinogenesis 18:1215 [1997])はAMACR発現がほとんどないことを示したが、これはインサイチュータンパク質発現データと一致する。抗アンドロゲン治療をシミュレートするため、ホルモン反応性細胞株LNCaPを、最終濃度20μMのビカルタミドで24時間および48時間処理した。LNCaP細胞の細胞溶解液中のAMACR発現は、抗アンドロゲン療法に曝露したどの時点においても変化しなかった。同一条件下において、アンドロゲン受容体によって制御されることが知られている遺伝子であるPSAは、タンパク質発現の減少を示した。また、LNCaP細胞を合成アンドロゲンR1881に曝露した場合、AMACR発現の増加は認められなかった(図17、パネルB)。したがって、これらの細胞培養実験により、AMACR発現はアンドロゲン経路により制御されないという証拠が提供される。
本発明は、特定の機構に限定されない。実際に、機序の理解は本発明の実施に必要ではない。それにもかかわらず、これらの知見の別の解釈としては、PCAにおいてAMACR過剰発現が起こったが、ホルモン抵抗性PCAのようにこれらの腫瘍が低分化になるにつれて、AMACR発現は脱分化の過程に起因して直接的または間接的に下方制御されたと考えられる。この有力な関連性を解明するために、結腸癌試料をAMACR発現について試験した(実施例7を参照のこと)。AMACRタンパク質発現はいくつかの他の腫瘍の種類においても観察され、全体的に最も高い発現は結腸直腸癌で見られる。結腸直腸癌はアンドロゲンによって制御されることは知られておらず、したがってこの仮説を試験するための対照として用いた。分化型結腸癌試料4個および未分化結腸癌試料7個を選択した。低分化腫瘍は、通常の高度から中程度に分化した結腸直腸腫瘍とそれ自身を区別する、特徴的な分子的変化を有する(Hinoiら、Am. J. Pathol. 159:2239 [2001])。中程度に分化した結腸癌において、強力なAMACRタンパク質発現が認められた。この腫瘍は、依然として明確な腺状構造を形成する。周囲の良性結腸組織は、AMACRを発現しない。未分化結腸癌は、弱いAMACRタンパク質発現を示した。主として、データにより、高度に分化した症例では4/4で陽性AMACR発現が見られたが、未分化結腸癌では4/7のみでしか見られなかったことが示された。未分化結腸癌の3例は、弱から中程度の発現を有した。転移性ホルモン抵抗性PCAは、組織マイクロアレイにおいて弱いAMACRタンパク質発現を示した。
実施例7
種々の癌におけるAMACR発現
A. オンラインESTデータベースおよびSAGEデータベースの解析
米国立癌研究所癌ゲノム解剖プロジェクト(Cancer Genome Anatomy Project)(CGAP)は、複数の試料にわたって遺伝子発現を比較するための、オンラインで利用可能な様々な遺伝子発現データベースを有する(米国立癌研究所のインターネットウェブサイトを参照のこと)。ESTデータベースによってもSAGEデータベースよってもバーチャルノーザンブロットが提供され、これにより利用者は複数の試料の中で特定の遺伝子の発現レベルを可視化して比較することができる。SAGEデータベースは、多数の良性および悪性組織の112個のライブラリーによる500万を超えるタグを含む。
B. 研究症例の選択
多腫瘍組織マイクロアレイを作製するため、全部で96症例の様々な部位の癌を選択した。組織マイクロアレイを作製し、多数の一般的な腫瘍の種類を広範に調査した。各症例について、最低でも3個の組織コア(直径0.6 mm)を採取した。調査した腫瘍には、結腸直腸腺癌(n=15症例)、腎細胞癌(6)、前立腺腺癌(6)、尿路上皮癌(4)、頚部扁平上皮癌(6)、非小細胞肺癌(4)、リンパ腫(15)、黒色腫(9)、およびいくつかの他の癌の種類を含んだ。入手可能な場合には、正常隣接組織を採取した。前立腺組織マイクロアレイは、臨床的限局性前立腺癌の単独療法として、根治的前立腺切除術を受けた選択した患者から作製した。この組織マイクロアレイは、前立腺萎縮症、高度前立腺上皮内腫瘍(PIN)、および臨床的限局性前立腺癌を含む多様な前立腺組織を含んだ。さらに、標準のスライドグラスを用いて、結腸癌についての結果を確認した。24例の結腸直腸腺癌(高度から中程度に分化した癌腫16例および大細胞最小分化癌8例)および8例の内視鏡由来結腸直腸腺腫を、AMACRの免疫染色用に選択した。乳癌については、浸潤腺管癌52症例のTMAを用いた。試料は、治験審査委員会の指針に従って、収集し解析した。
C. 免疫組織化学法
標準的なアビジン-ビオチン複合体免疫組織化学法を用いた。電子レンジを用いて、スライドグラスをクエン酸緩衝液中で10分間加熱することにより、前処理を行った。次にスライドグラスを、順に、一次抗体(1:2000希釈、ポリクローナルウサギ抗AMACR抗体)、ビオチン化二次抗体、アビジン-ビオチン複合体、および発色基質3,3'ジアミノベンジジンと共にインキュベートした。標準の明視野顕微鏡を用いて、スライドグラスを適切に評価した。次に、BLISS画像処理システム(Bacus Lab、イリノイ州ロンバード)を用いてデジタル画像を取り込み、二人の病理学者が評価した。タンパク質発現は、陰性、弱染色(かすかな細胞質染色または顆粒状の頂端部染色)、中程度染色(散在性の顆粒状細胞質染色)、および強染色(散在性の強い細胞質染色)としてスコアリングした。中染色および強染色のみを、陽性染色とみなした。
D. レーザーキャプチャーマイクロダイセクション
治験審査委員会の手順に従って、2つの根治的前立腺切除試料の切片をOCT中で凍結した。凍結切片(厚さ5μm)を70%アルコール中で10分間固定した後、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。前立腺癌および良性前立腺を、μCUTレーザーキャプチャーマイクロダイセクター(MMI GmbH、ドイツハイデルベルグ)上で精査した。約6000個の細胞を採取した。Qiagen微量単離キット(Qiagen、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて、全RNAを単離した。オリゴdTおよびランダムヘキサマープライマーを用いて、逆転写を行った。特定の遺伝子産物を増幅するために用いたプライマーは、:
AMACRセンス、
Figure 0004251357
AMACRアンチセンス、
Figure 0004251357
GAPDHセンス、
Figure 0004251357
およびGAPDHアンチセンス、
Figure 0004251357
である。AMACRおよびGAPDHのPCR条件は、94℃で5分間の熱変性、94℃で1分間、60℃で1分間、および72℃で1分間のサイクル(GAPDHの場合は32サイクル、AMACRの場合は40サイクル)、ならびに72℃で5分の最終的な伸長段階である。PCR産物を2%アガロースゲル電気泳動により分離し、UV照射により可視化した。
E. 結果
オンラインCGAPプログラムによるバーチャルノーザン手段を用いて、AMACR発現を2つのデータベース、ESTライブラリーおよびSAGEライブラリー中で調査した。AMACRは、中枢神経系および末梢神経系、結腸、腎臓、乳房、膵臓、前立腺、ならびに血液を含む広範な組織において発現されることが見出された。骨髄、乳房、結腸、泌尿生殖器系、肺、リンパ節、神経系、膵臓、前立腺、軟部組織、および子宮で生じる腫瘍を含む多数の癌では、その正常な対応物と比較して、AMACR発現が増加している。
遺伝子発現データを確認するため、複数の部位由来の最も一般的な癌のいくつかを含む多腫瘍組織アレイで、AMACR免疫組織化学法を行った。結腸直腸癌、前立腺癌、卵巣癌、肺癌、リンパ腫、および黒色腫を含む多くの癌で、AMACRタンパク質レベルが上昇していた(図18)。特に、AMACRの過剰発現は、結腸直腸癌および前立腺癌のそれぞれ92%および83%において認められた。乳癌組織マイクロアレイを用いて、浸潤腺管癌の44%においてAMACRが過剰発現していることが見出された。女性の頚部扁平上皮癌(6症例)では、AMACR過剰発現は認められなかった。
多様な増殖性前立腺病変におけるAMACR発現をさらに特徴づけるため、前立腺癌、高度PIN、および萎縮性前立腺を含む前立腺組織マイクロアレイを用いた。陽性AMACR染色(中程度染色および強染色)は、臨床的限局性前立腺癌および高度PINのそれぞれ83%および64%において認められた。限局的なAMACR発現は萎縮性病変の36%に認められ、形態学的に良性の前立腺ではまれであった。AMACRタンパク質の過剰発現が遺伝子転写が増加した結果であることを確認するため、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション法を用いて、癌性前立腺および良性前立腺を単離した。AMACR mRNA発現を評価するため、RT-PCRを行った。良性前立腺は、非常に低いベースラインの発現を有した(図19)。これに対し、前立腺癌はより高いmRNAレベルを有し、これにより、前立腺癌において、AMACR遺伝子の転写の増加によりタンパク質発現の増加がもたらされることが確認された。
高度から中程度に分化した大細胞腺癌16例および低分化大細胞腺癌8例を含む24例の結腸直腸腺癌において、AMACR発現を調査した。全体として、83%(20/24)が陽性AMACRタンパク質発現を示した。低分化癌腫の64%(5/8)と比較して、高度から中程度に分化した癌腫のすべて(16/16、100%)の症例が、陽性染色を有した。結腸鏡検査により得られた8例の結腸直腸腺腫生検試料において、AMACR発現を試験した。6(75%)症例において、中程度の染色が見られた。分化型腺癌と比較して、腺腫は通常、より限局的(細胞の10〜60%)であり、より弱い染色を示した。
実施例8
前立腺癌におけるEZH2発現の特徴づけ
A. SAM解析
10個の臨床的限局性前立腺癌試料に対して、7個の転移性前立腺癌試料の遺伝子発現プロファイルを比較することにより、SAM解析を行った。中央値の総計比率を1に調整する標準化係数を掛けて、2を底とする対数に変換し、中央値で中央揃えすることにより、アレイごとにデータを標準化した。2クラス不対(unpaired)t検定を用いて比較するため、この標準化データを2群に分けた。解析の臨界値は、反復=500、乱数シード1234567、1.5の変化倍率カットオフ、および0.985の差分カットオフを含み、有意であるとして選択した535個の遺伝子(METおよびPCA間で、相対的に上方制御された遺伝子55個、および相対的に下方制御された遺伝子480個)について、最終的な最大平均偽発見率は0.898%という結果になった。Cluster(Eisenら、PNAS 95:14863 [1998])を使用して遺伝子の平均連鎖階層的クラスタリングを行い、これら535個の遺伝子を解析した。Treeview(Eisenら[1998]、前記)により結果を描出した。
B. RT-PCR
表示した前立腺組織および細胞株から単離した全RNA 1μgを用いて、逆転写およびPCR増幅を行った。
ヒトEZH2フォワード
Figure 0004251357
リバース
Figure 0004251357
およびGAPDHセンス
Figure 0004251357
アンチセンス
Figure 0004251357
プライマーを用いた。増幅したDNAをアガロースゲルで分離し、エチジウムブロマイドで可視化した。
C. イムノブロット解析
前立腺組織抽出物をSDS-PAGEにより分離し、ニトロセルロース膜にブロットした。イムノブロット解析には、抗EZH2抗体(Sewaltら、Mol. Cell. Biol. 18:3586 [1998])、抗EED抗体(Sewaltら、前記)、およびポリクローナル抗チューブリン抗体(Santa Cruz Biotechnology)を1:1000希釈で使用した。西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体を用いて一次抗体を検出し、製造業者(Amersham-Pharmacia)の説明どおりに、化学発光の増強により可視化した。
D. 組織マイクロアレイ解析
本研究で用いた臨床的に層別化した前立腺癌組織マイクロアレイについては、先に記載した(上記実施例を参照のこと)。用いた組織は、どちらもミシガン大学前立腺癌専門研究プログラム(S.P.O.R.E.)組織コアの一部である、ミシガン大学の根治的前立腺切除術系および迅速剖検プログラムによる。治験審査委員会の承認を得て、本研究で用いた組織を入手し解析した。
広範な前立腺組織においてEZH-2タンパク質の発現を評価し、インサイチューでの強度および範囲を決定した。良性前立腺、前立腺萎縮症、高度前立腺上皮内腫瘍(PIN)、臨床的限局性前立腺癌(PCA)、および転移性ホルモン抵抗性前立腺癌(HR-METS)試料を含む3枚の組織マイクロアレイ(TMA)で、免疫組織化学法を行った。ポリクローナル抗EZH2抗体を用いて、標準のビオチン-アビジン複合体免疫組織化学法(IHC)を行い、EZH2タンパク質発現を評価した。タンパク質発現は、陰性(スコア=1)、弱(2)、中程度(3)、および強(4)としてスコアリングした。
本研究では、約700個のTMA試料(直径0.6 mm)を評価した(症例当たり、3〜4組織コア)。TMAは、先に記載したように(上記実施例を参照のこと)、手動の組織アレイヤー(Beecher Instruments、メリーランド州シルバースプリング)を用いて構築した。選択した組織型それぞれから、4個の重複組織コアを試料採取した。構築後、4μmの切片を切り出し、最初の切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色して組織診断を確認した。BLISS画像処理システム(Bacus Lab、イリノイ州ロンバード)を用いて、TMAヘマトキシリンおよびエオシン画像を取り込んだ。EZH2タンパク質発現は、有効なウェブ基盤の手段を用いて、研究病理学者がブラインド様式で評価し(Manleyら、Am. J. Pathol. 159:837 [2001];Bovaら、Hum. Pathol. 32:417 [2001])、一人の患者からの全測定値の中央値を次の解析に使用した。
E. 臨床転帰解析
再発の危険性の個人変数を算定するため、カプラン・マイヤー生存解析を行い、一変量のCox比例ハザードモデルを作製した。PSA再発は、根治的前立腺切除術後の0.2 ng/mlとして定義した。共変量には、グリーソン総和、術前PSA、腫瘍の大きさの最大値、腫瘍の病期、および外科的縁状態を含んだ。同時にEZH2タンパク質発現を含む様々な変数の影響を評価するため、統計的に有意な共変量の最終的な多変量のCox比例ハザードモデルを作製した。一変量および多変量Coxモデルにおける統計的有意性は、ワルド検定により判定した。P値<0.05を統計的に有意であるとみなした。
F. EZH2構築物
Mycタグ化EZH2-pCMVを使用した。BamHI/XhoI二重切断によりMycタグ化EZH2断片を切り出し、哺乳動物発現ベクターpCDNA3(Invitrogen)にサブクローニングした。インフレームEZH2-ER融合発現構築物は、FADD-ER構築物(元はMyc-ER(Littlewoodら、Nuc. Acids. Res. 23:1686 [1995])由来)のKpn I/Not I二重切断により切り出したFADD断片を、終止コドンを欠いたPCR増幅ヒトEZH2と置換することにより作製した。プライマー
Figure 0004251357
および
Figure 0004251357
を用いて、EZH2 .SET変異体DNAを増幅し、次に中に組み込まれたKpnI/EcoRI部位を利用してpcDNA3にサブクローニングした。これらの構築物の発現は、抗Myc HRP抗体(Roche, Inc)または抗EZH2抗体のどちらかを用いて、発現されたタンパク質をイムノブロット解析することにより確認した。
G. RNA干渉
21ヌクレオチドのセンスおよびアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを化学的に合成し(Dharmacon Research Inc.)、アニーリングして二本鎖を形成させた。本研究で用いたsiRNAは、報告されたヒトEZH2(NM004456)の85位から106位に相当する領域を標的とした。対照siRNA二本鎖は、ルシフェラーゼ、ラミン、およびAMACR(NM014324)を標的にした。ヒト形質転換前立腺細胞株RWPE(Webberら、Carcinogenesis 18:1225 [1997])およびPC3を、12ウェルプレートにウェル当たり2x105細胞でプレーティングし(イムノブロット解析、細胞計測、および蛍光活性化セルソーティング(FACS)解析用)、96ウェルプレートにウェル当たり1.5x104細胞でプレーティングした(WST-1増殖アッセイ法用)。プレーティングしてから12時間後、オリゴフェクタミン(Invitrogen)を使用して、siRNA二本鎖、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチド(EZH2を標的)60ピコモルを細胞にトランスフェクションした。24時間後、2回目の同一トランスフェクションを行った。1回目のトランスフェクションから48時間後、イムノブロット用に細胞を溶解し、細胞数の概算またはFACS解析用にトリプシン処理した。最初のトランスフェクションから60時間後に、細胞生存度を評価した。
H. 細胞増殖アッセイ法
細胞増殖は、製造業者の説明(Roche, Inc)どおりに、ミトコンドリア脱水素酵素によるテトラゾリウム塩WST-1の切断に基づいた細胞生存度の比色アッセイ法により測定した。試薬を添加してから1時間後、培養液中の代謝活性のある細胞の数と直接相関する形成されたホルマゾン色素の吸光度を、450nmで測定した(Bio-Tek instruments)。細胞をトリプシン処理してコールター細胞計測器で分析し、細胞数を測定した。
I. フローサイトメトリー解析
トリプシン処理した細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、コールター細胞計測器により細胞数を測定した。FACS解析には、洗浄した細胞を70%エタノール中で一晩固定した。ヨウ化プロピジウムで染色する前に、細胞を再度PBSで洗浄し、フローサイトメトリー(Becton Dickinson)により解析した。
J. EZH2トランスフェクション細胞のマイクロアレイ解析
この一過性トランスフェクション/トランスクリプトーム解析系の最初の実験から、腫瘍壊死因子の受容体であるTNFR1(p55)の一過性過剰発現により、細胞をTNFと共にインキュベーションした場合に見られるのと同様の発現プロファイルが誘導されることが示された(Kumar-Smithら、J. Biol. Chem. 24:24 [2001])。他の分子も、この方法を用いて同様に試験された。様々なEZH2構築物で細胞をトランスフェクションし、β-ガラクトシダーゼアッセイ法によりトランスフェクション効率をモニターしたところ、効率は約30〜50%であった。SAM解析パッケージ(Tusherら、PNAS 98:5116 [2001])を用いて、EZH2 .SET変異体発現試料をEZH2発現試料と比較した。アレイごと個々に、中央値の総計比率を1に調整する標準化係数を掛けて、2を底とする対数に変換し、中央値で中央揃えして、データを前処理した。2クラスの対応のないt検定を用いて比較するため、この前処理データを2群に分けた。解析の臨界値は、反復=5000(収束では720)、乱数シード1234567、1.5の変化倍率、および0.45205の差分カットオフを含み、有意であるとして選択した161個の遺伝子について、最終的な最大平均偽発見率は0.45%という結果になった。これらの161個の遺伝子にEZH2の値を補い、Clusterを使用して、遺伝子の平均連鎖階層的クラスタリングを行い解析した。結果は、Treeviewで描出した。EZH2によって抑制されると同定され選択された遺伝子(例えば、EPCおよびcdc27)を、再度配列決定して同一性を確認した。
細胞の分子同一性を、その細胞が発現する(および抑制する)遺伝子により判断する。胚形成および細胞の分化は、特定の遺伝子を「オン」にし他の遺伝子を「オフ」に保つことに密接に依存する。細胞の転写の「記憶」が撹乱されると、これにより重度の発生上の欠陥がもたらされ得る(Jacobsら、Semin. Cell Dev.Biol. 10:227 [1999];Francisら、Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 2:409 [2001])。分化の欠如または退生は癌の顕著な特徴であり、これは正常細胞の細胞同一性を「忘れること」によって生じる。したがって、転写維持系の調節不全により、悪性腫瘍を引き起こし得ることは驚くことではない(Francisら、前記;Jabobsら、Nature 397:164 [1999];Beuchleら、Development 128:993 [2001])。
キイロショウジョウバエでの研究は、転写維持に関与するタンパク質の理解に役立ってきた(Beuchleら[2001]、前記;Struttら、Mol. Cell. Biol. 17:6773 [1997];Tieら、Development 128:275 [2001])。2つのタンパク質群がホメオティック遺伝子発現の維持に関係するとみなされており、これにはポリコーム群(PcG)およびトリソラックス(trxG)群タンパク質が含まれる(Mahmoudiら、Oncogene 20:3055 [2001];Lajeunesseら、Development 122:2189 [1996])。PcGタンパク質は大きな複合体で働き、遺伝子発現を抑制すると考えられているのに対し、trxGタンパク質は操作上PcGタンパク質のアンタゴニストとして定義され、したがって遺伝子発現を活性化する(Francisら、Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 2:409 [2001];Mahmoudiら、前記)。ショウジョウバエには少なくとも20個のPcGおよびtrxGタンパク質が存在し、多くは哺乳動物の対応物を有する。ヒトの悪性腫瘍においては、PcGおよびtrxGタンパク質は、最初に、造血性起源の細胞において調節不全になっていることが見出された(Yuら、Nature 378:505 [1995];Raaphorstら、Am. J. Pathol., 157:709 [2000];van Lohuizzenら、Cell 65:737 [1991])。EZH2はショウジョウバエタンパク質、Zesteのエンハンサー(E(z))のヒト相同体であり(Laibleら、Embo. J. 16:3219 [1997])、遺伝子データはこれをさらなるtrxG特性を有したPcGタンパク質として定義する(LaJeunesseら、前記)。E(z)およびEZH2は、ドメインI、ドメインII、システインに富んだアミノ酸のひと配列、およびC末端SETドメインを含む4つの領域において相同性を共有する(Laibleら、前記)。SETドメインは、細胞増殖経路を調節することが多い遺伝子発現の染色質関連調節因子において見出される、高度に保存されたドメインである(Jenuweinら、Cell. Mol. Life Sci. 54:80 [1998])。EZH2は、EED、YY1、およびHDAC2で構成されるPcGタンパク質複合体において機能すると考えられている(Satijnら、Biochim. Biophys. Acta. 1447:1 [1999])。マウスでEZH2遺伝子を破壊することにより胚の致死が起こり、これにより発生における重大な役割が示唆される(O'Carrollら、Mol. Cell. Biol. 21:4330 [2001])。
先の研究において(例えば実施例1を参照のこと)、転移性前立腺癌において有意に上方制御された遺伝子の「一覧表」の一番上にある遺伝子はEZH2であり、これはdスコア(Tusherら、PNAS 98:5116 [2001])4.58および遺伝子特異的FDR 0.0012(p値に類似しているが複数の推論の筋書きに適した「q値」とも呼ばれる)を有した。図20aは、この方法により同定された55個の上方制御された遺伝子を示す。図20bは、10 Kの要素で構成されるDNAマイクロアレイで解析された、74個の前立腺組織試料におけるEZH2の遺伝子発現を要約したものである。臨床的限局性前立腺癌(マン・ホイットニー検定、p=0.001)および良性前立腺(p=0.0001)に対して、転移性前立腺癌ではEZH2転写産物が有意に増加していた。
DNAマイクロアレイの結果の独立した実験確認として、18個の前立腺試料および細胞株においてRT-PCRを行った。予想どおり、EZH2 mRNA転写産物レベルは、良性と比較して悪性前立腺試料において増加していた(図20c)。EZH2が転移性前立腺癌においてタンパク質レベルで上方制御されているのか否かを判定するため、組織抽出物をイムノブロッティングにより試験した。イムノブロット解析により試験した試料において、EZH2タンパク質は、限局性前立腺癌または良性前立腺と比較して、転移性前立腺癌において顕著に増加していた(図20d)。
重要なことには、EZH2と共に複合体を形成するPcGタンパク質であるEED(vanLohuizenら、前記;Sewaltら、前記)は、非関連タンパク質であるβ-チューブリンと同様に、類似のタンパク質調節不全を示さなかった。広範な前立腺組織(700個を超える組織マイクロアレイ成分)においてEZH2タンパク質発現を評価し、インサイチューでの発現の強度および範囲を測定した(図21a、b)。高く発現される場合には、以前に示唆されたように(Raaphorstら、前記)、EZH2発現は主に核に認められた。染色強度は、良性から順に、前立腺萎縮症、前立腺上皮内腫瘍(PIN)、臨床的限局性前立腺癌まで、それぞれ平均染色強度1.7(標準誤差[SE]、0.1;95%信頼区間[CI]、1.5〜1.9)、1.7(SE、0.2;95% CI、1.3〜2.0)、2.3(SE、0.2、95% CI、1.9〜2.7)、および2.6(SE、0.1;95% CI、2.4〜2.8)を有して増加した(図24b)。最も強いEZH2タンパク質発現は、平均染色強度3.3(SE、0.3;95% CI、2.7〜3.9)を有したホルモン抵抗性転移性前立腺癌において認められた。良性前立腺組織と限局性前立腺癌との間には、EZH2染色強度に統計的に有意な相違があった(ANOVAポストホック解析平均相違0.9、p<0.0001)。転移性前立腺癌は限局性前立腺癌よりも高い平均発現レベルを有したが、相違は統計的有意性には達しなかった(ANOVAポストホック解析平均相違0.7、p=0.3)。これらの知見から、前立腺腫瘍が進行するにつれて、DNA発現アレイ解析によって見られたのと類似した、EZH2タンパク質発現の増加傾向があったことが示唆される。本発明は、特定の機構に限定されない。実際に、機序の理解は本発明の実施に必要ではない。それにもかかわらず、最も高い発現レベルがホルモン抵抗性転移性前立腺癌で見られたことを考えると、EZH2レベルは個人の前立腺癌がいかに進行性であるかを示し得ることが、この知見から示唆されることが考えられる。したがって、この仮説を試験するため、臨床的限局性前立腺癌を手術で治療した男性の臨床転帰を予測するための、EZH2タンパク質レベルの有用性を試験した。
臨床経過観察をしている64人の患者(患者当たり3〜4個の重複試料)由来の225個の試料を、単一の組織マイクロアレイで調査した。これらの男性は平均年齢61歳(43〜76歳の範囲)であり、術前の平均血清前立腺特異抗原(PSA)は7.3 ng/ml(0.8〜21.0 ng/mlの範囲)であった。前立腺摘出試料の病理学的検査により、77%が器官に限局した疾患(pT2期)を有し、72%が外科的縁が陰性であることが示された。患者の人口統計および腫瘍の病期は、1500人を超える根治的前立腺切除患者の代表値である。前立腺癌の潜在的な組織バイオマーカーとしてのEZH2の有用性を検査するため、臨床的パラメータおよび病理学的パラメータを考慮して、これらの64症例を試験した。臨床的失敗を、前立腺切除後のPSA上昇0.2 ng/mlまたは疾患再発(例えば、転移性疾患の発症)と定義した。カプラン・マイヤー解析によると(図21c)、3以上のEZH2染色強度は、31%の患者(10/32)における臨床的失敗と有意に関連しており、3未満のEZH2タンパク質レベルを有する9%の患者(3/32)(ログランクp=0.03)とは対照的であった。EZH2レベルとグリーソンスコア(<7 対 =7)、腫瘍の病期(pT2 対 pT3)、または外科的縁状態(陰性 対 陽性)との間に有意な関連性はなかった。EZH2タンパク質レベルと、Ki-67ラベル指標により評価されるインサイチューでの増殖指標との間には、弱いながらも(ピアソン係数=0.33)有意な(p=0.048)関連性が存在した。多変量Coxハザード回帰分析により、EZH2タンパク質発現(=3 対 <3)は、再発率4.6(95% CI 1.2〜17.1、p=0.02)である臨床転帰の最も優れた予測因子であり、外科的縁状態、腫瘍の大きさの最大値、グリーソンスコア、および術前PSAよりも有意に優れていることが明らかになった。したがって、前立腺組織中のEZH2タンパク質レベルをモニターすることにより、現行の臨床的パラメータおよび病理学的パラメータのみでは識別不能な、さらなる予後情報が提供され得る。
前立腺癌進行におけるEZH2の機能的役割を明らかにするため、形質転換前立腺細胞におけるインビトロでのEZH2発現を、RNA干渉を用いて破壊した。T. Tuschlらは、二本鎖の21ヌクレオチドRNA(siRNA)が培養哺乳動物細胞において遺伝子特異的な様式でRNA干渉を仲介することを、最近報告した(Elbashirら、Nature 411:494 [2001])。RNA干渉は、配列特異的な二本鎖RNAが介するRNA分解によって、特定のタンパク質の発現を「ノックダウン」するのに、昆虫細胞株で効果的に用いられてきた(Hammondら、Nature 404:293 [2000])。siRNAは、従来のアンチセンス方法またはリボザイム方法よりもけた違いに強力な、遺伝子サイレンシングの介在物質である(Macejakら、Hepatology 31:769 [2000])。したがって、Elbashirら(前記)によって提供される基準を用いて、EZH2分子の21ヌクレオチドのひと配列を標的にし、RNAオリゴヌクレオチドを外注で合成した。RNAオリゴをアニーリングしてsiRNA二本鎖を形成した後、これを、形質転換アンドロゲン反応性前立腺細胞株RWPE(Webberら、Carcinogenesis 18:1225 [1997];Belloら、Carcinogenesis 18:1215 [1997])および転移性前立腺癌細胞株PC3で試験した。siRNA二本鎖でトランスフェクションしてから48時間後、内因性のEZH2タンパク質のレベルを定量した。前立腺細胞株においてEZH2タンパク質が特異的に下方制御した場合、非関連の対照タンパク質β-チューブリンのレベルは変化しないままであった(図22a)。EZH2二本鎖を構成するセンスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチド、および非関連のsiRNA二本鎖はEZH2タンパク質に影響を及ぼさず(図22a、中央および右のパネル)、両前立腺細胞株におけるsiRNA方法の特異性が検証された。
次に、EZH2「ノックダウン」前立腺細胞の表現型について試験した。位相差顕微鏡により、EZH2に対するsiRNAは、緩衝液対照と比較して、細胞数/コンフルエンシーを顕著に阻害することが観察された。siRNAをトランスフェクションしてから48時間後に行った細胞計測から、RWPE細胞の増殖がEZH2 siRNA二本鎖媒介により62%阻害されることが示されたが、これは相当するセンスおよびアンチセンスEZH2オリゴヌクレオチドまたは(ルシフェラーゼおよびラミンを標的にする)対照二本鎖が最低限の阻害しか示さなかったこととは対照的である(図22b)。前立腺癌であるPC3はEZH2 siRNAによって媒介される同様の増殖阻害を示し、これらの知見がRWPE細胞株の特性ではないことを示唆した(図22b)。ミトコンドリア脱水素酵素活性を測定する市販の細胞増殖試薬WST-1を用いて、細胞増殖の減少はEZH2 siRNA二本鎖によって媒介されるが、非関連二本鎖によっては媒介されないことが認められた(図22c)。時間を考慮すると(48時間)、EZH2のRNA干渉は、核のヨウ化プロピジウム染色またはPARP切断で評価されるアポトーシスを誘導しなかった。これと一致して、広範なカスパーゼ阻害剤z-VAD-fmkにより、EZH2 siRNAの誘導する細胞増殖の阻害は弱められなかった(図22c)。したがって、アポトーシス経路の活性化が、EZH2のRNA干渉で見られた細胞数の減少の原因ではない。
様々なPcG群タンパク質が、細胞周期の進行において役割を果たすことが示唆されている(Jacobら、Nature 397:164 [1999];Visserら、Br. J. Hematol. 112:950 [2001];Borckら、Curr. Opin. Genet. Dev. 11:175 [2001])。EZH2 siRNA処理した前立腺細胞のフローサイトメトリー解析により、G2/M期における細胞周期の停止が実証された(図22d)。非関連の対照siRNA二本鎖は、同様の細胞周期の調節不全を誘導しなかった。フローサイトメトリーによって評価されるように、試験したどの実験試料においても、アポトーシス細胞(サブG1細胞)はほとんど存在しなかった(図22d)。本発明は、特定の機構に限定されない。実際に、機序の理解は本発明の実施に必要ではない。それにもかかわらず、これらの知見から、EZH2はG2/M移行を減ずることによって前立腺細胞の増殖において役割を果たすことが示唆されると考えられる。
前立腺におけるEZH2の機能的役割をさらに理解するため、真核生物発現ベクターpcDNA3内の、エピトープタグを付加した野生型EZH2および保存されたSETドメインを欠くEZH2の欠失変異体を作製した(図23a)。修飾したマウスエストロゲン受容体(ER)(Littlewoodら、Nuc. Acid. Res. 23:1686 [1995];Juinら、Genes. Dev. 13:1367 [1999])との融合タンパク質を作製することにより、「誘導性」型のEZH2も作製した(図26a)。EZH2-ER融合体を細胞内で発現させたが(図26b)、おそらくは隔離現象/hsp90および他のタンパク質への結合により不活化される(Littlewod、前記)。細胞を4-ヒドロキシタモキシフェンで処理することにより、hsp90がER融合体から解離し、活性が現れる。エピトープタグを付加したEZH2構築物の発現は、293(図23b)、RWPE、および他の哺乳動物細胞株にトランスフェクションして確認した。
PcGタンパク質は、標的遺伝子の抑制によりその機能を媒介すると提唱されている(Laibleら、前記;Jacobsら、Semin Cell Dev. Biol. 10:227 [1999])。この仮説の試験を始めるため、RWPE前立腺細胞を野生型EZH2で一過性にトランスフェクションし、DNAマイクロアレイを用いて全体的な遺伝子発現変化をモニターした。実験上の(トランスフェクションした)細胞株由来のRNAを1つの蛍光色素で標識し、対の参照試料を第2の識別可能な蛍光色素で標識した。「遺伝子」をトランスフェクションした細胞株と対照のベクターをトランスフェクションした細胞株とを直接比較することにより、試料間の分子の相違が認められた。RWPE細胞またはSUM149乳癌細胞においてEZH2を過剰発現させると、遺伝子集団の一貫した抑制が起こった(図23c、d)。遺伝子のこの限定的な抑制は、例えばc-mycおよびTNFR1を含むこの系で試験した他の分子と比較して、独特であった。ベクターをトランスフェクションした細胞と比較すると、EZH2トランスフェクション細胞において有意に上方制御された唯一の遺伝子はEZH2自体であった(図23c)。
SETドメインの欠失により抑制表現型が生じず、ある場合には「抑制解除された」遺伝子を生じるように、EZH2を介した転写抑制は無傷のSETドメインに依存していた(図23c)。EZH2は、EEDタンパク質を介してヒストン脱アセチル化酵素2(HDAC2)と相互作用することが示されている(van der Vlagら、Nat. Genet. 23:474 [1999])。一般的に用いられるHDAC阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)がEZH2の効果を完全に抑制するように、上記の実験において、EZH2を介した遺伝子サイレンシングはHDAC活性に依存していた(図23c)。したがって、EZH2機能は、無傷のSETドメインおよび内因性のHSAC活性の両方を必要とする。
EZH2によって有意に抑制される遺伝子を同定するため、野生型EZH2をトランスフェクションした細胞を、EZH2 .SETをトランスフェクションした細胞と比較した。この方法により、163個の遺伝子が一貫して抑制された一方、どの遺伝子もFDR 0.0045で活性化されなかった(図23d)。有意な遺伝子一覧表を検討することにより、EZH2によって一貫して抑制されるとしてPcG群タンパク質EPCが同定されたが(図23c)、これはポリコームのショウジョウバエタンパク質のエンハンサー(E(Pc))のヒト相同体である。ショウジョウバエPcGタンパク質の中で、E(Pc)およびE(z)は、どちらも多様(Su(var))の抑制因子として作用することに関連し(Sinclairら、Genetics 148:211 [1998])、酵母相同体を有する唯一のPcGタンパク質であり、このことからPcG対の進化的保存性が強調される。EPCに加え、例えばMDNA、RNF5、RNF15、ZNF42、ZNF262、ZNFN1A1、RBM5、SPIB、およびFOXF2を含む他の転写制御因子/活性化因子の宿主も、EZH2により転写的にサイレントになった(図23c)。骨髄性細胞核分化抗原としても知られるMDNAは、ショウジョウバエPhoのPcG相同体でありタンパク質のEZH2/EED複合体の一部であることが示される転写因子YY1との相互作用により、転写抑制を媒介する(Satijinら、Mol. Cell. Biol. 21:1360 [2001])。
結果から、前立腺細胞における転写抑制に加え、細胞増殖の制御におけるEZH2の役割も支持される(図23)。cdc27(2つの独立したUnigeneクローン)の転写抑制も、同様に観察された。cdc27はサイクリンB1のユビキチン化を媒介する後期促進複合体(APC)の一部であり、サイクリンB/cdk複合体の分解を引き起こす(Jorgensenら、Mol. Cell. Biol. 18:468 [1998])。EZH2を標的にした場合に抑制されたタンパク質の他のファミリーは溶質キャリアーであった。少なくとも5つの異なるメンバーが抑制されることが示された(すなわち、SSLC34A2、SLC25A16、SLC25A6、SLC16A2,およびSLC4A3)。
実施例9
血清および尿中でのAMACR発現
本実施例は、血清および尿中でのAMACR発現について記載する。AMACRは、ポリクローナルウサギ抗AMACR抗体を用いて、標準のイムノブロッティングおよびタンパク質マイクロアレイにより測定した。結果を図24〜27に示す。図24は、マイクロアレイデータの定量化による、PCA細胞株におけるAMACRタンパク質の検出を示す。DUCAP、DU145、およびVCAPは、前立腺癌細胞株である。RWPEは良性前立腺細胞株である。PHINXはヒト胎児腎細胞株である。
図25 は、マイクロアレイデータの定量化による、血清中のAMACRタンパク質の検出を示す。P1〜P7は、前立腺癌を有する患者由来の血清を表す。NS2およびNS3は、PCAを有さない患者由来の血清を表す。SNS2およびSNS3は、AMACRタンパク質を注入されたPCAを有さない患者由来の血清を表す。図26は、PSA抗原が陰性または陽性である患者由来の血清のイムノブロット解析を示す。図27は、膀胱癌(女性)または膀胱癌および付随した前立腺癌(男性)を有する患者の尿試料における、AMACRの存在のイムノブロット解析を示す。結果から、膀胱癌または膀胱癌および前立腺癌を有する患者の血清および尿中に、AMACRが検出され得ることが示される。
実施例10
腫瘍抗原としてのAMACR
本実施例は、血清中におけるAMACRに対する免疫応答の存在について記載する。図28は、タンパク質マイクロアレイ解析による液性応答の代表的なデータである。AMACR、PSA、CEA、HSPを含む腫瘍抗原を、ニトロセルロースコーティングしたスライドグラスにスポットした。スライドグラスを種々の患者由来の血清と共にインキュベートし、液性応答を検出した。次に、マイクロアレイを洗浄した。Cy5標識ヤギ抗ヒトIgGを用いて、液性応答を検出した。次に、マイクロアレイスキャナー(Axon)を用いて、スライドグラスをスキャンした。データの標準化後、スポットの強度は、特定の腫瘍抗原に対する液性応答の存在、非存在、または強度を反映する。AMACRに対する特異的液性応答は、癌患者において検出されたが、対照においては検出されなかった。癌は、前立腺癌患者由来の血清を表す。BPHは、良性前立腺肥大症を有する患者由来の血清を表す。
図29は、AMACRに対する液性応答のイムノブロット解析を示す。図29Aは、泳動してニトロセルロースペーパーに転写した、組換えMBP(対照タンパク質=M)および組換えAMACR-MBP(A)を含むSDS-PAGEゲルを示す。次に、各条片のブロットをヒト血清と共にインキュベートした。HRP結合抗ヒト抗体を用いて、AMACRに対する液性応答を検出した。AMACRおよびAMACR断片のみが前立腺癌患者由来の血清中に検出され、対照では検出されなかった。図29Bは、液性応答が組換えAMACR(クエンチ)により阻害され、よってこの応答の特異性が示される、対照実験を示す。
本実施例は、前立腺癌患者のヒト血清中において、AMACRが腫瘍抗原として機能することを実証する。PCA患者の血清中においては、特異的免疫応答がAMACRに対して起こるが、対照においては起こらない。
実施例11
前立腺癌におけるGP73の発現
本実施例は、GP73の前立腺癌との関連性について記載する。
A. 方法
上記の実施例の記載と同様に、マイクロアレイ解析、RT-PCR、ウェスタンブロッティング、および免疫組織化学法を行った。
B. 結果
図30は、前立腺癌におけるGP73転写産物レベルを示す。図30aは、マイクロアレイ解析後の、個々の試料におけるGP73のレベルを示す。グラフは、前立腺癌組織試料RNAをCy5蛍光色素で標識し、一方参照試料(良性組織RNAのプール)をCy3蛍光色素で標識した場合の、Cy5 対 Cy3比率の値を示す。異なる前立腺組織による合計で76回の個々の実験をプロットし、これらを良性、前立腺癌、および転移性癌の種類に分類した。図30bは、試料の種類に従って分類した76個の前立腺試料をDMAマイクロアレイ解析により測定し平均化した、GP73転写産物の結果を示す。実験試料をCy5蛍光色素で標識し、一方参照試料(良性組織試料のプール)をCy3蛍光色素で標識した。ボックスプロットは、各群内のGP73発現の範囲を示す。中央の横棒は中央値を示し;ボックスの上端および下端は四分位範囲を示し;およびエラーバーは95%信頼区間を示す。図30cは、GP73転写産物レベルが前立腺癌において増加することを表す。RT-PCRを用いて、前立腺組織抽出物からのRNA調製物中における、GP73転写産物レベルを検出した。GAPDHは試料添加の対照である。
図31は、GP73タンパク質が前立腺癌において上方制御されることを示す。図31aは、前立腺癌におけるGP73タンパク質のウェスタンブロット解析を示す。良性、癌、および転移性組織からの全組織タンパク質(10μg)を、抗GP73抗血清を用いて解析した。β-チューブリンは試料添加の対照である。図31bは、ゴルジ常在性タンパク質Golgin97のイムノブロット解析を示す。前立腺組織試料においてGolgin97タンパク質レベルを解析し、正常および癌性前立腺組織中のゴルジ構造のレベルを示した。β-チューブリンは試料添加の対照である。
正常および癌性前立腺組織中のGP73タンパク質の組織マイクロアレイ解析も行った。GP73タンパク質発現は、GP73に対するポリクローナルマウス抗体を用いて、標準のビオチン-アビジン免疫組織化学解析法により解析した。高密度組織マイクロアレイを用いて、広範な前立腺組織においてタンパク質発現を評価した。高レベルな染色が、前立腺癌組織において観察された。前立腺癌組織の小区域において、いくつかの正常上皮細胞はGP73について染色されなかった。
図32は、正常および前立腺癌上皮細胞のイムノブロット解析を示す。正常前立腺組織および癌組織から上皮細胞を単離し、GP73イムノブロット解析のために上皮細胞からタンパク質を特異的に単離した。この目的のために、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションした試料を用いた。アクチンのウェスタンブロットは対照である。
実施例12
致死マーカーおよび標的
本実施例では、致死マーカーの同定について記載する。このマーカーは、潜在的な治療標的として役立つ。試料数と臨床パラメータおよび遺伝子発現を相関させることにより、マーカーを同定した。特に、本研究では、前立腺癌の原型致死バイオマーカーとしての機能を果たす、EZH2に類似した発現プロファイルを有するマーカーを同定した。これらの遺伝子は、限局性前立腺癌が再発したか否かを考慮したスコアリングシステムにより、同定した。さらに、EZH2と高度に関連した発現を有する遺伝子を同定したが、これはEZH2を補うマーカーとして役立ち得る。
Figure 0004251357
平均: BPHにおける平均発現
Dev: BPHにおける標準偏差
高: 平均値を2 SD上回る値(閾値)
Bph: BPH試料数>閾値
PCA: PCA試料数>閾値 (>1年、再発なし)
Pcau: PCA試料数>閾値 (<1年、経過観察)
Pcar: PCA試料数>閾値 (再発)
MET: 転移性試料数>閾値
スコア: met + pcar - pca
総数: 分類中の試料数
上記の用法を用いて同定された例示的な致死マーカーには、ABCC5(MDR5)が含まれる。この多剤耐性遺伝子は、環状ヌクレオチドおよび他の小分子を細胞外に能動的に汲み出す。非関連の研究により、この酵素はシルデナフィル(バイアグラ)を含むホスホジエステラーゼ阻害剤によって強力に阻害されることが見出された。本発明は、特定の機構に限定されない。実際に、機序の理解は本発明の実施に必要ではない。そそれにもかかわらず、シルデナフィルは進行性PCAの治療において役立ち得ると考えられる。
同定された他の致死マーカーには、アスパラギン合成酵素(ASNS)がある。ASNSを阻害する現行の療法には、体内でアスパラギンを破壊する酵素であるアスパラギナーゼが含まれる。この合成酵素を発現している癌は耐性であることが示されている。この合成酵素を阻害するアナログが開発されつつある。
Top2A(トポイソメラーゼ)およびVav2発癌遺伝子も、本発明の方法により同定された。Vav2は細胞の拡大に必要とされるが、srcに依存する。本発明は、特定の機構に限定されない。実際に、機序の理解は本発明の実施に必要ではない。それにもかかわらず、src阻害剤がvav2を介する細胞拡大を停止し得ると考えられる。
本実施例は、前立腺癌において過剰発現される癌マーカーの同定について記載する。本発明は、特定の機構に限定されない。実際に、機序の理解は本発明の実施に必要ではない。それにもかかわらず、これらの致死マーカーを阻害する治療化合物は、前立腺癌の治療において有用であると考えられる。
実施例13
前立腺癌におけるアネキシン発現の特徴づけ
本実施例は、前立腺癌におけるアネキシン発現について記載する。
A. 材料および方法
前立腺組織は、ミシガン大学前立腺癌専門研究プログラム(S.P.O.R.E.)組織コアを通して入手可能な、根治的前立腺切除術系および迅速剖検プログラムから入手した。このプログラムは、ミシガン大学治験審査委員会によって承認されている。
本研究に用いたホルモン未処置の臨床的限局性PCA試料は、1994年から1998年の間に、臨床的限局性PCAに対する単独療法として(すなわち、ホルモン療法も放射線療法も行わない)、恥骨後根治的前立腺切除術を受けた男性の集団から採取された。前立腺組織の処理は、外科的切除後20分以内に開始した。前立腺は部分的に試料採取し、組織の約50%を研究に用いた。この手順は、公式な研究において評価され、部分的な試料採取によって正確な病期分類および外科的縁の評価が損なわれないことが保証されている(Hollenbeckら、J. Urol., 164:1583 [2000])。cDNA発現アレイ解析に用いた瞬時に凍結した試料は、すべて研究病理学者の一人によって評価された。試料はすべて、試料の95%を上回る部分が所望の病変を表すことを確実にするように、肉眼で見て切り取った。
ホルモン抵抗性PCA試料は、迅速剖検プログラム(Rubinら、[2000]、前記)から収集した。瞬時に凍結した試料を、cDNAアレイ解析に用いた。同じ病変からの鏡像試料を、10%緩衝ホルマリン中に置いた。固定した試料をパラフィン中に包埋した。前立腺切除試料と同様に、研究病理学者がスライドグラスを調査し、壊死した部分を避けて生存前立腺癌の部分を円で囲み、組織マイクロアレイ作製のための鋳型としてこのスライドグラスを用いた。本研究において、20例のホルモン抵抗性転移性PCAは、1997年から2000年に行われた15件の迅速剖検事例から摘出された。患者の年齢は53歳から84歳にわたり、診断から死亡までの期間は21ヶ月から193ヶ月にわたった。15人の患者はすべて、抗アンドロゲンおよび化学療法を含む広範な治療を受けた後に、広範囲にわたる転移PCAにより死亡した。
前立腺切除試料は、腫瘍による外科的縁併発の存在または非存在(外科的縁状態)、前立腺外拡大の存在、および精嚢浸潤について評価した。腫瘍は、前立腺外拡大および精嚢浸潤は含むが外科的縁状態を考慮しないTNMシステムにより、病期分類した(Bostwickら、Simin. Urol. Oncol., 17:222 [1999])。腫瘍は、グリーソン類別システムにより類別した(Gleason, [1966]、前記)。
免疫組織化学法
パラフィンを除去し水和した後、組織マイクロアレイスライドグラスを加圧調理器チャンバー内に置いた10 mMクエン酸緩衝液中に浸し、最適な抗原検索のため電子レンジで10分間加熱した。免疫染色は、Dako自動免疫染色装置(DAKO、カリフォルニア州カーピンテリア)を用いて行った。一次抗体を室温で45分間インキュベートし、二次ビオチン標識抗体を30分間インキュベートした。ストレプトアビジン-LSA増幅法(DAKO K0679)を30分間行った後、ペルオキシダーゼ/ジアミノベンジジン基質/Chromagenを行った。スライドグラスをヘマトキシリンで対比染色した。アネキシン1(1:50希釈)、アネキシン2(1:100希釈)、アネキシン4(1:100希釈)、アネキシン7(1:500希釈)、およびアネキシン11(1:100希釈)のN末端に対するポリクローナル抗体は、シグナル供給元(Santa Cruz Biotechnology、カリフォルニア州サンタクルーズ)から入手した。2人の病理学者によって免疫組織化学的に判定されたタンパク質発現は、上記のシステムにより、陰性(スコア= 1)、弱(2)、中(3)、および強(4)としてスコアリングした。
組織マイクロアレイの作製、デジタル画像の取得、および解析
先に記載したように組織マイクロアレイを作製し、前立腺切除試料から採取した良性前立腺組織からホルモン抵抗性PCAにわたる広範な試料において、タンパク質発現を評価した。本研究には、良性前立腺、限局性PCA、およびホルモン抵抗性PCAからなる3枚の組織マイクロアレイを使用した。組織マイクロアレイは、以前に記載されたように(Kononenら、[1998]、前記;Perronenら[2000]、前記)、手動の組織アレイヤー(Beecher Instruments、メリーランド州シルバースプリング)を用いて構築した。円で囲んだ関心対象の部分の組織コアを、レシピエントアレイブロックへに移行するための標的とした。直径0.6 mm の組織マイクロアレイコアは、コアの中心から中心までそれぞれ0.8 mmの間隔をあけた。BLISS画像処理システム(Bacus Lab、イリノイ州ロンバード)を用いて、組織マイクロアレイ画像を取り込んだ。
統計解析
4件の独立した遺伝子発現研究におけるアネキシンの差次的発現に関連した統計的有意性を調査するため、標準的な方法(Hedgesら、Statistical Methods for Meta-analysis meta-analysis. Orland, Academic Press 1985, pp xxii, 369)により結果を組み合わせた。それぞれの研究では、(限局性前立腺癌と比較して良性組織である2つの群と共に)t統計を計算し、負の対数変換により関連p値を変換した。次にこの値を2倍して合計し、3件の研究における差次的遺伝子発現の集約尺度を得た。この集約尺度に関連した統計的有意性を評価するため、並べ替えに基づく方法を取り入れた(Hedgesら、前記)。すなわち、研究内で組織の種類を並べ替え、並べ替えたデータについての集約尺度を計算した。p値は、集約尺度の並べ替え分布を用いて計算した。次に、3件の研究によるt統計が匹敵するか否かの問題が生じる。
アネキシンタンパク質発現は、各組織マイクロアレイ試料の平均スコアの結果を用いて、各前立腺組織型(すなわち、良性、限局性PCA、およびホルモン抵抗性PCA)について統計的に評価した。すべての対間(例えば、限局性前立腺癌 対 良性)での相違を判定するため、シェッフェの方法(Scheffaeら、前記)を用いて、ポストホック分析を伴うANOVA解析を行った。試験した全事例についての平均発現スコアを、95%の信頼区間を有するエラーバーを用いて図式的に表した。
B. 結果
発現アレイ解析により、PCAの進行に伴ったアネキシンファミリーメンバーの有意な調節不全が明らかになった。アネキシン1、2、4、7、および11のcDNA発現は、限局性ホルモン感受性PCA試料と比較して、ホルモン抵抗性PCA試料において有意に減少しており、それぞれ2.2倍、1.5倍、1.3倍、1.4倍、および1.8倍の減少であった(全p値<0.01)(表3および図33)。アネキシン1および4は、良性試料と比較して限局性PCA試料において、mRNA発現の有意な減少を示した。限局性ホルモン未処置PCAと良性試料との間には、アネキシン2、7、および11の有意な相違は存在しなかった。試験した前立腺試料とアネキシン8および13との間には、cDNAの調節不全は認められなかった。アネキシン6は、限局性PCAと良性試料との間にcDNA発現のわずかな減少を示したが、統計的には有意ではなかった(表3)。
これらのアネキシンファミリーメンバーについてのcDNA発現結果を交差検証するため、遺伝子発現のメタ分析を行った。アネキシンファミリーメンバーのcDNA発現結果を、一連のデータセットにより評価した(Welsh ら、Cancer Res. 61:5974 [2001];Luoら、Cancer Res. 61:4683 [2001];Mageeら、Cancer Res. 61:5692 [2001])。この分析により、個々の研究それぞれについてのアネキシンを評価すると共に、4件の研究にわたった遺伝子発現の有意性を考慮した要約統計を行った。すべての研究がホルモン抵抗性転移性PCAについて行っているわけではないので、メタ分析は、臨床的限局性PCAと良性前立腺組織との間の相違を比較した。メタ分析(表4および図34)により、独立した研究全体にわたって、アネキシン1、2、4、および6が有意に下方制御されていることが示された。アネキシン6は、4件の研究のうち4件で有意なレベルまで下方制御された。アネキシン1は、4件の研究のうち3件で下方制御を示した。アネキシン2および4は2件で下方制御されており、全般的に見れば、メタ分析により有意に過小発現されていると見なされた。アネキシン7は、4件の研究のいずれにおいても、転写産物レベルで有意に過小発現されていないことが見出された。
免疫組織化学法を行い、これらの結果をタンパク質レベルで確認した(表5)。免疫組織化学法により、限局性PCA試料と比較してホルモン抵抗性PCA試料において、アネキシン1、2、4、7、および11についてのタンパク質発現の有意な減少が同定され、それぞれ2.5倍(発現中央値 3.8対1.5)、2.4倍(発現中央値 4対1.7)、3.6倍(発現中央値 4対1.1)、および3.3倍(発現中央値 4対1.1)の減少であった(クラスカル・ワリス検定、全p値<0.05)。試験したアネキシンのいずれにおいても、良性と限局性PCA試料との間に統計的に有意な相違は認められなかった。
(表3)選定したアネキシンの遺伝子発現
Figure 0004251357
*クラスカル・ワリス検定。1、BPH、前立腺肥大症。2、Loc-PCA、限局性前立腺癌。3、Met-PCA、転移性ホルモン抵抗性前立腺癌。PCA/Met率、ホルモン抵抗性PCAに対する限局性PCAの発現の比率。
(表4)アネキシンファミリーメンバーについてのcDNA前立腺遺伝子発現研究のメタ分析
Figure 0004251357
(表5)組織型によるアネキシンについての組織マイクロアレイタンパク質発現
Figure 0004251357
*クラスカル・ワリス検定。1、BPH、良性前立腺肥大症。2、Loc-PCA、限局性前立腺癌。3、Met-PCA、転移性ホルモン抵抗性前立腺癌。
実施例14
CtBPの前立腺癌との関連性
本実施例は、前立腺癌におけるC末端結合タンパク質1および2(CtBP1およびCtBP2)の発現について記載する。マイクロアレイ解析、ウェスタンブロット、免疫組織化学法、および統計解析は、上記の実施例において記載したように行った。
CtBP転写産物は、転移性前立腺癌において上方制御されることが見出された(図38)。組織抽出物を用いて、CtBP1およびCtBP2を認識する抗体を使用し、タンパク質レベルでこの知見を確認した(Sewaltら、Mol. Cell. Biol. 19:777 [1999])。結果を図35に示す。図35は、PCA試料におけるCtBPタンパク質の発現を示す。イムノブロット解析により、選択した前立腺試料の抽出物をCtBPおよびPcGタンパク質の発現について評価した。添加する前に各抽出物においてタンパク質レベルを同等化し、ブロットをポンソーSで染色して、等量を添加したことを確認した。β-チューブリンを対照タンパク質として用いた。
どちらのCtBPも、限局性前立腺癌および良性組織と比較して、転移性前立腺癌において過剰発現されていた。EZH2タンパク質も同様に、限局性前立腺癌または良性前立腺と比較して、転移性前立腺癌において増加していた(図35)。EZH2と共に複合体を形成するPcGタンパク質であるEEDは、非関連タンパク質であるβ-チューブリンと同様に、類似のタンパク質調節不全を示さなかった。したがって、どちらの転写リプレッサーも(CtBPおよびEZH2)、転移性前立腺癌において異所性発現される。
CtBPのインサイチューでの発現を測定するため、前立腺組織マイクロアレイを用いて前立腺組織切片の免疫組織化学法を行った。良性前立腺上皮は、転写リプレッサーとしてのCtBPの役割と一致して、もっぱら核染色のみを示した。臨床的限局性前立腺癌および転移性前立腺癌は、どちらも同様に核染色を示した。転移性前立腺癌のほとんどの症例および限局性前立腺癌の一部の症例では、CtBPの異なる細胞質染色を示した。
図36は前立腺癌におけるCtBPの組織マイクロアレイ解析を示し、前立腺癌の進行中に誤って局在化したことが示唆される。示した前立腺組織および細胞内コンパートメントについての平均CtBPタンパク質発現は、95%の信頼区間を有するエラーバーを用いて要約される。図37は、LNCaP細胞の細胞成分分画を示す。結果から、核と比較して、細胞質においてCtBP1のレベルが増加していることが示される。この細胞株ではCtBP2は弱く発現され、容易には見えない。核で発現されないβ-チューブリンは、対照として提供される。図38は、前立腺癌組織マイクロアレイデータのカプラン・マイヤー解析を示す。結果から、細胞質内CtBPの存在はより不良な臨床転帰と関連し得ることが示される。全患者の平均経過観察期間は1年であった(2ヶ月〜6.5年の範囲)。この経過観察期間を超えて、38%の患者が再発または0.2 ng/mlを上回るPSA上昇を発症した。97人の患者由来の前立腺腫瘍は、CTBPのほぼ均一な核タンパク質発現を示した。細胞質発現は、弱い細胞質染色を示す97症例のうちの85症例(88%)と、中程度から強度のCTBP発現を有する12症例(12%)とに変化し得る。CTBP細胞質染色強度の増加と前立腺切除後のPSA再発または再発性疾患の存在は、相対危険度1.7(Cox回帰分析p=0.034)を有し有意な関連性が存在した。提示のデータは、陰性/弱細胞質CTBP染色および中/強CTBP染色により層別化される転帰のカプラン・マイヤー解析を示す。多変量モデルにおいてグリーソンスコアを考慮する時でさえ、CTBP細胞質発現によって再発が予測され、このことから、CTBPは予後不良の予後予測因子であることが示唆された[グリーソン相対危険度1.4(p=0.005)およびcCTBP相対危険度1.6(p=0.042)]。
CtBPは一酸化窒素合成酵素(NOS)に結合することが示されており、これが核コンパートメントから細胞質コンパートメントにCtBPの局在化を移行すると考えられている(Rieflerら、J. Biol. Chem. 276:48262 [2001])。Weigertらは、ゴルジ膜分裂の誘導におけるCtBPの細胞質内の役割を提唱した(Weigartら、Nature 402:429 [1999])。予備的な免疫組織化学的知見をさらに支持するため、LNCaP(転移性)前立腺癌細胞を分画し、CtBPレベルは核と比較して細胞中により高いことが見出された(図38)。
実施例15
癌マーカーを特徴づける方法
本実施例は、本発明の新規癌マーカーを特徴づけるための例示的方法について記載する。これらの方法を上記実施例において記載した方法と組み合わせて使用し、新規癌マーカーを特徴づけし、新規な診断標的および治療標的を同定する。
A. 前立腺癌試料における、癌マーカーの定量的mRNA転写産物レベルの測定
いくつかの態様において、癌マイクロアレイにおいて過剰発現または過小発現されることが明らかになったマーカーを(マイクロアレイの記載については、例えば実施例1を参照のこと)、リアルタイムPCRにより定量する(Wurmbachら、J. Biol. Chem. 276:47195 [2001])。
好ましい態様において、cDNA試料保存用の100を超える前立腺試料由来のcDNAおよび関連した臨床データが入手可能である(実施例1を参照のこと)。マイクロアレイにおける発現のレベルを、リアルタイムPCRにより得られたレベルと比較する。発現の調節不全を有する遺伝子を同定するため、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションした前立腺癌上皮および良性上皮から作製したcDNAのリアルタイムPCR解析を行う。
B. 誤った局在化をした転写産物の検出
いくつかの態様において、癌では、通常は細胞の核内に存在する癌マーカー(例えば転写リプレッサー)が細胞質(または他の誤った部位)に誤って局在化されるのか否かを判定するため、好ましくは少なくとも20個の良性前立腺試料、20個の前立腺癌試料、および20個の転移性前立腺試料由来の組織抽出物において、マーカーの発現を試験する。良性前立腺細胞株(RWPE)、初代前立腺上皮細胞(Clonetics, Inc.)、ならびにLNCaP、DU145、PC3、DUCaP、およびVCaP細胞を含む前立腺癌細胞のパネルにおけるマーカーの発現も、同様に試験する。前立腺細胞株および組織の全体的な発現を明らかにしたら、マーカーの細胞局在を2つの方法によって判定する。第1の方法では、細胞および組織抽出物を核画分および細胞質ゾル画分に分画する(NE-PER、Pierce-Endogen;Orthら、J. Biol. Chem. 271:16443 [1996])。次に、定量したタンパク質をイムノブロッティングにより解析する。脂肪質ゾルおよび核の癌マーカーの相対的レベルを、デンシトメトリーにより測定する。きれいに分画されていることを確認するため、β-チューブリンおよびPCNA(またはラミンA)に対する抗体を用いて、それぞれ細胞質ゾルおよび核画分を評価する。
第2の方法では、細胞を癌マーカーに対する抗体で免疫染色し、抗ウサギFITC二次抗体を用いて検出する。共焦点顕微鏡(U 0f M Anatomy およびCell Biology Core Facility)を用いて、癌マーカーのインサイチューでの局在化を調べる。
いくつかの態様において、誤って局在した転写産物を含む細胞(例えば転移性症例)中のその遺伝子を配列決定し、誤った局在化を変異についてさらに調査する。
C. 癌マーカーの臨床転帰との関連性
いくつかの好ましい態様において、癌マーカーの発現または誤った局在化と臨床転帰との関連性を調査する。前立腺癌組織抽出物のイムノブロット解析により、まずβ-チューブリンに対する全癌マーカーの比率を測定し、臨床転帰パラメータと関連づける。癌において誤って局在すると思われるマーカー(例えばCtBP)については、次に前立腺癌組織抽出物のイムノブロット解析により核マーカーに対する細胞質マーカーの比率を測定し、臨床転帰パラメータと関連づける。例えば、高い細胞質/核癌マーカー比率により、臨床転帰不良が予測され得ることが考えられる。いくつかの態様において(例えば、癌マーカーが誤って局在化していると考えられる場合)、前立腺癌組織マイクロアレイの免疫組織化学法により、細胞質マーカーの存在が臨床転帰不良と関連しているか否かを判定する。上記実施例において記載したように、組織マイクロアレイを調製して実施する。
簡潔に説明すると、以前に記載したように高密度組織マクロアレイ(TMA)を作製する(Perroneら、前記;Kononenら、前記)。免疫組織染色強度は、尿生殖器病理学者が、無、弱、中、または強としてスコアリングする(または、もう一つの方法として、細胞質および核染色について別々に解析する)。スコアリングは、全体のグリーソンスコア(例えば腫瘍類別)、腫瘍の大きさ、または臨床転帰の知識を伴わないブラインド様式の遠隔病理診断システムを用いて行う(Perroneら、前記)。腫瘍試料は、臨床的限局性前立腺癌、進行性ホルモン抵抗性前立腺癌、および未処置の転移性PCAを有する患者由来である。臨床的限局性前立腺癌の症例は、ミシガン大学前立腺S.P.O.R.E.腫瘍バンクから同定する。患者はすべて、1993年から1998年の間に、術前PSA、直腸内触診、および前立腺針生検によって判断される臨床的限局性前立腺癌の手術を受けた。使用した組織はすべて、治験審査委員会の承認を得て収集する。進行性前立腺腫瘍は、ミシガン大学において、ホルモン抵抗性前立腺癌で死亡した男性に対して行われた一連の迅速23件の剖検から収集する。これらの症例の臨床的および病理学的所見が報告されている(Rubinら、[2000]、前記)。
アレイデータの統計解析を用いて、TMAにおける癌マーカータンパク質測定値を、PSA再発までの期間および生存期間等の臨床転帰と関連づける。この解析は、測定値をこれらの打ち切り反応時間と関連づける生存解析を含む。記述の目的で、カプラン・マイヤー曲線をプロットする。バイオマーカーを生存期間に関連づけるCoxモデルを用いて、一変量解析を行う。さらに、多変量Cox回帰分析を行い、バイオマーカーが、既知の予後マーカーから得られる情報(すなわち、グリーソンスコア、腫瘍の病期、縁状態、術前PSAレベル)以上に任意の予後情報を追加するか否かを試験する。
D. RNA干渉
いくつかの態様において、癌マーカーのRNA干渉により、細胞培養における癌マーカーの役割および治療的な癌処置としての用途に関して調査する(RNA干渉の例については、例えば実施例8を参照のこと)。21ヌクレオチドのRNA(siACE-RNAi)を、製造業者(Dharmacon Research, Inc.)に依頼し化学的に合成する。RNA干渉は、哺乳動物細胞で利用されている(Elbashirら、Nature 411:494 [2001])。各マーカーについて、いくつかのsiRNA二本鎖および対照を設計する。siRNA二本鎖の設計には、Elbashirら(Elbashirら、前記)およびDharmacon Researchによって提供される基準を利用するが、これには、開始コドンの約75塩基下流から開始する工程、アデニン-アデニン二量体を置く工程、G/C含量を約50%に維持する工程、およびESTデータベースに対してBLAST検索を行い1つの遺伝子のみを標的にしていることを確認する工程が含まれる。siRNA二本鎖が機能的であるか否かは比較的経験的な過程であるため、関心対象の各分子について複数(例えば2本)のsiRNA二本鎖を設計する。さらに、2本のsiRNA二本鎖を使用することにより、組み合わせた「ノックダウン」効果が提供され得ると考えられる。対照として、関心対象の各分子について、ヌクレオチドの順番をランダム化した「スクランブル」siRNAを設計する。オリゴヌクレオチドを購入し、脱保護して脱塩する。到着したならば、製造業者の提供する手順により、オリゴヌクレオチドをアニーリングして二本鎖を形成する。
各siRNA二本鎖の有効性を試験するため、説明されているように前立腺細胞株(RWPE、DU145,LnCAP,およびPC3)をオリゴフェクタミン(OLIGOFECTAMINE)試薬でトランスフェクションする(Elbashirら、前期)。それぞれの抗体を用いたイムノブロッティングにより、トランスフェクションから48時間後に細胞を遺伝子サイレンシングについてアッセイする。緩衝液対照、センスsiRNAオリゴのみ、アンチセンスsiRNAオリゴのみ、スクランブルsiRNA二本鎖、および非関連タンパク質に対するsiRNA二本鎖を含む多数の対照が含まれる。1回のトランスフェクション後に有意なサイレンシングが認められない場合には、同業者ら(Breilingら、Nature. 412:51 [2001])によって提案されるように、連続してトランスフェクションを行い、後の時点で(例えば8日後)阻害をモニターする。半減期が長いタンパク質では、このことが必要となり得る。
siRNAの一過性トランスフェクションに加え、哺乳動物細胞においてsiRNAの安定性発現の方法を用いる(Brummelkampら、Science 296:550 [2002])。pSUPERシステムを用いて、癌マーカーを標的とするsiRNAを発現する前立腺癌細胞株を作製する。スクランブルsiRNAを対照として用いる。この細胞株により、二本鎖を一過性に使用した場合には扱いにくいと思われる、癌マーカーの下流の特徴づけが容易となる。特定の癌マーカーの阻害により細胞に対する毒性が見出される場合には、マーカーに対するsiRNAを含むpSUPERカセットを誘導性のベクターシステム(例えばTetオン/オフ)にクローニングする。
E. 変異体の作製
本発明の癌マーカーの機能を研究するため、癌マーカーの変異体を真核生物発現ベクター内に作製する。mycエピトープタグを付加した癌マーカー変異体を、pcDNA3およびpcDNA3-ER(修飾したエストロゲン受容体リガンド結合ドメイン)双方の中に作製する。ER構築物の場合には、修飾したERを伴うインフレームの融合タンパク質がベクターによって産生されるため、転写後誘導性ベクターを生じる(Littlewoodら、Nucleic Acids Res. 23:686 [1995])。ERリガンドドメインは変異してあり、内因性エストロゲンには結合できないが4-ヒドロキシタモキシフェンでは活性化され得る((Littlewoodら、前記)。ER融合タンパク質は、おそらくhsp90等のタンパク質の結合が原因で、リガンド非存在下では不活性である。外因的に添加した4-ヒドロキシタモキシフェンの存在下では、ER融合体は遊離される。誘導性ベクターシステムを利用して、「毒性」または増殖阻害型の癌マーカーを発現する細胞株もやはり単離され得る。
癌マーカーの機能ドメインを含む、様々なN末端およびC末端欠失変異体を作製する(例えば、CtBPのPXDLS、脱水素酵素、およびPDZ結合ドメイン;Chinnadurai、Mol. Cell. 9:213 [2002])。本発明の癌マーカーのいくつかの変異型は、内因性癌マーカー機能のドミナントネガティブ阻害剤として働くことが企図される。エピトープタグを付加した癌マーカーおよび変異体の発現は、(FUGENEを用いた)ヒト胎児腎細胞の一過性トランスフェクションおよびその後ウェスタンブロッティングにより評価する。
F. 癌マーカーおよび変異体を発現する安定性細胞株の樹立
いくつかの態様において、下流の解析に用いるため、本発明の癌マーカーを安定的に発現する細胞株を作製する。FUGENEを用いて、上記のベクターおよび適切なG418選択により、癌マーカーおよび融合体または変異体で前立腺細胞株(RWPE、DU145、LnCAP、およびPC3)を一過性にトランスフェクションする。内因性の癌マーカータンパク質が様々なレベルで発現する前立腺細胞株を用いる。個々のクローンおよびプールした集団のどちらも得て、癌マーカーおよび変異体の発現をエピトープタグに対するイムノブロッティングにより評価する。同様に誘導性システムを使用し、毒性型の癌マーカーまたは変異体を発現するクローンを単離することができる。
G. 細胞増殖およびアポトーシス研究
いくつかの態様において、前立腺細胞増殖における癌マーカー発現の役割を、1. RNA干渉、2. 癌マーカーおよび潜在的なドミナントネガティブ変異体の一過性トランスフェクション、ならびに3. 癌マーカーおよび変異体の安定性トランスフェクタントの比較を含む多面的方法を用いて調査する。これらの方法を用いて、以下の予測を試験する:1. 癌マーカーの阻害が細胞増殖を阻止するか否か、および2. 癌マーカーの過剰発現が細胞増殖を増強するか否か。
細胞増殖は、[3H]-チミジン取り込みの非放射性代替でありMTTアッセイ法に類似したWST-1試薬(Roche, Inc)の使用による、培養液の時間経過を追った細胞計測(Coulter counter)により評価する。以前に記載されているように(Jacobsら、Nature. 397:164 [1999])、DNA標識色素ブロモデオキシウリジン(BrdU)の取り込み率も測定する。siRNAまたはドミナントネガティブ阻害剤による誘導により見込まれる細胞周期の停止は、従来のフローサイトメトリー法により測定する。4-ヒドロキシタモキシフェンに依存した様式で癌マーカーおよび変異体を「活性化する」安定性細胞株を用いることにより、高度に制御されたインビトロシステムにおいて細胞増殖および細胞周期の変化をモニターする。癌マーカーの過剰発現または阻害によりアポトーシス経路が活性化されないことを確認するため、核のヨウ化プロピジウム染色、TUNELアッセイ法、およびカスパーゼ活性化を含むいくつかのアッセイを行う。
癌マーカーが前立腺細胞における細胞増殖の制御因子であることが見出されたならば、いかにして細胞周期機構の成分が癌マーカーによって調節されるかを解決する研究を設計する。したがって、前立腺細胞の細胞周期機構に及ぼす癌マーカーを介した影響を研究するため、癌マーカーの機能を上記の手段(すなわち、siRNA、ドミナントネガティブ阻害等)を用いて調節し、サイクリン(サイクリンD1、E、A)、サイクリン依存性キナーゼ(cdk2、cdk4、cdk6)、およびサイクリン依存性キナーゼ阻害剤(p21CIP1、p27KIP1、p45SKP2、p16INK4)の発現レベル(転写物およびタンパク質)をモニターする。
H. 細胞接着および浸潤アッセイ法
癌マーカーが細胞接着を変化させると考えられる場合には(例えば、E-カドヘリン等の上皮遺伝子プログラムの転写抑制)、上記の方法を用いて、癌マーカーの過剰発現により細胞接着の増加または減少が起こるか否かを調査する。細胞外基質成分、ヒト骨髄内皮(HBME)、およびヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)への接着を試験する。癌マーカーを、PCA浸潤を調節する能力についてもさらに試験する。
これらの研究では、周知の方法を用いる(Cooperら、Clin. Cancer Res. 6:4839 [2000])。簡潔に説明すると、スナップ切り離し型の96ウェル組織培養プレートを、粗製の骨基質および腎基質でコーティングする。無菌条件下でプレートを室温で一晩インキュベートし、使用するまで4℃で保存する。製造業者(Collaborative Biomedical Products、マサチューセッツ州ベッドフォード)の説明に従い、様々な濃度の細胞外基質成分(例えば、ヒトI型コラーゲン、ヒトフィブロネクチン、マウスラミニン1)およびヒトトランスフェリンで、同様にアッセイプレートをコーティングする。内皮細胞(HBMEまたはHUVEC)を900細胞/μlの濃度で骨基質またはプラスチック基層上に播種し、コンフルエントになるまで増殖させる。ハンクス平行塩類溶液中の0.5 mM EDTAで15〜20分間処理することにより、腫瘍細胞をフラスコから取り除く。EDTA溶液を除去し、細胞を接着培地(例えば、10μCi51 Crナトリウム塩(NEN、マサチューセッツ州ボストン)を添加した1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む最小必須培地(MEM))に再懸濁して37℃で1時間インキュベートする。次に同位元素を含まない培地で細胞を3回洗浄し、1 x 105個の放射性標識腫瘍細胞を接着培地に再懸濁し、内皮細胞のコンフルエントな層上に重層して37℃で30分間インキュベートする。さらに、放射性標識腫瘍細胞を粗製骨基質上に添加する。再度プレートをリン酸緩衝食塩水で3回洗浄し、ガンマカウンター上で個々のウェルをカウントすることにより接着を測定する。細胞接着は、100に設定した対照(プラスチック上のPC-3細胞)の接着と比較して報告される。
細胞浸潤アッセイは、古典的なボイデンチャンバーアッセイ法を用いて行う。癌マーカーを阻害および過剰発現する方法をどちらも評価する。以前の報告により、ボイデンチャンバーシステムにおける細胞遊走の増加とインビボにおける増加した浸潤の性質が関連づけられている(Klemkeら、J Cell Biol. 140:61 [1998])。市販の24ウェル浸潤チャンバーを使用する(例えば、BD bioscience、Chemicon International)。
I. 前立腺癌細胞における転写抑制
いくつかの態様において、前立腺癌における癌マーカーの遺伝子サイレンシングに及ぼす影響を評価する。遺伝子サイレンシングは、いくつかの方法でアッセイする。第一には、前立腺細胞株(RWPE、DU145、LnCAP、およびPC3)において、癌マーカーおよび変異体の一過性トランスフェクションによって誘導される遺伝子発現変化を、FUGENEを用いてアッセイする。トランスフェクションしてから12〜48時間後に細胞を回収し、一部を処理してイムノブロッティングによりトランスフェクタントの発現を確認する。次に、ベクターをトランスフェクションした細胞を参照試料として使用し、トランスフェクションした細胞由来の全RNAを20K cDNAマイクロアレイで評価する。
一過性トランスフェクションに加えて、癌マーカーおよび癌マーカー変異体を過剰発現する安定性細胞株を作製する。所与の癌マーカーにより抑制される遺伝子または遺伝子群を同定するため、癌マーカーおよび癌マーカー変異体を発現する細胞株の遺伝子発現パターンを対応するベクター対応の対照と比較する。本発明は、特定の機構に限定されない。実際に、機序の理解は本発明の実施に必要ではない。それにもかかわらず、所与の癌マーカーにより抑制されると同定される遺伝子は、癌マーカーのノックダウンにより(例えばsiRNA阻害により)増加する(脱抑制)と考えられる。
上記明細書で記載したすべての出版物および特許は、参照として本明細書に組み入れられる。本発明の範囲および精神に逸脱することなく、本発明で記載した方法および系に様々な修正および変更が行われ得ることは当業者に明白であろう。本発明を特定の好ましい態様に関して説明したが、請求する本発明はそのような特定の態様に過度に限定されるべきではないことを理解すべきである。実際に、本発明を実施するための関連分野の技術者には自明である、上記形態の様々な修正は以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
前立腺癌試料の遺伝子発現プロファイルを示す。 図1aは、試料の同系性(relatedness)を説明する樹状図を示す。図1bは、参照としての正常な隣接前立腺プールと比較した、試料群のクラスター図を示す。図1cは、市販の前立腺プール参照と比較した、試料群のクラスター図を示す。 前立腺癌において差次的に発現された遺伝子の機能クラスターを示す。 ノーザンブロット解析および免疫組織化学により決定された前立腺癌試料におけるヘプシン発現を示す。図3aは、ヒトヘプシン(上側)およびGAPDHによる標準化(下側)のノーザンブロット分析を示す。NATは、正常な隣接前立腺組織を示し、およびPCAは前立腺癌を示す。図3bは、ヘプシン分析に使用した組織マイクロアレイを示す。図3cは、組織型別のヘプシンタンパク質発現のヒストグラムを示す。良性前立腺肥大(BPH)。高度の前立腺上皮内腫瘍(HG-PIN)。限局性前立腺癌(PCA)。ホルモン療法抵抗性前立腺癌(MET)。図3dは、Kaplan Meier分析を示す。 ノーザンブロット分析および免疫組織化学により決定した、前立腺癌試料におけるpim-1発現を示す。図4aは、810種の組織マイクロアレイ要素から評価した組織型別のpim-1タンパク質発現のヒストグラムを示す。高度の前立腺上皮内腫瘍(HG-PIN)。限局性前立腺癌(PCA)。図4bは、Kaplan-Meier分析を示す。上側の線は、強力なPim-1染色を示す患者を表わしている。下側の線は、無/弱いPim-1発現を伴う患者を表わしている。 正常な隣接前立腺組織および正常な前立腺組織参照との遺伝子発現プロファイルの比較を示す。 前立腺癌関連遺伝子の焦点性(focused)クラスターを示す。 NAPおよびCPプールについてのコンピュータによるt-統計量解析を基にした遺伝子選択に関するデータを示す。 前立腺癌において差次的に発現された遺伝子の概略を示す。 本発明の例証的遺伝子に関する例証的寄託番号および配列番号を示す。 本発明のいくつかの遺伝子の配列例を提供する。 本発明の一部の態様を利用した前立腺癌におけるAMACRの発見および特徴決定の概略である。 前立腺癌におけるAMACR発現のDNA微量分析を説明している。 前立腺癌におけるAMACR転写産物およびタンパク質レベルの分析を説明している。 前立腺癌組織マイクロアレイを使用する、AMACRタンパク質発現の分析を説明する。 いくつかの試料におけるAMACRの関連遺伝子発現を示す。 AMACRタンパク質発現PCAを示す。図19Aは、限局性ホルモンナイーブPCAにおけるAMACRタンパク質発現を示す。図19Bは、ナイーブリンパ節転移における強力なAMACR発現を示している。エラーバーは、原発性ナイーブ前立腺癌および対応するリンパ節転移の平均発現の95%CIを表わしている。 AMACR発現に対するホルモンの作用を示している。図17Aは、抗アンドロゲン療法に起因した強力なホルモン作用を表わしているPCAを示す。図17Bは、様々な前立腺細胞株におけるベースラインAMACR発現を表わしているウェスタンブロット分析(左側)、ならびにアンドロゲンまたは抗アンドロゲンにより24時間および48時間処理後のAMACRおよびPSA発現に関するLNCaP細胞のウェスタンブロット分析(右側)を示す。 複数の腫瘍におけるAMACRの過剰発現を示す。AMACRタンパク質発現は、多腫瘍および乳癌組織マイクロアレイ上での免疫組織化学により評価した。陽性染色(中程度および強度の染色強度)を示す症例の割合を、Y-軸上にまとめた。左側棒は陰性または弱陽性染色を示し、および右側棒は中程度および強度の陽性染色を表わしている。 前立腺癌におけるAMACRのレーザー捕獲マイクロダイセクション(LCM)およびRT-PCR増幅の結果を示している。LCMは、純粋な前立腺癌および良性腺を単離するために使用し、ならびに2例の根治的前立腺切除術におけるAMACR遺伝子発現は、RT-PCRにより特徴決定した。構成的に発現された遺伝子であるGAPDHを、投入mRNAの定量対照として使用した。AMACR発現は、良性腺においてはわずかに検出可能であり、前立腺癌においては上昇する。 転移性前立腺癌におけるEZH2の過剰発現の同定および確証を説明している。図20aは、臨床的限局性前立腺癌(PCA)から転移性前立腺癌(MET)を分子上識別する遺伝子を描いているクラスター図を示す。図20bは、転移性前立腺癌におけるEZH2のアップレギュレーションを明らかにしている前立腺癌のDNAマイクロアレイ分析を示している。図20cは、前立腺組織および細胞株のEZH2転写産物のRT-PCR分析を示している。図20dは、前立腺癌におけるEZH2タンパク質の増加した発現を示している。 EZH2タンパク質レベルの、前立腺癌の致命的進行および侵襲性との相関を示している。図21aは、EZH2発現の組織マイクロアレイ分析を示している。示された前立腺組織に関する平均EZH2タンパク質発現は、95%信頼区間のエラーバーを用いてまとめている。図21bは、Kaplan-Meier分析を示し、これは高いEZH2発現(中等度/強度染色)を示している臨床的限局性前立腺癌を有する患者は、前立腺切除術後により大きい前立腺癌再発のリスクがあることを示している(対数順位検定、p=0.03)。 EZH2の前立腺細胞増殖における役割を示している。図22aは、前立腺細胞中のEZH2配列を標的化するsiRNA二重鎖を用いる、RNA干渉のイムノブロット分析を示している。図22bは、EZH2のRNA干渉は、細胞計数アッセイ法により評価されるような細胞増殖を減少させることを示している。図22cは、EZH2のRNA干渉が、WSTアッセイにより評価されるような細胞増殖を阻害することを示している。図22dは、EZH2のRNA干渉が、前立腺細胞においてG2/M抵抗を誘導することを示している。 前立腺細胞における転写リプレッサーとしてのEZH2機能を示している。図23aは、トランスフェクション/トランスクリプトーム分析において使用したEZH2構築体の概略図を示す。ER、エストロゲン受容体の修飾されたリガンド結合。H-1およびH-2、EZH2とE(z)との間の類似性を共有している、相同ドメイン1および2。CYS、システイン-リッチドメイン。SET、SETドメイン。TAG、myc-エピトープタグ。NLS、核局在化シグナル。図23bは、aにおいて使用したEZH2構築体の発現の確証を示している。抗myc抗体を使用した。図23cは、EZH2の過剰発現により有意に抑制された遺伝子のクラスター図を示している。図23dは、EZH2 SETトランスフェクションされた細胞と比べた、EZH2トランスフェクションされた細胞の遺伝子発現プロファイルのSAM分析を示している。図23eは、トランスクリプトーム分析により解明されたEZH2の可能性のある機能性相互作用のモデルを示し、先に報告された相互作用の状況で配置している。+、誘導。-、抑制。 PCA細胞株におけるAMACRの検出を示している。 マイクロアレイデータの定量による、血清中のAMACRタンパク質の検出を示している。 陰性または陽性PSA抗原のいずれかを有する患者からの血清のイムノブロット分析を示している。 膀胱癌患者(女性)または膀胱癌および増大したPSA患者(男性)からの尿試料中のAMACRの存在のイムノブロット分析を示している タンパク質マイクロアレイ分析による体液性反応の代表的データを示している。 AMACRの体液性反応のイムノブロット分析を示している。図29aは、AMACRに対する体液性反応のイムノブロット分析を示している。図29bは、体液性反応が阻止された対照実験を示している。 前立腺癌におけるGP73転写産物レベルを示している。図30aは、マイクロアレイ分析後の個体試料中のGP73レベルを示している。図30bは、試料の種類に応じて群別しおよび平均化した76個の前立腺試料からのDNAマイクロアレイ分析により決定されたGP73転写産物の結果を示している。 前立腺癌においてGP73タンパク質が、アップレギュレーションされたことを示している。図31aは、前立腺癌におけるGP73タンパク質のウェスタンブロット分析を示している。図31bは、ゴルジ常在性タンパク質Golgin97のイムノブロット分析を示している。 正常および前立腺癌の上皮細胞のイムノブロット分析を示している。 選択したアネキシン遺伝子ファミリーメンバーのcDNA発現を示している。 4種の前立腺癌プロファイリング試験を通じてのアネキシンファミリー遺伝子発現のヒートマップ表示を示している。転写レベルでの過剰および過小発現は、各々、赤色および緑色の影により表わしている。灰色の影は、不充分なデータが得られたことを示している。各四角は、個別の組織試料を表わしている。 PCA標本中のCtBPタンパク質の発現を示している。 前立腺癌進行の間の誤局在を示唆している、前立腺癌におけるCtBPの組織マイクロアレイ分析を示している。 LNCaP細胞の細胞下画分を示している。 前立腺癌組織マイクロアレイデータのKaplan-Meier分析を示している。

Claims (6)

  1. 対象の前立腺組織を特徴決定する方法であり、
    a)対象より得られた前立腺組織試料を提供する工程であって、該試料が術後の腫瘍組織試料である工程;および
    b)該試料中のヘプシンポリペプチドの発現の有無を検出し、該検出に基づき前立腺特異的抗原再上昇のリスクを同定する該前立腺組織試料を特徴決定する工程
    を含む方法。
  2. ヘプシンポリペプチドの存在の検出が、該ヘプシンポリペプチドを、該ヘプシンポリペプチドに特異的な抗体に曝す工程、および該抗体の該ヘプシンポリペプチドへの結合を検出する工程を含む、請求項1記載の方法。
  3. 対象がヒト対象を含む、請求項1記載の方法。
  4. 試料が腫瘍組織を含む、請求項1記載の方法。
  5. 前立腺組織の特徴決定が、前立腺組織中の前立腺癌の病期を確定する工程を含む、請求項1記載の方法。
  6. 病期が、高度の前立腺上皮内腫瘍、良性前立腺肥大、前立腺癌、および転移性前立腺癌からなる群より選択される、請求項5記載の方法。
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