JP4249231B2 - インクジェット記録用油性白色インク組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、保存安定性、経時安定性、印刷物の下地に対する隠蔽性及び吐出性が優れたインクジェット記録用油性白色インクに関する。
従来、インクジェット記録方式は、コンピューター等からの電気信号に応じてインクの液滴をプリントヘッド又はスプレイノズルから高速で被記録材料に向けて噴射し、被記録材料のインク受容層に印刷する記録方式である。このインクジェット記録方式は、騒音が少なく、高速にて印刷が可能なために、コピー、ファクシミリー、ポスター、ディスプレイなどに広く普及して来ている。また、インクジェット記録方式に使用されるインクは、経時変化がなく、画像を形成した場合に十分な濃度を長期間安定に維持でき、被記録材料に印刷された画像が優れた原稿再現性を有することが要求されている。
このために、使用されるインクは、ヘッドのノズル、及び、インクカートリッジからヘッドに達するまでに通過する濾過フィルターを目詰りさせないことが要求されている。そのために、インクは、その密度、粘度、粒子径、濃度などのインク特性を調整する必要がある。上記のインクは、一般に染料又は顔料である着色剤と、これらを分散する分散剤、溶媒、必要に応じて添加剤とを配合して調製される。
特に、インクジェット用白色インクは、明度の低い黒色系又は透明な被記録材料に印刷することにより、視認性のよい印刷物が得られ、種々の製品のマーキングにも有効である。さらに、上記の被記録材料に白色インク以外の着色インクにて印刷した場合、下地の色の影響を受けて鮮明に印刷が再現できない。このために、印刷後、下地に対する十分な隠蔽性を有する白色インクによって下地印刷を行って空いた下地を隠蔽し、その白地の上に他の着色インクで印刷することが要求される。この白色インクは、一般に、着色剤として酸化チタン顔料を使用しているが、従来の酸化チタン顔料を使用した白色インクは、保存中に顔料粒子の比重や使用溶媒などに起因して、とくに、アルコール系溶媒を用いた場合には、酸化チタン顔料が経時的に沈降・凝集することで、酸化チタン顔料の再分散性が低下することがある。
このような課題を解決するために、特許文献1(特開平6−107964号公報)では、特定の化合物を混合した白色顔料組成物が提案されている。具体的には、アルミナ処理のみの酸化チタン顔料を、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂を分散剤として使用して、アルコール系溶媒に分散させたものである。しかしながら、特許文献1に開示の白色顔料組成物では、沈殿した白色顔料の再分散性を改良することを目的としてなされたものであり、インク中の沈降した顔料の再分散を行わずそのままで使用することが要望される実作業(インクジェット印刷作業)においては不向きである。また、酸化チタン顔料を白色顔料として使用した場合、インクの保管時におけるインクの顔料の凝集沈降が進行し易いとの性質を有することから、取り分け、インクジェット記録装置にインクとして充填され、長期間使用されない場合、再使用時における吐出安定性に欠け、また、プリンターノズルを目詰りさせ、最悪の場合ではプリンターヘッドの交換を余儀なくされる場合が生じる。
他方、インク組成物用の溶剤として汎用されてきた低沸点溶剤と比較して、グリコールエーテルジアルキルエーテル類溶剤は、高沸点、低蒸気圧、低臭気で安全性が高く、作業環境に優れている。しかし、グリコールエーテルジアルキルエーテル類溶剤は、従来使用されてきた低沸点の溶剤に比べると樹脂溶解性が低く、使用可能な市販の固形樹脂の種類が限定されることがあった。この為、メタクリル酸メチルホモポリマー等のガラス転移温度(Tg)の高い樹脂を使用することが一般に困難となり、そのようなアクリル系樹脂を使用した場合には、インクの保存安定性、吐出安定性に問題があった。また、溶解性を高める効果のあるアクリル系モノマーを調合し、Tgを下げ、また低分子量化することで溶解性を向上させたアクリル系樹脂では十分な印刷乾燥性を得ることが困難であった。また、アクリル系樹脂と酸化チタン顔料と分散剤の相互の溶解性が適合しない場合には、インクの保管時におけるインク中の顔料の凝集沈降が進行し易く、インクの保存安定性、吐出安定性に問題があった。
従って、現在、インク組成物の成分同士の溶解性(分散性)、インク組成物の長期保存安定性及び吐出安定性に優れ、かつ、印刷乾燥性を達成しうる、インクジェット記録用油性白色インク組成物の開発が急務とされている。
特開平6−107964号公報
本発明者等は、本発明時において、白色顔料として、特定の無機金属酸化物で被覆し、かつ、シロキサン系物質にて表面被覆した特定の平均粒子径を有する酸化チタンを採用し、かつ、グリコールエーテルジアルキルエーテル類溶剤等の有機溶剤により分散させることにより、長期保存安定性、吐出安定性、印刷物の下地に対する隠蔽性、印刷物の速乾性に極めて優れた、インクジェット記録用油性白色インク組成物が得られるとの知見を得た。本発明は、係る知見に基づいてなされたものである。
従って、本発明によるインクジェット記録用油性白色インク組成物は、
白色顔料と、
該白色顔料が、アルミニウムおよび/または珪素の酸化物で被覆された、平均粒子径が0.15μm以上0.25μm以下である酸化チタン微粒子を、0.01質量%以上0.50質量%以下のSiH含有ポリシロキサンおよび/またはジメチルポリシロキサンでさらに被覆したものであり、
グリコールエーテルジアルキルエーテル類溶剤と、
アクリル系共重合物を含有する分散剤と、及び
グリコールエーテルジアルキルエーテル類溶剤又は環状エステル類溶剤中において、ラジカル重合開始剤を用いて溶液重合により得られたアクリル系樹脂とを含んでなるものである。
本発明によれば、特定の白色顔料を特定の分散剤および溶媒に分散し、特定の樹脂を添加することにより、顔料の経時的耐沈降性が優れ、更に長期放置後の回復性が非常に優れたインク組成物を提供することができる。また、印刷基材に対して白色度の高い隠蔽性の優れた印刷物および視認性のよいマーキングが得られるインクジェット記録用油性白色インクとして有効に使用することができることが可能となる。
定義
本明細書において使用される用語は以下の意味において使用される。
「インクジェット記録用油性白色インク組成物」は、単に「白色インク(組成物)」又は「インク(組成物)」ということがある。
「酸化物」とは、無水の酸化物、含水酸化物および両者の混合物を意味する。
I.インクジェット記録用油性白色インク組成物
<白色顔料>
本発明における白色顔料は、酸化チタン微粒子に下記の処理を施したものを主成分として使用する。本発明によるインク組成物における白色顔料の添加量は、該インク組成物全量に対して、5質量%以上30質量%以下であり、好ましくは下限値が10質量%以上であり上限値が25質量%以下である。
酸化チタン微粒子
酸化チタン微粒子を構成する酸化チタンの具体例としては、ルチル型および/またはアナターゼ型の二酸化チタンが挙げられ、好ましくはルチル型二酸化チタンが挙げられる。
酸化物被覆(処理)
本発明では、酸化チタン微粒子をアルミニウムおよび/または珪素の酸化物により被覆する。これらの酸化物の具体例としては、SiO、Alなどの酸化物、SiO・nHO、Al・nHO等の含水酸化物が挙げられ、好ましくはAlおよびその含水酸化物が挙げられる。
これらの酸化物で被覆された酸化チタン微粒子は、その平均一次粒子径が0.15μm以上0.25μm以下であり、好ましくは上限値が0.21μm以下である。この平均一次粒子径が上記範囲内にあることにより、インク中における白色顔料の保存安定性に優れ、インクの下地に対する隠蔽性が向上し、かつ、印刷中に印刷ヘッドにインクが目詰りすることを有効に防止することが可能となる。特に、上記数値範囲内にあることにより、トレードオフの関係にある保存安定性と下地に対する隠蔽性を同時に達成することが可能となる。
酸化チタン微粒子と上記酸化物との質量比は特に限定されないが、一般的には酸化チタン微粒子100質量部当たり、上記酸化物は約0.01質量部以上30質量部以下である。
ポリシロキサン被覆(処理)
本発明にあっては、先の酸化物被覆された酸化チタン微粒子を、SiH含有ポリシロキサンおよび/またはジメチルポリシロキサンを用いてさらに被覆する。前記酸化チタン微粒子に対して、SiH含有ポリシロキサンおよび/またはジメチルポリシロキサンを被覆する割合は0.01質量%以上0.5質量%以下、好ましくは上限値が0.4質量%以下である。被覆量が上記数値範囲内にあることにより、インク中における白色顔料の沈降を抑制し、インク組成物に対して十分な濃度の白色度を付与し、及び印刷物の下地に対する隠蔽性を向上させることが可能となる。
SiH含有ポリシロキサンの具体例としては、下記一般式(III):
Figure 0004249231
[上記式中、mは0以上の整数であり、nは1以上の整数である。]
で表わされるメチルハイドロジェンポリシロキサン、その誘導体、及びそれらを主成分とするものであり、好ましくは、上記一般式(I)で表わされるメチルハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。このメチルハイドロジェンポリシロキサンの中でも、上記式(III)中、m+nが3以上500以下の整数のものが好ましく、より好ましくは、m+nが10以上100以下の整数のものが挙げられる。このm+nの値が上記範囲内にあることにより、白色顔料の分散性が好ましいものとなる。このメチルハイドロジェンポリシロキサンは、例えば、信越化学工業(株)からメチルハイドロジェンポリシロキサン[KF−99]の商品名にて入手して本発明で使用することができる。
ジメチルポリシロキサンの具体例としては、下記一般式(IV):
Figure 0004249231
[上記式(IV)中、nは1以上の整数を表わす。]
で表わされる直鎖型ジメチルポリシロキサン、その誘導体、及びそれらを主成分とするもの等が挙げられる。ジメチルポリシロキサンの具体例としては、信越化学工業(株)からジメチルポリシロキサン[KF−96]の商品名にて入手して本発明で使用することができる。
本発明においては、必要に応じて、上記のポリシロキサン系化合物に、メチルフェニルシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどのシリコーンオイルを併用することができる。
<グリコールエーテルジアルキルエーテル類>
本発明で使用されるグリコールエーテルジアルキルエーテル類としては、好ましくは、下記一般式(I):
−(OC−OR (I)
[上記式中、
およびRは、それぞれ独立して、メチル基またはエチル基を示し、
nは2〜4の整数を示す]
で表されるポリオキシエチレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシエチレングリコールジエチルエーテルまたはポリオキシエチレングリコールエチルメチルエーテルが挙げられる。これらのグリコールエーテルジアルキルエーテルは、一種又は二種以上の組み合わせで用いることもできる。このようなグリコールエーテルジアルキルエーテルは、高沸点、低蒸気圧のものであることから、作業環境に優れるものである。グリコールエーテルジアルキルエーテル類の添加量は、インク組成物中における全溶剤量100質量%に対して、5質量%以上100質量%以下であり、好ましくは下限値が10質量%以上であり、上限値が100質量%以下である。
<アクリル系樹脂>
本発明で使用されるアクリル系樹脂の具体例としては、グリコールエーテルジアルキルエーテル類溶剤又は環状エステル類溶剤中において、ラジカル重合開始剤を用いて溶液重合により得られたものが使用される。
グリコールエーテルジアルキルエーテル類溶剤は、先に説明したのと同様であってよい。又、環状エステル類溶剤は、例えば、下記一般式(II):
1―CH(CH2mCH― X2
| | (II)
O ───── CO
[上記式(II)中、
およびXは、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基またはアルケニル基を示し、
mは1〜3の整数を示す]
で表されるものが好ましくは用いられる。
この溶液重合により得られたアクリル系樹脂は、グリコールエーテルジアルキルエーテル類と良好な相溶性を有するため、この混合溶液を容易に調製することができる。このアクリル系樹脂は、好ましくは、ビニル芳香族化合物、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アラルキルエステル、メタクリル酸アルコキシアルキルエステル、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸、メタクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステルからなる群から選ばれたラジカル重合性モノマーから得ることができる。本発明におけるラジカル重合性モノマーとしては、ラジカル重合可能なエチレン性二重結合を分子中に少なくとも一個有し、前記溶媒中においてラジカル重合開始剤の共存下で重合可能なものであれば各種のモノマーを用いることができる。
このようなラジカル重合性モノマーの具体例としては、
1)スチレン;
2)スチレンのα−、o−、m−、p−アルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル誘導体;
3)(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−iso−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸−iso−ブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−iso−オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸−iso−ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸プロパギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸アントラニノニル、(メタ)アクリル酸ピペロニル、(メタ)アクリル酸サリチル、(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ピラニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸−1,1,1−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ−iso−プロピル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2,3−ジヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどの(メタ)アクリル酸エステル類;
4)(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジプロピルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−iso−プロピルアミド、(メタ)アクリル酸ブチルアミド、(メタ)アクリル酸ステアリルアミド、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルアミド、(メタ)アクリル酸フェニルアミド、(メタ)アクリル酸ベンジルアミド、(メタ)アクリル酸アントラセニルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド;
5)(メタ)アクリル酸アニリド、(メタ)アクリロイルニトリル、アクロレイン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、酢酸ビニル、マレイン酸等のビニル化合物;
6)N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリンマレイミド、N−(4−ヒドキシフェニル)マレイミドなどのモノマレイミド;
7)N−(メタ)アクリロイルフタルイミドなどのフタルイミド;を挙げることができる。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」の両者を意味するものである。これらのモノマーのいくつかは、三菱レイヨン(株)、日本油脂(株)、三菱化学(株)、日立化成工業(株)等から入手することができる。
本発明では、上記で例示したラジカル重合性モノマーの一種類又は二種類以上の組み合わせを用いることも出来る。また、上記ラジカル重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーを必要に応じて併用することができる。従って、本発明によって製造される重合体組成物には、上記ラジカル重合性モノマーの単独重合体および共重合体、ならびにこれらと他のモノマーとの共重合体からなるものが包含される。本発明において、特に好ましい共重合体は、メタクリル酸メチルエステル100質量%とマレイン酸0.01質量%以上15質量%以下とからなる共重合体である。
アクリル系樹脂の分子量ならびにガラス転移温度(Tg)は任意であるが、本発明ではアクリル系樹脂の重量平均分子量が500以上150000以下、好ましくは下限値が5000以上、より好ましくは8000以上であり、上限値が50000以下、より好ましくは40000以下である。また、アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は60℃以上、特に80℃以上、であるものが好ましい。重量平均分子量またはTgが上記範囲内であることにより、良好なインク保存安定性と、乾燥性、隠蔽性等が良好な印刷物が得られるという効果が特に顕著となるので好ましい。
<ラジカル重合開始剤>
本発明で使用されるラジカル重合開始剤は、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシカーボネート系、パーオキシケタール系、ケトンパーオキサイド系有機過酸化物が挙げられ、好ましくは、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系有機過酸化物が好ましくは挙げられる。本発明にあっては、これらのラジカル重合開始剤は、一種類又は二種類以上の組み合わせを用いても良い。
具体的には下記化合物を挙げることができる。尚、下記において、化合物名の右肩に「*」が付されたものは本発明において特に好ましい化合物である。
(1)ハイドロパーオキサイド類、例えばt−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等;
(2)ジアルキルパーオキサイド類、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等;
(3)パーオキシエステル類、例えば1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−3−メチルベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等;
(4)ジアシルパーオキサイド類、例えばジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド等;
(5)パーオキシカーボネート類、例えばジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、ジ(3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−1−メチルヘプチルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等;
(6)パーオキシケタール類、例えば2,2−ジ(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート等;
(7)ケトンパーオキサイド類、例えばアセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等;が挙げられる。
<アクリル系共重合物を含有する分散剤>
本発明で使用するアクリル系共重合物を含有する分散剤は、顔料親和性基を有する骨格部分とアクリル系樹脂骨格を有するブロック共重合物であり、例えば、ビックケミー・ジャパン社から「Disperbyk(登録商標)−2020」などの商品名で入手して本発明で使用することができる。
<環状エステル類溶剤>
本発明で使用する環状エステル類溶剤の具体例としては、五員環構造のγ‐ラクトンや、六員環構造のδ‐ラクトン、七員環構造のε‐ラクトン等があり、例えばγ‐ブチロラクトン、γ‐バレロラクトン、γ‐カプロラクトン、γ‐カプリロラクトン、γ‐ラウロラクトン、δ‐バレロラクトン、δ‐ヘキサラクトン、δ‐ヘプタラクトン、ε‐カプロラクトンの単独、またはそれらの混合物を用いることができる。環状エステル類溶剤は、本発明の好ましい態様においては、5員環のγ‐ラクトン類であり、さらに好ましい態様においては、γ‐ブチロラクトン、γ‐バレロラクトンである。環状エステル類溶剤を用いることによって、ポリ塩化ビニル基材に対する印刷品質をさらに改善することができる。
<他の成分>
本発明によるインク組成物は、上記の必須成分に加えて、必要に応じて他の成分を含むことができる。他の成分としては、例えば、分散剤および界面活性剤を挙げることができる。
分散剤としては、有機溶媒の溶解度パラメーターが8〜11であるときに有効に作用するものが好ましい。分散剤の含有量は、インク組成物中の白色顔料の含有量に対して、5重量%以上200重量%以下であり、好ましくは下限値が30重量%以上であり上限値が120重量%以下である。分散剤は適宜選択することができるが、分散剤の具体例としては、ヒノアクトKF1−M、T−6000、T−7000、T−8000、T−8350P、T−8000EL(武生ファインケミカル(株)製)等のポリエステル系高分子化合物、solsperse 20000、24000、32000、32500、33500、34000、35200(ルブリゾール社製)、disperbyk-161、162、163、164、166、180、190、191、192(ビック・ケミー社製)、フローレンDOPA−17、22、23、G−700(共栄社化学(株)社製)、アジスパーPB 821、PB711(味の素ファインテクノ(株)社製)、LP4010、LP4050、LP4055,POLYMER400、401、402、403、450、451、453(EFKAケミカルズ社製)の一種又は二種以上の混合物を用いることができる。
また、本発明においては、必要に応じて、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等の安定剤、界面活性剤等を添加することができる。好ましい酸化防止剤としては、BHA(2,3−ジブチル−4−オキシアニソール)、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)等を挙げることができ、その添加量はインク組成物全量に対して0.01質量%以上3.00質量%以下が好ましい。また、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物およびベンゾトリアゾール系化合物を挙げることができ、その添加量はインク組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下が好ましい。また、界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、両性または非イオン系のいずれの界面活性剤も用いることができ、その添加量はインク組成物全量に対して0.5質量%以上4.0質量%以下が好ましい。
II.インク組成物の物性及び用途
本発明によるインク組成物は、20℃における粘度が2mPa・s以上10mPa・s以下、好ましくは下限値が3mPa・s以上であり上限値が5mPa・s以下になるように調製することが好ましい。そして、表面張力が20mN/m以上50mN/m以下となるように調製することが好ましい。表面張力が上記範囲内にあることにより、インクジェット記録用プリンタヘッドの表面の濡れ性を制御することができ、インク滴の吐出が容易となり、かつ、印刷された記録媒体の表面の濡れ性を制御することができ、良好な印刷が可能となる。
本発明によるインク組成物は、撥インク処理された吐出ノズル表面に対して不活性であるという利点を有するので、例えば、撥インク処理された吐出ノズル表面を有するインクジェット記録用プリンタヘッドから吐出させるインクジェット記録方法に有利に用いることができる。
本発明によるインク組成物は、記録媒体の種類を特に問わないが、本発明の効果が特に顕著に得られるのは、例えば、プラスチック基材、特に硬質または軟質ポリ塩化ビニル基材である。ポリ塩化ビニル基材としては、フィルム、シート等が例示される。本発明によるインク組成物は、従来の油性インク組成物では難しかったポリ塩化ビニル基材における無処理表面への印刷を可能とするものであって、従来の受容層を有する記録媒体のごとく高価な記録媒体の使用を不要とする優れた効果を示す。なお、本発明によるインク組成物は、勿論インク受容性樹脂により表面処理された記録媒体に対しても優れた印刷性を有する。
III.インク組成物の製造方法
本発明の別の態様によれば、インクジェット記録用油性白色インク組成物の製造方法を提案することができ、その製造方法は、
白色顔料と、
該白色顔料が、アルミニウムおよび/または珪素の酸化物で被覆された、平均粒子径が0.15μm以上0.25μm以下である酸化チタン微粒子を、0.01質量%以上0.50質量%以下のSiH含有ポリシロキサンおよび/またはジメチルポリシロキサンでさらに被覆したものであり、
グリコールエーテルジアルキルエーテル類溶剤と、
アクリル系共重合物を含有する分散剤と、及び
グリコールエーテルジアルキルエーテル類溶剤又は環状エステル類溶剤中において、ラジカル重合開始剤を用いて溶液重合により得られたアクリル系樹脂とを混合することを含んでなるものである。
この製造方法において使用される物質及びその添加量等は、I.インク組成物の項で説明したのと同様であってよく、製造されるインク組成物の物性等は、II.インク組成物の物性及び用途の項で説明したのと同様であってよい。
本発明における混合方法は、上記の各成分を公知の方法で均一に混合して白色顔料を溶媒中に分散して調製する。調製方法としては、例えば、ペイントシェイカーにてφ0.8mmのジルコニアビーズにて1時間分散後、φ0.3mmのジルコニアビーズで5時間分散し、インクの粘度を4.0〜4.5mPa・sに調整する方法が挙げられる。なお、インクの粘度測定は、落球式粘度計(日本シーベルヘグナー(株)製のAMVn)にて測定した値である。インク組成物による通常の被記録材料への印刷は、市販のインクジェットプリンターを使用して行うことができる。
各成分の配合順序および配合の仕方は任意であって、例えば製造工程の各段階における配合物の性状や製造上の容易さ等を考慮して定めることができる。例えば、各成分は、一種類ずつ独立して配合することもできるし、各成分の供給ならびに配合をまとめて行って各成分の配合物を一度に得ることも可能である。また、二種又は三種以上の成分を予め配合した後に、残りの他の成分と配合することもできる。この際、二種又は三種以上の成分を予め配合しておく場合には、予め配合する成分の量は各成分の全量であっても、各成分の所要量の一部分であってもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
重合体の合成
下記の方法により、重合体1〜重合体8を得た。得られた重合体の分析には、樹脂溶液から樹脂のみをヘキサンにて精製したサンプルを使用した。東ソー(株)製の「HLC−8220GPC」にて、ポリスチレンを標準としたゲル浸透クロマトグラフ(GPC)により分子量測定を行った。島津製作所(株)製の示差走査熱量計「DSC−50」にて、ガラス転移温度(Tg)を測定した。
重合体1
100℃に保たれたジエチレングリコールジエチルエーテル300g中に、メタクリル酸メチル198gとマレイン酸2gと、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート8gとの混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた後冷却して、無色透明のメタクリル酸メチルとマレイン酸との共重合体溶液を得た。重合体1のTgは105℃であり、重合体1の重量平均分子量は18000であった。
重合体2
100℃に保たれたジエチレングリコールジエチルエーテル300g中に、メタクリル酸メチル199gとマレイン酸1gと、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート8gとの混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた後冷却して、無色透明のメタクリル酸メチルとマレイン酸との共重合体溶液を得た。重合体2のTgは105℃であり、重合体2の重量平均分子量は18000であった。
重合体3
100℃に保たれたジエチレングリコールジエチルエーテル300g中に、メタクリル酸メチル198gとマレイン酸2gと、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10gとの混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた後冷却して、無色透明のメタクリル酸メチルとマレイン酸との共重合体溶液を得た。重合体3のTgは105℃であり、重合体3の重量平均分子量は15000であった。
重合体4
100℃に保たれたジエチレングリコールジエチルエーテル300g中に、メタクリル酸メチル198gとマレイン酸2gと、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート15gとの混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた後冷却して、無色透明のメタクリル酸メチルとマレイン酸との共重合体溶液を得た。重合体4のTgは105℃であり、重合体4の重量平均分子量は10000であった。
重合体5
100℃に保たれたγ−ブチロラクトン300g中に、メタクリル酸メチル198gとマレイン酸2gと、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート8gとの混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた後冷却して、無色透明のメタクリル酸メチルとマレイン酸との共重合体溶液を得た。重合体5のTgは105℃であり、重合体5の重量平均分子量は18000であった。
重合体6
100℃に保たれたトルエン300g中に、メタクリル酸メチル198gとマレイン酸2gと、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートgとの混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた後冷却して、無色透明のメタクリル酸メチルとマレイン酸との共重合体溶液を得た。重合体6のTgは105℃であり、重合体6の重量平均分子量は18000であった。
重合体7
100℃に保たれたジエチレングリコールジエチルエーテル300g中に、メタクリル酸メチル198gとマレイン酸2gと、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート3gとの混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた後冷却して、無色透明のメタクリル酸メチルとマレイン酸との共重合体溶液を得た。重合体7のTgは105℃であり、重合体1の重量平均分子量は60000であった。
重合体8
100℃に保たれたジエチレングリコールジエチルエーテル300g中に、メタクリル酸メチル198gとマレイン酸2gと、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート30gとの混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた後冷却して、無色透明のメタクリル酸メチルとマレイン酸との共重合体溶液を得た。重合体8のTgは105℃であり、重合体8の重量平均分子量は3000であった。
[実施例1]
下記組成成分を、均一に混合分散して、粘度が4.0〜4.5mPa・sである実施例1のインクを調製した。
白色顔料 12質量部
(アルミナにて表面処理された平均一次粒子径0.21μmの二酸化チタンをさらにメチルハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業(株)製、メチルハイドロジェンポリシロキサンKF−99)にて0.12質量%処理したもの)
混合溶剤
ジエチレングリコールジエチルエーテル 51.3質量部
γ-ブチロラクトン 30.0質量部
重合体1 4.6質量部
アクリル系共重合物を含有する分散剤 2.1質量部
(ヒ゛ックケミー・シ゛ャハ゜ン社製、Disperbyk-2020、重量平均分子量12,000)
[実施例2]
実施例1において使用される白色顔料を、アルミナにて表面処理された平均一次粒子径0.21μmの二酸化チタンをさらにメチルハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業(株)製、メチルハイドロジェンポリシロキサンKF−99)にて0.25質量%処理したものに代えた以外は、実施例1と同様にして実施例2のインクを調整した。
[実施例3]
実施例2において使用される重合体1に代えて、重合体2を使用する以外は、実施例2と同様にして実施例3のインクを調整した。
[実施例4]
実施例2において使用される重合体1に代えて、重合体3を使用する以外は、実施例2と同様にして実施例4のインクを調整した。
[実施例5]
実施例2において使用される重合体1に代えて、重合体4を使用する以外は、実施例2と同様にして実施例5のインクを調整した。
[実施例6]
実施例2において使用される重合体1に代えて、重合体5を使用する以外は、実施例2と同様にして実施例6のインクを調整した。
[比較例1]
実施例1において使用される白色顔料に代えて、アルミナにて表面処理された平均一次粒子径0.21μmの二酸化チタンをさらにメチルハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業(株)製、メチルハイドロジェンポリシロキサンKF−99)にて処理していないものを使用した以外は、実施例1と同様にして比較例1のインクを調整した。
[比較例2]
実施例1において使用される白色顔料に代えて、アルミナにて表面処理された平均一次粒子径0.21μmの二酸化チタンをさらにメチルハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業(株)製、メチルハイドロジェンポリシロキサンKF−99)にて0.75質量%処理したものを使用した以外は、実施例1と同様にして比較例2のインクを調整した。
[比較例3]
実施例2において使用される重合体2に代えて、ローム&ハース社製「パラロイドB99N」を使用した以外は、実施例1と同様にして比較例3のインクを調整した。
[比較例4]
実施例2において使用される重合体2に代えて、ローム&ハース社製「パラロイドB60」を使用した以外は、実施例1と同様にして比較例4のインクを調整した。
[比較例5]
実施例2において使用される重合体2に代えて、重合体6を使用する以外は、実施例1と同様にして比較例5のインクを調整した。
[比較例6]
実施例2において使用される重合体2に代えて、重合体7を使用する以外は、実施例1と同様にして比較例6のインクを調整した。
[比較例7]
実施例2において使用される重合体2に代えて、重合体8を使用する以外は、実施例1と同様にして比較例7のインクを調整した。
評価試験
上記で調製した実施例1〜比較例7の各インクを使用して、下記評価を行った。印刷物の評価においては、各インクをインクジェットプリンタ(商品名:MJ−8000C:セイコーエプソン社製)に充填し印刷を行った上で下記評価試験を行った。評価結果は、下記表1に記載した通りであった。
評価1:隠蔽性評価試験
上記プリンターにて透明塩化ビニルフィルムにベタ印刷を実施し、該印刷物をマクベス濃度計(マクベス社製、TD−904)を使用して光の透過濃度を測定し、下記評価基準により評価した。
評価基準
評価A:印刷物の光の透過濃度が0.24以上であり、隠蔽性が優れていた。
評価B:印刷物の光の透過濃度が0.24未満であり、隠蔽性が劣っていた。
評価2:再溶解性試験
シャーレに各インクを1g取り、40℃下で3日放置し乾燥固化しているインクに再度インクを滴下し、その再溶解(分散)性を確認し、下記評価基準により評価した。
評価基準
評価A:再溶解した。
評価B:一部再溶解した。
評価C:再溶解しなかった。
評価3:沈降性試験
各インクを、透明なガラス瓶に入れて、1ヶ月間静置し、目視にてインクの沈降状態を観察し、下記評価基準により評価した。
評価基準
評価A:顔料の沈降が認められなかった。
評価B:顔料の沈降が認められるが、インクを振ると沈降が消失した。
評価C:顔料の沈降が認められ、インクを振っても沈降が消失しなかった。
評価4:乾燥性試験
各インクをベタ印刷し、乾燥に要する時間を測定し、下記の評価基準により評価した。
評価基準
評価A:乾燥に要する時間が3分未満であった。
評価B:乾燥に要する時間が3分以上であり、乾燥性が劣った。
評価5:吐出性試験
各インクを1時間連続で印刷した後、1時間放置し、再度印刷を行った際の、吐出曲がりの有無、ドット抜けの有無を目視観察し、下記の評価基準により評価した。
評価基準
評価A:吐出曲がり及びドット抜けが無かった。
評価B:吐出曲がり及び/又はドット抜けがあった。
各インクを連続印刷し、その状態を目視観察し、下記の評価基準により評価した。
Figure 0004249231
上記評価結果から本発明のインク組成物は、前記の条件で長時間放置しても、顔料の沈降性がなく、インクの経時安定性および保存安定性が優れており、また、印刷基材に対するインクの隠蔽性と吐出性が優れていることが実証されている。
本発明によるインク組成物は、経時安定性および保存安定性が優れていることから、使用時にインクを再分散して使用することもなく、印刷ヘッドに目詰りのない連続印刷ができ、また、印刷基材に対して白色度の高い隠蔽性の優れた印刷物および視認性のよいマーキングが得られるインクジェット記録用油性白色インクとして有効に使用することができる。

Claims (11)

  1. インクジェット記録用油性白色インク組成物であって、
    白色顔料と、
    該白色顔料が、アルミニウムおよび/または珪素の酸化物で被覆された、平均粒子径が0.15μm以上0.25μm以下である酸化チタン微粒子を、0.01質量%以上0.50質量%以下のSiH含有ポリシロキサンおよび/またはジメチルポリシロキサンでさらに被覆したものであり、
    グリコールエーテルジアルキルエーテル類溶剤と、
    アクリル系共重合物を含有する分散剤と、及び
    グリコールエーテルジアルキルエーテル類溶剤又は環状エステル類溶剤中において、ラジカル重合開始剤を用いて溶液重合により得られたアクリル系樹脂とを含んでなる、インク組成物。
  2. 前記白色顔料における酸化チタン微粒子が、前記インク組成物全量に対して、5質量%以上30質量%以下で添加されてなる、請求項1記載のインク組成物。
  3. 前記グリコールエーテルジアルキルエーテル類が、下記一般式(I)で示されるポリオキシエチレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシエチレングリコールジエチルエーテルまたはポリオキシエチレングリコールエチルメチルエーテルである、請求項1又は2に記載のインク組成物。
    −(OC−OR(I)
    (上記式中、
    およびRは、それぞれ独立して、メチル基またはエチル基を示し、
    nは2〜4の整数を示す)
  4. 前記アクリル系共重合物を含有する分散剤が、顔料親和性基を有する骨格部分とアクリル系樹脂骨格を有するブロック共重合物を有するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録用油性白色インク組成物。
  5. 前記アクリル系樹脂が、グリコールエーテルジアルキルエーテル類溶剤中、又は下記一般式(II)で表される環状エステル類溶剤中、においてラジカル重合開始剤を用いて溶液重合させたアクリル系樹脂である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク組成物。
    1―CH(CH2mCH― X2
    | | (II)
    O ───── CO
    (上記式中、
    およびXは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、またはアルケニル基を示し、
    mは1〜3の整数を示す)
  6. 前記アクリル系樹脂が、メタクリル酸アルキルエステルとマレイン酸からなるラジカル共重合体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインク組成物。
  7. 前記アクリル系樹脂が、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上のものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインク組成物。
  8. 前記アクリル系樹脂が、重量平均分子量が5000以上50000以下のものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインク組成物。
  9. 前記インク組成物が、環状エステル類溶剤をさらに含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のインク組成物。
  10. 前記インク組成物が、分散剤および/または界面活性剤をさらに含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のインク組成物。
  11. インクジェット記録用油性白色インク組成物の製造方法であって、
    白色顔料と、
    該白色顔料が、アルミニウムおよび/または珪素の酸化物で被覆された、平均粒子径が0.15μm以上0.25μm以下である酸化チタン微粒子を、0.01質量%以上0.50質量%以下のSiH含有ポリシロキサンおよび/またはジメチルポリシロキサンでさらに被覆したものであり、
    グリコールエーテルジアルキルエーテル類溶剤と、
    アクリル系共重合物を含有する分散剤と、及び
    グリコールエーテルジアルキルエーテル類溶剤又は環状エステル類溶剤中において、ラジカル重合開始剤を用いて溶液重合により得られたアクリル系樹脂とを混合することを含んでなる、製造方法。
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