JP4243976B2 - 乗用車用空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビードコアの廻りにカーカス層の端部を巻き上げた空気入りラジアルタイヤに関し、更に詳しくは、操縦安定性を悪化させることなく、ロードノイズの低減を図るようにした乗用車用空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、乗用車の静粛性の向上が非常に重要視されており、タイヤ開発における騒音低減要求も益々厳しくなっている。特に、路面の凹凸に起因する騒音(ロードノイズ)の低減が望まれている。一方、自動車の高性能化に伴って低騒音性と操縦安定性との両立も非常に重要になっている。
【0003】
一般に、空気入りラジアルタイヤでは、ビードコアの外周側に硬質のゴム組成物からなるビードフィラーを配置すると共に、ビードコアの廻りにカーカス層の端部を巻き上げるようにしている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、カーカス層の巻き上げ端の位置をビードフィラーの頂点より高くした場合、操縦安定性が向上するものの、路面からの振動がタイヤを介して車両に伝播され易くなり、ロードノイズの低減が難しいという欠点がある。
【0004】
一方、カーカス層の巻き上げ端の位置をビードフィラーの頂点より低くして所謂ローターンナップ構造を形成した場合、ロードノイズが低減することが判っている。しかしながら、ローターンナップ構造の場合、操縦安定性が悪化することになるので、操縦安定性を良好なレベルに維持しながらロードノイズを低減することが困難である。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−32826号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、操縦安定性を悪化させることなく、ロードノイズを低減することを可能にした乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の乗用車用空気入りラジアルタイヤは、左右一対のビード部間にカーカス層を装架し、各ビード部に埋設されたビードコアの廻りに前記カーカス層の端部を巻き上げ、前記ビードコアの外周面上にビードフィラーを配置した空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ビードコアと前記カーカス層との間にJIS-A 硬度50〜70の軟質ゴムシート層を前記ビードコアの内周面及び両側面だけに沿って配置すると共に、前記ビード部のトウからヒールにかけてJIS-A 硬度80〜90の硬質ゴムシート層を配置したことを特徴とするものである。
【0008】
このようにビードコアとカーカス層との間に軟質ゴムシート層を配置することにより、路面からタイヤを介して車両に伝播される振動を抑制し、ロードノイズを低減することができる。また、ビード部のトウからヒールにかけて硬質ゴムシート層を配置しているので、軟質ゴムシート層の介在により阻害される操縦安定性を補うことができる。つまり、ビード部において軟質ゴムシート層と硬質ゴムシート層を適切に配置することにより、操縦安定性を悪化させることなく、ロードノイズを低減することが可能になる。
【0009】
本発明において、操縦安定性を悪化させることなく、ロードノイズをより効果的に低減する得るために、軟質ゴムシート層の厚さが1〜2mmであり、硬質ゴムシート層の厚さが1〜3mmであることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示し、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架され、そのカーカス層4の端部がビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に巻き上げられている。カーカス層4はタイヤ径方向に配向する複数本のコードから構成されている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数のベルト層6,6が埋設されている。これらベルト層6,6はそれぞれタイヤ周方向に対して傾斜する複数本のコードを含み、かつ層間でコードが互いに交差するように配置されている。また、各ビードコア5の外周側には、硬質のゴム組成物からなるビードフィラー7が埋設されている。そして、カーカス層4の巻き上げ端4aの位置はビードフィラー7の頂点よりも高くなっている。
【0012】
ビードコア5とカーカス層4との間には、軟質ゴムシート層8が配置されている。この軟質ゴムシート層8は、JIS-A 硬度が50〜70であり、厚さが1〜2mmである。軟質ゴムシート層8のJIS-A 硬度が50未満であると操縦安定性が不十分になり、逆に70を超えると緩衝材としての機能が低くいためロードノイズの低減効果が不十分になる。また、軟質ゴムシート層8の厚さが1mm未満であるとロードノイズの低減効果が不十分になり、逆に2mmを超えると操縦安定性が不十分になる。
【0013】
ビード部3のトウ3aからヒール3bにかけての領域には、硬質ゴムシート層9が配置されている。この硬質ゴムシート層9は、JIS-A 硬度が80〜90であり、厚さが1〜3mmである。硬質ゴムシート層9のJIS-A 硬度が80未満であると操縦安定性を補うための補強効果が不十分になり、逆に90を超えるとビード部3のトウ3aに欠けや剥離の発生が懸念される。また、硬質ゴムシート層9の厚さが1mm未満であると操縦安定性を補うための補強効果が不十分になり、逆に3mmを超えると強靱性が低下し、欠け等の発生が懸念される。
【0014】
なお、硬質ゴムシート層9はビード部3のトウ3aからヒール3bにかけて配置することが必要であるが、トウ3aからヒール3bまでの全域にわたって配置する必要はない。この硬質ゴムシート層9は少なくともトウ3aからビードコア5のタイヤ軸方向中心位置までの範囲に存在していれば良い。
【0015】
このように構成される空気入りラジアルタイヤは、ビードコア5とカーカス層4との間に軟質ゴムシート層8を備えていると共に、ビード部3のトウ3aからヒール3bにかけて硬質ゴムシート層9を備えているので、操縦安定性を悪化させることなく、ロードノイズを低減することができる。
【0016】
上述した実施形態ではカーカス層の巻き上げ端の位置をビードフィラーの頂点より高くした場合について説明したが、本発明はカーカス層の巻き上げ端の位置をビードフィラーの頂点よりも低くしたローターンナップ構造の場合にも適用可能である。この場合も、従来のローターンナップ構造を有する空気入りラジアルタイヤに比べて、操縦安定性を悪化させることなく、ロードノイズを低減することができる。
【0017】
【実施例】
タイヤサイズ195/65R15の空気入りラジアルタイヤにおいて、ビード部の補強構造だけを種々異ならせた従来例1〜2、比較例1〜5及び実施例1〜2をそれぞれ製作した。
【0018】
従来例1はカーカス層の巻き上げ端の位置をビードフィラーの頂点より高くしたものである(図2参照)。従来例2はカーカス層の巻き上げ端の位置をビードフィラーの頂点より低くしたものである(図3参照)。
【0019】
比較例1はカーカス層の巻き上げ端の位置をビードフィラーの頂点より高くし、ビードコアとカーカス層との間に軟質ゴムシート層を配置したものである(図4参照)。比較例2はカーカス層の巻き上げ端の位置をビードフィラーの頂点より低くし、ビードコアとカーカス層との間に軟質ゴムシート層を配置したものである(図5参照)。
【0020】
実施例1はカーカス層の巻き上げ端の位置をビードフィラーの頂点より高くし、ビードコアとカーカス層との間に軟質ゴムシート層を配置すると共に、ビード部のトウからヒールにかけて硬質ゴムシート層を配置したものである(図6参照)。実施例2はカーカス層の巻き上げ端の位置をビードフィラーの頂点より低くし、ビードコアとカーカス層との間に軟質ゴムシート層を配置すると共に、ビード部のトウからヒールにかけて硬質ゴムシート層を配置したものである(図7参照)。また、比較例3〜5は実施例1と同様の補強構造を有するが、軟質ゴムシート層又は硬質ゴムシート層の硬さが規定の範囲から外れるものである。
【0021】
これら試験タイヤについて、下記の方法により、ロードノイズ及び操縦安定性を評価し、その結果を表1に示した。
【0022】
ロードノイズ:
各試験タイヤをリムサイズ15×6JJのホイールに組付け、排気量1800ccクラスの乗用車の4輪に装着し、前輪空気圧220kPa、後輪空気圧200kPa、速度60km/hの条件で舗装路面を走行し、後部座席中央に設置したマイクで、音圧のオーバーオール値〔dB〕を計測した。評価結果は、基準値(従来例1)に対する差にて示した。マイナス値はロードノイズが基準値よりも小さいことを意味し、プラス値はロードノイズが基準値よりも大きいことを意味する。
【0023】
操縦安定性:
各試験タイヤをリムサイズ15×6JJのホイールに組付け、排気量1800ccクラスの乗用車の4輪に装着し、前輪空気圧220kPa、後輪空気圧200kPaの条件にて5人のテストドライバーによるフィーリングテストを行った。フィーリングテストでは、従来例1を基準値(3.0)とする5点法にて評価した。評価結果は、5人のテストドライバーの平均値を示した。この値が大きいほど操縦安定性が優れていることを意味する。
【0024】
【表1】
【0025】
この表1から明らかなように、実施例1は同様のカーカス巻き上げ高さを有する従来例1との対比において、操縦安定性を悪化させることなく、ロードノイズが低減していた。実施例2は同様のカーカス巻き上げ高さを有する従来例2との対比において、操縦安定性を悪化させることなく、ロードノイズが低減していた。
【0026】
一方、比較例1はビード部のトウからヒールにかけて硬質ゴムシート層を備えていないため、同様のカーカス巻き上げ高さを有する従来例1との対比において、操縦安定性が悪化していた。比較例2はビード部のトウからヒールにかけて硬質ゴムシート層を備えていないため、同様のカーカス巻き上げ高さを有する従来例2との対比において、操縦安定性が悪化していた。
【0027】
また、比較例3は軟質ゴムシート層が軟らか過ぎるため、同様のカーカス巻き上げ高さを有する従来例1との対比において、操縦安定性が悪化していた。比較例4は軟質ゴムシート層が硬過ぎるため、同様のカーカス巻き上げ高さを有する従来例1との対比において、ロードノイズの低減効果が得られなかった。比較例5は硬質ゴムシート層が軟らか過ぎるため、同様のカーカス巻き上げ高さを有する従来例1との対比において、操縦安定性が悪化していた。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、左右一対のビード部間にカーカス層を装架し、各ビード部に埋設されたビードコアの廻りにカーカス層の端部を巻き上げ、ビードコアの外周面上にビードフィラーを配置した空気入りラジアルタイヤにおいて、ビードコアとカーカス層との間に軟質ゴムシート層をビードコアの内周面及び両側面だけに沿って配置すると共に、ビード部のトウからヒールにかけて硬質ゴムシート層を配置したから、操縦安定性を悪化させることなく、ロードノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示す半断面図である。
【図2】従来例1に係る空気入りラジアルタイヤのビード部を概略的に示す断面図である。
【図3】従来例2に係る空気入りラジアルタイヤのビード部を概略的に示す断面図である。
【図4】比較例1に係る空気入りラジアルタイヤのビード部を概略的に示す断面図である。
【図5】比較例2に係る空気入りラジアルタイヤのビード部を概略的に示す断面図である。
【図6】実施例1及び比較例3〜5に係る空気入りラジアルタイヤのビード部を概略的に示す断面図である。
【図7】実施例2に係る空気入りラジアルタイヤのビード部を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ベルト層
7 ビードフィラー
8 軟質ゴムシート層
9 硬質ゴムシート層
Claims (3)
- 左右一対のビード部間にカーカス層を装架し、各ビード部に埋設されたビードコアの廻りに前記カーカス層の端部を巻き上げ、前記ビードコアの外周面上にビードフィラーを配置した空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ビードコアと前記カーカス層との間にJIS-A 硬度50〜70の軟質ゴムシート層を前記ビードコアの内周面及び両側面だけに沿って配置すると共に、前記ビード部のトウからヒールにかけてJIS-A 硬度80〜90の硬質ゴムシート層を配置した乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記軟質ゴムシート層の厚さが1〜2mmであり、前記硬質ゴムシート層の厚さが1〜3mmである請求項1に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記ビードコアの断面形状が四角形である請求項1又は請求項2に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
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