JP4246329B2 - 熱可塑性エラストマー組成物及びガスケット材 - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物及びガスケット材 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物及びそれを用いたガスケット材に関し、さらに詳しくは、シール性に優れるとともに、長期使用においても揮発性低分子成分などのガス発生が防止され、特に電子機器の部材としての用途に好適な熱可塑性エラストマー組成物及びガスケット材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の発達はめざましく、これら電子機器は半導体を利用した集積回路を用い、しかも基盤上にプリント配線されたものであって、小型化、軽量化が図られている。これらの電子機器類は水分や塵埃を嫌うものであり、したがって、これらの集積回路を内蔵する箱状の本体とカバー体の接合面を密封するガスケットにおけるシール性能は、電子機器の性能及び耐久性にとって重要な要素となっている。
このため、通常は、これらの集積回路等を内蔵する箱体と蓋体との接合面にガスケットを挟持し、取り付けボルト等により締結して一体化することがなされており、ガスケット材として高密度のウレタンフォーム材が使用されていた。このウレタンフォーム材は薄いシート状に発泡ウレタンを裁断したものであり、このシートに粘着テープを貼り、所望形状に打ち抜いて使用されることが多い。また、ステンレス鋼や剛性樹脂からなる枠体を金型にインサートした後にエラストマーを射出成形する方法が提案されている(特開平8−283698号公報)。
【0003】
しかしながら、ウレタンフォーム材からなるガスケットもエラストマーからなるガスケットも、実際の使用時に電子機器本体内の温度が40〜50℃に上昇すると、磁気ディスクを汚染させるガスを発生させるものが多く、発生したガス状成分がハードディスク装置などのディスク上に堆積し、ハードディスク装置における読み取り不能を発生させることがある。
このような不都合を解消するために、発生したガスを吸着させる機構を設けたり(特開平6−302178号公報)、磁気ディスク汚染ガスの外部からの進入に対しては、磁気ディスク装置本体に開けた呼吸孔にガス吸着剤を設けることにより対処している(特開平6−36548号公報)。
しかしながら、ガスケットからのガスの発生は長期間にわたり、電子機器を使用に際しては常にガスの発生が伴うという不都合を避けることができなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、シール性に優れるとともに、揮発性低分子成分などのガス発生が防止された熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とするものである。また本発明は、特に電子機器の部材として使用した場合に、前記の問題点が解決されたガスケット材、特にハードディスク装置用ガスケット材を提供することをも目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の熱可塑性エラストマー組成物を用いることにより、その目的を達成しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したもである。
すなわち、本発明は、(a)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つからなるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体100重量部、(b)40℃における動粘度が100mm2 /秒以上である非芳香族系軟化剤50〜1000重量部、及び(c)温度230℃,荷重2.16kgfにおけるMFRがJIS K6758規格で20g/10分以下のプロピレン単独重合体及び/又はプロピレンを主体とするプロピレン共重合体1〜100重量部からなる熱可塑性エラストマー組成物を提供するものである。また、本発明は、前記の熱可塑性エラストマー組成物からなるガスケット材、特にハードディスク装置用ガスケット材を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、(a)成分として、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つからなるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体が用いられる。
前記水添ブロック共重合体としては、例えば、ポリスチレン/ポリブタジエン/ポリスチレンのブロック共重合体、或いはポリスチレン/ポリイソプレン/ポリスチレンのブロック共重合体を水添して得られる、例えば、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンのトリブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンのトリブロック共重合体(SEPS)などを挙げることができる。
これらの水添ブロック共重合体の数平均分子量は60000以上であることが好ましい。この数平均分子量が60000未満であると、軟化剤のブリードが増加し、圧縮永久歪みが大きくなり、実際の使用に耐えないという不都合が生じることがある。この数平均分子量の上限は特に制限はないが、通常は400000程度である。
【0007】
上記水添ブロック共重合体の非晶質スチレンブロックの含有量は、10〜70重量%、好ましくは15〜60重量%の範囲のものが望ましい。また、非晶質スチレンブロック部のガラス転移温度(Tg)は、60℃以上、好ましくは80℃以上であるものが望ましい。また、両末端の非晶質スチレンブロックを連結する部分の重合体としては、やはり非晶質のものが好ましい。
なお、これらの水添ブロック共重合体は主に単独で用いられるが、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0008】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記(a)成分の熱可塑性エラストマーを低硬度化する目的で、(b)成分として40℃におけ動粘度が100mm2 /秒以上である非芳香族系軟化剤を配合する必要がある。この軟化剤の40℃における動粘度が100mm2 /秒未満であると、揮発による組成物の重量減やブリードが著しく、実際の使用に耐えないという不都合が生じる。この動粘度は、実用上及び製造上の点から、40℃において100〜10000mm2 /秒であることが好ましく、特に200〜5000mm2 /秒が好ましい。また、分子量の観点からは、重量平均分子量は20000未満、特に10000以下、とりわけ5000以下であるものが好ましい。このような軟化剤としては、通常、室温で液体または液状のものが好適に用いられる。また、親水性,疎水性のいずれの軟化剤も使用できる。
このような性状を有する軟化剤としては、例えば鉱物油系,植物油系,合成系などの各種非芳香族系ゴム用軟化剤の中から適宜選択することができる。ここで、鉱物油系としては、ナフテン系,パラフィン系などのプロセス油が挙げられ、植物油系としては、ひまし油,綿実油,あまに油,なたね油,大豆油,パーム油,梛子油,落花生油,木ろう,パインオイル,オリーブ油などが挙げられる。
なかでも、特に鉱物油系のパラフィン系オイル,ナフテン系オイル又は合成系のポリイソブチレン系オイルから選択される一種又は二種以上であって、その重量平均分子量が450〜5000であるものが好ましい。
【0009】
なお、これらの軟化剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
これらの軟化剤の配合量は、前記(a)成分100重量部に対し、50〜1000重量部であるが、好ましくは55〜300重量部である。この配合量が50量部未満では充分な低硬度化が達成できず熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性が不充分となり、また1000重量部を超えると軟化剤がブリードしやすくなり、かつ熱可塑性エラストマー組成物の機械的強度が低下する原因となる。なお、この軟化剤の配合量は、(a)成分の水添ブロック共重合体の分子量及び該水添ブロック共重合体に添加される他の成分の種類に応じて、上記範囲で適宜選定することが好ましい。
【0010】
本発明の熱可塑性エマラストマー組成物には、該組成物の加工性、耐熱特性の向上を図ると共に、揮発性低分子成分などのガス発生を防止するため、(c)成分として、滑剤を含まないプロピレン単独重合体及び/又はプロピレンを主体とするプロピレン共重合体を加える必要がある。このプロピレン重合体としては、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとの共重合体(例えば、プロピレン−エチレン共重合体,プロピレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体)などを挙げることができる。
ここで、本発明に係るポリプロピレンとは、メタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレンではなく、一般のポリプロピレン、具体的にはアイソタクチックポリプロピレンあるいはアタクチックポリプロピレンをいい、例えば、主としてチーグラー触媒(Ti系)の存在下にプロピレンを重合して得られるものである。共重合体のうちランダムコポリマーは、重合時に少量のエチレン又は他のα−オレフィンを共存させて得られ、ブロックコポリマーは、プロピレンホモポリマーを重合した後、主としてエチレンを重合させることにより得られる。
MFRが20g/10分以下、好ましくは0.1〜10g/10分のプロピレン単独重合体及び/又はプロピレンを主体とするプロピレン共重合体(以下ポリプロピレン等という)は40〜50℃の環境下でもガスが発生しないので、このようなプロピレン等を含む熱可塑性エマラストマー組成物をハードディスク装置用ガスケット材として、長期使用した場合にも、ガス状の揮発性成分によりディスク性能が損なわれることはない。
上記(c)成分の配合量は、前記(a)成分100重量部に対し、1〜100重量部であるが、好ましくは3〜40重量部、特に好ましくは5〜30重量部である。この配合量が100重量部を超えると得られる熱可塑性エラストマー組成物の硬度が高くなり過ぎる。
【0011】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、前記の各成分及び所望により用いられる添加剤成分を加熱混練機、例えば、一軸押出機,二軸押出機,ロール,バンバリーミキサー,プラベンダー,ニーダー,高剪断型ミキサーなどを用いて溶融混練りし、さらに、所望により有機パーオキサイドなどの架橋剤、架橋助剤などを添加したり、又は、これら必要な成分を同時に混合し、加熱溶融混練りすることにより、容易に製造することができる。
また、高分子有機材料と軟化剤とを混練りした熱可塑性エラストマー組成物を予め用意し、この組成物を、ここに用いたものと同種か若しくは種類の異なる一種以上の高分子有機材料に更に混ぜ合わせて製造することもできる。
【0012】
実施例1
下記に示す配合成分を二軸押し出し機を用いて、220℃にて混練りし、ストランドに押し出した後に、ペレット状にカットした。
配合成分
(1)スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンのトリブロック共重合〔クラレ(株)製、商品名:セプトン〕(数平均分子量12万でスチレン量が30重量%のSEPS) 100重量部
(2)40℃におる動粘度が380mm2 /秒であるパラフィン系オイル〔出光興産(株)製、商品名:ダイアナプロセスオイルPW380〕(重量平均分子量750) 100重量部
(3)温度230℃,荷重2.16kgfにおけるMFRが13g/10分のポリプロピレン〔住友化学工業(株)製,商品名:ノープレンX101〕25重量部
次に、このようにして得られた熱可塑性エラストマー材を、射出成形機として、日精樹脂工業(株)社製のDC60E5ASE機を用い、成形温度180℃にて厚さ1mmのシートを作製した。得られたシート0.1gを細かく切り、サーマルテソープションコールドトラップ装置のサンプル管に保持し、100℃で30分間加熱した。発生したガスを10m1/分のHeガス流量下でー130℃に冷却したトラップ部分に捕捉した後、トラップ部分を150℃に急速加熱して脱離したガスをGC−MSにて測定した。なお、検出器はポストアクセラレーションディテクターを付属した二次電子増倍管及び原子発光検出器を用いた。
上記の結果、検出されたガスは極く微量の飽和炭化水素であることを確認した。
【0013】
比較例1
実施例1で用いたポリプロピレンの代わりに、230℃におけるMFRが40g/10分のポリプロピレン〔住友化学工業(株)製,商品名:ノープレンX101A〕を用いた以外は、実施例1と同様にしてサンプルを調製し、実施例1と同様の方法で発生するガスの測定を行った。その結果、検出されたガスは、実施例1の場合の約40倍量の飽和炭化水素であることが認められた。
【0014】
実施例2
下記に示す配合成分からなる成分を二軸押し出し機を用いて、220℃にて混練りし、ストランドに押し出した後に、ペレット状にカットした。
配合成分
(1)スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンのトリブロック共重合(数平均分子量5万でスチレン量が30重量%のSEPS) 100重量部
(2)パラフィン系オイル〔出光興産(株)製、商品名:ダイアナプロセスオイルPW380〕(数平均分子量750) 125重量部
(3)温度230℃,荷重2.16kgfにおけるMFRが13g/10分のポリプロピレン〔住友化学工業(株)製,商品名:ノープレンX101〕30重量部
次に、得られた熱可塑性エラストマー材を、実施例1と同様にしてシートを作成し、これよりサンプルを調製し、実施例1と同様の方法で発生するガスの測定を行った。その結果、検出されたガスは極く微量で、比較例1の場合の約1/20の飽和炭化水素であることが認められた。
【0015】
実施例3
実施例1と同様の方法にて射出成形を行い、図1に示す如き、ハードディスクドライブ装置を収納するケース用の蓋付きガスケットを製造した(本図は、蓋付きガスケット材をシール面側から見た図である。)。ガスケット1はアルミニウム製の蓋2の表面に密着されており、蓋2は、ハードディスクドライブ装置収納ケースの蓋となっている。蓋付きガスケットの中央の空隙部分に、磁気ディスク、磁気ヘッド、アクチュエーター等の機器が、ハードディスクドライブ装置収納ケースにおける箱体側に配置され、これらの機器は金属製の箱体(図示せず)と蓋付きガスケットとで閉成されてハードディスクドライブ装置収納ケースに収納される。
このような蓋付きガスケットをハードディスクドライブ装置収納ケースの蓋として用い、すなわちハードディスクドライブ装置内にガスケットを配置し、使用したところ、ガスケットから発生したガスが原因と考えられる故障は、長期間にわたって発生しなかった。
【0016】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、シール性に優れるとともに、長時間使用しても揮発性低分子成分を含むガスの発生が防止される。さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、電子機器使用条件において、磁気ディスク等に対する揮発性ガスの発生が殆どないので、本発明は、特にガスケット材、中でもハードディスク装置用ガスケット材の用途に好適に使用される。
また、本発明は、シール材、防振材、衝撃吸収材、カバー材、緩衝材などの製造にも広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るガスケットの態様を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 :ガスケット
2 :ハードディスクドライブケースの蓋

Claims (2)

  1. (a)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つからなるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体100重量部、(b)40℃における動粘度が100mm2/秒以上である非芳香族系軟化剤50〜1000重量部、及び(c)温度230℃,荷重2.16kgfにおけるMFR(メルトフローレート)がJIS K6758規格で20g/10分以下のプロピレン単独重合体及び/又はプロピレンを主体とするプロピレン共重合体1〜100重量部からなる熱可塑性エラストマー組成物からなるハードディスク装置用ガスケット材。
  2. 前記プロピレン単独重合体及び/又はプロピレンを主体とするプロピレン共重合体のメルトフローレートが、0.1〜10g/10分のものである請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物からなるハードディスク装置用ガスケット材。
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