JP4245864B2 - オレフィン重合用触媒及び該触媒を用いる重合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オレフィン重合用固体触媒およびこの触媒を用いたオレフィンの重合方法に関する。詳細にはオレフィンの懸濁重合(スラリー重合)や気相重合に適用することができ、非常に高い生産効率をもって、粉体性状に優れた重合体を製造することができるオレフィン重合用触媒、またそれを用いたオレフィンの重合方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からオレフィンの重合体または共重合体を製造する為の触媒として、チタン化合物と有機アルミニウム化合物とからなる所謂チーグラー・ナッタ型触媒が知られている。一方、近年エチレンの単独重合またはエチレンと他のα−オレフィンとの共重合に際し、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド等の可溶性のハロゲン含有遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物の1種であるアルミノキサンとからなる触媒を用いることにより高活性で重合する技術が見出された。該技術の詳細は特公平4−12283号公報(DE3127133.2に対応)に記載されている。
【0003】
一方、有機アルミニウムオキシ化合物以外の活性化剤を使用する触媒系として、Taube らはJ.Organometall.Chem.,347.C9(1988) に[Cp2 TiMe(THF)]+ [BPh4 ]- (Cp:シクロペンタジエニル基、Me:メチル基、Ph:フェニル基、THF:テトラヒドロフラン)で表わされる化合物を用いてエチレンの重合を行っている。Jordanらは、J.Am.Chm.Soc.,109.4111(1987)で[Cp2 ZrR(L)]+ (R:メチル基またはベンジル基、L:ルイス塩基)で示されるジルコニウム錯体がエチレンを重合することを報告している。
【0004】
また特表平1−501950号公報、特表平1−502036号公報にはシクロペンタジエニル金属化合物およびシクロペンタジエニル金属カチオンを安定化することのできるイオン性化合物とからなる触媒を用いてオレフィンを重合する方法が開示されている。
しかし、これら従来技術に於て提案された触媒系においては、反応系に可溶であることが多く、これを反映して、スラリー重合あるいは気相重合で得られるオレフィン重合体は、粒子形状が不定形で嵩密度が小さく微粉が多い等、粒子性状の極めて悪いものであり、重合体が反応器の壁面や撹拌羽根等に付着し、工業的にはこのままでは使用できないという問題があった。そのため、その製造プロセスは溶液重合法に限定されるのが通常であるが、溶液重合法では高分子量の重合体を製造しようとすると重合体を含む溶液の粘度が著しく高くなり生産性が大幅に低下するという問題があり、コスト的に好ましい方法とは言えず、工業的な応用に大きな問題がある。
【0005】
上記問題を解決する為、遷移金属化合物及び有機アルミニウムオキシ化合物の少なくとも一方の成分をシリカ、アルミナ、シリカアルミナなどの多孔性無機酸化物担体に担持させた触媒を用いて、懸濁重合法または気相重合法においてオレフィンを重合しようという試みがなされている。
例えば日本国特開昭60−106808号公報及び日本国特開昭60−106809号公報(両者とも、EP0142143に対応)には、炭化水素溶媒に可溶なチタン化合物及び/またはジルコニウム化合物を含む高活性触媒成分と充填剤とを予め接触処理して得られる生成物及び有機アルミニウム化合物、ならびに更にポリオレフィン親和性の充填剤(filler)の存在下で、エチレン或いはエチレンとα−オレフィンとを共重合させることにより、ポリエチレン系重合体と充填剤からなる組成物を製造する方法が記載されている。
【0006】
しかし、この方法では高活性触媒成分を充填剤に強固に担持することはできず、従って重合体の性状に問題があり、また活性も低く、さらには重合体が、意図するしないに拘らず、必ず充填剤を含むようになる等の問題があった。
一方、日本国特開昭61−31404号公報(DE3424697.5に対応)には、水を含有する無機系物質をトリアルキルアルミニウムと接触させることによって得られた有機アルミニウム化合物と、遷移金属化合物よりなる混合触媒の存在下にエチレンまたはエチレンとα−オレフィンとを重合または共重合させる方法が記載されている。
【0007】
しかし、水を含有する無機系物質とトリアルキルアルミニウムとを接触させた場合、かかる無機系物質に含有される水とトリアルキルアルミニウムが反応するのみで、該反応生成物を無機系物質に強固に担持することはできなかった。又、水とトリアルキルアルミニウムとの反応は激しい発熱反応であり、重合に有効な分子量を有する有機アルミニウムオキシ化合物のみを該分子量を制御しつつ選択的に合成することは実質的に難しく、実用上有効な方法とは言い難かった。
【0008】
また日本国特開平4−224808号公報には、アルミノキサンと結晶水または吸着水を含有する無機化合物とを接触させて得られる固体成分に、メタロセン化合物と、必要に応じて有機金属化合物とを接触させて得られる固体触媒成分を用いてα−オレフィンを重合する方法が記載されている。さらに日本国特開平6−145238号公報には遷移金属化合物と、アルミノキサンを無水あるいは10wt%以下の吸着水を有する無機酸化物に接触反応させて担持して得た固体助触媒成分と、有機アルキルアルミニウム化合物とを重合直前に接触させて用いるオレフィンの重合方法が記載されている。
【0009】
しかしながらこれらの方法ではアルミノキサンを無機固体に強固に担持することはできず、重合の際に無機固体からアルミノキサンが遊離し、担体とは異なる場所でメタロセン化合物と重合活性錯体を形成して重合活性を発現するため、粉体ではなく不定形な重合体が生成してしまい、そのような不定型な重合体は流動性に乏しく反応器内に付着しやすく、結果的に担体使用の利点を充分発揮することができなかった。このため工業的な応用は、事実上困難であった。
【0010】
さらに、日本国特開昭60−35006号公報、日本国特開昭60−35007号公報、日本国特開昭60−35008号公報には、遷移金属化合物及び有機アルミニウムオキシ化合物をシリカ、アルミナ、シリカアルミナ等の担体に担持して使用し得ることが記載されている。また、日本国特開昭61−108610号公報、日本国特開昭61−296008号公報、日本国特開平5−155931号公報には、ジルコノセン等の遷移金属化合物及びアルミノキサンを無機酸化物などの担体に担持した触媒の存在下に、オレフィンを重合する方法が記載されている。
【0011】
しかしながら、これら記載のいずれの方法においても、充分強固に触媒成分を担体に担持することができず、従って、重合中に触媒成分が担体から遊離して重合活性を示すため、反応器内の壁面、攪拌翼やバッフル等に該遊離触媒成分による重合体が付着し、工業的な連続運転ができなくなるという問題を有していた。また、日本国特開昭63−280703号公報(EP0294942に対応)には、有機金属化合物、微粒子状担体、アルミノキサン、周期律表4族の遷移金属化合物および予備重合により生成するオレフィン重合体から形成されるオレフィン重合用固体触媒が記載されている。さらに、日本国特開平5−155930号公報には、特定の範囲の吸着水量及び表面水酸基の量を有する微粒子状担体を使用し、予備重合を行なう方法が記載されている。
【0012】
これらの方法は、予備重合を行なうことによりポリマー粉体性状の改善や、遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物から形成される触媒を予備重合ポリマーで保護することによる該触媒の経時的失活の防止等が期待されるものであったが、ポリマー性状の改善にはある程度の効果はみられたものの依然充分ではなかった。また、予備重合という余分な工程が必要なため、品質バラツキの要因が増え、またコスト的にも不利となる等の問題もあった。
上記のごとく、従来技術においては、オレフィンの懸濁重合(スラリー重合)や気相重合において、粉体性状に優れた重合体を反応器への付着等を生ずることなく重合することができないという問題があった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従って、重合中に触媒成分が担体から遊離せず、粉体性状に優れた重合体を反応器への付着等を生ずることなく重合できる触媒の開発が望まれており、本発明は、そのような商業プラントの連続運転を可能にする新規なオレフィン重合用触媒およびそれを用いるオレフィンの重合方法を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような現状に鑑み、重合中の反応器への付着等の現象が発生せず且つ粉体性状の極めて優れた重合体粉末を、高い活性で、効果的、効率的に製造できる方法を見出すべく鋭意検討して、本発明に到達した。
即ち、本発明は、以下の通りである。
1)[A]下記の式(1)で表される周期表第4族から選ばれる可溶性遷移金属化合物と、
Lj Wk MXp X’q (1)
(式中、Lは、各々独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒドロフルオレニル基からなる群より選ばれるη結合性環状アニオン配位子を表し、該配位子は場合によっては1〜8個の置換基を有し、該置換基は各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1〜12のアミノヒドロカルビル基、炭素数1〜12のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜12のジヒドロカルビルアミノ基、炭素数1〜12のヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基及び炭素数1〜12のヒドロカルビルオキシシリル基からなる群より選ばれる、20個までの非水素原子を有する置換基であり、
Mは、形式酸化数が+2、+3または+4の周期表第4族に属する遷移金属群から選ばれる遷移金属であって、少なくとも1つの配位子Lにη5 結合している遷移金属を表し、
【0015】
Wは、50個までの非水素原子を有する2価の置換基であって、LとMとに各々1価ずつの価数で結合し、これによりL及びMと共働してメタロサイクルを形成する2価の置換基を表し、
Xは、各々独立して、炭素数1〜60の炭化水素基を表し、
X’は、各々独立して、40個までの非水素原子を有する中性ルイス塩基配位性化合物を表し、
【0016】
jは1または2であり、但し、jが2である時、場合によっては2つの配位子Lが、20個までの非水素原子を有する2価の基を介して互いに結合し、該2価の基は炭素数1〜20のヒドロカルバジイル基、炭素数1〜12のヒドロカルビレンオキシ基、炭素数1〜12のヒドロカルビレンアミノ基、シランジイル基、及びシリレンアミノ基からなる群より選ばれる基であり、
kは0または1であり、
pは0、1または2であり、但し、Xが1価の基である場合、pはMの形式酸化数より1以上小さい整数であり、またXがMにのみ結合している2価の基である場合、pはMの形式酸化数より(j+1)以上小さい整数であり、
qは0、1または2である)
【0017】
[B]遷移金属化合物[A]と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活性化剤化合物であって、有機アルミニウムオキシ化合物か又は以下の式(8)で表される化合物である活性化剤化合物と、
[L−H] + [BQ 3 Q’] - (8)
(但し、式中[L−H] + はプロトン付与性のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また、式中[BQ 3 Q’] - は相溶性の非配位性アニオンであり、Qはペンタフルオロフェニル基であり、残る1つのQ’は置換基としてOH基を1つ有する炭素数6乃至20の置換アリール基である。)
[C]トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、あるいはこれらのアルキルアルミニウムとメチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコールとの反応生成物からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機アルミニウム化合物と、
【0018】
[D]シロキサン化合物と、或いはさらに、[E]一般式(Mt) α (Mg) β (R 1 ) a (R 2 ) b (OR 3 ) c 〔式中、Mtは周期律表第1〜3族に属する金属原子であり、R 1 、R 2 及びR 3 は炭素数2〜20の炭化水素基であり、α、β、a、b及びcは次の関係を満たす数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0≦c、a+b>0、0≦c/(α+β)≦2、rα+2β=a+b+c(ただし、rはMtの原子価)〕で示される炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とから形成される、炭化水素溶媒中で固体であり、[C]と[D]との混合物に、あらかじめ接触させた[A]と[E]との混合物、及び[B]と[C]との混合物を接触させることにより得られることを特徴とするオレフィン重合用触媒。
【0019】
2)シロキサン化合物[D]が、下記の式(3)で示される構成単位を有する鎖状または環状のシロキサン化合物であることを特徴とする、1)に記載のオレフィン重合用触媒。
【0020】
【化2】
(式中R4 、R5 は水素または炭素数1〜30のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜30の炭化水素基、及び炭素数1〜40の置換された炭化水素基なる群より選ばれる基をあらわす)
【0021】
3)1)又は2)に記載のオレフィン重合用固体触媒の存在下で、オレフィンを重合または共重合させることを特徴とするオレフィンの重合方法。
【0022】
5)1)ないし4)のいずれかに記載のオレフィン重合用固体触媒の存在下で、オレフィンを重合または共重合させることを特徴とするオレフィンの重合方法。である。
に係わる。
【0023】
【発明の実施の形態】
この技術のポイントの1つは、全て可溶性のものから固体触媒を合成することにあります。これまでの従来技術は、シリカなどの担体上にメタロセン触媒を担持していましたが、触媒の粒径は、担体の粒径以上となるため、非常に細かい触媒の合成は不可能でした。そこで本願は、担体を用いずに触媒をする技術を鋭意研究し本願発明に到達しました。実際この系では、成分[A]と成分[B]を混ぜると固体になります。その際、「炭化水素溶媒に可溶なMg」を成分[A]に接触させておくとより粒径が揃った固体触媒となり、例え「炭化水素溶媒に可溶なMg」があっても固体触媒は調整できます。
【0024】
本発明の1つの態様に依れば、周期表第3〜11族から選ばれる可溶性遷移金属化合物[A]、遷移金属化合物[A]と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活性化剤化合物[B]、有機アルミニウム化合物[C]、シロキサン化合物[D]、或いはさらに、炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物[E]とから形成される、炭化水素溶媒中で固体であることを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
【0025】
このようなオレフィン重合用触媒は、活性が高くかつ、流動性、充填密度等の粉体性状に優れた重合体が得られることから、反応器内攪拌などを効率よく行うことができ、重合熱を効果的に除去することが可能であり、生産性の向上が期待できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において用いられる周期表第3〜11族から選ばれる可溶性遷移金属化合物[A]について説明する。
【0026】
本発明において用いられる成分[A]の例としては、まず下記の式(1)で表される化合物を挙げることができる。
LjWkMXpX’q (1)
(式中、Lは、各々独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒドロフルオレニル基からなる群より選ばれるη結合性環状アニオン配位子を表し、該配位子は場合によっては1〜8個の置換基を有し、該置換基は各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1〜12のアミノヒドロカルビル基、炭素数1〜12のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜12のジヒドロカルビルアミノ基、炭素数1〜12のヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、炭素数1〜12のヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基からなる群より選ばれる、20個までの非水素原子を有する置換基であり、
【0027】
Mは、形式酸化数が+2、+3または+4の周期表第4族に属する遷移金属群から選ばれる遷移金属であって、少なくとも1つの配位子Lにη5結合している遷移金属を表し、
Wは、50個までの非水素原子を有する2価の置換基であって、LとMとに各々1価ずつの価数で結合し、これによりL及びMと共働してメタロサイクルを形成する2価の置換基を表し、
【0028】
Xは、各々独立して、1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、及びLとMとに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子からなる群より選ばれる、60個までの非水素原子を有するアニオン性σ結合型配位子を表し、
X′は、各々独立して、40個までの非水素原子を有する中性ルイス塩基配位性化合物を表し、
【0029】
jは1または2であり、但し、jが2である時、場合によっては2つの配位子Lが、20個までの非水素原子を有する2価の基を介して互いに結合し、該2価の基は炭素数1〜20のヒドロカルバジイル基、炭素数1〜12のハロヒドロカルバジイル基、炭素数1〜12のヒドロカルビレンオキシ基、炭素数1〜12のヒドロカルビレンアミノ基、シランジイル基、ハロシランジイル基及びシリレンアミノ基からなる群より選ばれる基であり、
【0030】
kは0または1であり、
pは0、1または2であり、但し、Xが1価のアニオン性σ結合型配位子、またはLとMとに結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数より1以上小さい整数であり、またXがMにのみ結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数より(j+1)以上小さい整数であり、
qは0、1または2である)。
【0031】
上記式(1)の化合物中の配位子Xの例としては、炭素数1〜60の炭化水素基、炭素数1〜60のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜60のヒドロカルビルアミド基、炭素数1〜60のヒドロカルビルフォスフィド基、炭素数1〜60のヒドロカルビルスルフィド基、シリル基、これらの複合基等が挙げられる。
上記式(1)の化合物中の中性ルイス塩基配位性化合物X′の例としては、フォスフィン、エーテル、アミン、炭素数2〜40のオレフィン、炭素数1〜40のジエン、これらの化合物から誘導される2価の基等が挙げられる。
本発明において用いられる成分[A]の例としては、次に下記の式(4)で表される化合物を挙げることができる。
【0032】
【化3】
【0033】
(式中、R1及びR4は、それぞれ独立に炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基又は全炭素数7〜20の環上に炭化水素基を有する芳香族基、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、R2とR3はたがいに結合して環を形成していてもよく、X及びYは、それぞれ独立にハロゲン原子又は炭素数1〜20の炭化水素基、Mは、ニッケル又はパラジウムを示す。)で表される錯体化合物を挙げることができる。
【0034】
上記一般式(4)において、R1及びR4のうちの炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数3〜20のシクロアルキル基など、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。なお、シクロアルキル基の環上には低級アルキル基などの適当な置換差が導入されていてもよい。
【0035】
また、全炭素数7〜20の環上に炭化水素基を有する芳香族基としては、例えばフェニル基やナフチル基などの芳香族環上に、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が1個以上導入された基などが挙げられる。このR1及びR4としては、環上に炭化水素基を有する芳香族基が好ましく、特に2,6−ジイソプロピルフェニル基が好適である。R1及びR4は、たがいに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0036】
また、R2及びR3のうちの炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜20の直鎖状または分岐状アルキル基,炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基,炭素数7〜20のアラルキル基などが挙げられる。ここで、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状アルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、前記R1及びR4のうちの炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基の説明において例示したものと同じものを挙げることができる。また炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基,メチルナフチル基などが挙げられ、炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えばベンジル基やフェネチル基などが挙げられる。
【0037】
このR2及びR3は、たがいに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、たがいに結合して環を形成していてもよい。一方、X及びYのうちのハロゲン原子としては、塩素、臭素またはヨウ素原子などが挙げられ、また、炭素数1〜20の炭化水素基は、上記R2及びR3における炭素数1〜20の炭化水素基について、説明したとおりである。このX及びYとしては、特に臭素原子またはメチル基が好ましい。また、XとYは、たがいに同一であってもよく異なっていてもよい。
本発明において、成分[A]としては、前記式(1)(ただし、j=1)で表される遷移金属化合物が好ましい。
前記式(1)(ただし、j=1)で表される化合物の好ましい例としては、下記の式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0038】
【化4】
【0039】
(式中、Mは、チタン、ジルコニウム及びハフニウムからなる群より選ばれる遷移金属であって、形式酸化数が+2、+3または+4である遷移金属を表し、
R5は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン原子及びこれらの複合基からなる群より選ばれる、20個までの非水素原子を有する置換基を表し、但し、該置換基R5が炭素数1〜8の炭化水素基、シリル基またはゲルミル基である時、場合によっては2つの隣接する置換基R5が互いに結合して2価の基を形成し、これにより該2つの隣接する該置換基R5にそれぞれ結合するシクロペンタジエニル環の2つの炭素原子間の結合と共働して環を形成し、
【0040】
X″は、各々独立して、ハライド、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜18のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜18のヒドロカルビルアミノ基、シリル基、炭素数1〜18のヒドロカルビルアミド基、炭素数1〜18のヒドロカルビルフォスフィド基、炭素数1〜18のヒドロカルビルスルフィド基及びこれらの複合基からなる群より選ばれる、20個までの非水素原子を有する置換基を表し、但し、場合によっては2つの置換基X″が共働して炭素数4〜30の中性共役ジエンまたは2価の基を形成し、
【0041】
Y´は、−O−、−S−、−NR*−または−PR*−を表し、但し、R*は、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜8のヒドロカルビルオキシ基、シリル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のハロゲン化アリール基、またはこれらの複合基を表し、
ZはSiR* 2、CR* 2、SiR* 2SiR* 2、CR* 2CR* 2、CR*=CR*、CR* 2SiR* 2またはGeR* 2を表し、但し、R*は上で定義した通りであり、
nは1、2または3である)。
【0042】
本発明において用いられる成分[A]の具体例としては、以下に示すような化合物が挙げられる。
ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)エチルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)フェニルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ベンジルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ネオペンチルジルコニウムハイドライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、
【0043】
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジベンジル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジハイドライド、
ビス(フルオレニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジエチル、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジハイドライド、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(4−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(5−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、
【0044】
エチレンビス(6−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(7−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(5−メトキシ−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(2,3−ジメチル−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(4,7−ジメチル−1−インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス−(4,7−ジメトキシ−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジハイドライド、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、
【0045】
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジハイドライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジハイドライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジメチル、シリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジハイドライド、
シリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジハイドライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル]チタニウムジメチル、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、
【0046】
[(N−メチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−フェニルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−ベンジルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−t−ブチルアミド)(η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル]チタニウムジメチル、
【0047】
[(N−t−ブチルアミド)(η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−メチルアミド)(η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル]チタニウムジメチル、[(N−メチルアミド)(η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−t−ブチルアミド)(η5−インデニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−ベンジルアミド)(η5−インデニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル等。
【0048】
本発明において用いられる成分[A]の具体例としては、さらに、成分[A]の具体例として上に挙げた各ジルコニウム及びチタン化合物の名称の「ジメチル」の部分(これは、各化合物の名称末尾の部分、すなわち「ジルコニウム」または「チタニウム」という部分の直後に現れているものであり、前記式(5)中のX″の部分に対応する名称である)を、以下に掲げる任意のものに替えてできる名称を持つ化合物も挙げられる。
【0049】
「ジベンジル」、「2−(N,N−ジメチルアミノ)ベンジル」、「2−ブテン−1,4−ジイル」、「s−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン」、「s−トランス−η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン」、「s−トランス−η4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン」、「s−トランス−η4−2,4−ヘキサジエン」、「s−トランス−η4−1,3−ペンタジエン」、「s−トランス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン」、「s−トランス−η4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン」、
【0050】
「s−シス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン」、「s−シス−η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン」、「s−シス−η4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン」、「s−シス−η4−2,4−ヘキサジエン」、「s−シス−η4−1,3−ペンタジエン」、「s−シス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン」、「s−シス−η4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン」等。
【0051】
本発明において用いられる遷移金属化合物[A]は、一般に公知の方法で合成できる。本発明において成分[A]として用いられる遷移金属化合物の好ましい合成法の例としては、米国特許第5,491,246号明細書に開示された方法を挙げることができる。
本発明においてこれら遷移金属化合物成分[A]は単独で使用してもよいし組み合わせて使用してもよい。
【0052】
次に本発明において、遷移金属化合物[A]と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活性化剤化合物[B]について説明する。
成分[B]として例えば、有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。本発明で用いられる好ましい有機アルミニウムオキシ化合物は、例えば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
【0053】
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
なお該有機アルミニウムオキシ化合物は、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記の有機アルミニウムオキシ化合物の溶液から、溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解させてもよい。
【0054】
有機アルミニウムオキシ化合物を調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、
【0055】
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、
ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシドなどのジアルキルアルミニウムアリーロキシドなどが挙げられる。
【0056】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
この他、成分[B]として例えば、以下の一般式(6)で定義される化合物が挙げられる。
[L−H]d+[MmQp]d- (6)
但し、式中[L−H]d+はプロトン付与性のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。
【0057】
また、式中[MmQp]d-は相溶性の非配位性アニオンであり、Mは周期律表第5族乃至第15族から選ばれる金属又はメタロイドであり、Qは各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキサイド基、アリロキサイド基、炭化水素基、炭素数20までの置換炭化水素基であり、またハライドであるQは1個以下である。また、mは1乃至7の整数であり、pは2乃至14の整数であり、dは1乃至7の整数であり、p−m=dである。
【0058】
本発明において、成分[B]の好ましい例としては以下の一般式(7)で表される。
[MmQn(Gq(T−H)r )z]d- (7)
但し、Mは周期律表第5族乃至15族から選ばれる金属またはメタロイドである。Qは、一般式(6)に定義の通りであり、Gは硼素及びTと結合するr+1の価数を持つ多価炭化水素基であり、TはO、S、NR、又はPRであり、ここでRはヒドロカルビル、トリヒドロカルビルシリル基、トリヒドロカルビルゲルマニウム基、または水素である。
【0059】
また、mは1〜7の整数であり、nは0〜7の整数であり、qは0又は1の整数であり、rは0〜3の整数であり、zは1〜8の整数であり、dは1〜7の整数であり、n+z−m=dである。本発明の成分[B]の更に好ましい例は、以下の一般式(8)で表される。
[L−H]+[BQ3Q’]- (8)
但し、式中[L−H]+はプロトン付与性のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また、式中[BQ3Q’]-は相溶性の非配位性アニオンであり、Qはペンタフルオロフェニル基であり、残る1つのQ’は置換基としてOH基を1つ有する炭素数6乃至20の置換アリール基である。
【0060】
本発明の相溶性の非配位性アニオンの具体例としては、例えば、テトラキスフェニルボレート、トリ(p−トリル)(フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(フェニル)ボレート、トリス(2,4−ジメチルフェニル)(ヒドフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)(フェニル)ボレート、トリス(3,5−ジ−トリフルオリメチルフェニル)(フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(シクロヘキシル)ボレート、
【0061】
トリス(ペンタフルオロフェニル)(ナフチル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、ジフェニル−ジ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2,4−ジヒドロキシフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(2,4−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジ−トリフルオリメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(2−ヒドロキシエチル)ボレート、
【0062】
トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−(4´−ヒドロキシフェニル)フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ボレート等が挙げられ、最も好ましくはトリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレートが挙げられる。
【0063】
他の好ましい相溶性の非配位性アニオンの例としては、上記例示のボレートのヒドロキシ基がNHR基で置き換えられたボレートが挙げられる。ここで、Rは好ましくは、メチル基、エチル基またはt−ブチル基である。
また、本発明のプロトン付与性のブレンステッド酸の具体例としては、例えば、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム及びトリ(n−オクチル)アンモニウム等のようなトリアルキル基置換型アンモニウムカチオンが挙げられ、また、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウム、N,N−ジメチルベンジルアニリニウム等のようなN,N−ジアルキルアニリニウムカチオンも好適である。
【0064】
さらに、ジ−(i−プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム等のようなジアルキルアンモニウムカチオンも好適であり、トリフェニルフォスフォニウム、トリ(メチルフェニル)フォスフォニウム、トリ(ジメチルフェニル)フォスフォニウム等のようなトリアリールフォスフォニウムカチオン、またはジメチルスルフォニウム、ジエチルフルフォニウム、ジフェニルスルフォニウム等も好適である。
【0065】
本発明においては、これら活性化剤化合物成分[B]を単独で使用してもよいし組み合わせて使用してもよい。
本発明において、成分[B]の使用量は、成分[A]が反応するのに十分な量の成分[B]を用いることが好ましい。
成分[B]が有機アルミニウムオキシ化合物である場合、好ましくは[A]の10〜1000倍モル相当量であり、より好ましくは、50〜500倍モル相当量である。
また成分[B]が一般式(6)で定義される化合物である場合、好ましくは[A]の0.5〜5倍モル相当量であり、より好ましくは、1〜2倍モル相当量である。
【0066】
次に本発明において用いられる有機アルミニウム化合物[C]について説明する。
本発明の成分[C]としては、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等、或いはこれらのアルキルアルミニウムとメチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール等のアルコール類との反応生成物、例えばジメチルメトキシアルミニウム、ジエチルエトキシアルミニウム、ジブチルブトキシアルミニウム等が挙げられる。
【0067】
さらに該反応生成物を生成する際のアルキルアルミニウムと上記アルコール類との組成比即ちAl/OHの範囲は、0.3〜20が好ましく、より好ましくは0.5〜5であり、さらに好ましくは0.8〜3である。
本発明において、成分[C]を単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。また、一度に使用してもよいし、複数回に分けて使用してもよい。複数回使用する場合は、その都度同じか又は異なる成分[C]を使用してもよい。
【0068】
本発明において、成分[C]の使用量は、好ましくは成分[B]の1〜100倍モル相当量であり、より好ましくは、2〜10倍モル相当量である。
また、本発明において成分[C]の一部を予め、成分[B]と接触させることも可能である。その際、成分[C]の量は、成分[B]の0.01〜100倍モル相当量であり、好ましくは0.1〜10倍モル相当量であり、さらに好ましくは0.2〜1倍モル相当量である。
次に本発明において用いられるシロキサン化合物[D]について説明する。
本発明において用いられる成分[D]の例としては、下記の式(3)で表される化合物を挙げることができる。
【0069】
【化5】
【0070】
ここで、置換基R4およびR5は、水素または炭素原子数1〜30の炭化水素基、及び炭素数1〜40の置換された炭化水素基なる群より選ばれる基であり、炭化水素基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基、ビニル基が挙げられる。
また、置換された炭化水素基としてはたとえば、トリフルオロプロピル基があげられる。
これらの化合物は1種類または2種類以上の構成単位から成る2量体以上の鎖状または環状の化合物の形で用いることができる。
本発明において用いられる成分[E]の具体例としては、以下に示すような化合物が挙げられる。
【0071】
対称ジヒドロテトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサン、ペンタメチルトリヒドロトリシロキサン、環状メチルヒドロテトラシロキサン、環状メチルヒドロペンタシロキサン、環状ジメチルテトラシロキサン、環状メチルトリフルオロプロピルテトラシロキサン、環状メチルフェニルテトラシロキサン、環状ジフェニルテトラシロキサン、(末端メチル封塞)メチルヒドロポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、(末端メチル封塞)フェニルヒドロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等。
【0072】
本発明において、これら成分[D]は単独で使用してもよいし組み合わせて使用してもよい。
本発明において、成分[D]の使用量は、好ましくは成分[B]の0.1〜10倍モル相当量であり、より好ましくは、0.5〜2倍モル相当量である。
また、本発明において成分[D]の一部を予め、成分[C]と接触させることも可能である。その際、[C]と[D]との反応は、たとえば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等の不活性反応媒体中、室温〜150℃の間で反応させる。反応の順序については、[C]に[D]を加えていく方法、[D]に[C]を加えていく方法、または両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。本発明において[C]と[D]との反応比率については特に制限はないが、アルミニウム原子に対するシロキサン化合物のモル比の範囲は好ましくは0.1〜10であり、より好ましくは0.5〜2である。
【0073】
次に本発明において用いられる炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物[E]について説明する。
本発明に用いられる有機マグネシウム化合物としては、一般式(Mt)α(Mg)β(R1)a (R2)b(OR3)c〔式中、Mt は周期律表第1〜3族に属する金属原子であり、R1、R2 及びR3は炭素数2〜20の炭化水素基であり、α、β、a、b及びcは次の関係を満たす数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0≦c、a+b>0、0≦c/(α+β)≦2、rα+2β=a+b+c(ただし、rはMt の原子価)〕で表される。この化合物は、炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、R2Mgおよびこれらと他の金属化合物との錯体の全てを包含するものである。記号α、β、a、b、cの関係式kα+2β=a+b+cは、金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
【0074】
上記式中R1ないしR2で表される炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基等が挙げられ、好ましくはR1はアルキル基、特に好ましくは、R1 が一級のアルキル基である。
【0075】
α>0の場合、金属原子Mtとしては、周期律表第1〜3族に属する金属元素が使用でき、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等が挙げられるが、特にアルミニウム、ホウ素、ベリリウム、亜鉛が好ましい。
金属原子Mtに対するマグネシウムの比β/αは、任意に設定可能であるが、好ましくは0.1〜30、特に0.5〜10の範囲が好ましい。また、α=0である或る種の有機マグネシウム化合物を用いる場合、例えば、R1がsec−ブチル等は炭化水素溶媒に可溶性であり、このような化合物も本発明に好ましい結果を与える。
【0076】
一般式(Mt)α(Mg)β(R1)a (R2)b (OR3)cにおいて、α=0の場合のR1、R2は次に示す三つの群(1)、(2)、(3)のいずれか一つであることが推奨される。
(1)R1 、R2 の少なくとも一方が炭素原子数4〜6である二級または三級のアルキル基であること、好ましくはR1、R2がともに炭素原子数4〜6であり、少なくとも一方が二級または三級のアルキル基であること。
【0077】
(2)R1とR2とが炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはR1 が炭素原子数2または3のアルキル基であり、R2が炭素原子数4以上のアルキル基であること。
(3)R1、R2の少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR1、R2が共に炭素原子数6以上のアルキル基であること。
以下これらの基を具体的に示す。(1)において炭素原子数4〜6である二級または三級のアルキル基としては、sec−ブチル、tert−ブチル、2−メチルブチル、2−エチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2−メチル−2−エチルプロピル等が用いられ、sec−ブチルは特に好ましい。
【0078】
次に(2)において炭素原子数2または3のアルキル基としてはエチル基、プロピル基が挙げられ、エチル基は特に好ましい。また炭素原子数4以上のアルキル基としては、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、ブチル基、ヘキシル基は特に好ましい。
更に、(3)において炭素原子数6以上のアルキル基としては、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基等が挙げられ、アルキル基である方が好ましく、ヘキシル基は特に好ましい。
【0079】
一般にアルキル基の炭素原子数を増やすと炭化水素溶媒に溶けやすくなるが、溶液の粘性が高くなる傾向であり、必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくない。なお、上記有機マグネシウム化合物は炭化水素溶液として用いられるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のコンプレックス化剤がわずかに含有されあるいは残存していても差し支えなく用いることができる。
【0080】
次にアルコキシ基(OR3)について説明する。R3で表される炭化水素基としては、炭素原子数3〜10のアルキル基またはアリール基が好ましい。
具体的には、たとえば、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、アミル、ヘキシル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−エチル−4−メチルペンチル、2−プロピルヘプチル、2−エチル−5−メチルオクチル、n−オクチル、n−デシル、フェニル基等が挙げられ、好ましくはn−ブチル、sec−ブチル、2−メチルペンチル及び2−エチルヘキシルである。
【0081】
これらの有機マグネシウム化合物もしくは有機マグネシウム錯体は、一般式R1MgX、R1 2Mg(R1は前述の意味であり、Xはハロゲンである)で示される有機マグネシウム化合物と、一般式、MtR2 rまたはMtR2 r-1 H(Mt、R2、k、rは前述の意味である)で示される有機金属化合物とを、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の不活性炭化水素媒体中、室温〜150℃の間で反応させ、必要な場合には続いてR3で表される炭化水素基を有するアルコールまたは炭化水素溶媒に可溶な上記R3で表される炭化水素基を有するヒドロカルビルオキシマグネシウム化合物、及び/またはヒドロカルビルオキシアルミニウム化合物と反応させる方法により得られる。
【0082】
このうち炭化水素に可溶な有機マグネシウム成分とアルコールとを反応させる場合、反応の順序については、有機マグネシウム成分中にアルコールを加えていく方法、アルコール中に有機マグネシウム成分を加えていく方法、または両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。本発明において炭化水素に可溶な有機マグネシウム成分とアルコールとの反応比率については特に制限はないが、反応の結果、得られるアルコキシ基含有有機マグネシウム成分における、全金属原子に対するアルコキシ基のモル組成比c/(α+β)の範囲は0≦c/(α+β)≦2であり、0≦c/(α+β)<1が特に好ましい。
【0083】
本発明において、これら成分[E]は単独で使用してもよいし組み合わせて使用してもよい。
本発明において、成分[E]は、成分[A]と予め混合して使用することが好ましい。その際、[A]と[E]とを混合する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば[A]に[E]を加えていく方法、あるいは成分[E]に[A]を加えていく方法、または両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。
【0084】
本発明において[E]/[A]のモル比は、0.005〜5であり、好ましくは0.01〜1である。
本発明で、[A]、[B]、[C]、[D]或いはさらに[E]を組み合わせる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、[C]と[D]とをあらかじめ接触させ、[B]と[C]との混合物に接触させた後に[A]と[C]との混合物或いは[A]と[C]と[E]との混合物を接触させる方法、あるいは[C]と[D]との混合物に、あらかじめ接触させた[A]と[E]との混合物、及び[B]と[C]との混合物を接触させる方法、あるいはあらかじめ接触させた[C]と[D]との混合物を、[C]に接触させた後に、あらかじめ接触させた[A]と[E]との混合物、及び[B]と[C]との混合物を接触させる方法等を採用することができる。
【0085】
本発明において、[A]を接触させることで、炭化水素溶媒中に固体を析出させることが好ましい。
また、本発明のオレフィン重合用触媒はオレフィンが予備重合されていてもよい。予備重合温度は通常−20〜80℃が好ましく、より好ましくは0〜50℃の範囲である。予備重合時間は予備重合温度によっても異なるが通常0.5〜100時間が好ましく、より好ましくは1〜50時間程度である。
また予備重合によって生成する重合体量は、固体成分1g当り、約0.1〜500gが好ましく、より好ましくは0.3〜300g、特に好ましくは1〜100gの範囲である。
予備重合に用いられるオレフィンとしては後述する重合時に用いられるオレフィンの中から選ばれるのが好ましい。これらの中ではエチレンが特に好ましく用いられる。
【0086】
次にオレフィンの重合を本発明の触媒の存在下で行なう具体的な態様について説明する。本発明のオレフィン重合用触媒を用いて、エチレンを単独重合させるか、あるいはエチレンと好ましくは炭素数3〜20のα−オレフィン、炭素数3〜20の環状オレフィン、式CH2 =CHR(但し、Rは炭素数6〜20のアリール基である。)で表される化合物、及び炭素数4〜20の直鎖状、分岐状または環状のジエンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとを共重合させることができる。
【0087】
なお、本発明のオレフィン重合用触媒は、後述する脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のスラリーとして重合器に添加する方法が好ましい。
本発明で、炭素数3〜20のα−オレフィンとは、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、及び1−エイコセンよりなる群から選ばれ、炭素数3〜20の環状オレフィンとは、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、及び2−メチル−1.4,5.8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンよりなる群から選ばれ、一般式CH2=CHR(式中Rは炭素数6〜20のアリール基である。)で表わされる化合物とは、例えば、スチレン、ビニルシクロヘキサン等であり、炭素数4〜20の直鎖状、分岐状または環状のジエンとは、例えば、1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,6−オクタジエン、ノルボルナジエン、シクロヘキサジエンよりなる群から選ばれる。
【0088】
エチレンと上記オレフィン(コモノマー)との共重合により、エチレン重合体の密度や物性を制御可能である。本発明によるオレフィンの重合は、懸濁重合法あるいは気相重合法いずれにおいても実施できる。懸濁重合法においては、懸濁重合の媒体として不活性炭化水素媒体を用いることができ、さらにオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
かかる不活性炭化水素媒体としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチルクロライド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物等を挙げることができる。
【0089】
このような、本発明のオレフィン重合用触媒を用いたエチレンの重合における触媒フィード量は、例えば1時間当たりに得られる重合体の質量に対して触媒が1wt%〜0. 001wt%となるように重合系中の触媒濃度を調整することが望ましい。また重合温度は、通常、0℃以上が好ましく、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、且つ150℃以下が好ましく、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは100℃以下の範囲である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaが好ましく、より好ましくは0.2〜5MPa、さらに好ましくは0.5〜3MPaの条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行なうことができる。また、重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行なうことも可能である。
【0090】
さらに、例えば、DE3127133.2に記載されているように、得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、あるいは重合温度を変化させることによって調節することもできる。なお、本発明では、オレフィン重合用触媒は、上記のような各成分以外にもオレフィン重合に有用な他の成分を含むことができる。
例えば、本発明において成分[C]、又は成分[E]、又は成分[D]と成分[E]との反応混合物を、スカベンジャーとして使用することも可能である。
【0091】
スカベンジャーとして使用する際の濃度は、有機金属化合物のモル数の和を総モル数とすると、総濃度は0.001〜10mmol/リットル、好ましくは0.01〜5mmol/リットルである。
本発明のオレフィン重合用触媒を用いた重合方法によって、粉体性状に優れたオレフィン系ポリマーを製造することが可能になる。具体的に言えば、ポリマーは粒径分布の範囲が狭いだけでなく球状の嵩密度も高い粉体の形状で得られるから、得られるポリマーは優れた流動性を示す。
以下、実施例などに基づき、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
【0092】
【実施例1】
(1)シロキシ化合物と有機アルミニウム化合物との反応
トリエチルアルミニウム100mmol、メチルヒドロポリシロキサン(30℃における粘度:30センチストークス)100mmol(Si基準)、ヘキサン150mlを窒素雰囲気下ガラス製耐圧容器に秤取し、磁気攪拌しを用いて攪拌下80℃で2h反応させてAl(C2H5)2(OSi・H・CH3・C2H5)ヘキサン溶液を調整した。次にこの溶液100mmol(Al基準)を窒素雰囲気下500mlフラスコに秤取し、滴下ロートよりジエチルエトキシアルミニウム100mmolを室温攪拌下に滴下し、滴下後80℃まで昇温し、この温度で4時間反応させてAl(C2H5)2.0(OC2H5)0.5(OSi・H・CH3・C2H5)0.5ヘキサン溶液を調整した。
【0093】
(2)ボレートと有機アルミニウム化合物との反応
ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称する)1.14gをトルエン10mlに添加して溶解し、ボレートの100mMトルエン溶液を得た。
このボレートのトルエン溶液にトリエチルアルミニウムの1Mトルエン溶液0.3mlを室温で加え、さらにトルエンを加えてトルエン溶液中のボレート濃度が80mMとなるようにした。その後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む反応混合物を得た。
【0094】
(3)チタニウム錯体と有機マグネシウム化合物及び有機アルミニウム化合物との反応
[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以下、「チタニウム錯体」という)20mmolをアイソパーE[エクソンケミカル社(米国)製の体炭化水素混合物の商品名]100mlに溶解し、予めトリエチルアルミニウムとジブチルマグネシウムより合成した組成式AlMg6(C2H5)3(n−C4H9)12の1Mヘキサン溶液を2ml加え、更にヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を0.1Mに調整した。このうち2mlを取り出し、トリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度0.1M)を5ml加え、チタニウム錯体と有機マグネシウム化合物及び有機アルミニウム化合物との反応混合物を調整した。
【0095】
(4)固体触媒の合成
充分に窒素置換された200mlのフラスコに、ヘキサン50mlと(2)で調整したボレートと有機アルミニウム化合物との反応混合物2.5ml、更に(1)で調整したAl(C2H5)2.0(OC2H5)0.5(OSi・H・CH3・C2H5)0.5n−ヘキサン溶液を0.24mmol加え、30分間攪拌した。
ここに、(3)で調整したチタニウム錯体と有機マグネシウム化合物及び有機アルミニウム化合物との反応混合物7mlを添加した後、室温で1時間攪拌し、薄緑色の固体触媒のヘキサンスラリーを得た。
【0096】
(エチレンと1−ブテンとの共重合)
容量1.8lのオートクレーブにヘキサン800mlを入れ、組成式AlMg6(C2H5)3(n−C4H9)12で示される有機マグネシウム錯体成分をMg+Alとして0.2mmol加えた。このオートクレーブに加圧されたエチレンを入れてオートクレーブの内圧を1MPaに高め、さらに1−ブテン3mlをオートクレーブに入れた。次いで、オートクレーブの内温を75℃に高め、上で得られた触媒のスラリーを、固体触媒の重量が2mgとなるような量だけオートクレーブに加え、エチレンと1−ブテンとの共重合を開始した。オートクレーブの内圧が1MPaに維持されるようにエチレンをオートクレーブに加えながら、60分間共重合を行った。共重合終了後、オートクレーブから反応混合物(コポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
【0097】
その後、反応混合物を濾過、洗浄、乾燥し、コポリマーの乾燥粉末200gを得た。オートクレーブの内部を検査したところ、オートクレーブの内壁等にはポリマーの付着物は全く観察されなかった。触媒の触媒活性3330kg−PE/g−Ti・hrであった。得られたコポリマーの粉末は、平均粒径185μmで、嵩密度0.36g/cm3であり、極めて優れた流動性を示した。よって、得られたコポリマーの粉末は極めて優れた粉末特性を示すことが分かった。
【0098】
【実施例2】
(1)シロキシ化合物と有機アルミニウム化合物との反応
実施例1と同様に実施した。
(2)ボレートと有機アルミニウム化合物との反応
実施例1と同様に実施した。
(3)チタニウム錯体と有機マグネシウム化合物との反応
[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以下、「チタニウム錯体」という)20mmolをアイソパーE[エクソンケミカル社(米国)製の体炭化水素混合物の商品名]100mlに溶解し、予めトリエチルアルミニウムとジブチルマグネシウムより合成した組成式AlMg6(C2H5)3(n−C4H9)12の1Mヘキサン溶液を2ml加え、更にヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を0.1Mに調整した。
【0099】
(4)固体触媒の合成
充分に窒素置換された200mlのフラスコに、ヘキサン50mlとトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度0.1M)を4ml加え、更に(1)で調整したAl(C2H5)2.0(OC2H5)0.5(OSi・H・CH3・C2H5)0.5ヘキサン溶液を0.1mmol加え、1時間攪拌した。
ここに、(2)で調整したボレートと有機アルミニウム化合物との反応混合物2mlと(3)で調整したチタニウム錯体と有機マグネシウム化合物との反応混合物2mlを同時に添加した後、室温で1時間攪拌し、薄緑色の固体触媒のヘキサンスラリーを得た。
【0100】
(エチレンと1−ブテンとの共重合)
実施例1と同様の方法にて重合評価し、コポリマーの乾燥粉末150gを得た。オートクレーブの内部を検査したところ、オートクレーブの内壁等にはポリマーの付着物は全く観察されなかった。触媒の触媒活性2500kg−PE/g−Ti・hrであった。得られたコポリマーの粉末は、平均粒径147μmで、嵩密度0.33/cm3であり、極めて優れた流動性を示した。よって、得られたコポリマーの粉末は極めて優れた粉末特性を示すことが分かった。
【0101】
【比較例1】
実施例1においてAl(C2H5)2.0(OC2H5)0.5(OSi・H・CH3・C2H5)0.5の化合物を使用しなかった以外は実施例1と同様に行い、緑色の固体触媒のヘキサンスラリーを得た。この場合、触媒の凝集が観測された。
(エチレンと1−ブテンとの共重合)
実施例1と同様の方法で重合評価を行った。共重合終了後、オートクレーブから反応混合物(コポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。その後、反応混合物を濾過、洗浄、乾燥し、コポリマーの乾燥粉末98gを得た。オートクレーブの内部を検査したところ、オートクレーブの内壁等にポリマーの付着が観察された。触媒の触媒活性は1633kg−PE/g−Tiであった。得られたコポリマーの粉末は、平均粒径223μmで、嵩密度は0.20g/cm3であった。
【0102】
【発明の効果】
本発明のオレフィン重合用触媒は、高い重合活性を有する点のみならず、粉体性状に優れたオレフィン系ポリマーを、懸濁重合(スラリー重合)や気相重合によって、重合器の内壁、攪拌羽根等に付着させることなく製造できるという点において、有利である。従って、粉体性状に優れたオレフィン系ポリマーを工業的規模のプラントの連続運転によって効率的に製造することを可能にするオレフィン重合用触媒を提供するものである。
Claims (3)
- [A]下記の式(1)で表される周期表第4族から選ばれる可溶性遷移金属化合物と、
Lj Wk MXp X’q (1)
(式中、Lは、各々独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒドロフルオレニル基からなる群より選ばれるη結合性環状アニオン配位子を表し、該配位子は場合によっては1〜8個の置換基を有し、該置換基は各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1〜12のアミノヒドロカルビル基、炭素数1〜12のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜12のジヒドロカルビルアミノ基、炭素数1〜12のヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基及び炭素数1〜12のヒドロカルビルオキシシリル基からなる群より選ばれる、20個までの非水素原子を有する置換基であり、
Mは、形式酸化数が+2、+3または+4の周期表第4族に属する遷移金属群から選ばれる遷移金属であって、少なくとも1つの配位子Lにη5 結合している遷移金属を表し、
Wは、50個までの非水素原子を有する2価の置換基であって、LとMとに各々1価ずつの価数で結合し、これによりL及びMと共働してメタロサイクルを形成する2価の置換基を表し、
Xは、各々独立して、炭素数1〜60の炭化水素基を表し、
X’は、各々独立して、40個までの非水素原子を有する中性ルイス塩基配位性化合物を表し、
jは1または2であり、但し、jが2である時、場合によっては2つの配位子Lが、20個までの非水素原子を有する2価の基を介して互いに結合し、該2価の基は炭素数1〜20のヒドロカルバジイル基、炭素数1〜12のヒドロカルビレンオキシ基、炭素数1〜12のヒドロカルビレンアミノ基、シランジイル基、及びシリレンアミノ基からなる群より選ばれる基であり、
kは0または1であり、
pは0、1または2であり、但し、Xが1価の基である場合、pはMの形式酸化数より1以上小さい整数であり、またXがMにのみ結合している2価の基である場合、pはMの形式酸化数より(j+1)以上小さい整数であり、
qは0、1または2である)
[B]遷移金属化合物[A]と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活性化剤化合物であって、有機アルミニウムオキシ化合物か又は以下の式(8)で表される化合物である活性化剤化合物と、
[L−H]+ [BQ3 Q’]- (8)
(但し、式中[L−H]+ はプロトン付与性のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また、式中[BQ3 Q’]- は相溶性の非配位性アニオンであり、Qはペンタフルオロフェニル基であり、残る1つのQ’は置換基としてOH基を1つ有する炭素数6乃至20の置換アリール基である。)
[C]トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、あるいはこれらのアルキルアルミニウムとメチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコールとの反応生成物からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機アルミニウム化合物と、
[D]シロキサン化合物と、さらに、[E]一般式(Mt)α(Mg)β(R1 )a (R2 )b (OR3 )c 〔式中、Mtは周期律表第1〜3族に属する金属原子であり、R1 、R2 及びR3 は炭素数2〜20の炭化水素基であり、α、β、a、b及びcは次の関係を満たす数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0≦c、a+b>0、0≦c/(α+β)≦2、rα+2β=a+b+c(ただし、rはMtの原子価)〕で示される炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とから形成される、炭化水素溶媒中で固体であり、[C]と[D]との混合物に、あらかじめ接触させた[A]と[E]との混合物、及び
[B]と[C]との混合物を接触させることにより得られることを特徴とするオレフィン重合用触媒。 - 請求項1又は2に記載のオレフィン重合用固体触媒の存在下で、オレフィンを重合または共重合させることを特徴とするオレフィンの重合方法。
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