JP4244698B2 - 組積造用接合目地材型枠 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、組積造用目地形成モルタル型枠に関し、さらに詳細には、コンクリートブロックやレンガなどの組積材を積み上げて組積構造物を築造する際に用いられる目地形成用のモルタル型枠に関する。
【0002】
【従来の技術】
組積材を積み上げて築造する組積造は、門や塀、壁などの構造に広く適用されている。この組積造に使用される組積材としては、一般にコンクリートブロック、レンガなどが知られている。これら組積材のうち、コンクリートブロック(以下、適宜ブロックとも言う)は構造上、空洞コンクリートブロックと型枠コンクリートブロックに分類される。また用途上、基本形、異形コンクリートブロックなどと称されたり、特殊な用途のための特殊コンクリートブロックと称されたりするものがある。レンガの場合も、レンガブロック、セラミックレンガなどと称されたりしている。
【0003】
このような組積材を積み上げて施工する組積工事において、上段の組積材を積み上げる前に、下段の組積材の上面にモルタルが盛り付けられる。このモルタルによって上下段の組積材どうしが接着するとともに、両者間に目地が形成される。しかしながら、このモルタルの盛り付け作業は、以下に説明するように容易ではない。
【0004】
例えば、組積材として空洞コンクリートブロックを使用する場合、この空洞コンクリートブロックには上下に開口する空洞部分が複数形成されていることから、モルタルが盛り付けられることとなるブロックの上面、すなわち上下段のブロックが重なり合う部分の面積は極めて狭小である。
【0005】
左右のブロック間に形成される空隙部分にはモルタルを充填することが法律で義務づけられている。他方、ブロック自身の空洞部分にはモルタルを充填する必要はなく、このため一般には空洞部分を除いたブロック上面にのみモルタルを盛り付けている。しかしながら、このブロック上面は前記のように極めて狭小であり、したがって十分な注意を払いながら盛り付け作業をしても、モルタルが空洞部分や、ブロック周辺に落下してしまうのは避け難い状況にある。
【0006】
さらには、先々の目地形成を念頭において適度の厚みでモルタルを盛り付けるのは至難の技であり、結局のところはモルタルが空洞部分や周辺に落下したり汚したりするのを無視して、いわゆる「てんこもり」状態に盛り付けているのが現状である。
【0007】
モルタルの盛り付け後は、その多めに盛り付けられたモルタルの上に、レベルと方向と水平性を合わせながら、空洞部分や周辺にモルタルがこぼれ落ちるのを無視して上段のブロックを積み上げ、必要な目地幅を出す。しかる後に、鏝でこの目地を仕上げてゆくのであるが、これには相当の技量と経験を要する。また、刷毛と水を使って必要箇所以外に付着したモルタルを除去し、丹念に仕上げるのであるが、これにも多大な労力を要する。
【0008】
組積材として型枠コンクリートブロックを使用する場合は、それ自身の持つ空洞(又は空隙)部分にモルタルを十分に充填することが要求される。したがって、空洞コンクリートブロックの場合とは異なり、モルタルが盛り付けられる部分は下段のブロックの上面全面となるので、モルタルの盛り付けは空洞コンクリートブロックに比べて遙かに容易である。しかし、それでもモルタルが周辺にこぼれ落ちるのは避け難く、後の工程としての上段のブロックのレベルと方向と水平性を出すことや、必要とする目地幅を出すことは容易なことではない。
【0009】
組積材としてレンガを使用する場合も同様であり、下段のレンガの上にモルタルを適量盛り付け、しかる後に上段のレンガを積み上げるのであるが、その際、適量のモルタルを盛り付けるとは言え正確に計りきれるものではない。したがって、結局は多めのモルタルを盛り付けてその上に上段のレンガを置き、モルタルを押し付けるようにして、モルタルがはみ出るのも構わずにレンガのレベルと水平と方向性を合わせるのと同時に目地となる厚みを出している。そして、ブロックの場合と同様に、目地を仕上げた後に、周辺を汚したモルタルを刷毛と水で綺麗にふき取り丹念に仕上げている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、従来の組積工事においては、上下の組積材の間に挟むモルタルの量や扱いに注意しながら、レベルと水平と方向性を求め、さらには綺麗な目地を作ってゆくことは相当な技術の習熟と長い経験が必要である。しかも、どんなに習熟した技術と経験を持った技能者であっても、その施工にはかなりの手間と時間を要し、ましてや技量の浅い技能者や素人にとってはなかなか習熟し難い困難な工事である。
【0011】
このような技術の困難さと煩雑さが組積造工法の普及を著しく妨げているとともに、工費の高騰をもたらしている。さらには建築工法の選択肢を狭め、組積工法の伝承を途絶えさせ、しかも組積工法を愛する素人と言われる人々から自らがブロックやレンガを積み上げて建造物を作る楽しみを奪っている。
【0012】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、熟練した技量が不要であって、モルタルが周辺にこぼれ落ちるのを防いで、盛り付けるモルタル量を最適・最小限に抑えることができ、併せて仕上げ作業もごく簡略なものとすることができる組積造用目地形成モルタル型枠を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、上下面に開口する複数の空洞部分を有するコンクリートブロックの上面に、モルタルやコンクリートなどの接合目地材を盛り付けるための型枠であって、
前記コンクリートブロックの上部外周に載置される枠体からなる第1の型枠部材と、前記空洞部分の上部に嵌め込まれて該空洞を閉塞する第2の型枠部材とからなり、
前記第1の型枠部材は、その互いに対向する1対の枠体部分に前記コンクリートブロックに係合して、該第1の型枠部材を前記コンクリートブロックの上面から所定高さ寸法突出させた状態で保持する係合部が形成され、
前記第2の型枠部材は、該第2の型枠部材を前記コンクリートブロックの上面から所定高さ寸法突出させた状態で保持する保持手段を有し、
前記保持手段は、前記第2の型枠部材自体を前記空洞の内周に圧接するもので作ること又は第2の型枠部材の外周に形成されて前記空洞の周縁部に係合する係合部からなることを特徴とする組積造用目地形成モルタル型枠にある。
【0014】
前記第1の型枠部材の前記係合部は種々の態様を採ることができる。すなわち、前記第1の型枠部材の1対の長手方向枠体部分が前記コンクリートブロックの上部外周に嵌合され、前記係合部は該長手方向枠体部分の内周に設けられた係合段部である。また、前記第1の型枠部材の1対の長手方向枠体部分が前記コンクリートブロックの上部外周に嵌合され、前記係合部は該長手方向枠体部分の内周に設けられた複数の係合突起である。さらに、前記第1の型枠部材の1対の長手方向枠体部分が前記コンクリートブロックの上部外周に嵌合され、前記係合部は1対の短手方向枠体部分である。さらに、前記係合部は前記第1の型枠部材の1対の長手方向枠体部分の下部に設けられた複数の係合突起である。
【0015】
前記第1の型枠部材の少なくとも一方の長手方向枠体部分の上端部に、該型枠部材の上端と面一となるように外側に張り出すフランジ部を設けるようにしてもよい。また、前記第1の型枠部材の少なくとも一方の長手方向枠体部分の上端部に、該型枠部材の上端から突出する立ち上がり部を設けるようにしてもよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、この発明の第1実施形態を示す斜視図である。この実施形態は、組積材として空洞コンクリートブロックを使用する場合の例である。空洞コンクリートブロック50は上下面に開口する複数の空洞部分51を有するブロックであり、側面には窪み52を有している。
【0019】
型枠は第1の型枠部材1と第2の型枠部材2とで構成されている。第1の型枠部材1はブロック50の上部外周に嵌合して載置される枠体からなっている。第1の型枠部材1は板材を枠状に加工して作られるが、その材質は金属、プラスチック、木材など何でもよい。
【0020】
図2に断面で示すように、第1の型枠部材1における両長手方向枠体部分3の内周には係合部としての係合段部5がそれぞれ形成されている。これらの係合段部5は第1の型枠部材1をブロック50に嵌合させると、ブロック50の上端縁部に係合する。これにより、第1の型枠部材1はブロック50の上面から所定高さ寸法hだけ突出した状態で保持される。
【0021】
この高さ寸法hはモルタルの盛り付け高さであり、後に上段のブロックを積み上げた際の沈み込みを考慮して目地幅よりも幾分か大きく設定されている。また、第1の型枠部材1がブロック50に支持されることとなる係合段部5の厚みtは、目地の引き込み深さとなる。さらに、第1の型枠部材1の両長手方向枠体部分3の上端部には、第1の型枠部材1の上端と面一となるようにフランジ部6がそれぞれ設けられている。このフランジ部6は一方の長手方向枠体部分3にのみ設けるようにしてもよい。
【0022】
なお、図示の実施形態では、第1の型枠部材1の両短手方向枠体部分4はその板幅が突出高さ寸法hとほぼ等しく、したがって第1の型枠部材1は実質的には両長手方向枠体部分3のみがブロック50に嵌合する。短手方向枠体部分4の板幅を大きくして第1の型枠部材1全体でブロックに嵌合するようにしてもよい。
【0023】
第2の型枠部材2は、図3に断面で示すように、ブロック50の空洞部分51に嵌め込まれて空洞部分51の上部を閉塞する部材である。この第2の型枠部材2は金属、プラスチック、木材などで作られ、外周に係合段部7が形成されている。第2の型枠部材2を空洞部分51に嵌め込むと、その係合段部7が空洞部分51の周縁部に係合し、第2の型枠部材2はブロック50の上面から所定高さ寸法hだけ突出した状態で保持される。この所定高さ寸法hは、第1の型枠部材1の突出高さhと等しいモルタルの盛り付け高さである。
【0024】
次に上記型枠の使用状態について説明する。図4に示すように、モルタルを盛り付けようとしている下段のブロック50に第1の型枠部材1を嵌合する。また、第2の型枠部材2を各空洞部分51に嵌め込む。これにより、ブロック50の上には、上下段のブロックが重なり合う部分のみによって定まる盛り付け空間が区画される。この盛り付け空間にモルタルMを盛り付け、鏝を使って均す。均し作業を終えた後、第1,第2の型枠部材1,2を引き上げ、上段のブロックを積み上げてレベルと方向と水平性を求める。その際、第2の型枠部材2の引き上げを容易にするために、その上面に手で掴むためのつまみ部や、紐体を設けておくようにしてもよい。
【0025】
このように、第1及び第2の型枠部材1,2によって、ブロック50の上に所要の盛り付け空間が区画形成されるので、作業者はこの盛り付け空間にモルタルMを盛り付ければよく、したがって熟練を要することなく、作業を極めて簡単に行うことができる。また、モルタルが周辺にこぼれ落ちることも防止することができる。
【0026】
その際、第1,第2の型枠部材1,2のブロック上面からの突出高さが等しく、しかも第1の型枠部材1にはフランジ部6が設けられているので、鏝の一部をフランジ部6及び第2の型枠2の上面に載せて移動させることにより、均し作業を容易に行うことができる。また、モルタルがこぼれ落ちようとしても、フランジ部6はその受け皿として機能するので、こぼれ落ちを確実に防止できる。なお、ブロック50の長手方向の両側(窪み52がある側)には、横方向に隣接するブロックどうしを継いで目地を形成するための空隙が形成される。そして、この空隙にはモルタルが別途充填されることになるので、この部分にモルタルがこぼれ落ちても支障はない。したがって、短手方向型枠部分4も窪み52の形状に合わせた形状とすることなく、図8に示すような直線状としてもよい。
【0027】
第2の型枠部材2を空洞部分51の周縁に係合させる係合部は、図5〜図7に示すように、種々の形態を採ることができる。図5は、第2の型枠部材2の外周に縦向きの係合突条8を複数個設けた例である。図6は、第2の型枠部材2の外周に係合突起9を複数個設けた例である。図7は、第2の型枠部材2の外周両側に横向きの係合突条10を設けた例である。
【0028】
第2の型枠部材2を保持する手段は係合部を設けることに限らない。例えば、再生紙パルプ、あるいは発泡スチロールやゴムなどで第2の型枠部材2を作ることができる。そして、第2の型枠部材2を空洞部分51よりも幾分か大きくすると、第2の型枠部材2は空洞部分51の内周にその弾性によって圧接することから、所要位置に保持することができる。この場合、第2の型枠部材2は埋め殺し、すなわち使い捨てとしてもよい。もちろん、上記のような材料で作る場合であっても係合部を設けてもよい。
【0029】
図8は、この発明の第2実施形態を示す斜視図である。この実施形態は、組積材としてレンガを使用する場合の例である。レンガ53は、前記した空洞コンクリートブロック50のように空洞部分51を有していない。したがって、前記した第2の型枠部材2は不要であり、前記した第1の型枠部材1そのものが型枠1を構成する。ただし、レンガ53の場合は、前記した空洞コンクリートブロック50のように窪み52を有していないので、短手方向枠体部分4はレンガ53の側面に応じた直線状になっている。組積材が型枠ブロックの場合も、この型枠1のみでモルタルの盛り付けを行うことができる。
【0030】
上記各実施形態では引き込み深さを有する目地を形成するために、型枠1あるいは第1の型枠部材1の係合部として係合段部5が設けられている。引き込みのない目地を形成するのであれば、係合部は図9〜図11に示すように種々の態様を採ることができる。なお、図9〜図11において、型枠1はブロック50に対して拡大して示されている。
【0031】
図9は、この発明の第3実施形態を示す斜視図であり、この実施形態はブロック50の上部外周に嵌合する両長手方向枠体部分3の内周に、複数の係合突起21を設けたものである。図10は、この発明の第4実施形態を示す斜視図であり、この実施形態は両長手方向枠体部分3がブロック50の上部外周に単に嵌合するのみとし、両短手方向枠体部分4全体がブロック50の上端に係合するようにしたものである。図11は、この発明の第5実施形態を示す斜視図であり、この実施形態は長手方向の側面に装飾用の凹凸が形成されたブロック50を対象としている。この実施形態による型枠1はブロック50に嵌合されることなく単に載置される。両長手方向枠体部分3の下端に複数の係合突起22が設けられ、これらの係合突起22が凹凸によって形成される溝23に係合することにより、型枠1が保持される。
【0032】
図12は、この発明の第6実施形態を示す斜視図である。この実施形態は、型枠1あるいは第1の型枠部材1の一方の長手方向枠体部分3に立ち上がり部11を設けたものである。このような立ち上がり部11を設けることにより、モルタルが周辺にこぼれ落ちるのを確実に防止できる。図示の例では、立ち上がり部11はフランジ部6の外側端縁に設けられているが、フランジ部6を形成しない場合は長手方向枠体部分3に直接設けるようにしてもよい。また、立ち上がり部11は両方の長手方向枠体部分3に設けるようにしてもよい。
【0033】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、熟練した技量が不要であって、モルタルが周辺にこぼれ落ちるのを防いで、盛り付けるモルタル量を最適・最小限に抑えることができ、併せて仕上げ作業もごく簡略なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿った第1の型枠部材の断面図である。
【図3】図2のB−B線に沿った第2の型枠部材の断面図である。
【図4】使用状態を説明するための第1,第2の型枠部材の断面図である。
【図5】第2の型枠部材の別の例を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線断面図である。
【図6】第2の型枠部材のさらに別の例を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のD−D線断面図である。
【図7】第2の型枠部材のさらに別の例を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線断面図である。
【図8】この発明の第2実施形態を示す斜視図である。
【図9】この発明の第3実施形態を示す斜視図である。
【図10】この発明の第4実施形態を示す斜視図である。
【図11】この発明の第5実施形態を示す斜視図である。
【図12】この発明の第6実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1:第1の型枠部材(又は型枠)
2:第2の型枠部材
3:長手方向枠体部分
4:短手方向枠体部分
5:係合段部
6:フランジ部
7:係合段部
8:係合突条
9:係合突起
10:係合突条
11:立ち上がり部
50:空洞コンクリートブロック
51:空洞部分
53:レンガ
M:モルタル
Claims (1)
- 上下面に開口する複数の空洞部分を有するコンクリートブロックの上面に、モルタルやコンクリートなどの接合目地材を盛り付けるための型枠であって、
前記コンクリートブロックの上部外周に載置される枠体からなる第1の型枠部材と、前記空洞部分の上部に嵌め込まれて該空洞を閉塞する第2の型枠部材とからなり、
前記第1の型枠部材は、その互いに対向する1対の枠体部分に前記コンクリートブロックに係合して、該第1の型枠部材を前記コンクリートブロックの上面から所定高さ寸法突出させた状態で保持する係合部が形成され、
前記第2の型枠部材は、該第2の型枠部材を前記コンクリートブロックの上面から所定高さ寸法突出させた状態で保持する保持手段を有し、
前記保持手段は、前記第2の型枠部材自体を前記空洞の内周に圧接するもので作ること又は第2の型枠部材の外周に形成されて前記空洞の周縁部に係合する係合部からなることを特徴とする組積造用目地形成モルタル型枠。
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