JP4247657B2 - 防汚加工方法、及び該加工方法を施した基材 - Google Patents
防汚加工方法、及び該加工方法を施した基材 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙や繊維素材に対して、耐摩耗性、耐洗濯性、撥水撥油性などの優れた性能を付与出来る防汚加工方法、及び加工方法を施した基材に関する。更に詳しくは、従来のフッ素樹脂による加工方法よりも、紙や繊維素材に対して優れた耐摩耗性、耐洗濯性、撥水撥油性などを付与出来る防汚加工方法に関するものであり、該加工方法を施した紙、壁紙、不織布、人工皮革、合成皮革、織物、及び編物などより選ばれる1種、又は2種以上の複合体より選ばれる基材に関する。本発明は、衣料、雑貨、建築材料、インテリア素材、車輌内装材、包装材料などの広範囲の用途に利用可能である。
【0002】
【従来の技術】
従来、耐久性を具備する防汚加工方法としては、例えば、特開平3−234870号公報にて第1段階目に水系フッ素樹脂を付着させ、撥水撥油効果を発現させない状態で予備乾燥を行い、第2段階目に有機溶剤系のフッ素樹脂を付着させる2段階の加工方法が提案されている。本提案は、第2段階目に浸透力の高い有機溶剤系のフッ素樹脂を用いることにより、前処理で撥水撥油性を有するフッ素樹脂を用いても十分浸透し、且つフッ素樹脂が基材へ均一に充填されると共に表面にフッ素原子が規則的に配向することで防汚性を発現させるものである。しかしながら、上記の防汚加工方法は、第2段階目に有機溶剤系フッ素樹脂を使用しているために、近年の環境負荷低減の動き(特に、VOC対策)に逆行しており、有機溶剤排出規制が強まる状況に適応していないのが現状である。また、有機溶剤を使用しているために、作業者の安全衛生上の問題や防災上防爆型設備を必要とするため設備コスト面での問題もあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、紙や繊維素材、人工皮革、合成皮革に対して、耐摩耗性、耐洗濯性、撥水撥油性などの優れた性能を付与出来る防汚加工方法と、該防汚加工方法を施した基材を提供することにある。
【0004】
【解決する技術手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す特定の加工方法にて、紙や繊維素材、人工皮革、合成皮革に対して、耐摩耗性、耐洗濯性、撥水撥油性などの優れた性能を付与出来る防汚加工方法、及び該防汚加工方法を施した基材を提供出来ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0005】
即ち、本発明は、基材に対して、第1段階目の加工としてフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)の単独重合体、及び/又はフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)とフッ素化アルキル基非含有エチレン性不飽和単量体(B)との共重合体、及び/又はフッ素化アルキル基含有アルコール(C)の重縮合付加体を必須成分とするアニオン型フッ素樹脂エマルジョンを基材に付着させ皮膜を形成させ、更に、第2段階目の加工としてカチオン型フッ素樹脂エマルジョンを付着させることを特徴とする防汚加工方法を提供するものであり、
【0006】
また、本発明は、前記の防汚加工方法を施したことを特徴とする、紙、壁紙、不織布、人工皮革、合成皮革、織物、及び編物より選ばれる1種、又は2種以上の複合体より選ばれる基材を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
次いで、本発明を実施するにあたり、必要な事項を具体的に以下に述べる。
【0008】
本発明で云う基材とは、紙、壁紙、不織布、人工皮革、合成皮革、織物、及び編布等より選ばれる1種、又は2種以上の複合体を云い、これらを目的に応じて任意に用いることが出来るが、これらに限定されるものではない。本発明で用いる基材としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂をラミネートした紙;合成紙;ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリルなどの合成繊維及びこれらの改良繊維からなる織物や編物;羊毛、絹、木綿、麻などの天然繊維からなる織物や編物;アセテート、レーヨンなどの半合成繊維など、あるいはこれらの混用繊維からなる織物や編物;不織布等の繊維シート状物、等々が挙げられる。更に、これら繊維シート状物に有機溶剤系樹脂あるいは水系樹脂、好ましくはポリウレタン樹脂が含侵加工、スプレー加工、あるいはコーティング加工(発泡コーティングも含む)されてポーラス層を形成した人工皮革や合成皮革が挙げられるが、前記例示によって何等限定されるものではない。
【0009】
本発明において、何故イオン性の異なるフッ素系樹脂を2段階に分けて加工することにより優れた防汚性が発現するかについては判然とはしないが、第1段目としてアニオン型フッ素樹脂エマルジョン単独、及び/又はアニオン型フッ素樹脂エマルジョンと水性分散型樹脂とを併用した配合液を基材に、含浸、スプレー又は塗布することにより、樹脂成分が基材に強固に付着し、先ず、基材全体への一次撥水撥油性、及び一次防汚性を付与する。次いで第2段目としてカチオン型フッ素樹脂エマルジョンを基材へ含浸、スプレー又は塗布することにより基材表面のフッ素濃度が上昇する。このようにして得られた防汚皮膜は結果的に高度な撥水撥油性及び防汚性を有することが可能となるのである。
【0010】
この防汚性付与の機構について、フッ素樹脂エマルジョンのイオン性の観点より推察すると、第1段階目において基材に含浸、又は塗布されたアニオン型フッ素樹脂固形分は基材全体とは言えどもミクロ的には部分的にしか基材に対して付着していない状態であると考えられ、そこに第2段階目でイオン的には対荷電であるカチオン型フッ素樹脂が含浸、又は塗布された場合には、第1段階目で処理したアニオン樹脂の付着していない部分、即ち未荷電の基材部分に選択的に吸着することとなる。よって、第2段階目の加工が終了した時点では、基材全体にフッ素樹脂が均一に付着した状態となり、強固な耐久性、防汚性、撥水撥油性などの特性を発現する皮膜が形成されると考えられる。
【0011】
本発明で使用するアニオン型フッ素樹脂エマルジョン、及びカチオン型フッ素樹脂エマルジョンについて以下に詳細を説明する。
【0012】
本発明で使用するフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)としては、分子中にエチレン性不飽和基とフッ素化アルキル基を有する化合物であれば特に制限はない。本発明で使用するフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)としては、重合反応性、加工処理用配合液中の他の組成に対する相溶性、入手の容易さなどの点から、アクリルエステル基及びその類縁基を含有するものが適しており、具体的には下記一般式《1》にて表されるフッ素化(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0013】
尚、本発明において、加工処理用配合液とは、第1段階目及び第2段階目の含浸加工、スプレー加工、又は塗布加工(コーティング加工)時に使用する水性分散型樹脂、それに使用される乳化剤、水や有機溶剤のほか、目的とする性能を発現するための各種添加物に至る全ての配合物を意味する。また、(メタ)アクリレートとは、メタクリレート、アクリレート、フルオロアクリレート、塩素化アクリレートを総称するものとする。即ち、
【0014】
【化1】
【0015】
〔一般式《1》中、Rfは炭素数1〜20のパーフロロアルキル基、または部分フッ素化アルキル基であり、直鎖状、分岐状、または主鎖中に酸素原子が介入したもの、例えば、−(OCF2CF2)2CF(CF3)2等でもよく、R1はH,CH3, Cl, またはFであり、Xは2価の連結基であり、例えば、連結基[1]である−(CH2)n−の他に、
【0016】
【化2】
【0017】
(但し、連結基[1]〜[4]中のnは1〜10の整数であり、R2はHまたは炭素数1〜6のアルキル基である。)
【0018】
更に、
【0019】
【化3】
【0020】
または、
【0021】
【化4】
【0022】
等であり、aは0または1である。〕にて表わされる化合物や、一般式《2》の如き分子中にパーフロロアルキル基を複数個有する化合物〔一般式《2》中、mは1〜14の整数である。〕である。
【0023】
【化5】
【0024】
本発明で使用するフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレ−トの具体例としては、以下の如きものが挙げられる。例えば、
【0025】
【化6】
【0026】
更に、
【0027】
【化7】
【0028】
更に、
【0029】
【化8】
【0030】
【化9】
【0031】
【化10】
【0032】
【化11】
【0033】
【化12】
【0034】
尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。また、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)は1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を同時に用いても構わない。
【0035】
本発明で使用するフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)は、本発明に係わる基材表面に固着して高度の防汚性、撥水性、耐久性を付与する目的で分子内に導入されるものである。
【0036】
本発明で使用するフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)におけるフッ素化アルキル基、及び/又はフッ素化アルケニル基の炭素数は、防汚皮膜の撥水性を発現するために3〜20の範囲が好ましく、より高度な撥水性を発現し且つエマルジョンの安定性を保持するためには6〜12の範囲がより好ましい。
【0037】
本発明で使用するアニオン型及びカチオン型フッ素樹脂エマルジョンは、上記のフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)の1種又は2種以上を単独で重合せしめて得られるホモポリマーを用いてもよいし、前記不飽和単量体(A)とフッ素化アルキル基非含有エチレン性不飽和単量体(B)を共重合してもよい。該単量体(B)は加工処理用配合液中の他の原料に対する相溶性、重合反応性、コスト等を考慮して、目的に応じて適宜選択出来る。尚、本発明において、加工処理用配合液とは、第1段階目、及び第2段階目の含浸加工、スプレー加工、又は塗布加工時に使用される水性分散型樹脂、それに使用される乳化剤、水や有機溶剤のほか、目的とする性能を発現するための各種添加物に至る全ての配合物を意味する。
【0038】
本発明で使用するフッ素化アルキル基非含有エチレン性不飽和単量体(B)としては、特に制限はなく、公知公用の化合物であれば何れのものでも使用できる。該単量体(B)の具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、核置換スチレン、ジアセトンアクリルアミド、アクリロニトリル、アクリルアミド、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸、酢酸ビニル等の脂肪酸ビニル、また、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、即ち、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の一価ないし二価のカルボン酸、また、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の誘導体として、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以後(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルの両方を総称するものとする)、即ち、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、ステアリルエステル等、また(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のヒドロキシアルキルエステル、即ち、2−ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシプロピルエステル、ヒドロキシブチルエステル等が例示でき、
【0039】
また、他の単量体(B)としては、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のアミノアルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルエステル、ジエチルアミノエチルエステル、ジエチルアミノプロピルエステル等)、(メタ)アクリル酸の炭素数が3〜18のエーテル酸素含有アルキルエステル(例えば、メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、メトキシプロピルエステル、メチルカルビルエステル、エチルカルビルエステル、ブチルカルビルエステル等)、橋状結合含有モノマー(例えば、ジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等)、アルキル炭素数が1〜18のアルキルビニルエーテル(例えば、メチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等)、(メタ)アクリル酸のグリシジルエステル(例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等)、更に、サートマー社製スチレンマクロモノマー4500、東亜合成(株)社製AA−6、AN−6等の各種マクロモノマーが例示でき、
【0040】
更に、本発明で使用する他のフッ素化アルキル基非含有エチレン性不飽和単量体(B)としては、シランカップング基含有単量体(γ−メタクリロキシプロピルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメチキシシラン等)、分子中に極性基とりわけアニオン性基や水酸基を含有するモノマ−(アクリル酸、メタアクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、部分スルホン化スチレン、モノ(アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェ−ト、モノ(メタクリロキシエチル)アシッドホスフェ−ト、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト等)、ポリジメチルシロキサン鎖を有するシリコーンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン基を含有する(メタ)アクリレート、及びビニル系単量体等が挙げられる。
【0041】
尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。本発明に係わるフッ素化アルキル基非含有エチレン性不飽和単量体(B)は、1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を同時に用いても構わない。
【0042】
本発明で使用するアニオン型及びカチオン型フッ素樹脂エマルジョンを共重合体として得る場合の前記単量体(A)と前記単量体(B)の割合は、加工処理用配合液組成、目的とする防汚皮膜の性能レベル、塗工方法等によっても異なるが、好ましくは(A)/(B)=5〜95/95〜5重量比の範囲であり、より好ましくは(A)/(B)=30〜80/70〜20重量比の範囲であり、特に好ましくは(A)/(B)=40〜70/60〜30重量比の範囲である。
【0043】
更には、本発明で使用するアニオン型及びカチオン型フッ素樹脂エマルジョンの重合体の融点、ガラス転移点、あるいは流動開始温度、軟化点の何れかが好ましくは20℃以上であり、より好ましくは50〜160℃の範囲である。尚、本発明で云う重合体の中には、単独重合体、共重合体も含む。
【0044】
また、本発明で使用するアニオン型及びカチオン型フッ素樹脂エマルジョンの重合体の重量平均分子量は、好ましくは700〜100,000の範囲であり、より好ましくは3,000〜30,000の範囲である。かかる範囲であれば優れた耐久性、防汚性、及び基材への密着性を得ることが出来る。
【0045】
本発明に係わる単独重合体、又は共重合体の製造方法には何ら制限はなく、公知の方法、即ちラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法等の重合機構に基づき、溶液重合法、塊状重合法、更にエマルジョン重合法等によって製造できるが、特にラジカル重合法が簡便であり、工業的に好ましい。
【0046】
この場合重合開始剤としては、当業界公知のものを使用することができ、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ジアシル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、フェニルアゾトリフェニルメタン等のアゾ化合物、金属キレート化合物等が挙げられる。
【0047】
更に、必要に応じて、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノ−ル、エチルチオグリコ−ル酸、オクチルチオグリコ−ル酸等の連鎖移動剤や、更にγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のカップリング基含有チオ−ル化合物を使用することができる。
【0048】
また、光増感剤や光開始剤の存在下での光重合あるいは放射線や熱をエネルギー源とする重合によっても、本発明に係るフッ素系のランダムもしくはブロック共重合体を得ることができる。
【0049】
重合反応は、溶剤の存在下又は非存在下の何れでも実施出来、特に限定はしないが、溶剤存在下の場合の方が好ましく、使用する溶剤としては、例えば、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、n−ブタノ−ル、iso−ブタノ−ル、tert−ブタノ−ル等のアルコ−ル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類;2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−オキシプロピオン酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の極性溶剤;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、エチルセロソルブアセテート等のエーテル類;プロピレングリコ−ル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テルアセテ−ト、プロピレングリコ−ルモノエチルエ−テルアセテ−ト、プロピレングリコ−ルモノブチルエ−テルアセテ−ト等のプロピレングリコ−ル類及びそのエステル類;1,1,1−トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤;テトラヒドロフラン;ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;更に、パ−フロロオクタン、パ−フロロトリ−n−ブチルアミン等のフッ素化イナ−トリキッド類の何れも使用できる。尚、本発明が上記具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。
【0050】
また、本発明で使用するアニオン型及びカチオン型フッ素樹脂エマルジョンの重合体の重量平均分子量は、通常、開始剤濃度や連鎖移動剤濃度によって好ましい範囲に調整できる。
【0051】
本発明で使用するアニオン型フッ素樹脂エマルジョンとしては、上記フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)の単独重合体、及び/又はフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)とフッ素化アルキル基非含有エチレン性不飽和単量体(B)との共重合体を用いることができるのは前述の通りであるが、その他にフッ素化アルキル基含有アルコール(C)の重縮合付加体を用いることもできる。
【0052】
本発明で使用するフッ素化アルキル基含有アルコール(C)の重縮合付加体とは、炭素数が3〜20のフッ素化アルキル基、及び/又はフッ素化アルケニル基を含有する一価又は多価アルコールと炭素数が3〜30の炭化水素系骨格を有する一価又は多価アルコール、及び炭素数が4〜20であるフッ素化アルキル基を含有もしくは含有しない(ポリ)カルボン酸との重縮合によって得られる重量平均分子量が、好ましくは1000以上の(ポリ)エステル化合物、
【0053】
炭素数が3〜20のフッ素化アルキル基、及び/又はフッ素化アルケニル基を含有する一価又は多価アルコールと炭素数が3〜30の炭化水素系骨格を有する一価又は多価アルコール、及び公知公用の(ポリ)有機イソシアネート類との重縮合によって得られる重量平均分子量が700以上の(ポリ)ウレタン化合物、及び、
【0054】
炭素数3〜20のフッ素化アルキル基、及び/又はフッ素化アルケニル基を含有するエポキシ基含有単量体とフッ素化アルキル基を含有しないポロリレンオキサイド、又はエピクロルヒドリン等の公知公用のエポキシ化合物との重縮合によって得られる重量平均分子量が3000以上の重縮合付加物を言う。
【0055】
フッ素化アルキル基含有アルコール(C)及びフッ素化アルキル基含有(ポリ)カルボン酸は公知公用のフッ素化アルキル基を含有するアルコール及び(ポリ)カルボン酸を使用することができる。該重縮合付加体を構成する原料の具体例としては、例えば、次に示す化合物が挙げられる。
【0056】
化合物C1: C6F13CH2CH2OH
化合物C2: C7F15CH2CH2OH
化合物C3: C7F15CH2OH
化合物C4: C8F17CH2CH2OH
化合物C5: C6F13SO2N(CH3)CH2CH2OH
化合物C6: C6F13SO2N(C3H7)CH2CH2OH
化合物C7: C8F17SO2N(C2H5)CH2CH(OH)CH2OH
化合物C8: C9F17O(C6H4)CH2CH2OH
化合物C9: C9F15CON(C2H5)CH2CH2OH
化合物C10: C10F19N(C2H5)CH2CH2OH
化合物C11: C7F15COOH
化合物C12: C9F17O(C6H4)COOH
化合物C13: C8F17SO2N(C3H7)CH2COOH
化合物C14: C8F17CH2CH2C(COOH)HCOOH
【0057】
上記カルボン酸の具体例としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、サバチン酸、トリメリット酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等が挙げらる。
【0058】
炭化水素系の一価又は多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エチルヘキサノール、ステアリルアルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量300〜6,000)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン及びそれらのアルキレンオキシド付加体等が挙げられる。
【0059】
また、有機(ポリ)イソシアネート類の具体例としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0060】
更に、本発明で使用する炭素数3〜20のフッ素化アルキル基、及び/又はフッ素化アルケニル基を含有するエポキシ基含有単量体としては、例えば、下記のような化合物、〔エポキシ1〕〜〔エポキシ5〕等が挙げられる。尚、本発明が下記の具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。
【0061】
【化13】
【0062】
本発明で使用するフッ素化アルキル基含有アルコール(C)の重縮合付加体は、(ポリ)エステル化合物、あるいは、(ポリ)ウレタン化合物、エポキシ化合物単独でもよいし、(ポリ)エステル化合物と(ポリ)ウレタン化合物、エポキシ化合物のうちの2種以上の混合物であっても構わない。
【0063】
本発明で使用するフッ素樹脂エマルジョンは上記化合物を乳化剤によりエマルジョン化することにより得られる。その際に用いられる乳化剤は公知公用の化合物を使用することができるが、本発明では第1段階目、第2段階目に用いるフッ素樹脂エマルジョンがそれぞれアニオン型、カチオン型であるため、そのイオン性を考慮して使用しなければならない。即ち、第1段階目の防汚皮膜形成用フッ素樹脂エマルジョンにはアニオン型を用い、第2段階目の防汚皮膜形成用フッ素樹脂エマルジョンにはカチオン型を用いなければならない。但し、ノニオン性乳化剤については何れのフッ素樹脂エマルジョンを乳化する際にも使用することができる。
【0064】
本発明で使用する乳化剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート等のノニオン系乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニル硫酸塩等のノニオンアニオン系乳化剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン系乳化剤、及びフッ素系、シリコーン系の特殊乳化剤等が挙げられる。
【0065】
本発明で使用するアニオン型フッ素樹脂エマルジョン、及びカチオン型フッ素樹脂エマルジョンは、所望の撥水撥油性を発現し、優れた耐久性と防汚性を兼備するために、組成中にフッ素原子を好ましくは5重量%以上、より好ましくは10〜60重量%の範囲で含有する。
【0066】
本発明では、第1段階目の加工において、アニオン型フッ素樹脂エマルジョンと水性分散型樹脂とを併用し基材に付着させ皮膜を形成させることが好ましい。第1段階目の防汚皮膜形成工程において、水性分散型樹脂を併用することは、アニオン型フッ素樹脂エマルジョンと基材とのバインダー的役割を果たすほか、基材とのバインディング性の向上、及び防水性、耐摩耗性を具備するために、有効な手段となる。
【0067】
本発明で使用する水性分散型樹脂としては、公知公用の樹脂がいずれも使用できるが、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エチレン/塩化ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル樹脂、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体の高分子エマルジョン、高分子ラテックスエマルジョン等が挙げられる。
【0068】
本発明に係る第1段階目の加工において、アニオン型フッ素樹脂エマルジョンとバインダー、即ち、水性分散型樹脂の混合して用いる場合の両者の比率は、固形分重量比で好ましくは4/100〜30/100の範囲であり、より好ましくは7/100〜15/100の範囲である。かかる範囲の固形分重量比でアニオン型フッ素樹脂エマルジョンと水性分散型樹脂を混合し用いれば、優れた防汚性、耐久性を発現することが出来る。
【0069】
本発明の防汚加工方法では、第1段階目の加工におけるアニオン型フッ素樹脂エマルジョンの基材重量に対する付着量が好ましくは1〜30重量%であり、且つ、第2段階目の加工におけるカチオン型フッ素樹脂エマルジョンの基材重量に対する付着量が好ましくは1〜30重量%である。
【0070】
本発明に係る第1段階目、及び第2段階目の処理浴濃度は、耐久性、防汚性等の要求性能レベルと加工により発生するコストのバランスを考慮して決定しなければならない。性能を維持してコストメリットを発現するためには、第1段階目、第2段階目のいずれの処理浴濃度も樹脂固形分に換算して0.05〜10.0重量%が好ましく、0.2〜5重量%がより好ましい。
【0071】
本発明の防汚加工方法を施した最終加工基材の全体のフッ素元素の濃度(アリザリンコンプレクソン法にて測定)は、基材重量に対し、好ましくは0.05〜2.0重量%であり、より好ましくは0.10〜1.1重量%の範囲である。また、表面のフッ素原子濃度(X線光電子分光分析法にて測定)は、好ましくは0.01〜1atm%であり、より好ましくは0.05〜0.5atm%の範囲である。
【0072】
本発明における加工基材全体のフッ素元素濃度は、フッ素原子の比色定量試薬であるドータイト・アルフッソン(株式会社 同仁化学研究所製)を使用してアリザリンコンプレクソン法(酸素中で燃焼し、分解生成したフッ酸を比色定量する分析方法)により定量されたフッ素元素濃度(重量%)を意味し、また表面のフッ素原子濃度は、KRATOS社製AXIS−HS型を用いてXPS(X−Ray Photoelectron Spectroscopy、X線光電子分光法)分析により得られたフッ素原子濃度(atm%)を意味する。
【0073】
本発明において、フッ素樹脂エマルジョンを強固に基材に付着させる方法としては、通常用いられている公知方法を使用出来、例えば、浸漬法、含浸法、スプレー塗布法、コーティング塗布法などを適宜選択し使用することが出来、あるいは組み合わせて用いてもよい。以上のような方法でフッ素樹脂エマルジョンを含む液を付着させた後、乾燥、キュアリングによる熱固着を行うことができる。
【0074】
また、具体的な樹脂付着後の乾燥条件は、特に限定はしないが、第1段階目のアニオン型フッ素樹脂エマルジョン及びバインダーの役割を担う水性分散型樹脂を基材に付着せしめた後、通常、好ましくは80℃〜200℃、より好ましくは100℃〜140℃で加工基材が乾くまでの時間、つまり、加工した樹脂が第2段階目のカチオン型フッ素樹脂エマルジョンに溶出しないまでの乾燥時間が必要である。次いで、第2段階目のカチオン型フッ素樹脂エマルジョンを付着せしめ、乾燥及びキュアリングする条件は、通常、好ましくは80℃〜200℃、より好ましくは120℃〜180℃で30秒〜10分の乾燥及びキュアリングが適当である。
【0075】
本発明の防汚加工方法を施した基材としては、例えば、紙、壁紙、不織布、人工皮革、合成皮革、織物、及び編物より選ばれる1種、又は2種以上の複合体などが挙げられる。
【0076】
本発明の防汚加工方法を施した加工基材の用途としては、例えば、衣料、雑貨、建築材料、インテリア素材、車輌内装材、包装材料等、種々の分野に応用可能であり、特に限定されるものではない。
【0077】
尚、本発明の態様は、上述したように、基材に対して、第1段階目の加工としてフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)の単独重合体、及び/又はフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)とフッ素化アルキル基非含有エチレン性不飽和単量体(B)との共重合体、及び/又はフッ素化アルキル基含有アルコール(C)の重縮合付加体を必須成分とするアニオン型フッ素樹脂エマルジョンを基材に付着させ皮膜を形成させ、更に、第2段階目の加工としてカチオン型フッ素樹脂エマルジョンを付着させることを特徴とする防汚加工方法にかかるものである。
【0078】
本発明の他の態様の一つとしては、第1段階目の加工において、アニオン型フッ素樹脂エマルジョンと水性分散型樹脂とを併用し基材に付着させ皮膜を形成させる上記の防汚加工方法にかかるものである。
【0079】
本発明の他の態様の一つとしては、第1段階目の加工におけるアニオン型フッ素樹脂エマルジョンの基材重量に対する付着量が1〜30重量%であり、且つ、第2段階目の加工におけるカチオン型フッ素樹脂エマルジョンの基材重量に対する付着量が1〜30重量%である上記の各防汚加工方法にかかるものである。
【0080】
本発明の他の態様の一つとしては、アリザリンコンプレクソン法にて測定した加工基材中の全フッ素量が基材重量に対して0.05〜2.0重量%であり、且つ、X線光電子分光分析法にて測定した表面に配向しているフッ素原子量が0.01〜1atm%である上記の各防汚加工方法にかかるものである。
【0081】
本発明の他の態様の一つとしては、基材が、紙、壁紙、不織布、人工皮革、合成皮革、織物、及び編物より選ばれる1種、又は2種以上の複合体である上記の各防汚加工方法にかかるものである。
【0082】
本発明の他の態様の一つとしては、加工方法が、含浸法、スプレー法、コーティング法より選ばれる1種、又は2種以上を組み合わせた方法である上記の各防汚加工方法にかかるものである。
【0083】
本発明の他の態様の一つとしては、紙、壁紙、不織布、人工皮革、合成皮革、織物、及び編物より選ばれる1種、又は2種以上の複合体であり、上記の各防汚加工方法を施した基材にかかるものである。
【0084】
【実施例】
以下、本発明を実施例と比較例により、一層、具体的に説明する。以下において、%は、特にことわりのない限り、全て重量基準である。試料の諸特性は以下の方法で測定した。尚、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0085】
[AQテストの実施方法]
表1に示すように標準試験溶液としてイソプロピルアルコールと水を一定比率で混合し、それぞれの溶液に対して撥水性の強さを段階的に表す呼称として「級数」を付与した。この標準試験溶液を、それぞれ加工基材表面にスポイドを用いて一定量滴下し、5分間経過後目視により全く浸込みの認められない、撥水性の最高級数をもって加工基材の撥水性を定量的に評価した。
【0086】
[OR(オイル レジスタンス)テストの実施方法]
表2に示すように、撥油性の「級数」を付与した標準試験溶媒として、表面張力の異なる種々の有機溶媒を加工基材に一定量滴下し、30秒経過後の液滴の浸透状態を観察する方法(AATCC−118−1981/ハイドロカーボン・レジスタンス・テストに準拠)を用い、目視により全く浸込みの認められない標準試験溶液の最高撥油性の級数をもって加工基材の撥油性を定量的に評価した。
【0087】
[汚れ試験の実施方法]
それぞれ温度を50℃に保持したコーヒー、サラダ油、及びこいくち醤油を用いて、各汚染液の液滴を一定量滴下し、5分後にティッシュペーパーで軽く拭き取り、各汚染液の加工基材面に対するシミの度合いを目視にて観察した。シミの度合いの表示に際しては、下記の判定基準に則り評価した。
汚染液拭き取り後の判定基準は以下の通りである。
○:拭き取り後、全く跡が残らない。
△:拭き取り後、若干の輪染みができるが目立たない。
×:拭き取り後、跡が残り明らかに非常に目立つ。
【0088】
《実施例1》
第1段階目の加工として、アニオン型フッ素樹脂エマルジョン撥水撥油剤(大日本インキ化学工業(株)製、アクアフラン TE−5A、固形分20重量%)の5重量%水溶液を濾紙(東洋濾紙(株)製TYPE2、坪量130g/m2)に含浸後、ニップロールを用いて絞り、100℃にて5分間熱風乾燥させた。更に、この第1段階目の加工処理済み濾紙に、第2段階目の加工としてカチオン型フッ素樹脂エマルジョン撥水撥油剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックガードF−90、固形分20重量%)の5重量%水溶液を含浸し、ニップロールにて絞った後、160℃にて5分間熱風乾燥を行い、本発明の耐久性の防汚皮膜を施した加工基材(X1)を得た。
【0089】
上記の加工基材(X1)について、摩擦耐久性試験前後における撥水撥油性、防汚性の評価を実施した。摩擦耐久性試験は、学振型の摩耗試験機を用いてJIS L−1042に準拠し、摩耗布にカナキン布を使用して、荷重250gにて3000回の摩耗を実施した。尚、撥水性の指標としてAQテスト、撥油性の指標としてORテスト、防汚性の指標としてコーヒー、サラダ油、醤油を用いて汚れ試験を実施することにより評価した。その結果を表3に記載した。
【0090】
また、併せて表3に加工基材のフッ素濃度を示した。表中に記載している数値のうち、加工基材全体のフッ素元素の濃度は、フッ素原子の比色定量試薬であるドータイト・アルフッソン(株式会社 同仁化学研究所製)を使用してアリザリンコンプレクソン法(酸素中で燃焼し、分解生成したフッ酸を比色定量する分析方法)により定量されたフッ素元素濃度(重量%)を意味し、また表面のフッ素原子濃度は、KRATOS社製AXIS−HS型を用いてXPS分析法(X−ray photoelectron spectroscopy、X線光電子分光法)により得られたフッ素原子濃度(atm%)を意味する。
【0091】
《実施例2》
実施例1における第1段階目の含浸加工において、アニオン型フッ素樹脂撥水撥油剤アクアフラン TE−5Aの5重量%水溶液に加えて、バインダーとしてアクリルエマルジョン(大日本インキ化学工業(株)製、ボンコート AN−185、固形分40重量%、Tg30℃)の30重量%配合液を併用する以外は、実施例1と同様にして本発明の耐久性の防汚皮膜を施した加工基材(X2)を得た。
【0092】
《実施例3》
実施例1における第1段階目の含浸加工において、アニオン型フッ素樹脂エマルジョン撥水撥油剤アクアフラン TE−5Aの5重量%水溶液に加えて、バインダーとしてアクリルエマルジョン(大日本インキ化学工業(株)製、ボンコートAB−782、固形分重量40%、Tg−30℃)の30重量%配合液を併用する以外は、実施例1と同様にして本発明の耐久性の防汚皮膜を施した加工基材(X3)を得た。
【0093】
《実施例4》
実施例1における第1段階目の含浸加工において、アニオン型フッ素樹脂エマルジョン撥水撥油剤アクアフラン TE−5Aの5重量%水溶液に加えて、バインダーとして水性ポリウレタン樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、ボンディック 2250、固形分40重量%)の30重量%配合液を併用する以外は、実施例1と同様にして本発明の耐久性の防汚皮膜を施した加工基材(X4)を得た。
【0094】
《比較例1》
実施例1における第1段階目の含浸加工において、アニオン型フッ素樹脂エマルジョン撥水撥油剤を使用せず、且つ第2段階目の含浸加工にて、カチオン型フッ素樹脂エマルジョン撥水撥油剤ディックガードF−90の10%水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして皮膜を施した加工基材(Y1)を得た。
【0095】
《比較例2》
実施例1における第1段階目の含浸加工において、アニオン型フッ素樹脂エマルジョン撥水撥油剤アクアフラン TE−5Aの濃度を10%水溶液とし、且つ第2段階目の含浸加工においてフッ素系撥水撥油剤を使用しない以外は、実施例1と同様にして皮膜を施した加工基材(Y2)を得た。
【0096】
《比較例3》
第2段階目の含浸加工において、有機溶剤としてトルエンを用いているフッ素系撥水撥油剤ディックガード NH−10を更にホワイトスピリットにより5%溶液に希釈して用いた以外は、実施例1と同様にして耐久性の防汚皮膜を得たが、第2段階目の含浸加工時の有機溶剤が揮発し、局所排気装置を設置しているにもかかわらず、作業場に溶剤臭が充満し、作業環境衛生上好ましくないことを確認した。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
【発明の効果】
本発明は、第1段階目の加工としてアニオン型フッ素樹脂エマルジョン単独、又は該エマルジョンと水性分散型樹脂を併用し基材に付着させ皮膜を形成させ、次いで、第2段階目の加工としてカチオン型フッ素樹脂エマルジョンを基材に付着させ皮膜を形成させることを特徴とする防汚加工方法、及び該加工方法を施した基材を提供する。本発明の防汚加工方法は、紙や繊維素材に対して、撥水撥油性、耐摩耗性、耐洗濯性などの優れた性能を付与出来るばかりでなく、有機溶剤を使用しないため環境に配慮した加工方法であることも特徴の一つである。本発明の防汚加工方法を施した加工基材の用途としては、例えば、衣料、雑貨、建築材料、インテリア素材、車輌内装材、包装材料等、種々の分野に応用可能であり、特に限定されるものではない。
Claims (7)
- 基材に対して、第1段階目の加工としてフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)の単独重合体、及び/又はフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)とフッ素化アルキル基非含有エチレン性不飽和単量体(B)との共重合体、及び/又はフッ素化アルキル基含有アルコール(C)の重縮合付加体を必須成分とするアニオン型フッ素樹脂エマルジョンを基材に付着させ皮膜を形成させ、更に、第2段階目の加工としてカチオン型フッ素樹脂エマルジョンを付着させることを特徴とする防汚加工方法。
- 第1段階目の加工において、アニオン型フッ素樹脂エマルジョンと水性分散型樹脂とを併用し基材に付着させ皮膜を形成させる請求項1記載の防汚加工方法。
- 第1段階目の加工におけるアニオン型フッ素樹脂エマルジョンの基材重量に対する付着量が1〜30重量%であり、且つ、第2段階目の加工におけるカチオン型フッ素樹脂エマルジョンの基材重量に対する付着量が1〜30重量%である請求項1又は2記載の防汚加工方法。
- アリザリンコンプレクソン法にて測定した加工基材中の全フッ素量が基材重量に対して0.05〜2.0重量%であり、且つ、X線光電子分光分析法にて分析した表面に配向しているフッ素原子量が0.01〜1atm%である請求項1〜3の何れか一項に記載の防汚加工方法。
- 基材が、紙、壁紙、不織布、人工皮革、合成皮革、織物、及び編物より選ばれる1種、又は2種以上の複合体である請求項1〜4の何れか一項に記載の防汚加工方法。
- 加工方法が、含浸法、スプレー法、コーティング法より選ばれる1種、又は2種以上を組み合わせた方法である請求項1〜5の何れか一項に記載の防汚加工方法。
- 基材が、紙、壁紙、不織布、人工皮革、合成皮革、織物、及び編物より選ばれる1種、又は2種以上の複合体であり、請求項1〜6の何れか一項に記載の防汚加工方法を施したことを特徴とする基材。
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