JP4248073B2 - 新規アクリル又はメタクリルアミド誘導体及びその用途 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なフルオロアルキル基含有化合物及びその用途、すなわちそれを有効成分とする表面張力低下剤、樹脂表面処理剤、樹脂添加剤、塗料添加剤、記録液添加剤、発光強度増強剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機化合物中にフルオロアルキル基を含有する化合物は、耐候性、撥水撥油性、生理活性等の有用な性質を示す。
従来、基材の改質に際しては、種々のフッ素系材料が使用されており、特に基材の保護、美粧性、撥水撥油性、絶縁性、離型性、防汚性等の特性を付与する目的で、フルオロアクリレートポリマー等が使用されている。しかし、これらのフッ素樹脂等は、溶解性や安全性の問題から使用できる溶剤の種類に限りがあり、さらに同様の理由で、樹脂中に導入されるフッ素原子の数には限りがあった。また、フルオロアルキル基がエステル基を介して導入されていると、加水分解されやすいという欠点があり、耐候性の点で問題がある。
【0003】
また、フルオロアルキル基の持つ物質の低表面エネルギー性は、表面張力を調整するのに着目されており、ペルフルオロアルキルスルホニルフルオライドやペルフルオロアルキルカルボニルフルオライドに、アミド基やエステル基を介してポリエーテル基を結合させた界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルビノールにエチレンオキサイドを反応させたポリエーテル系界面活性剤が表面張力低下剤としてよく知られている。しかし、これらの表面張力低下剤は、収率や耐加水分解性の点で問題がある。
【0004】
分子中に、長鎖アルキル基を有し、かつアミド基やエステル基、カルボニル基等の水素結合性官能基をもつ物質は、分子間相互作用により分子同士が自己集合により分子集合体を形成する。これらの分子集合体は、一般に、その作用や存在形態、存在部位等により二分子膜構造(ラメラ構造)、ヘキサゴナル構造、ミセル構造、リポソーム構造、液晶構造等と呼ばれ、場合によっては、特定の溶媒中でその溶媒を集合体中に包含し疑似固体となった、いわゆるゲル構造のものである。これらの分子集合体中には、特定の条件下において、物質を捕捉することが可能であり、それゆえ有用物質包含体を形成したり、包含した物質に対して反応場を提供することが可能である。
【0005】
しかし、これらの分子間相互作用は比較的弱く、水素結合も加熱により弱体化し、高温では分子集合体が解体してしまうという問題があった。また分子間相互作用の強化のため、アルキル基同士の相互作用を強化すると必然的にアルキル鎖長が長くなり溶媒溶解性が悪化するなどの取扱性の点で問題があった。同様に、水素結合性官能基の数を増やすと分子内あるいは分子間凝集が発生して、溶媒溶解性が悪化したり物質包含性が無くなる等の問題が生じる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、分子間相互作用が大きく、室温はもとより高温でも分子集合体を安定に形成し、有機物質を捕捉し、有用物質包含体を形成したり、包含させた物質に対して反応場を与えうる、溶媒溶解性に優れ取扱いやすい新規化合物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記し特性を有する新規化合物を開発すべく鋭意研究を行った結果、末端にフルオロ飽和炭化水素基が直接炭素−炭素結合を介して導入され、さらにその構造中に親水性かつ水素結合性官能基である、アミド結合を有する特定の化合物がその目的に適合しうることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、一般式
【化3】
Figure 0004248073
〔式中、Rfは酸素原子が介在していてもよく、フッ素原子の一部が塩素原子で置換されていてもよい炭素数1〜29のフルオロ飽和炭化水素基Rは水素原子又はメチル基、Aは分岐鎖を有していてもよい炭素数2〜5のアルキレン基、Qは炭素数1〜のアルキル基xは整数を示す〕
で表わされ、数平均分子量(Mn)が500〜100000の範囲にあるアクリル又はメタクリルアミド誘導体、それを有効成分とする表面張力低下剤、塗料添加剤、樹脂添加剤、記録液添加剤、ルミネセンスエンハンサーのような発光強度増強剤を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のアクリル又はメタクリルアミド誘導体(以下、本発明化合物と称す)は、前記一般式(I)のフルオロ飽和炭化水素基含有化合物あって、化合物(I)におけるRは水素原子又はメチル基が好ましい。
また、化合物(I)におけるRfは−(CF2pX(pは1〜10の整数を、Xはフッ素原子、塩素原子又は水素原子を示す)、−CF(CF3)〔OCF2CF(CF3)〕q−OC37(qは0〜8の整数を示す)、パーフルオロシクロヘキシル基であるのが好ましい。
【0010】
【0011】
【0012】
化合物(I)として特に好ましいのは、一般式
【化4】
Figure 0004248073
〔ここで、Rf´は−(CF2pX(pは1〜10の整数を、Xはフッ素原子、塩素原子又は水素原子を示す)、−CF(CF3)〔OCF2CF(CF3)〕q−OC37(qは0〜8の整数を示す)又はパーフルオロシクロヘキシル基を、R1は水素原子又はメチル基をそれぞれ示す〕
で表わされるものである。
【0013】
化合物(I)の数平均分子量(Mn)は500〜100000の範囲で選ばれるが、フルオロアルキル基などのフルオロ飽和炭化水素基の特徴を顕著に発現させ分子集合体を効率よく形成させるため、さらには目的物の製造効率を向上させるためには500〜50000とするのが好ましい。
なお、化合物(I)においてはフルオロ飽和炭化水素基Rf又はRf´が一方の末端にのみ導入されたものが反応副生物などとして少量混入される場合であってもその程度の量ならば差し支えない。
【0014】
化合物(I)において、Rの炭素数が6以上ある場合、溶媒溶解性等が低下し、またそのために製造困難となる。
【0015】
化合物(I)は、末端にフッ素基含有飽和炭化水素基を有しかつ親水性官能基を有するため、メタノール、エタノールを初めとする親水性溶媒はもとより、ベンゼン、トルエン等の疎水性溶媒などの幅広い種類の溶媒に溶解させることが可能となり、取扱い性が大きく向上しているのである。
【0016】
化合物(I)は、一般式
RfC(=O)OO(O=C)Rf (II)
(ここで、Rfは前記したと同様の意味を示す)
で示される過酸化アシルと、一般式
CH2=CR−CO−NH−A−X−Q (III)
(ここで、R、A、X及びQはそれぞれ前記したと同様の意味を示す)
で示されるビニル系モノマーを反応させることにより得られる。
【0017】
一般式(II)の過酸化アシル(以下過酸化アシルと称する)として好ましいのは、Rfが−(CF2pXのものについては−(CF23F、−(CF24F、−(CF25F、−(CF26F、−(CF27F、−(CF28F、−(CF29F、−(CF210Fで示されるパーフルオロアルキル基であるものが、また−CF(CF3)〔OCF2CF(CF3)〕q−OC37のものについては、qが0、1、2、3、4又は5である、酸素原子が介在するパーフルオロアルキル基であるものであり、またRfがパーフルオロシクロヘキシル基であるものである。
【0018】
また、一般式(III)のビニル系モノマー(以下ビニル系モノマーと称する)としては、一分子中に1個のラジカル反応性不飽和結合を有し、かつアミド基水素結合性官能基を合わせ持つもの、例えばN‐(1,1‐ジメチル‐3‐オキソブチル)‐アクリルアミド(慣用名ダイアセトンアクリルアミド)が、収率やコスト、取り扱いの点から好ましい。
このようなモノマーとしては、メタ(アクリル)酸モノマーのカルボキシル基と、アミノ酸、オリゴペプチド、又はそのエステルのN末端部とのアミド化反応により生成される化合物、例えばN‐アクリロイル‐L‐プロリンメチルエステル、N‐メタクリロイル‐L‐アラニン、N‐メタクリロイルグリシン、N‐メタクリロイル‐L‐アラニル‐L‐アラニン、N‐メタクリロイル‐L‐アラニンメチルエステル(以上群馬大及び原子力研究所・高崎「1997年日本化学会要旨集、1998年高分子学会要旨集」等)好ましい。
【0019】
前記反応において、各反応成分の使用割合は、ビニル系モノマーが過酸化アシルに対し、仕込みモル比で0.1〜100、好ましくは0.5〜50、より好ましくは1〜10の範囲である。このビニル系モノマーの仕込みモル比が0.1未満では、過酸化アシルの自己分解に起因する生成物が大量に発生するし、また100を超えると目的生成物の収率が著しく低下するので好ましくない。
【0020】
また、この仕込みモル比を調整することにより、得られる生成物の分子量を調節することができる。例えばこの比を小さくして、過酸化アシルの使用量(仕込み量)をビニル系モノマーのそれに対し高くすると低分子量の化合物(I)を得ることができるし、またこの比を大きくして過酸化アシルの使用量(仕込み量)をビニル系モノマーのそれに対し低くすると高分子量の化合物(I)を得ることができる。
【0021】
反応条件については、各種原料の種類や使用割合などにより変動するが、通常、常圧下、−20〜150℃、好ましくは0〜100℃の範囲の反応温度が用いられる。反応温度が−20℃未満では反応時間が長くなるし、また150℃を超えても反応時の圧力が高くなりすぎて系の制御が困難となるので好ましくない。さらに、反応時間は通常0.5〜20時間の範囲であるが、実用的には1〜10時間となるように条件を設定するのが望ましい。
【0022】
このような反応条件下において、過酸化アシルとビニル系モノマーを反応させることにより、目的の化合物(I)を直接一段階反応で得ることができるが、反応をより円滑に行うために有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0023】
このような有機溶媒としてはハロゲン化脂肪族溶媒、ハロゲン化芳香族溶媒が特に好ましい。具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、2‐クロロ‐1,2‐ジブロモ‐1,1,2‐トリフルオロエタン、1,2‐ジブロモヘキサフルオロプロパン、1,2‐ジブロモテトラフルオロエタン、1,1‐ジフルオロテトラクロロエタン、1,2‐ジフルオロテトラクロロエタン、フルオロトリクロロメタン、ヘプタフルオロ‐2,3,3‐トリクロロブタン、1,1,1,3‐テトラクロロテトラフルオロプロパン、1,1,1‐トリクロロペンタフルオロプロパン、1,1,2‐トリクロロトリフルオロエタン、1,1,1,2,2‐ペンタフルオロ‐3,3‐ジクロロプロパン、1,1,2,2,3‐ペンタフルオロ‐1,3‐ジクロロプロパン、ベンゾトリフルオリド、ヘキサフルオロキシレン、ペンタフルオロベンゼン等を使用することができ、殊に工業的には1,1,1,2,2‐ペンタフルオロ‐3,3‐ジクロロプロパン、1,1,2,2,3‐ペンタフルオロ‐1,3‐ジクロロプロパン、ベンゾトリフルオリド等の溶媒あるいはこれらの溶媒が任意の割合で混合された混合溶媒〔例えば旭硝子社製、AK‐225(1,1,1,2,2‐ペンタフルオロ‐3,3‐ジクロロプロパン:1,1,2,2,3‐ペンタフルオロ‐1,3‐ジクロロプロパン=1:1.35)〕が好適である。
【0024】
前記溶媒を使用する場合、通常溶媒中の過酸化アシルの濃度が0.1〜50重量%、中でも0.1〜30重量%であるのが望ましい。
【0025】
このようにして得られる化合物(I)は、再沈殿法、カラムクロマトグラフィー法、透析法、蒸留法等で精製することができる。
【0026】
本発明化合物は、表面張力低下性を有し、同時に優れた湿潤性、展着性、流動性、分散性、乳化性、潤滑性を有しているため、多方面での応用、例えば、高分子化合物やオリゴマー等の製造における重合用乳化剤、塗料についてレベリングを向上させたり、消泡したりするための添加剤、家庭用品、農薬、繊維製品等の乳化剤、分散剤、安定剤等として有用である。
【0027】
これは、化合物(I)の末端フルオロ飽和炭化水素基による疎水性や疎油性分子間相互作用に起因する強力な凝集作用と、アミド基のような水素結合性官能基、アミノ酸残基に起因する分子間相互作用が生じる結果、自己集合に基づく分子集合体が形成されることによるものと推測される。
【0028】
本発明化合物について、さらに詳しく以下に説明する。
本発明化合物は、耐水性、耐溶剤性、潤滑性、離型性、耐候性に優れているため、樹脂類に添加しあるいは表面処理を施すことで、その性能を飛躍的に向上させることができる樹脂改質剤、例えば樹脂表面に対する表面処理剤として有用である
【0029】
樹脂表面処理剤として使用する場合は、通常、本発明化合物は適当な有機溶媒に溶解させて液状としたのち、直接基材樹脂表面に適用されるが、更に密着性を向上させるために、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等の公知の樹脂を単独であるいは2種以上混合して本発明化合物と併用し、上記と同様に有機溶媒に溶解させて液状としたのち、基材樹脂表面に適用することも可能である。この際用いられる有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、トリクロロメタン、アセトン、四塩化炭素等の単独あるいは混合溶媒が挙げられる。
【0030】
このようにして調整した樹脂表面処理剤は液状としてはけ塗り、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、ナイフコーティング、ディップコーティング等の公知のコーティング方法に付される。
【0031】
また、樹脂添加剤として使用する場合は、通常、本発明化合物は、原料樹脂に通常配合される添加剤、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、安定剤、可塑剤等とともにあらかじめ添加される。この場合、本発明機能性材料は、両末端にフルオロ飽和炭化水素基を有しているため、成形時にフッ素基に起因する親気性により効率よく表面配向しうることから、本発明の所期の効果を発揮させるのに添加量が少量ですむので、原料樹脂固有の性質を変化させることなく改質することができる。
【0032】
本発明化合物を樹脂改質剤として使用するに当り、その用量は通常、表面処理剤の場合には、該剤中0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、樹脂添加剤の場合には樹脂成分に対し0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の範囲で選ばれる。いずれの場合も、この量が少なすぎると添加効果が十分には発揮されないし、また多すぎても基材となる樹脂の性質に影響を及ぼし、またコスト的にも不利となる。
【0033】
また、本発明化合物は塗料添加剤としても有用である。該剤は、アルキッドメラミン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルメラミン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等をベースとする、通常用いられている塗料に対し、予めあるいはその使用時に添加すればよく、また塗装時にフルオロ飽和炭化水素基の親気性により効率よく表面配向しうるので、添加量が少量でもその効果が発揮される。
また、フッ素系塗料に対しても、本発明化合物はフルオロ飽和炭化水素基を有しているため、相溶性良く混和しうる。
【0034】
このような塗料添加剤としての使用割合は通常、それが添加される塗料の樹脂分に対して0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の範囲で選ばれる。この量が少なすぎると添加効果が十分には発揮されないし、また多すぎても基材となる樹脂の性質に影響を及ぼし、またコスト的にも不利となる。
【0035】
また、本発明化合物は、分子間相互作用に因る分子集合体を形成し、その内部に有機物質、例えば色素等を包接又は包含する性質がある。
本発明化合物は、このような性質を応用して、記録液添加剤としても有用である。
【0036】
本発明化合物を水系記録液添加剤として使用する場合は、水系記録液に添加成分として通常用いられているものと共に添加され、適宜、ディスパー、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散し、高速分散機、羽式撹拌機、乳化機等により混合、撹拌して所望の水系記録液に調製される。この際、本発明化合物はそのまま、あるいはメタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、ジメチルスルホキシド等にあらかじめ溶解して添加すればよく、また、その添加量は通常、記録液全体の0.01〜5重量部の範囲で選ばれる。この量が少なすぎると添加効果が十分には発揮されないし、また多すぎても記録液の性質を変化させてしまう。
【0037】
上記常用の添加成分としては、例えば着色剤(例えばカラーインデックスに掲載されている従来公知のブラック系、イエロー系、マゼンタ系、シアン系の基礎染料、直接染料、酸性染料、食品染料等の各種水溶性染料等)、水、水溶性有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、2‐ピロリドン、尿素、1,2,3‐ヘキサントリオール、チオグリコール、ジメチルスルホキシド等)、浸透剤(例えば、ジエチレングリコールモノブチルエ−テル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、高分子系活性剤等)、分散剤(水溶性あるいは水分散性樹脂等)、各種界面活性剤、糖類(例えば、グルコース、マンノース、マルトース、フラクトース等)、粘度調整剤(例えば、ポリビニルアルコール、セルロース類、水溶性樹脂等)、表面張力調整剤(例えば、シリコン系やフツ素系のもの等)、比抵抗調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防カビ剤(例えば、安息香酸ナトリウム、5‐クロロ‐2‐メチル‐4‐イソチアゾリン‐3‐オン、2‐メチル‐4‐イソチアゾリン‐3‐オン等)、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸及びそのナトリウム塩、ジアンモニム塩、テトラアンモニウム塩等)、消泡剤等が挙げられる。
【0038】
このようにして、水系記録液に添加される本発明化合物は、記録液中において分子集合体を作り、その内部に着色剤を内包する。それにより、前記記録液により記録された文字や図表等に耐水性、耐候性、耐熱性等を付与することができる。
また、本発明化合物は、低表面張力性、潤滑性等を併せ持つため、前記水性記録液の成分である浸透剤、分散剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、消泡剤等の機能を増強あるいは代行することが可能である。
このようにして調製された本発明化合物含有水系記録液は、インクジェット印刷用インクや水性ペン、カラー液晶画面のカラーフィルター作成等への応用が可能である。
【0039】
また、本発明化合物を油系記録液添加剤として使用する場合は、油系記録液に、通常用いられる添加成分、例えば着色剤(例えば、カラーインデックスに掲載されているソルベントブラック、スピロンブラック等の油溶性ブラック系染料、ソルベントイエロー、スピロンイエロ−等の油溶性染料、ソルベントレッド、スピロンレッド、バリファーストレッド等の油溶性マゼンタ系染料、ソルベントブルー、スピロンブルー、バリファーストブルー等の油溶性シアン系染料等)、非水溶性極性溶剤(例えば、ベンジルアルコール、フェニルエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル等)、非水溶性分散剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非水溶性有機アミン等)、オイル系潤滑剤(例えば、ラウリン酸、オレイン酸等)、増粘剤(水添ロジン樹脂、ケトン樹脂等)などと共に添加して所望の油系記録液に調製される。
【0040】
また、上記添加成分に加え、分散質(例えば、架橋型アクリル樹脂及び中和剤としてのトリエタノールアミンや界面活性剤等)、多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール等)、水などを併用すれば、W/O油系エマルションタイプの記録液を作成することができる。この場合も、前記水系記録液の場合と同様、本発明機能性材料はそのままあるいは適当な有機溶媒、例えばベンジルアルコール、フェニルエチルエーテル等にあらかじめ溶解して添加すればよく、また、その添加量は通常、記録液全体の0.01〜5重量%の範囲とすればよい。この量が少なすぎると添加効果が十分には発揮されないし、また多すぎても記録液の性質を変化させてしまう。
【0041】
このようにして添加された本発明化合物は油系記録液中で分子集合体を形成し、着色剤を内包することで、耐水性、耐候性、耐熱性等を一層強化することができる。
また、本発明化合物は、低表面張力性、潤滑性等を併せ持つため、前記油系記録液の成分である浸透剤、分散剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、消泡剤等の機能を増強あるいは代行することが可能である。
このようにして調製された本発明化合物含有油系記録剤は、サインペン、マーカーペン、ボールペン等のインクとしての応用が可能である。
【0042】
また、本発明化合物は、発光強度増強剤、特に化学ルミネセンスを示すルミノールやイソルミノールやこれらの誘導体のルミノール発光反応を増強するエンハンサーとして有用である。
例えば、ルミノールやイソルミノールやこれらの誘導体は、通常、アルカリ性条件下において、過酸化水素、銅イオンや鉄イオン等の金属イオン等の発光触媒存在下で、励起状態にある3‐アミノフタル酸イオンと窒素に分解し、この励起状態の3‐アミノフタル酸イオンが基底状態へと移行する際に発光する。
【0043】
本発明化合物は、前記の如く分子間相互作用により形成された分子集合体中に、ルミノールやイソルミノールやこれらの誘導体を包接することができる。さらに、これらの包接場においては、励起状態にある3‐アミノフタル酸イオンの基底状態への移行頻度が上昇するため発光が増強されると考えられる。
【0044】
本発明化合物を、ルミネセンスエンハンサーとして利用する場合には、発光物質たるルミノール、イソルミノール及びその誘導体〔例えば、N‐(4‐アミノブチル)‐N‐エチルイソルミノールヘミスクシミド、N‐(6‐アミノヘキシル)‐N‐エチルイソルミノール、N‐(4‐アミノブチル)‐N‐エチルイソルミノ−ル等〕、銅イオンや鉄イオン等の金属イオン〔例えば、ヘキサシアノ鉄(III)カリウムや銅のアンミン錯塩等〕、酸化剤(例えば過酸化水素等)等の主要成分を、アルカリ性に調製した緩衝液や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等を添加してアルカリ性とした水に溶解・分散させて使用すればよい。
【0045】
このような緩衝液の例としては、炭酸、リン酸、ホウ酸、アミノ酸、クエン酸のようなオキシカルボン酸等の酸又はその塩系の緩衝液、2,4,6‐コリジン−塩酸緩衝液、トリス(ヒドロキシメチルアミノメタン)−塩酸緩衝液、2‐アミノ‐2‐メチル‐1,3‐プロパンジオール−塩酸緩衝液、2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノール−塩酸緩衝液、グッドバッファー(商品名)の内、最適pH範囲がアルカリ条件下にあるもの(例えばBES緩衝液、MOPS緩衝液、TES緩衝液、HEPES緩衝液、DIPSO緩衝液、TAPSO緩衝液、POPSO緩衝液、HEPPSO緩衝液、EPPS緩衝液、Tricine緩衝液、Bicine緩衝液、TAPS緩衝液、CHES緩衝液、CAPSO緩衝液、CAPS緩衝液等)などが挙げられる。
【0046】
上記ルミネセンスエンハンサーとして用いる場合、本発明化合物は、発光反応液中に0.001〜10.0重量%、好ましくは0.01〜2.0重量%となるように添加すればよく、予め緩衝液等に溶解、分散させて使用すればよい。この添加量が0.001重量%より少ないと本発明機能性材料が発光体である発光物質を十分には包接することができなくなるし、また10.0重量%より多くても余剰の本発明化合物が反応系内に沈殿してくる。
【0047】
このようなルミネセンスエンハンサーを使用したルミノール発光系は、血液検出系のような特殊分析系や、環境ホルモン量測定、健康診断の際の血液検査、癌やエイズ等の各種病理診断薬の分野において、検出系にルミネセンスを応用した免疫学的測定法(例えば、化学発光免疫測定法や化学発光酵素免疫測定法等)を適用することが可能であるし、また免疫学的病理染色分野においても、目的とする抗原の検出系に応用できる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
なお、分析方法としてIRスペクトルは島津製作所製FTIR‐8200PC型を使用し、NMR‐スペクトルはバリアン社製Unityplus500(500MHz)を使用した。分子量測定には、島津製作所製高速液体クロマトグラフィーLC‐6AD(示差屈折率検出器:同RID‐6A、カラム:SHODEX製GPC KF‐802.5)を用いて標準プルランの校正曲線により化合物の分子量を測定した。また、接触角測定には、協和界面科学製自動接触角計CA‐Z型を、表面張力測定には協和界面科学製表面張力計CBVP‐A3型を、蛍光強度測定にはアロカ社製ルミネセンスリーダーBLR−201をそれぞれ使用した。
【0049】
実施例
撹拌器、冷却器、温度制御装置を備えた300mlの反応器に、ダイアセトンアクリルアミド(協和発酵工業社製)(以下DAAMと称する)3.00mmol(0.51g)をAK‐225(旭硝子社製、1,1,1,2,2‐ペンタフルオロ‐3,3‐ジクロロプロパン:1,1,2,2,3‐ペンタフルオロ‐1,3‐ジクロロプロパン=l:l.35(モル比)の混合溶媒)100gに溶解した溶液を加えたのち、過酸化ジ(パーフルオロブチリル)2.00mmol(0.85g)をAK‐225の30gに溶解させたものを加え、窒素気流下45℃で5時間反応させた。こうして得られた淡黄色透明生成物を乾燥させ、次いで、AK‐225−ヘキサン系による再沈殿で精製したところ、式
【化5】
Figure 0004248073
(但し、Rf´=C37
で示されるフルオロアルキル基含有化合0.65gが得られた。
【0050】
実施例
過酸化ジ(パーフルオロブチリル)2.00mmo1に代えて、過酸化ジ(パーフルオロ‐2‐メチル‐3‐オキサヘキサノイル)5.00mmol(3.29g)を使用し、ダイアセトンアクリルアミドの量を15.0mmol(2.54g)に変えた以外は、合成例1と同様にして反応させ、式(J)〔但し、Rf´=CF(CF3)OC37〕のフルオロアルキル基含有化合2.96gを得た。
【0051】
実施例
過酸化ジ(パーフルオロブチリル)2.00mmo1に代えて、過酸化ジ(パーフルオロ‐2,5‐ジメチル‐3,6‐ジオキサノナノイル)2.00mmo1(1.98g)を使用し、ダイアセトンアクリルアミドの量を7.00mmol(1.18g)に変えた以外は、合成例1と同様に反応させ、式(J)〔但し、Rf´=CF(CF3)OCF2CF(CF3)OC37〕のフルオロアルキル基含有化合0.77gを得た。
【0052】
実施例
過酸化ジ(パーフルオロブチリル)2.00mmo1に代えて、過酸化ジ(パーフルオロ‐2,5,8‐トリメチル‐3,6,9‐トリオキサドデカノイル)1.00mmo1(1.32g)を使用し、ダイアセトンアクリルアミドの量を4.00mmol(0.68g)に変えた以外は、合成例1と同様に反応させ、式(J)[但し、Rf´=CF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF(CF3)OC37〕のフルオロアルキル基含有化合1.14gを得た。
【0053】
比較例
撹拌器、冷却器、温度制御装置を備えた300mlの反応器にダイアセトンアクリルアミド100mmo1(16.9g)をベンゼン(東京化成社製、試薬特級)100gに溶解した溶液を加え、85℃まで撹拌しながら昇温させた。次いで、2,2′‐アゾビス(イソブチロニトリル)(東京化成社製、試薬1級)3mmol(0.50g)をジクロロメタン20gに溶解したものを窒素気流下2時間かけて滴下したのち、95℃まで昇温し6時間反応させ、次いで溶媒を留去し、式
【化6】
Figure 0004248073
で示される淡黄色固体生成12.0gを得た。
【0054】
参考例1
実施例1〜4及び比較例により得られた化合物について、収率、数平均分子量を次のようにして求めた。その結果を表1に示す。
収率:原料の仕込み量から算出。
数平均分子量:溶媒にテトラヒドロフランを用い、前記装置によるゲルろ過法により測定。
なお、表中(RfCO22は各種過酸化フルオロアルカノイルを示す。
【0055】
【表1】
Figure 0004248073
【0056】
参考例2
実施例1〜4で得た化合物について、FT−IRデータ及びNMRデータを測定した。その結果を表2に示す。
なお、FT−IRは前記装置を用いてKBr法で測定した。NMRは前記装置を用い、溶媒に1H−NMR、19F−NMR共に重クロロホルムを用いて測定した。なお、19F−NMRにおいては、外部対照サンプルとしてトリフルオロ酢酸を用いた。FT−IRの測定数値単位はcm-1、NMRの測定数値単位(δ)はppmである。
【0057】
【表2】
Figure 0004248073
【0058】
参考例3
実施例1〜4及び比較例で得た化合物について、各種溶媒に対する溶解性を調べ、次の基準で評価した。その結果を表3に示す。
○:溶解する。
△:均一分散。
×:溶解しない。
【0059】
【表3】
Figure 0004248073
【0060】
表中、MeOH、EtOH、THF、AcOEt、DMF及びDMSOはそれぞれメタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドを示す。
表3より、実施例1〜4で得た本発明化合物は幅広い溶媒に溶解することが分かる。
【0061】
実施例(表面張力低下剤)
実施例1〜4及び比較例で得た化合物を試料として、種々の濃度でm‐キシレン(東京化成社製、試薬特級)に溶解し、25℃における表面張力を前記装置を用いウィルヘルミー法により測定した。その結果を表4に示す。表面張力単位はmN/m、気相は空気である。
【0062】
【表4】
Figure 0004248073
【0063】
表4より、本発明化合物は、m‐キシレンの表面張力を効率よく低下させ、しかもその効果はフルオロアルキル基の鎖長に比例していることが分かる。
【0064】
実施例(樹脂表面処理剤)
実施例1〜4及び比較例で得た化合物を試料に用い、各試料をエタノールに2.0重量%の濃度で溶解して表面処理剤を調製した。
この表面処理剤を用い、日本テストパネル製、ポリエチレンテレフタレート樹脂標準板について、次の手順で処理し、精製水及びドデカンに対する静止接触角を、前記装置を用いて測定した。その結果を表5に示す。
【0065】
(処理手順)
(1)樹脂標準板を、ポリオキシエチレンフェニルエーテル(ライオン製、商品名「リポノックスNCJ」)5重量%精製水溶液で、2時間超音波洗浄し、次いで精製水で1時間超音波洗浄する。
(2)樹脂標準板を85℃で1時間乾燥させたのち、その表面を室温でメタノール及びヘキサンを用いて洗浄、脱脂する。
(3)このように前処理された樹脂標準板を、上記表面処理剤に30分間浸漬したのち、130℃で15分間反応させる。
(4)反応終了後の樹脂標準板を、エタノールでの2時間のソックスレー抽出に付すことにより、余分な化合物を除去する。
【0066】
【表5】
Figure 0004248073
【0067】
表5より、樹脂は、表面処理剤に本発明化合物を用いた場合には、表面にフルオロアルキル基が導入され、撥水撥油性を示すことが分かる。
【0068】
また、この場合には樹脂表面が精製水滴下後の時間経過によって親水性へと移行する、いわゆるフリップ−フロップ現象がわずかながら観察され、またドデカンに対し撥油性を示した。これにより、樹脂表面の優れた汚れ防止性のみならず、良好な防曇性も期待しうる。
【0069】
実施例(樹脂添加剤)
実施例1、2及び比較例で得た化合物を試料に用い、各試料とポリカーボネート樹脂を塩化メチレン(和光純薬社製、試薬1級)に溶解させ、各試料0.2重量%、ポリカーボネート樹脂10.0重量%及び塩化メチレン残部からなる処方の樹脂液を調製した。また、試料を用いない外は上記と同様にして無添加の樹脂液を調製した。
これらの樹脂液を用い、ポリテトラフルオロエチレンフィルム上にフィルムアプリケーター(太佑機材社製、商品名「マルチアプリケーター」)にて均一に塗布したのち、85℃で4時間乾燥、成膜させた。
このようにして得られたフィルムをポリテトラフルオロエチレンフィルムより剥離させ、水及びドデカンに対する静止接触角を前記装置を用いて測定した。その結果を表6に示す。
【0070】
【表6】
Figure 0004248073
【0071】
表6より、樹脂に本発明化合物を添加した場合には、撥水撥油性を示すことが分かる。
【0072】
実施例(塗料添加剤)
実施例2、3及び比較例で得た化合物を試料に用い、各試料1.0重量%、熱硬化性アクリル樹脂塗料(関西ペイント社製、商品名「マジクロン1000ホワイト」)40.0重量%及び専用シンナー残部からなる処方の塗料組成物を調製した。
この塗料組成物を、冷間圧延鋼板(日本テストパネル製、サイズ:70×150×0.8mm)にバーコーターで30μmの厚さに塗布し、150℃のオーブン中で30分間加熱硬化させた。
なお、無処理区には上記熱硬化性アクリル樹脂塗料のみを上記と同様に塗布した。
このようにして作成した塗装板について、水及びドデカンの静止接触角を、前記装置を用いて測定した。
【0073】
また、各塗装板を3月間屋外に暴露し、汚れ性を次の基準で評価した。
◎:変化なし。
○:ほとんど変化なし。
△:若干汚れが残存する。
×:全面に汚れが残存する。
これらの結果を表7に示す。
【0074】
【表7】
Figure 0004248073
【0075】
これより、合成物2、3を配合した塗料による塗装鋼板の表面は、撥水撥油性を有し、かつ汚れ防止性も有することが分かる。
【0076】
実施例(色素抽出剤)
実施例2、3、4及び比較例で得た化合物を試料に用い、各試料を0.3mmol/リットルの濃度となるようにクロロホルムに溶解して各供試液を調製した。一方、色素であるベーシックブルー9(カラーインデックス52015、ランカスター社製試薬高純度物)及びアシッドオレンジ52(カラーインデックス13025、ランカスター社製試薬)を各々1.0mmol/リットルの濃度となるように水に溶解して各色素液を調製した。
各供試液及び色素液を各5mlずつネジ口試験管にとり、5分間ボルテックスにて撹拌し、水層からクロロホルム層への各色素の液−液抽出率を測定した。その結果を表8に示す。
なお、抽出率は混合前の水槽における各色素の最大吸収波長(ベーシックブルー9;644nm、アシッドオレンジ52;463nm)における吸光度をλw、抽出操作後のクロロホルム層の各色素の最大吸収波長における吸光度をλcとしたとき、(λc/λw)×100(%)で示される数値である。
【0077】
【表8】
Figure 0004248073
【0078】
表8より、本発明化合物により色素が効率よく抽出されることが分かる。
【0079】
実施例10(記録液添加剤)
実施例2、3及び比較例で得た化合物を試料に用い、各試料0.5重量%、色素5.0重量%、エタノール10.0重量%、ジエチレングリコール10.0重量%、及び水の残部からなる処方の記録液を調製した。
この記録液をペーパークロマトグラフィー用ろ紙(アドバンテック社製、No.51)に5μlづつスポットした。溶媒を蒸発させたのち、水を展開溶媒に用い、色素の移動度を、展開溶媒の移動距離に対する色素の移動距離の値として求めた。その結果を表9に示す。
【0080】
【表9】
Figure 0004248073
【0081】
これより、本発明化合物を添加した記録液は、耐水性に優れていることが分かる。
【0082】
実施例11(ルミネセンスエンハンサー)
実施例3及び比較例で得た化合物を試料に用い、各試料2gを2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノール緩衝液(0.1M、pH9.6)1リットルに分散させた溶液を調製した。この分散液450μl、2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノール緩衝液(0.1M、pH9.6)300μl、ヘキサシアノ鉄(III)カリウムの上記緩衝液溶液(0.4mmol/リットル)50μl、ルミノールの上記緩衝液溶液(200nmol/リットル)200μl及び過酸化水素(100μmol/リットル)100μlの処方の蛍光発光液を調製した。
この蛍光発光液を用い、前記装置にて蛍光強度を測定することによりルミノール発光強度増強効果を調べた。
なお、蛍光強度は発光量(フォトン数)で表わされ、測定単位は(×10-3カウント/分)である。
【0083】
【表10】
Figure 0004248073
【0084】
これより、本発明化合物を配合した蛍光発光液は、測定開始後30分において、比較合成物を配合した場合や無添加の場合に比べ、約50倍の発光強度増強効果をもたらすことが分かる。
【0085】
【発明の効果】
本発明化合物は、分子間相互作用が大きく、室温はもとより高温でも分子集合体を安定に形成し、有機物質を捕捉し、有用物質包含体を形成したり、包含させた物質に対して反応場を与えうる、溶媒溶解性に優れ取扱いやすいものであって、種々の用途に適用することができ、例えば、表面張力低下剤、樹脂表面処理剤、樹脂添加剤、塗料添加剤、記録液添加剤、ルミネセンスエンハンサーのような発光強度増強剤として有用である。

Claims (9)

  1. 一般式
    Figure 0004248073
    〔式中、Rfは酸素原子が介在していてもよく、フッ素原子の一部が塩素原子で置換されていてもよい炭素数1〜29のフルオロ飽和炭化水素基Rは水素原子又はメチル基、Aは炭素数2〜5のアルキレン基、Qは炭素数1〜のアルキル基xは整数を示す〕
    で表わされ、数平均分子量(Mn)が500〜100000の範囲にあるアクリル又はメタクリルアミド誘導体
  2. 一般式
    Figure 0004248073
    〔式中、Rfは酸素原子が介在していてもよく、フッ素原子の一部が塩素原子で置換されていてもよい炭素数1〜29のフルオロ飽和炭化水素基、Rは水素原子又はメチル基、xは整数を示す〕
    で表わされる請求項1記載のアクリル又はメタクリルアミド誘導体
  3. 式中のRfが−(CF 2 p X(pは1〜10の整数、Xはフッ素原子又は塩素原子を示す)、−CF(CF 3 )[OCF 2 CF(CF 3 )] q −OC 3 7 (qは0〜8の整数を示す)又はパーフルオロシクロヘキシル基である請求項1又は2記載のアクリル又はメタクリルアミド誘導体。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載のアクリル又はメタクリルアミド誘導体を有効成分とする表面張力低下剤
  5. 請求項1ないし3のいずれかに記載のアクリル又はメタクリルアミド誘導体を有効成分とする樹脂表面処理剤
  6. 請求項1ないし3のいずれかに記載のアクリル又はメタクリルアミド誘導体を有効成分とする樹脂添加剤
  7. 請求項1ないし3のいずれかに記載のアクリル又はメタクリルアミド誘導体を有効成分とする塗料添加剤
  8. 請求項1ないし3のいずれかに記載のアクリル又はメタクリルアミド誘導体を有効成分とする記録液添加剤
  9. 請求項1ないし3のいずれかに記載のアクリル又はメタクリルアミド誘導体を有効成分とする発光強度増強剤
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