JP4249837B2 - 植物繊維セメント成形体の製造方法 - Google Patents

植物繊維セメント成形体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物繊維を補強材として使用する植物繊維セメント成形体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
植物繊維セメント成形体、例えば植物繊維セメント板は、通常木材をフレーク、木毛、木繊維等に加工した木質系繊維または竹繊維と、各種セメント、水とを混練し、この混練物を成形し、次いで、セメントを養生、硬化せしめることにより製造されている。しかしながら、植物繊維中には可溶性糖類あるいは可溶性樹脂類等が含まれており、これらはセメントの硬化阻害物質である。したがって、植物繊維セメント成形体の製造に際しては、セメントの硬化促進剤を添加しセメントを迅速に硬化させることによりセメント硬化阻害物質の悪影響を防止する方法(特開昭51−26930号公報、特開昭51−151722号公報、特開昭60−118658号公報)、または植物原料に対して薬品処理等を行うことによりセメント硬化阻害物質の溶出を防止したりセメント硬化阻害物質を予め除去したりする方法(特開昭55−164054号公報、特公昭61−4784号公報、特公昭61−5422号公報、特開昭50−127925号公報、特公平5−65455号公報、特開平8−2954号公報)が用いられている。しかし前者については、セメントの反応速度を速めてしまうため、製造工程における時間上の制約が厳しく、作業工程を迅速に行う必要があるとともに、一般的に使用されている硬化促進剤は塩化物であり、例えば成形体の用途が建材の場合、施工に用いる留め付け用ネジ等の金属部位、および成形体製造時における混練機械や成形用鉄板等の金属部分を錆びさせる恐れがある。また後者については、処理が部分的に不完全となる場合があり、セメントの硬化不良を招いたり、処理コストが高い等の問題点があった。
【0003】
現在、植物繊維セメント成形体の製造は、一般的に主たる原料として少なくとも植物繊維材料、セメントおよび水を混合し、混合した原料を型板上に成形し、この成形体と型板との複合体を多段に積み重ねて加圧したまま締結し、締結した状態で前記成形体のハンドリングが可能となるまで養生し、次いで締結を解除して前記成形体と前記型板とを分離 (以下脱板という)する工程を有している。なお、脱板するには成形体が自己保型性を有することとハンドリングに耐え得る強度を有することが必要である。また、成形した原料を多段に積み重ねる理由は、通常は[成形体の1枚当たりの成形に要する時間<<加圧・締結1サイクル当たりに要する時間]であるため、効率よく成形体を製造するためには、[成形体1枚当たりの成形に要する時間×積み重ね枚数≧加圧・締結1サイクル当たりに要する時間]とする必要があるためである。また、1枚ごとの締結あるいは少ない積み重ね枚数での締結は、締結用の器具を極めて多数必要とすることから非現実的である。
しかしながら、多段に積み重ねる作業に時間がかかると、早い時間に型板上に成形した材料のセメント硬化反応が加圧締結する前に進行し、製造された植物繊維セメント成形体の強度が低くなる(加圧締結した状態でセメントを水和反応させることによって植物繊維セメント成形体の強度がはじめて発現する)。また多段に積み重ねる作業時に何らかのトラブルがあって工程が中断した場合など、一層作業時間が増大することになる。とくに従来提案された、セメントの硬化促進剤を用いた場合は、多段に積み重ねる作業に時間がかかると、加圧締結前にセメント硬化反応が進行し、製造された成形体の強度不足が顕著となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、植物繊維セメント成形体の製造において、型板上に設置した原料のセメント硬化反応が加圧締結する前に進行しにくく且つ締結を完了した後脱板工程を行うまでに要する養生時間が短縮され、該成形体の製造に係わる装置の金属部分を腐食することがなく、しかも低コストである植物繊維セメント成形体の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、上述の従来の課題を解決することができた。
すなわち本発明は、少なくとも植物繊維材料、セメントおよび水を含む原料を混合する工程と、混合した原料を型板上に成形する工程と、この成形体と型板との複合体を多段に積み重ねる工程と、多段に積み重ねた積層状態の前記複合体を加圧するとともに加圧した状態で締結する工程と、締結した状態で前記成形体のハンドリングが可能となるまで養生する工程と、締結を解除して前記成形体と前記型板とを分離する工程とを含む植物繊維セメント成形体の製造方法において、前記の原料混合工程時固形分原料に対して外割で0.5〜10重量%の硝酸マグネシウム、硝酸第二鉄、硝酸ニッケル及び硝酸アルミニウムからなる群から選択される硝酸塩またはこれら硝酸塩と硝酸カルシウムまたは硝酸カリウムとを水溶液として他の成分に均一に噴霧することにより添加するとともに、前記養生工程において成形体に加熱処理を施すことを特徴とする植物繊維セメント成形体の製造方法を提供するものである。
また本発明は、加熱処理が、50℃以上100℃未満の温度で行われる前記の製造方法を提供するものである。
さらに本発明は、加熱処理が、60〜80℃の温度で行われる前記の製造方法を提供するものである。
さらにまた本発明は、加熱処理が、蒸気養生である前記の製造方法を提供するものである。
また本発明は、加熱処理の前に普通養生を行う前記の製造方法を提供するものである。
さらに本発明は、型板と分離して成形体を普通養生により二次養生する前記の製造方法を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は、植物繊維セメント成形体の強度発現の障害となる、植物繊維材料中のセメント硬化阻害物質によるセメントの水和反応の遅延を、硝酸塩を添加することにより抑制するとともに、養生工程において成形体を加熱処理に施して、セメント硬化反応が主に加圧締結後に進行するようにし、これによって加圧締結を完了した後脱板工程を行うまでに要する養生時間を短縮するものである。
【0007】
以下、本発明の植物繊維セメント成形体をさらに説明する。
まず、本明細書に記載する植物繊維材料とは、針葉樹および広葉樹等で代表される木質系繊維や竹繊維、砂糖黍繊維、椰子の木繊維等を総称するものである。また、植物繊維材料は、ニードル状、チップ状、薄片状、ストランド状、棒状、ファイバー状、フレーク状等の形状を有する上記繊維を総称するものである。さらに、植物繊維材料は、リグノセルロースを主成分とする麻繊維、バガス等の材料をも包含する。なお、これらの植物繊維材料の形状は特に限定されるものではないが、例えば平均繊維長が10〜50mm、平均繊維径あるいは平均繊維厚みが0.5mm以下であるものを使用することが好ましい。さらに、植物繊維材料は上記繊維の2種以上の混合物であってもよい。
【0008】
本発明の植物繊維セメント成形体において、上記植物繊維材料の添加割合(絶乾重量)は、10〜45重量%、好ましくは25〜35重量%の範囲内である。なお、前記重量%は、植物繊維材料(絶乾重量)、下記で説明するセメントおよび必要に応じて用いる混合材(剤)(以下、固形分原料という)の乾燥合計重量に対する値である。
ここで、該添加割合が10重量%未満であると、植物繊維材料による補強効果が低いため、得られた植物繊維セメント成形体の曲げ強度が低くなるために好ましくなく、また、該添加割合が45重量%を超えると、繊維の表面全体に対してセメントが均一に被覆されなくなり強度低下を生じることから好ましくない。
【0009】
本発明の植物繊維セメント成形体に使用可能なセメントとしては、例えばポルトランドセメント、あるいはポルトランドセメントに高炉スラグを混合した高炉セメント、フライアッシュを混合したフライアッシュセメント、火山灰、シリカフューム、白土等のシリカ物質を混合したシリカセメント、アルミナセメント等を例示することができる。
【0010】
本発明の植物繊維セメント成形体において、上記セメントの添加割合は、固形分原料に対し50重量%以上が必要であり、好ましくは65〜75重量%の範囲内である。50重量%を下回るとマトリックスを構成するセメントの絶対量が不足し、強度低下の原因となる。なお、本発明では少なくとも植物繊維材料を固形分原料に対し10重量%以上含むため、セメントの添加割合の上限は90重量%となる。
【0011】
また、本発明において水は、固形分原料に対し20〜60重量%の範囲が望ましい。なお、植物繊維材料に含まれている水分は、この配合水として考慮される。20重量%未満であると、セメントの水和反応に必要な水分が不足する危険がり、60重量%を超えると加圧時に水分が成形体から絞り出され、その際セメント等が移動し、または植物繊維の表面上に付着していたセメントが脱離し、不均一な成形体となる危険があることから好ましくない。
【0012】
本発明の植物繊維セメント成形体に添加剤として添加する硝酸塩は、植物繊維材料中に含まれるセメント硬化阻害物質によるセメントの水和反応の遅延を抑制するために作用するものである。ここで、硝酸塩の中でも、金属イオンの種類により、水和反応の回復効果は大きく異なり、回復効果が高い順に金属イオンの種類を列挙すると、Mg2+、Fe3+、Ni2+>Al3+>Ca2+>K+である。従って、本発明に添加剤として用いられる硝酸塩は、硝酸マグネシウム[Mg(NO3)2]、硝酸第二鉄[Fe(NO3)3]、硝酸ニッケル[Ni(NO3)3]、硝酸アルミニウム[Al(NO3)3]等が好ましく、硝酸マグネシウム、硝酸第二鉄、硝酸ニッケルが特に好ましい。これら硝酸塩の添加量は固形分原料に対して外割で0.5〜10重量%、好ましくは4〜10重量%の範囲内である。
【0013】
また、上記硝酸塩以外にも、硝酸カルシウム、硝酸カリウム等も使用可能であるが、これらは先に記載した硝酸塩に比べてセメント硬化阻害物質によるセメントの水和反応の遅延を抑制する効果が低いため、添加割合を増加する必要あるいは上記した抑制効果が高い硝酸塩と組み合わせて用いる必要がある。即ち、これらの硝酸塩を添加する場合、これら硝酸塩の添加量は固形分原料に対して外割で0.5〜10重量%、好ましくは7〜10重量%の範囲内である。
【0014】
なお、硝酸塩の添加割合が0.5重量%未満であると、セメント硬化阻害物質によるセメントの水和反応の遅延を抑制させるには不十分であり、また、該添加割合が10重量%を超えても効果の発現が飽和し原料コストの上昇を招くだけであるから好ましくない。
【0015】
上述の硝酸塩は、植物繊維材料、セメントおよび水を混合する際に、添加することができる。この際、硝酸塩はそのまま添加してもよいが、あるいは予め水に溶解した水溶液の形態で添加することもでき、水溶液の形態で添加することが好ましい。すなわち、硝酸塩の添加は、セメント並びに任意成分である他の粉末成分と予め粉末形態で混合することによって行ってもよいが、硝酸塩は水和水を含有しているものが多いため、予め添加する水に完全且つ均一に溶解し、得られた水溶液を他の成分に均一に噴霧することにより添加することがより効果的である。
【0016】
さらに、本発明の植物繊維セメント成形体には、上記必須成分に加えて、必要に応じて下記に記載する物質を混合材(剤)として植物繊維セメント成形体の物性に影響を及ぼさない範囲で添加することができる:
(1)マイカ等の板状結晶;
(2)ワラストナイト等の針状結晶;
(3)シリカフューム、珪藻土、フライアッシュ等の無機質微粉末;
(4)炭酸カルシウム、パーライト、シラスバルーン、スチロール等の無機質あるいは有機質増量材;
(5)ベントナイト、カオリン、バーミキュライト等の粘土鉱物;
(6)パリゴルスカイト、セピオライト等の繊維状鉱物;
(7)ゼオライト等の多孔質鉱物粉末;
(8)有機合成繊維、ガラス繊維、パルプ繊維、金属繊維等の補強用繊維;
(9)合成樹脂エマルジョン;
(10)着色剤、防水剤等の添加物。
【0017】
上記(1)〜(8)の成分については、それらの合計量が固形分原料に対し35重量%以内の範囲内で使用することができる。また、(9)の成分については、固形分原料に対し10重量%以内で使用することが好ましい。さらに、(10)の成分については、それぞれ固形分原料に対し5重量%以内の量で添加することができる。
【0018】
本発明の植物繊維セメント成形体は、上述の植物繊維材料、セメント、硝酸塩および水並びに必要に応じて他の成分を混合し、得られた混練物を適当な形状の型板上に、例えばマット状としてプレス等により成形し、クランプ等により加圧締結し、次に、セメントの硬化により成形体のハンドリングが可能となるまで養生し、クランプから成形体を取り出し、脱板することにより製造することができる。
本発明においては、前記養生工程において成形体を加熱処理に施すことも特徴の一つである。この加熱処理によって、セメント硬化反応が迅速に進行し、脱板までの時間を短縮することができる。
本発明でいう加熱処理とは、好ましくは50℃以上100℃未満の温度で行われ、さらに好ましくは60〜80℃の温度かよい。加熱処理は、成形体の温度を適切に上昇させることができれば、その手段は問わないが、例えば蒸気養生によって行えば加熱処理中に成形体中に含まれる水分が蒸発せず、セメントの反応不良を生じないため好適である。
なお、加熱処理を行うと、植物繊維に含まれる可溶性糖類あるいは可溶性樹脂類等のセメント硬化阻害物質が溶出しやすくなるので、成形体を加圧締結した後、一定時間、例えば1時間以上普通養生し、硝酸塩によって溶出した阻害物質の影響をある程度抑制してから加熱処理を施せば、加圧締結後のセメント硬化反応が一層迅速に進行して好ましいものである。なおここで言う普通養生とは、雰囲気温度が常温(室温)においてセメントを水和反応させ成形体を硬化させる養生を意味する。普通養生を長時間行っても得られる成形体の物性には何も悪影響はないが、加圧締結終了後脱板までの時間を短くするという本発明の目的を考慮すると8時間以内が望ましい。
また、型板と分離した成形体を普通養生により二次養生すれば、得られる植物繊維セメント成形体の強度が増加し好ましい。
【0019】
【作用】
植物繊維セメント成形体の製造に際して、植物繊維材料中から原料混合物中に溶出したセメント硬化阻害物質がセメントの水和反応を遅延させるメカニズムとして、各種の仮説が提案されているが、セメント硬化阻害物質がセメント中のカルシウムイオンと錯体を形成して錯塩となり、未水和セメント粒子表面を覆うため、水酸化カルシウム結晶の析出が抑制され、それによってセメントの水和反応に遅延を来し、凝結、硬化が遅れると言われている。そこで、原料混合物に硝酸塩を添加することによって、金属イオンが水酸化物となる際に液相に存在するセメント硬化阻害物質を共沈させ、それによって液相部分のセメント硬化阻害物質の濃度が低下し、セメントに吸着していたセメント硬化阻害物質が離脱して液相へ移動するものと考えられる。このようにして硝酸塩の添加により、セメントに吸着していたセメント硬化阻害物質の層を不安定化することで、セメント硬化阻害物質による水和反応の遅延を抑制し、それによってセメントの硬化阻害のない高強度の植物繊維セメント成形体を提供することができるものと思料される。
そして養生工程で成形体を加熱して刺激すれば、セメントの硬化反応が迅速に進行するようになり、脱板までの時間が短縮され、生産性が高まることになる。図面を用いてさらに説明する。図1は、本発明において植物繊維セメント成形体の製造工程の時間経過と、セメント硬化反応の進行度合との関係を説明するための図である。実線Aは、本発明の製造方法に係る曲線である。上記のように、型板上に、原料混合物を例えばマット状により成形し、多段に積み重ねてクランプ等により加圧締結するまではセメントの硬化反応の進行は望ましくない。本発明によれば、原料混合物をマット状により成形し、加圧締結するまではセメント硬化反応はそれほど迅速には進行しない。これは、植物原料に含まれるセメント硬化阻害物質と硝酸塩との影響を同時に受けた場合のセメントの反応の特徴である。ところが、所望の時点、すなわち多段に積み重ねた成形体の加圧締結完了後において、成形体を加熱処理に施すことにより、セメント硬化反応は迅速に進行し、脱板が短時間で可能になる。そして例えば2週間後には繊維補強セメント硬化体として必要十分の強度が得られる。また積み込み時の上下間の強度差もほとんど認められない。これに対し、破線Bは、従来のセメントの硬化促進剤を用いた例の曲線である。破線Bでは、原料混合開始時からセメントの硬化反応が著しく速く進行してしまい、加圧締結してももはや成形体の所望の強度が得られない危険がある。
このように本発明によれば、硝酸塩の添加と、養生工程の加熱処理との組み合わせによって、従来技術の課題を一気に解決できるものである。
【0020】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明する。植物繊維の原料としては、セメント硬化阻害物質含有量が多いことで知られている、竹材料を使用した。
実施例1
竹原料の生長方向に長さ約200mm、幅約30mmに切断したタイ産竹原料(PAITONG DHAM)をハンマークラッシャー(有限会社旭産業社製)を用いて長さ5〜60mm(平均繊維長:15mm)、径0.1〜3.0mm(平均繊維径:0.45mm)に繊維化した。この時、得られた竹繊維の含水率は67重量%であった。ここで、本明細書に記載する植物繊維材料の含水率は下記のように定義されたものである。
含水率(重量%)=
(水分を含んだ植物繊維材料の重量−絶乾状態の植物繊維材料の重量)/絶乾状態の植物繊維材料の重量×100
【0021】
次に、該竹繊維、普通ポルトランドセメントの割合が絶乾重量当たりで30:70になるように配合し、水は絶乾状態の竹繊維重量100重量部に対して130重量部添加した。
供試体の作製は含水率を100重量%まで噴霧器を用いて、予め水分調整した竹繊維と普通ポルトランドセメントとを均一に混練後、残りの30重量部の水に硝酸マグネシウムを完全に溶解させることによって調合した硝酸マグネシウム溶液を噴霧器にて均一に前記混練物に添加した。硝酸マグネシウムの添加量は、固形分原料に対して4.2重量%である。
なお、硝酸マグネシウムは関東化学(株)社製特級試薬硝酸マグネシウム六水和物[Mg(NO32・6H2O]を使用した。
得られた混練物を鉄板上に長さ180mm×幅100mm×厚さ90mmの均一なマット状とした。これを鉄板ごと40枚プレス用台車上に積み重ねた。次いで、圧力20kgf/cm2でマット厚さが12mmとなるまでプレス圧縮し、クランプにて鉄板を固定した後、プレス機から取り出し、圧縮締結したままの状態にて1次養生し、脱板を行った。脱板した成形体は続いて2次養生に施した。1次養生は、蒸気養生にて60℃、8時間に設定した。2次養生は、普通養生を14日行った。
【0022】
脱板した成形体の一部は、適当なサイズに切断後、強度試験に供し、曲げ強度を測定した。同時に脱板のしやすさについても調べた。2次養生後の成形体については、かさ比重、14日強度(曲げ強度)、ρ=1.1換算強度等の物性について調べた。測定結果を表1に示す。なお、ρ=1.1換算強度とは、繊維補強セメント板の同一配合組成による成形体の曲げ強度が成形体のかさ比重の二乗にほぼ正比例することが知られ、一般的に異なったかさ比重の成形体の曲げ強度を比較する場合、基準とする成形体のかさ比重に対し試験体のかさ比重の二乗で補正することである。本実施例では、この基準となるかさ比重を1.1とした。すなわちρ=1.1換算強度は、(1.1/試験体のかさ比重)2×試験体の強度で表される。
【0023】
実施例2
1次養生の前に、前養生として2時間の普通養生に成形体を施したこと以外は、実施例1を繰り返した。測定結果を表1に示す。
【0024】
比較例1
一次養生を24時間の普通養生とし、加熱処理を行わなかったこと以外は実施例1を繰り返した。測定結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
Figure 0004249837
【0026】
表1の結果から判るように、本発明によれば、脱板時の強度が高く、短時間でハンドリング可能な強度にまで達していることが分かる。また加熱処理に先立って前養生を施した実施例2では、脱板直後の強度が一層すぐれ、さらにハンドリングしやすくなっている。これに対し、加熱処理を施さなかった比較例1では、1次養生を24時間行っても脱板時の強度が不足する結果となっている。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、植物繊維セメント成形体の製造において、型板上に設置した原料のセメント硬化反応が加圧締結する前に進行しにくく且つ締結を完了した後脱板工程を行うまでに要する養生時間が短縮され、該成形体の製造に係わる装置の金属部分を腐食することがなく、しかも低コストである植物繊維セメント成形体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において植物繊維セメント成形体の製造工程の時間経過と、セメント硬化反応の進行度合との関係を説明するための図である。

Claims (6)

  1. 少なくとも植物繊維材料、セメントおよび水を含む原料を混合する工程と、混合した原料を型板上に成形する工程と、この成形体と型板との複合体を多段に積み重ねる工程と、多段に積み重ねた積層状態の前記複合体を加圧するとともに加圧した状態で締結する工程と、締結した状態で前記成形体のハンドリングが可能となるまで養生する工程と、締結を解除して前記成形体と前記型板とを分離する工程とを含む植物繊維セメント成形体の製造方法において、前記の原料混合工程時固形分原料に対して外割で0.5〜10重量%の硝酸マグネシウム、硝酸第二鉄、硝酸ニッケル及び硝酸アルミニウムからなる群から選択される硝酸塩またはこれら硝酸塩と硝酸カルシウムまたは硝酸カリウムとを水溶液として他の成分に均一に噴霧することにより添加するとともに、前記養生工程において成形体に加熱処理を施すことを特徴とする植物繊維セメント成形体の製造方法。
  2. 加熱処理が、50℃以上100℃未満の温度で行われる請求項1に記載の製造方法。
  3. 加熱処理が、60〜80℃で行われる請求項2に記載の製造方法。
  4. 加熱処理が、蒸気養生である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 加熱処理の前に普通養生を行う請求項1ないし4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 型板と分離した成形体を普通養生により二次養生する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の製造方法。
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