JP4244116B2 - 繊維強化プラスティックの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化プラスティック(以下「FRP」と略称する。)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、炭素繊維強化プラスティック(以下「CFRP」と略称する。)の製造法は、1959年の進藤昭男氏の発明(特公昭37−4405号)に始まる。以来、約40年にわたってその応用技術が広まり、航空・宇宙分野のCFRPの積層板、工業分野やレクリエーション分野の1次元(棒やケーブル)、2次元(格子やシート)のCFRP材に活用され、その用途は広範囲にわたっている。
【0003】
例えば、建築分野においては、CFRPは、継手や配筋材として使用されており、これらは、以下の工程を経て製造されている。
【0004】
すなわち、▲1▼一定本数の炭素長繊維を束にして引き出す工程→▲2▼炭素長繊維束をプリプレグする工程→▲3▼プリプレグした炭素長繊維束を所要の形状に成形する工程→▲4▼所要の形状に形成した炭素長繊維に熱硬化性樹脂を塗布する工程→▲5▼熱硬化性樹脂を塗布した所要の形状の炭素長繊維束を炉に入れて、熱硬化性樹脂を120℃〜150℃に加熱して熱硬化させる工程→▲6▼現場に搬送する工程→▲7▼切断・加工して継手や配筋材となす工程である。
【0005】
そして、上記したCFRPは、軽量で耐食性や高強度性等に優れているため、特に航空宇宙分野やレクリエーション等の分野においては鋼材に比べて市場価値が高い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記したCFRPは、未だ、下記のような課題を有している。
【0007】
(1)航空宇宙分野においては、さらなる強度面の向上が求められていると共に、繰り返し荷重を受ける積層板のCFRPに対しては層間すべりや層間剥離(ピール現象)をいかに防止するかが極めて重要な安全上の課題となっている。
【0008】
(2)建設分野においては、CFRPの材料コストが鉄筋やPC鋼材に比べて著しく高いため、コンクリート補強材としての普及を妨げている。
【0009】
これは、例えば、CFRPで継手や配筋材を製造する場合、前記したように▲1▼〜▲7▼の多数の工程を経なければならないことから工費が嵩み、さらに、熱硬化性樹脂が高価である上に、同熱硬化性樹脂を炉に入れて一定時間加熱しなければならないことから、トータルコストが著しく高くなっている。
【0010】
しかも、前記▲1▼〜▲7▼の多数の工程を経た製造には、長時間を要するという不具合もある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では、接着剤が塗布されるとともに伸延方向に沿って一定の張力が加えられた長繊維束の前記接着剤を硬化させて形成する被拘束体に、接着剤が塗布されるとともに細幅帯状とした長繊維束の前記接着剤を硬化させて形成する拘束体を装着して、前記被拘束体に前記拘束体で外側から中心に向かう方向に拘束力を作用させている繊維強化プラスティックの製造方法において、前記被拘束体となる長繊維束に塗布された接着剤と、前記拘束体となる長繊維束に塗布された接着剤とを硬化させる際に、前記被拘束体となる長繊維束には伸延方向に沿って一定の張力を作用させるとともに、前記拘束体となる長繊維束にも一定の張力を作用させながら硬化させることを特徴とする繊維強化プラスティックの製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、以下の構成にも特徴を有する。
【0013】
(1)請求項1記載の繊維強化プラスティックの製造方法において、拘束体となる細幅帯状の長繊維束を被拘束体の外周面に螺旋状に巻き付けて被拘束体を被覆していること。
【0014】
(2)請求項1記載の繊維強化プラスティックの製造方法において、被拘束体は、前後方向に間隔を開けながら左右方向に伸延させて複数の長繊維束を配置した左右方向伸延群と、左右方向に間隔を開けながら前後方向に伸延させて複数の長繊維束を配置した前後方向伸延群と交互に積層させて形成し、被拘束体は、左右方向伸延群の隣り合った長繊維束の間に2本の細幅帯状の長繊維束を左右方向に延伸させながら前後方向伸延群を上下に縫い合わせて配置していること。
【0033】
すなわち、本発明に係るFRPは、プレストレスを材料製造レベルで1次元的、2次元的、さらには、3次元的に導入することにより、集合材である長繊維の束のバラツキを是正して、マトリックスである硬化した接着剤を強化することを図っている。
【0034】
このことより、コンポジット材料(複合材料)としての全体強度の向上を図ると共に、積層構造の欠点の1つであった層間すべりや層間剥離現象の抑止効果を有する力学メカニズムを生じさせることを特徴とするFRPの製造が可能となる。
【0035】
さらには、従来の熱硬化型接着剤で使われているダイを利用した120℃〜150℃の熱硬化工程を省くか、又は、より簡易な(40℃〜70℃の電気抵抗熱などを利用)した熱硬化手法に代えることにより、マトリックスである接着剤の選択自由度を高めることができる。
【0036】
従って、機械(知能ロボット)によるFRPの製造の作業性と生産効率を向上させることができると共に、IT(情報技術)を介して設計情報などを加味したコストダウン化に利する高付加価値のFRP建設材などを製造することができる。
【0037】
また、本発明において、長繊維は、少なくとも軽量で引張に対して高強度のものであれば良く、好ましくは、耐食性、耐衝撃性、耐熱性に優れたものが良い。
【0038】
使用する長繊維としては、例えば、炭素繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維、アラミド繊維、ケプラー繊維、及び、ダイニーマ繊維等がある。
【0039】
ここで、PBO繊維は、耐衝撃性、耐熱性に優れるが、層間せん断強度が炭素繊維等に比べると低いという不具合を有している。
【0040】
しかしながら、本発明では、長繊維にプレストレスを導入することにより、すなわち、力学原理により層間せん断強度を高めることができるため、かかるPBO繊維の使用も可能である。
【0041】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を、1次元的、2次元的及び3次元的にプレストレスを導入するFRP毎に、それぞれ図面を参照しながら説明する。
【0042】
〔1次元的にプレストレスを導入するFRPの説明〕
図1は、1次元的にプレストレスを導入してFRP1を製造する製造工程説明図であり、図1(d)に示すFRP1は、長繊維束2と、同長繊維束2に塗布した接着剤4とを具備し、接着剤4が硬化する前に長繊維束2にその伸延方向に沿って一定の張力Fを加え、同接着剤4が硬化した後に一定の張力Fを開放して、硬化した接着剤4に長繊維束2の伸延方向に沿ったプレストレスPを導入してなるものである。
【0043】
(FRPの製造方法の説明)
以下に、かかるFRP1の製造方法について、図1を参照しながら説明する。
【0044】
(1)図1(a)に示すように、長繊維束2は、一般的に長繊維2aを12,000本若しくは24,000本束ねて帯状となしたものであり、かかる長繊維束2は、ボビン3に巻回されて市販されている。
【0045】
(2)図1(b)に示すように、ボビン3に巻回されている長繊維束2を引き出すと共に、途中で液体状の接着剤4中に浸漬させてa方向に引き出すことにより、同長繊維束2に接着剤4を塗布する。5は接着剤槽、6は引き出しガイドローラ、7は浸漬ガイドローラである。
【0046】
ここで、接着剤4は、例えば、常温(20℃〜30℃)で12時間〜72時間後に硬化し、引張強度σp=500kgf/cm2〜600kgf/cm2を有するものを使用することができ、硬化時間は、作業条件等に応じて接着剤4の種類を選択することにより、10時間〜70時間の範囲で設定することができる。
【0047】
そして、接着剤4には、セラミックスや炭酸カルシウウムやフライアッシュ等を加えることにより、ヤング率を1.5倍〜2倍に高めて、プレストレスコンクリートの原理を効果的に利用することができるようにしている。
【0048】
(3)図1(c)に示すように、接着剤4を塗布した長繊維束2を、同接着剤4が硬化する前に長繊維束2にその伸延方向に沿って一定の張力Fを加え、同状態を接着剤4が硬化するまで保持する。
【0049】
ここで、加える張力Fは、例えば、長繊維2aの引張強度(50,000kg/cm2〜65,000kg/cm2)の2%〜20%の範囲に設定・管理するのが好ましい。
【0050】
これは、接着剤4が硬化する前に長繊維束2にかかる張力Fを加えることにより、同長繊維束2を構成している長繊維2a間の相対的な緩みやずれ変形、さらには、バラツキを是正すると共に、所要のプレストレス効果を発揮させることができるからである。
【0051】
そして、その結果、長繊維束2の引張強度のバラツキを小さくして、その有効引張強度を、張力Fを加えない場合に比して、30%〜40%増大させることができると共に、接着剤4による長繊維2a,2a相互の接着性を良好となすことができるからである。
【0052】
また、長繊維束2に張力Fを加える装置としては、後述する図10のFRP製造装置Bを使用することができる。
【0053】
なお、接着剤4を塗布した長繊維束2の両端部の近傍部分を、別の長繊維束2等により部分的にラッピング(図10参照)すると共に、あらかじめ硬化一体化する等して一定幅の端部定着用アンカー部を形成して、同端部定着用アンカー部に端部定着アンカー機能を持たせることにより、プレストレス導入直後に端部定着用アンカー部が硬化した接着剤4から面拘束を受けるようにすることができる。
【0054】
このようにして、接着剤4の長繊維束2への付着強度(せん断強度)が不足する場合にも、長繊維束2に所要のプレストレスを確実に導入することができて、接着剤4の付着強度不足を補うことができる。
【0055】
(4)図1(d)に示すように、接着剤4が硬化した後に、加えていた張力Fを開放して、硬化した接着材4に長繊維束2の伸延方向に沿ったプレストレスPを導入する。
【0056】
このようにして、プレストレスPを1次元的に導入して、棒状もしくはケーブル状のFRP1を、安価にして簡単かつ迅速に製造することができ、かかるFRP1は、プレストレスコンクリートの原理を利用することができる。
【0057】
ここで、FRP1の引張応力を試算すると、例えば、長繊維束2を120本にまとめて、1本当たり100kgで引っ張れば、プレストレス力は12,000kgとなる。
【0058】
そして、接着剤4で硬化したコンポジット材であるFRP1の円形の断面の直径を1cmとすれば、接着剤4の断面積は、長繊維束2の断面積を差し引いて約0.4cm2となる。
【0059】
ここで、接着剤4のヤング率3.50GPa、長繊維束2のヤング率2.30GPaの値を用いれば、有効プレストレスの減少率は、約0.02となる。
【0060】
このため、有効な圧縮応力としては、12,000×0.02÷0.4≒612kgf/cm2が硬化した接着剤4に加えられ、その結果、FRP1の引張応力は、600(長繊維束2の引張応力σp)+612=1212kgf/cm2の強度のものが得られることになる。
【0061】
さらに、円周方向が長繊維束2により拘束(ラッピング)されている場合には、半径方向の圧縮応力は、0.35×612÷(1−0.35)≒330kgf/cm2となる。
【0062】
従って、長さ1m、幅5mmの長繊維束2(長繊維2aを12,000本束ねたもの)では、100×0.5×330≒16,500kgfの支圧力を受けることになり、これが長繊維束2の層間すべりを防止するメカニズムを形成することになる。
【0063】
次に、プレストレスPを1次元的に導入し、かつ、設計情報を加味したFRP1を製造するFRP製造装置Aと、同FRP製造装置AによりFRP1を製造する方法について、図2〜図9を参照しながら説明する。
【0064】
(FRPの製造装置の説明)
すなわち、FRP製造装置Aは、図5〜図8に示すスターラップS等の補強部材を製造するためのものであり、図2に示すように、支持機枠10の下部に係止片支持台11を配置し、同支持機枠10の中途部に移動手段12を設け、同移動手段12に装置本体13を取り付けて、同装置本体13を移動手段12により係止片支持台11の直上方位置にて前後方向と左右方向と上下方向の3次元で移動可能としている。
【0065】
そして、係止片支持台11は、平板状の支持台本体14の上面に、製造するスターラップS等の補強部材の形状・大きさ等に応じて、所定本数の係止片15を所定の位置にて上方へ向けて突設して形成している。
【0066】
また、移動手段12は、左右方向に伸延する前後一対の左右方向ガイド体16,16間に、前後方向に伸延する前後方向ガイド体17を左右方向に横移動可能に架設し、同前後方向ガイド体17に上下方向に伸延する上下方向ガイド体18を前後方向に横移動可能に取り付け、同上下方向ガイド体18に装置本体支持体19を上下方向に昇降移動可能に取り付けている。20は左右横移動用駆動モータ、21は昇降移動用駆動モータである。なお、前後横移動用駆動モータは図示していない。
【0067】
装置本体13は、上下縦長の箱形に形成した装置本体支持体19に取り付けており、図3及び図4に示すように、長繊維束2を供給する供給部25と、同供給部25から供給される長繊維束2に張力を付加する張力付加部26と、同張力付加部26により張力を付加された長繊維束2に接着剤4を塗布する接着剤塗布部27と、同接着剤塗布部27により接着剤4を塗布された長繊維束2を繰り出す繰り出し部28とを、順次上方から下方へ向けて配設している。
【0068】
そして、供給部25は、装置本体支持体19の上部に前後方向に軸線を向けたボビン3に長繊維束2を巻回して、同長繊維束2を下方へ引き出し可能としており、ボビン3の一側端部にはブレーキ29を設けて、同ブレーキ29によりボビン3を回動停止可能としている。
【0069】
また、張力付加部26は、装置本体支持体19の中途部に、前後方向に軸線を向けた二台の張力付加モータ30,31を上下に平行させて配設し、各張力付加モータ30,31の出力軸32,33にゴム等で滑り止めを施したプーリ34,35を取り付けて、両プーリ34,35間に前記供給部25から引き出した長繊維束2を掛け廻して、同長繊維束2に張力を付加することができるようにしている。
【0070】
しかも、上部の張力付加モータ30と供給部25との間に上部張力検出器36を配設して、同上部張力検出器36により上部の張力付加モータ30よりも上流側に位置する長繊維束2の張力を検出すると共に、下部の張力付加モータ31と接着剤塗布部27との間に下部張力検出器37を配設して、同下部張力検出器37により下部の張力付加モータ30よりも下流側に位置する長繊維束2の張力を検出するようにしている。38は中間ガイドプーリである。
【0071】
ここで、上・下部張力検出器36,37は、空気圧シリンダとポテンショメータあるいはロードセル等のセンサを用いて、長繊維束2の引き出し張力を検出するようにしており、これらの上・下部張力検出器36,37により検出した結果を制御手段(図示せず)に送信し、同制御手段により張力付加モータ30,31を制御して、長繊維束2の引き出し速度によらず、同長繊維束2の張力を一定に保つことができるようにフィードバック制御を行っている。
【0072】
なお、本実施例では、一台の張力付加モータ30により長繊維束2に加えることができる張力には、摩擦係数からくる限界があるので、より強い張力を得るためにもう一台の張力付加モータ31を設けているが、必要に応じてさらに張力付加モータを増設することもできる。
【0073】
接着剤塗布部27は、装置本体支持体19の下部に上面開口の接着剤槽5を配設し、同接着剤槽5の直上方位置に切替・案内手段40を配設している。
【0074】
そして、切替・案内手段40は、上下方向に昇降自在とした切替・案内体41を具備し、同切替・案内体41に切替・案内用プーリ42を取り付けており、装置本体支持体19の下部に設けた懸架用プーリ43,44間にて懸架状となした長繊維束2の中途部を、切替・案内用プーリ42に下方より掛けている。
【0075】
そして、切替・案内体41は、接着剤槽5内の接着剤4中に切替・案内用プーリ42の下部が浸漬するまで下降動作して、同切替・案内用プーリ42に掛けた長繊維束2の中途部に接着剤4を塗布することができる位置と、接着剤槽5内の接着剤4中に切替・案内用プーリ42の下部が浸漬しないように上昇動作して、同切替・案内用プーリ42に掛けた長繊維束2の中途部に接着剤4を塗布しないようにする位置との間で昇降するようにしている。
【0076】
しかも、かかる切替・案内体41は、前記した制御手段により制御して、長繊維束2に接着剤4を塗布する部分と塗布しない(不塗布)部分とを選択的に設計することができるようにしている。
【0077】
繰り出し部28は、装置本体支持体19の下部に、上下方向に伸延するプーリ支持体45の上端部を上下方向の軸線廻りbに回動自在に取り付けて、同プーリ支持体45の中途部に上下方向案内用プーリ46を取り付けると共に、下部に横方向案内用プーリ47を取り付けている。
【0078】
このようにして、長繊維束2の先端部は、上下方向案内用プーリ46と横方向案内用プーリ47を介して繰り出されるようにしており、あらかじめ長繊維束2の先端部を所定の係止片15に固定しておき、同状態にて装置本体支持体19が移動手段12により前後・左右方向に移動された際には、プーリ支持体45が自在に回動して、装置本体支持体19の移動方向に沿って長繊維束2が自動的にかつ円滑に繰り出されるようにしている。
【0079】
上記のように構成したFRP製造装置Aは、移動手段12の駆動部(左右横移動用駆動モータ20、図示しない前後横移動用駆動モータ、及び、昇降移動用駆動モータ21)と、装置本体13の駆動部(ブレーキ29、張力付加モータ30,31、及び切替・案内体41)を制御手段により制御するようにしており、同制御手段では、移動手段12により装置本体13を最適経路(数学では、計算機幾何学の最適経路問題で解くことなどの計算用ソフトを用いる)で移動させながら、繰り出し部28より繰り出した長繊維束2を、設計情報(断面図形情報)によって特定した位置に突設した係止片15間に一筆書きするように張り渡して、所望のスターラップS等の補強部材を製造することができるようにしている。
【0080】
(スターラップの製造工程の説明)
そこで、次に、上記したFRP製造装置AによりスターラップSを製造する工程を、以下に図5を参照しながら説明する。
【0081】
ここで、図5では12本の係止片15群を突設しており、便宜上、長繊維2を張り渡す順番に係止片15a〜係止片15lの符号を付して説明する。
【0082】
(1)図5(a)に実線で示すように、繰り出し部28より繰り出された長繊維束2の先端部を係止片15aに固定し、同長繊維2を係止片15a→係止片15b→係止片15c→係止片15d→係止片15aの順に張り渡して四角形を形成する。
【0083】
ここで、繰り出し部28より繰り出された長繊維束2は、切替・案内体41により接着剤4が塗布されると共に、一定の張力が導入された状態のものである。
【0084】
(2)図5(a)に一点鎖線で、また、図5(b)に実線で示すように、長繊維束2を係止片15a→係止片15e→係止片15f→係止片15g→係止片15h→係止片15i→係止片15fの順に張り渡す。
【0085】
(3)図5(b)に一点鎖線で、また、図5(c)に実線で示すように、長繊維束2を係止片15f→係止片15g→係止片15j→係止片15k→係止片15l→係止片15d→係止片15aの順に張り渡す。
【0086】
(4)図5(c)に一点鎖線で、また、図5(d)に実線で示すように、長繊維束2を係止片15a→係止片15f→係止片15g→係止片15b→係止片15c→係止片15h→係止片15i→係止片15d→係止片15aの順で張り渡して、一巡目を完了する。
【0087】
そして、必要に応じて、上記した(1)〜(4)の工程を繰り返すことにより、製造するスターラップSに係止片15の軸線方向に所要の厚みを持たせることができ、接着剤が硬化するのを待って、係止片15から切り離して固定を解除することにより、長繊維束2の伸延方向にプレストレスを導入したスターラップSを製造することができる。
【0088】
このように、スターラップSの製造は、長繊維束2を順次繰り出し部28より最適経路で繰り出して、一筆書きのようにして連続的に行うことができるため、自動的にかつ効率良く行うことができる。
【0089】
しかも、スターラップSの形状や大きさも設計情報(断面図形情報)によって特定することにより、図6に示すコ字型のスターラップS、図7に示すI字型のスターラップS、及び図8に示すT字型のスターラップSも製造することができ、その他にも幅広く適応させることができる。
【0090】
(スターラップの変容例の説明)
図9は、前記FRP製造装置Aにより製造した横長のスターラップSを示しており、同スターラップSは、所定の個所に部分的に接着剤4を塗布していない部分48を形成した変容例である。
【0091】
この接着剤4を塗布していない部分48は、制御手段により切替・案内体41を制御して、同切替・案内体41により長繊維束2を接着剤4と接触しない位置に切替・案内することにより自動的に形成することができる。
【0092】
その結果、最終的に製造されたスターラップSを、接着剤4を塗布していない部分48を中心に折り曲げることができる。
【0093】
従って、スターラップSを搬送等する際には、同スターラップSを、接着剤4を塗布していない部分48を中心に折り畳んでコンパクトな状態にすることにより、効率良く搬送することができる。
【0094】
そして、接着剤4を塗布していない部分には、搬送等した後に接着剤4を塗布して常温で硬化させることができる。
【0095】
ここで、従来の市販のものは、円形シリンダーや矩形断面の柱状の金型に、熱硬化型のプリプレグの長繊維束2を複数本束ね、これをらせん状に巻きつけて熱硬化する製造法が用いられている。
【0096】
ところが、この場合、金型の製造コストは高く、断面寸法が異なるごとに別の金型を用意する必要があり、その保管・設置費も無視できないため、製品のコスト高を招いていた。
【0097】
しかも、対象が単純な丸型や矩形型に限定され、図5〜図8に示すような複雑な断面を考慮することは、極めて困難であった。
【0098】
これに対して、本実施例では、係止片15群を適切に組み合わせ、かつ連続的に多層に作ることが可能となるため、生産効率が高い。さらに、係止片15群の相対位置を変動させる工夫を施すことにより、変断面の横筋材を低コストで作ることもできる。
【0099】
〔2次元的にプレストレスを導入するFRPの説明〕
図11及び図12は、2次元的にプレストレスを導入して製造した第1実施例としてのFRP49を示している。
【0100】
ここで、長手方向をX軸、半径方向をr軸、そして、円周方向をθ軸とすれば、硬化した接着剤4にはX軸方向の応力σxとr軸方向の応力σr(≒σθ)が働くことになり、σxとσrとで2次元、σxとσrとσθ(≒σr)とで3次元となる軸対称問題となるので、2次元的とした。
【0101】
(第1実施例としてのFRPの説明)
第1実施例としてのFRP49は、図10〜図12に示すように、前記した1次元的にプレストレスPを導入したFRP1を被拘束体K1として、同被拘束体K1の外周面を被覆して、同被拘束体K1がその伸延方向と直交する方向に膨張する歪みを拘束する拘束体K2とを具備し、拘束体K2は、接着剤4が硬化する前に長繊維束2にその伸延方向に沿って一定の張力Fを加え、同接着剤4が硬化した後に一定の張力Fを開放して、硬化した接着剤4に長繊維束2の伸延方向に沿ったプレストレスPを導入してなるものである。
【0102】
(第1実施例としてのFRPの製造装置の説明)
図13は、2次元的にプレストレスを導入して第1実施例としてのFRP49を製造するFRP製造装置Bを示しており、同FRP製造装置Bは、左右一対の軸支持台50,51を左右方向に一定の間隔を開けて配置し、両軸支持台50,51にそれぞれ回動軸52,53を左右方向に対向させて取り付け、各回動軸52,53に回転体54,55を介して係止片56,57を取り付ける一方、各軸支持台50,51の近傍位置には駆動用モータ58,59を配置して、各駆動用モータ58,59の出力軸60,61と各回動軸52,53との間に伝動ベルト62,63をプーリ64,65,66,67を介して連動連結している。
【0103】
(第1実施例としてのFRPの製造方法の説明)
次に、上記したFRP製造装置Bにより2次元的にプレストレスを導入した第1実施例としてのFRP49の製造方法について説明する。
【0104】
(1)図13に示すように、FRP製造装置Bの両係止片56,57間に接着剤4を塗布した長繊維束2を一定の張力を加えながら所要回数にわたって平行弦状に掛け回して被拘束体K1となす。
【0105】
(2)図13に示すように、細幅帯状となして接着剤4を塗布した長繊維束2を、上記被拘束体K1の左側端部より一定の張力を加えながら螺旋状に巻き付けて被覆することにより拘束体K2となす。
【0106】
この際、拘束体K2の形成は、細幅帯状となして接着剤4を塗布した長繊維束2は、先端部を被拘束体K1の左側端部に接着して、同状態にて引っ張って一定の張力を加えると共に、左右一対の駆動用モータ58,59を同調させて回動させて、左右一対の係止片56,57間に掛け回した被拘束体K1を左右一対の回動軸52,53の軸線廻りに回転させることにより、長繊維束2を被拘束体K1の外周面に巻き付けることができ、さらに、同長繊維束2を被拘束体K1と平行に右方向cへゆっくり移動させることにより、同被拘束体K1の外周面に簡単に螺旋状に巻き付けて被覆(ラッピング)することができる。dは被拘束体K1の回転方向を示す。
【0107】
(3)図13に示すように、異形鉄筋と同様に、コンクリートとの付着性能を高める場合には、このラッピングと同時平行して、拘束体K2の外周面に繊維材等の紐状片68を右方向eへゆっくり移動させながら略一定のピッチで螺旋状に巻き付ける。
【0108】
(4)図10に示すように、左右方向に1次元的に張力Fを加えられた被拘束体K1と、同被拘束体K1の外周面に被覆(ラッピング)した拘束体K2にそれぞれ塗布した接着剤4,4が硬化したところで、被拘束体K1の両端部と拘束体K2の右側部を切断して、加えていた一定の張力Fを開放する。
【0109】
このようにして、図11に示すように、硬化した接着剤4に被拘束体K1の伸延方向(左右方向)に沿ったプレストレスPと、図12に示すように、拘束体K2の円周方向に沿ったプレストレス(図示せず)とを導入して、同被拘束体K1がその伸延方向と直交する方向(半径方向)に膨張する膨張力f1を拘束体K2により拘束して、同拘束体K2により被拘束体K1側へ作用する拘束力f2となして、被拘束体K1に導入した1次元的なプレストレスPを拘束体K2により封じ込めることができるようにしている。
【0110】
すなわち、1次元的にプレストレスPを導入した棒状のFRP1では、一般に偏心力などによって反り易く、直線性を求められる長尺物に対しては一定の限界があるが、上記したように拘束体K2により拘束して2次元的にプレストレスPを導入したFRP49では、被拘束体K1に1次元的に作用するプレストレスPは、硬化した接着剤4のマトリックスを圧縮し、同被拘束体K1の方向に膨らもうとし、ひずみを生じる。
【0111】
これに対して、被拘束体K1をラッピングする外周の拘束体K2は、この膨らみを抑止し、同被拘束体K1の硬化した接着剤4のマトリックスはその反力として、外方から中心に向かう半径方向に圧縮力を受ける。
【0112】
その結果、被拘束体K1は、2方向(被拘束体K1の伸延方向とその半径方向)のプレストレスを受ける(コンファイン効果を得る)ことになる。これが2次元的なプレストレス原理をFRP49に導入する例の1つであり、この種の棒材は、主として、引張力材や曲げ材や捩り材等として用いられることになる。
【0113】
このように、上記のようにして製造した棒状のFRP49では、被拘束体K1に導入した1次元的なプレストレスPを、設定した通りに確保することができるものであり、プレストレスコンクリートの原理を利用することができる。
【0114】
(第2実施例としてのFRPの説明)
図14は、2次元的にプレストレスを導入して第2実施例としてのFRP49を製造する製造工程説明図であり、図14(f)に示すFRP49は、前記したFRP製造装置Aにより製造した四角形筒状の拘束体K2と、同拘束体K2中に形成した被拘束体K1とを具備し、同被拘束体K1の接着剤4が硬化する前に同被拘束体K1を形成する長繊維束2にその伸延方向に沿って一定の張力Fを加え、同接着剤4が硬化した後に一定の張力Fを開放して、硬化した接着剤4に長繊維束2の伸延方向に沿ったプレストレスPを導入してなるものである。
【0115】
(第2実施例としてのFRPの製造方法の説明)
以下に、かかるFRP49の製造方法について、図14を参照しながら説明する。
【0116】
(1)図14(a)に示すように、前記したFRP製造装置Aにより1次元的にプレストレスPを導入した四角形筒状の拘束体K2を製造する。
【0117】
すなわち、長繊維束2に接着剤4を塗布し、同接着剤4が硬化する前に長繊維束2にその伸延方向に沿って一定の張力を加えながら、同長繊維束2を所定の位置に突設した複数の係止片15,15間に閉塞回路状に張り渡すと共に、軸線方向に連続させて積層させ、同状態を接着剤4が硬化するまで保持して、同接着剤4が硬化した後に加えていた一定の張力を開放し、硬化した接着剤4に長繊維束2の伸延方向に沿ったプレストレスPを導入して四角形筒状の拘束体K2を形成する。
【0118】
(2)図14(b)に示すように、接着剤4を塗布した長繊維束2を供給する長繊維束供給台70上に、上記四角形筒状の拘束体K2を上下方向に軸線を向けて載置する。
【0119】
そして、拘束体K2の直上方位置に長繊維束2を引き上げる引き上げフック71を配置する。
【0120】
(3)図14(c)に示すように、引き上げフック71を拘束体K2中に下降させて、長繊維束2の上端部に引っ掛けると共に、同引き上げフック71を上方に引き上げることにより、拘束体K2中に長繊維束2を挿通した状態にて一定の張力Fを加えて被拘束体K1となす。
【0121】
(4)図14(d)に示すように、拘束体K2中に被拘束体K1を挿通した状態にて、長繊維束供給台70と拘束体K2とにより形成される空間内に接着剤4を充填する。
【0122】
(5)図14(e)に示すように、拘束体K2内に充填して被拘束体K1に塗布した接着剤4を硬化させる。
【0123】
(6)図14(f)に示すように、接着剤4が硬化したところで、被拘束体K1を形成する長繊維束2の端部を切断して、加えていた一定の張力Fを開放することにより、硬化した接着剤4に被拘束体K1の伸延方向に沿ったプレストレスPを導入して、同被拘束体K1がその伸延方向と直交する方向に膨張する歪みを拘束体K2により拘束する。
【0124】
このようにして、被拘束体K1に導入した1次元的なプレストレスPを拘束体K2により封じ込めることができるようにしている。
【0125】
従って、上記のようにして製造したブロック状のFRP49では、被拘束体K1に導入した1次元的なプレストレスPを設定した通りに確保することができるものであり、プレストレスコンクリートの原理を利用することができる。
【0126】
また、拘束体K2の断面形状や大きさは、上記した四角形に限らず、使用目的に応じて、T型やI型等に任意に設定することができ、例えば、自動車や飛行機の曲げ構造材やねじり構造材にも利用できる。
【0127】
この場合、軽量で、プレストレスによる高強度化ができ、かつ、耐食性に優れるというメリットがある。
【0128】
また、一定の曲率で湾曲したFRP49を製造する場合には、拘束体K2に凸形のあて金具を設置したうえで、同被拘束体K2中に挿通した被拘束体K1の両端部を接線方向に引張すると共に、両端部を係止片群にそれぞれ固定し、接着剤4が硬化した後に両端部を切断することにより、湾曲したFRP49を得ることができる。
【0129】
(第3実施例としてのFRPの説明)
図15は、第3実施例としてのFRP49を示しており、同FRP49は、前記した1次元的にプレストレスPを導入したFRP1を被拘束体K1として、同被拘束体K1の外周面を被覆して、同被拘束体K1がその伸延方向と直交する方向に膨張する歪みを拘束する拘束体K2とを具備しており、同拘束体K2は、硬化した接着剤4の10倍以上の剛性と強度を有する筒状体である。
【0130】
ここで、拘束体K2は、鋼等の金属やアルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等のセラミックス材や強化ガラス等により筒状体に形成したものを使用することができる。
【0131】
このようにして、FRP49は、剛性を有する筒状体である拘束体K2を外殻として、塑性加工、硬度、耐熱性、及び、耐摩耗性を向上させることができる。
【0132】
(第3実施例としてのFRPの製造装置の説明)
図16は、第3実施例としてのFRP49を製造するFRP製造装置Bの模式図であり、同FRP製造装置Bは、支持台85上に固定側係止片86を立設すると共に、同支持台85上に可動台87を介して可動側係止片88を立設して、同可動台87により可動側係止片88を固定側係止片86に対して接近・離隔調節自在となしている。89は接近・離隔調節用の油圧ジャッキである。
【0133】
(第3実施例としてのFRPの製造方法の説明)
次に、上記したFRP製造装置Bにより第3実施例としてのFRP49を製造する方法について、図16を参照しながら説明する。
【0134】
(1)図16に示すように、剛性を有する筒状の拘束体K2中に長繊維束2を挿通すると共に、同長繊維束2を固定側係止片86と可動側係止片88との間に巻回する。
【0135】
(2)図16に示すように、拘束体K2中に接着剤4を充填し、同接着剤4が硬化する前に長繊維束2にその伸延方向に沿って一定の張力を加えて被拘束体K1となす。
【0136】
この際、油圧ジャッキ89を作動させることにより可動台87を介して可動側係止片88を固定側係止片86から離隔する方向に移動させることにより、両係止片86,88間に巻回した長繊維束2に一定の張力を加えることができる。
【0137】
(3)同状態を接着剤4が硬化するまで保持して、同接着剤4が硬化した後に、長繊維束2の両端部を切断して、被拘束体K1に加えていた一定の張力を開放する。
【0138】
このようにして、硬化した接着剤4に被拘束体K1の伸延方向に沿ったプレストレスを導入すると共に、同被拘束体K1がその伸延方向と直交する方向に膨張する歪みを拘束体K2により拘束する。
【0139】
この際、被拘束体K1は、拘束体K2の拘束圧を受けて、両者は一体化される。
【0140】
そして、拘束体K2の拘束圧は、被拘束体K1を形成する複数本の長繊維束2の間にも側方拘束力として作用して、同長繊維束2の層間すべり現象を防止する効果を有する。
【0141】
また、接着剤4の硬化時間は、例えば、常温(20℃〜30℃)では12時間〜72時間と異なるが、拘束体K2を金属等の熱伝導性の良い素材により成形した場合には、同拘束体K2を70℃〜200℃に加熱することにより、接着剤4の硬化時間を大幅に短縮(3時間〜5時間)することができる。
【0142】
しかも、一般的に、鋼等の金属は、温度の降下によって収縮する性質を有するため、内側にある被拘束体K1に拘束力を付加することになって、拘束体K2と被拘束体K1との一体性をより一層高めることができる。
【0143】
ここで、拘束体K2が被拘束体K1に作用する拘束力(層間すべり現象の抑止力)を試算する。
【0144】
例えば、図17に示すように、半径r=5.5mm、厚さt=1mm、ヤング率Es=210GPaの鋼材の円筒(長さ1m)を拘束体K2として採用する。
【0145】
そして、長繊維束2として、ヤング率Ecf=230GPaで12Kの連続炭素長繊維束120本を採用し、接着剤4としてヤング率Ep=3.5GPaのエポキシ接着剤を採用する。
【0146】
接着剤4のヤング率Ep=3.5GPaに対して、鋼材のヤング率はEs=210GPaと著しく大きいため、半径方向の拘束効果(コンファイン効果)は高く、このため、材軸方向(この場合、X方向)の接着剤4の応力σxとひずみεxの関係は、ポアソン比をνとすれば、
【0147】
【数1】
Figure 0004244116
硬化した接着剤4に導入されるプレストレス応力σpは、プレストレスの原理を用いれば,クリープを無視して、
【0148】
【数2】
Figure 0004244116
【0149】
【数3】
Figure 0004244116
【0150】
【数4】
Figure 0004244116
なお、これらの推定値は、クリープ硬化と鋼材の熱収縮効果が無視された近似値である。
【0151】
図18は、外殻となる拘束体K2の変容例であり、同拘束体K2は、複数の筒状空間90を有するマルチシェル状に形成しており、各筒状空間90内に被拘束体K1を収容して、複数の被拘束体K1を一体的に拘束することができるようにしている。
【0152】
(第4実施例としてのFRPの説明)
図19は、第4実施例としてのFRP49を示しており、同FRP49は、第2実施例としてのFRP49の外周面を、さらに外殻としての第3実施例の拘束体K2により拘束したものである。
【0153】
このようにして、被拘束体K1を、プレストレスを付与する拘束体K2と外殻として機能する拘束体K2とにより二重に拘束することにより、被拘束体K1の拘束効果である層間すべりの防止効果を高めることができると共に、拘束体K2が外殻として機能して、FRP49の塑性加工、硬度、耐熱性、及び、耐摩耗性を向上させることができる。
【0154】
(第5実施例としてのFRPの説明)
図20は、第5実施例としてのFRP49を示しており、同FRP49は、拘束体K2により被拘束体K1,K1の交差部分を部分的に拘束している。
【0155】
そして、拘束体K2は、図21に示すように、上下一対の薄肉の拘束体形成板91,91間に複数の支柱92を介設して、両拘束体形成板91,91間に左右方向(X方向)と前後方向(Y方向)に開口する接着剤充填空間93を形成している。
【0156】
(第5実施例としてのFRPの製造装置の説明)
図21は、第5実施例としてのFRP49を製造するFRP製造装置Bを示しており、同FRP製造装置Bは、X方向に固定側係止片94と可動側係止片95とを対向させて配置する一方、Y方向に固定側係止片96と可動側係止片97とを対向させて配置している。
【0157】
そして、可動側係止片95,97は、前記した可動台87,87上に立設して、固定側係止片94,96に対して接近・離隔調節自在としている。98は固定台である。
【0158】
(第5実施例としてのFRPの製造方法の説明)
次に、上記したFRP製造装置Bにより第5実施例としてのFRP49を製造する方法について、図21を参照しながら説明する。
【0159】
(1)図21に示すように、X,Y方向にそれぞれ対向する各係止片94,95,96,97間に長繊維束2,2を拘束体K2の接着剤充填空間93中に通して相互に交差状に巻回する。
【0160】
(2)図21に示すように、拘束体K2の接着剤充填空間93内に接着剤4を充填し、同接着剤4が硬化する前に長繊維束2,2にそれぞれの伸延方向に沿って一定の張力を加えて被拘束体K1となす。
【0161】
すなわち、油圧ジャッキ89,89を作動させて、可動台87,87を介して可動側係止片95,97を固定側係止片94,96から離隔する方向に移動させることにより、これらの係止片94,95,96,97間に巻回した長繊維束2,2に一定の張力を加えて被拘束体K1となす。
【0162】
(3)同状態を接着剤4が硬化するまで保持して、同接着剤4が硬化した後に、長繊維束2,2の両端部を切断して、被拘束体K1に加えていた一定の張力を開放する。
【0163】
このようにして、硬化した接着剤4にX方向とY方向に沿ったプレストレスを導入して被拘束体K1を形成すると共に、、同被拘束体K1が上下方向(Z方向)に膨張する歪みを拘束体K2の薄肉板体91,91により拘束する。
【0164】
この際、被拘束体K1は、拘束体K2の拘束圧を受けて、両者は一体化される。
【0165】
ここで、第3実施例としてのFRP49を製造する場合と同様に、拘束体K2は、金属製素材により成形して、同拘束体K2を加熱することにより、接着剤4の硬化時間を短縮することができる。
【0166】
(第6実施例としてのFRPの説明)
図22(b)は、第6実施例としてのFRP49を示しており、同FRP49は、図22(a)に示すように、断面六角形の二個の筒状体を左右に一体に連設して形成した外殻としての拘束体K2中に被拘束体K1を挿通し、図22(b)に示すように、同拘束体K2の周囲を加圧して被拘束体K1の断面積を略同一に保持したまま拘束体K2の周長を増大させることにより、拘束体K2を形成する長繊維束の伸延方向に沿ったプレストレスを導入してなるものである。
【0167】
そして、外殻としての拘束体K2は、前記したFRP製造装置Aにより長繊維束2を閉塞回路状に張り渡して、断面六角形の二個の筒状体を左右に隣接させて一体に連設した状態に形成している。
【0168】
ここで、拘束体K2の周長を増大させることによりプレストレスを導入する原理を、以下に図23を参照しながら説明する。
【0169】
すなわち、図23に示すように、断面積略一定の条件で六角形A1,B1,C1,D1,E1,F1を加圧して、四角形A2,C2,D2,F2にする。
【0170】
元の六角形A1,B1,C1,D1,E1,F1=S1、加圧変形後の四角形A2,C2,D2,F2=S2、S1=S2とすると、a1≒0.308cmとなる。
【0171】
その結果、直線A2C2≒2.62cm>折線A1B1C1=2.44cm,直線A2F2=1.3cm>直線A1F1=1.0cmとなる。
【0172】
従って、変形後の水平辺A2C2,D2F2,鉛直辺A2F2,C2D2のいずれにも引張力が働くことになり、かかる引張力をプレストレスとして被拘束体K1に作用させることができる。
【0173】
(第6実施例としてのFRPの製造方法の説明)
次に、上記した第6実施例としてのFRP49を製造する方法について、図24を参照しながら説明する。
【0174】
(1)図24に示すように、前記した第2実施例としてのFRP49の拘束体K2を製造する場合と同様に、FRP製造装置Aにより長繊維束2を閉塞回路状に張り渡すと共に、軸線方向に連続させて積層させることにより、断面六角形の二個の筒状体を一体に連設した拘束体K2を形成する。
【0175】
この際、拘束体K2は、側壁部110,111,112にだけ接着剤4を塗布しておき、天井部113,114と底部115,116には接着剤4を塗布していないでおくことにより、最低限度の形状を保持して、後述する加圧・成形時の成形性を良好に確保できるようにしている。
【0176】
(2)図24に示すように、筒状の拘束体K2中に長繊維束2を挿通すると共に、同拘束体K2中に接着剤4を充填する。
【0177】
(3)接着剤4が硬化する前に、長繊維束2にその伸延方向に沿って一定の張力を加えて被拘束体K1となす。
【0178】
(4)同状態にて拘束体K2の周囲を上下・左右一対のプレス体117,117,118,118により加圧して、図22にも示すように、所要の形状に成形する。
【0179】
この際、被拘束体K1の断面積を略同一に保持したまま拘束体K2の周長を増大させることにより、拘束体K2に同拘束体K2を形成する長繊維束2の伸延方向に沿ったプレストレスを導入する。
【0180】
(5)同状態を接着剤4が硬化するまで保持して、同接着剤4が硬化した後に被拘束体K1に加えていた一定の張力を開放して、硬化した接着剤4に被拘束体K1の伸延方向に沿ったプレストレスを導入して、同被拘束体K1がその伸延方向と直交する方向に膨張する歪みを拘束体K2により拘束する。
【0181】
このようにして、硬化した接着剤4にプレストレスを導入して被拘束体K1を形成すると共に、同被拘束体K1が周囲に膨張する歪みを拘束体K2により拘束する。
【0182】
この際、被拘束体K1は、拘束体K2の拘束圧を受けて、両者は一体化される。
【0183】
しかも、FRP49を加圧により一体成形するようにしているため、同FRP49の外形状の成形精度を高めることができる。
【0184】
(第7実施例としてのFRPの説明)
図25は、第7実施例としてのFRP49を示しており、同FRP49は、拘束体K2としての金属製円管の外周に被拘束体K1を配置すると共に、同被拘束体K1の外周に前記第6実施例の拘束体K2を配置してなるものである。
【0185】
そして、外殻としての拘束体K2は、前記したFRP製造装置Aにより長繊維束2を閉塞回路状に張り渡して、断面六角形の複数の筒状体を左右方向に隣接させて一体に連設した状態に形成している。
【0186】
(第7実施例としてのFRPの製造方法の説明)
次に、上記した第7実施例としてのFRP49を製造する方法について、図26を参照しながら説明する。
【0187】
(1)図26に示すように、前記した第2実施例としてのFRP49の拘束体K2を製造する場合と同様に、FRP製造装置Aにより長繊維束2を閉塞回路状に張り渡すと共に、軸線方向に連続させて積層させることにより、断面六角形の複数の筒状体を左右方向に一体に連設した拘束体K2を形成する。
【0188】
この際、拘束体K2は、前記した第6実施例の拘束体K2と同様に側壁部120にだけ接着剤4を塗布しておき、天井部121と底部122には接着剤4を塗布しないでおくことにより、最低限度の形状を保持して、後述する加圧・成形時の成形性を良好に確保することができるようにしている。
【0189】
(2)図26に示すように、外側の拘束体K2の一部を形成する所要の筒状体中に、内側の拘束体K2としての金属製円管を挿通し、これら内側の拘束体K2と外側の拘束体K2との間に被拘束体K1としての長繊維束2を配置する。
【0190】
(3)図26に示すように、内外側の拘束体K2,K2間に接着剤4を充填し、同接着剤4が硬化する前に長繊維束2にその伸延方向に沿って一定の張力を加えて被拘束体K1となす。
【0191】
(4)同状態にて外側の拘束体K2の周囲を上下一対のプレス体123,124により加圧することにより、図26に一点鎖線で示すように、また、図25に実線で示すように、所要の外形状に成形する。
【0192】
この際、被拘束体K1の断面積を略同一に保持したまま外側の拘束体K2の周長を増大させることにより、外側の拘束体K2に同拘束体K2を成形する長繊維束2の伸延方向に沿ったプレストレスを導入する。
【0193】
(5)同状態を接着剤4が硬化するまで保持して、同接着剤4が硬化した後に被拘束体K1に加えていた一定の張力を開放することにより、硬化した接着剤4に被拘束体K1の伸延方向に沿ったプレストレスを導入して、同被拘束体K1がその伸延方向と直交する方向に膨張する歪みを内外側の拘束体K2,K2により拘束する。
【0194】
このようにして、硬化した接着剤4にプレストレスを導入して被拘束体K1を形成すると共に、同被拘束体K1が周囲に膨張する歪みを内外側の拘束体K2,K2により拘束する。
【0195】
この際、被拘束体K1は、内外側の拘束体K2,K2の拘束圧を受けて、両者は一体化される。
【0196】
そして、FRP49を加圧により一体成形するようにしているため、同FRP49の外形状の成形精度を高めることができる。
【0197】
しかも、内側の拘束体K2は、補強用の芯材としても、また、連結用部材としても機能する。
【0198】
なお、本第7実施例では、内側の拘束体K2は金属製素材により成形したものを使用し、また、外側の拘束体K2は長繊維束2により形成したものを使用しているが、これら内外側に配置する拘束体K2,K2の素材の組み合わせは、何らこれに限られるものではなく、金属、セラミックス、強化ガラス等の中から適宜選択して使用することができる。
【0199】
〔3次元的にプレストレスを導入するFRP〕
図27は、3次元的にプレストレスを導入した第1実施例としての薄肉板状のFRP100を示している。
【0200】
(第1実施例としてのFRPの説明)
第1実施例としての薄肉板状のFRP100は、図27(c)に示すように、1次元的にプレストレスPを導入して左右方向に伸延する帯状のFRP1を前後方向に間隔を開けて複数配置した左右方向伸延群75と、1次元的にプレストレスPを導入して前後方向に伸延する帯状のFRP1を左右方向に間隔を開けて複数配置した前後方向伸延群76とを具備し、左右方向伸延群75と前後方向伸延群76とを相互に縫うように重合させて格子状体77を形成してなるものである。
【0201】
(第1実施例としてのFRPの製造方法の説明)
次に、上記した薄肉板状のFRP100の製造方法について、図27を参照しながら説明する。
【0202】
(1)図27(a)に示すように、左右方向に伸延する長繊維束2に接着剤4を塗布して帯状となすと共に、前後方向に間隔を開けて複数配置することにより左右方向伸延群75を形成する。
【0203】
(2)図27(a)に示すように、前後方向に伸延する長繊維束2に接着剤4を塗布して帯状となすと共に、左右方向に間隔を開けて複数配置することにより前後方向伸延群76を形成する。
【0204】
この際、前後方向伸延群76は、左右方向伸延群75に対して相互に縫うように(波打ち状に)重合させて格子状体77を形成する。
【0205】
(3)図27(b)に示すように、接着剤4が硬化する前に格子状体77を形成する各長繊維束2にその伸延方向に沿って一定の張力Fを加える。
【0206】
(4)図27(c)及び図28に示すように、接着剤4が硬化した後に一定の張力Fを開放して、縦横に交差して硬化した接着剤4に各長繊維束2の伸延方向に沿ったプレストレスPx,Pyを導入すると共に、縫うように(波打ち状に)重合する各長繊維束2,2が相互におよぼし合う上下方向のプレストレスPzを導入する。
【0207】
この際、左右方向伸延群75と前後方向伸延群76とが、それぞれ相互に被拘束体K1及び拘束体K2として機能する。
【0208】
このようにして、縦横に交差する状態にプレストレスPx,Py,Pzを導入することにより、材料レベルで3次元的にプレストレスを導入した薄肉板状のFRP100を製造することができ、かかる薄肉板状のFRP100は、3次元的にプレストレスPx,Py,Pzの導入により高強度化して、しかも、軽量でかつ耐食性に優れたものとなすことができる。
【0209】
その結果、かかるFRP100の活用範囲を大幅に拡張することができる。
【0210】
(第2実施例としてのFRPの説明)
図37及び図38は、3次元的にプレストレスを導入して製造した第2実施例としての積層板状のFRP101を示している。
【0211】
すなわち、第2実施例としてのFRP101は、1次元的にプレストレスPを導入して左右方向に伸延する帯状のFRP1を前後方向に間隔を開けて複数配置した左右方向伸延群80と、1次元的にプレストレスPを導入して前後方向に伸延する帯状のFRP1を左右方向に間隔を開けて複数配置した前後方向伸延群81と、両伸延群80,81を上下方向に縫い合わせる縫い合わせ用伸延群82とを具備し、左右方向伸延群80と前後方向伸延群81とを積層させると共に、積層した両伸延群80,81を縫い合わせ用伸延群82により上下方向に縫い合わせて積層体83を形成している。
【0212】
(第2実施例としてのFRPの製造方法の説明)
次に、第2実施例としてのFRP101の製造方法について、以下に図29〜図38を参照しながら説明する。
【0213】
(1)図29に示すように、左右方向に伸延する長繊維束2に接着剤4を塗布して帯状となすと共に、前後方向に間隔を開けて複数配置することにより左右方向伸延群80を形成する。
【0214】
この際、長繊維束2には一定の張力Fを加えておく。
【0215】
(2)図30に示すように、前後方向に伸延する長繊維束2に接着剤4を塗布して帯状となすと共に、上記左右方向伸延群80上にて、左右方向に間隔を開けて複数配置することにより前後方向伸延群81を形成する。
【0216】
この際、長繊維束2には一定の張力Fを加えておく。
【0217】
(3)図31に示すように、上記した左右方向伸延群80と前後方向伸延群81とを所要の層数だけ積層させる。
【0218】
(4)図32〜図35に示すように、前後方向に一定の間隔を開けた積層した左右方向伸延群80の間において、左右方向に伸延する長繊維束2に接着剤4を塗布して帯状となすと共に、前後方向伸延群81を上下方向に縫い合わせるように配置して縫い合わせ用伸延群82を形成し、これら左右方向伸延群80と前後方向伸延群81と縫い合わせ用伸延群82とにより積層体83を形成する。
【0219】
この際、図32〜図35に示すように、縫い合わせ用伸延群82を形成する各長繊維束2は、前後方向に隣接する長繊維束2,2同士が前後方向伸延群81を形成する長繊維束2を互い違いに上下方向に縫い合わせるようにしている。
【0220】
(5)図33及び図36に示すように、接着剤4が硬化する前に積層体83を形成する各長繊維束2にその伸延方向に沿って一定の張力Fx,Fy,Gxを加える。
【0221】
(6)図37及び図38に示すように、接着剤4が硬化した後に一定の張力Fx,Fy,Gxを開放して、縦横に交差して硬化した接着剤4に各長繊維束2の伸延方向に沿ったプレストレスPx,Pyを導入すると共に、図35に示すように、縫い合わせ用伸延群82により左右方向伸延群80と前後方向伸延群81とを上下方向から狭圧するプレストレスPzを導入する。
【0222】
この際、縫い合わせ用伸延群82は、図36に示すように、積層させた被拘束体K1としての左右方向伸延群80と前後方向伸延群81とを束ねるように上下方向から狭圧して、これらの伸延群80,81にプレストレスPzを拘束力として導入する拘束体K2として機能する。
【0223】
このようにして、材料レベルで3次元的にプレストレスPx,Py,Pzを導入した積層板状のFRP101を製造することができ、かかる積層板状のFRP101は、外力による積層の層間ずれや層間剥離を効果的に抑止することができる。
【0224】
その結果、かかるFRP101の活用範囲を大幅に拡張することができる。
【0225】
ここで、一定の張力Fx,Fyにより、硬化した接着剤4のマトリックスが、圧縮応力σxy=1000 kgf/cm2〜2000kgf/cm2を受けたとすると、板厚方向に引張ひずみを生じる。
【0226】
これが、拘束体K2である縫い合わせ用伸延群82を形成する一対の長繊維束2,2によって完全に拘束されたとすれば、その拘束応力は、接着剤4のボアソン比νを0.35とするとき、σz2=ν(σx+σy)=700kgf/cm2〜1400kgf/cm2を受ける。
【0227】
しかも、かかる拘束応力は左右方向伸延群80と前後方向伸延群81の交差した所では、σz1とσz2が加算され、その分プレストレス効果が高められることになる。ただし、自由表面の領域は、このσz2の力は解放されてゼロとなる。
【0228】
いずれにしても、一定の張力Fx,Fy,Gxの最適な組み合わせは、3次元FEM解析法等によって特定することができ、かかる3次元FEM解析法を用いた積層板状のFRP101の製造は、外力による積層の層間ずれや層間剥離を従来のものより効果的に抑止することができる.
(第3実施例としてのFRPの説明)
図39は、第3実施例としてのFRP102であり、同FRP102は、前記した第2実施例としてのFRP101を形成する各長繊維束2,2,2に、それぞれ所定のプレストレスPx,Py,Pzを導入することにより、各長繊維束2,2,2に塗布した接着剤4,4,4の硬化後のマトリックスに所要の曲げ変形を生じさせることにより製造している。
【0229】
この際、例えば、張力Fyを積層方向に各層ごとに変化させれば、左右方向の軸線まわりの偏心曲げモーメントが生じることになり、その結果、積層板は所要の曲率で左右方向の軸線まわりに曲げられることになる。
【0230】
従って、この力学原理を積極的に利用すれば、プレス加工することなく曲面版を容易に製造することができる。
【0231】
このようにして、材料レベルで3次元的にプレストレスを導入した積層板状のFRP102を製造することができると共に、各長繊維束2に塗布した接着剤4の硬化後のマトリックスに所要の曲げ変形を生じさせることができるため、かかるFRP102の活用範囲を著しく大幅に拡張することができる。
【0232】
【発明の効果】
本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0233】
(1)請求項1記載の本発明に係る繊維強化プラスティックの製造方法は、接着剤が塗布されるとともに伸延方向に沿って一定の張力が加えられた長繊維束の接着剤を硬化させて形成する被拘束体に、接着剤が塗布されるとともに細幅帯状とした長繊維束の接着剤を硬化させて形成する拘束体を装着して、被拘束体に拘束体で外側から中心に向かう方向に拘束力を作用させている繊維強化プラスティックの製造方法において、被拘束体となる長繊維束に塗布された接着剤と、拘束体となる長繊維束に塗布された接着剤とを硬化させる際に、被拘束体となる長繊維束には伸延方向に沿って一定の張力を作用させるとともに、拘束体となる長繊維束にも一定の張力を作用させながら硬化させるものである
【0234】
このように、接着剤が硬化する前に長繊維束に一定の張力を加えているため、同長繊維束を構成している素線間の相対的な緩みやずれ変形、さらには、バラツキを是正することができる。
【0235】
その結果、長繊維束の引張強度のバラツキを小さくして、その有効引張強度を高めることがでると共に、接着剤による長繊維相互の接着性を良好となすことができる。
【0236】
従って、接着剤としては高い接着強度を必要としないことから、常温で硬化する安価のものを使用することができる。
【0237】
しかも、かかる接着剤が硬化した後には一定の張力を開放して、硬化した接着剤に長繊維束の伸延方向に沿ったプレストレスを導入することにより、引張強度を良好に確保した繊維強化プラスティックを、安価(従来の炭素繊維強化プラスティックに比べて約5分の1〜10分の1)に、かつ、短時間に製造することができる。
【0240】
(2)請求項2記載の本発明に係る繊維強化プラスティックの製造方法は、請求項1記載の繊維強化プラスティックの製造方法において、拘束体となる細幅帯状の長繊維束を被拘束体の外周面に螺旋状に巻き付けて被拘束体を被覆することとしたものである。
【0241】
このように、本発明にかかる繊維強化プラスティックは、被拘束体にプレストレスを導入した際に、同被拘束体がその伸延方向と直交する方向に膨張して歪みを生じようとするが、かかる被拘束体の膨張を、拘束体により拘束して抑止することにより、被拘束体に対して周囲より圧縮力を作用させて、被拘束体の伸延方向と、その周囲から内方向への2方向の(2次元的に)プレストレスを導入することができて、コンファイン効果を生起させることができる。
【0242】
その結果、これまで弱点とされていた繊維強化プラスティックの層間すべりを改善・回避することができる。
【0243】
(3)請求項3記載の本発明に係る繊維強化プラスティックの製造方法は、請求項1記載の繊維強化プラスティックの製造方法において、被拘束体は、前後方向に間隔を開けながら左右方向に伸延させて複数の長繊維束を配置した左右方向伸延群と、左右方向に間隔を開けながら前後方向に伸延させて複数の長繊維束を配置した前後方向伸延群と交互に積層させて形成し、被拘束体は、左右方向伸延群の隣り合った長繊維束の間に2本の細幅帯状の長繊維束を左右方向に延伸させながら前後方向伸延群を上下に縫い合わせて配置したものである。
【0244】
したがって、材料レベルで3次元的にプレストレスを導入した積層板状の繊維強化プラスティックを提供することができ、かかる積層板状の繊維強化プラスティックにおける外力による積層の層間ずれや層間剥離を効果的に抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる1次元的にプレストレスを導入してFRPを製造する製造工程説明図。
【図2】同FRP製造装置の斜視図。
【図3】同FRP製造装置の装置本体の断面正面説明図。
【図4】同FRP製造装置の装置本体の断面側面説明図。
【図5】スターラップを製造する工程説明図。
【図6】コ字型スターラップを製造する説明図。
【図7】I字型スターラップを製造する説明図。
【図8】T字型スターラップを製造する説明図。
【図9】折り曲げ可能としたスターラップの斜視説明図。
【図10】2次元的にプレストレスを導入して製造するFRPの製造過程説明図。
【図11】同FRPの製造過程説明図。
【図12】同FRPの断面説明図。
【図13】同FRP製造装置の説明図。
【図14】第2実施例としてのFRPの製造工程説明図。
【図15】第3実施例としてのFRPの斜視図。
【図16】同FRP製造装置の説明図。
【図17】拘束体の斜視図。
【図18】変容例としての拘束体の斜視図。
【図19】第4実施例としてのFRPの斜視図。
【図20】第5実施例としてのFRPの斜視図。
【図21】同FRP製造装置の説明図。
【図22】第6実施例としてのFRPの斜視説明図。
【図23】プレストレス導入の原理説明図。
【図24】同FRP製造装置の説明図。
【図25】第7実施例としてのFRPの斜視説明図。
【図26】同FRP製造装置の説明図。
【図27】2次元的にプレストレスを導入して製造するFRPの製造過程説明図。
【図28】同FRPの断面説明図。
【図29】他の実施例としてのFRPの左右方向伸延群の平面説明図。
【図30】同FRPの前後方向伸延群の平面説明図。
【図31】同FRPの両伸延群の積層状態斜視図。
【図32】同FRPの積層体の斜視説明図。
【図33】同FRPの積層体の平面説明図。
【図34】図33のI-I線断面図。
【図35】図34のII-II線断面図。
【図36】縫い合わせ用伸延群への張力作用状態の側面説明図。
【図37】積層体にプレストレスを導入したFRPの斜視説明図。
【図38】同FRPの側面図。
【図39】変容例としてのFRPの斜視説明図。
【符号の説明】
A FRP製造装置
1 FRP
2 長繊維束
3 ボビン
4 接着剤
5 接着剤槽
6 引き出しガイドローラ

Claims (3)

  1. 接着剤が塗布されるとともに伸延方向に沿って一定の張力が加えられた長繊維束の前記接着剤を硬化させて形成する被拘束体に、接着剤が塗布されるとともに細幅帯状とした長繊維束の前記接着剤を硬化させて形成する拘束体を装着して、前記被拘束体に前記拘束体で外側から中心に向かう方向に拘束力を作用させている繊維強化プラスティックの製造方法において、
    前記被拘束体となる長繊維束に塗布された接着剤と、前記拘束体となる長繊維束に塗布された接着剤とを硬化させる際に、前記被拘束体となる長繊維束には伸延方向に沿って一定の張力を作用させるとともに、前記拘束体となる長繊維束にも一定の張力を作用させながら硬化させることを特徴とする繊維強化プラスティックの製造方法。
  2. 前記拘束体となる細幅帯状の長繊維束は、前記被拘束体の外周面に螺旋状に巻き付けて前記被拘束体を被覆していることを特徴とする請求項1記載の繊維強化プラスティックの製造方法。
  3. 前記被拘束体は、前後方向に間隔を開けながら左右方向に伸延させて複数の長繊維束を配置した左右方向伸延群と、左右方向に間隔を開けながら前後方向に伸延させて複数の長繊維束を配置した前後方向伸延群と交互に積層させて形成し、
    前記被拘束体は、前記左右方向伸延群の隣り合った長繊維束の間に2本の前記細幅帯状の長繊維束を左右方向に延伸させながら前記前後方向伸延群を上下に縫い合わせて配置していることを特徴とする請求項1記載の繊維強化プラスティックの製造方法。
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