JP4246024B2 - 印刷機における版把持装置 - Google Patents

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Description

本発明は、印刷機の一種であるオフセット印刷機において、刷版の端部を版胴の所定位置に固定するための印刷機における版把持装置に関する。
一般に、印刷機の一種であるオフセット印刷機は、版胴と、ゴム胴と、圧胴を備えている。そして、版胴に巻装された刷版に、水及びインキが付着された後、インキがゴム胴に転写され、そのゴム胴と圧胴との間を通過する紙に印刷が行われる。
上記版胴に刷版を巻装するために、版胴には、版把持装置が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。図6に示すように、版胴90の外周の一部には胴溝90aが切り欠き形成され、その胴溝90a内には、刷版91の巻装方向の一端部(始端部)を固定するためのくわえ側版万力92と、巻装方向の他端部(終端部)を固定するためのくわえ尻側版万力93と設置されている。前記くわえ側版万力92はくわえ側下歯92aと、くわえ側上歯92bにより構成されている。前記くわえ側上歯92bは、ピン(図示せず)により回動可能にくわえ側下歯92aに設けられ、くわえ側カムシャフト95の回動により、傾動するようになっている。
前記くわえ尻側版万力93はくわえ尻側下歯93aと、くわえ尻側上歯93bとより構成され、略L字状をなす前記くわえ尻側上歯93bは、ピン96により回動可能に設けられている。また、くわえ尻側上歯93bの先端部には上歯面93mが設けられ、前記くわえ尻側上歯93bはくわえ尻側カムシャフト(図示せず)の回動により、傾動するようになっている。
そして、前記くわえ側カムシャフト95の回動によりくわえ側上歯92bが傾動し、刷版91の一端部(始端部)が、くわえ側上歯92bとくわえ側下歯92aとの間に挟み込まれ、くわえ側版万力92に固定される。さらに、版胴90が回転した後、くわえ尻側カムシャフトの回動によりくわえ尻側上歯93bが傾動し、刷版91の他端部(終端部)が、上歯面93mとくわえ尻側下歯93aとの間に挟み込まれ、くわえ尻側版万力93に固定される。その結果、刷版91が版胴90の外周面に巻装される。
特開平11−20131号公報
ところが、上記版把持装置において、刷版91の他端部(終端部)を版胴90に固定するための動作は、くわえ尻側上歯93bの傾動のみである。そのため、刷版91の他端部(終端部)は、その斜め上方から被さるように移動した上歯面93mが、くわえ尻側下歯93aに押さえ付けられることによって版胴90に固定される。その結果、刷版91の他端部が、上歯面93mにより、くわえ尻側上歯93bの傾動方向(図6では斜め外方)へ押し出され、版胴90内から外へ向かって押し出されながらくわえ尻側版万力93に固定される虞があるという問題があった。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、刷版の端部を、版胴の外へ押し出す方向に対して交差する方向から把持することができる印刷機における版把持装置を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、版胴に刷版を巻装し、前記版胴を回転させながら印刷を行うようにした印刷機において、前記刷版の端部をくわえるために版胴に設けられる版把持装置であって、前記版胴に設けられ、固定面を備えた固定把持体と、前記固定把持体に設けられ、把持面を備えた可動把持体であり、前記固定面と前記把持面とより刷版の端部を把持する把持位置及び固定面と把持面との間に刷版の端部を挿入可能とする基準位置の二位置に配置可能な可動把持体と、前記固定把持体に支持されたカムシャフトとより構成され、前記固定把持体には、前記固定面に対し直交方向に延びる長孔が穿設されているとともに、同長孔に、前記可動把持体の基端側に固定された支軸が挿通支持され、前記可動把持体は、先端側に前記把持面を備えるとともに、基端側に前記把持面と相反する方向へ延びる摺接部を備え、可動把持体の側面にカムシャフトが摺接することによる支軸を中心とした可動把持体の回動及び前記摺接部にカムシャフトが摺接することによる長孔の延びる方向に沿った可動把持体の移動により同可動把持体は前記基準位置から把持位置へ移動可能に構成されていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の印刷機における版把持装置において、前記カムシャフトには、可動把持体の側面に摺接する第1平面部と、前記摺接部に摺接する第2平面部とが設けられ、第1平面部と第2平面部とが互いに異なる平面上に形成されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の印刷機における版把持装置において、前記固定把持体には、前記把持面が固定面から離れる方向へ可動把持体が回動するように同可動把持体を押圧する第1押圧部材と、前記把持面が固定面から離れる方向へ可動把持体が移動するように同可動把持体を押圧する第2押圧部材とが設けられていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の印刷機における版把持装置において、前記固定把持体には、前記可動把持体の回動を規制する規制部材が設けられていることを要旨とする。
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、基準位置に配置された可動把持体の側面にカムシャフトを摺接させる構成としたため、同可動把持体は長孔内の一端側で支軸を中心として回動し、把持面が固定面に対して平行となるまで回動する。その後、摺接部にカムシャフトを摺接させる構成としたため、同可動把持体の基端側が固定把持体側へ押圧されて可動把持体が長孔の延びる方向に沿って案内され、同長孔の一端側から他端側に向かって移動する。従って、可動把持体が回動する方向に対して交差する方向へ把持面が移動して、把持面と固定面との間に刷版の端部が把持される。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、カムシャフトに第1平面部及び第2平面部を設け、両平面部を異なる平面上に位置するように構成した。そのため、第1平面部と第2平面部が可動把持体に摺接するタイミングをずらすことができ、可動把持体を回動させるべく第1平面部が可動把持体の側面に摺接する動作と、可動把持体を長孔の延びる方向に沿って移動させるべく第2平面部が摺接部に摺接する動作とを別々に行うことが可能となる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用に加え、刷版の端部を開放するためにカムシャフトを回転させたとき、把持面が固定面から離れる方向へ可動把持体が移動するように、第2押圧部材により押圧することができる。さらに、把持面が、固定面から離れる方向へ可動把持体が移動するように、第1押圧部材により押圧することができる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明の作用に加え、基準位置にある可動把持体が固定把持体側へ回動したとき、同可動把持体と規制部材との当接により、可動把持体の一定以上の回動が規制される。そのため、把持面が固定面に対して平行となる状態が維持される。
本発明によれば、刷版の端部を、版胴の外へ押し出す方向に対して交差する方向から把持することができる印刷機における版把持装置を提供することができる。
以下、本発明を具体化した印刷機における版把持装置の一実施形態を図1〜図5にしたがって説明する。
図1に示すように、印刷機11のハウジング12内には、円柱状をなす版胴13が回転可能に配置され、この版胴13の外周には、図1に2点鎖線に示す刷版14が取外し可能に巻装される。ハウジング12内において、版胴13の近傍には、同版胴13に巻装された刷版14に水分を供給するための水分供給装置(図示せず)が配置されている。また、版胴13の上方には、多数本のローラ15を備えたインキ装置16が配置され、このインキ装置16は、前記水分供給装置によって水分が付着された刷版14の表面にインキを供給するためのものである。
版胴13の下方には、ゴムブランケット(図示せず)が巻き付けられた円筒状のゴム胴17が回転可能に配置されている。さらに、ゴム胴17の下方には円筒状の圧胴18が回転可能に配置されている。そして、印刷機11の作動時には、版胴13の外周の刷版14が水分供給装置のローラ及びインキ装置16のローラ15と接して回転する。版胴13に付着された水分及びインキはゴム胴17のゴムブランケットに転写される。一方、図示しない給紙装置から印刷用紙19が圧胴18に向けて送られる。この印刷用紙19は、圧胴18に保持された状態で一回転しながらゴムブランケットと接触する。この接触により、ゴムブランケット上のインキが印刷用紙19に印刷される。
次に、印刷機11における始端側把持機構20について説明する。上記版胴13の周面の一部は、同版胴13の軸方向に切り欠かれて胴溝13aが凹設され、この胴溝13a内に、版胴13に対する刷版14の巻装方向における一端部である始端部14aをくわえるための始端側把持機構20が設けられている。この始端側把持機構20は、版胴13内に固定された始端側万力台21とくわえ板22とより構成されている。前記始端側万力台21は版胴13の軸方向に沿って延びるように設けられ、くわえ板22は始端側万力台21に連結されている。カム23の回動によりくわえ板22は傾動し、この傾動により始端側万力台21とくわえ板22との間隔が広げられたり狭められたりする。そして、版胴13への刷版14の巻装時には、刷版14の始端部14aが版胴13に向かって導入されると、同始端部14aが始端側万力台21とくわえ板22との間に挟み込まれ、始端側把持機構20によって始端部14aが版胴13に固定される。
前記胴溝13a内において、前記始端側把持機構20に相対向する位置には、複数の版把持装置30が設けられ、同版把持装置30はそれぞれ刷版14の巻装方向における他端部である終端部14bをくわえるために設けられている。図2に示すように、版把持装置30を構成する固定把持体31は、版胴13の軸方向へ略四角柱状に延びる終端側万力台32を備えるとともに、終端側万力台32の基端側面から複数箇所に突設された軸受け33を備え、側面視略U字状に形成されている。なお、図3(a)、(b)に示すように、前記終端側万力台32には平面状をなす固定面32aが形成されている。また、終端側万力台32には第1押圧部材P1が収容されている。この第1押圧部材P1は、頭部と軸部とよりなり、頭部側が終端側万力台32の側面から外方へ突出するように終端側万力台32内に収容され、さらに、軸部には巻バネSが巻装されている。そして、前記巻バネSにより、頭部が終端側万力台32内から突出するように付勢されている。さらに、前記終端側万力台32において、前記第1押圧部材P1よりも、固定把持体31の底側には、円柱状をなす規制部材32dが設けられ、同規制部材32dは終端側万力台32の側面から一定長さだけ突出している。加えて、終端側万力台32の内底面には、巻バネよりなる第2押圧部材P2が収容されている。
図2に示すように、前記複数の軸受け33には、版把持装置30を構成するカムシャフト35が回転可能に支持され、同カムシャフト35は、図示しない駆動機構により正逆両方向へ回転可能に構成されている。図3(a)に破線に示すように、このカムシャフト35の軸方向における中央部には、平面状をなす第1平面部35aがカムシャフト35の軸方向へ延びるように形成され、同第1平面部35aの幅方向への長さは、カムシャフト35の直径より短くなっている。また、カムシャフト35の軸方向における両側部であり、前記第1平面部35aの両側には、平面状をなす第2平面部35bがカムシャフト35の軸方向へ延びるように形成されている。この第2平面部35bの幅方向への長さは、カムシャフト35の直径より短くなっている。前記第1平面部35aを形成する面と、第2平面部35bを形成する面とは、同一平面上に位置せず、互いに交差している。図3(b)に示すように、終端側万力台32の両側の軸受け33の外側面には、それぞれL字状をなす取付板34が固定され、各取付板34にはそれぞれ長孔34aが穿設されている。各長孔34aの長さ方向へ延びる軸線は、前記固定面32a上に位置する面に対し直交している。
図3(a)に示すように、前記終端側万力台32と、カムシャフト35との間には、側面視略クランク状及び正面視四角形状をなす可動把持体36が配置され、この可動把持体36は終端側万力台32及びカムシャフト35の延びる方向全体に亘って配置されている。そして、可動把持体36は版把持装置30を構成している。図3(b)に示すように、この可動把持体36は、同可動把持体36の基端部の両側面に固定された支軸37が、前記長孔34aに挿通支持されることにより、固定把持体31に取付支持されている。そして、可動把持体36は前記支軸37を回動中心として回動可能に構成されているとともに、長孔34aの長さ方向へ移動可能に構成されている。
前記可動把持体36の基端において、同可動把持体36の長さ方向における両側には、摺接部としての摺接板36aがそれぞれ軸受け33側に向かって延設され、各摺接板36aは、それぞれカムシャフト35の近傍位置であり、第2平面部35bの近傍位置に配置されている。また、可動把持体36の側面において、前記摺接板36aより先端側には、収容凹部36dが凹設されている。可動把持体36の先端には板状をなすくわえ板36bが一体的に設けられ、同くわえ板36bは、前記摺接板36aと相反する方向へ延びている。図3(a)に示すように、このくわえ板36bにおいて、前記固定面32aに臨む面には把持面36cが形成され、同把持面36cは粗面加工が施されている。そして、図5(a)、(b)に示すように、この把持面36cと前記固定面32aとの間に刷版14の終端部14bを挟み込んで把持するようになっている。
上記構成の可動把持体36の終端側万力台32側の側面には、前記第1押圧部材P1の頭部が常に当接し、同第1押圧部材P1の押圧によって、くわえ板36bが固定面32aから離れる方向へ回動するように可動把持体36が付勢されている。また、可動把持体36の基端面には、前記第2押圧部材P2の先端が当接可能となっており、同第2押圧部材P2が可動把持体36に当接したときは、第2押圧部材P2によって、くわえ板36bが固定面32aから離れる方向へ可動把持体36が移動するように付勢されている。さらに、可動把持体36が回動している途中段階から前記規制部材32dが可動把持体36の側面に当接するようになっている。
そして、図3(a)、(b)に示すように、可動把持体36の把持面36c側が終端側万力台32から離れ、くわえ板36bと固定面32aとの間に、刷版14の終端部14bを挿入可能とする空間が形成された位置を、可動把持体36の基準位置とする。一方、図5(a)、(b)に示すように、前記基準位置にある可動把持体36が終端側万力台32側へ回動し、さらに、長孔34aに沿って移動してくわえ板36bと固定面32aとが面接触する位置を、可動把持体36の把持位置とする。上記構成の版把持装置30は、可動把持体36が前記基準位置と把持位置との二位置に配置されることにより、刷版14の終端部14bを開放又は把持するようになっている。
次に、版把持装置30による刷版14の終端部14bの把持について説明する。まず、版胴13への刷版14の巻装時には、刷版14の始端部14aが版胴13に向かって導入されると、同始端部14aが始端側万力台21とくわえ板22との間に挟み込まれ、始端側把持機構20によって始端部14aが版胴13に固定される。次いで、版胴13が回転して同版胴13に刷版14が巻装され、さらに、終端部14bが胴溝13a内に導入される。
図3(a)、(b)に示すように、可動把持体36が前記基準位置に配置された状態において、可動把持体36は第2押圧部材P2により固定把持体31から離れる方向へ押圧され、支軸37が長孔34a内の一端側の内周に当接して一定位置に位置決めされている。さらに、可動把持体36はその先端側が第1押圧部材P1により軸受け33側へ押圧されている。そして、図3(a)に破線に示すように、可動把持体36の側面が第1平面部35aに当接するように傾倒した状態で配置されている。このとき、第2平面部35bの一部が収容凹部36d内に収容され、第2平面部35bが可動把持体36の側面に接触しないようになっている。
胴溝13a内に導入された終端部14bは、把持面36cと固定面32aとの間の挿入空間に挿入される。このとき、基準位置にある可動把持体36は、支軸37が長孔34aの一端側に位置し、把持面36cが固定面32aから大きく離れている。そのため、支軸37が長孔34aに支持されず一定位置で回動するように構成されている場合と異なり、挿入空間を広く確保することができる。従って、終端部14bを挿入空間に余裕を持って挿入することができ、終端部14bを固定面32aに密着するように挿入空間内に挿入する必要がなくなる。
さて、刷版14の終端部14bを把持面36cと固定面32aとの間で把持するには、図示しない駆動機構によって、カムシャフト35を正方向へ回転させると、第1平面部35aによって可動把持体36が終端側万力台32側へ押圧される。さらに、第1平面部35aの端縁が可動把持体36の側面に摺接していく。すると、可動把持体36がその側面側から終端側万力台32側へ押圧され、第1平面部35aを形成する面と、可動把持体36の側面との間に形成される角度が徐々に広がっていく。なお、このとき、第2平面部35bを形成する面は、摺接板36aと離間している。また、カムシャフト35が回転するに連れて、収容凹部36d内に収容されていた第2平面部35bの一部が徐々に収容凹部36dの外側に露出してくる。
すると、図4(a)、(b)に示すように、可動把持体36が、巻バネSの付勢力に抗して第1押圧部材P1を終端側万力台32内へ押圧するとともに、第2押圧部材P2を押圧しながら、支軸37を回動中心として回動する。その結果、把持面36cが固定面32aの斜め外方から同固定面32aに徐々に近づいていき、前記挿入空間を狭めていく。そして、第1押圧部材P1が終端側万力台32内に収容されると第1押圧部材P1の頭部と、規制部材32dとにより、可動把持体36と終端側万力台32の側面との間に一定の隙間が形成された状態が維持されるとともに、可動把持体36のそれ以上の回動が規制される。その結果、把持面36cと固定面32aとが平行となるまで可動把持体36が回動し、同平行状態が維持される。また、可動把持体36が回動することにより、摺接板36aがカムシャフト35に近づいていき、第2平面部35bが摺接板36aに接触する。
そして、さらにカムシャフト35が正方向へ回転すると、第1平面部35aに代わり、第2平面部35bが各摺接板36aに摺接する。なお、第1平面部35aに連なる周面が可動把持体36の側面に摺接して、可動把持体36を終端側万力台32側へ押圧し続ける。図5(a)、(b)に示すように、カムシャフト35の回転により、摺接板36aに摺接する位置と、カムシャフト35の中心点との間の距離は、徐々に長くなり、各摺接板36aが第2平面部35bにより固定把持体31の底側に向かって徐々に押圧されていく。
すると、可動把持体36が第2押圧部材P2の付勢力に抗して同第2押圧部材P2を固定把持体31底側へ押圧しながら、長孔34aの軸線の延びる方向に沿って固定把持体31の底側へ移動する。このとき、長孔34aの軸線は直線状をなし、固定面32a上の面と直交するため、長孔34aに支軸37が案内されると、可動把持体36は把持面36cが固定面32aに対して平行を維持したまま移動する。その結果、可動把持体36が把持位置に配置され、把持面36cと固定面32aとの間に刷版14の終端部14bが挟み込まれるとともに、版把持装置30により終端部14bが把持される。このとき、把持面36cは、終端部14bに対して斜め方向から被さるように移動するのではなく、終端部14bに向かって真っ直ぐに移動し、把持面36cが終端部14bに対して平行をなすまま移動する。そのため、把持面36cは、終端部14bを斜め方向へ押し出す方向に対し交差する方向へ移動して固定面32aとともに、終端部14bを把持する。
一方、図5(a)、(b)に示すように、前記把持位置にある可動把持体36を基準位置にまで作動させて、版把持装置30によって把持された終端部14bを開放するには、まず、カムシャフト35を前記正方向とは反対の逆方向へ駆動機構によって回転させる。すると、第2平面部35bが摺接板36aに摺接する位置と、カムシャフト35の中心点との間の距離は、徐々に短くなっていく。第2押圧部材P2の付勢力によって可動把持体36は終端側万力台32の底側から押圧されているため、前記距離が短くなるに伴い可動把持体36は、長孔34aの延びる方向に沿って徐々に押し出されていく。その結果、図4(a)、(b)に示すように、把持面36cが固定面32aに対して平行状態を維持しながら長孔34aの長さ分だけ離れていき、刷版14の終端部14bに対する把持面36cと固定面32aとの挟持が解除され、刷版14の終端部14bが版把持装置30から開放される。
さらに、カムシャフト35が逆方向へ回転すると、可動把持体36に接触している第1平面部35aの端縁が、終端側万力台32側から軸受け33側へ向かって徐々に移動していく。また、可動把持体36は、第1押圧部材P1により軸受け33側へ押圧されているため、可動把持体36は支軸37を回動中心として回動し、徐々に傾倒していく。そして、図3(a)、(b)に示すように、第1平面部35aを形成する面全体に可動把持体36の側面が面接触するまで可動把持体36が傾倒すると、同可動把持体36は前記基準位置に配置される。
上記実施形態の版把持装置30によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)基準位置にある可動把持体36が、支軸37を回動中心として回動した後、長孔34aの延びる方向に沿って移動することにより、把持面36cと固定面32aとより刷版14の終端部14bが把持される。そのため、刷版14の終端部14bに対して斜め外方から把持面36cが被さるのみで終端部14bを把持するのではなく、把持面36cが終端部14bに対して被さる方向と交差する方向へ移動し、同方向から固定面32aとともに終端部14bを把持する。従って、終端部14bが版胴13内から外へ押し出されたまま固定されることがなく、固定面32aと把持面36cとの間で終端部14bを確実に把持して版胴13に固定することができる。
(2)基準位置にある可動把持体36は、把持位置にある場合と比較して長孔34aの長さ分だけ終端側万力台32から離れた位置にある。そのため、長孔34aが形成されず、可動把持体36を把持位置で回動させるだけの構成とした場合と異なり、把持面36cと固定面32aとの間の挿入空間を広く確保することができる。従って、終端部14bを挿入空間内に容易に挿入することができ、また、終端部14bが固定面32aに密着するように挿入空間に挿入されていなくても、把持面36cにより終端部14bを外方へ押し出すことなく固定面32aとの間に把持することができる。
(3)把持面36cは粗面に加工されているため、凹凸状をなし、固定面32aとより終端部14bを把持したとき、同終端部14bが固定面32aと把持面36cとの間から容易に抜け出ることを防止することができる。
(4)カムシャフト35には、第1平面部35aと第2平面部35bとが形成され、第1平面部35aは可動把持体36の側面に摺接し、第2平面部35bは摺接板36aに摺接するように構成されている。そのため、第1平面部35aと第2平面部35bの摺接による可動把持体36の動作を、支軸37を中心とした回動と、長孔34aに沿った移動とに分けることができる。
(5)第1平面部35aと第2平面部35bとは異なる平面上に位置しているため、第1平面部35aが可動把持体36に摺接しているとき、第2平面部35bが摺接板36aに摺接することがなく、可動把持体36の動作を確実に分けることができる。
(6)第1平面部35aが可動把持体36の傾倒を許容する位置までカムシャフト35が逆回転していくと同時に、第1押圧部材P1により、可動把持体36を終端側万力台32から離れる方向へ押圧することができる。そのため、可動把持体36を終端側万力台32から離れる方向へ回動させることができ、把持面36cと固定面32aとの間に、終端部14bを挿入するための空間を大きく取ることができる。
(7)また、摺接板36aに摺接する第2平面部35bの位置が変化するとともに、第2押圧部材P2により可動把持体36を押し上げることができる。従って、把持面36cを、固定面32aから離すことができ、終端部14bの把持状態を解除することができる。
(8)可動把持体36が長孔34aの長さ方向へ移動しているとき、可動把持体36にはカムシャフト35の周面が摺接しているため、可動把持体36は終端側万力台32側へ押圧される。このとき、規制部材32dが可動把持体36の基端側に当接するため、可動把持体36の基端側が終端側万力台32に近づくように可動把持体36が回動するのを規制することができる。即ち、可動把持体36を長孔34aに沿って真っ直ぐ下降させることができ、把持面36cを固定面32aに対して平行な状態を維持することができる。
(9)摺接板36aは、可動把持体36の側面及び長孔34aの軸線に対して直交するように延設されている。そのため、第2平面部35bが摺接板36aに摺接し、可動把持体36が固定把持体31の底側へ押圧されたとき、その押圧する力は摺接板36aの延びる方向に対して直交し、長孔34aの延びる方向と同じとなる。従って、可動把持体36を長孔34aに沿って確実に移動させることができ、把持面36cが固定面32aに対して平行となる状態を維持することができる。
(10)可動把持体36の側面に収容凹部36dを凹設した。そのため、第2平面部35bが摺接板36aに摺接しているとき、第1平面部35aを収容して、第1平面部35aが可動把持体36の側面に接触することを防止することができる。従って、第1及び第2平面部35a,35bが可動把持体36に同時に摺接することを防止でき、カムシャフト35の回動と、長孔34aに沿った移動とを確実に分けて作動させることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 第1押圧部材P1は、頭部と軸部とよりなる部材を巻バネSにより付勢して形成したが、第1押圧部材P1を巻バネSのみの構成とし、同巻バネSにより可動把持体36を押圧するように構成してもよい。また、第2押圧部材P2をピン体を巻バネにより付勢して構成してもよい。
・ 実施形態では、複数の版把持装置30を連結したが、単体の版把持装置30を版胴13内に設けてもよい。
・ 実施形態では、刷版14の終端部14bを版胴13に固定するために版把持装置30を用いたが、刷版14の始端部14aを版胴13に固定するために、始端側把持機構20の代わりに版把持装置30を用いてもよい。即ち、版胴13内に一対の版把持装置30を設け、一方の版把持装置30を刷版14の始端部14aを把持するために使用し、他方の版把持装置30を刷版14の終端部14bを把持するために使用してもよい。
・ 刷版14の始端部14aを版胴13に固定するために版把持装置30を用い、終端部14bを版胴13に固定するために始端側把持機構20と同様の構成を用いてもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(1)前記第1平面部は、可動把持体の側面に摺接し、前記第2平面部は、可動把持体の側面から延設された摺接板に摺接するとともに、前記第1平面部が可動把持体の側面に摺接している状態で、第2平面部の一部を収容する収容凹部が可動把持体の側面に凹設されていることを特徴とする請求項2に記載の印刷機における版把持装置。このように構成した場合、第1平面部の可動把持体に対する摺接により、可動把持体の回動という動作のみ可能とし、第2平面部の摺接板に対する摺接により、可動把持体の長孔に沿った移動のみを可能とすることができる。
実施形態の印刷機内を示す模式図。 実施形態の版胴を示す部分斜視図。 (a)は基準位置にある可動把持体を示す部分断面図、(b)は基準位置にある可動把持体を示す側面図。 (a)は把持面が固定面に対し平行となるまで回動した可動把持体を示す部分断面図、(b)は把持面が固定面に対し平行となるまで回動した可動把持体を示す側面図。 (a)は把持位置にある可動把持体を示す部分断面図、(b)は把持位置にある可動把持体を示す側面図。 従来の版把持装置を示す部分側面図。
符号の説明
P1…第1押圧部材、P2…第2押圧部材、11…印刷機、13…版胴、14…刷版、14a…刷版の端部としての始端部、14b…刷版の端部としての終端部、30…版把持装置、31…固定把持体、32a…固定面、32d…規制部材、34a…長孔、35…カムシャフト、35a…第1平面部、35b…第2平面部、36…可動把持体、36a…摺接部としての摺接板、36c…把持面、37…支軸。

Claims (4)

  1. 版胴に刷版を巻装し、前記版胴を回転させながら印刷を行うようにした印刷機において、前記刷版の端部をくわえるために版胴に設けられる版把持装置であって、
    前記版胴に設けられ、固定面を備えた固定把持体と、
    前記固定把持体に設けられ、把持面を備えた可動把持体であり、前記固定面と前記把持面とより刷版の端部を把持する把持位置及び固定面と把持面との間に刷版の端部を挿入可能とする基準位置の二位置に配置可能な可動把持体と、
    前記固定把持体に支持されたカムシャフトと
    より構成され、前記固定把持体には、前記固定面に対し直交方向に延びる長孔が穿設されているとともに、同長孔に、前記可動把持体の基端側に固定された支軸が挿通支持され、前記可動把持体は、先端側に前記把持面を備えるとともに、基端側に前記把持面と相反する方向へ延びる摺接部を備え、可動把持体の側面にカムシャフトが摺接することによる支軸を中心とした可動把持体の回動及び前記摺接部にカムシャフトが摺接することによる長孔の延びる方向に沿った可動把持体の移動により同可動把持体は前記基準位置から把持位置へ移動可能に構成されていることを特徴とする印刷機における版把持装置。
  2. 前記カムシャフトには、可動把持体の側面に摺接する第1平面部と、前記摺接部に摺接する第2平面部とが設けられ、第1平面部と第2平面部とが互いに異なる平面上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷機における版把持装置。
  3. 前記固定把持体には、前記把持面が固定面から離れる方向へ可動把持体が回動するように同可動把持体を押圧する第1押圧部材と、前記把持面が固定面から離れる方向へ可動把持体が移動するように同可動把持体を押圧する第2押圧部材とが設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷機における版把持装置。
  4. 前記固定把持体には、前記可動把持体の回動を規制する規制部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の印刷機における版把持装置。
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