JP4488551B2 - マイクロ波プラズマ処理装置及び封止部材 - Google Patents

マイクロ波プラズマ処理装置及び封止部材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、容器内にマイクロ波を導入してプラズマを生成し、そのプラズマによって、容器内に配置した半導体基板又は液晶ディスプレイ用ガラス基板等にエッチング又はアッシング等の処理を施すマイクロ波プラズマ処理装置、及び前記容器にマイクロ波を導入すべく設けた開口を封止する封止部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
反応ガスに外部からエネルギを与えて生じるプラズマは、LSI又はLCD等の製造プロセスにおいて広く用いられている。特に、ドライエッチングプロセスにおいて、プラズマの利用は不可欠の基本技術となっている。このプラズマによって処理される基板の寸法が大きくなるのに伴って、より広い領域にプラズマを均一に発生させることが要求されている。そのため、次のような装置が開発されている。
【0003】
図7は、従来のマイクロ波プラズマ処理装置を示す側断面図であり、図8は図7に示したマイクロ波プラズマ処理装置の平面図である。矩形箱状の反応器31は、その全体がアルミニウムで形成されている。反応器31の上部開口は封止板34で気密状態に封止されている。この封止板34は、耐熱性及びマイクロ波透過性を有すると共に誘電損失が小さい、石英ガラス(SiO2 )又はアルミナ(Al2 3 )等の誘電体で形成されている。
【0004】
反応器31には、該反応器31の上部を覆う長方形箱状のカバー部材40が連結してある。このカバー部材40内の天井部分には誘電体線路41が取り付けてある。誘電体線路41は、テフロン(登録商標)といったフッ素樹脂,ポリエチレン樹脂又はポリスチレン樹脂等の誘電体を、矩形と三角形とを組み合わせた略五角形の頂点に凸部を設けた板形状に成形してなり、前記凸部をカバー部材40の周面に連結した導波管51に内嵌させてある。導波管51にはマイクロ波発振器50が連結してあり、マイクロ波発振器50が発振したマイクロ波は、導波管51によって誘電体線路41の凸部に入射される。
【0005】
前述した如く、誘電体線路41の凸部の基端側は、平面視が略三角形状のテーパ部41a になしてあり、前記凸部に入射されたマイクロ波はテーパ部41a に倣ってその幅方向に拡げられ誘電体線路41の全体に伝播する。このマイクロ波はカバー部材40の導波管51に対向する端面で反射し、入射波と反射波とが重ね合わされて誘電体線路41に定在波が形成される。
【0006】
反応器31の内部は処理室32になっており、処理室32の周囲壁を貫通する貫通穴に嵌合させたガス導入管35から処理室32内に所要のガスが導入される。処理室32の底部壁中央には、試料Wを載置する載置台33が設けてあり、載置台33にはマッチングボックス36を介して数百KHz〜十数MHzのRF電源37が接続されている。また、反応器31の底部壁には排気口38が開設してあり、排気口38から処理室32の内気を排出するようになしてある。
【0007】
このようなマイクロ波プラズマ処理装置を用いて試料Wの表面にエッチング処理を施すには、排気口38から排気して処理室32内を所望の圧力まで減圧した後、ガス導入管35から処理室32内に反応ガスを供給する。次いで、マイクロ波発振器50からマイクロ波を発振させ、これを導波管51を介して誘電体線路41に導入する。このとき、テーパ部41a によってマイクロ波は誘電体線路41内で均一に拡がり、誘電体線路41内に定在波を形成する。この定在波によって、誘電体線路41の下方に漏れ電界が形成され、それが封止板34を透過して処理室32内へ導入される。このようにして、マイクロ波が処理室32内へ伝播する。これにより、処理室32内にプラズマが生成され、そのプラズマによって試料Wの表面をエッチングする。これによって、大口径の試料Wを処理すべく反応器31の直径を大きくしても、その反応器31の全領域へマイクロ波を均一に導入することができ、大口径の試料Wを比較的均一にプラズマ処理することができる。
【0008】
しかし、石英製の封止板34を設けたマイクロ波プラズマ処理装置の処理室32へ、F系又はCl系の反応ガスを供給し、該反応ガスをマイクロ波で励起して生成したプラズマによって試料Wを処理する場合、該プラズマによって石英製の封止板34がエッチングされるため、封止板34の寿命が短いという問題があった。また、封止板34のエッチングによって、Si及びOがプラズマ中に放出されてプラズマの成分が変動するため、試料Wの処理プロセスに悪影響を及ぼしていた。
【0009】
また、アルミナ製の封止板34を設けたマイクロ波プラズマ処理装置にあっては次のような問題があった。マイクロ波が封止板34を透過する際の誘電損失によって封止板34の温度が上昇するのに加えて、生成されたプラズマに起因する入熱によって封止板34の温度が更に上昇する。これによって、アルミナ製の封止板34に大きな熱応力が発生し、この熱応力によって封止板34が破損する場合があった。
【0010】
そのため、特開平 8−279490号公報には、石英板の処理室側の面の少なくとも一部に、アルミナ又はアルミナを含有する材料を、0.04〜0.05mmの厚さになるように被着した封止板を設けたマイクロ波プラズマ処理装置が開示されている。このようなマイクロ波プラズマ処理装置では、アルミナより熱衝撃に強い石英板を用いているため、熱応力が発生した場合であっても封止板の破損が防止される。また、石英板にアルミナ又はアルミナを含有する材料が被着してあるため、F系又はCl系の反応ガスを用いた場合であっても、該反応ガスから生成されたプラズマに対する耐久性に優れており、封止板の寿命が延長される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平 8−279490号公報に開示されたマイクロ波プラズマ処理装置にあっては、次のような問題があった。半導体デバイスの微細化に伴って、高密度のプラズマを生成することが要求されている。高密度のプラズマを生成した場合、石英板に被着したアルミナが生成したプラズマによってエッチングされるため、封止板の寿命が短くなる。また、アルミナのエッチングによってAlを含むパーティクルが発生し、該パーティクルによって試料が汚染されるという問題もあった。
【0012】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは高密度のプラズマを生成する場合であっても、封止部材の寿命が長く、また試料の汚染を防止することができるマイクロ波プラズマ処理装置、及び該マイクロ波プラズマ処理装置に使用する封止部材を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
第1発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置は、マイクロ波を導入すべく設けた開口を封止部材で封止してなる容器内に、前記封止部材を透過させてマイクロ波を導入することによってプラズマを生成し、生成したプラズマにより前記容器内に配置した半導体基板又は液晶ディスプレイ用ガラス基板にエッチング又はアッシングの処理を施すマイクロ波プラズマ処理装置において、前記封止部材の少なくとも前記開口に対向する部分に耐プラズマ層を形成してなり、該耐プラズマ層は、Y2 3 、又はmY2 3 ・nAl2 3 を用いて、溶射法によって形成してあることを特徴とする。但し、m、nは整数である。
【0014】
第2発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置は、第1発明において、前記耐プラズマ層は500μm以下の厚さを有することを特徴とする。
【0015】
第3発明に係る封止部材は、マイクロ波を導入すべく設けた容器の開口を経て内部にマイクロ波を導入することによってプラズマを生成し、生成したプラズマにより前記容器内に配置した半導体基板又は液晶ディスプレイ用ガラス基板にエッチング又はアッシングの処理を施すマイクロ波プラズマ処理装置の前記開口を封止するマイクロ波透過性の封止部材において、前記封止部材の少なくとも前記開口に対向させる部分に耐プラズマ層を形成してなり、該耐プラズマ層は、Y2 3 、又はmY2 3 ・nAl2 3 を用いて、溶射法によって形成してあることを特徴とする。但し、m、nは整数である。
【0016】
第4発明に係る封止部材は、第3発明において、前記耐プラズマ層は500μm以下の厚さを有することを特徴とする。
【0017】
ハロゲン系の反応ガスから生成したプラズマが封止部材をエッチングする機構は、ハロゲン系の生成物を生成する第1段階と、ハロゲン系の生成物が気化又は残留する第2段階とに分けられ、第2段階において生成物の残留量が多いほど第1段階において生成物の生成速度が遅くなり、封止部材のプラズマに対する耐久性が強い。
【0018】
例えば、F系の反応ガスから生成したプラズマが石英製の封止部材に照射された場合、第1段階でSiF4 が生成され、第2段階ではSiF4 が容易に気化するため、第1段階におけるSiF4 の生成速度が速く、封止部材のプラズマに対する耐久性は強くない。また、石英製の封止部材本体にアルミナ又はnAl2 3 ・mSiO2 からなる耐プラズマ層を形成した封止部材に、前記プラズマが照射された場合、第1段階でAlF3 が生成される。このAlF3 の蒸気圧はSiF4 の蒸気圧より低いため、第2段階では生成したAlF3 の一部が残留し、第1段階におけるAlF3 の生成速度がSiF4 の生成速度より遅く、封止部材のプラズマに対する耐久性が改善される。しかし、この場合であっても、プラズマの密度が高くなるに従って、AlF3 の生成速度が増大し、所要密度のプラズマに対する耐久性は低い。
【0019】
これに対し、第1及び第3発明に係る封止部材に、前記プラズマを照射した場合、第1段階でMgF2 又はYF3 が生成される。MgF2 又はYF3 の蒸気圧は、AlF3 の蒸気圧より更に低いため、第2段階では生成したMgF2 又はYF3 の大部分が残留し、第1段階におけるMgF2 又はYF3 の生成速度がAlF3 の生成速度より遅く、封止部材のプラズマに対する耐久性が向上する。従って、高密度のプラズマを生成する場合であっても、封止部材の寿命が長い。
【0020】
このように、耐プラズマ層が高密度のプラズマであってもエッチングされ難いため、パーティクルの発生が防止され、パーティクルによって試料が汚染されることが回避される。一方、封止部材本体は熱衝撃に強い石英板を用いているため、熱応力が発生した場合であっても封止板の破損が防止される。
【0021】
また、第2及び第4発明にあっては、耐プラズマ層は500μm以下の厚さになしてあるため、封止部材の温度が上昇・降下した場合であっても、封止部材本体の線膨張係数と耐プラズマ層の線膨張係数との違いによって封止部材本体から耐プラズマ層が脱離することが防止される。一方、500μm以下の厚さであっても、高密度のプラズマに対して十分な耐久性を有する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1は本発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置の構造を示す側断面図であり、図2は図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置の平面図である。有底円筒形状の反応器1は、その全体がアルミニウムで形成されている。反応器1の上部の開口は後述する封止板4で気密状態に封止されている。
【0023】
封止板4には、導電性金属を円形蓋状に成形してなるカバー部材10が外嵌してあり、該カバー部材10は反応器1上に固定してある。カバー部材10の上面には、反応器1内へマイクロ波を導入するためのアンテナ11が固定してある。アンテナ11は、断面がコ字状の部材を無終端環状に成形してなる環状導波管型アンテナ部11a を、その開口をカバー部材10に対向させて、反応器1の中心軸と同心円状に設けてあり、カバー部材10の環状導波管型アンテナ部11a に対向する部分には複数のスリット15,15,…が開設してある。即ち、環状導波管型アンテナ部11a 、及びスリット15,15,…が開設してあるカバー部材10の環状導波管型アンテナ部11a に対向する部分によって、環状導波管型アンテナが構成してある。
【0024】
環状導波管型アンテナ部11a は、反応器1の内周面より少し内側に、反応器1の中心軸と同心円上に設けてあり、その外周面に設けた開口の周囲には該環状導波管型アンテナ部11a へマイクロ波を導入するための導入部11b が、環状導波管型アンテナ部11a の直径方向になるように連結してある。この導入部11b 及び環状導波管型アンテナ部11a 内には、テフロン(登録商標)といったフッ素樹脂,ポリエチレン樹脂又はポリスチレン樹脂(好ましくはテフロン)等の誘電体14が内嵌してある。
【0025】
導入部11b にはマイクロ波発振器30から延設した導波管29が連結してあり、マイクロ波発振器30が発振したマイクロ波は、導波管29を経てアンテナ11の導入部11b に入射される。この入射波は、導入部11b から環状導波管型アンテナ部11a へ導入される。環状導波管型アンテナ部11a へ導入されたマイクロ波は、環状導波管型アンテナ部11a を互いに逆方向へ進行する進行波として、該環状導波管型アンテナ部11a 内の誘電体14中を伝播し、両進行波は、重ね合わされて環状導波管型アンテナ部11a に定在波が生成される。この定在波によって、環状導波管型アンテナ部11a の内面に、所定の間隔で極大値を示す壁面電流が通流する。
【0026】
ところで、環状導波管型アンテナ部11a 内には誘電体14を装入せずに空洞になしてもよい。しかし、環状導波管型アンテナ部11a 内に誘電体14を装入した場合、環状導波管型アンテナ部11a に入射されたマイクロ波は誘電体14によってその波長が1/√(εr)倍(εrは誘電体の比誘電率)だけ短くなる。従って同じ直径の環状導波管型アンテナ部11a を用いた場合、誘電体14が装入してあるときの方が、誘電体14が装入していないときより、環状導波管型アンテナ部11a の壁面に通流する電流が極大になる位置が多く、その分、スリット15,15,…を多く開設することができる。そのため、処理室2内へマイクロ波をより均一に導入することができる。
【0027】
前述した各スリット15,15,…は、複数の強電界強度の領域(腹)の間の略中央(節)に位置しており、これによって各スリット15,15,…から効率良くマイクロ波を放射させることができる。各スリット15,15,…から放出されたマイクロ波は封止板4を透過して反応器1内へ導入される。
【0028】
なお、本実施の形態では、スリット15,15,…は、環状導波管型アンテナ部11a 内を伝播するマイクロ波の進行方向に直交するように開設してあるが、本発明はこれに限らず、前記マイクロ波の進行方向に斜めに交わるようにスリットを開設してもよく、また、マイクロ波の進行方向に開設してもよい。反応器1内に生成されたプラズマによって、アンテナ11内を伝播するマイクロ波の波長が変化して、環状導波管型アンテナ部11a の周壁に通流する電流の極大値を示す位置が変化する場合があるが、マイクロ波の進行方向に斜めに開設したスリット又はマイクロ波の進行方向に開設したスリットにあっては、電流の極大値を示す位置の変化をスリットの領域内に取り込むことができる。
【0029】
処理室2の底部壁中央には、試料Wを載置する載置台3が設けてあり、載置台3にはマッチングボックス6を介して高周波電源7が接続されている。処理室2の周囲壁には該周囲壁を貫通する貫通孔が開設してあり、該貫通孔には、処理室2内へ反応ガスを導入するガス導入管5が嵌合してある。また、処理室2の底部壁には排気口8が開設してあり、排気口8から処理室2の内気を排出するようになしてある。
【0030】
このようなプラズマ処理装置を用いて試料Wの表面にエッチング処理を施すには、排気口8から排気して処理室2内を所望の圧力まで減圧した後、ガス導入管5から処理室2内に反応ガスを供給する。次いで、マイクロ波発振器30から2.45GHzのマイクロ波を発振させ、それを導波管29を経てアンテナ11に導入し、環状導波管型アンテナ部11a に定在波を形成させる。環状導波管型アンテナ部11a の下面のスリット15,15,…から放射された電界は、封止板4を透過して処理室2内に導入され、処理室2内にプラズマが生成される。このプラズマにより載置台3上の試料Wの表面がエッチングされる。
【0031】
また、マイクロ波発振器30による発振と同時的にマッチングボックス6を介して高周波電源7から載置台3に高周波を印加してもよい。載置台3に高周波を印加することにより、プラズマ中のイオンを制御しつつ、載置台3上の試料Wの表面をエッチングすることができる。
【0032】
図3は図1に示した封止板4の一部破断斜視図である。図3に示した如く、封止板4は石英製の板状部材である封止板本体4aを備え、該封止板本体4aの処理室2(図1参照)に対向する部分に、MgO、Y2 3 、MgOを含有する化合物又はY2 3 を含有する化合物を含む耐プラズマ層4bが形成してある。MgO又はY2 3 を含有する化合物としては、mMgO・nSiO2 、mMgO・nAl2 3 、lMgO・mAl2 3 ・nSiO2 、mY2 3 ・nAl2 3 等を用いることができる。これらの材料は、アルミナ又はアルミナを含有する材料よりプラズマに対する耐久性が強い一方、マイクロ波の透過性が石英と略同等である。
【0033】
そのため、封止板4は、マイクロ波を高効率で処理室2内へ導入することができる一方、処理室2内に高密度のプラズマを生成した場合であっても、耐プラズマ層4bがプラズマによってエッチングされることが抑制され、封止板4の寿命が長い。
【0034】
一方、MgO、Y2 3 又はmMgO・nSiO2 を用いた耐プラズマ層4bが設けてある封止板4を用いた場合、耐プラズマ層4bはAlを含有していないため、Alを含むパーティクルによって試料が汚染される虞がない。また、これらの材料は、ハロゲン系の反応ガスから生成したプラズマであっても、該プラズマに対する耐久性が強いため、Mg又はYを含むパーティクルが発生せず、Mg又はYによる試料Wの汚染が防止される。
【0035】
また、mMgO・nAl2 3 、lMgO・mAl2 3 ・nSiO2 、又はmY2 3 ・nAl2 3 を用いた耐プラズマ層4bが設けてある封止板4を用いた場合であっても、該耐プラズマ層4bはアルミナ又はアルミナを含有する材料よりプラズマに対する耐久性が強いため、Al等を含むパーティクルが発生し難く、該パーティクルによる試料の汚染を低減することができる。
【0036】
この耐プラズマ層4bは溶射法によって、500μm以下の厚さ、好ましくは10μm以上300μm以下の厚さになるように形成してある。耐プラズマ層4bの厚さを500μmより厚くした場合、封止板4の温度が上昇・降下した場合に、封止板本体4aの線膨張係数と耐プラズマ層4bの線膨張係数との違いによって封止板本体4aから耐プラズマ層4bが脱離する虞があり、また、耐プラズマ層4bの厚さを10μm以上300μm以下にした場合、耐プラズマ層4bの形成作業が比較的容易であり作業効率が高い一方、所要の寿命を得ることができる。なお、耐プラズマ層4bは、溶射法に代えて、PVD法、又はCVD法等によって形成してもよい。
【0037】
なお、本実施の形態では、封止板本体4aの処理室2に対向する部分に耐プラズマ層4bが形成してあるが、本発明はこれに限らず、封止板本体4aの処理室2側の全面、封止板本体4aの両面、又は封止板本体4aの全表面等に耐プラズマ層を形成してもよいことはいうまでもない。
【0038】
なお、本実施の形態では、封止板4上に環状導波管型アンテナを設けてなる表面波プラズマ処理装置に適用した場合を示したが、本発明はこれに限らず、図7に示した如く、マイクロ波を伝播する平面状の誘電体線路を封止板に対向配置してなる装置等、他の表面波プラズマ処理装置にも適用し得る。更に、反応器の周囲にコイルを配置し、電子サイクロトロン共鳴を利用してプラズマを生成するECR型のマイクロ波プラズマ処理装置等、反応器内にマイクロ波を導入してプラズマを生成する他のマイクロ波プラズマ処理装置にも適用し得ることはいうまでもない。
【0039】
【実施例】
次に比較試験を行った結果について説明する。
図4はマイクロ波の透過性を比較した結果を示すヒストグラムであり、縦軸は、Q値を表している。本発明例では、石英製の封止板本体の一面にY2 3 を100μmの厚さになるように溶射した封止板を用い、従来例では、石英製の封止板を用いた。それぞれの封止板に10GHzのマイクロ波を照射し、そのQ値を測定した。なお、本発明例では、同じ条件で作製した3枚の封止板についてQ値をそれぞれ測定した。
【0040】
図4から明らかな如く、従来例のQ値は略11900であるのに対して、本発明例のQ値は略10500〜11000であり、従来例のQ値と略同程度の値であった。
【0041】
図5はプラズマによる封止板の損傷量を比較した結果を示す図表である。従来例1では、石英製の封止板を用いており、従来例2では、石英製の封止板本体に3Al2 3 ・2SiO2 (ムライト)製の耐プラズマ層を設けた封止板を用いている。
【0042】
一方、本発明例1では、石英製の封止板本体にMgO製の耐プラズマ層を設けた封止板を用いており、本発明例2では、石英製の封止板本体にY2 3 製の耐プラズマ層を設けた封止板を用いており、本発明例3では、石英製の封止板本体に2MgO・SiO2 (フォルステライト)製の耐プラズマ層を設けた封止板を用いており、本発明例4では、石英製の封止板本体にMgO・SiO2 (エンスタタイト)製の耐プラズマ層を設けた封止板を用いており、本発明例5では、石英製の封止板本体に3MgO・4SiO2 (ステアタイト)製の耐プラズマ層を設けた封止板を用いている。
【0043】
また、本発明例6では、石英製の封止板本体にMgO・Al2 3 (スピネル)製の耐プラズマ層を設けた封止板を用いており、本発明例7では、石英製の封止板本体に4MgO・5Al2 3 ・2SiO2 (サフィリン)製の耐プラズマ層を設けた封止板を用いており、本発明例8では、石英製の封止板本体に5MgO・2Al2 3 ・5SiO2 (コージュライト)製の耐プラズマ層を設けた封止板を用いており、本発明例9では、石英製の封止板本体にY3 Al5 12(YAG)製の耐プラズマ層を設けた封止板を用いている。なお、耐プラズマ層は、従来例及び本発明例とも、大気中で100μmになるように溶射によって形成した。
【0044】
これらの封止板を設けたマイクロ波プラズマ処理装置に、直径が6インチのシリコンウェハ上に1μmの厚さのシリコン酸化膜を形成した試料を装入し、600Wのパワーで発振した400KHzの高周波を載置台に印加すると共に、CHF3 ガスを処理室内に導入しつつ、1300Wのパワーで発振した2.45GHzのマイクロ波を、封止板を透過させて処理室に導入することによって生成プラズマによって、1分間エッチングする操作を、各封止板につき、それぞれ5000回ずつ、即ち5000枚の試料を用いて5000分のプラズマ処理を繰り返した後、各封止板のプラズマによる損傷量をそれぞれ測定し、測定結果を従来例1の損傷量を1として相対的に表した。
【0045】
図5から明らかな如く、本発明例にあっては何れの場合も、従来例1と比べて損傷量が2桁低く、従来例2と比べても損傷量が1桁低かった。従って、封止板の寿命が長い。
【0046】
また、図6はパーティクルの発生及び試料汚染の発生を比較した結果を示す図表である。前述した従来例1及び2の封止板、並びに本発明例1〜9の封止板を用い、前同様の条件でプラズマ処理を行い、それぞれ、1000分(1000枚)の試料を処理する都度、パーティクルの発生の有無、及びAl,Mg又はYによる試料の汚染の有無を検査した。そして、試料上に直径が0.01μm以上のパーティクルが10個以上存在するときは×印を、試料上に直径が0.01μm以上のパーティクルが存在しないとき、又は10個未満であるときは、〇印を表示した。また、試料上に、汚染となる各金属が1×1010Atoms/cm2 以上存在するときは×印を、試料上に、汚染となる各金属が存在しないとき、又は1×1010Atoms/cm2 未満であるときは〇印を表示した。
【0047】
図6から明らかな如く、本発明例にあっては何れの場合も、5000分のプラズマ処理でパーティクルが発生せず、金属による汚染も発生していなかった。一方、従来例では、何れの場合も、既に1000分でパーティクルが発生しており、それ以降5000分までパーティクルが連続して発生している。また、3Al2 3 ・2SiO2 製の耐プラズマ層を設けた従来例2では、既に1000分でAlによる試料の汚染が発生しており、それ以降5000分まで試料の汚染が連続して発生している。
【0048】
【発明の効果】
以上詳述した如く、第1及び第3発明にあっては、高密度のプラズマを生成する場合であっても、封止部材の寿命が長い。また、高密度のプラズマであっても耐プラズマ層がエッチングされ難いため、パーティクルの発生が防止され、パーティクルによって試料が汚染されることが回避される。一方、封止部材本体は熱衝撃に強い石英板を用いているため、熱応力が発生した場合であっても封止板の破損が防止される。
【0049】
第2及び第4発明にあっては、封止部材の温度が上昇・降下した場合であっても、封止部材本体の線膨張係数と耐プラズマ層の線膨張係数との違いによって封止部材本体から耐プラズマ層が脱離することが防止される等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置の構造を示す側断面図である。
【図2】図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置の平面図である。
【図3】図1に示した封止板の一部破断斜視図である。
【図4】マイクロ波の透過性を比較した結果を示すヒストグラムである。
【図5】プラズマによる封止板の損傷量を比較した結果を示す図表である。
【図6】パーティクルの発生及び試料汚染の発生を比較した結果を示す図表である。
【図7】従来のマイクロ波プラズマ処理装置を示す側断面図である。
【図8】図7に示したマイクロ波プラズマ処理装置の平面図である。
【符号の説明】
1 反応器
2 処理室
4 封止板
4a 封止板本体
4b 耐プラズマ層
11 アンテナ
11a 環状導波管型アンテナ部
15 スリット

Claims (4)

  1. マイクロ波を導入すべく設けた開口を封止部材で封止してなる容器内に、前記封止部材を透過させてマイクロ波を導入することによってプラズマを生成し、生成したプラズマにより前記容器内に配置した半導体基板又は液晶ディスプレイ用ガラス基板にエッチング又はアッシングの処理を施すマイクロ波プラズマ処理装置において、
    前記封止部材の少なくとも前記開口に対向する部分に耐プラズマ層を形成してなり、該耐プラズマ層は、Y2 3 、又はmY2 3 ・nAl2 3 を用いて、溶射法によって形成してあることを特徴とするマイクロ波プラズマ処理装置。
    但し、m、nは整数である。
  2. 前記耐プラズマ層は500μm以下の厚さを有する請求項1記載のマイクロ波プラズマ処理装置。
  3. マイクロ波を導入すべく設けた容器の開口を経て内部にマイクロ波を導入することによってプラズマを生成し、生成したプラズマにより前記容器内に配置した半導体基板又は液晶ディスプレイ用ガラス基板にエッチング又はアッシングの処理を施すマイクロ波プラズマ処理装置の前記開口を封止するマイクロ波透過性の封止部材において、
    前記封止部材の少なくとも前記開口に対向させる部分に耐プラズマ層を形成してなり、該耐プラズマ層は、Y2 3 、又はmY2 3 ・nAl2 3 を用いて、溶射法によって形成してあることを特徴とする封止部材。
    但し、m、nは整数である。
  4. 前記耐プラズマ層は500μm以下の厚さを有する請求項3記載の封止部材。
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