JP2001525425A - オレフィン重合用触媒及び該触媒を用いるオレフィンの重合方法 - Google Patents

オレフィン重合用触媒及び該触媒を用いるオレフィンの重合方法

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JP2001525425A JP2000523243A JP2000523243A JP2001525425A JP 2001525425 A JP2001525425 A JP 2001525425A JP 2000523243 A JP2000523243 A JP 2000523243A JP 2000523243 A JP2000523243 A JP 2000523243A JP 2001525425 A JP2001525425 A JP 2001525425A
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Abstract

(57)【要約】 新規なオレフィン重合用触媒であって、(A)環状アニオン配位子がη結合してなる遷移金属を包む遷移金属化合物;(B)カチオン及び両立性の非配位性アニオンを含み、該遷移金属化合物(A)とともに触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活性化化合物(B−1)と、有機金属化合物(B−2)との混合物;(C)固体成分;及び場合によっては(D)有機アルミニウム化合物を含み、成分(A)〜(C)、及び場合によっては成分(D)を接触させることによって得られるオレフィン重合用触媒が、開示される。本発明のオレフィン重合用触媒は、高い重合活性を有する点のみならず、粉体性状に優れたオレフィン系ポリマーを、工業的規模のプラントを用いて連続的に、懸濁重合(スラリー重合)や気相重合によって、重合器の内面に付着させることなく効率的に製造できるという点において、有利である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】発明の属する技術分野 本発明は、新規なオレフィン重合用触媒、及び該触媒を用いるオレフィン重合
方法に関する。より詳しくは、本発明は、(A)環状アニオン配位子がη結合し
てなる遷移金属を含む遷移金属化合物;(B)カチオン及び両立性(compatible
)の非配位性アニオンを含み、且つ該遷移金属化合物(A)と反応して触媒活性
を有する金属錯体を形成することが可能である活性化化合物(B−1)と、周期
表第1族〜第15族に属する元素群から選ばれる元素を含有する特定の有機金属
化合物(B−2)との混合物;(C)実質的に水酸基を有しない固体成分(C)
;及び、場合によっては(D)有機アルミニウム化合物(D)を含む新規なオレ
フィン重合用触媒であって、成分(A)〜(C)及び場合によっては成分(D)
を接触させることにより得られる新規なオレフィン重合用触媒に関する。本発明
のオレフィン重合用触媒は、高い重合活性を有するという点のみならず、粉体性
状(powder characteristics)に優れたオレフィン系ポリマーを、懸濁重合(ス
ラリー重合)または気相重合によって、重合器の内壁、攪拌羽根等に付着させる
ことなく製造できるという点において、有利である。このような優れた性質を有
するために、本発明の触媒は、粉体性状に優れたオレフィン系ポリマーを工業的
規模のプラントの連続運転によって効率的に製造することを可能にする。本発明
の触媒を用いて製造されるオレフィン系ポリマーは、フィルム、成形品(吹込成
形品、射出成形品、回転成形品等)、ファイバー、パイプ、電送ケーブルまたは
電線のための塗料・被覆材料等の各種製品の製造に有利に用いることができる。
本発明はまた、上記触媒を用いてオレフィン系ホモポリマーまたはオレフィン系
コポリマーを製造する方法に関する。
【0002】従来の技術 オレフィンホモポリマーまたはオレフィンコポリマーの製造用触媒として、チ
タン化合物及び有機アルミニウム化合物を含むチーグラー−ナッタ型触媒が広く
知られている。
【0003】 また、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド等の可溶性の
ハライド含有遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物の1種であるア
ルミノキサンとを含む触媒系は、エチレンの単独重合またはエチレンとα−オレ
フィンとの共重合に用いられる場合に高い重合活性を示すということが、近年発
見されている。この技術の詳細については、たとえば特公平4−12283号公
報(DE 3127133.2に対応)を参照することができる。
【0004】 特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、及び特開昭
60−35008号公報(米国特許第4,937,299号明細書に対応)には
、目的とするエチレンポリマーの分子量及び分子量分布を調整するために、ある
いはエチレンとα−オレフィンとの共重合反応性を高めるために、遷移金属化合
物とアルミノキサンとを含む上記触媒系における遷移金属化合物成分として、2
種以上のメタロセンまたは置換されたメタロセンを使用することが、提案されて
いる。
【0005】 上記の従来技術文献において提案された触媒系は、いずれも遷移金属化合物と
有機アルミニウムオキシ化合物とを含むものであって、重合溶媒に可溶である。
そのため、従来の触媒担持法、例えば、触媒系の溶液と、触媒系の非溶媒中に担
体を分散させて得られる分散液とを供給し、触媒系の非溶媒を含有するこの分散
液に触媒系の溶液を添加し、これによって触媒系を沈殿させて担体に担持させる
という方法では、上記の触媒系を担体に強固に担持させることは困難である。従
来の触媒担持法によって担体に担持されたこのような触媒系を懸濁重合法や気相
重合法で用いる場合、重合中に触媒系が担体から分離し、よく知られているよう
に、担体から分離した触媒系は不定形のポリマーを生成して、ポリマーの取扱が
困難になる、という問題が生ずる。つまり、粉体性状に劣るポリマーが生成して
しまうのである。しかも、重合中に、このような不定形のポリマーは、重合器の
内壁、攪拌羽根、温度計の外壁等の重合器の内部表面のいろいろな場所に付着し
やすく、これによって、上記内部表面にポリマーのスケール(scale) が形成され
て付着する。さらに、担体から分離した触媒系の一部が重合中に上述した重合器
の内部表面のいろいろな場所に付着し、その結果重合反応が上記内部表面で起こ
り、これによってまた、上記内部表面にポリマーのスケールが形成されて付着す
る。よく知られているように、重合器の内部表面にポリマーのスケールが付着す
ると、重合器から余分の熱を効率よく除去することができない、攪拌羽根の攪拌
効率が低下する、温度計では反応温度を正確に測定することができない、という
重大な問題を引き起こす。これらの問題があると、連続重合を行うことはできな
い。したがって、懸濁重合法または気相重合法によるオレフィン系ポリマーの工
業的規模での生産に上記触媒系(遷移金属化合物及び有機アルミニウムオキシ化
合物を含む)を用いることはできない。だから必然的に、上記触媒系は溶液重合
法の場合にしか利用できなくなる。ところが、溶液重合で高分子量のポリマーを
製造しようとする場合、ポリマー溶液の粘度がかなり高くなるので、生産性は非
常に低くなってしまう。結局、上記触媒系は、工業的な利用が非常に困難である
という問題を抱えているのである。
【0006】 上記の問題を解決するために、遷移金属化合物及び有機アルミニウムオキシ化
合物からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物をシリカ、アルミナ、シリ
カアルミナ等の多孔性無機酸化物担体に担持させた触媒を用いて、懸濁重合法ま
たは気相重合によってオレフィンを重合しようという試みがなされている。
【0007】 たとえば、特開昭60−106808号公報及び特開昭60−106809号
公報(両公報とも、EP公開第0142143号公報に対応)に開示された方法
では、第一の充填剤と、炭化水素溶媒に可溶であるチタン化合物及び/又は炭化
水素溶媒に可溶であるジルコニウム化合物を含む高活性触媒成分とを接触させ、
これによって接触処理された生成物を得、エチレンの単独重合またはα−オレフ
ィンとの共重合を、接触処理されたこの生成物のみならず、有機アルミニウム化
合物、及び第一の充填剤以上のポリオレフィン親和性を有する第二の充填剤の存
在下で行い、これによってポリエチレン系ポリマーと第一及び第二の充填剤とを
含む組成物を製造している。
【0008】 しかし、この方法では、高活性触媒成分を充填剤に強固に結合することはでき
ないので、触媒活性が低いだけでなく、得られるポリエチレン系ポリマーの粉体
性状は劣悪である。さらに、上記方法では、ポリマー中に充填剤を混入させる意
図があるかないかにかかわらず、得られるポリマーに充填剤が必然的に含まれて
しまう。
【0009】 特開昭61−31404号公報(DE 3424697.5に対応)に開示さ れた方法では、水を含有する無機物質をトリアルキルアルミニウム等の有機アル
ミニウム化合物と接触させて得られる有機アルミニウムオキシ化合物担持物質と
、遷移金属化合物との混合物を含む触媒の存在下で、エチレンの単独重合または
α−オレフィンとの共重合を行っている。
【0010】 しかし、水を含有する無機物質と有機アルミニウム化合物とを接触させると、
水を含有する無機物質の中の水だけが有機アルミニウム化合物と反応する。得ら
れる反応生成物は無機物質とは化学的に結合していないので、この反応生成物を
無機物質に強固に担持することはできない。また、水と有機アルミニウム化合物
との反応は激しい発熱反応であるため、有機アルミニウムオキシ化合物の分子量
を適切なレベルに制御しながら有機アルミニウムオキシ化合物のみを選択的に合
成することは非常に困難である。したがって、重合を容易に行うのに有効な範囲
の分子量を有する有機アルミニウムオキシ化合物を得ることは困難である。よっ
て、この方法は実用上有効であるとは言えない。
【0011】 特開平4−224808号公報には、固体触媒を用いるα−オレフィンの重合
方法が開示されている。用いる固体触媒は、アルミノキサンと、結晶水または吸
着水を含有する無機化合物とを接触させて固体生成物を得た後、引き続き、得ら
れた固体生成物をメタロセン化合物及び場合によっては有機金属化合物と接触さ
せることによって得られる。また、特開平6−145238号公報には、固体触
媒を用いるオレフィンの重合方法が開示されている。用いる固体触媒は、アルミ
ノキサンを無水または10重量%以下の吸着水を含有する無機酸化物と接触させ
反応させて、アルミノキサンを担持した無機酸化物を含む固体助触媒を得、得ら
れた固体助触媒を遷移金属化合物及び有機アルキルアルミニウム化合物と接触さ
せることによって得られる。得られた触媒は直ちに使用される。しかし、これら
の方法では、アルミノキサンを無機固体に強固に担持することができない。この
ようなアルミノキサン担持の無機固体を触媒として用いる場合、重合中にアルミ
ノキサンが無機固体から分離するという難点がある。分離したアルミノキサンは
メタロセン化合物と反応して重合活性を有する錯体を形成し、該錯体は望ましい
形態(粒子状形態等)ではない不定形のポリマーを生成させるので、好ましくな
い。上で述べたように、かかる不定形のポリマーは重合器の内壁等に付着しやす
い。そのため、これらの方法では担体に担持された触媒を使用することの利点を
十分に生かすことができない。したがって、これらの方法を工業的に用いること
は困難である。
【0012】 特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報及び特開昭6
0−35008号公報には、遷移金属化合物及び有機アルミニウムオキシ化合物
をシリカ、アルミナ、シリカアルミナ等の担体に担持することができ、得られる
生成物を触媒として用いることができる旨が記載されている。また、特開昭61
−108610号公報、特開昭61−296008号公報及び特開平5−155
931号公報には、ジルコノセン等の遷移金属化合物及びアルミノキサンを無機
酸化物に担持した触媒の存在下でオレフィンを重合する方法が開示されている。
【0013】 しかし、これらのいずれの方法においても、触媒を担体に強固に担持すること
はできない。したがって、重合中に触媒が担体から分離し、分離した触媒自体が
重合活性を示すために、得られるポリマーが不定形になるという難点がある。不
定形のポリマーは重合器の内壁、攪拌羽根、邪魔板等に付着しやすいので、工業
的な規模で重合を連続的に行うことは不可能となる。
【0014】 特開昭63−280703号公報(EP公開第0294942号公報に対応)
には、有機金属化合物、粒子状担体、アルミノキサン、周期表4族に属する金属
群から選ばれる遷移金属を含有する化合物、及び予備重合によって生成するオレ
フィン系ポリマーを含むオレフィン重合用触媒が開示されている。また、特開平
5−155930号公報には、特定量の吸着水と表面水酸基とを含有する粒子状
担体を用いてオレフィンを予備重合する方法が開示されている。
【0015】 これらの方法は、予備重合を行なうことによって目的とするポリマーの粉体性
状を向上させるという利点、及び、予備重合で生成するポリマーによって遷移金
属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物とを含有する触媒が保護され、該触媒
の経時的な失活が防止されるという利点があるものと期待されていた。しかし、
ポリマーの粉体性状はある程度改善されるものの、改善は不十分である。さらに
、これらの方法は、予備重合という付加的な工程を必要とするために、目的とす
るポリマーの品質がバラツキやすくなるだけでなく、ポリマーの製造コストも高
くなるという問題を抱えている。
【0016】 メタロセン触媒系の促進剤として有用なアルミノキサンに代わるものとしては
、中心に位置する形式的な電荷輸送金属(formal charge-bearing metal) または
半金属(metalloid) 原子と共有結合的に配位するとともにこれを遮蔽する複数の
親油性基を含有するアニオンを含有する嵩高でイオン性の非配位性促進剤が、特
表平1−502036号公報(WO88/05793に対応)、及び特開平8−
34809号公報(WO94/07927、米国特許第5,599,761号明
細書及びEP公開第0277004号公報に対応)に開示されている。これらの
先行技術文献には、このイオン性促進剤は重合活性が高い上に優れた共重合性を
示すという利点があると記載されている。しかし、このイオン性促進剤のアニオ
ンは、アルミノキサンに含まれるアルキル基のような、担体(たとえばシリカ)
の表面水酸基と直接反応することができる、反応性置換基を含有してはいない。
そのため、このイオン性促進剤は担体と化学結合を形成することができず、この
イオン性促進剤を担体に強固に担持することは困難である。イオン性促進剤を担
体に担持するためには、WO91/09882に記載されている方法、即ち、担
体を脱水し、脱水された担体をアルキルアルミニウム溶液で処理して不活性な担
体を得、得られた不活性な担体にイオン性促進剤を物理的に吸着させるという方
法を採用する必要がある。しかし、このような方法では、イオン性促進剤を担体
に強固に担持することができないので、重合中にポリマーのスケールが重合器の
内部表面に付着することを防止することはできない。
【0017】 特表平7−501573号公報(WO93/11172及び米国特許第5,4
27,991号明細書に対応)には、金属または半金属を含有する複数のアニオ
ン性非配位基を含有するポリアニオン性成分を含む促進剤であって、該複数のア
ニオン性非配位基が触媒系の中心成分から分岐しかつ該中心成分と化学的に結合
している促進剤が開示されている。また、WO96/28480には、少なくと
も1つの活性水素成分を含有する置換基を有する両立性のアニオンを包含する促
進剤を提供し、有機金属化合物で処理してある担体に該促進剤を担持するという
方法が開示されている。上記先行文献における技術は、促進剤と担体との間に化
学結合を形成させることによって促進剤を担体に強固に担持させることを目的と
している。上記先行文献における技術を用いることによって、重合器の内部表面
にポリマーのスケールが付着することをある程度防止することができる。しかし
、促進剤が担体に化学的に結合すると促進剤の化学特性が必然的に変化し、担体
に担持された促進剤の触媒活性は担体に担持される前に期待していたものより低
くなる、という欠点を上記技術は抱えている。
【0018】 以上記述したように、従来技術においては、粉体性状に優れたオレフィン系ポ
リマーを、高い重合活性を達成するとともに重合器の内壁、攪拌羽根等への付着
を防ぎながら、懸濁重合(スラリー重合)または気相重合によって製造すること
はできない、という問題があった。
【0019】 したがって、高い重合活性を有するとともに、粉体性状に優れたオレフィン系
ポリマーを、重合器の内壁、攪拌羽根等へ付着させることなく工業的規模で生産
することを可能にする、新しい触媒系の開発が望まれていたのである。
【0020】発明の概要 このような状況の下で、本発明者らは、従来技術に伴う上述の課題を解決する
ために鋭意研究を重ねてきた。その結果、意外にも、数種の特定の成分を接触さ
せて得られるオレフィン重合用触媒が、高い重合活性を有する点のみならず、重
合器の内部表面のいろいろな場所にポリマーの付着が発生する等の好ましくない
現象を防止しながら、懸濁重合(スラリー重合)または気相重合によって粉体性
状に優れたオレフィン系ポリマーを製造することができるという点においても有
利であることを発見した。より具体的に言えば、本発明者らは、(A)環状アニ
オン配位子がη結合してなる遷移金属を含む遷移金属化合物;(B)(B−1)
カチオン及び両立性の非配位性アニオンを含み、かつ該遷移金属化合物(A)と
反応して触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活性化化合物と
、(B−2)周期表第1族〜第15族に属する元素群から選ばれる元素を含有す
る特定の有機金属化合物との混合物;(C)実質的に水酸基を有しない固体成分
;及び、場合によっては(D)有機アルミニウム化合物を含み、成分(A)〜(
C)及び場合によっては成分(D)を接触させて得られるオレフィン重合用触媒
を用いることによって、従来技術に伴う前述の問題を解決できることを発見した
。この触媒では、成分(A)と成分(B−1)との反応で生成する触媒活性種が
、成分(B−2)の作用により、化学結合ではなく物理的吸着によって担体成分
(C)に極めて強固に担持され、これによって触媒活性種の担体成分からの分離
が防止されている。このような触媒を使用することによって、粉体性状に優れた
オレフィン系ポリマーを、重合器の内部表面のいろいろな場所に付着させるなど
という好ましくない現象を生じさせることなく、工業的規模のプラントの連続運
転によって効率的に製造することができる。以上の新規な知見に基づいて、本発
明は完成された。
【0021】 したがって、本発明の一つの目的は、重合活性が高い点だけでなく、粉体性状
に優れたオレフィン系ポリマーを、重合器の内部表面のいろいろな場所に付着さ
せるなどの好ましくない現象を生じさせることなく、懸濁重合(スラリー重合)
または気相重合によって製造することを可能にし、これによって粉体性状に優れ
たオレフィン系ポリマーを工業的規模のプラントの連続運転で効率的に製造する
ことを可能にするという点でも有利であるオレフィン重合用触媒、特にエチレン
重合用触媒を提供することにある。
【0022】 また、本発明の他の目的の一つは、この触媒の存在下にエチレンホモポリマー
またはエチレン系コポリマーを効果的かつ効率的に製造する方法を提供すること
にある。
【0023】 本発明の上述及び他の目的、特徴ならびに利点は、特許請求の範囲と関連付け
られた下記の詳細な説明から、当業者には明らかであろう。
【0024】 発明の詳細な説明 本発明の1つの態様によれば、下記の成分 (A)環状アニオン配位子がη結合してなる遷移金属を含む遷移金属化合物、 (B)該遷移金属化合物(A)のモル量に対して0.5〜10倍モル量の下記
の成分(B−1)と該成分(B−1)のモル量に対して0.05〜20倍モル量
の下記の成分(B−2)との混合物: (B−1)カチオン及び両立性の非配位性アニオンを含み、且つ該遷移金属化
合物(A)と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活
性化化合物、及び (B−2)下記の式(1): MRnm-n (1) (式中、 Mは周期表第1族〜第15族に属する元素群から選ばれる元素を表し、 Rは、各々独立して、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキ
ル基、または炭素数6〜20のアリール基を表し、 Xは、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1〜10のアルコキシ
ド基を表し、 mはMの形式酸化数であり、 nは1〜mの整数であって、mは上で定義した通りである) で表される有機金属化合物、 (C)実質的に水酸基を有しない固体成分、及び、場合によっては (D)有機アルミニウム化合物、 を含み、 該成分(A)〜(C)、及び場合によっては該成分(D)を接触させて得られ
る ことを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
【0025】 本発明の他の態様によれば、上記のオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレ
ンを単独重合させるか、またはエチレンを式H2C=CHR(式中、Rは、メチ ル基、エチル基、炭素数3〜18の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基ま
たは炭素数6〜20のアリール基である)で表されるα−オレフィン、炭素数3
〜20の環状オレフィン、及び炭素数4〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状の
ジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種のコモノマーと共重合させる、こ
とを特徴とするエチレンホモポリマーまたはエチレン系コポリマーの製造方法が
提供される。
【0026】 本発明の理解を容易にするために、本発明の本質的な特徴及び様々な好ましい
態様を以下に列挙する。
【0027】 1. (A)環状アニオン配位子がη結合してなる遷移金属を含む遷移金属化
合物、 (B)該遷移金属化合物(A)のモル量に対して0.5〜10倍モル量の下記
の成分(B−1)と該成分(B−1)のモル量に対して0.05〜20倍モル量
の下記の成分(B−2)との混合物: (B−1)カチオン及び両立性の非配位性アニオンを含み、且つ該遷移金属化
合物(A)と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活
性化化合物、及び (B−2)下記の式(1): MRnm-n (1) (式中、 Mは周期表第1族〜第15族に属する元素群から選ばれる元素を表し、 Rは、各々独立して、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキ
ル基、または炭素数6〜20のアリール基を表し、 Xは、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1〜10のアルコキシ
ド基を表し、 mはMの形式酸化数であり、 nは1〜mの整数であって、mは上で定義した通りである) で表される有機金属化合物、 (C)実質的に水酸基を有しない固体成分、及び、場合によっては (D)有機アルミニウム化合物、 を含み、 該成分(A)〜(C)、及び場合によっては該成分(D)を接触させて得られ
る ことを特徴とするオレフィン重合用触媒。
【0028】 2. 該遷移金属化合物(A)が下記の式(2)で表されることを特徴とする 、前項1に記載のオレフィン重合用触媒: LjkMXpX’q (2) (式中、 Lは、各々独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロ
インデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒド
ロフルオレニル基からなる群より選ばれるη結合性環状アニオン配位子を表し、
該配位子は場合によっては1〜8個の置換基を有し、該置換基は各々独立して炭
素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のハロゲン置換炭化
水素基、炭素数1〜12のアミノヒドロカルビル基、炭素数1〜12のヒドロカ
ルビルオキシ基、炭素数1〜12のジヒドロカルビルアミノ基、炭素数1〜12
のヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、炭素数1〜12
のヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基からなる群より選ばれる、2
0個までの非水素原子を有する置換基であり; Mは、形式酸化数が+2、+3または+4の周期表第4族に属する遷移金属群
から選ばれる遷移金属であって、少なくとも1つの配位子Lにη5 結合している
遷移金属を表し; Wは、50個までの非水素原子を有する2価の置換基であって、LとMとに各
々1価ずつの価数で結合し、これによりL及びMと共働してメタロサイクルを形
成する2価の置換基を表し; Xは、各々独立して、1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する
2価のアニオン性σ結合型配位子、及びLとMとに各々1価ずつの価数で結合す
る2価のアニオン性σ結合型配位子からなる群より選ばれる、60個までの非水
素原子を有するアニオン性σ結合型配位子を表し; X′は、各々独立して、40個までの非水素原子を有する中性ルイス塩基配位
性化合物を表し; jは1または2であり、但し、jが2である時、場合によっては2つの配位子
Lが、20個までの非水素原子を有する2価の基を介して互いに結合し、該2価
の基は炭素数1〜20のヒドロカルバジイル基、炭素数1〜12のハロヒドロカ
ルバジイル基、炭素数1〜12のヒドロカルビレンオキシ基、炭素数1〜12の
ヒドロカルビレンアミノ基、シランジイル基、ハロシランジイル基及びシリレン
アミノ基からなる群より選ばれる基であり; kは0または1であり; pは0、1または2であり、但し、Xが1価のアニオン性σ結合型配位子、ま
たはLとMとに結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pは
Mの形式酸化数より1以上小さい整数であり、またXがMにのみ結合している2
価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数より(j+1)
以上小さい整数であり; qは0、1または2である)。
【0029】 3. 該遷移金属化合物(A)が下記の式(3)で表されることを特徴とする
、前項1に記載のオレフィン重合用触媒:
【0030】
【化5】
【0031】 (式中、 Mは、チタン、ジルコニウム及びハフニウムからなる群より選ばれる遷移金属
であって、形式酸化数が+2、+3または+4である遷移金属を表し; R3 は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、シリル基、ゲ
ルミル基、シアノ基、ハロゲン原子及びこれらの複合基からなる群より選ばれる
、20個までの非水素原子を有する置換基を表し、但し、該置換基R3 が炭素数
1〜8の炭化水素基、シリル基またはゲルミル基である時、場合によっては2つ
の隣接する置換基R3 が互いに結合して2価の基を形成し、これにより該2つの
隣接する該置換基R3 にそれぞれ結合するシクロペンタジエニル環の2つの炭素
原子間の結合と共働して環を形成し; X″は、各々独立して、ハライド、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜
18のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜18のヒドロカルビルアミノ基、シ
リル基、炭素数1〜18のヒドロカルビルアミド基、炭素数1〜18のヒドロカ
ルビルフォスフィド基、炭素数1〜18のヒドロカルビルスルフィド基及びこれ
らの複合基からなる群より選ばれる、20個までの非水素原子を有する置換基を
表し、但し、場合によっては2つの置換基X″が共働して炭素数4〜30の中性
共役ジエンまたは2価の基を形成し; Yは、−O−、−S−、−NR*−または−PR*−を表し、但し、R* は、水
素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜8のヒドロカルビルオキシ基
、シリル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のハロゲン
化アリール基、またはこれらの複合基を表し; ZはSiR* 2、CR* 2、SiR* 2SiR* 2、CR* 2CR* 2、CR*=CR*、C
* 2SiR* 2またはGeR* 2を表し、但し、R* は上で定義した通りであり; nは1、2または3である)。
【0032】 4. 該遷移金属化合物(A)が下記の式(4)または(5)で表されること
を特徴とする、前項1に記載のオレフィン重合用触媒:
【0033】
【化6】
【0034】
【化7】
【0035】 (式中、 Mは、チタン、ジルコニウム及びハフニウムからなる群より選ばれる遷移金属
であって、形式酸化数が+2、+3または+4である遷移金属を表し; R3 は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、シリル基、ゲ
ルミル基、シアノ基、ハロゲン原子及びこれらの複合基からなる群より選ばれる
、20個までの非水素原子を有する置換基を表し、但し、置換基R3 が炭素数1
〜8の炭化水素基、シリル基またはゲルミル基である時、場合によっては2つの
隣接する置換基R3 は互いに結合して2価の基を形成し、これにより該2つの隣
接する該置換基R3 とそれぞれ結合するシクロペンタジエニル環の2つの炭素原
子間の結合と共働して環を形成し; Xは、各々独立して、ハライド、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜1
2のヒドロカルビルオキシ基、炭素数2〜12のジ(ヒドロカルビル)アミド基
、炭素数2〜12のジ(ヒドロカルビル)フォスフィド基、炭素数1〜12のヒ
ドロカルビルスルフィド基、シリル基及びこれらの複合基からなる群より選ばれ
る、20個までの非水素原子を有する置換基、またはアリル基、2−(N,N−
ジメチルアミノメチル)フェニル基及び2−(N,N−ジメチルアミノ)ベンジ
ル基からなる群より選ばれる安定化アニオン配位子、または炭素数4〜30の共
役ジエンに由来する2価の基を表し、但し、場合によっては該2価の基XとMと
が共働してメタロシクロペンテン基を形成し; X′は、各々独立して、非置換または少なくとも1つの炭素数1〜12の炭化
水素基で置換された、40個までの炭素原子を有する中性の共役または非共役ジ
エンであって、Mと共働してπ型錯体を形成するジエンを表し; Yは、−O−、−S−、−NR*−または−PR*−を表し、但し、R*は、水 素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜8のヒドロカルビルオキシ基
、シリル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のハロゲン
化アリール基またはこれらの複合基を表し; ZはSiR* 2、CR* 2、SiR* 2SiR* 2、CR* 2CR* 2、CR*=CR*、C
* 2SiR* 2またはGeR* 2を表し、但し、R* は上で定義した通りであり; pは0、1または2であり; qは0または1であり、但し: pが2で且つqが0である時は、Mの形式酸化数は+4であり、且つXは、各
々独立して、ハライド、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜12のヒドロ
カルビルオキシ基、炭素数2〜12のジ(ヒドロカルビル)アミド基、炭素数2
〜12のジ(ヒドロカルビル)フォスフィド基、炭素数1〜12のヒドロカルビ
ルスルフィド基、シリル基及びこれらの複合基からなる群より選ばれる、20個
までの非水素原子を有する置換基を表し; pが1で且つqが0である時は、Mの形式酸化数は+3であり、且つXはアリ
ル基、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェニル基及び2−(N,N−ジ
メチルアミノ)ベンジル基からなる群より選ばれる安定化アニオン配位子を表す
か、または、Mの形式酸化数は+4であり、且つXは炭素数4〜30の共役ジエ
ンに由来する2価の基を表すか、あるいはXとMとが共働してメタロシクロペン
テン基を形成し; pが0で且つqが1である時は、Mの形式酸化数は+2であり、且つX′は非
置換または少なくとも1つの炭素数1〜12の炭化水素基で置換された、40個
までの炭素原子を有する中性の共役または非共役ジエンを表し、該共役ジエンは
Mと共働してπ型錯体を形成する)。
【0036】 5. 該遷移金属化合物(A)が下記の式(6)で表されることを特徴とする
、前項1に記載のオレフィン重合用触媒:
【0037】
【化8】
【0038】 (式中、 Mはチタンを表し; Xは、s−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s− トランス−η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−トランス−η4-1, 4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、s−トランス−η4-2,4−ヘキサジエ
ン、s−トランス−η4−1,3−ペンタジエン、s−トランス−η4-1,4− ジトリル−1,3−ブタジエン、及びs−トランス−η4-1,4−ビス(トリメ
チルシリル)−1,3−ブタジエンからなる群より選ばれるs−トランスジエン
、またはs−シス−η4-1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s−シス−
η4-3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−シス−η4-1,4−ジベンジル−
1,3−ブタジエン、s−シス−η4-2,4−ヘキサジエン、s−シス−η4-1
,3−ペンタジエン、s−シス−η4-1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、
及びs−シス−η4-1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエンか
らなる群より選ばれるs−シスジエンであって、上記s−シスジエンはMと共働
してπ型錯体を形成し; R3 は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、シリル基及
びこれらの複合基からなる群より選ばれる置換基を表し、但し、置換基R3 が炭
素数1〜10の炭化水素基またはシリル基である際には、場合によっては2つの
隣接する置換基R3 は互いに結合して2価の基を形成し、これにより該2つの隣
接する置換基R3 にそれぞれ結合するシクロペンタジエニル環の2つの炭素原子
間の結合と共働して環を形成し; R3'は炭素数1〜10のヒドロカルビル基を表し; R3″は、各々独立して、水素原子または炭素数1〜10のヒドロカルビル基 を表し; Eは、各々独立して珪素原子または炭素原子を表し; mは1または2である)。
【0039】 6. 該活性化化合物(B−1)が下記の式(7)で表されることを特徴とす
る、前項1〜5のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒: [L−H]d+[Mm+p]d- (7) (式中、 [L−H]d+はプロトン供与性のブレンステッド酸を表し、但し、 Lは中性のルイス塩基を表し、 dは1〜7の整数であり; [Mm+p]d-は両立性の非配位性アニオンを表し、但し、 Mは、周期表第5族〜第15族のいずれかに属する金属またはメタロイドを表
し、 Qは、各々独立して、ヒドリド、ハライド、炭素数2〜20のジヒドロカルビ
ルアミド基、炭素数1〜30のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜30の炭化
水素基、及び炭素数1〜40の置換された炭化水素基からなる群より選ばれ、但
し、ハライドであるQの数は1以下であり、 mは1〜7の整数であり、 pは2〜14の整数であり、 dは上で定義した通りであり、 p−m=dである)。
【0040】 7. 該活性化化合物(B−1)が下記の式(8)で表されることを特徴とす
る、前項1〜5のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒: [L−H]d+[Mm+n{Gq(T−H)r}z]d- (8) (式中、 [L−H]d+はプロトン供与性のブレンステッド酸を表し、但し、 Lは中性のルイス塩基を表し、 dは1〜7の整数であり; [Mm+n{Gq(T−H)r}z]d-は両立性の非配位性アニオンを表し、但し、 Mは、周期表第5族〜第15族のいずれかに属する金属またはメタロイドを表
し、 Qは、各々独立して、ヒドリド、炭素数2〜20のジアルキルアミド基、炭素
数1〜20のアルコキシド基、炭素数6〜30のアリールオキシド基、炭素数1
〜30の炭化水素基、炭素数1〜40のハロゲン置換炭化水素基及び炭素数1〜
40のヒドロカルビル−またはハロヒドロカルビル−置換オルガノメタロイド基
からなる群より選ばれ、但し、ハライドであるQの数は1以下であり、 Gは、各々独立して、(r+1)価の炭素数1〜30の多価炭化水素基を表し
、Tは、−O−、−S−、−NR−または−PR−を表し、但し、Rは、水素原
子、炭素数1〜12のヒドロカルビル基、炭素数1〜8のトリヒドロカルビルシ
リル基または炭素数1〜8のトリヒドロカルビルゲルマニウム基を表し; mは1〜7の整数であり、 nは0〜7の整数であり、 qは0または1であり、 rは1〜3の整数であり、 zは1〜8の整数であり、 dは上で定義した通りであり、 n+z−m=dである)。
【0041】 8. 該活性化化合物(B−1)が下記の式(9)で表されることを特徴とす
る、前項1〜5のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒: [L−H]+[BQ3Q′]- (9) (式中、 [L−H]+ はプロトン供与性のブレンステッド酸を表し、但し、 Lは、炭素、窒素、リンまたは硫黄を含有する中性のルイス塩基を表し; [BQ3Q′]-は両立性の非配位性アニオンを表し、但し、 Qは、各々独立して、非置換または炭素数1〜12の炭化水素基及びハロゲン
原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換基で置換された炭素数6〜2
0のアリール基を表し、 Q′は、水酸基で置換された炭素数6〜20のアリール基を表す)。
【0042】 9. 前記式(1)中のMが周期表第2族及び第13族〜第15族に属する元
素群から選ばれる元素を表し、式(1)中のR、X、m及びnが式(1)で定義
した通りであることを特徴とする、前項1〜8のいずれかに記載のオレフィン重
合用触媒。
【0043】 10. 該有機金属化合物(B−2)が下記の式(10)で表されることを特
徴とする、前項1〜8のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒: AlRn3-n (10) (式中、 Rは、各々独立して、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキ
ル基または炭素数6〜20のアリール基を表し; Xは、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1〜10のアルコキシ
ド基を表し; nは1、2または3である)。
【0044】 11. 該固体成分(C)が、シリカ、アルミナ、マグネシア、塩化マグネシ
ウム、ジルコニア、チタニア、酸化硼素、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化バリ
ウム、五酸化バナジウム、酸化クロム、酸化トリウム、これらの混合物及び複合
酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の物質であり、且つ実質的に水酸
基を有しない物質であることを特徴とする、前項1〜10のいずれかに記載のオ
レフィン重合用触媒。
【0045】 12. 該固体成分(C)が、シリカを150℃以上の温度で加熱処理に付し
、これにより該シリカ1g当たり0.05〜10mmolの水酸基をその表面に有し
てなる前処理されたシリカを得、そして該前処理されたシリカの表面に存在する
水酸基のモル量の1〜5倍モル量の有機金属化合物を用いて該前処理されたシリ
カを処理することを包含する方法によって得られる、実質的に水酸基を有しない
処理されたシリカであることを特徴とする、前項1〜11のいずれかに記載のオ
レフィン重合用触媒。
【0046】 13. 該触媒の任意の成分である有機アルミニウム化合物(D)が、下記の
式(10)で表されることを特徴とする前項1〜12のいずれかに記載のオレフ
ィン重合用触媒: AlRn3-n (10) (式中、 Rは、各々独立して、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキ
ル基または炭素数6〜20のアリール基を表し; Xは、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1〜10のアルコキシ
ド基を表し; nは1、2または3である)。
【0047】 14. 下記の工程(i)〜(iii)を包含する方法によって製造されること を特徴とする前項1〜13のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒: (i)該活性化化合物(B−1)と該有機金属化合物(B−2)とを互いに十
分に混合し、接触させて、該成分(B)を得る工程、 (ii)該成分(B)と該固体成分(C)とを互いに十分に混合し、接触させて
、成分(B)及び(C)の混合物を得る工程、 (iii) 該遷移金属化合物(A)と該成分(B)及び(C)の混合物とを互い に十分に混合し、接触させる工程、 但し、場合によっては、上記工程 (iii)で用いられる成分(A)及び上記工程
(ii) で用いられる成分(C)からなる群より選ばれる少なくとも1つが、該成
分(D)との混合物の形で用いられ、また、場合によっては、上記工程 (iii) の前に、工程 (ii)において得られる混合物に成分(D)を添加する。
【0048】 15. 前項1に記載のオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンを単独重
合させるか、または、エチレンを、式 H2C=CHR(式中、Rは、メチル基、
エチル基、炭素数3〜18の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基または炭
素数6〜20のアリール基である)で表されるα−オレフィン、炭素数3〜20
の環状オレフィン、及び炭素数4〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のジエン
からなる群より選ばれる少なくとも1種のコモノマーと共重合させる、ことを特
徴とするエチレンホモポリマーまたはエチレン系コポリマーの製造方法。
【0049】 本明細書に記載の様々の式の中で使われている文字や添字は、それらが使われ
ている特定の一つの式においてのみ通用する。したがって、別々の式において同
一の文字や添字が使われていても、必ずしも同一の元素、置換基、数を表すとは
限らない。
【0050】 本明細書でいう周期表は、CRC出版社から1989年に出版され版権化され
た周期表である。本明細書で用いられる「族」は、この周期表とIUPACによ
る族命名法とに従っている。
【0051】 本明細書において「ヒドロカルビル基」とは、脂肪族基、環式脂肪族基、芳香
族基、及びこれらの複合基を意味する。
【0052】 本明細書において「ヒドロカルビルオキシ基」とは、酸素を含有するヒドロカ
ルビル基であって、酸素結合を介して金属原子、メタロイドまたは化合物の炭素
、窒素もしくはリン原子と結合しているヒドロカルビル基を意味する。
【0053】 本明細書において「シリル基」とは、珪素を含有する基であって、珪素結合を
介して金属原子、メタロイドまたは化合物の炭素、窒素もしくはリン原子と結合
している基を意味する。
【0054】 本明細書において「ゲルミル基」とは、ゲルマニウムを含有する基であって、
ゲルマニウム結合を介して金属原子、メタロイドまたは化合物の炭素、窒素もし
くはリン原子と結合している基を意味する。
【0055】 本発明のオレフィン重合用触媒は、 (A)環状アニオン配位子がη結合してなる遷移金属を含む遷移金属化合物、 (B)(B−1)活性化化合物と(B−2)有機金属化合物との混合物、 (C)固体成分、及び場合によっては (D)有機アルミニウム化合物 を含む。
【0056】 以下、環状アニオン配位子がη結合してなる遷移金属を含む遷移金属化合物(
A)(以下、しばしば単に「成分(A)」という)について説明する。
【0057】 本発明において用いられる成分(A)の例としては、下記の式(2)で表され
る化合物を挙げることができる: LjkMXpX’q (2) (式中、 Lは、各々独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロ
インデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒド
ロフルオレニル基からなる群より選ばれるη結合性環状アニオン配位子を表し、
該配位子は場合によっては1〜8個の置換基を有し、該置換基は各々独立して炭
素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のハロゲン置換炭化
水素基、炭素数1〜12のアミノヒドロカルビル基、炭素数1〜12のヒドロカ
ルビルオキシ基、炭素数1〜12のジヒドロカルビルアミノ基、炭素数1〜12
のヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、炭素数1〜12
のヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基からなる群より選ばれる、2
0個までの非水素原子を有する置換基であり; Mは、形式酸化数が+2、+3または+4の周期表第4族に属する遷移金属群
から選ばれる遷移金属であって、少なくとも1つの配位子Lにη5 結合している
遷移金属を表し; Wは、50個までの非水素原子を有する2価の置換基であって、LとMとに各
々1価ずつの価数で結合し、これによりL及びMと共働してメタロサイクルを形
成する2価の置換基を表し; Xは、各々独立して、1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する
2価のアニオン性σ結合型配位子、及びLとMとに各々1価ずつの価数で結合す
る2価のアニオン性σ結合型配位子からなる群より選ばれる、60個までの非水
素原子を有するアニオン性σ結合型配位子を表し; X′は、各々独立して、40個までの非水素原子を有する中性ルイス塩基配位
性化合物を表し; jは1または2であり、但し、jが2である時、場合によっては2つの配位子
Lが、20個までの非水素原子を有する2価の基を介して互いに結合し、該2価
の基は炭素数1〜20のヒドロカルバジイル基、炭素数1〜12のハロヒドロカ
ルバジイル基、炭素数1〜12のヒドロカルビレンオキシ基、炭素数1〜12の
ヒドロカルビレンアミノ基、シランジイル基、ハロシランジイル基及びシリレン
アミノ基からなる群より選ばれる基であり; kは0または1であり; pは0、1または2であり、但し、Xが1価のアニオン性σ結合型配位子、ま
たはLとMとに結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pは
Mの形式酸化数より1以上小さい整数であり、またXがMにのみ結合している2
価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数より(j+1)
以上小さい整数であり; qは0、1または2である)。
【0058】 上記式(2)の化合物中の配位子Xの例としては、ハライド、炭素数1〜60
の炭化水素基、炭素数1〜60のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜60のヒ
ドロカルビルアミド基、炭素数1〜60のヒドロカルビルフォスフィド基、炭素
数1〜60のヒドロカルビルスルフィド基、シリル基、これらの複合基等が挙げ
られる。
【0059】 上記式(2)の化合物中の中性ルイス塩基配位性化合物X′の例としては、フ
ォスフィン、エーテル、アミン、炭素数2〜40のオレフィン、炭素数1〜40
のジエン、これらの化合物から誘導される2価の基等が挙げられる。
【0060】 本発明において、成分(A)としては、前記式(2)(ただし、j=1)で表
される遷移金属化合物が好ましい。
【0061】 前記式(2)(ただし、j=1)で表される化合物の好ましい例としては、下
記の式(3)で表される化合物が挙げられる:
【0062】
【化9】
【0063】 (式中、 Mは、チタン、ジルコニウム及びハフニウムからなる群より選ばれる遷移金属
であって、形式酸化数が+2、+3または+4である遷移金属を表し; R3 は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、シリル基、ゲ
ルミル基、シアノ基、ハロゲン原子及びこれらの複合基からなる群より選ばれる
、20個までの非水素原子を有する置換基を表し、但し、該置換基R3 が炭素数
1〜8の炭化水素基、シリル基またはゲルミル基である時、場合によっては2つ
の隣接する置換基R3 が互いに結合して2価の基を形成し、これにより該2つの
隣接する該置換基R3 にそれぞれ結合するシクロペンタジエニル環の2つの炭素
原子間の結合と共働して環を形成し; X″は、各々独立して、ハライド、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜
18のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜18のヒドロカルビルアミノ基、シ
リル基、炭素数1〜18のヒドロカルビルアミド基、炭素数1〜18のヒドロカ
ルビルフォスフィド基、炭素数1〜18のヒドロカルビルスルフィド基及びこれ
らの複合基からなる群より選ばれる、20個までの非水素原子を有する置換基を
表し、但し、場合によっては2つの置換基X″が共働して炭素数4〜30の中性
共役ジエンまたは2価の基を形成し; Yは、−O−、−S−、−NR*−または−PR*−を表し、但し、R* は、水
素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜8のヒドロカルビルオキシ基
、シリル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のハロゲン
化アリール基、またはこれらの複合基を表し; ZはSiR* 2、CR* 2、SiR* 2SiR* 2、CR* 2CR* 2、CR*=CR*、C
* 2SiR* 2またはGeR* 2を表し、但し、R* は上で定義した通りであり; nは1、2または3である)。
【0064】 前記式(2)(ただし、j=1)で表される化合物のさらに好ましい例として
は、下記の式(4)または(5)で表される化合物が挙げられる:
【0065】
【化10】
【0066】
【化11】
【0067】 (式中、 Mは、チタン、ジルコニウム及びハフニウムからなる群より選ばれる遷移金属
であって、形式酸化数が+2、+3または+4である遷移金属を表し; R3 は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、シリル基、ゲ
ルミル基、シアノ基、ハロゲン原子及びこれらの複合基からなる群より選ばれる
、20個までの非水素原子を有する置換基を表し、但し、置換基R3 が炭素数1
〜8の炭化水素基、シリル基またはゲルミル基である時、場合によっては2つの
隣接する置換基R3 は互いに結合して2価の基を形成し、これにより該2つの隣
接する該置換基R3 とそれぞれ結合するシクロペンタジエニル環の2つの炭素原
子間の結合と共働して環を形成し; Xは、各々独立して、ハライド、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜1
2のヒドロカルビルオキシ基、炭素数2〜12のジ(ヒドロカルビル)アミド基
、炭素数2〜12のジ(ヒドロカルビル)フォスフィド基、炭素数1〜12のヒ
ドロカルビルスルフィド基、シリル基及びこれらの複合基からなる群より選ばれ
る、20個までの非水素原子を有する置換基、またはアリル基、2−(N,N−
ジメチルアミノメチル)フェニル基及び2−(N,N−ジメチルアミノ)ベンジ
ル基からなる群より選ばれる安定化アニオン配位子、または炭素数4〜30の共
役ジエンに由来する2価の基を表し、但し、場合によっては該2価の基XとMと
が共働してメタロシクロペンテン基を形成し; X′は、各々独立して、非置換または少なくとも1つの炭素数1〜12の炭化
水素基で置換された、40個までの炭素原子を有する中性の共役または非共役ジ
エンであって、Mと共働してπ型錯体を形成するジエンを表し; Yは、−O−、−S−、−NR*−または−PR*−を表し、但し、R*は、水 素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜8のヒドロカルビルオキシ基
、シリル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のハロゲン
化アリール基またはこれらの複合基を表し; ZはSiR* 2、CR* 2、SiR* 2SiR* 2、CR* 2CR* 2、CR*=CR*、C
* 2SiR* 2またはGeR* 2を表し、但し、R* は上で定義した通りであり; pは0、1または2であり; qは0または1であり、但し: pが2で且つqが0である時は、Mの形式酸化数は+4であり、且つXは、各
々独立して、ハライド、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜12のヒドロ
カルビルオキシ基、炭素数2〜12のジ(ヒドロカルビル)アミド基、炭素数2
〜12のジ(ヒドロカルビル)フォスフィド基、炭素数1〜12のヒドロカルビ
ルスルフィド基、シリル基及びこれらの複合基からなる群より選ばれる、20個
までの非水素原子を有する置換基を表し; pが1で且つqが0である時は、Mの形式酸化数は+3であり、且つXはアリ
ル基、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェニル基及び2−(N,N−ジ
メチルアミノ)ベンジル基からなる群より選ばれる安定化アニオン配位子を表す
か、または、Mの形式酸化数は+4であり、且つXは炭素数4〜30の共役ジエ
ンに由来する2価の基を表すか、あるいはXとMとが共働してメタロシクロペン
テン基を形成し; pが0で且つqが1である時は、Mの形式酸化数は+2であり、且つX′は非
置換または少なくとも1つの炭素数1〜12の炭化水素基で置換された、40個
までの炭素原子を有する中性の共役または非共役ジエンを表し、該共役ジエンは
Mと共働してπ型錯体を形成する)。
【0068】 前記式(2)(ただし、j=1)で表される化合物の最も好ましい例としては
、下記の式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0069】
【化12】
【0070】 (式中、 Mはチタンを表し; Xは、s−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s− トランス−η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−トランス−η4-1, 4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、s−トランス−η4-2,4−ヘキサジエ
ン、s−トランス−η4−1,3−ペンタジエン、s−トランス−η4-1,4− ジトリル−1,3−ブタジエン、及びs−トランス−η4-1,4−ビス(トリメ
チルシリル)−1,3−ブタジエンからなる群より選ばれるs−トランスジエン
、またはs−シス−η4-1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s−シス−
η4-3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−シス−η4-1,4−ジベンジル−
1,3−ブタジエン、s−シス−η4-2,4−ヘキサジエン、s−シス−η4-1
,3−ペンタジエン、s−シス−η4-1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、
及びs−シス−η4-1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエンか
らなる群より選ばれるs−シスジエンであって、Mと共働してπ型錯体を形成す
るs−シスジエンを表し; R3 は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、シリル基及
びこれらの複合基からなる群より選ばれる置換基を表し、但し、置換基R3 が炭
素数1〜10の炭化水素基またはシリル基である際には、場合によっては2つの
隣接する置換基R3 は互いに結合して2価の基を形成し、これにより該2つの隣
接する置換基R3 にそれぞれ結合するシクロペンタジエニル環の2つの炭素原子
間の結合と共働して環を形成し; R3'は炭素数1〜10のヒドロカルビル基を表し; R3″は、各々独立して、水素原子または炭素数1〜10のヒドロカルビル基 を表し; Eは、各々独立して珪素原子または炭素原子を表し; mは1または2である)。
【0071】 上でXとして挙げられた各ジエン類は非対称構造を有する。一般に、上記の各
ジエン類は幾何異性体の混合物の形で存在する。
【0072】 上記式(6)中の基R3′の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、 ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基ならびにその異性体、シクロドデシル基、ノ
ルボルニル基、ベンジル基等のアルキル基;及びフェニル基が挙げられる。
【0073】 式(6)中の基ER3″の例としては、ジメチルシランジイル基、エタンジイ ル基等が挙げられる。
【0074】 式(6)中の環状の非局在化された(delocalized) π型結合基の例としては、
シクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、インデニル基
、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、
オクタヒドロフルオレニル基等が挙げられる。
【0075】 本発明において用いられる成分(A)の具体例としては、以下に示すような化
合物が挙げられる: [(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル) −1,2−エタンジイル]チタニウムジメチル、 [(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル) ジメチルシラン]チタニウムジメチル、 [(N−メチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメ チルシラン]チタニウムジメチル、 [(N−フェニルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジ メチルシラン]チタニウムジメチル、 [(N−ベンジルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジ メチルシラン]チタニウムジメチル、 [(N−t−ブチルアミド)(η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタ ンジイル]チタニウムジメチル、 [(N−t−ブチルアミド)(η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン ]チタニウムジメチル、 [(N−メチルアミド)(η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジ イル]チタニウムジメチル、 [(N−メチルアミド)(η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チ タニウムジメチル、 [(N−t−ブチルアミド)(η5−インデニル)ジメチルシラン]チタニウ ムジメチル、及び [(N−ベンジルアミド)(η5−インデニル)ジメチルシラン]チタニウム ジメチル。
【0076】 本発明において用いられる成分(A)の具体例としては、さらに、成分(A)
の具体例として上に挙げた各化合物の名称の「ジメチル」の部分(これは、各化
合物の名称末尾の部分と「チタニウム」という部分の直後とに現れているもので
あり、前記式(3)中のX″の部分に対応する名称である)を、以下に掲げる任
意のものに替えてできる名称を持つ化合物も挙げられる:「ジベンジル」、「2
−(N,N−ジメチルアミノ)ベンジル」、「2−ブテン−1,4−ジイル」、
「s−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン」、「s−ト ランス−η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン」、「s−トランス−η4−1
,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン」、「s−トランス−η4−2,4−ヘ キサジエン」、「s−トランス−η4−1,3−ペンタジエン」、「s−トラン ス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン」、「s−トランス−η4−1
,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン」、「s−シス−η4− 1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン」、「s−シス−η4−3−メチル− 1,3−ペンタジエン」、「s−シス−η4−1,4−ジベンジル−1,3−ブ タジエン」、「s−シス−η4−2,4−ヘキサジエン」、「s−シス−η4−1
,3−ペンタジエン」、「s−シス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジ エン」、及び「s−シス−η4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3− ブタジエン」。
【0077】 本発明において用いられる遷移金属化合物(A)は、一般に公知の方法で合成
できる。本発明において成分(A)として用いられる遷移金属化合物の好ましい
合成法の例としては、米国特許第5,491,246号明細書に開示された方法
を挙げることができる。
【0078】 以下、本発明の触媒の一成分として用いられる混合物(B)(以下、しばしば
「成分(B)」という)について説明する。成分(B)は次のものの混合物であ
る: (B−1)カチオン及び両立性の非配位性アニオンを含み、且つ該遷移金属化
合物(A)と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活
性化化合物[以下、しばしば「成分(B−1)という」]; (B−2)下記の式(1): MRnm-n (1) (式中、 Mは周期表第1族〜第15族に属する元素群から選ばれる元素を表し、 Rは、各々独立して、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキ
ル基、または炭素数6〜20のアリール基を表し、 Xは、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1〜10のアルコキシ
ド基を表し、 mはMの形式酸化数であり、 nは1〜mの整数であって、mは上で定義した通りである) で表される有機金属化合物[以下、成分(B−2)という]; ただし、成分(B−1)の量は遷移金属化合物(A)のモル量に対して0.5〜
10倍モル量であり、成分(B−2)の量は該成分(B−1)のモル量に対して
0.05〜20倍モル量である。
【0079】 本発明の触媒において、成分(A)と成分(B−1)との反応によって金属錯
体が形成され、この金属錯体は高いオレフィン重合活性を示す本発明の触媒の触
媒活性種として働く。
【0080】 本発明の触媒において、成分(C)は上記活性種[即ち、成分(A)と成分(
B−1)との反応によって形成される金属錯体]を担持する担体として働く。
【0081】 本発明の触媒において、成分(B−2)は活性種と成分(C)との結合を形成
する働きをする。
【0082】 本発明の触媒の特徴は、成分(C)として用いられる固体成分が実質的に水酸
基を有しないことと、成分(B−1)及び成分(B−2)がそれらの混合物の形
で提供されるために、成分(B−1)がたとえ(水酸基等の)反応性の基を有し
ていても、反応性の基は成分(B−2)と反応することとに存する。上述の特徴
を有するために、活性種と成分(C)とは化学結合ではなく物理的吸着によって
互いに結合する、と推定される。活性種と成分(C)とが物理的吸着によって互
いに結合する本発明の触媒は、触媒活性種が担体に強固に結合する(オレフィン
重合用触媒の場合は、触媒活性種が担体に強固に結合し、それによって重合器の
内部表面にポリマーのスケールが発生することを防止することが、特に重要であ
る)という点だけでなく、高い触媒活性を示すという点においても有利である。
このことは全く予想外のことである。というのは、従来、オレフィン重合用触媒
の活性種と担体とを強固に結合させるためには、活性種と成分(C)とを化学結
合によって結合させる必要がある、と考えられていたからである。たとえば、W
O96/28480に開示されているオレフィン重合用触媒では、活性化化合物
(遷移金属化合物と共働して活性種としての金属錯体を形成する)と担体とは、
活性化化合物または担体に結合した水酸基を利用して互いに結合している。具体
的に言えば、この文献の実施例では、担体への活性化化合物の固定化が下記の方
法で行われている: (1)表面水酸基を有する担体(たとえば、シリカ)を有機金属化合物[たと
えば、トリエチルアルミニウム (AlEt3)]と混合して、担体の水酸基を有機金属
化合物と反応させることにより、有機金属化合物が結合した担体を得る;得られ
た有機金属化合物結合の担体を水酸基を有する活性化化合物{たとえば、トリエ
チルアンモニウム−トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニ ル)ボレート[HO-Ph-B(C6H5)3・NHR3]}と混合し、活性化化合物の水酸基を担体
に結合した有機金属化合物と反応させることにより、活性化化合物/有機金属化
合物が結合した担体複合体を得るという方法、あるいは (2)水酸基を有する活性化化合物[たとえば、トリエチルアンモニウム−ト
リス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート]を有機
金属化合物(たとえば、トリアルキルアルミニウム)と混合し、活性化化合物の
水酸基を有機金属化合物と反応させることにより、有機金属化合物が結合した活
性化化合物を得る;得られた有機金属化合物結合の活性化化合物を表面水酸基を
有する担体(シリカ等)と混合し、担体の水酸基を有機金属化合物結合の活性化
化合物と反応させることにより、活性化化合物/有機金属化合物が結合した担体
複合体を得るという方法。
【0083】 WO96/28480においては、上記方法(1)または(2)により得られ
る活性化化合物/有機金属化合物が結合した担体複合体を遷移金属化合物(即ち
、環状アニオン配位子がη結合してなる遷移金属を含む化合物)と混合し、遷移
金属化合物を活性化化合物と反応させ、活性種として作用する金属錯体を形成す
ることにより、触媒が得られる。
【0084】 上記方法(1)及び方法(2)は、それぞれ次の反応式によって説明すること
ができる。
【0085】 方法(1)(化学結合): ・ Si-OH + AlR3 → Si-O-AlR2 + RH ・ Si-O-AlR2 + HO-Ph-B(C6F5)3・NHR3 → Si-O-Al-O-Ph-B(C6F5)3・NHR3 + RH
【0086】 方法(2)(化学結合): ・ AlR3 + HO-Ph-B(C6F5)3・NHR3 → R2Al-O-Ph-B(C6F5)3・NHR3 + RH ・ Si-OH + R2Al-O-Ph-B(C6F5)3・NHR3 → Si-O-Al-O-Ph-B(C6F5)3・NHR3 + RH
【0087】 即ち、WO96/28480の触媒においては、触媒活性種と担体とは、活性
化化合物または担体に結合した水酸基を利用した化学結合によって互いに結合し
ているのであり、触媒活性種と担体とが互いに物理的吸着によって結合している
本発明の触媒とは異なっている。
【0088】 WO96/28480の触媒に関連して上で述べたのと同じ触媒成分を本発明
において使用する場合、担体[成分(C)]への活性化化合物[成分(B−1)
]の固定化は次の反応式によって説明される方法で実施することができる。
【0089】 本発明(物理的吸着による結合): ・ Si-OH + AlR3 → Si-O-AlR2[成分(C)]+ RH ・ AlR3[成分(B−2)]+ HO-Ph-B(C6F5)3・NHR3[成分(B−1)] → R2Al-O-Ph-B(C6F5)3・NHR3 + RH ・ Si-O-AlR2[成分(C)] + R2Al-O-Ph-B(C6F5)3・NHR3[成分(B−1)+ 成分(B−2)] → Si-O-AlR2・R2Al-O-Ph-B(C6F5)3・NHR3
【0090】 本発明の触媒は、WO96/28480の触媒より高い触媒活性を示す。これ
は、WO96/28480の触媒においては、触媒活性種と担体との間に形成さ
れる化学結合が触媒活性種に好ましくない効果を与えるために、触媒活性が低下
するのに対し、本発明の触媒においては、触媒活性種は化学結合の存在によって
生ずるような好ましくない効果を受けないので、触媒が高い触媒活性を示すから
である、と考えられる。
【0091】 以下、「両立性の非配位性アニオン」について説明する。「非配位性」とは、
アニオンが成分(A)の遷移金属との配位結合を形成することができないか、あ
るいは、アニオンが該遷移金属との弱い配位結合しか形成することができず、α
−オレフィン等の中性ルイス塩基と容易に置き換えられることを意味する。さら
に、本発明において、「非配位性」アニオンは、遷移金属と配位結合を形成しな
い場合(このような場合、アニオンは本発明の触媒において電荷均衡アニオンと
して機能する)、分解を受けることがないアニオンであるため、アニオンの分解
に起因する、活性種としての前述の錯体中における成分(A)の中性化や、中性
副生成物の生成が回避される。アニオンが「両立性である(compatible)」とは、
活性化化合物(B−1)が分解してもアニオンが分解して中性になることはない
こと、且つ、アニオンが本発明の触媒を用いる重合反応に悪影響を与えないこと
を意味する。
【0092】 成分(B−1)の例としては、下記の式(7)で表される化合物を挙げること
ができる: [L−H]d+[Mm+p]d- (7) (式中、 [L−H]d+はプロトン供与性のブレンステッド酸を表し、但し、 Lは中性のルイス塩基を表し、 dは1〜7の整数であり; [Mm+p]d-は両立性の非配位性アニオンを表し、但し、 Mは、周期表第5族〜第15族のいずれかに属する金属またはメタロイドを表
し、 Qは、各々独立して、ヒドリド、ハライド、炭素数2〜20のジヒドロカルビ
ルアミド基、炭素数1〜30のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜30の炭化
水素基、及び炭素数1〜40の置換された炭化水素基からなる群より選ばれ、但
し、ハライドであるQの数は1以下であり、 mは1〜7の整数であり、 pは2〜14の整数であり、 dは上で定義した通りであり、 p−m=dである)。
【0093】 本発明で用いられる成分(B−1)の好ましい例として、下記の式(8)で表
される化合物を挙げることができる: [L−H]d+[Mm+n{Gq(T−H)r}z]d- (8) (式中、 [L−H]d+はプロトン供与性のブレンステッド酸を表し、但し、 Lは中性のルイス塩基を表し、 dは1〜7の整数であり; [Mm+n{Gq(T−H)r}z]d-は両立性の非配位性アニオンを表し、但し、 Mは、周期表第5族〜第15族のいずれかに属する金属またはメタロイドを表
し、 Qは、各々独立して、ヒドリド、炭素数2〜20のジアルキルアミド基、炭素
数1〜20のアルコキシド基、炭素数6〜30のアリールオキシド基、炭素数1
〜30の炭化水素基、炭素数1〜40のハロゲン置換炭化水素基及び炭素数1〜
40のヒドロカルビル−またはハロヒドロカルビル−置換オルガノメタロイド基
からなる群より選ばれ、但し、ハライドであるQの数は1以下であり、 Gは、各々独立して、(r+1)価の炭素数1〜30の多価炭化水素基を表し
、Tは、−O−、−S−、−NR−または−PR−を表し、但し、Rは、水素原
子、炭素数1〜12のヒドロカルビル基、炭素数1〜8のトリヒドロカルビルシ
リル基または炭素数1〜8のトリヒドロカルビルゲルマニウム基を表し; mは1〜7の整数であり、 nは0〜7の整数であり、 qは0または1であり、 rは1〜3の整数であり、 zは1〜8の整数であり、 dは上で定義した通りであり、 n+z−m=dである)。
【0094】 式(8)中の基Gが二価の基である場合には、基GはM及びTの両方に結合す
ることが好ましい。
【0095】 本発明で用いられる成分(B−1)のさらに好ましい例として、下記の式(9
)で表される化合物を挙げることができる: [L−H]+[BQ3Q′]- (9) (式中、 [L−H]+ はプロトン供与性のブレンステッド酸を表し、但し、 Lは、炭素、窒素、リンまたは硫黄を含有する中性のルイス塩基を表し; [BQ3Q′]-は両立性の非配位性アニオンを表し、但し、 Qは、各々独立して、非置換または炭素数6〜20の炭化水素基及びハロゲン
原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換基で置換された炭素数6〜2
0のアリール基を表し、 Q′は、水酸基で置換された炭素数6〜20のアリール基を表す)。
【0096】 上記式(9)において、Lは下記の式で表される化合物であることが好ましい
: MRn (式中、 Mは炭素、窒素、リンまたは硫黄を表し; Rは、各々独立して、水素、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状もしくは環状の
アルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基または炭素数6〜20のアリール基
を表し、但し、2つの基Rが炭素数1〜30の直鎖状または分岐状のアルキル基
である場合、該2つの基RはMと共働して環を形成してもよい; nは2または3であり、但し、nが2であるときは、Mは炭素または硫黄を表
し、nが3であるときは、Mは窒素またはリンを表す)。
【0097】 本発明において用いられるプロトン供与性のブレンステッド酸の具体例として
は、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n−ブチル)
アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリ(t−ブチル)アンモニウム、ト
リ(オクチル)アンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジブチルメチルア
ンモニウム、ジブチルエチルアンモニウム、ジヘキシルメチルアンモニウム、ジ
オクチルメチルアンモニウム、ジデシルメチルアンモニウム、ジドデシルメチル
アンモニウム、ジテトラデシルメチルアンモニウム、ジヘキサデシルメチルアン
モニウム、ジオクタデシルメチルアンモニウム、ジイコシルメチルアンモニウム
、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム等の、アンモニウムカチオ
ンの4個のプロトンのうち3個をアルキル基で置換して得られるトリアルキルア
ンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリ
ニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウム、N,N−ジメチルベ
ンジルアニリニウム等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン等が挙げられ
る。プロトン供与性のブレンステッド酸の具体例としては、さらに、ジ(i−プ
ロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム等のジアルキルアンモニ
ウムカチオン;トリフェニルフォスフォニウム、トリ(メチルフェニル)フォス
フォニウム、トリ(ジメチルフェニル)フォスフォニウム等のトリアリールフォ
スフォニウムカチオン;ジメチルスルフォニウム、ジエチルスルフォニウム等の
ジアルキルスルフォニウムカチオン;フェニルスルフォニウム等のジアリールス
ルフォニウムカチオン等が挙げられる。
【0098】 本発明において用いられる両立性の非配位性アニオンの具体例としては、下記
のアニオンが挙げられる:トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、ジフ
ェニルジ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2,4−ジヒドロキ
シフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、
トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(
2,4−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5
−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジ−
トリフルオリメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペン
タフルオロフェニル)(2−ヒドロキシエチル)ボレート、トリス(ペンタフル
オロフェニル)(4−ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフ
ェニル)(4−ヒドロキシシクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロ
フェニル)[4−(4´−ヒドロキシフェニル)フェニル]ボレート、及びトリ
ス(ペンタフルオロフェニル)(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ボレート。
【0099】 これらの硼酸塩化合物の中で、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキ
シフェニル)ボレートが最も好ましい。
【0100】 本発明において用いられる両立性の非配位性アニオンの具体例としてさらに、
上に例示された硼酸塩の水酸基をNHR基(ここで、Rは、メチル基、エチル基
またはtert−ブチル基を表す)に置換することによって得られる硼酸塩が挙げら
れる。
【0101】 本発明においては、成分 (B−1)を成分(A)のモル量の0.5〜10倍 モル量使用することが必要である。成分(B−1)のモル量は、好ましくは成分
(A)のモル量の0.8〜5倍、より好ましくは1〜2倍である。
【0102】 本発明において、有機金属化合物(B−2)[以下、しばしば「成分(B−2
)」という]は、下記の式(1)で表される化合物である: MRnm-n (1) (式中 Mは周期表第1族〜第15族に属する元素群から選ばれる元素を表し、 Rは、各々独立して、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキ
ル基、または炭素数6〜20のアリール基を表し、 Xは、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1〜10のアルコキシ
ド基を表し、 mはMの形式酸化数であり、 nは1〜mの整数であって、mは上で定義した通りである)。
【0103】 本発明において用いられる成分(B−2)に関しては、式(1)中のMが周期
表第2族及び第13〜15族に属する元素群から選ばれる元素を表し、且つ式(
1)中のR、X、m及びnが上記式(1)で定義した通りであることが好ましい
【0104】 成分(B−2)は、式(1)で表される複数の種類の化合物の混合物であって
もよい。
【0105】 本発明において用いられる成分(B−2)の最も好ましい例としては、下記の式
(10)で表される化合物を挙げることができる: AlRn3-n (10) (式中、 Rは、各々独立して、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキ
ル基または炭素数6〜20のアリール基を表し; Xは、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1〜10のアルコキシ
ド基を表し; nは1、2または3である)。
【0106】 成分(B−2)の好ましい形態を表す式(10)中の基Rの例としては、メチ
ル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、
トリル基等が挙げられる。成分(B−2)の好ましい形態を表す式(10)中の
基Xの例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、塩素原子等が挙げら
れる。
【0107】 本発明において用いられる成分(B−2)の具体例としては、トリメチルアル
ミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルア
ルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリアル
キルアルミニウム、及びこれらのトリアルキルアルミニウムとメチルアルコール
、エチルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコ
ール、オクチルアルコール、デシルアルコール等のアルコールとの反応生成物が
挙げられる。そのような反応生成物の例としては、メトキシジメチルアルミニウ
ム、エトキシジエチルアルミニウム、ブトキシジブチルアルミニウム等が挙げら
れる。このような反応生成物を製造する際、トリアルキルアルミニウムとアルコ
ールとの混合比は、Al/OHのモル比で、0.3〜20の範囲にあることが好
ましく、より好ましくは0.5〜5であり、さらに好ましくは0.8〜3である
。混合比がAl/OHのモル比で1としたアルキルアルミニウムとアルコールと
の反応により得られる反応生成物の典型的な例としては、メトキシジメチルアル
ミニウム、エトキシジメチルアルミニウム、エトキシジエチルアルミニウム等を
挙げることができる。
【0108】 本発明においては、成分(B−2)の好ましい例として、トリメチルアルミニ
ウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム等が挙げられる。
【0109】 本発明においては、成分(B−2)のモル量は成分(B−1)のモル量の0.
05〜20倍であることが必要である。成分(B−2)は、好ましくは成分(B
−1)のモル量の0.07〜2倍、より好ましくは0.1〜1倍、最も好ましく
は0.2〜0.8倍のモル量で用いられる。
【0110】 本発明においては、成分(B)[成分(B−1)と成分(B−2)とを特定の割
合で互いに混合し接触させることによって得られる]を成分(C)に強固に担持
することができる。成分(B)を成分(C)により強固に担持させるためには、
成分(B)は、成分(B−1)と成分(B−2)との単なる混合物であるよりは
、成分(B−1)と成分(B−2)との反応によって得られる反応混合物である
ことが望ましい。具体的に言えば、成分(B−1)が前記式(8)で表される化
合物である場合、成分(B−1)は1〜3個の基T−H[たとえば、(9)の場
合の水酸基]を有しているため、成分(B−2)の好ましい例である有機アルミ
ニウム化合物(たとえば、トリアルキルアルミニウム)と反応して、成分(B−
1)の一部または全部が成分(B−2)と反応した反応混合物を生成することが
可能である。成分(B−2)と反応する成分(B−1)の割合は、成分(B−1
)と成分(B−2)との混合比を変えることにより容易に制御できる。たとえば
、成分(B−1)が1個の基T−H(水酸基等)を有する場合、成分(B−2)
中の反応性有機基の数に依存して、成分(B−1)と成分(B−2)とはモル比
[(B−1)/(B−2)]が1以上で互いに反応することができる。成分(B
−1)のモル量が、成分(B−2)中の反応性有機基の全てが成分(B−1)と
の反応で消費される閾値と同じかそれより少ない場合は、成分(B−1)の全て
が成分(B−2)と反応する。成分(B−1)のモル量が、成分(B−2)中の
反応性有機基の全てが成分(B−1)との反応で消費される閾値より多い場合、
成分(B−1)の一部は成分(B−2)と反応せずに残る。成分(B)が、成分
(B−1)の一部または全部を成分(B−2)と反応させて得られる反応混合物
である場合、成分(B)を成分(C)に非常に強固に担持することができるので
、本発明の目的を非常に効果的に達成することができる。
【0111】 本発明の触媒を製造する場合、成分(B)を成分(C)に強固に担持させるこ
とができるため、成分(B)を介して成分(A)を成分(C)に強固に担持する
ことができる。また、成分(A)を先に成分(B)と接触させて成分(A)と成
分(B)との錯体を得ておいてから、得られた錯体を成分(C)と接触させるこ
とにより、成分(B)を介して成分(A)を成分(C)に強固に担持させるとい
う方法によっても、本発明の触媒を製造することができる。
【0112】 本発明において、成分(C)(即ち、実質的に水酸基を有しない固体成分)は
、触媒活性種を形成する成分(A)及び(B)を担持するために使用される。
【0113】 本発明において用いられる成分(C)(実質的に水酸基を有しない)は、固体
材料[以下、しばしば「成分(C)の前駆体」という]を、成分(C)の前駆体
の表面から水酸基を除去するための処理(後述する)に付すことによって、得る
ことができる。
【0114】 成分(C)の前駆体の例としては、多孔質高分子材料(但し、マトリックスは
たとえばポリエチレン、ポリプロピレンまたはスチレン−ジビニルベンゼンのコ
ポリマー等を含む)、周期表第2〜4、13及び14族に属する元素の無機固体
酸化物(たとえば、シリカ、アルミナ、マグネシア、塩化マグネシウム、ジルコ
ニア、チタニア、酸化硼素、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、五酸化
バナジウム、酸化クロム、酸化トリウム、これらの混合物及びこれらの複合酸化
物)等が挙げられる。シリカを含有する複合酸化物の例としては、シリカ−マグ
ネシア、シリカ−アルミナ等の、シリカと周期表第2族または第13族に属する
元素から選ばれる元素の酸化物との複合酸化物が挙げられる。本発明においては
、成分(C)の前駆体は、シリカ,アルミナ、及びシリカと周期表第2族または
第13族に属する元素から選ばれる元素の酸化物との複合酸化物から選ばれるこ
とが好ましい。これらの無機固体酸化物の中で、シリカが特に好ましい。
【0115】 成分(C)の前駆体として用いられるシリカ生成物の形状に関しては特に制限
はなく、シリカは、顆粒状、球状、凝集状、ヒューム状など、いかなる形状であ
ってもよい。市販のシリカ生成物の好ましい例としては、SD3216.30、
SP−9−10046、デビソンサイロイドTM(Syloid TM)245、デビソ ン948及びデビソン952[以上全て、グレースデビソン社(W.R.デビソ
ン社(米国)の支社)製];アエロジル812[デグザAG社(ドイツ)製造]
;ES70X[クロスフィールド社(米国)製]、P−6及びP−10[富士シ
リシア社(日本国)製]等が挙げられる。
【0116】 本発明において用いられる成分(C)の、B.E.T.(Brunauer-Emmett-Tel
ler)による窒素ガス吸着法で求められる比表面積は、好ましくは10〜1,00
0m2/gであり、より好ましくは100〜600m2/gである。このような高い比表
面積を有する成分(C)の代表例の一つは、多くの細孔を有する多孔質材料を含
む成分(C)である。
【0117】 本発明において、窒素ガス吸着法で求められる成分(C)の細孔容積は、通常
5cm3/g 以下であり、好ましくは0.1〜3cm3/g であり、さらに好ましくは0 .2〜2cm3/g である。
【0118】 本発明において用いられる成分(C)の平均粒径に関しては、特に制限はない
。成分(C)の平均粒径は、通常0.5〜500μmであり、好ましくは1〜2
00μmであり、さらに好ましくは5〜100μmである。
【0119】 本発明において、実質的に水酸基を有しない成分(C)は、成分(C)の前駆
体を化学処理して成分(C)の前駆体の表面から水酸基を除去することによって
得ることができる。
【0120】 本発明において、「固体成分が実質的に水酸基を有しない」とは、次に述べる
方法(i)や方法(ii)による測定では固体成分[成分(C)]の表面に水酸基
が検出されないことを意味する。方法(i)においては、成分(C)を溶媒中に
分散させることによって得られるスラリーに所定の過剰量のジアルキルマグネシ
ウムを添加して、成分(C)の表面水酸基をジアルキルマグネシウムと反応させ
、次いで、成分(C)の表面水酸基と反応したジアルキルマグネシウムの量を求
めるために、溶媒中に未反応のままで残っているジアルキルマグネシウムの量を
公知の方法で測定してから、反応したジアルキルマグネシウムの量に基づいて成
分(C)の表面水酸基の初期量を求める。この方法は、下記の反応式で表される
、水酸基とジアルキルマグネシウムとの反応に基づくものである: S-OH + MgR2 → S-OMgR + RH (式中、Sは固体材料(成分(C))を表し、Rはアルキル基を表す)。
【0121】 方法(i)より好ましい方法(ii)においては、ジアルキルマグネシウムの代
わりにエトキシジエチルアルミニウムを用いる。具体的に言えば、方法(ii)で
は、エトキシジエチルアルミニウムを成分(C)の表面水酸基と反応させてエタ
ンガスを発生させ、発生したエタンガスの量をガスビュレットを用いて測定して
から、発生したエタンガスの量に基づいて成分(C)の表面水酸基の初期量を求
める。
【0122】 さらに、本発明においては、成分(C)の前駆体を加熱処理して水(結晶水、
吸着水等)を除去することが好ましい。成分(C)の前駆体の加熱処理は、たと
えば、不活性雰囲気下または還元雰囲気下に、150℃〜1,000℃、好まし
くは250℃〜800℃の温度で、1時間〜50時間の処理によって行うことが
できる。
【0123】 本発明においては、加熱処理して脱水した後に、成分(C)の前駆体をさらに
化学処理して成分(C)の前駆体の表面から水酸基を除去し、成分(C)を得る
ことが、さらに好ましい。
【0124】 成分(C)の前駆体から水酸基を除去するための化学処理に関しては、成分(
C)の前駆体を有機金属化合物と接触させるという化学処理を行うことが推奨さ
れる。この化学処理に用いられる有機金属化合物の例としては、周期表第2族〜
第13族に属する元素の化合物等が挙げられる。これらの化合物の中で特に好ま
しいのは、有機アルミニウム及び有機マグネシウムである。
【0125】 成分(C)の前駆体の化学処理に用いられる好ましい有機アルミニウム化合物
の例として、下記の式(10)で表される化合物が挙げられる: AlRn3-n (10) (式中、 Rは、各々独立して、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキ
ル基または炭素数6〜20のアリール基を表し; Xは、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1〜10のアルコキシ
ド基を表し; nは1、2または3である)。
【0126】 上記式(10)で表される化合物は、単独で使用してもよいし組み合わせて 使用してもよい。
【0127】 式(10)[成分(C)の前駆体の化学処理に用いられる有機アルミニウム化
合物の好ましい一つの形態を表す]中の基Rの例としては、メチル基、エチル基
、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、ト
リル基等が挙げられる。式(10)[成分(C)の前駆体の化学処理に用いられる
有機アルミニウム化合物の好ましい一つの形態を表す]中の基Xとしては、例え
ば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、水素原子、塩素原子等が挙げられる
【0128】 成分(C)の前駆体の化学処理に用いられる有機アルミニウム化合物の具体例
としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアル
ミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシル
アルミニウム等のトリアルキルアルミニウム化合物、及びこれらのトリアルキル
アルミニウム化合物とアルコール(たとえば、メチルアルコール、エチルアルコ
ール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチル
アルコール、デシルアルコール)との反応生成物が挙げられる。そのような反応
生成物の例としては、メトキシジメチルアルミニウム、エトキシジエチルアルミ
ニウム、ブトキシジブチルアルミニウム等が挙げられる。このような反応生成物
を製造する場合、トリアルキルアルミニウムのアルコールに対する比は、Al/
OHのモル比で、0.3〜20の範囲にあることが好ましく、0.5〜5の範囲
にあることがさらに好ましく、0.8〜3の範囲にあることがさらに好ましい。
【0129】 成分(C)の前駆体の化学処理に用いられる好ましい有機マグネシウム化合物
の例として、下記の式(11)で表される化合物が挙げられる: MgRn2-n (11) (式中、 Rは、各々独立して、炭素数1〜12の直鎖状,分岐状もしくは環状のアルキ
ル基または炭素数6〜20のアリール基を表し; Xは、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1〜10のアルコキシ
ド基を表し; nは1または2である)。
【0130】 上記式(11)で表される化合物は、単独で使用してもよいし組み合わせて使
用してもよい。
【0131】 式(11)[成分(C)の前駆体の化学処理に用いられる有機マグネシウム化
合物の好ましい一つの形態を表す]中の基Rの例としては、メチル基、エチル基
、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、ト
リル基等が挙げられる。式(11)[成分(C)の前駆体の化学処理に用いられ
る有機マグネシウム化合物の好ましい一つの形態を表す]中の基Xの例としては
、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、水素原子、塩素原子等が挙げられる。
【0132】 成分(C)の前駆体の化学処理に用いられる有機マグネシウム化合物の具体例
としては、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネ
シウム、ブチルオクチルマグネシウム等が挙げられる。
【0133】 成分(C)の前駆体を化学処理する場合、上述の有機アルミニウム化合物及び
有機マグネシウム化合物は、これらを混合した状態で使用してもよい。
【0134】 成分(C)の前駆体を化学処理する場合、有機金属化合物は、成分(C)の前
駆体の表面に存在する水酸基のモル量と同じまたはそれより多い量が用いられる
。化学処理に用いられる有機金属化合物の上限は、通常は成分(C)の前駆体の
表面に存在する水酸基のモル量の10倍量、好ましくは5倍量、さらに好ましく
は2倍量、さらに好ましくは1.5倍量、最も好ましくは1.3倍量である。
【0135】 本発明において、成分(C)の前駆体の表面水酸基を、該水酸基の量より多い
量の有機金属化合物を用いた化学処理によって除去する場合、使用される有機金
属化合物の過剰量が未反応のままで残る。望むなら、未反応のままで残る有機金
属化合物の量を、濾過、デカンテーション等の公知の方法によって望ましい量ま
で減少させてもよい。
【0136】 また、本発明において、成分(C)は実質的に水酸基を有しない処理されたシ
リカであることが特に好ましい。かかる処理されたシリカは、150℃以上、好
ましくは250℃以上の温度でシリカを加熱することにより、表面水酸基の量が
シリカ1g当たり0.05〜10mmolであるような、前処理されたシリカを得、
前処理されたシリカを有機金属化合物で処理するという方法によって得ることが
できる。シリカ[成分(C)の前駆体]の処理のための有機金属化合物としては
、有機アルミニウム化合物を使用することが好ましく、前記式(10)の有機ア
ルミニウム化合物を使用することが特に好ましい。有機アルミニウム化合物の使
用量は、前処理されたシリカの表面水酸基のモル量の1〜10倍である。さらに
、望むなら、未反応のままで残る有機アルミニウム化合物の量を、濾過、デカン
テーション等の公知の方法によって望ましい程度まで減少させることができる。
【0137】 上記の前処理されたシリカの表面水酸基は、前処理されたシリカ1g当たり0
.1〜5mmolであることがより好ましく、0.5〜2mmolであることが最も好ま
しい。
【0138】 本発明の触媒の成分として、望むなら、有機アルミニウム化合物(D)[以下
、しばしば「選択成分(D)」という]を使ってもよい。
【0139】 選択成分(D)を本発明の触媒の成分として使用すると、成分(A)及び(B
)によって形成される活性種を、物理的吸着によって成分(C)にさらに強固に
担持させることができる。
【0140】 成分(B)が未反応成分(B−1)を含む場合、選択成分(D)の使用は特に
好ましい。その場合、選択成分(D)の使用により、活性種が化学結合によって
成分(C)に結合することを確実に防止することが可能になる。
【0141】 選択成分(D)の好ましい例の一つは、下記の式(10)で表される化合物で
ある: AlRn3-n (10) (式中、 Rは各々独立して、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル
基または炭素数6〜20のアリール基を表し、 Xは各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1〜10のアルコキシド
基を表し、 nは1、2または3である)。
【0142】 選択成分(D)は、上記式(10)で表される複数の化合物の混合物であって
もよい。
【0143】 成分(D)の好ましい一つの形態を表す一般式(10)における基Rの例とし
て、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デ
シル基、フェニル基、トリル基等が挙げられる。また、成分(D)の好ましい一
つの形を表す一般式(10)における基Xの例として、メトキシ基、エトキシ基
、ブトキシ基、水素原子、塩素原子等が挙げられる。
【0144】 本発明で用いられる成分(D)の具体例として、トリメチルアルミニウム、ト
リエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、
トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニ
ウム、及びこれらのトリアルキルアルミニウムとメチルアルコール、エチルアル
コール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチ
ルアルコール、デシルアルコール等のアルコール類との反応生成物が挙げられる
。そのような反応生成物の例として、メトキシジメチルアルミニウム、エトキシ
ジエチルアルミニウム、エトキシジブチルアルミニウム等が挙げられる。さらに
、このような反応生成物を生成する際の、トリアルキルアルミニウムの上記アル
コール類に対するモル比(Al/OH)の範囲は、0.3〜20であることが好
ましく、0.5〜5であることがさらに好ましく、0.8〜3であることがさら
に好ましい。
【0145】 本発明において選択成分(D)を用いる場合、成分(D)の量は、成分(B−
1)の量の0.01〜1,000倍モル、好ましくは0.1〜100倍モル、さ
らに好ましくは1〜10倍モルである。
【0146】 本発明の触媒は、成分(A)〜(C)、及び場合によっては成分(D)を接触
させることによって得られる。
【0147】 本発明の触媒を製造する具体的方法については、特に制限はない。本発明の触
媒の製造方法の具体例として次の方法(a)(b)を挙げることができる: (a)次の工程 (i)成分(B−1)と成分(B−2)とを互いに十分に混合し接触させ、成
分(B)を得る; (ii)成分(A)と成分(B)とを互いに十分に混合し接触させ、成分(A)
と成分(B)との混合物を得る; (iii)成分(A)と成分(B)との混合物と、成分(C)とを互いに十分に 混合し接触させる を包含する方法[ただし、工程(i)の後いつでも成分(D)を添加してよい]
、 (b)次の工程 (i)成分(B−1)と成分(B−2)とを互いに十分に混合し接触させ、成
分(B)を得る; (ii)成分(B)と成分(C)とを互いに十分に混合し接触させ、成分(B)
と成分(C)との混合物を得る; (iii)成分(A)と、成分(B)と成分(C)との混合物とを互いに十分に 混合し接触させる を包含する方法[ただし、工程(i)の後いつでも成分(D)を添加してよい]
【0148】 選択成分(D)を本発明の触媒を製造する系に添加する方法については、特 に制限はない。しかし、上記の方法(a)または(b)において、 成分(A) [方法(a)の工程(ii)または方法(b)の工程(iii)で用いられる]と成 分(C)[方法(a)の工程(iii)または方法(b)の工程(ii)で用いられ る]とから成る群から選ばれる少なくとも一つが、それらと成分(D)との混合
物の形で用いられるように、選択成分(D)を添加することが好ましい。さらに
、上記の方法(b)では、工程(iii)の前に、成分(D)を工程(ii)で得ら れた混合物に添加してもよい。
【0149】 本発明の触媒の製造方法として最も好ましいのは、上記の方法(b)を用い、
しかも、工程(iii)で用いられる成分(A)と工程(ii)で用いられる成分( C)とから成る群から選ばれる少なくとも一つがそれらと成分(D)との混合物
であり、且つ成分(D)を工程(ii)で得られた混合物に工程(iii)の前に添 加することが、最も好ましい。
【0150】 本発明の触媒を製造する場合、成分(C)としては、その前駆体が上記の方法
で処理してあるものを用いることが好ましい。この場合、本発明の触媒は、たと
えば、次の工程を包含する方法によって得られる: (i)表面水酸基を有する成分(C)の前駆体(例えばシリカ)を、成分(C
)の前駆体の表面水酸基のモル量を越えるモル量の、該水酸基と反応する有機金
属化合物(たとえば、アルキルアルミニウム)で処理することにより、実質的に
水酸基を有しない成分(C)と未反応の有機金属化合物とを含む反応混合物を得
る; (ii)得られた反応混合物を濾過、デカンテーション等に付し、該反応混合物
中の未反応の有機金属化合物を望ましい量まで減らす; (iii)場合によっては、選択成分(D)と成分(C)を含む該反応混合物と を互いに混合し接触させることにより、成分(C)と選択成分(D)とを含む混
合物を得る; (iv)成分(B)と、工程(ii)で得られた成分(C)を含む反応混合物また
は工程(iii)で得られた混合物とを互いに混合し接触させることにより、成分 (C)に強固に担持された成分(B)を得る; (v)成分(A)[成分(D)との混合物の形で使ってもよい]と、成分(C
)に強固に担持された成分(B)とを混合し接触させることにより、活性種とし
ての金属錯体が成分(A)と成分(B)とによって形成された本発明の触媒を得
る。
【0151】 この方法において、工程(ii)で成分(C)の前駆体を処理するのに用いられ
る有機金属化合物が有機アルミニウム化合物(たとえば、トリアルキルアルミニ
ウム)である場合、工程(iii)[成分(C)を含む反応混合物の中の未反応の 有機金属化合物の量を減らすための工程]を省略し、未反応の有機アルミニウム
の全てを成分(D)として用いてもよい。成分(C)の前駆体を処理するのに用
いられる有機金属化合物が有機アルミニウム化合物である場合、具体的には、本
発明の触媒はたとえば次の工程を包含する方法によって製造することができる: (i)150℃以上で焼成することによって脱水された、表面水酸基を有する
シリカ[成分(C)の前駆体]を、シリカの表面水酸基のモル量を越えるモル量
の、該水酸基と反応する有機アルミニウム化合物(たとえば、トリアルキルアル
ミニウム)で処理することにより、実質的に水も水酸基も含まない処理されたシ
リカと、未反応の有機アルミニウム化合物とを含む反応混合物を得る; (ii)処理されたシリカと未反応の有機アルミニウム化合物とを含む反応混合
物と、成分(B−1)[たとえば、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモ
ニウム−トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート]
と成分(B−2)(たとえば、トリアルキルアルミニウムのような有機アルミニ
ウム化合物)とを反応させて得られる反応混合物[成分(B)]とを、互いに混
合し接触させる; (iii)得られた混合物と、成分(A)[たとえば、[(N−t−ブチルアミ ド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウ ム−1,3−ペンタジエンのような、上記式(6)の化合物]とを互いに混合し
接触させ、触媒を得る。
【0152】 さらに、成分(C)の前駆体の処理が、成分(B−2)の定義に当てはまる有
機金属化合物を、成分(C)の前駆体の表面水酸基のモル量より多いモル量だけ
用いて行われる場合、未反応の有機金属化合物を成分(B−2)として用いても
よい。この場合、本発明の触媒は、たとえば、次の工程を包含する方法によって
製造することができる: (i)表面水酸基を有する成分(C)の前駆体を、成分(C)の前駆体の表面
水酸基のモル量を越えるモル量の、該水酸基と反応する、成分(B−2)の定義
に当てはまる有機金属化合物(たとえば、トリアルキルアルミニウムのような有
機アルミニウム化合物)で処理することにより、実質的に水も水酸基も含まない
成分(C)と、未反応の有機金属化合物とを含む反応混合物を得る; (ii)成分(B−1)と、上で得られた、成分(C)と未反応の有機金属化合
物[成分(B−2)として働く]とを含む反応混合物とを、互いに混合し接触さ
せることにより、成分(C)に強固に担持された成分(B)を得る; (iii)成分(A)と、上で得られた、成分(C)に強固に担持された成分( B)とを互いに混合し接触させることにより、成分(A)と成分(B−1)との
反応によって活性種が形成された本発明の触媒を得る。
【0153】 この方法は、操作が容易であるという点で有利である。この方法の一つの具体
例として、次の工程を包含する方法が挙げられる: (i)150℃以上で焼成することによって脱水された、表面水酸基を有する
シリカ[成分(C)の前駆体]を、シリカの表面水酸基のモル量を越えるモル量
の、該水酸基と反応するトリエチルアルミニウムで処理することにより、実質的
に水も水酸基も含まない処理されたシリカ[成分(C)]と、未反応のトリエチ
ルアルミニウムとを含む反応混合物を得る; (ii)成分(B−1)[たとえば、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアン
モニウム−トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート
のような、上記式(9)の化合物]と、上で得られた、処理されたシリカ[成分
(C)]と未反応のトリエチルアルミニウム[成分(B−2)として働く]とを
含む反応混合物とを、互いに混合し接触させることにより、シリカに強固に担持
された成分(B)を得る; (iii)このように得られた成分(B)と、成分(A)[たとえば、[(N− t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシ ラン]チタニウム−1,3−ペンタジエンのような、上記式(6)の化合物]と
を互いに混合し接触させ、触媒を得る。
【0154】 しかし、本発明の優れた触媒を効率的に製造するためには、成分(B)[成分
(B)は、成分(B−1)と成分(B−2)との単なる混合物であるか、成分(
B−1)と成分(B−2)との反応によって得られる反応混合物である]が触媒
の他の成分との接触の前に形成されるような方法が望ましい。
【0155】 さらに、成分(B)が未反応成分(B−1)を含む反応混合物の形で使われる
場合、成分(B)と成分(C)とを混合し接触させる工程[成分(A)及び/又
は成分(D)の存在下で行ってもよい]において、未反応成分(B−1)の全て
を完全に、成分(B−2)の定義に当てはまる有機金属化合物[成分(C)の前
駆体の処理によって得られる反応混合物の中で未反応のままである]と、成分(
B−2)の定義に当てはまる成分(D)とから成る群から選ばれる少なくとも一
つと反応させることが好ましい。上記の少なくとも一つの化合物は、上記式(1
0)で表される有機アルミニウム化合物であることが好ましい。上記の少なくと
も一つの化合物は、未反応成分(B−1)に対して1〜1,000倍モルである
ことが好ましく、1〜100倍モルであることがさらに好ましく、1〜10倍モ
ルであることが最も好ましい。
【0156】 上記のどの方法によっても、成分(A)と成分(B−1)との反応によって形
成される活性種が成分(C)に非常に強固に担持される本発明の触媒を製造する
ことが可能である。
【0157】 上記のどの方法によっても製造される本発明の触媒は、高い重合活性を有する
点のみならず、高い重合活性を長時間維持することができるという点で、有利で
ある。さらに、本発明の触媒は、懸濁重合(スラリー重合)や気相重合により、
粉体性状に優れたオレフィン系ポリマーを、重合器の内部表面のいろいろな場所
に付着させるなどの好ましくない現象を生じさせることなく製造する能力を有す
る。こうして、粉体性状に優れたオレフィン系ポリマーを工業的規模のプラント
の連続運転によって効率的に製造することが可能となる。
【0158】 本発明の触媒を製造するこれらの方法では成分(A)、(B)、(C)及び選
択成分(D)を接触させるのであるが、これらのどの方法においても、成分(A
)と少なくとも一つの他の成分との混合・接触は、成分(A)の良溶媒中で行う
ことが好ましい。また、選択成分(D)と少なくとも一つの他の成分との混合・
接触も、選択成分(D)の良溶媒中で行うことが好ましい。
【0159】 さらに、本発明では、成分(B−1)と成分(B−2)との混合・接触は、成
分(B−1)及び成分(B−2)の良溶媒中で行うことが好ましい。さらに、成
分(B)[成分(B−1)と成分(B−2)とを互いに混合・接触させることに
よって得られる]と成分(A)及び/または選択成分(D)との混合・接触が成
分(B)と成分(C)との混合・接触の前に行われる場合、その混合・接触は成
分(B−1)及び成分(B−2)の良溶媒中で行うことが好ましい。
【0160】 一方、成分(B)[成分(B−1)と成分(B−2)とを互いに混合・接触さ
せることによって得られる]を成分(C)に担持させるための、成分(B)と成
分(C)との混合・接触は、成分(B)の貧溶媒中で行うことが好ましい。本発
明において、成分(B)と成分(C)との混合・接触が成分(B)の貧溶媒中で
行われる場合、成分(B)を成分(C)に非常に強固に担持することができる。
成分(B)と成分(C)との混合・接触は、たとえば、成分(B)と成分(C)
とのうちの少なくとも一つを、成分(A)と成分(D)とのうちの少なくとも一
つとの混合物の形で用いるという方法で行ってもよい。この場合また、成分(B
)と成分(C)との混合・接触は、成分(B)の貧溶媒中で行うことが好ましい
【0161】 本発明で用いられる、成分(B)の良溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン
、キシレン等の芳香族化合物が挙げられる。また、成分(B)の貧溶媒の例とし
ては、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、
デカン、ドデカン、灯油等の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素化合物、アイ
ソパーE[エクソンケミカル社(米国)製の液体炭化水素混合物の商品名]等が
挙げられる。
【0162】 本発明で用いられる成分(A)及び選択成分(D)の良溶媒の例としては、イ
ソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、
ドデカン、灯油等の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素化合物;ベンゼン、ト
ルエン、キシレン等の芳香族化合物;アイソパーE[エクソンケミカル社(米国
)製の液体炭化水素混合物の商品名]等が挙げられる。
【0163】 以下、本発明の触媒の存在下で、エチレンを単独重合させる、あるいはエチレ
ンを少なくとも一つのコモノマーと共重合させる本発明の方法について、具体的
に説明する。
【0164】 本発明のオレフィン重合用触媒の存在下において、エチレンを単独重合させる
こともできるし、エチレンを、式H2C=CHR(ただし、Rはメチル基、エチ ル基、炭素数3〜18の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、または炭素数
6〜20のアリール基である)で表されるα−オレフィン、炭素数3〜20の環
状オレフィン、炭素数4〜20の直鎖状、分岐状または環状のジエンからなる群
から選ばれる少なくとも一つのコモノマーと共重合させることもできる。
【0165】 式H2C=CHR(ただし、Rがメチル基、エチル基、炭素数3〜18の直鎖 状、分岐状または環状のアルキル基である場合)で表されるα−オレフィンの例
として、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−
1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、
1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、及び1−イコセン等が挙げられる。炭素
数3〜20の環状オレフィンの例として、シクロペンテン、シクロヘキセン、シ
クロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロド
デセン、及び2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,
5,8,8a−オクタヒドロナフタレン等が挙げられる。式H2C=CHR(た だし、Rが炭素数6〜20のアリール基である場合)の例として、スチレン、ビ
ニルシクロヘキサン等が挙げられる。炭素数4〜20の直鎖状、分岐状または環
状のジエンの例として、1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−
ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロヘキサジエン等が挙げられる。
【0166】 エチレンと、上記のオレフィンの中から適当に選ばれたオレフィン(コモノマ
ー)とを共重合させることによって、エチレンポリマーの密度や物性を適切に制
御することができる。
【0167】 本発明においては、オレフィンの重合及び共重合は懸濁重合法と気相重合法と
のうちのいずれの方法によっても実施できる。
【0168】 懸濁重合法においては、懸濁重合の媒体として不活性炭化水素媒体を用いるこ
とができるし、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0169】 このような不活性炭化水素媒体の代表的な例として、プロパン、ブタン、ペン
タン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化
水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化
水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチルクロライド、
クロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;及びこれらの混合物
等が挙げられる。
【0170】 本発明のオレフィン重合用触媒を用いた重合方法では、触媒量が、1時間当た
りに得られるポリマーの1〜0.0001重量%、好ましくは0.1〜0.00
1重量%となるように、(共)重合系に供給する触媒の量を調整することが望ま
しい。重合温度は、通常は0℃以上、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは
60℃以上である。重合温度はまた、通常は150℃以下、好ましくは110℃
以下、さらに好ましくは100℃以下である。重合圧力は、通常は常圧ないし1
00kg/cm2、好ましくは2〜50kg/cm2、さらに好ましくは5〜30kg/cm2であ
る。重合反応は、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方式でも行うことがで
きる。さらに、重合反応は少なくとも二つの反応器を用いて行ってもよい(これ
ら反応器における反応条件は同じであっても異なってもよい)。この場合、各反
応器を並列あるいは直列に連結してもよい。
【0171】 得られるオレフィン系ポリマーの分子量は、重合反応系に水素を導入すること
によっても、重合温度を調節することによっても、制御することができる(例え
ば、DE3127133.2を参照せよ)。
【0172】 本発明において、オレフィン重合用触媒は、オレフィンの重合に好ましい影響
を与える、上記以外の成分を含んでいてもよい。
【0173】 本発明のオレフィン重合用触媒を用いた重合方法によって、粉体性状に優れた
オレフィン系ポリマーを製造することが可能になる。具体的に言えば、ポリマー
は粒径分布の範囲が狭いだけでなく嵩密度も高い粉体の形状で得られるから、得
られるポリマーは優れた流動性を示す。
【0174】 本発明の触媒を用いた重合方法によって得られるポリマーの平均粒径は、通常
100〜1,000μmであり、好ましくは150〜800μmである。平均粒
径が上記の範囲外にある場合、ポリマーの粉体性状は悪くなる傾向がある。
【0175】 本発明の触媒を用いた重合方法によって得られるポリマーの嵩密度は、通常0
.25g/cm3 以上もあるが、0.27g/cm3 以上であることが好ましく、0.3
0g/cm3以上であることがさらに好ましい。
【0176】
【発明の実施の形態】
以下、実施例及び比較例によって本発明をより詳しく説明するが、本発明はこ
れによって何ら限定されるものではない。
【0177】 [シリカの表面水酸基の量] 本発明において、シリカ1g当たりの表面水酸基のモル量は、次のようにして
求められた。
【0178】 乾燥した窒素雰囲気下で、エトキシジエチルアルミニウム5mlを、脱水シリカ
1gを入れた容量20mlの三角フラスコ(ただし、フラスコの開端はガスビュレ
ットに連結している)を備えた10mlの滴下漏斗に入れた。次に、エトキシジエ
チルアルミニウムを、乾燥した窒素雰囲気下で三角フラスコ中の脱水シリカに添
加し、エトキシジエチルアルミニウムとシリカの表面水酸基との反応を起こさせ
、エタンを生成させた。
【0179】 その後、生成したエタンの量をガスビュレットを用いて測定し、生成したエタ
ンのモル量を求めた。このモル量は、シリカの表面水酸基のモル量と等しい。
【0180】 脱水シリカ1g当たりの表面水酸基のモル量は、こうして得られる。
【0181】 [エチレンポリマーの平均粒径] 本発明において、エチレンポリマーの平均粒径は、複数の標準篩(各篩は日本
工業規格Z8801を満たしている)を用いた篩い分け法によって求められた[
荒井康夫「粉体の材料化学」166〜169頁(培風館、1987年)を参照せ
よ]。
【0182】 この方法の概要は次の通りである。
【0183】 粉末状のエチレンポリマーを複数の標準篩に順次通し[ただし、目開き(mesh
size) の大きい順に通す]、各篩に残存するエチレンポリマーの重量を測定した
。このように測定された、目開きの分かっている篩に残存するエチレンポリマー
のフラクションの重量から、エチレンポリマーの粒径分布が求められた。その後
、この粒径分布に基づき、エチレンポリマーの平均粒径を計算した。
【0184】実施例1 (トリエチルアルミニウム処理されたシリカの調製) 1gのシリカP−10[富士シリシア社(日本国)製]を、窒素雰囲気下、4
00℃で5時間焼成し、脱水した。脱水シリカの表面水酸基の量は、1.3mmol
/g-SiO2であった。この脱水シリカ1g をヘキサン40ml中に分散させ、スラリ
ーを得た。得られたスラリーにトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1
M)を1.5ml加え、1時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面水
酸基とを反応させ、トリエチルアルミニウム処理されたシリカと上澄み液とを含
み、該トリエチルアルミニウム処理されたシリカの全ての表面水酸基がつぶされ
ている反応混合物を得た。その後、得られた反応混合物中の上澄み液をデカンテ
ーションによって除去することにより、上澄み液中の未反応のトリエチルアルミ
ニウムを除去した。その後、ヘキサンを適量加え、トリエチルアルミニウム処理
されたシリカのヘキサンスラリー50mlを得た。デカンテーションによって除去
された上澄み液は、上澄み液のトリエチルアルミニウム含有量を測定するための
試験に付された。試験の結果、上澄み液のトリエチルアルミニウム含有量は0.
07mmolであることが分かった。
【0185】 (シリカに担持された触媒の調製) ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−トリス(ペンタフルオロ
フェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称す
る)1.14gをトルエン10mlに添加して溶解し、ボレートの100mMトルエ
ン溶液を得た。
【0186】 このボレートのトルエン溶液にトリメチルアルミニウムの0.1Mトルエン溶
液1mlを室温で加え、さらにトルエンを加えてトルエン溶液中のボレート濃度が
50mMとなるようにした。その後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む反応混
合物を得た。
【0187】 ボレートを含むこの反応混合物1.6mlを、上で得られた、トリエチルアルミ
ニウム処理されたシリカのスラリー50mlに加え、1時間攪拌し、ボレートをシ
リカに担持した。こうして、ボレートを担持したシリカのスラリーが得られた。
【0188】 得られたスラリーに、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シ クロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以
下、「チタニウム錯体」という)10mmolをアイソパーE[エクソンケミカル社
(米国)製の体炭化水素混合物の商品名]100mlに溶解して得られる溶液0.
8mlを加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応させた。こうし
て、シリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成されている反応
混合物を得た。得られた反応混合物の上澄み液の一部をデカンテーションによっ
て除去し、ヘキサンを溶媒として用いてスラリー中のシリカの濃度を調整し、触
媒活性種を担持したシリカを包含する薄緑色の固体触媒のヘキサンスラリー50
mlを得た。
【0189】 (エチレンと1−ブテンとの共重合) 容量1.8lのオートクレーブにヘキサン800mlを入れ、このオートクレー
ブに加圧されたエチレンを入れてオートクレーブの内圧を10kg/cm2-Gに高め、
さらに1−ブテン5mlをオートクレーブに入れた。次いで、オートクレーブの内
温を70℃に高め、上で得られた固体触媒のスラリーを、固体触媒の重量が15
mgとなるような量だけオートクレーブに加え、エチレンと1−ブテンとの共重合
を開始した。オートクレーブの内圧が10kg/cm2-Gに維持されるようにエチレン
をオートクレーブに加えながら、60分間共重合を行った。共重合終了後、オー
トクレーブから反応混合物(コポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで
触媒を失活させた。その後、反応混合物を濾過、洗浄、乾燥し、コポリマーの乾
燥粉末90gを得た。オートクレーブの内部を検査したところ、オートクレーブ
の内壁等にはポリマーの付着物は観察されなかった。触媒の触媒活性は1,90
0kg-PE/g-Ti・hrであった。
【0190】 得られたコポリマーの粉末は、平均粒径400μmで、嵩密度0.28g/cm3 であり、極めて優れた流動性を示した。よって、得られたコポリマーの粉末は極
めて優れた粉末特性を示すことが分かった。
【0191】 結果を表1に示す。
【0192】 実施例2 (トリエチルアルミニウム処理されたシリカの調製) 実施例1と同様の方法で、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのスラリ
ー50mlを得た。
【0193】 (シリカに担持された触媒の調製) ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム-トリス(ペンタフルオロ フェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称す
る)1.14gをトルエン10mlに添加して溶解し、ボレートの100mMトルエ
ン溶液を得た。
【0194】 このボレートのトルエン溶液にトリメチルアルミニウムの0.1Mトルエン溶
液0.5mlを室温で加え、さらにトルエンを加えてトルエン溶液中のボレート濃
度が50mMとなるようにした後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む反応混合
物を得た。
【0195】 トリメチルアルミニウムの0.1Mトルエン溶液0.05mlを、上で得られた
、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのスラリー50mlに加え、15分間
攪拌し、混合物を得た。この混合物に、ボレートを含む上記反応混合物1.6ml
を加え、1時間攪拌し、ボレートをシリカに担持した。こうして、ボレートを担
持したシリカのスラリーが得られた。
【0196】 得られたスラリーに、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シ クロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以
下、「チタニウム錯体」という)10mmolをアイソパーE100mlに溶解して得
られる溶液0.8mlを加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応
させた。こうして、シリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成
されている反応混合物を得た。得られた反応混合物の上澄み液の一部をデカンテ
ーションによって除去し、ヘキサンを溶媒として用いてスラリー中のシリカの濃
度を調整し、触媒活性種を担持したシリカを包含する薄緑色の固体触媒のヘキサ
ンスラリー50mlを得た。
【0197】 (エチレンと1−ブテンとの共重合) 実施例1と同様の方法で共重合を行った。共重合終了後、オートクレーブから
反応混合物(コポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させ
た。その後、反応混合物を濾過、洗浄、乾燥し、コポリマーの乾燥粉末85gを
得た。オートクレーブの内部を検査したところ、オートクレーブの内壁等にはポ
リマーの付着物は観察されなかった。触媒の触媒活性は1,800kg-PE/g-Ti・
hrであった。
【0198】 得られたコポリマーの粉末は、平均粒径400μmで、嵩密度0.26g/cm3 であり、極めて優れた流動性を示した。よって、得られたコポリマーの粉末は極
めて優れた粉末特性を示すことが分かった。
【0199】 結果を表1に示す。
【0200】 実施例3 (トリエチルアルミニウム処理されたシリカの調製) 実施例1と同様の方法で、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのスラリ
ー50mlを得た。
【0201】 (シリカに担持された触媒の調製) ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム-トリス(ペンタフルオロ フェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称す
る)1.14gをトルエン10mlに添加して溶解し、ボレートの100mMトルエ
ン溶液を得た。
【0202】 このボレートのトルエン溶液にトリメチルアルミニウムの0.1Mトルエン溶
液5mlを室温で加え、さらにトルエンを加えてトルエン溶液中のボレート濃度が
50mMとなるようにした後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む反応混合物を
得た。
【0203】 ボレートを含むこの反応混合物1.6mlを、上で得られた、トリエチルアルミ
ニウム処理されたシリカのスラリー50mlに加え、1時間攪拌し、ボレートをシ
リカに担持した。こうして、ボレートを担持したシリカのスラリーが得られた。
【0204】 得られたスラリーに、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シ クロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以
下、「チタニウム錯体」という)10mmolをアイソパーE100mlに溶解して得
られる溶液0.6mlを加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応
させた。こうして、シリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成
されている反応混合物を得た。得られた反応混合物の上澄み液の一部をデカンテ
ーションによって除去し、ヘキサンを溶媒として用いてスラリー中のシリカの濃
度を調整し、触媒活性種をシリカに担持した薄緑色の固体触媒のヘキサンスラリ
ー50mlを得た。
【0205】 (エチレンと1−ブテンとの共重合) 実施例1と同様の方法で共重合を行った。共重合終了後、オートクレーブから
反応混合物(コポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させ
た。その後、反応混合物を濾過、洗浄、乾燥し、コポリマーの乾燥粉末98gを
得た。オートクレーブの内部を検査したところ、オートクレーブの内壁等にはポ
リマーの付着物は観察されなかった。触媒の触媒活性は2,700kg-PE/g-Ti・
hrであった。
【0206】 得られたコポリマーの粉末は、平均粒径300μmで、嵩密度0.29g/cm3 であり、極めて優れた流動性を示した。よって、得られたコポリマーの粉末は極
めて優れた粉末特性を示すことが分かった。
【0207】 結果を表1に示す。
【0208】 実施例4 (トリエチルアルミニウム処理されたシリカの調製) 実施例1と同様の方法で、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのスラリ
ー50mlを得た。
【0209】 (シリカに担持された触媒の調製) ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム-トリス(ペンタフルオロ フェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称す
る)1.14gをトルエン10mlに添加して溶解し、ボレートの100mMトルエ
ン溶液を得た。
【0210】 このボレートのトルエン溶液にエトキシジエチルアルミニウムの0.1Mトル
エン溶液2.5mlを室温で加え、さらにトルエンを加えてトルエン溶液中のボレ
ート濃度が50mMとなるようにした後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む反
応混合物を得た。
【0211】 エトキシジエチルアルミニウムの0.1Mトルエン溶液0.2mlを、上で得ら
れた、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのスラリー50mlに加え、15
分間攪拌し、混合物を得た。この混合物に、ボレートを含む上記反応混合物を加
え、ボレートをシリカに担持した。こうして、ボレートを担持したシリカのスラ
リーが得られた。
【0212】 得られたスラリーに、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シ クロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以
下、「チタニウム錯体」という)10mmolをアイソパーE100mlに溶解して得
られる溶液0.6mlを加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応
させた。こうして、シリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成
されている反応混合物を得た。得られた反応混合物の上澄み液の一部をデカンテ
ーションによって除去し、ヘキサンを溶媒として用いてスラリー中のシリカの濃
度を調整することにより、触媒活性種をシリカに担持した薄緑色の固体触媒のヘ
キサンスラリー50mlを得た。
【0213】 (エチレンと1−ブテンとの共重合) 実施例1と同様の方法で共重合を行った。共重合終了後、オートクレーブから
反応混合物(コポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させ
た。その後、反応混合物を濾過、洗浄、乾燥し、コポリマーの乾燥粉末83gを
得た。オートクレーブの内部を検査したところ、オートクレーブの内壁等にはポ
リマーの付着物は観察されなかった。触媒の触媒活性は1,750kg-PE/g-Ti・
hrであった。
【0214】 得られたコポリマーの粉末は、平均粒径400μmで、嵩密度0.28g/cm3 であり、極めて優れた流動性を示した。よって、得られたコポリマーの粉末は極
めて優れた粉末特性を示すことが分かった。
【0215】 結果を表1に示す。
【0216】実施例5 (トリエチルアルミニウム処理されたシリカの調製) 実施例1と同様の方法で、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのスラリ
ー50mlを得た。
【0217】 (シリカに担持された触媒の調製) ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム-トリス(ペンタフルオロ フェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称す
る)1.14gをトルエン10mlに添加して溶解し、ボレートの100mMトルエ
ン溶液を得た。
【0218】 このボレートのトルエン溶液にエトキシジエチルアルミニウムの0.1Mトル
エン溶液10mlを室温で加え、さらにトルエンを加えてトルエン溶液中のボレー
ト濃度が50mMとなるようにした後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む反応
混合物を得た。
【0219】 ボレートを含むこの反応混合物1.6mlを、上で得られた、トリエチルアルミ
ニウム処理されたシリカのスラリー50mlに加え、1時間攪拌し、ボレートをシ
リカに担持した。こうして、ボレートを担持したシリカのスラリーが得られた。
【0220】 得られたスラリーに、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シ クロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以
下、「チタニウム錯体」という)10mmolをアイソパーE100mlに溶解して得
られる溶液0.6mlを加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応
させた。こうして、シリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成
されている反応混合物を得た。得られた反応混合物の上澄み液の一部をデカンテ
ーションによって除去し、ヘキサンを溶媒として用いてスラリー中のシリカの濃
度を調整することにより、触媒活性種をシリカに担持した薄緑色の固体触媒のヘ
キサンスラリー50mlを得た。
【0221】 (エチレンと1−ブテンとの共重合) 実施例1と同様の方法で共重合を行った。共重合終了後、オートクレーブから
反応混合物(コポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させ
た。その後、反応混合物を濾過、洗浄、乾燥し、コポリマーの乾燥粉末90gを
得た。オートクレーブの内部を検査したところ、オートクレーブの内壁等にはポ
リマーの付着物は観察されなかった。触媒の触媒活性は2,500kg-PE/g-Ti・
hrであった。
【0222】 得られたコポリマーの粉末は、平均粒径300μmで、嵩密度0.29g/cm3 であり、極めて優れた流動性を示した。よって、得られたコポリマーの粉末は極
めて優れた粉末特性を示すことが分かった。
【0223】 結果を表1に示す。
【0224】実施例6 (トリエチルアルミニウム処理されたシリカの調製) 1gのシリカP−10[富士シリシア社(日本国)製]を窒素雰囲気下、50
0℃で6時間焼成し、脱水した。脱水シリカの表面水酸基の量は、1.1mmol/g
-SiO2であった。この脱水シリカ1gをヘキサン40ml中に分散させ、スラリー を得た。得られたスラリーにトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1M
)を5ml加え、1時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面水酸基と
を反応させ、トリエチルアルミニウム処理されたシリカと上澄み液とを含み、該
トリエチルアルミニウム処理されたシリカの全ての表面水酸基がつぶされている
反応混合物を得た。その後、得られた反応混合物中の上澄み液をデカンテーショ
ンによって除去し、ヘキサンを適量加えることにより、トリエチルアルミニウム
処理されたシリカをヘキサンに分散させた。この操作を5回繰り返し、上澄み液
中の未反応のトリエチルアルミニウムを除去した。その後、ヘキサンを適量加え
、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのヘキサンスラリー50mlを得た。
デカンテーションによって除去された上澄み液はすべて集められ、上澄み液のト
リエチルアルミニウム含有量を測定するための試験に付された。試験の結果、上
澄み液のトリエチルアルミニウム含有量は3.75mmolであることが分かった。
【0225】 (シリカに担持された触媒の調製) ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム-トリス(ペンタフルオロ フェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称す
る)1.14gをトルエン10mlに添加して溶解し、ボレートの100mMトルエ
ン溶液を得た。
【0226】 エタノール0.018mlをトリメチルアルミニウムの0.1Mトルエン溶液3
mlに0℃で30分かけて徐々に加え、得られる混合物を70℃に熱し、70℃で
1時間攪拌し、反応混合物を得た。この反応混合物を上で得られたボレートのト
ルエン溶液に室温で加え、さらにトルエンを加えてトルエン溶液中のボレート濃
度が50mMとなるようにした後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む反応混合
物を得た。
【0227】 ボレートを含むこの反応混合物1.6mlを、上で得られた、トリエチルアルミ
ニウム処理されたシリカのスラリー50mlに加え、1時間攪拌し、ボレートをシ
リカに担持した。こうして、ボレートを担持したシリカのスラリーが得られた。
【0228】 得られたスラリーに、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シ クロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以
下、「チタニウム錯体」という)10mmolをアイソパーE[エクソンケミカル社
(米国)製の液体炭化水素混合物の商品名]100mlに溶解して得られる溶液0
.6mlを加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応させた。こう
して、シリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成されている反
応混合物を得た。得られた反応混合物の上澄み液の一部をデカンテーションによ
って除去し、ヘキサンを溶媒として用いてスラリー中のシリカの濃度を調整する
ことにより、触媒活性種をシリカに担持した薄緑色の固体触媒のヘキサンスラリ
ー50mlを得た。
【0229】 (エチレンと1−ブテンとの共重合) 容量1.8lのオートクレーブにヘキサン800mlを入れ、このオートクレー
ブに加圧されたエチレンを入れてオートクレーブの内圧を10kg/cm2-Gに高め、
さらに1−ブテン5mlをオートクレーブに入れた。次いで、オートクレーブの内
温を70℃に高め、上で得られた固体触媒のスラリーを、固体触媒の重量が15
mgとなるような量だけオートクレーブに加え、エチレンと1−ブテンとの共重合
を開始した。オートクレーブの内圧が10kg/cm2-Gに維持されるようにエチレン
をオートクレーブに加えながら、30分間共重合を行った。共重合終了後、オー
トクレーブから反応混合物(コポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで
触媒を失活させた。その後、反応混合物を濾過、洗浄、乾燥し、コポリマーの乾
燥粉末70gを得た。オートクレーブの内部を検査したところ、オートクレーブ
の内壁等にはポリマーの付着物は観察されなかった。触媒の触媒活性は1,96
0kg-PE/g-Ti・hrであった。
【0230】 得られたコポリマーの粉末は、平均粒径400μmで、嵩密度0.28g/cm3 であり、極めて優れた流動性を示した。よって、得られたコポリマーの粉末は極
めて優れた粉末特性を示すことが分かった。
【0231】 結果を表1に示す。
【0232】実施例7 (トリエチルアルミニウム処理されたシリカの調製) 実施例6と同様の方法で、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのスラリ
ー50mlを得た。
【0233】 このトリエチルアルミニウム処理されたシリカのスラリーに、トリメチルアル
ミニウム5mmolとエチルアルコール5mmolとをヘキサン中で混合・反応させて得
られる反応混合物(ただし、トリメチルアルミニウムの濃度は0.1Mに調製さ
れている)0.4mlを添加し、アルミニウム化合物を含むシリカのスラリーを得
た。
【0234】 (シリカに担持された触媒の調製) ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム-トリス(ペンタフルオロ フェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称す
る)1.14gをトルエン10mlに添加して溶解し、ボレートの100mMトルエ
ン溶液を得た。
【0235】 エタノール0.018mlをトリメチルアルミニウムの0.1Mトルエン溶液3
mlに0℃で30分かけて徐々に加え、得られる混合物を70℃に加熱し、70℃
で1時間攪拌し、反応混合物を得た。この反応混合物を上で得られたボレートの
トルエン溶液に室温で加え、さらにトルエンを加えてトルエン溶液中のボレート
濃度が50mMとなるようにした後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む反応混
合物を得た。
【0236】 ボレートを含むこの反応混合物1.6mlを、上で得られた、トリエチルアルミ
ニウム処理されたシリカのスラリー50mlに加え、1時間攪拌し、ボレートをシ
リカに担持した。こうして、ボレートを担持したシリカのスラリーが得られた。
【0237】 得られたスラリーに、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シ クロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以
下、「チタニウム錯体」という)10mmolをアイソパーE100mlに溶解して得
られる溶液0.8mlを加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応
させた。こうして、シリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成
されている反応混合物を得た。得られた反応混合物の上澄み液の一部をデカンテ
ーションによって除去し、ヘキサンを溶媒として用いてスラリー中のシリカの濃
度を調整することにより、触媒活性種をシリカに担持した薄緑色の固体触媒のヘ
キサンスラリー50mlを得た。
【0238】 (エチレンと1−ブテンとの共重合) 得られた固体触媒のスラリーを、固体触媒の重量が15mgとなるような量だけ
用い、実施例1と同様の方法で共重合を行った。共重合終了後、オートクレーブ
から反応混合物(コポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活
させた。その後、反応混合物を濾過、洗浄、乾燥し、コポリマーの乾燥粉末80
gを得た。オートクレーブの内部を検査したところ、オートクレーブの内壁等に
はポリマーの付着物は観察されなかった。触媒の触媒活性は2,090kg-PE/g-
Ti・hrであった。
【0239】 得られたコポリマーの粉末は、平均粒径400μmで、嵩密度0.28g/cm3 であり、極めて優れた流動性を示した。よって、得られたコポリマーの粉末は極
めて優れた粉末特性を示すことが分かった。
【0240】 結果を表1に示す。
【0241】実施例8 (トリエチルアルミニウム処理されたシリカの調製) 実施例6と同様の方法で、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのスラリ
ー50mlを得た。
【0242】 (シリカに担持された触媒の調製) ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム-トリス(ペンタフルオロ フェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称す
る)1.14gをトルエン10mlに添加して溶解し、ボレートの100mMトルエ
ン溶液を得た。
【0243】 このボレートのトルエン溶液にエトキシジエチルアルミニウムの1Mトルエン溶
液0.5mlを室温で加え、さらにトルエンを加えてトルエン溶液中のボレート濃
度が50mMとなるようにした後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む反応混合
物を得た。
【0244】 ボレートを含むこの反応混合物1.6mlを、上で得られた、トリエチルアルミ
ニウム処理されたシリカのスラリー50mlに加え、1時間攪拌し、ボレートをシ
リカに担持した。こうして、ボレートを担持したシリカのスラリーが得られた。
【0245】 得られたスラリーに、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シ クロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以
下、「チタニウム錯体」という)10mmolをアイソパーE100mlに溶解して得
られる溶液0.8mlを加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応
させた。こうして、シリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成
されている反応混合物を得る。得られた反応混合物の上澄み液の一部をデカンテ
ーションによって除去し、ヘキサンを溶媒として用いてスラリー中のシリカの濃
度を調整することにより、触媒活性種をシリカに担持した薄緑色の固体触媒のヘ
キサンスラリー50mlを得た。
【0246】 (エチレンと1−ブテンとの共重合) 得られた固体触媒のスラリーを、固体触媒の重量が15mgとなるような量だけ
用い、実施例1と同様の方法で共重合を行った。共重合終了後、オートクレーブ
から反応混合物(コポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活
させた。その後、反応混合物を濾過、洗浄、乾燥し、コポリマーの乾燥粉末90
gを得た。オートクレーブの内部を検査したところ、オートクレーブの内壁等に
はポリマーの付着物は観察されなかった。触媒の触媒活性は1,900kg-PE/g-
Ti・hrであった。
【0247】 得られたコポリマーの粉末は、平均粒径400μmで、嵩密度0.28g/cm3 であり、極めて優れた流動性を示した。よって、得られたコポリマーの粉末は極
めて優れた粉末特性を示すことが分かった。
【0248】 結果を表1に示す。
【0249】比較例1 (トリエチルアルミニウム処理されたシリカの調製) 1gのシリカP−10[富士シリシア社(日本国)製]を窒素雰囲気下、50
0℃で6時間焼成し、脱水した。脱水シリカの表面水酸基の量は、1.1mmol/g
-SiO2 であった。この脱水シリカ1gをヘキサン40ml中に分散させ、スラリー
を得た。得られたスラリーにトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1M
)を2.5ml加え、1時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面水酸
基とを反応させ、トリエチルアルミニウム処理されたシリカと上澄み液とを含み
、該トリエチルアルミニウム処理されたシリカの全ての表面水酸基がつぶされて
いる反応混合物を得た。
【0250】 得られた反応混合物を窒素雰囲気下で濾過し、濾紙上のトリエチルアルミニウ
ム処理されたシリカを50℃のヘキサン100mlで洗浄した。このように洗浄さ
れたシリカを50℃のヘキサン40mol に再び分散し、50℃で30分間攪拌し
た。この操作を5回繰り返した。5回の洗浄操作の後、シリカを適量のヘキサン
に分散し、シリカと上澄み液とを含む50mlのスラリーを得た。スラリーの上澄
み液中に残存するトリエチルアルミニウムの量を測定するための試験を行ったと
ころ、トリエチルアルミニウムは検出されなかった。よって、得られたスラリー
は実質的にはトリエチルアルミニウムを含まないことが確かめられた。
【0251】 (シリカに担持された触媒の調製) ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム-トリス(ペンタフルオロ フェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称す
る)1.14gを適量のトルエンに添加して溶解し、ボレートの50mMトルエン
溶液を得た。
【0252】 このボレートのトルエン溶液1.6mlを、上で得られた、トリエチルアルミニ
ウム処理されたシリカのスラリー50mlに加え、1時間攪拌し、ボレートをシリ
カに担持した。こうして、ボレートを担持したシリカのスラリーが得られた。
【0253】 得られたスラリーに、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シ クロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以
下、「チタニウム錯体」という)10mmolをアイソパーE100mlに溶解して得
られる溶液0.8mlを加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応
させた。こうして、シリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成
されている反応混合物を得た。得られた反応混合物の上澄み液の一部をデカンテ
ーションによって除去し、ヘキサンを溶媒として用いてスラリー中のシリカの濃
度を調整することにより、触媒活性種をシリカに担持した薄緑色の固体触媒のヘ
キサンスラリー50mlを得た。
【0254】 (エチレンと1−ブテンとの共重合) 容量1.8lのオートクレーブにヘキサン800mlを入れ、このオートクレー
ブに加圧されたエチレンを入れてオートクレーブの内圧を10kg/cm2-Gに高め、
さらに1−ブテン5mlをオートクレーブに入れた。次いで、オートクレーブの内
温を70℃に高め、上で得られた固体触媒のスラリーを、固体触媒の重量が15
mgとなるような量だけオートクレーブに入れ、エチレンと1−ブテンとの共重合
を開始した。オートクレーブの内圧が10kg/cm2-Gに維持されるようにエチレン
をオートクレーブに入れながら、60分間共重合を行った。共重合終了後、オー
トクレーブから反応混合物(コポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで
触媒を失活させた。その後、反応混合物を濾過、洗浄、乾燥し、コポリマーの乾
燥粉末65gを得た。オートクレーブの内部を検査したところ、オートクレーブ
の内壁等にはポリマーの付着物は観察されなかった。しかし、触媒の触媒活性は
1,350kg-PE/g-Ti・hrという低さであった。
【0255】 得られたコポリマーの粉末は、平均粒径400μmで、極めて優れた流動性を
示した。しかし、嵩密度は0.23g/cm3という低さであった。
【0256】 結果を表1に示す。
【0257】実施例9 (シリカに担持された触媒の調製) 原料の量比を変えずに使用量を増加させた以外は実施例1と同じ方法で、実施
例1で製造されたのと同じ固体触媒2kgを含有するスラリーを得た。
【0258】 (エチレンと1−ヘキセンとの共重合) スラリーの形で得られたこの固体触媒の存在下で、エチレンと1−ヘキセンと
の連続共重合を、パイロットプラントで約7日間行った。この連続共重合反応は
次のような条件下で行った。反応器の内圧は、エチレンを供給することによって
10kg/cm2-Gに維持した。反応温度は70℃であった。共重合の速さは10kg/h
rに維持した。また、コポリマーの密度が0.950g/cm3となるように、1−ヘ
キセンを連続的に供給した。さらに、水素ガスを連続的に供給して、コポリマー
のメルトフローレート(以下、「MFR」と称する)を、メルトインデックス(
以下、「MI」と称する)の値が3となるように調節した。
【0259】 連続共重合の終了後、反応器を開け、内部を調べたところ、反応器の内壁等に
はポリマーの付着物は観察されなかった。触媒の触媒活性は1,730kg-PE/g-
Ti・hrであった。
【0260】 得られたコポリマーの粉末は、嵩密度が0.38g/cm3と極めて高く、平均粒 径は約250μmで、実用には十分な流動性を有していた。
【0261】 結果を表2に示す。
【0262】実施例10 (エチレンと1−ブテンとの共重合) 1−ヘキセンの代わりに1−ブテンを使う以外は実施例9と同様の方法で、エ
チレンと1−ブテンとの連続共重合を、パイロットプラントで約7日間行った。
【0263】 この連続共重合反応は次のような条件下で行った。反応器の内圧は、エチレン
を供給することによって10kg/cm2-Gに維持した。反応温度は70℃であった。
共重合の速さは10kg/hr に維持した。また、コポリマーの密度が0.935g/
cm3 となるように、1−ブテンを連続的に供給した。さらに、水素ガスを連続的
に供給して、コポリマーのMFRを、MIの値が1となるように調節した。
【0264】 約7日間の連続共重合反応の終了後、反応器を開け、内部を調べたところ、反
応器の内壁等にはポリマーの付着物は観察されなかった。触媒の触媒活性は1,
850kg-PE/g-Ti・hrであった。
【0265】 得られたコポリマーの粉末は、嵩密度が0.39g/cm3 という高さであり、平
均粒径は約250μmで、実用には十分な流動性を有していた。
【0266】 結果を表2に示す。
【0267】実施例11 (トリエチルアルミニウム処理されたシリカの調製) 100kgのシリカP−10[富士シリシア社(日本国)製]を窒素雰囲気下、
400℃で5時間焼成し、脱水した。脱水シリカの表面水酸基の量は、1.3mm
ol/g-SiO2であった。この脱水シリカ100kgをヘキサン2.5m3中に分散させ 、スラリーを得た。得られたスラリーにトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液
(濃度1M)を150l加え、得られる混合物を1時間攪拌し、シリカの表面水
酸基をトリエチルアルミニウムで化学処理した。こうして、トリエチルアルミニ
ウム処理されたシリカと上澄み液とを含み、該トリエチルアルミニウム処理され
たシリカの全ての表面水酸基がつぶされている反応混合物を得た。その後、反応
混合物中の上澄み液2m3をデカンテーションによって除去することにより、上 澄み液中の未反応のトリエチルアルミニウムの一部を除去し、ヘキサン2m3
反応混合物に加えた。こうして、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのヘ
キサンスラリーを得た。上記の、除去された上澄み液2m3 の中には、トリエチ
ルアルミニウムが約5mol 含まれていた。
【0268】 (シリカに担持された触媒の調製) ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−トリス(ペンタフルオロ
フェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称す
る)9.1kgをトルエン133lに溶解し、ボレートの60mMトルエン溶液を得
た。この溶液にトリエチルアルミニウムの1Mヘキサン溶液2.4lを加えてボ
レートとトリエチルアルミニウムとを反応させ、反応混合物を得た。
【0269】 この反応混合物を、上で得られた、トリエチルアルミニウム処理されたシリカ
のスラリーに、温度を15℃に維持しながら加え、ボレートをシリカに担持した
。こうして、ボレートを担持したシリカのスラリーが得られた。
【0270】 得られたスラリーに、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シ クロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以
下、「チタニウム錯体」という)の0.1MアイソパーE溶液60lを、温度を
15℃に維持しながら加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応
させた。こうして、シリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成
されている反応混合物を得た。この反応混合物を静置した後、この反応混合物の
上澄み液2m3をデカンテーションによって除去し、ヘキサンを溶媒として用い てスラリー中のシリカの濃度を調整することにより、触媒活性種をシリカに担持
した薄緑色の固体触媒のヘキサンスラリーを得た。
【0271】 (エチレンと1−ブテンとの共重合) スラリーの形で得られたこの固体触媒の存在下で、エチレンと1−ブテンとの
連続共重合を、工業的規模のパイロットプラントで約4日間行った。この連続共
重合反応は次のような条件下で行った。反応器の内圧は、エチレンを供給するこ
とによって10kg/cm2-Gに維持した。反応温度は75℃であった。共重合の速さ
は10kg/hr に維持した。また、コポリマーの密度が0.941g/cm3となるよ うに、1−ブテンを連続的に供給した。さらに、水素ガスを連続的に供給して、
コポリマーのMFRを、MIの値が5となるように調節した。
【0272】 連続共重合の終了後、反応器を開け、内部を調べたところ、反応器の内壁等に
はポリマーの付着物は観察されなかった。触媒の触媒活性は2,050kg-PE/g-
Ti・hrであった。
【0273】 得られたコポリマーの粉末は、嵩密度が0.33g/cm3と極めて高く、平均粒 径は約300μmで、実用には十分な流動性を有していた。
【0274】 結果を表2に示す。
【0275】 比較例2 (トリエチルアルミニウム処理されたシリカの調製) 実施例1と同様の方法で、トリエチルアルミニウム処理されたシリカ1kg相当
のスラリー50lを得た。
【0276】 (シリカに担持された触媒の調製) トリエチルアルミニウム50molを、実施例1と同様の方法で得られた、ビス (水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム-トリス(ペンタフルオロフェニ ル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称する)の
溶液(濃度100mM)10lに加え、さらにトルエンを加えて溶液中のボレート
濃度が50mMとなるようにした後、攪拌し、ボレートを含む反応混合物を得た。
この反応混合物1.6lを、上で得られたシリカのスラリー50lに加え、1時
間攪拌した。
【0277】 こうして得られた反応混合物に、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル
−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタ ジエン(以下、「チタニウム錯体」という)10mol をアイソパーE100lに
溶解して得られる溶液0.8lを加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレー
トとを反応させた。こうして、シリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリ
カ上に形成されている反応混合物を得た。得られた反応混合物の上澄み液の一部
をデカンテーションによって除去し、ヘキサンを溶媒として用いてスラリー中の
シリカの濃度を調整することにより、触媒活性種をシリカに担持した薄緑色の固
体触媒のヘキサンスラリーを得た。
【0278】 (エチレンと1−ヘキセンとの共重合) スラリーの形で得られたこの固体触媒の存在下で、エチレンと1−ヘキセンと
の連続共重合を、実施例4と同様の方法で行い、エチレンと1−ヘキセンとのコ
ポリマーを得た。触媒の触媒活性は5,500kg-PE/g-Ti・hrであった。
【0279】 連続共重合の終了後、反応器を開け、内部を調べたところ、反応器の内壁等に
ポリマーの付着物が観察された。触媒の触媒活性は1,350kg-PE/g-Ti・hrで
あった。
【0280】 得られたコポリマーの粉末は、平均粒径が約200μmで、嵩密度は0.23
g/cm3であった。
【0281】 結果を表2に示す。
【0282】
【表1】
【0283】
【表2】
【0284】
【産業上の利用可能性】
本発明のオレフィン重合用触媒は、高い重合活性を有する点のみならず、粉体
性状に優れたオレフィン系ポリマーを、懸濁重合(スラリー重合)や気相重合に
よって、重合器の内壁、攪拌羽根等に付着させることなく製造できるという点に
おいて、有利である。このような優れた性質を有するために、本発明の触媒は、
粉体性状に優れたオレフィン系ポリマーを工業的規模のプラントの連続運転によ
って効率的に製造することを可能にする。本発明の触媒を用いて製造されるオレ
フィン系ポリマーは、フィルム、成形品(吹込成形品、射出成形品、回転成形品
等)、ファイバー、パイプ、電送ケーブルや電線のための塗装・被覆材料等の各
種製品の製造に有利に用いることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J028 AA01A AB01A AC01A AC09A AC19A AC27A BA00A BA01B BA02B BB00A BB01B BB02B BC16B BC17B BC18B BC20B BC24B CA24C CA25C CA26C CA27C CA28C CA29C CB64B CB65B CB94B EB01 EB02 EB03 EB04 EB05 EB07 EB08 EB09 EB10 EB13 EB16 EC01 EC02 EC03 FA03 FA04

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)環状アニオン配位子がη結合してなる遷移金属を含む
    遷移金属化合物、 (B)該遷移金属化合物(A)のモル量に対して0.5〜10倍モル量の下記
    の成分(B−1)と該成分(B−1)のモル量に対して0.05〜20倍モル量
    の下記の成分(B−2)との混合物: (B−1)カチオン及び両立性の非配位性アニオンを含み、且つ該遷移金属化
    合物(A)と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活
    性化化合物、及び (B−2)下記の式(1): MRnm-n (1) (式中、 Mは周期表第1族〜第15族に属する元素群から選ばれる元素を表し、 Rは、各々独立して、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキ
    ル基、または炭素数6〜20のアリール基を表し、 Xは、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1〜10のアルコキシ
    ド基を表し、 mはMの形式酸化数であり、 nは1〜mの整数であって、mは上で定義した通りである) で表される有機金属化合物、 (C)実質的に水酸基を有しない固体成分、及び、場合によっては (D)有機アルミニウム化合物、 を含み、 該成分(A)〜(C)、及び場合によっては該成分(D)を接触させて得られ
    る ことを特徴とするオレフィン重合用触媒。
  2. 【請求項2】 該遷移金属化合物(A)が下記の式(2)で表されることを
    特徴とする、請求項1に記載のオレフィン重合用触媒: LjkMXpX’q (2) (式中、 Lは、各々独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロ
    インデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒド
    ロフルオレニル基からなる群より選ばれるη結合性環状アニオン配位子を表し、
    該配位子は場合によっては1〜8個の置換基を有し、該置換基は各々独立して炭
    素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のハロゲン置換炭化
    水素基、炭素数1〜12のアミノヒドロカルビル基、炭素数1〜12のヒドロカ
    ルビルオキシ基、炭素数1〜12のジヒドロカルビルアミノ基、炭素数1〜12
    のヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、炭素数1〜12
    のヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基からなる群より選ばれる、2
    0個までの非水素原子を有する置換基であり; Mは、形式酸化数が+2、+3または+4の周期表第4族に属する遷移金属群
    から選ばれる遷移金属であって、少なくとも1つの配位子Lにη5 結合している
    遷移金属を表し; Wは、50個までの非水素原子を有する2価の置換基であって、LとMとに各
    々1価ずつの価数で結合し、これによりL及びMと共働してメタロサイクルを形
    成する2価の置換基を表し; Xは、各々独立して、1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する
    2価のアニオン性σ結合型配位子、及びLとMとに各々1価ずつの価数で結合す
    る2価のアニオン性σ結合型配位子からなる群より選ばれる、60個までの非水
    素原子を有するアニオン性σ結合型配位子を表し; X′は、各々独立して、40個までの非水素原子を有する中性ルイス塩基配位
    性化合物を表し; jは1または2であり、但し、jが2である時、場合によっては2つの配位子
    Lが、20個までの非水素原子を有する2価の基を介して互いに結合し、該2価
    の基は炭素数1〜20のヒドロカルバジイル基、炭素数1〜12のハロヒドロカ
    ルバジイル基、炭素数1〜12のヒドロカルビレンオキシ基、炭素数1〜12の
    ヒドロカルビレンアミノ基、シランジイル基、ハロシランジイル基及びシリレン
    アミノ基からなる群より選ばれる基であり; kは0または1であり; pは0、1または2であり、但し、Xが1価のアニオン性σ結合型配位子、ま
    たはLとMとに結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pは
    Mの形式酸化数より1以上小さい整数であり、またXがMにのみ結合している2
    価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数より(j+1)
    以上小さい整数であり; qは0、1または2である)。
  3. 【請求項3】 該遷移金属化合物(A)が下記の式(3)で表されることを
    特徴とする、請求項1に記載のオレフィン重合用触媒: 【化1】 (式中、 Mは、チタン、ジルコニウム及びハフニウムからなる群より選ばれる遷移金属
    であって、形式酸化数が+2、+3または+4である遷移金属を表し; R3 は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、シリル基、ゲ
    ルミル基、シアノ基、ハロゲン原子及びこれらの複合基からなる群より選ばれる
    、20個までの非水素原子を有する置換基を表し、但し、該置換基R3 が炭素数
    1〜8の炭化水素基、シリル基またはゲルミル基である時、場合によっては2つ
    の隣接する置換基R3 が互いに結合して2価の基を形成し、これにより該2つの
    隣接する該置換基R3 にそれぞれ結合するシクロペンタジエニル環の2つの炭素
    原子間の結合と共働して環を形成し; X″は、各々独立して、ハライド、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜
    18のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜18のヒドロカルビルアミノ基、シ
    リル基、炭素数1〜18のヒドロカルビルアミド基、炭素数1〜18のヒドロカ
    ルビルフォスフィド基、炭素数1〜18のヒドロカルビルスルフィド基及びこれ
    らの複合基からなる群より選ばれる、20個までの非水素原子を有する置換基を
    表し、但し、場合によっては2つの置換基X″が共働して炭素数4〜30の中性
    共役ジエンまたは2価の基を形成し; Yは、−O−、−S−、−NR*−または−PR*−を表し、但し、R* は、水
    素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜8のヒドロカルビルオキシ基
    、シリル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のハロゲン
    化アリール基、またはこれらの複合基を表し; ZはSiR* 2、CR* 2、SiR* 2SiR* 2、CR* 2CR* 2、CR*=CR*、C
    * 2SiR* 2またはGeR* 2を表し、但し、R* は上で定義した通りであり; nは1、2または3である)。
  4. 【請求項4】 該遷移金属化合物(A)が下記の式(4)または(5)で表
    されることを特徴とする、請求項1に記載のオレフィン重合用触媒: 【化2】 【化3】 (式中、 Mは、チタン、ジルコニウム及びハフニウムからなる群より選ばれる遷移金属
    であって、形式酸化数が+2、+3または+4である遷移金属を表し; R3 は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、シリル基、ゲ
    ルミル基、シアノ基、ハロゲン原子及びこれらの複合基からなる群より選ばれる
    、20個までの非水素原子を有する置換基を表し、但し、置換基R3 が炭素数1
    〜8の炭化水素基、シリル基またはゲルミル基である時、場合によっては2つの
    隣接する置換基R3 は互いに結合して2価の基を形成し、これにより該2つの隣
    接する該置換基R3 とそれぞれ結合するシクロペンタジエニル環の2つの炭素原
    子間の結合と共働して環を形成し; Xは、各々独立して、ハライド、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜1
    2のヒドロカルビルオキシ基、炭素数2〜12のジ(ヒドロカルビル)アミド基
    、炭素数2〜12のジ(ヒドロカルビル)フォスフィド基、炭素数1〜12のヒ
    ドロカルビルスルフィド基、シリル基及びこれらの複合基からなる群より選ばれ
    る、20個までの非水素原子を有する置換基、またはアリル基、2−(N,N−
    ジメチルアミノメチル)フェニル基及び2−(N,N−ジメチルアミノ)ベンジ
    ル基からなる群より選ばれる安定化アニオン配位子、または炭素数4〜30の共
    役ジエンに由来する2価の基を表し、但し、場合によっては該2価の基XとMと
    が共働してメタロシクロペンテン基を形成し; X′は、各々独立して、非置換または少なくとも1つの炭素数1〜12の炭化
    水素基で置換された、40個までの炭素原子を有する中性の共役または非共役ジ
    エンであって、Mと共働してπ型錯体を形成するジエンを表し; Yは、−O−、−S−、−NR*−または−PR*−を表し、但し、R*は、水 素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜8のヒドロカルビルオキシ基
    、シリル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のハロゲン
    化アリール基またはこれらの複合基を表し; ZはSiR* 2、CR* 2、SiR* 2SiR* 2、CR* 2CR* 2、CR*=CR*、C
    * 2SiR* 2またはGeR* 2を表し、但し、R* は上で定義した通りであり; pは0、1または2であり; qは0または1であり、但し: pが2で且つqが0である時は、Mの形式酸化数は+4であり、且つXは、各
    々独立して、ハライド、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜12のヒドロ
    カルビルオキシ基、炭素数2〜12のジ(ヒドロカルビル)アミド基、炭素数2
    〜12のジ(ヒドロカルビル)フォスフィド基、炭素数1〜12のヒドロカルビ
    ルスルフィド基、シリル基及びこれらの複合基からなる群より選ばれる、20個
    までの非水素原子を有する置換基を表し; pが1で且つqが0である時は、Mの形式酸化数は+3であり、且つXはアリ
    ル基、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェニル基及び2−(N,N−ジ
    メチルアミノ)ベンジル基からなる群より選ばれる安定化アニオン配位子を表す
    か、または、Mの形式酸化数は+4であり、且つXは炭素数4〜30の共役ジエ
    ンに由来する2価の基を表すか、あるいはXとMとが共働してメタロシクロペン
    テン基を形成し; pが0で且つqが1である時は、Mの形式酸化数は+2であり、且つX′は非
    置換または少なくとも1つの炭素数1〜12の炭化水素基で置換された、40個
    までの炭素原子を有する中性の共役または非共役ジエンを表し、該共役ジエンは
    Mと共働してπ型錯体を形成する)。
  5. 【請求項5】 該遷移金属化合物(A)が下記の式(6)で表されることを
    特徴とする、請求項1に記載のオレフィン重合用触媒: 【化4】 (式中、 Mはチタンを表し; Xは、s−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s− トランス−η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−トランス−η4-1, 4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、s−トランス−η4-2,4−ヘキサジエ
    ン、s−トランス−η4−1,3−ペンタジエン、s−トランス−η4-1,4− ジトリル−1,3−ブタジエン、及びs−トランス−η4-1,4−ビス(トリメ
    チルシリル)−1,3−ブタジエンからなる群より選ばれるs−トランスジエン
    、またはs−シス−η4-1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s−シス−
    η4-3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−シス−η4-1,4−ジベンジル−
    1,3−ブタジエン、s−シス−η4-2,4−ヘキサジエン、s−シス−η4-1
    ,3−ペンタジエン、s−シス−η4-1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、
    及びs−シス−η4-1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエンか
    らなる群より選ばれるs−シスジエンであって、上記s−シスジエンはMと共働
    してπ型錯体を形成し; R3 は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、シリル基及
    びこれらの複合基からなる群より選ばれる置換基を表し、但し、置換基R3 が炭
    素数1〜10の炭化水素基またはシリル基である際には、場合によっては2つの
    隣接する置換基R3 は互いに結合して2価の基を形成し、これにより該2つの隣
    接する置換基R3 にそれぞれ結合するシクロペンタジエニル環の2つの炭素原子
    間の結合と共働して環を形成し; R3'は炭素数1〜10のヒドロカルビル基を表し; R3″は、各々独立して、水素原子または炭素数1〜10のヒドロカルビル基 を表し; Eは、各々独立して珪素原子または炭素原子を表し; mは1または2である)。
  6. 【請求項6】 該活性化化合物(B−1)が下記の式(7)で表されること
    を特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒: [L−H]d+[Mm+p]d- (7) (式中、 [L−H]d+はプロトン供与性のブレンステッド酸を表し、但し、 Lは中性のルイス塩基を表し、 dは1〜7の整数であり; [Mm+p]d-は両立性の非配位性アニオンを表し、但し、 Mは、周期表第5族〜第15族のいずれかに属する金属またはメタロイドを表
    し、 Qは、各々独立して、ヒドリド、ハライド、炭素数2〜20のジヒドロカルビ
    ルアミド基、炭素数1〜30のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜30の炭化
    水素基、及び炭素数1〜40の置換された炭化水素基からなる群より選ばれ、但
    し、ハライドであるQの数は1以下であり、 mは1〜7の整数であり、 pは2〜14の整数であり、 dは上で定義した通りであり、 p−m=dである)。
  7. 【請求項7】 該活性化化合物(B−1)が下記の式(8)で表されること
    を特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒: [L−H]d+[Mm+n{Gq(T−H)r}z]d- (8) (式中、 [L−H]d+はプロトン供与性のブレンステッド酸を表し、但し、 Lは中性のルイス塩基を表し、 dは1〜7の整数であり; [Mm+n{Gq(T−H)r}z]d-は両立性の非配位性アニオンを表し、但し、 Mは、周期表第5族〜第15族のいずれかに属する金属またはメタロイドを表
    し、 Qは、各々独立して、ヒドリド、炭素数2〜20のジアルキルアミド基、炭素
    数1〜20のアルコキシド基、炭素数6〜30のアリールオキシド基、炭素数1
    〜30の炭化水素基、炭素数1〜40のハロゲン置換炭化水素基及び炭素数1〜
    40のヒドロカルビル−またはハロヒドロカルビル−置換オルガノメタロイド基
    からなる群より選ばれ、但し、ハライドであるQの数は1以下であり、 Gは、各々独立して、(r+1)価の炭素数1〜30の多価炭化水素基を表し
    、Tは、−O−、−S−、−NR−または−PR−を表し、但し、Rは、水素原
    子、炭素数1〜12のヒドロカルビル基、炭素数1〜8のトリヒドロカルビルシ
    リル基または炭素数1〜8のトリヒドロカルビルゲルマニウム基を表し; mは1〜7の整数であり、 nは0〜7の整数であり、 qは0または1であり、 rは1〜3の整数であり、 zは1〜8の整数であり、 dは上で定義した通りであり、 n+z−m=dである)。
  8. 【請求項8】 該活性化化合物(B−1)が下記の式(9)で表されること
    を特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒: [L−H]+[BQ3Q′]- (9) (式中、 [L−H]+ はプロトン供与性のブレンステッド酸を表し、但し、 Lは、炭素、窒素、リンまたは硫黄を含有する中性のルイス塩基を表し; [BQ3Q′]-は両立性の非配位性アニオンを表し、但し、 Qは、各々独立して、非置換または炭素数1〜12の炭化水素基及びハロゲン
    原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換基で置換された炭素数6〜2
    0のアリール基を表し、 Q′は、水酸基で置換された炭素数6〜20のアリール基を表す)。
  9. 【請求項9】 前記式(1)中のMが周期表第2族及び第13族〜第15族
    に属する元素群から選ばれる元素を表し、式(1)中のR、X、m及びnが式(
    1)で定義した通りであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の
    オレフィン重合用触媒。
  10. 【請求項10】 該有機金属化合物(B−2)が下記の式(10)で表され
    ることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒: AlRn3-n (10) (式中、 Rは、各々独立して、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキ
    ル基または炭素数6〜20のアリール基を表し; Xは、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1〜10のアルコキシ
    基を表し; nは1、2または3である)。
  11. 【請求項11】 該固体成分(C)が、シリカ、アルミナ、マグネシア、塩 化マグネシウム、ジルコニア、チタニア、酸化硼素、酸化カルシウム、酸化亜鉛
    、酸化バリウム、五酸化バナジウム、酸化クロム、酸化トリウム、これらの混合
    物及び複合酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の物質であり、且つ実
    質的に水酸基を有しない物質であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれ
    かに記載のオレフィン重合用触媒。
  12. 【請求項12】 該固体成分(C)が、シリカを150℃以上の温度で加熱
    処理に付し、これにより該シリカ1g当たり0.05〜10mmolの水酸基をその
    表面に有してなる前処理されたシリカを得、そして該前処理されたシリカの表面
    に存在する水酸基のモル量の1〜5倍モル量の有機金属化合物を用いて該前処理
    されたシリカを処理することを包含する方法によって得られる、実質的に水酸基
    を有しない処理されたシリカであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれ
    かに記載のオレフィン重合用触媒。
  13. 【請求項13】 該触媒の任意の成分である有機アルミニウム化合物(D)
    が、下記の式(10)で表されることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに
    記載のオレフィン重合用触媒: AlRn3-n (10) (式中、 Rは、各々独立して、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキ
    ル基または炭素数6〜20のアリール基を表し; Xは、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1〜10のアルコキシ
    ド基を表し; nは1、2または3である)。
  14. 【請求項14】 下記の工程(i)〜(iii)を包含する方法によって製造 されることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のオレフィン重合用触
    媒: (i)該活性化化合物(B−1)と該有機金属化合物(B−2)とを互いに十
    分に混合し、接触させて、該成分(B)を得る工程、 (ii)該成分(B)と該固体成分(C)とを互いに十分に混合し、接触させて
    、成分(B)及び(C)の混合物を得る工程、 (iii) 該遷移金属化合物(A)と該成分(B)及び(C)の混合物とを互い に十分に混合し、接触させる工程、 但し、場合によっては、上記工程 (iii)で用いられる成分(A)及び上記工程
    (ii) で用いられる成分(C)からなる群より選ばれる少なくとも1つが、該成
    分(D)との混合物の形で用いられ、また、場合によっては、上記工程 (iii) の前に、工程 (ii)において得られる混合物に成分(D)を添加する。
  15. 【請求項15】 請求項1に記載のオレフィン重合用触媒の存在下に、エチ
    レンを単独重合させるか、または、エチレンを、式 H2C=CHR(式中、Rは
    、メチル基、エチル基、炭素数3〜18の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキ
    ル基または炭素数6〜20のアリール基である)で表されるα−オレフィン、炭
    素数3〜20の環状オレフィン、及び炭素数4〜20の直鎖状、分岐状もしくは
    環状のジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種のコモノマーと共重合させ
    る、ことを特徴とするエチレンホモポリマーまたはエチレン系コポリマーの製造
    方法。
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JP2013144151A (ja) * 2006-01-05 2013-07-25 Astra Tech Inc 歯科用インプラントのためのカスタム修復の設計方法及びシステム

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