JP4245771B2 - 耐プラズマ部材、電磁波透過窓用部材およびプラズマ処理装置 - Google Patents

耐プラズマ部材、電磁波透過窓用部材およびプラズマ処理装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス、該ガラスからなる部材および該部材を用いたプラズマ処理装置に関し、特にAlを含有することにより耐プラズマ性を有するガラス、該ガラスからなる電磁波透過窓用部材および該部材を用いたプラズマ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
LSIやLCD等の製造プロセスにおいて、反応ガスに外部からエネルギーを与えて生じさせるプラズマは、エッチング、CVD等の製造工程に広く用いられている。特に、エッチングプロセスにおいては、プラズマの利用は不可欠の技術となっている。そして、プラズマによって処理される基板の寸法が大きくなるに従い、より広い領域にプラズマを均一に発生させることが必要になってきた。
【0003】
図1および図2はそのようなプラズマ処理装置の一例である。図1に示すプラズマ処理装置は、直方体形状の反応器31を有し、反応器31の全体はアルミニウムで形成される。反応器31の上部開口は板34によって封止され、反応器31の気密が保持される。板34は、耐熱性およびマイクロ波透過性を有するとともに誘電損失が小さい材料、たとえば石英ガラス(SiO2)で形成されている。反応器31には、その上部を覆う長方体形状のカバー部材40が設けられる。カバー部材40内の天井部分には誘電体線路41が取り付けてある。誘電体線路41は、テフロン(登録商標)のようなフッ素樹脂、ポリエチレン樹脂またはポリスチレン樹脂等の誘電体からなる。誘電体線路41は、板状の部分41bとその端部につながり厚みが増したテーパ状部分41aを有し、テーパ状部分41aはカバー部材40に連結された導波管51内に嵌め込まれている。導波管51にはマイクロ波発振器50が接続される。マイクロ波発振器50からのマイクロ波は、導波管51を介して誘電体線路41のテーパ状部分41aに導入される。マイクロ波はテーパ状部分41aにおいて拡げられ、誘電体線路41の全体に伝播する。マイクロ波はカバー部材40の導波管51に対向する端面で反射し、入射波と反射波とが重ね合わされて誘電体線路41に定在波が形成される。内部に処理室32を形成する反応器31の壁には、ガス導入管35が嵌め込まれている。処理室32の底部中央には、試料Wを載置する台33が設けてあり、台33にはマッチングボックス36を介して数百kHz〜十数MHzのRF電源37が接続される。また、反応器31の側底部には排気口38が設けられる。
【0004】
このプラズマ処理装置において試料Wの表面に例えばエッチング処理を施すには、排気口38から排気して処理室32内を所望の圧力まで減圧した後、ガス導入管35から処理室32内に反応ガスを供給する。次いで、マイクロ波発振器50からマイクロ波を発振させ、導波管51を介して誘電体線路41に導入する。このとき、テーパ状部分41aによってマイクロ波は誘電体線路41内で均一に拡がり、そして定在波が形成される。この定在波から、誘電体線路41の下方に漏れ電界が形成され、それが板34を透過して処理室32内へ導入される。このようにして処理室32内に伝播したマイクロ波により、反応ガスを収容する処理室32内にプラズマが形成され、さらにRF電源37からマッチングボックス36を通して台33にRFを印加することにより、試料Wの表面がエッチングされる。この装置では、大寸法の試料Wを処理すべく反応器31の直径を大きくしても、反応器31の全領域へマイクロ波を均一に導入することができ、試料Wを比較的均一にプラズマ処理することができる。
【0005】
このようなプラズマ処理装置には、本来必要とされるエッチング性能や成膜性能以外に、低コンタミ性能、低パーティクル性能、消耗部品の長寿命性、運用費用の低価格性、メンテナンス作業容易性といった性能も合わせて要求されている。そのような性能を満足するために、反応器およびその内部を構成する部材の材質は、その必要性に合わせて石英ガラス、アルミニウム、アルミナ、ステンレス等が選択される。これらの材料の中で、石英ガラスは低コンタミ性と低パーティクル性を持つ絶縁性部材として有用である。たとえば、上述したプラズマ処理装置において、反応器31の開口を閉じマイクロ波供給部と反応器31とを仕切る板34は、処理室32内にマイクロ波を導入するための窓として機能し、従来、この窓には石英ガラス製のものが使用されてきた。
【0006】
しかし、石英ガラスは上記のような優れた性質を持つ一方、フッ素を含むプラズマと容易に反応し、SiF4を生成する。SiF4は沸点が低く容易に気化するため、フッ素を含むプラズマ中で石英ガラスは急速にエッチングされ消耗する。LSI製造に使用される石英ガラスは特に高純度の物が使用されるので価格が高く、消耗が激しいと製造コストを押し上げる要因となる。また、消耗が激しいと交換頻度が高くなり、製造時間に対する交換作業時間が増加し、結果的として処理能率を落として製造コストを上昇させる。
【0007】
この問題について、特開平4−356922号公報は、高純度多結晶アルミナまたは高純度単結晶アルミナで作られたプラズマ放電部材を開示する。この部材は、マイクロ波を透過させる性質を有し、CF4+O2ガスから生成されるプラズマに対して耐性を有する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、同公報に開示されるようなアルミナ製プラズマ放電部材をマイクロ波導入窓として使用する場合、エッチング速度が低下したり、発熱でアルミナがひずんでマイクロ波導入窓が破損するおそれがあった。本発明者は、アルミナからなるマイクロ波導入窓を使用した場合に生じる不都合のうち、プラズマ処理速度が低下する原因について調査を行った。その結果、プラズマ処理中マイクロ波導入窓の温度が高くなり、それに従ってアルミナの誘電損失が大きくなって(Q値は小さくなって)マイクロ波を透過しにくくなり、このためにプラズマ処理の速度が低下することがわかった。また石英ガラスに比べてアルミナ板は熱膨張率が大きいため、高温になった場合あるいは大きな温度分布を生じた場合に大きな熱応力が発生して、割れを生じることがわかった。また、アルミナ等のセラミックスは、焼結成形のために焼結助剤を含有しており、それがコンタミネーションの原因となる場合もある。
【0009】
かくして本発明は、上記課題を解決するべく、良好な耐プラズマ性を有する新規な材料を提供することを目的とする。
【0010】
特に本発明は、石英ガラスに関する上記課題を解決し、石英ガラスと同様の優れた特性を有する一方、特にフッ素を含むプラズマに対する耐食性を備える部材を提供することを目的とする。
【0011】
さらに本発明は、そのような耐プラズマ性を有する材料の用途を提供するとともに、そのような材料からなる部品を使用したプラズマ処理装置を提供することにある。
【0012】
特に本発明は、高密度のプラズマを発生させるために十分な電磁波透過性を有し、プラズマを生成させても石英ガラスのようにエッチングされず、しかもアルミナのように割れを生じずに寿命が長いプラズマ処理装置用部材、およびそれを用いたプラズマ処理装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明により新規な耐プラズマ部材が提供され、当該耐プラズマ部材は、SiおよびOからなる第1のガラス相と、Si、AlおよびOからなる第2のガラス相とからなり、第2のガラス相において、AlのSiに対する質量比が0.01以上であることを特徴とするガラスからなる
【0014】
また本発明により、当該耐プラズマ部材からなり、電磁波を透過する窓を構成するためのものである電磁波透過窓用部材が提供される。
【0015】
さらに本発明により、電磁波を用いて生成されるプラズマにより処理を行うプラズマ装置が提供される。当該装置において、電磁波を透過させ、プラズマを生成する室に電磁波を導入するための部材は、上記耐プラズマ部材からなる。
【0016】
本発明によるプラズマ処理装置は、たとえば、内部を減圧可能な反応容器と、反応容器へ高周波電力または電磁波を供給するための手段と、反応容器内ヘガスを供給するため手段と、反応容器内において被処理材を載置する試料台とを備え、高周波電力または電磁波によって反応容器内に生成されるプラズマに接触する部分の少なくとも一部が、上記耐プラズマ部材からなることを特徴とする。
【0017】
また本発明によるプラズマ処理装置は、たとえば、封止部材で開口部が塞がれた内部を減圧可能な反応容器と、該封止部材を介して反応容器内へ高周波電力または電磁波を供給するための手段と、反応容器内ヘガスを供給するための手段と、反応容器内において被処理材を載置する試料台とを備え、該封止部材が上記耐プラズマ部材からなることを特徴とする。
【0018】
本発明による装置は、特に、フッ素を含むガスからプラズマを生成させるプラズマ処理装置に有用である。また、本発明による部材は、特にフッ素含有ガスから生成されるプラズマに晒される用途に有用である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明によるガラスは、溶融法により製造することができる。石英粉末にアルミナ(Al23)またはムライト(3Al23・2SiO2)等のアルミニウム含有酸化物の粉末を混合し、その混合物を2000℃以上の温度に加熱することにより完全に溶融させて均質な溶融物を得、次いで、溶融物を冷却して固化させる。加熱温度は、2000℃以上であるが、2050℃以上がより好ましい。加熱は、酸水素炎(酸水素炎溶融法)あるいは電気炉(電気溶融法)によって行うことができる。添加するアルミニウム含有酸化物の量は、最終的に生成されるSi、AlおよびOからなるガラス相においてAlのSiに対する質量比が0.01以上となるよう設定される。具体的には、石英粉末100重量部に対し、0.1〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部のアルミニウム含有酸化物の粉末が添加される。石英粉末には、純度の高いものが使用され、たとえば、99.9%以上、好ましくは99.99%以上の純度の石英粉末が使用される。上述のように混合物を2000℃以上に加熱して溶融させた後、冷却固化させることで、SiおよびOからなる第1のガラス相と、Si、AlおよびOからなる第2のガラス相とからなるガラスを得る。このガラスを機械加工することにより、必要な形状の部材を得ることができる。
【0020】
図3に、走査型電子顕微鏡で観察された本発明によるガラスの組織の一例を示す。ガラスの組織には、色の濃い部分(図中、「濃」と表示)と色の淡い部分(図中、「淡」と表示)とが観察される。本発明によるガラスにおいて、色の濃い部分はSiおよびOからなる第1のガラス相であり、色の淡い部分はSi、AlおよびOからなる第2のガラス相である。通常、本発明によるガラスは、第2のガラス相中に第1のガラス相が分散された組織を有する。そして、第1のガラス相は、連続相である第2のガラス相中にほぼ均一に分散している。第2のガラス相中に分散される第1のガラス相の平均粒径は、通常100〜500μmである。SiおよびOからなる第1のガラス相は、SiO2の組成を有する石英ガラス相である。一方、Si、AlおよびOからなる第2のガラス相は、ガラスを構成する網目構造中にAlが添加された網目構成体を形成している。第2のガラス相は、Al−O結合およびAl−O−Si結合を有する。このような第1のガラス相および第2のガラス相からなる組織は、原料を2000℃以上の温度で加熱することによって得られるものであり、それより低い温度(たとえば1700〜1900℃)での加熱によっては得ることができない。
【0021】
本発明者は上述したようなミクロ組織を有する本発明のガラスが好ましい耐プラズマ性を有することを見出した。ハロゲン系(特にF系)の反応ガスから生成されるプラズマのエッチング機構は、ハロゲン系反応生成物を生成させる第1段階と、ハロゲン系反応生成物が気化または残留する第2段階とに分けられる。そして第1段階で生成されるハロゲン系反応生成物のうち第2段階で残留する量が多い部材ほどプラズマに対する耐久性が高くなる。F系の反応ガスから生成されるプラズマが従来の石英ガラス部材に照射される場合、第1段階でシリコンのフッ化物(SiF4)が生成され、第2段階ではSiF4が容易に気化する。したがって従来の石英ガラス部材は当該プラズマに対する耐久性が低い。これに対し、ミクロ組織として上述したようなSi、AlおよびOからなる第2のガラス相を有する本発明のガラスの場合、第1段階でSiF4の他にアルミニウムのフッ化物(例えばAlF3)が生成する。次に第2段階でAlF3はSiF4よりも蒸気圧が低いため、SiF4が容易に気化するのに対してAlF3は表面に残留する。このため本発明によるガラスは、ハロゲン(特にF)を含むプラズマに対して耐久性が高い。
【0022】
ところで、このプラズマ耐久性は、本発明によるガラスにおいて第2のガラス相におけるAlのSiに対する質量比(Al/Si)が0.01以上の場合に得ることができる。Al/Siが0.01よりも低い場合、AlF3の生成が非常に少ないため、プラズマに対する耐久性は向上しない。質量比Al/Siは、たとえば、0.01以上であり、より好ましくは0.2以上である。また、本発明によるガラス組織の断面を写した光学顕微鏡写真または電子顕微鏡写真において、第2のガラス相の面積が占める割合(全体に対する第2のガラス相の面積百分率)は、耐久性の観点から20%以上が好ましい。この面積百分率が20%よりも少ない場合、SiおよびOからなる耐久性の低い第1のガラス相の割合が多くなるため、部材がプラズマによってエッチングされる量が大きくなる。
【0023】
また、本発明によるガラスをマイクロ波透過窓(反応室の封止材)として使用する場合、マイクロ波透過性を示すfQ値が20000以上であることが好ましい。fQ値が20000よりも小さい場合、当該部材によりマイクロ波が吸収され、十分な密度をもったプラズマが発生しなかったり、装置内に均一なプラズマが発生しないおそれが生じる。ここでfQ値とは、周波数f(Hz)と、当該周波数における誘電体損失(tanδ)の逆数であるQ値との積である。
【0024】
また、本発明によるガラスはアルミナと比較して顕著に熱膨張係数が小さい。このため、本発明によるガラスからなる部材をマイクロ波導入窓に使用しても、アルミナと違って熱応力によって割れを発生させることはない。
【0025】
本発明によるガラスは種々の用途に適用し得る。特に本発明によるガラスは、耐プラズマ部材として適用できる。そのような部材は、たとえば上述したマイクロ波導入窓等のプラズマ処理装置用部品である。以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
【実施例】
ガラスの製造
次に述べる方法により本発明によるガラスを作製した。
【0027】
純度99.99%の石英粉末と、アルミナ(Al23)粉末との混合物を溶融炉に入れ、酸水素炎によって2050℃以上の温度に加熱した。原料を完全に溶融・均質化し、その後、冷却、固化させた。そのようにして得られたガラスに機械加工を行い、必要な形状の部材を得た。この時、アルミナの添加量を変えた種々のガラスを製作した。
【0028】
次に、上述した方法で作製されたガラスのミクロ組織を以下の方法で観察した。作製したガラスから小片を切り出し、一面を鏡面研磨した後、硝弗酸で表面を洗浄した。その後、洗浄した表面を走査型電子顕微鏡で観察した。この方法で試料を観察した結果、図3に示すような組織が観察された。図3に示すように、表面には淡部と濃部が観察された。それぞれの部分の組成をエネルギー分散X線分光法で調査したところ、濃部の成分はSiおよびOであり、淡部の成分はSi、AlおよびOであることが判明した。
【0029】
次に、前記種々のガラスについてSi、AlおよびOからなる第2のガラス相におけるAlのSiに対する質量比(Al/Si)を、検量線を用いたエネルギー分散X線分光法による定量分析によって求めた。検量線を作成するための標準試料としてあらかじめ組成が判明している石英ガラス、ムライト(3Al23・2SiO2)の焼結体、A123の焼結体、コージェライト(2MgO・2A123・5SiO2)の焼結体、サフィリン(4MgO・5Al23・2SiO2)の焼結体を用いた。そして第2のガラス相のSiとAlのKα線ピークの強度と検量線からそれぞれの元素濃度を質量%で求めて、Al/Siを算出した。図3に示した試料のAl/Si比は0.3であった。また、電子顕微鏡写真から、一定範囲の面積に対する第2のガラス相である淡部の面積の割合を求めて、これを第2のガラス相の量比とした。
【0030】
一方、比較例として、石英粉末にアルミナ(Al23)粉末を所定量添加した原料を、酸水素炎で1900℃に加熱融解した後、冷却固化してガラスを得た。得られたガラスのミクロ組織を上記方法で観察した。すると、溶融時に完全に溶解しなかったと考えられるアルミナが多数観察された。また冷却時に石英ガラスとアルミナの線膨張係数の差に起因して発生したと考えられるミクロな割れも観察された。このようなミクロな割れは機械的性質を低下させるため実用上好ましくない。さらに、得られたガラスのミクロ組織には、本発明のようなSiおよびOからなる第1のガラス相と、Si、AlおよびOからなる第2のガラス相とからなる2相組織は観察されなかった。
【0031】
プラズマ処理装置
このようにして得られた本発明のガラスをマイクロ波導入窓として用い、以下に説明するプラズマ処理装置を構成した。図4は本発明に係るプラズマ処理装置の構造を示す側断面図であり、図5は図4に示したプラズマ処理装置の平面図である。
【0032】
有底円筒形状の反応器1は、その全体がアルミニウムで形成されている。反応器1の上部の開口は後述する封止板4で気密状態に封止されている。封止板4には、導電性金属を円形蓋状に成形してなるカバー部材10が外嵌してあり、該カバー部材10は反応器1上に固定してある。カバー部材10の上面には、反応器1内へマイクロ波を導入するためのアンテナ11が固定してある。アンテナ11は、断面がコ字状の部材を無終端環状に成形してなる環状導波管型アンテナ部11aを、その開口をカバー部材10に対向させて、反応器1の中心軸と同心円状に設けてあり、カバー部材10の環状導波管型アンテナ部11aに対向する部分には複数の開口部15、15、・・・が開設してある。即ち、環状導波管型アンテナ部11aおよび開口部15、15、・・・が開設してあるカバー部材10の環状導波管型アンテナ部11aに対向する部分によって、環状導波管型アンテナが構成してある。
【0033】
環状導波管型アンテナ部11aは、反応器1の内周面より少し内側に、反応器1の中心軸と同心円状に設けてあり、その外周面に設けた他の開口には該環状導波管型アンテナ部11aへマイクロ波を導入するための導入部11bが、環状導波管型アンテナ部11aの直径方向になるように連結してある。この導入部11b及び環状導波管型アンテナ部11a内には、テフロン(登録商標)といったフッ素系樹脂、ポリエチレン樹脂またはポリスチレン樹脂(好ましくはテフロン)等の誘電体14が内嵌してある。
【0034】
導入部11bにはマイクロ波発振器30から延長した導波管29が連結してあり、マイクロ波発振器30が発振したマイクロ波は、導波管29を経てアンテナ11の導入部11bに入射される。この入射波は、導入部11bから環状導波管型アンテナ部11aへ導入される。環状導波管型アンテナ部11aを互いに逆方向へ進行する進行波として、該環状導波管型アンテナ部11a内の誘電体14中を伝播し、両進行波は、重ね合わされて環状導波管型アンテナ部11aに定在波が生成する。この定在波によって、環状導波管型アンテナ部11aの内面に、所定の間隔で極大値を示す壁面電流が通流する。
【0035】
ところで環状導波管型アンテナ部11a内には誘電体14を装入せずに空洞になしてもよい。しかし、環状導波管型アンテナ部11a内に誘電体14を挿入した場合、環状導波管型アンテナ部11aに入射されたマイクロ波は誘電体14によってその波長が1/√(εr)倍(εrは誘電体の比誘電率)だけ短くなる。従って同じ直径の環状導波管型アンテナ部11aを用いた場合、誘電体14を装入してあるときの方が、誘電体14を装入していないときより、環状導波管型アンテナ部11aの壁面に通流する電流が極大になる位置が多く、その分、開口部15、15、・・・を多く開設することができる。そのため、処理室2内へマイクロ波をより均一に導入することができる。
【0036】
前述した各開口部15、15、・・・は、複数の強電界強度の領域(腹)に位置しており、これによって各開口部15、15、・・・から効率良くマイクロ波を放射させることができる。各開口部15、15、・・・から放出されたマイクロ波は封止板4を透過して反応器1内へ導入される。
【0037】
なお本実施の形態では開口部15、15、・・・は、環状導波管型アンテナ部11a内を伝播するマイクロ波の進行方向に直行するように開設してあるが、本発明はこれに限らず、前記マイクロ波の進行方向に斜めに交わるように開口部を開設してもよく、また、マイクロ波の進行方向に開設してもよい。反応器1内に生成されたプラズマによって、アンテナ11内を伝播するマイクロ波の波長が変化して、環状導波管型アンテナ部11aの周壁に通流する電流の極大値を示す位置が変化する場合があるが、マイクロ波の進行方向に斜めに開設した開口部またはマイクロ波の進行方向に開設した開口部にあっては、電流の極大値を示す位置の変化を開口部の領域内に取り込むことができる。
【0038】
処理室2の底部壁中央には、試料Wを載置する載置台3が設けてあり、載置台3にはマッチングボックス6を介して高周波電源7が接続されている。処理室2の周囲壁には該周囲壁を貫通する貫通孔が開設してあり、該貫通孔には、処理室2内へ反応ガスを導入するガス導入管5が嵌合してある。また、処理室2の底部壁には排気口8が開設してあり、排気口8から処理室2の内部を排気するようになしてある。
【0039】
このようなプラズマ処理装置を用いて試料Wの表面にエッチング処理を施すには、排気口8から排気して処理室2内を所望の圧力まで減圧した後、ガス導入管5から処理室2内に反応ガスを供給する。次いで、マイクロ波発振器30から2.45GHzのマイクロ波を発振させ、それを導波管29を経てアンテナ11に導入し、環状導波管型アンテナ部11aに定在波を形成させる。環状導波管型アンテナ部11aの下面の開口部15、15、・・・から漏洩したマイクロ波は、封止板4を透過して処理室2内に導入され、処理室2内にプラズマが生成される。そして、マッチングボックス6を介して高周波電源7から載置台3に高周波を印加することにより、プラズマ中のイオンを制御しつつ、載置台3上の試料Wの表面をエッチングすることができる。
【0040】
なお本実施の形態では封止板4上に環状導波管型アンテナを設けてなるSWP型のマイクロ波プラズマ処理装置に適用した場合を示したが、本発明はこれに限らず、図1に示した如く、マイクロ波を伝播する平面状の誘電体線路を封止板に対向配置してなる装置等、SWP型の他のマイクロ波プラズマ処理装置にも適用し得る。さらに反応器の周囲にコイルを配置し、電子サイクロトロン共鳴を利用してプラズマを生成するECR型のマイクロ波プラズマ処理装置やICP処理装置等、反応器内に電磁波を導入してプラズマを生成する他のプラズマ処理装置にも適用し得る。
【0041】
上記装置を用いて、マイクロ波導入窓の耐プラズマ性を調べる実験を行った。アルミナの添加量を変えた種々のガラスからなるマイクロ波導入窓をそれぞれ試験した。上述したように、第2のガラス相におけるAlのSiに対する質量比(Al/Si)および第2のガラス相の量比はそれぞれ、検量線を用いたエネルギー分散X線分光法による定量分析および断面の走査電子顕微鏡像から計測した。ここで、第2のガラス相の量比は、断面の走査電子顕微鏡像における一定範囲の面積に対する第2のガラス相の面積の割合である。
【0042】
次に、上記のように作製したマイクロ波導入窓を使用して、フッ素を含むプラズマによるマイクロ波導入窓の消耗量を測定した。消耗量は、プラズマ処理前にマイクロ波導入窓の中心部内面(プラズマ照射側表面)にポリイミドテープを貼付し、プラズマ処理後テープをはがして段差を計測し、その段差からAlを含まない石英ガラスの消耗量(従来例)を1として相対消耗量を算出した。
【0043】
プラズマ処理は次のようにして行った。マイクロ波導入窓を装着したプラズマ処理装置に、厚さ1μmのシリコン酸化膜を形成した直径が150mmのシリコンウェハを挿入し、600Wのパワーで発振した400kHzの高周波を試料台に印加するとともに、CHF3ガスを処理室内に導入しつつ、1300Wのパワーで発振した2.45GHzのマイクロ波を当該窓を介して処理室に導入した。このようにして生成されるプラズマにより60秒間エッチングする操作を、各マイクロ波導入窓につきそれぞれ5000回ずつ行った。すなわち、合計300000秒のプラズマ処理を各窓について行った。得られた結果を第2のガラス相におけるAl/Siおよび第2のガラス相の量比とともに表1に示す。
【0044】
【表1】
Figure 0004245771
【0045】
Al/Siが高くなればなるほど、また第2のガラス相の量比が高くなればなるほど、マイクロ波導入窓の消耗量は抑制されることがわかる。表からわかるとおり、アルミナの添加量が少なくAl/Siが0.007であるマイクロ波導入窓は、Alを含まない石英ガラスと消耗量は同じであるのに対し、Al/Siが0.01以上では相対消耗量が大きく減少している。また、前述の1900℃で原料を溶融して作製したガラスも相対消耗量は従来例と同じであった。
【0046】
また、本発明例のガラスについてfQ値をネットワークアナライザーを用いて室温で測定したところ、いずれのfQ値も20000以上であり、十分なマイクロ波透過性を有することが判明した。また、本発明例のガラスをマイクロ波導入窓に適用してシリコンウェーハ上の酸化膜についてエッチング速度のウェーハ面内均一性について調査したところ、いずれの面内均一性も±5%以下となり、十分なエッチング特性が得られることが判明した。
【0047】
【発明の効果】
上述してきたとおり、本発明によるガラスは、プラズマに対する良好な耐食性を有する。したがって、本発明によるガラスをプラズマ処理装置に使用することにより、プラズマによる部材の消耗を抑え、部材の寿命を向上させ、交換頻度を減らし、それにより製造コストを低減することができる。また、本発明による部材をプラズマ処理装置の高周波またはマイクロ波の窓として使用することにより、当該窓は、高周波またはマイクロ波による加熱ひずみで破損することなく、より長い寿命を有し、その交換頻度は少なくてすむようなる。従来の石英ガラスに比べ、本発明によるガラスは特にフッ素を含むプラズマに対して顕著に耐食性が向上している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 プラズマ処理装置の構造を示す概略断面図である。
【図2】 図1に示す装置の概略平面図である。
【図3】 本発明によるガラスのミクロ組織を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】 本発明によるプラズマ処理装置の一例を示す概略断面図である。
【図5】 図4に示す装置の概略平面図である。
【符号の説明】
1 反応容器、2 反応室、4 マイクロ波導入窓。

Claims (3)

  1. SiおよびOからなる第1のガラス相と、
    Si、AlおよびOからなる第2のガラス相とからなり、
    前記第2のガラス相において、AlのSiに対する質量比が0.01以上であることを特徴とするガラスからなる、耐プラズマ部材
  2. 請求項1に記載の耐プラズマ部材からなり、電磁波を透過する窓を構成するためのものである、電磁波透過窓用部材。
  3. 電磁波を用いて生成されるプラズマにより処理を行うプラズマ処理装置において、
    前記電磁波を透過させて、前記プラズマを生成する室に前記電磁波を導入するための部材が、請求項1に記載の耐プラズマ部材からなることを特徴とする、プラズマ処理装置。
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