以下、本発明の実施の形態について、図1〜図20に基づいて説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
以下では、本発明の実施の形態として、フレキシブルな液晶ディスプレイやIC等に適用する薄膜トランジスタ(TFT)を例に挙げて説明する。本発明の薄膜トランジスタの製造方法(本製造方法)は、活性酸化種を含む溶液に、ゲート酸化膜(化学酸化膜)を形成すべき基板を浸漬して、その基板表面を直接酸化することにより、品質の高い酸化膜を均一に形成する方法である。
まず、フレキシブルな液晶ディスプレイやIC等に適用するTFTを製造時の問題点について説明する。
フレキシブルな液晶ディスプレイ等を製造するためには、PETなどの有機物の基板上にTFTを形成する必要がある。このような有機物の基板の融点は低く、高くても200℃である。従って、フレキシブルな液晶ディスプレイ等を製造するには、TFTを200℃以下の低温で形成しなければならない。
TFTにおいて、ゲート酸化膜は、TFTを備えた各種デバイスの性能に影響する重要な酸化膜である。従来、ゲート酸化膜は、CVD法による堆積により形成されている。また、CVD法の低温化も図られている。現在、最も低温のCVD法は、テトラエトキシシラン(TEOS)にオゾンを添加する方法である。この方法では、300℃〜400℃での酸化膜形成が可能である。従って、CVD法では、TFTを200℃以下の低温で形成できない。
また、TFTでは、ゲート電極に、比較的高い電圧を印加する。このため、ゲート酸化膜は、完全な絶縁性が要求される。ゲート酸化膜を形成する基板表面は、種々の微細なパターンが形成されており、凹凸を有している(平坦ではない)。前述のように、CVD法は、堆積によってゲート酸化膜を形成する。このため、CVD法によって、凹凸形状の基板にゲート酸化膜を形成すると、酸化膜の堆積状態が異なってしまう。その結果、形成されたゲート酸化膜は、不均一となる。このため、形成されたゲート酸化膜は、完全な絶縁性を確保できず、リーク電流密度が増大する。すなわち、CVD法によって形成されたゲート酸化膜は、品質や信頼性が低い。
このため、従来のCVD法によるTFTのゲート酸化膜は、絶縁破壊を起こさず、完全な絶縁性を確保するために、ある程度の厚さが必要となる。フレキシブルな液晶ディスプレイとして、例えば、シート状の液晶ディスプレイを製造するには、当然、TFTの薄膜化も要求される。このためには、ゲート酸化膜の薄膜化を行う必要がある。
ところが、CVD法に形成されたゲート酸化膜を、現状よりも薄くすると、完全な絶縁性を確保できない。従って、CVD法によって形成されたゲート酸化膜を、これ以上薄膜化することはできない。
このように、CVD法では、高品質のゲート酸化膜を形成できないばかりか、200℃以下の低温でゲート酸化膜を形成することもできない。
従って、フレキシブルな液晶ディスプレイ等を製造するためには、ゲート酸化膜形成の低温化・均一化・高品質化が重要になる。
このようなTFTを製造するために、本発明の薄膜トランジスタの製造方法(本製造方法)は、活性酸化種を含む酸化性溶液に、ゲート酸化膜(化学酸化膜)を形成すべき基板を浸漬することによって、その基板を直接酸化することにより、200℃以下の低温であっても、品質の高い酸化膜を均一に形成している。すなわち、本発明の薄膜トランジスタは、品質の高い酸化膜を備えた高性能な薄膜トランジスタである。
次に、本発明のTFTの構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ1は、被処理基板2上に、ソース電極6、ドレイン電極7およびこれらに接続される半導体層5が形成され、ゲート酸化膜4を介して、その上にゲート電極3が形成されるスタガ型の構造をなしている。また、薄膜トランジスタ1は、例えば、表示装置に用いる場合、ドレイン電極7に接続されるゲート電極3がゲート酸化膜4上に形成される。さらに、この薄膜トランジスタ1には、半導体層5、ソース電極6および覆う保護膜9が形成されている。
薄膜トランジスタ1では、半導体層5を介して、ソース電極6・ドレイン電極7間に電流を流す。このため、半導体層5とゲート酸化膜4との界面を、清浄にすることが重要である。
薄膜トランジスタ1では、ゲート酸化膜4が、半導体層5を直接酸化することにより形成された化学酸化膜から形成されていることを特徴としている。ゲート酸化膜4は、例えば、後述の製造例のように、半導体層5方向に化学酸化膜を形成しているため、常に、半導体層5とゲート酸化膜4との界面が清浄である。また、ゲート酸化膜4は、半導体層5の表面の状態に関係なく、均一に形成されたものであるため、信頼性の高い高品質である。
ゲート酸化膜4は、第1酸化膜(第1の化学酸化膜)4aおよび第2酸化膜(第2の化学酸化膜)を含んでいる。ゲート酸化膜4の形成については後述する。ゲート酸化膜4は、半導体層5の材料が酸化された酸化物である。すなわち、通常、第1酸化膜4aと第2酸化膜4bとの組成は同じであり、各絶縁膜の区別はできない。ここでは、説明の都合上、第1酸化膜4aと第2酸化膜4bとを区別している。ただし、後述のように、第1酸化膜4aと第2酸化膜4bとは、濃度の異なる酸化性溶液で形成されたものであるため、原子密度が異なる。このように、ゲート酸化膜4は、組成は同じであるが、原子密度が分布した構造となっている。すなわち、ゲート酸化膜4は、相対的に原子密度の低い第1酸化膜4aと、原子密度の高い第2酸化膜4bとの積層構造である。そして、被処理基板2に、近い側に、原子密度の高い第2酸化膜4bが形成されている。第2酸化膜4bは、半導体層5上に積層されて、半導体層5と界面を形成している。
半導体層5は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、連続粒界結晶シリコン、炭化シリコンおよびシリコン・ゲルマニウムなどのように、シリコンを含有するものが好適である。
特に、半導体層5として、多結晶シリコンを用いた、多結晶シリコンTFTでは、ドライバ回路などの周辺回路を、被処理基板2上に集積できる。このため、半導体層5は、多結晶シリコンからなることが好ましい。
ここで、上記のように構成される薄膜トランジスタ1の製造方法を、図2の製造工程図を用いて説明する。なお、以下では、薄膜トランジスタ1の半導体層5が多結晶シリコンである多結晶シリコンTFTの製造方法について説明する。本製造方法において、特徴的な工程は、ゲート酸化膜4を形成する工程(酸化膜形成工程;図2(c)(d))である。
まず、被処理基板2に、スパッタリング法により、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などを成膜し、そのITO膜に、フォトリソグラフィおよびエッチング液(塩酸+硝酸)によるウエットエッチングを行うことで、ソース電極6、ドレイン電極7および絵素電極8を同時に形成する(図2(a))。被処理基板2は、絶縁性を有していればよく、プラスチック製の基板等のフレキシブルな基板や、フレキシブルな基板でなくても、他にもガラス基板、石英、シリコン基板等も用いられる。
続いて、半導体材料として、多結晶シリコン51をCVD法により形成する(図2(b))。なお、形成した多結晶シリコン51表面に、自然酸化膜が形成されているときは、よく知られているRCA洗浄方法,すなわちアンモニア−過酸化水素系水溶液で洗浄した後、濃度0.5%(容量比、以下、vol.と記す)の希フッ酸溶液に約5分間浸漬することが好ましい。これにより、自然酸化膜を完全に除去し、多結晶シリコン表面が清浄な状態になる。これにより、後続する化学酸化膜の膜質も向上する。
次に、多結晶シリコンを形成した被処理基板2を、酸化性溶液に浸漬する。この工程では、多結晶シリコンを、酸化性溶液から生成する酸化種によって直接酸化し、二酸化シリコン膜41の薄膜を形成する(図2(c))。なお、この場合、多結晶シリコンを形成した被処理基板2が、化学酸化膜を形成すべき基板となる。なお、「直接酸化」とは、例えば、多結晶シリコン51自身を、酸化性溶液の酸化種によって、酸化して化学酸化膜を形成することを示しており、CVD法のように、堆積によって酸化膜を形成するものではない。
続いて、さらに、多結晶シリコン51を酸化種によって酸化し、二酸化シリコン膜41を被処理基板2方向に二酸化シリコン膜42を成長させる(図2(d))。なお、図2(d)では、最初に形成された二酸化シリコン膜41と成長した二酸化シリコン膜42とを区別するために、別の符号を付している。
続いて、ゲート電極3となるゲート電極材の膜をスパッタリング法によって成膜した後、その膜上に、ゲートパターンのレジストをフォトリソグラフィにて形成する。その後、パターニングして、ゲート電極3と、ゲート絶縁膜4と、半導体膜5とを形成する(図2(e))。ゲート電極材には、例えば、多結晶シリコン、非晶質シリコン、連続粒界結晶シリコン(CGシリコン)、金属(Al,Ti,Taなど)などが用いられる。
最後に、P−CVD法によって、窒化シリコン薄膜を成膜し、この窒化シリコン薄膜における絵素電極8上と端子部パッド(図示せず)上の部分をフォトリソグラフィおよびドライエッチングにより除去することで保護膜9を形成し、薄膜トランジスタ1が完成する(図2(f))。
この製造方法では、被処理基板2を酸化性溶液に浸漬してゲート酸化膜4を形成している。このため、基板の表面が凹凸や曲面を有していても、酸化性溶液は、均一に基板表面に行き渡る。これにより、二酸化シリコン膜41・42を形成すべき全領域に渡って、膜厚が均一な二酸化シリコン膜41・42を形成できる。さらに、二酸化シリコン膜42が、被処理基板2方向に成長する。このため、二酸化シリコン膜42と多結晶シリコン51(ゲート酸化膜4と半導体層5)との界面が常に変化しながら、化学酸化膜が形成されることにより、その界面を清浄にすることができる。ゲート酸化膜4と半導体層5との界面の特性が向上する。従って、絶縁耐性等の特性に優れた信頼性の高い高品質なゲート酸化膜4を形成できる。これにより、ゲート酸化膜4を薄膜化(すなわち、薄膜トランジスタ1自体の薄膜化)が可能となる。
さらに、この製造方法は、200℃以下の低温条件下であっても、高品質なゲート酸化膜4形成が可能である。また、酸化性溶液に被処理基板2を浸漬するという簡便な方法で化学酸化膜を形成できる。このため、CVD法のように、真空条件などの大規模な装置や設備が不要である。
以上のように、本製造方法では、酸化膜形成工程を行うことにより、ゲート酸化膜4を形成すべき全領域に渡って、膜厚が均一なゲート酸化膜4を形成できる。従って、信頼性の高い高品質なゲート酸化膜4を形成できる。また、酸化膜形成工程は、200℃以下の低温で行うことができる。このため、プラスチック基板上でも閾値の低い薄膜トランジスタを実現できる。さらに、この薄膜トランジスタ1は、ゲート酸化膜4の膜厚が均一で高品質であるため、高性能かつ高信頼性の薄膜トランジスタである。
なお、本薄膜トランジスタは、図1に示す正スタガ型の薄膜トランジスタ1以外にも、例えば、図20に示すような薄膜トランジスタ1’のような構成であってもよい。薄膜トランジスタ1’も、スタガ型(正スタガ型)の薄膜トランジスタである。図1の薄膜トランジスタ1では、ソース電極6とドレイン電極7とが、被処理基板2上に形成されていたのに対し、図20の薄膜トランジスタ1’では、素子を分離するための絶縁膜17上に形成され、半導体層5とは離れた位置に形成されている。なお、図1では示さなかったが、図20では、半導体層5の両端に、半導体に不純物をドープした領域、ソース領域16およびドレイン領域18(例えば、n+多結晶シリコン(n+p−Si))も示している。また、薄膜トランジスタ1’では、半導体層5とゲート電極3との間のゲート絶縁膜4のみ半導体層5を直接酸化した高性能な化学酸化膜から構成している。ゲート絶縁膜4上には、CVD法などによって堆積した堆積SiO2膜19が形成されている。従来は、ゲート酸化膜4および堆積SiO2膜19の部分を、CVD法によって形成していたため、ゲート酸化膜4の品質や信頼性が低かった。これに対し、薄膜トランジスタ1’のように、ゲート酸化膜4を、図2(c)図2(d)のように、直接酸化による化学酸化膜から構成することによって、ゲート酸化膜4の品質や信頼性を向上できる。
また、上記の説明では、スタガ型の薄膜トランジスタについて説明したが、逆スタガ型であってもよい。
次に、本製造方法の特徴部分であるゲート酸化膜4の形成(酸化膜形成工程;図2(c)図2(d))について、詳細に説明する。
本製造方法では、酸化膜形成工程として、主に2つの方法がある。
(1)2段階でゲート酸化膜を形成する方法(2段階酸化法)。
(2)電圧を印加してゲート酸化膜を形成する方法(電圧印加法)。
以下、これらの方法について説明する。
(1)2段階酸化法
2段階酸化法は、ゲート酸化膜4を形成すべき被処理基板2を、濃度の異なる活性酸化種を含む溶液に浸漬することによって、第1酸化膜4aを形成した(第1工程)後、第2酸化膜4bを形成(第2工程)し、ゲート絶縁膜を、段階的に形成する方法である。
2段階酸化法は、例えば、図9に示す装置で行うことができる。図9は、2段階酸化法を行う装置の断面図であり、ここでは、被処理基板2となるシリコン基板10上に、化学酸化膜として二酸化シリコン膜を形成する装置を簡易的に示している。すなわち、被処理用のシリコン基板10(図2の被処理基板2)を、第一処理槽20内の低濃度酸化性溶液(低濃度酸化性溶液)30に浸すことによって、シリコン基板10表面に第1酸化膜40(図1および図2(f)の第1酸化膜4aに相当)を形成した後に、第1酸化膜40を形成した被処理用のシリコン基板10を、第二処理槽50内の高濃度の酸化性溶液(高濃度酸化性溶液)60に浸すことによって、第1酸化膜40にさらに第2酸化膜(図9には図示せず;図1の第2酸化膜4b)を形成し、二酸化シリコン膜70(図1のゲート絶縁膜4に相当)を形成できるように構成したものである。すなわち、この製造装置は、以下に詳細に示す、2段階酸化法による酸化膜形成工程を実施する酸化膜形成部を構成している。
2段階酸化法における第1工程は、図1・図2におけるゲート酸化膜4を形成すべき被処理基板2としてシリコン基板を、相対的に低濃度酸化性溶液を含む溶液に浸漬することによって、多孔質(原子密度が低い)の第1酸化膜4aを形成する工程である。
一方、第2工程は、第1酸化膜4aを形成したシリコン基板を、第1工程よりも高濃度の活性酸化種を含む溶液(高濃度酸化性溶液)に浸漬することによって、第1酸化膜4aよりも厚い第2酸化膜4bを形成する工程である。
このように、低濃度から高濃度へと、濃度の異なる酸化性溶液に、被処理基板2を浸漬することにより、まず、低濃度の酸化性溶液による酸化によって、多孔質(原子密度が低)の第1酸化膜4aが形成される。そして、高濃度の酸化性溶液による酸化では、この多孔質の第1酸化膜4aの触媒作用により、第2酸化膜4の形成が促進される。これにより、最終的に形成されたゲート酸化膜4を均一に形成することができる。
2段階酸化法による上記酸化膜形成工程では、上記低濃度酸化性溶液の濃度が、共沸濃度未満であり、上記高濃度酸化性溶液の濃度が、共沸濃度であることが好ましい。共沸濃度では、溶液の組成は一定となる。従って、共沸濃度未満の低濃度酸化性溶液により、多孔質の第1酸化膜4aを形成した後、共沸濃度の高濃度酸化性溶液により、第2酸化膜4bを形成し、均一なゲート絶縁膜4を形成できる。
2段階酸化法による上記酸化膜形成工程は、上記低濃度酸化性溶液を加熱して、上記高濃度酸化性溶液とすることもできる。図3の構成では、低濃度酸化性溶液30用の第一処理槽20と、高濃度酸化性溶液60用の第2処理槽50とを設けている。これに対し、低濃度酸化性溶液30を、高濃度酸化性溶液60の濃度まで加熱すれば、第2処理槽50が不要となる。このため、2段階酸化法による酸化膜形成工程を行う酸化膜形成部の構成を簡素化できる。
以下、2段階酸化法について、具体例を挙げてさらに詳細に説明する。2段階酸化法では、図2(b)の工程で処理した被処理基板2(シリコン基板10)を超純水で5分間リンス処理(洗浄)した後、被処理基板2を,図9に示す第一処理槽20内に満たした,低濃度酸化性溶液30に浸漬した。これにより、図2(c)に示すように、二酸化シリコン膜41(第1酸化膜(第1の化学酸化膜))が形成される。なお、ここでは、浸漬時間を10分間とした。このように、表面を清浄処理した被処理基板2を、低濃度酸化性溶液3に10分間浸漬し、図2(c)に示すような二酸化シリコン膜41を形成した。また、二酸化シリコン膜41は、酸化種によって多結晶シリコン51が酸化された化学酸化膜である。
なお、低濃度酸化性溶液3とは、低濃度で酸化力の強い溶液(酸化性溶液)である。ここでは、酸化性溶液として、濃度40%(重量比;以下、「wt」とする)の硝酸水溶液を用いた。また、第1酸化膜4aの膜厚を、1.1nmとした。
続いて、図2(d)では、図2(c)の工程で、二酸化シリコン膜41を形成した被処理基板2を、図9に示す第二処理層50内に満たした、高濃度酸化性溶液60に浸漬した。これにより、図2(d)に示すように、多結晶シリコン51の酸化反応がさらに進行し、二酸化シリコン膜42が形成される。つまり、酸化反応の進行とともに、多結晶シリコン51と二酸化シリコン膜42との間の界面は、常に新しく形成されることになる。すなわち、二酸化シリコン膜42と多結晶シリコン51との界面は、常に清浄である。この二酸化シリコン膜41・42が、第1酸化膜4a・第2酸化膜4bとなり、最終的にゲート酸化膜4となる。すなわち、二酸化シリコン膜41・42は、形式的には第1酸化膜4aと第2酸化膜4bとから構成されるが、いずれも多結晶シリコン51が酸化された二酸化シリコンであるため、実際には、1層の二酸化シリコン膜(ゲート酸化膜4)である。なお、ここでは、浸漬時間を10分間とした。このように、第1酸化膜4aを形成した被処理基板2を、高濃度酸化性溶液6に10分間浸漬し図2(d)に示すような二酸化シリコン膜41・42を均一に形成した。ここでは、二酸化シリコン膜41・42の合計膜厚を、10nmとした。
なお、高濃度酸化性溶液6とは、高濃度で酸化力の強い溶液(酸化性溶液)である。ここでは、高濃度酸化性溶液として、濃度68%(wt)の共沸硝酸を用いた。
続いて、所定の洗浄工程および乾燥工程を実施した後、二酸化シリコン膜41上にゲート電極材の膜を形成した。ここでは、このゲート電極材として、1重量%のシリコンを含むアルミニウム合金を、周知の抵抗加熱蒸着法により膜厚約200nmに堆積することで形成した(以下、この種の金属膜電極を単にAl電極と称する)。なお、ゲート電極材は、Al電極に限定されるものではなく、例えば、このゲート電極材に代えて、多結晶シリコン電極(材)を付着させて用いることもできる。
その後、図2(e)のように、ゲート電極材を所望の形状にパターニングして、ゲートパターンのレジストを製造した。
最後に、P−CVD法によって、窒化シリコン薄膜を成膜し、この窒化シリコン薄膜における絵素電極8上と端子部パッド(図示せず)上の部分をフォトリソグラフィおよびドライエッチングにより除去することで保護膜9を形成し、薄膜トランジスタ1とした(図2(f))。このようにして製造した薄膜トランジスタは、MOS型トランジスタである。
この薄膜トランジスタは、図3に示すように、安定なキャパシタ容量(静電容量)が得られる。図3は、本実施形態で得た薄膜トランジスタの静電容量(C)と印加電圧(V)との関係、いわゆるC−V特性図である。この特性図で見られるように、ゲート電極3に正電圧を印加することにより、半導体層5とゲート酸化膜4との界面に反転層が誘起され、安定なキャパシタ容量(静電容量)が得られている。
このように、この例では、被処理基板2を濃度の異なる硝酸水溶液に浸漬することにより、被処理基板2に2段階で、二酸化シリコン膜41・42を形成している。すなわち、被処理基板2に、濃度40%(wt)の硝酸水溶液(低濃度の酸化性溶液)を接触させることにより、被処理基板2上の多結晶シリコン51(半導体層5)表面に、第1酸化膜4a(第1の化学酸化膜)を形成する工程と、第1酸化膜4aから被処理基板2方向に、第1酸化膜4aを形成するのに用いた濃度40%(wt)以上の高濃度の硝酸水溶液(高濃度酸化性溶液,前述では68%(wt)の硝酸水溶液)を接触させることにより、第2酸化膜4bを形成する工程とにより、薄膜トランジスタのゲート酸化膜4を構成する二酸化シリコン膜41・42を形成した。
また、このようにして形成した薄膜トランジスタは、図3のC−V特性図からもわかるように、リーク電流密度も、通常の高温熱酸化法で形成した二酸化シリコン膜を絶縁膜に用いて形成したMOSキャパシタのリーク電流密度特性と同程度ないしはそれ以上であり、確実に高性能が認められる。
なお、上記の製造例では、二酸化シリコン膜41・42の膜厚を10nmとしたが、その膜厚は特に限定されるものではない。被処理基板2を低濃度酸化性溶液30および高濃度酸化性溶液60に浸漬する時間を調節することによって、第1酸化膜4a、第2酸化膜4aおよびゲート酸化膜4の膜厚が変化する。すなわち、目的とする膜厚に応じて、被処理基板2を酸化性溶液に浸漬する時間を設定すればよい。また、酸化性溶液の濃度によっても、各化学酸化膜の生成速度も変わる。従って、浸漬時間は、酸化性溶液の種類・濃度、形成する酸化膜の膜厚に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
なお、低濃度の酸化性溶液または酸化性気体として、濃度40%(wt)の硝酸水溶液を用いた例で述べたが、これに代えて、過塩素酸、硫酸、オゾン溶解水、過酸化水素水、塩酸と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と過酸化水素水との混合溶液、アンモニア水と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と硝酸との混合溶液および王水の群から選ばれた少なくとも1つの水溶液を用いることもでき、さらに酸化力のある沸騰水を用いることもできる。
ただし、硝酸は、ハロゲンを含まないため、塩素等の発生による製造中の影響を防ぐことができる。このため、酸化性溶液は、硝酸であることが好ましい。さらに、この硝酸は、純度の高いものであることが好ましい。高純度の硝酸を用いれば、よりよい化学酸化膜を形成することができる。この高純度の硝酸は、例えば、硝酸に含まれる金属等の不純物の濃度が充分に低いものを用いればよい。例えば、不純物の濃度が、10ppb以下、好ましくは5ppb以下、より好ましくは1ppb以下のものを用いればよい。
また、本実施形態では、高濃度の酸化性溶液または酸化性気体として、硝酸濃度が68%(wt)の硝酸水溶液(いわゆる共沸硝酸)を用いたが、これに代えて共沸過塩素酸、共沸硫酸、及び王水の群から選ばれる少なくとも1つの水溶液を用いることもできる。
また、高濃度の酸化性溶液として水との共沸混合物を用いると、その溶液および蒸気(すなわち気体)は半導体層(多結晶シリコン51)に化学酸化膜を形成中それぞれ濃度が一定になり、化学酸化膜の成長の制御を時間管理で行うことができる。従って、高濃度の酸化性溶液は共沸混合物であることが好ましい。
また、後述するように、低濃度の酸化性溶液によって形成される第1の化学酸化膜(第1酸化膜4a)は、有孔(ポアー)を有することが好ましい。すなわち、第1の化学酸化膜は、比較的原子密度の低い膜であることが好ましい。これにより、高濃度の酸化性溶液による第2の化学酸化膜の形成がスムーズに進行する。これは、第1の化学酸化膜に存在するポアーに、酸化性溶液が作用(接触)することによって、第2の化学酸化膜が形成されるためである。つまり、ポアーを含む低い原子密度の第1の化学酸化膜が触媒となって、第2の化学酸化膜形成の酸化反応が、順次進行するため、より一層高品質の化学酸化膜を形成できる。
また、上記の説明では、図9に示すように、第1処理槽20と第2処理槽50にそれぞれ満たした低濃度酸化性溶液30および高濃度酸化性溶液60(2種類の濃度の酸化性溶液)によって、化学酸化膜を形成している。しかし、化学酸化膜の形成法は、これに限定されるものではなく、例えば、上記低濃度から高濃度へ多段階(2種類以上の濃度の酸化性溶液またはその気体を準備する)で、順次高濃度に切り替えてもよい。
また、酸化性溶液の濃度を低濃度から高濃度へ連続的に上昇させてもよい。つまり、低濃度溶液を濃縮することにより、連続的に高濃度溶液としてもよい。例えば、共沸濃度未満の酸化性溶液(低濃度の酸化性溶液)を、共沸濃度になるまで加熱して濃縮すれば、その加熱状態を維持することにより、共沸濃度となった酸化性溶液は、一定の溶液組成・蒸気組成となる。これにより、化学酸化膜の成長の制御を、時間管理で行うことができる。従って、化学酸化膜の形成(厚さや品質)を、より高精度に制御することが可能となる。
すなわち、酸化性溶液の濃度を低濃度から高濃度へ連続的に上昇させる場合、上記酸化膜形成工程は、共沸濃度未満の酸化性溶液に基板を浸漬することにより第1酸化膜を形成する工程と、上記共沸濃度未満の酸化性溶液に基板を浸漬させた状態で、上記共沸濃度未満の酸化性溶液を、共沸濃度に濃縮することにより、第1酸化膜上に第2酸化膜を形成する工程とを含む方法といえる。
この方法では、まず、共沸濃度未満の酸化性溶液を用いて第1酸化膜を形成する。次に、その酸化性溶液に基板を浸漬したまま、その酸化性溶液を、共沸濃度に濃縮する。これにより、第1酸化膜形成後、酸化性溶液の濃度を連続的に高めながら、第2酸化膜が形成される。各酸化膜は、濃度の異なる酸化性溶液で形成されたものであるため、原子密度が異なる。つまり、共沸濃度未満の低濃度の酸化性溶液で形成された第1酸化膜の原子密度は、共沸濃度の高濃度の酸化性溶液で形成された第2酸化膜の原子密度よりも低い。従って、上記化学酸化膜は、原子密度が分布した構造である。
後述するように、基板を酸化性溶液に浸漬した状態で、酸化性溶液の濃度を低濃度から高濃度へ連続的に上昇させて、化学酸化膜を形成した場合、独立して設けた濃度の異なる酸化性溶液を用いて化学酸化膜を形成した場合よりも、短時間で厚い化学酸化膜を形成することができる。
なお、上記低濃度および高濃度の酸化性溶液は、酸化力の強い酸化種(例えば、酸素イオン、水酸化物イオン、過酸化物イオンなどの酸素のイオンやラジカル)であることが好ましい。これにより、200℃以下での化学酸化膜の形成が可能となる。従って、200℃以下での化学酸化膜の形成が要求されるフレキシブルな液晶ディスプレイの製造におけるTFTの形成にも好適に利用することができる。
本実施形態では、上述の二酸化シリコン膜41・42に対して、窒素を含む気体中,とりわけプラズマ窒化処理で表面の一部を窒化シリコンに転化した窒化シリコン含有二酸化シリコン膜を形成することや、上述の窒化処理後の窒化シリコン含有膜上に重ねて、CVD法などで厚いSiO2等の絶縁膜を形成することも可能である。
窒化化学酸化膜は、基本的には、その組成に応じて、酸化膜と窒化膜との中間的な性質を有する。例えば、酸化膜中に比べて窒化膜中では、不純物の拡散係数が小さいため(熱窒化)、窒化化学酸化膜は、ゲート電極中にドーピングした不純物、特にホウ素のSi基板中への外方拡散を阻止する能力に優れている。このため、窒化化学酸化膜は、極薄ゲート絶縁膜(例えば4nm以下)を必要とする薄膜トランジスタに適用可能である。
このように、窒化処理は、トランジスタを高性能化するための1つの手段であり、この窒化処理によって、より一層化学酸化膜の膜質が向上できる。従って、化学酸化膜の薄膜化が可能となる。
なお、「窒化処理する」とは、形成した二酸化シリコン膜41・42(化学酸化膜)の少なくとも一部を窒化することである。つまり、窒化処理とは、半導体表面の酸化により化学酸化膜を形成した後、窒化種を含んだ雰囲気中で加熱することにより、化学酸化膜の少なくとも一部を窒化する処理である。
窒化処理としては、アンモニア(NH3)窒化、亜硝酸(N2O)窒化、一酸化窒素(NO)窒化、などが挙げられる。これらの方法では、窒化種が、アンモニア、亜硝酸、一酸化窒素となる。なお、NO窒化により得られた窒化化学酸化膜は、特性を劣化させず、ゲート絶縁膜の経時絶縁破壊耐性、ホットキャリア耐性に優れている。
本実施形態の他の例としては、上述の二酸化シリコン(SiO2)膜41・42上に高誘電体膜例えば、ハフニウムオキサイド、酸化アルミニウム等を積層した複合膜とすることによって、MOSトランジスタのゲート絶縁膜に用いることができる。その場合は高誘電体膜のみを用いる場合に比べて、トランジスタ特性の性能向上(リーク電流の低減、界面準位の低減等による移動度の向上など)が得られる。上記高誘電体膜の下に形成する二酸化シリコン膜は例えば1nmまたはそれ以下の極薄膜でも良い。なお、通常の熱酸化法で形成する二酸化シリコン膜は1nm程度のものでは、リーク電流や界面準位が大きく実用に耐えないが、本実施形態の二酸化シリコン(SiO2)膜41・42は、この上に厚い絶縁膜を形成した積層構造の複合膜にも適する。さらに、上記高誘電体膜のみでなく、本実施形態の酸化膜は強誘電体膜を積層して形成したものにも適用できる。
なお、上記の説明では、ゲート電極3としてアルミニウムを用いたが、金属原子を含む膜としては、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、クロム、白金、パラジウム、タングステン、チタン、及びタンタルの群から選ばれる金属原子を含む膜が挙げられる。なお、金属原子を含む膜としては活性な金属原子を含む膜が望ましく、例えばアルミニウム、マグネシウム、ニッケルなどの金属膜や、シリコンを含んだアルミニウムなどの合金膜が望ましい。また、金属原子を含む膜としては窒化チタンや五酸化タンタルなどの化合物を用いることもできる。さらに、ニッケル等を用いたシリサイド電極を用いることもできる。
また、本実施形態で述べた各工程は、ガラス基板上やPETなどの基板上に多結晶(微結晶を含む)シリコンあるいは非晶質シリコンを形成して、薄膜トランジスタ(TFT)を形成する場合にも好適に利用できる。すなわち、被処理基板は、シリコンを含んでおり、形成する化学酸化膜が二酸化シリコン膜であることが好ましい。
なお、被処理基板は平面形状に限られることなく、3次元形状や球状の凹凸や曲面を持つ基板で、その凹凸や曲面の領域をトランジスタのチャンネルに利用したものでも、本実施形態で述べた二酸化シリコン膜などの絶縁膜をその凹凸や曲面に低温で均一に形成することができる。
さらに、上述の各工程は、薄膜トランジスタを製造する場合に限らず、大規模集積回路(LSI)、例えば、フラッシュメモリ等のメモリの容量絶縁膜を製造する過程、MOSキャパシタなどにも適用可能である。
なお、上記の説明では、化学酸化膜として、二酸化シリコン膜を形成したが、化学酸化膜は酸化される半導体層5の材料の種類に応じて変わるものであり、二酸化シリコン膜に限定されるものではない。
また、上記の説明では、被処理基板2に電圧を印加していないが、電圧を印加して二酸化シリコン膜を形成することによって、酸化反応の進行を促進できる(二酸化シリコン膜の形成速度を上昇できる)。
また、2段階酸化法では、被処理基板を低濃度および高濃度酸化性溶液30・60に浸漬している。このため、非常に簡単な構成で、酸化膜の形成が可能である。しかし、シリコン基板11を必ずしも浸漬する必要はなく、被処理基板に酸化性溶液を作用させることができればよい。例えば、低濃度または高濃度の酸化性溶液の蒸気(酸化性気体)に曝す方法をとることもできる。この場合、前述の酸化性溶液の蒸気を用いればよい。
以下、製造例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔製造例1〕
二段階溶液酸化による化学酸化膜の形成方法で、3.5nmの膜厚をもったSiO2膜の形成について述べる。
まず、第1の化学酸化膜(二酸化シリコン膜41)を形成するため、被処理基板2を、電圧印加をしないまま40%(wt)の硝酸水溶液に浸漬して、ポーラスで比較的原子密度の低い,原子密度2.22×1022原子/cm3のSiO2膜(第1酸化膜4a;化学酸化膜)41を厚さ1.1nmに形成した。
ついで、第2の化学酸化膜を形成するため、二酸化シリコン膜41を形成した基板を前記40%(wt)の硝酸水溶液に浸漬したまま、硝酸濃度68%(wt)の共沸硝酸水溶液(沸点120.7℃)となるまで加熱し、原子密度2.34×1022原子/cm3の第1の化学酸化膜よりも厚いSiO2膜42を形成した(全膜厚3.5nm)。
上記第1及び第2の各酸化過程(第1および第2の化学酸化膜の形成工程)では、最初の40%(wt)の硝酸水溶液中で形成された第1の化学酸化膜のSiO2膜に存在するポアーが硝酸の分解のサイトになって、つまり、このポアーを含む低い原子密度の上記SiO2膜41が触媒となって、SiO2膜42(第2の化学酸化膜)を形成する硝酸酸化が、順次進行したものと考えられる。
図4は、上記の二段階による硝酸酸化過程で形成されたSiO2膜41・42(化学酸化膜)のXPSスペクトル特性図を示し、鋭い2本のピークがシリコン基板からのSi(2p)軌道で放出された光電子によるもの、幅の広いピークが上記SiO2膜41・42から放出される光電子によるものである。これらのピークの面積強度比から、上記SiO2膜41・42の全膜厚を3.5nmと求めることができた。
これに対して、第1の化学酸化膜の形成なしで、最初から上記第2の化学酸化膜の形成と同じ条件で、シリコン基板を硝酸濃度68%(wt)の共沸硝酸水溶液に浸漬した場合には、ポアーのない,原子密度の高いSiO2膜が形成され、膜厚も1.4nmと小さいことが確かめられた。
図5は、上述の二段階による硝酸酸化過程で得た,膜厚3.5nmのSiO2膜41・42を持つMOS構造ダイオードの,PMA処理(post-metallization annealing−以下、PMA処理という)前後でのI−V特性図である。これは、MOS構造ダイオードの状態のまま、水素雰囲気中250℃でPMA処理を施すことによって、順バイアス1Vおよび逆バイアス−1Vの際のリーク電流密度は、それぞれ1×10−4A/cm2および2×10−6A/cm2となり、PMA処理前のそれぞれ1×10−3A/cm2および7×10−4A/cm2の各値からリーク電流密度が確実に減少したことを示している。
図6は、上述の二段階による硝酸酸化過程で得た3.5nmの膜厚のSiO2膜41・42を持つMOS構造ダイオードの,PMA処理前のC−V特性図である。このC−V特性図には、界面準位に由来する瘤(特性のふくらみ)がみられるとともに、ヒステレシスが存在する。このダイオードを、そのまま水素雰囲気中250℃で加熱処理する,いわゆるPMA処理を施すことにより、上述の瘤は完全に消滅し、またヒステレシスもほとんどなくなった。
この実施例では、膜厚3.5nmのSiO2膜41・42上にゲート電極3を形成して、その後、水素雰囲気中250℃で加熱するPMA処理したことで、界面準位やSiO2中のギャップ準位が消滅して、さらにSiO2膜41・42のバンドギャップが増大することによって、リーク電流密度を顕著に減少させ、絶縁膜の性能向上が可能であることを述べたが、この例に限らず、経験により、硝酸水溶液への浸漬時間を長くすることによって、SiO2膜41・42の膜厚はこれを超えて、数十nmのものも形成でき、加えて、上述のPMA処理を数百℃(例えば450℃)程度の適値に選定することにより、MOS構造の電気特性の向上、特にヒステレシスの消滅とリーク電流密度の低減、絶縁破壊耐圧の向上を実現することができた。
図7は、第1の化学酸化膜の形成として、シリコン基板11を、電圧印加をしないまま40%(wt)の硝酸水溶液に浸漬して、ポーラスで比較的原子密度の低い,原子密度2.22×1022原子/cm3のSiO2膜(第1の化学酸化膜)41を厚さ1.1nmに形成して、ついで、第2の化学酸化膜の形成として、硝酸濃度68%(wt)の共沸硝酸水溶液(沸点120.7℃)に浸漬してSiO2膜41・42を形成した場合の、共沸硝酸への浸漬時間とSiO2膜41・42の膜厚との関係を示したものである。SiO2膜41・42の膜厚は浸漬時間に対してほぼ直線的に増加して、10nm以上の膜厚を持つSiO2膜41・42も形成できることがわかる。
また、上述の二段階の硝酸酸化過程は、低濃度から高濃度への段階を二段のステップアップで切り替えることの他に、低濃度から高濃度へ多段階で順次切り替えること、あるいは低濃度から高濃度へ連続的に換えること、例えば、40%(wt)の硝酸水溶液に浸漬して沸騰状態を維持したまま硝酸濃度68%(wt)の共沸硝酸水溶液(沸点120.7℃)になるまで継続することも、本発明の実態として含む。
〔製造例2〕
本発明の第2の製造例について説明する。基板上の多結晶シリコンによりTFTを形成する場合、そのゲート絶縁膜に積層の二酸化シリコン(SiO2)膜を用いる。そこで、ここではそれと同様に、基板上の多結晶シリコン(すなわち、シリコン基板11が多結晶シリコン基板である)に二酸化シリコン膜を形成して、これでMOSキャパシタ(その容量絶縁膜)を製作した例(製造例2)について述べる。
この場合は、基板上の多結晶シリコン表面に、二段階の硝酸酸化過程で二酸化シリコン(SiO2)膜を形成するのが適当である。
上記製造例1と同様(図2(a)〜図2(f)参照)に、まず、第1の化学酸化膜の形成として、基板上の多結晶シリコン層を、電圧印加をしないで、40%(wt)の硝酸水溶液に浸して(接触させて)、SiO2膜(化学酸化膜)41を厚さ1.1nmに形成した(図2(c))。
ついで、第2の化学酸化膜の形成として、上記第1の化学酸化膜(SiO2膜41)を持つ基板上の多結晶シリコン層を、沸騰状態の硝酸濃度68%(wt)の共沸硝酸水溶液(沸点120.7℃)に、電圧印加をしないで浸して(接触させて)、厚い第2の化学酸化膜膜(SiO2)を生成することで、全膜厚約25nmのSiO2膜41・42(化学酸化膜)を均一に形成した(図2(d))。
この場合も、製造例1と同様、上述の第1及び第2の化学酸化膜を形成する各酸化過程を通じて、最初の40%(wt)の硝酸水溶液中で形成された第1の化学酸化膜のSiO2膜に存在するポアーが硝酸の分解のサイトになって、つまり,ポーラスで比較的原子密度の低い(原子密度2.22×1022原子/cm3程度),上記第1の化学酸化膜のSiO2膜41が触媒となって、第2の化学酸化膜42を形成する硝酸酸化が順次進行して、第1の化学酸化膜よりも少し密度の高い(原子密度2.34×1022原子/cm3程度),第1の化学酸化膜よりも厚い第2の化学酸化膜(SiO2膜42)が生成される。
ついで、この二酸化シリコン膜(化学酸化SiO2膜)上にゲート電極3の材料を成膜した。その後、所望の形状にパターニングして、ゲート電極3を形成することで、MOSキャパシタを製造した(図2(f))。
製造例2で得られたMOSキャパシタの諸特性は、いずれも上述の製造例1の場合と同様に、高性能、高安定性を呈するものであった。
なお、酸化性溶液としては、硝酸水溶液を用いた例で述べたが、これに代えて、過塩素酸と水との混合物である過塩素酸水溶液、硫酸と水との混合物である硫酸水溶液、王水及びこれらの混合溶液(共沸混合物を含む)の群から選ばれた少なくとも1つの水溶液を用いることもできる。
なお、製造例2では、上述の二酸化シリコン膜41・42(化学酸化膜;SiO2膜)の一部を窒化処理で厚さ0.3〜0.5nmの窒化シリコン膜に転化した複合膜で用いることも可能である。
製造例2ではMOSキャパシタを例に述べたが、MOSトランジスタのゲート絶縁膜を形成する場合、この二酸化シリコン膜、あるいは、二酸化シリコン膜を窒化処理した窒化シリコン膜を用いたものは、界面準位の少ない高性能な絶縁膜が得られ、例えば大規模集積回路(LSI)や電荷結合デバイス(CCD)などに用いることができる。また、多結晶シリコン電極材料などを配線に用いて形成する多層配線構造の層間絶縁膜あるいはフラッシュメモリ等のメモリの容量絶縁膜としても用いることができ、これらの分野での利用が十分に期待できる。
また、製造例2では、被処理基板として単結晶シリコン基板を用いて、MOSキャパシタを製造する例で説明したが、ここで述べた各工程は、単結晶シリコン基板を用いる場合に限らず、ガラス基板上やPETなどの基板上の多結晶(微結晶を含む)シリコンあるいは非晶質シリコン、CGシリコン(連続粒界結晶シリコン)によって薄膜トランジスタ(TFT)を形成する場合にも適用できる。特に、製造例2でも、200℃以下での化学酸化膜の形成が可能であるため、フレキシブルな液晶ディスプレイの製造におけるTFTの形成にも好適に利用することができる。
さらに、上述の各工程は、MOSキャパシタを製造する場合に限らず、ゲート絶縁膜に、本実施形態で形成された二酸化シリコン膜、この膜上にCVD法で形成されたSiO2膜を持つ積層二酸化シリコン膜、あるいは上記積層二酸化シリコン膜の中間に窒化シリコン含有膜を介在させた多層膜のずれかを用いるMOSトランジスタ、大規模集積回路(LSI)、および電荷結合デバイス(CCD)などでのゲート絶縁膜や層間絶縁膜などにも適用可能である。
製造例2では、上述の二酸化シリコン膜15の形成に加えて、表面への窒化シリコン含有膜形成処理あるいは窒素プラズマ中での窒化処理によって上記二酸化シリコン膜15表面に窒化シリコン含有膜を形成すること、さらに、上記二酸化シリコン膜15上あるいは上記窒化シリコン含有膜上へ重ねて、CVD法などで厚いSiO2等の絶縁膜を形成することも可能である。
(2)電圧印加法
電圧印加法は、ゲート酸化膜4を形成すべき被処理基板2(または多結晶シリコン51(半導体))に電圧を印加し、その基板を、活性酸化種を含む溶液に浸漬することによって、ゲート酸化膜4を形成する方法である。
電圧印加法は、例えば、図10に示す装置で行うことができる。図10は、電圧印加法を行う装置の断面図であり、ここでは、被処理基板2となるシリコン基板11に、化学酸化膜として、二酸化シリコン膜を形成する装置を簡易的に示している。すなわち、被処理用のシリコン基板11を処理槽12内の酸化性溶液13に浸した状態で、シリコン基板11に、電源4を接続して、シリコン基板11と処理槽12内に設置した対向電極15との間で所定の電圧を印加できるように構成したものである。すなわち、この製造装置は、以下に示す、電圧印加による酸化膜形成工程を実施する形成方法を実施する酸化膜形成部を有している。
電圧印加法による酸化膜形成工程は、図1・図2におけるゲート絶縁膜4を形成すべき被処理基板2に電圧を印加して行う。例えば、被処理基板2が絶縁性基板であれば、半導体層5に電圧を印加し、被処理基板2が導電性物質であれば、被処理基板2に電圧を印加すれば、ゲート電極3表面にゲート酸化膜4を形成できる。被処理基板2が導電性物質である場合、その導電性物質が、酸化性溶液によって酸化物を形成する物質からなるものであれば、被処理基板2表面にも、ゲート酸化膜4が形成される。
以下、電圧印加法について、具体例を挙げてさらに詳細に説明する。電圧印加法では、図2(b)の工程で処理した被処理基板2(シリコン基板11)を、超純水で5分間リンス処理(洗浄)した後、シリコン基板11を,図10に示す処理槽2内に満たした,低濃度でも酸化力の強い溶液(酸化性溶液)に浸漬し、かつ、そのシリコン基板11に,電源14を通じて,処理槽12内に設置した対向電極15との間で10Vの正の電圧を印加して室温で約10分間維持する。ここでは、酸化性溶液として、硝酸濃度1モル(mol./l)の硝酸水溶液を用いて、図2(c)(d)のように、多結晶シリコン51上に厚さ約10nmの二酸化シリコン膜41・42を均一に形成した。なお、ここでは、被処理基板2への電圧印加により、ソース電極6・ドレイン電極7,多結晶シリコン51にも電圧が印加されることになる。
このときの上記被処理基板2への電圧印加の条件は、加熱温度が200℃以下に設定されているときの温度を加味して選定する。一例を挙げると、上記被処理基板2の全面に均等電界が与えられるような電極配置、例えば上記被処理基板2とこれに平行配置の対向電極との間で、上記被処理基板2の側に正電位の数10ボルトの範囲(直流で100V未満)で選定し、上記硝酸濃度1モル(mol./l)の硝酸水溶液の場合では直流5〜20Vの範囲で適宜設定するのがよい。この電圧印加により、活性酸化種のO−やOH−などの陰イオンまたはラジカルが、多結晶シリコン51表面に引き込まれてかつ二酸化シリコン膜41が形成されてもそれを通過して、多結晶シリコン51表面での酸化反応が一様に加速される。これによって、多結晶シリコン51表面で二酸化シリコン膜42が生成される。
なお、上記被処理基板2への電圧印加の条件は、これに負電位を印加することにより、酸化種が多結晶シリコン51表面に引き込まれることを抑止することができる。上記被処理基板2への電圧印加がない(つまり、印加電圧値が零)のときにも、拡散によって、多結晶シリコン51表面に到来した酸化種により多結晶シリコン51表面では二酸化シリコン膜42の成長があるから、多結晶シリコン51表面での化学酸化膜の成長を止めるには、適当な負電圧を印加するのがよい。これは、多結晶シリコン51表面での二酸化シリコン膜42の成長を終えて、被処理基板2を処理槽2中の酸化性溶液3から取り出す(切り離す)際に実施すると有効に機能させることができる。
続いて、二酸化シリコン膜41上にゲート電極材の膜を形成した。ここでは、このゲート電極材として、1重量%のシリコンを含むアルミニウム合金を、周知の抵抗加熱蒸着法により膜厚約200nmに堆積することで形成した(以下、この種の金属膜電極を単にAl電極と称する)。なお、ゲート電極材は、Al電極に限定されるものではなく、例えば、このゲート電極材に代えて、多結晶シリコン電極(材)を付着させて用いることもできる。
その後、図2(e)のように、ゲート電極材を所望の形状にパターニングして、ゲートパターンのレジストを製造した。
最後に、P−CVD法によって、窒化シリコン薄膜を成膜し、この窒化シリコン薄膜における絵素電極8上と端子部パッド(図示せず)上の部分をフォトリソグラフィおよびドライエッチングにより除去することで保護膜9を形成し、薄膜トランジスタ1とした(図2(f))。このようにして製造した薄膜トランジスタは、MOSトランジスタである。
次に、このようにして製造したMOSトランジスタの特性について説明する。
図11は、電圧印加法で得たMOSトランジスタの静電容量(C)と印加電圧(V)との関係、いわゆるC−V特性図である。この特性図で見られるように、ゲート電極3に正電圧を印加することにより、化学酸化膜と半導体層の界面に反転層が誘起され、安定なキャパシタ容量(静電容量)が得られている。
また、上述のMOSキャパシタは、図11のC−V特性図からもわかるように、リーク電流密度も、通常の高温熱酸化法で形成した二酸化シリコン膜をゲート絶縁膜に用いて形成したMOSキャパシタのリーク電流密度特性と同程度ないしはそれ以上であり、確実に高性能が認められる。
なお、上記の説明では、酸化性溶液または酸化性気体として、硝酸濃度1モルの硝酸水溶液を用いた例で述べたが、これに代えて、任意濃度の硝酸、過塩素酸、硫酸、オゾン溶解水、過酸化水素水、塩酸と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と過酸化水素水との混合溶液、アンモニア水と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と硝酸との混合溶液,王水、およびさらに酸化力のある沸騰水の群から選ばれた少なくとも1つの溶液、その気体、またはそれらの混合物用いることもできる。すなわち、これらの酸化性溶液または酸化性気体は、単独で用いても、混合物で用いてもよい。これらの酸化性溶液または酸化性気体は、酸化力が強い酸化種、例えば、酸素イオン、水酸化物イオン、過酸化物イオンなどの酸素のイオンやラジカルを発生する。このため、二酸化シリコン膜41・42を形成すべき被処理基板2を陽極とすることによって、二酸化シリコン膜41形成後も、これらの酸化種を、多結晶シリコン51表面(多結晶シリコン51と二酸化シリコン膜42との界面)に導くことが可能となる。
酸化性溶液として硝酸水溶液を用いる場合は、硝酸濃度が1〜65%(重量比、以下、wtと記す)の範囲の低濃度であっても、シリコンに対する酸化力が強く、シリコン基板11への印加電圧なしでも、上述の二酸化シリコン膜41・42の形成に好適である。
また、高濃度の酸化性溶液、とりわけ、硝酸濃度が65%(wt)を超える高濃度、例えば、硝酸濃度68%(wt)以上(共沸濃度)の硝酸水溶液では、シリコンに対する酸化力が極めて強く、被処理基板2への印加電圧なしでも、均一な二酸化シリコン膜41・42が形成される。そして、この硝酸水溶液では、加熱温度を120.7℃(いわゆる共沸温度以上)に保つと、硝酸と水とが共沸状態になり、その溶液および蒸気(すなわち気体)はそれぞれ濃度が一定になり、二酸化シリコン膜41・42の成長の制御を時間管理で行うことができる。
そして、それらは蒸気、すなわち酸化性気体でも強い酸化力があるため、この蒸気をシリコン基板11に電圧印加なしで作用させたとしても、被処理基板2の表面(より詳細には,多結晶シリコン51の表面)に二酸化シリコン膜41・42を形成することができる。この場合、被処理基板2の温度は適宜選定することができる。しかし、被処理基板2に電圧を印加して、二酸化シリコン膜41・42を形成することによって、二酸化シリコン膜41・42の生成速度を高めることができる。
また、上記の酸化性溶液またはその気体の中でも、高濃度の酸化性溶液または酸化性気体が、本実施形態で用いた硝酸と水との共沸混合物である共沸硝酸、硫酸と水との共沸混合物である共沸硫酸、および過塩素酸と水との共沸混合物である共沸過塩素酸の群から選ばれた少なくとも1つである場合は、特に酸化力が強く、本発明による酸化物の形成に特に好適である。これらの共沸混合物は、被処理基板2への印加電圧が低くても(印加電圧がゼロであっても)、酸化膜形成工程ならびに得られる二酸化シリコン膜41・42の性能がいずれも安定である。
このように、電圧印加法では、上記酸化性溶液またはその気体が、共沸濃度の共沸混合物であることが好ましく、水との共沸混合物であることがより好ましく、水との共沸混合物である共沸硝酸、水との共沸混合物である共沸硫酸、および水との共沸混合物である共沸過塩素酸の群から選ばれた少なくとも1つの溶液またはその気体からなることがさらに好ましい。さらに、これらの共沸混合物は、共沸温度以上に加熱した上記酸化性溶液またはその気体を、半導体に作用させることが特に好ましい。
上記の説明では、電圧印加法による酸化膜形成工程を、1種類の濃度の硝酸水溶液を用いて二酸化シリコン膜41・42を形成しているが、異なる複数の濃度の硝酸などの酸化性溶液またはその気体を適用することも可能である。なお、この場合、酸化性溶液またはその気体は、共沸混合物であることが好ましい。
すなわち、多結晶シリコン51に、共沸濃度未満の酸化性溶液またはその気体を作用させることにより、多結晶シリコン51表面に、第1の二酸化シリコン膜(第1の化学酸化膜)41を形成する第1工程と、第1の二酸化シリコン膜41に、共沸濃度の酸化性溶液またはその気体を作用させることにより、第1の二酸化シリコン膜41よりも厚い第2の二酸化シリコン膜(第2の化学酸化膜)42を形成する第2工程とを有し、上記第1工程および上記第2工程の少なくとも一方の工程を、上記の電圧印加法による酸化膜形成工程(すなわち、シリコン基板に電圧を印加した状態で、上記酸化性溶液またはその気体を、上記シリコン基板に作用させることにより、上記シリコン基板表面で第1または第2の化学酸化膜を形成する)を行ってもよい。すなわち、前記2段階酸化による第1工程または第2工程の少なくとも一方の工程を、電圧印加法による酸化膜形成工程によって行うこともできる。
これにより、前述の2段階酸化法の酸化膜形成工程と同様に、所望の厚さの高品質の化学酸化膜を、低温・低電圧で、シリコン基板表面に均一に形成することが可能である。すなわち、二酸化シリコン膜41・42の膜質を向上でき、リーク電流密度の低い高品質の二酸化シリコン膜41・42を形成できる。従って、例えば、二酸化シリコン膜をゲート絶縁膜4として使用したとしても、その二酸化シリコン膜は高品質の絶縁膜として機能するため、現状の絶縁膜よりも薄膜化(例えば数nm以下)が可能である。
さらに、特に、第1工程を共沸濃度未満、第2工程を共沸濃度の酸化性溶液またはその気体を作用させているため、第1の二酸化シリコン膜は、第2の二酸化シリコン膜に比べて、原子密度の低い化学酸化膜となる。すなわち、第1工程では、有孔(ポアー)が存在する第1の二酸化シリコン膜41を形成できる。そして、第2工程では、第1工程で形成された第1の二酸化シリコン膜41に存在するポアーに、酸化性溶液またはその気体が作用することによって、第2の二酸化シリコン膜42が形成される。つまり、ポアーを含む低い原子密度の第1の二酸化シリコン膜41が触媒となって、第2の二酸化シリコン膜42の酸化反応が、順次進行する。これにより、より一層高品質の二酸化シリコン膜41・42を形成できる。
なお、第1工程および第2工程は、低濃度(好ましくは共沸濃度未満)と、高濃度(好ましくは共沸濃度)との2種類の酸化性溶液またはその気体を準備して、第1および第2の二酸化シリコン膜を形成してもよいし、上記低濃度から高濃度へ多段階(2種類以上の濃度の酸化性溶液またはその気体を準備する)で、順次高濃度に切り替えてもよい。また、低濃度から高濃度へ連続的に濃度を上昇させることもできる。例えば、共沸濃度未満の酸化性溶液を、共沸濃度になるまで加熱すれば、その加熱状態を維持することにより、酸化性溶液は一定の溶液組成・蒸気組成となる。これにより、化学酸化膜の成長の制御を、時間管理で行うことができる。従って、二酸化シリコン膜の形成(厚さや品質)を、より高精度に制御することが可能となる。
電圧印加法では、シリコン基板11への電圧印加は、それによって、シリコン基板11上での二酸化シリコン膜15の生成速度を高めるとともに、その膜厚を増大させることに寄与する。被処理基板2に電圧を印加することにより、溶液中の酸化種であるO−やOH−などの陰イオンまたはラジカルが、多結晶シリコン51表面に引き寄せられて、かつ二酸化シリコン膜41の形成後も、二酸化シリコン膜41中を通過して、多結晶シリコン51表面に到着しやすくなり、酸化反応速度を高め、厚い二酸化シリコン膜42を得ることができる。
電圧印加法でも、上述の二酸化シリコン膜41・42に対して、窒化処理を行う窒化工程を行うことが好ましい。例えば、窒化工程としては、窒素を含む気体中,とりわけプラズマ窒化処理で、二酸化シリコン膜15表面の一部を、窒化シリコンに転化した窒化シリコン含有二酸化シリコン膜(窒化化学酸化膜)を形成することや、上述の窒化処理後の窒化シリコン含有膜上に重ねて、CVD法などで厚いSiO2等の絶縁膜(酸化膜)を形成することも可能である。これにより、二酸化シリコン膜41・42は、窒化シリコンと二酸化シリコンとの膜(窒化化学酸化膜)となる。このような窒化処理を行えば、化学酸化膜の絶縁破壊特性や電荷トラップ特性を向上できる。
また、電圧印加法でも、上述の二酸化シリコン(SiO2)膜41上に、高誘電体膜、例えば、ハフニウムオキサイド、酸化アルミニウム等を積層した複合膜とすることによって、MOSトランジスタのゲート絶縁膜4として好適に用いることができる。その場合は、高誘電体膜のみを用いる場合に比べて、トランジスタ特性の性能向上(リーク電流の低減、界面準位の低減等による移動度の向上など)が得られる。上記高誘電体膜の下(被処理基板2側)に形成する二酸化シリコン膜41・42は、例えば1nmまたはそれ以下の極薄膜でよく、電圧印加なしで、形成しても良い。なお、通常の熱酸化法で形成する二酸化シリコン膜15は、1nm程度のものでは、膜質が低いため、リーク電流や界面準位が大きく実用に耐えない。
これに対し、本実施形態の二酸化シリコン(SiO2)膜41・42は、高品質であるため、二酸化シリコン膜41・42上に、厚い絶縁膜を形成した積層構造の複合膜に好適である。すなわち、MOSトランジスタのゲート絶縁膜4に好適である。さらに、上記高誘電体膜のみでなく、本実施形態の二酸化シリコン膜41・42は、強誘電体膜を積層して形成したものにも同様に適用できる。
また、電圧印加法では、二酸化シリコン膜41・42を形成するための被処理用基板として単結晶シリコン基板11を用いてMOSキャパシタを製造する例で説明したが、上記の各工程は、ガラス基板上やPETなどの基板上に多結晶(微結晶を含む)シリコン、非晶質シリコン、あるいはCGシリコン(連続粒界結晶シリコン)を形成して、そのような基板を有する薄膜トランジスタ(TFT)を形成する場合にも適用できる。
さらに、本実施形態では、均一な二酸化シリコン膜41・42が得られるため、上記被処理基板2や多結晶シリコン51(半導体層5)は、平面形状に限られることなく、3次元形状や球状の凹凸や曲面を持つ基板で、その凹凸や曲面の領域をトランジスタのチャンネルに利用することも可能である。すなわち、上記の方法によれば、形成した二酸化シリコン膜41・42などの高品質の絶縁膜を、被処理基板2や多結晶シリコンなどの凹凸や曲面にあわせて、低温で均一に形成することができる。
さらに、上述の各工程は、半導体装置として、薄膜トランジスタを製造する場合に限定されるものではない。なお、本実施形態では薄膜トランジスタを例に述べたが、薄膜トランジスタ(TFT)のゲート絶縁膜を形成する場合、この積層二酸化シリコン膜あるいは積層二酸化シリコン膜の中間に窒化シリコン含有膜を介在させたものは、界面準位の少ない高性能な絶縁膜が得られ、高性能なTFTを得ることができる。また、大規模集積回路(LSI)や電荷結合デバイス(CCD)などに用いることができる。また、多結晶シリコン電極材料などを配線に用いて形成する多層配線構造の層間絶縁膜あるいはフラッシュメモリ等のメモリの容量絶縁膜としても用いることができ、この分野での利用が十分に期待できる。
また、本実施形態では、被処理用基板として、単結晶シリコンのシリコン基板を用いて薄膜トランジスタを製造する例で説明したが、ここで述べた各工程は、単結晶シリコン基板を用いる場合に限らず、ガラス基板上やPETなどの基板上の多結晶(微結晶を含む)シリコンあるいは非晶質シリコン、CGシリコン(連続粒界結晶シリコン)、炭化シリコン、シリコン・ゲルマニウムなどで薄膜トランジスタ(TFT)を形成する場合にも、十分に適用できる。特に、炭化シリコンは、スイッチング速度が速いTFTに好適に利用できるため、有用性が高い。
また、本実施形態では、被処理基板2に直流電圧を印加しているが、交流電圧を印加してもよい。交流電圧を印加する場合、パルスを制御により、直流電圧の場合と同様にして、二酸化シリコン膜を形成できる。また、パルスの制御により、形成する二酸化シリコン膜の膜厚の制御も可能となる。
なお、上記の説明では、ゲート電極材としてアルミニウムを用いたが、金属原子を含む膜としては、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、クロム、白金、パラジウム、タングステン、チタン、及びタンタルの群から選ばれる金属原子を含む膜が挙げられる。なお、金属原子を含む膜としては活性な金属原子を含む膜が望ましく、例えばアルミニウム、マグネシウム、ニッケルなどの金属膜や、シリコンを含んだアルミニウムなどの合金膜が望ましい。また、金属原子を含む膜としては窒化チタンや五酸化タンタルなどの化合物を用いることもできる。
なお、電圧印加法と、従来の陽極酸化法とでは、以下のような違いがある。
従来、半導体に電圧を印加した状態で、その半導体表面に酸化膜を形成する方法として、陽極酸化法が行われていた。陽極酸化法は、酸化膜を溶かさない電解質中での半導体成分のイオンの移動を、電界が加速することによって、半導体表面に酸化膜を形成する方法である。
例えば、陽極酸化法によりSi基板にSiO2膜を形成する場合、Si基板への電圧印加により、Si基板表面からSiO2膜にSi+イオンを導く。そして、Si基板から離脱したSi+イオンが、形成したSiO2膜中を透過して移動することにより、離脱したSi+イオンをSiO2膜表面に導く。そして、SiO2膜表面のSi+イオンの酸化によって、SiO2膜表面にSiO2膜を形成する。つまり、陽極酸化法では、SiO2膜の成長は、SiO2膜表面で起こる。すなわち、陽極酸化では、SiO2膜表面にSi+イオンを導くことによって、SiO2膜表面で、酸化反応が起こる。
これに対し、本発明の酸化物の形成方法(本形成方法)では、酸化力の強い酸化性溶液またはその気体(高酸化性溶液またはその気体)を用いることで、例えば、Si基板にSiO2膜を形成する場合、Si基板への電圧印加により、酸化性溶液から解離酸素イオン(O−)や酸素原子などの活性種(酸化種)が、Si基板表面に生成する。この活性種は、SiO2/Si基板の界面に移動し、この界面で、Si基板と反応してSiO2膜を形成する。前述のように、本形成方法では、Si基板への電圧印加により、Si基板表面(Si基板とSiO2膜との界面)に、O−イオンや酸素原子などの酸化種を導いている。従って、SiO2膜の形成後、上記酸化種のイオンまたはラジカルが、Si基板表面(Si基板とSiO2膜との界面)のSiを酸化することにより、SiO2膜を形成する。つまり、SiO2膜の成長は、SiO2膜表面ではなく、Si基板表面(Si基板とSiO2膜との界面)で起こる。すなわち、本形成方法では、Si基板表面(Si基板とSiO2膜との界面)に酸化種のイオンまたはラジカルを導くことによって、Si基板表面(Si基板とSiO2膜との界面)で、酸化反応が起こる。
このように、本形成方法では、半導体表面(半導体と化学酸化膜との界面)で酸化反応が起こるのに対し、陽極酸化法では、酸化膜表面で酸化反応が起こる。従って、本形成方法と陽極酸化法とでは、化学酸化膜の成長部位が異なる。すなわち、陽極酸化では、界面から、基板とは反対側に酸化膜が形成されていくのに対して、本形成方法では、界面から基板側に化学酸化膜が形成されていく。つまり、Si基板と二酸化シリコン膜との界面は、酸化反応に伴って、シリコンバルク側に移動して、常に清浄になる。従って、本形成方法では、良好な界面特性を得ることができる。
さらに、陽極酸化法では、半導体表面から酸化される半導体成分のイオンを離脱し、酸化膜表面に、その半導体成分のイオンを導く必要があるため、高い電圧が必要である。これに対し、本形成方法では、半導体表面(半導体と化学酸化膜との界面)で、化学酸化膜が成長するため、半導体表面から酸化される半導体成分のイオンを離脱する必要がない。従って、本形成方法では、陽極酸化法よりも低電圧での化学酸化膜の形成が可能である。
また、上記特開平3−6826号公報では、シリコン基板表面に、低電圧で酸化膜を形成するために、多孔質の酸化膜を形成した後、酸化膜を形成している。すなわち、上記特開平3−6826号公報では、多孔質の酸化膜を形成することが必須である。また、形成した酸化膜の膜質も不充分である。
これに対し、本形成方法では、そのような多孔質の酸化膜を形成することなく、半導体表面に化学酸化膜を形成することができる。
また、従来の陽極酸化では、低電圧での酸化反応を行うために、多孔質シリコン基板を使用している。
これに対し、本形成方法では、酸化力の強い酸化性溶液またはその蒸気を使用しているため、必ずしも多孔質の処理基板(例えば多孔質シリコン基板など)を使用する必要はない。
以下、製造例により、電圧印加法についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔製造例3〕
次に、酸化性溶液として硝酸を用いて、シリコン基板11上に、電圧印加法によって、二酸化シリコン膜41・42を形成した例を示す。
比抵抗が約10Ωcmで,面方位(100)のn型シリコンウェーハを、周知のRCA洗浄法で洗浄した後、ウェーハ表面の一部にオーミック接触の電極を設けて、このウェーハを室温(25℃)で、濃度1モル(mol./l)の硝酸(HNO3)水溶液に浸漬して、対向電極15の白金参照電極との間に、5〜20Vの範囲で可変の電源14から電圧を印加して、ウェーハ表面に二酸化シリコン(SiO2)膜41・42を形成した。
図12は、印加電圧をパラメータとして、処理時間(分)とSiO2膜41・42の膜厚(nm)との関係を示す,SiO2膜41・42の成長膜厚−時間特性図である。印加電圧が5Vの場合には、処理時間に対して、SiO2膜の膜厚が放物線状に増加しており、このことから、SiO2膜15の成長は、酸化種であるO−やOH−などの陰イオンまたはラジカルによる,拡散律速になっていると認められる。そして、印加電圧が10Vの場合には、処理時間に対してSiO2膜41・42厚が直線状に増加しており、反応律速になっていると認められる。すなわち、印加電圧が高い場合、酸化種であるO−やOH−などの陰イオンまたはラジカルのSiO2/Si界面(二酸化シリコン膜41・42と多結晶シリコン51との界面)への移動が促進される結果、その界面での酸化反応が律速過程になっているとみられる。ただし、そのいずれの場合も、SiO2膜42の成長は、SiO2/Si界面(多結晶シリコン51表面)での酸化反応による化学酸化膜である。
この製造例によると、被処理基板2への印加電圧を10Vに設定した場合、SiO2膜41・42厚と時間との関係がほぼ直線関係になるため、その時間を増加して、膜厚20〜30nmのSiO2膜41・42を形成することも十分に可能である。
図13は、上記SiO2膜41・42上に直径0.3mmのアルミニウム電極(ゲート電極3)を形成して、Al/SiO2/Si(100)構造の薄膜トランジスタ(MOSダイオード(キャパシタ))として、上記印加電圧5V,60分(処理時間)で得たSiO2膜の場合のMOSダイオードによる電流−電圧(I−V)特性図である。このときのSiO2膜41・42の厚さは、SiO2膜41・42の比誘電率を3.9と仮定して,電気容量−電圧(C−V)法により測定したところ、約6.1nmであった。また、上記SiO2膜41・42上のゲート電極に4Vおよび−4Vの各電圧を印加した際のリーク電流密度は、それぞれ、8×10−8A/cm2,9×10−9A/cm2であり、室温で形成したSiO2膜41・42であるにも拘らず、比較的低い値であった。
図14は、印加電圧5V,10V,15Vおよび20Vのそれぞれで形成したSiO2膜について、そのSiO2膜中の電界強度を5MV/cmに設定した際の薄膜トランジスタでのリーク電流密度とSiO2膜厚との関係をランダムにプロットした相関図である。観測したすべての膜厚の範囲で、そのリーク電流密度は1×10−7A/cm2以下であった。
図15は、0.01モルの過塩素酸(HClO4)水溶液中で被処理基板2に10Vの電圧を10分間印加することによって形成したSiO2膜41・42を持つ薄膜トランジスタのI−V特性図およびC−V特性図である。上記SiO2膜41・42上のゲート電極に3Vおよび−3Vの各電圧を印加した際のリーク電流密度は、それぞれ、7×10−8A/cm2,8×10−9〜8×10−8A/cm2であり、C−V特性ではほぼ0.9Vのヒステレシスが存在する。X線光電子スペクトル(XPS:X-ray photoelectron spectrum)測定およびC−V特性から求めたSiO2膜厚は、8.5nm(XPS)および6.7nm(C−V)であった。
以上はHNO3水溶液又はHCl4水溶液中で形成したSiO2膜41・42にアニール等の後処理を施さない場合の結果である。SiO2膜41・42形成後、これを窒素中で熱処理(post-oxidation annealing−以下、POA処理という)を施すことによって、以下に示すように、電気特性が向上した。
図16および図17は、上述の0.01モルの過塩素酸(HClO4)水溶液中で被処理基板2に10Vの電圧を10分間印加することによって形成したSiO2膜41・42(図15に示すもの)を、窒素中200℃で30分間の加熱によるPOA処理した後、アルミニウム電極を形成した薄膜トランジスタのI−V特性図およびC−V特性図である。これによると、上記SiO2膜41・42上のゲート電極に4Vおよび−4Vの各電圧を印加した際のリーク電流密度は、それぞれ、1〜8×10−8A/cm2,1〜8×10−9A/cm2であり、この熱処理(POA処理)により処理前の値の1/5〜1/10程度に減少した。また、C−V特性でも、ヒステレシスが0.4V程度と、この熱処理(POA処理)で約半分になった。
更に、フーリエ赤外の吸収(FT−IR)スペクトルから、200℃での熱処理によってSiO2膜41・42中の水分子の脱離が認められ、このことから、上述の電気特性の向上はトラップ準位として働く水分子の脱離によるものと見られる。
XPS測定から求めたSiO2膜の厚みは8.5nmで、熱処理前と変化はないが、C−V特性から求められるSiO2膜の厚みは、7.6nmで、熱処理前より少し増加した値になる。これは、上記熱処理による水分子の離脱で誘電率が低減したことに因るとみられる。すなわち、C−V特性およびXPS測定から求めたSiO2膜41・42の比誘電率を熱処理前後で比較すると、4.9(処理前)および4.4(処理後)と見積もられ、これは、処理前には膜中に極性の大きなH2O(水分子)やOHイオンの存在で比誘電率が高く、処理後にはH2Oが脱離して比誘電率が低減したことによると考えられる。
図18および図19は、1モルの硝酸(HNO3)水溶液中、印加電圧20Vで形成したSiO2膜15に対して、窒素中600℃で加熱処理したのち、これにMOSダイオードを形成して得たC−V特性図およびI−V特性図である。これによると、C−V特性中のヒステレシスはかなり小さくなり、また、I−V特性で、電極への印加電圧10Vおよび−10Vでのリーク電流密度は、約1×10−5A/cm2および1×10−6A/cm2程度であった。窒素中200℃での熱処理によってSiO2膜41・42中のH2Oは除かれるが、OHイオンは500℃でないと除かれない。従って、600℃での加熱処理による電気特性の向上は、OHイオンが除去されたことによるものである。
一方、OHイオンは、水素雰囲気中200℃でのPOA処理、あるいはゲート電極形成後の熱処理(post-metallization annealing)で除去されることを確認したので、上記熱処理を水素雰囲気中200℃で実施することが水分子およびOHイオンの除去に有効であることがわかった。
なお、以上説明した電圧印加法および2段階酸化法を組み合わせて、ゲート酸化膜4を形成することもできる。例えば、2段階酸化法の少なくとも1つの工程を、電圧を印加しながら行っても良い。
以上のように、酸化膜形成工程(電圧印加法、および、2段階酸化法)では、被処理基板2を酸化性溶液に浸漬してゲート酸化膜4(化学酸化膜)を形成している。このため、基板の表面が凹凸や曲面を有していても、酸化性溶液は、均一に被処理基板2表面に行き渡る。これにより、ゲート酸化膜4を形成すべき全領域に渡って、膜厚が均一なゲート酸化膜4を形成できる。従って、信頼性の高い高品質なゲート酸化膜4を備えた薄膜トランジスタを製造できる。
薄膜トランジスタにおいて、ゲート酸化膜4の膜質は、薄膜トランジスタの電気特性や信頼性を決定する重要な役割を担っている。すなわち、薄膜トランジスタにおいて、完全な絶縁性が要求されるゲート酸化膜4は、薄膜トランジスタを備えた各種デバイスの性能(信頼性・特性)に直接影響するため、特に、高品質・高信頼性が要求される。従って、上記の酸化膜形成工程によって、ゲート酸化膜4を形成することによって、絶縁耐性等の特性に優れた信頼性の高い高品質なゲート酸化膜4を形成できる。このため、ゲート酸化膜4の薄膜化が可能である。その結果、従来よりも薄型化した薄膜トランジスタを製造できる。
さらに、上記の構成では、酸化力の強い活性酸化種を、酸化性溶液の加熱または電気分解によって形成し、これによって、化学酸化膜を形成しているため、例えば、200℃以下の温度であっても、化学酸化膜の形成が可能である。従って、フレキシブルな基板(例えば、プラスチック;ポリエチレンテレフタレート(PET))を有する液晶ディスプレイの製造にも適用可能な、薄膜トランジスタを製造できる。これにより、プラスチック基板上でも閾値の低いプラスチック薄膜トランジスタを製造できる。
ここで、「活性酸化種」とは、通常の酸素(O2)に比べて、化学反応を起こしやすい酸素を示す。例えば、原子状態の酸素、解離酸素イオン(O−)、準安定状態の酸素(例えば、通常の3重項酸素を励起して生成する1重項酸素など)、過酸化物イオン(O2 2−)、超酸化物イオン(スーパーオキソイオン;O2 −)、オゾン化物イオン(O3 −)、水酸化物イオン(OH−)、ペルヒドロキシイオン(OOH−)、これらのラジカルを示している。
また、「活性酸化種を含む酸化性溶液」とは、上記活性酸化種を含む溶液であり、上記活性酸化種のうち、少なくとも1つを生成する溶液であれば、特に限定されるものではない。酸化性溶液、硝酸、過塩素酸、硫酸などの強酸、オゾン溶解水、過酸化水素水、塩酸と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と過酸化水素水との混合溶液、アンモニア水と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と硝酸との混合溶液、王水、および沸騰水の群から選ばれた少なくとも1つの溶液、またはそれらの混合物からなることが好ましい。そして、酸化性溶液は、ハロゲンや金属を含んでいない溶液であることが好ましい。ハロゲンや金属は、形成した化学酸化膜から除去することが困難であり、膜質の劣化につながるためである。このため、酸化性溶液は、硝酸であることが特に好ましい。
なお、酸化性溶液の濃度は、基板に化学酸化膜を形成できる程度の濃度であればよく、化学酸化膜の形成されやすさ(酸化のされやすさ)によって異なる。高濃度であるほど、酸化力も強いため、化学酸化膜が形成されにくい(酸化されにくい)場合には、高濃度の酸化性溶液を用いる。
本製造方法では、化学酸化膜を形成すべき基板が、表面に、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、連続粒界結晶シリコン、炭化シリコンおよびシリコン・ゲルマニウムから選ばれる少なくとも1つのシリコン化合物を備えており、上記シリコン化合物を直接酸化することにより、シリコン酸化膜(二酸化シリコン膜)を形成することが好ましい。二酸化シリコン膜は、ゲート酸化膜をはじめ、種々の用途の絶縁酸化膜として使用されている。このため、上記酸化膜形成工程を行うことにより、絶縁耐性等の特性に優れた信頼性の高い高品質な二酸化シリコン膜を、化学酸化膜として備えた薄膜トランジスタを形成できる。
多結晶シリコン(ポリシリコン)は、ゲート電極材料として、セルフアライン法を適用できる点で優れている。このため、多結晶シリコンをゲート電極として、利用することは好ましい。しかし、基板上への多結晶シリコンの形成は、CVD法による堆積によって行われるが、CVD法では、均一な酸化膜を形成することが困難である。このため、ある程度酸化膜を厚く形成しないと、目的とする酸化膜の特性(例えば、リーク電流を抑えるなど)を得ることができない。従って、高品質の酸化膜を形成しない限り、薄膜トランジスタのより一層の薄膜化を達成することはできない。特に、基板に積層されるシリコンは、単結晶シリコンから多結晶シリコン(ポリシリコン)へ移行しつつある。しかし、多結晶シリコンは、CVD法によって、基板上に堆積して形成される。このため、形成された多結晶シリコンの表面は、凹凸形状となる。
また、薄膜トランジスタは、信頼性の高い高品質なゲート酸化膜を備えた高性能な薄膜トランジスタである。また、このような薄膜トランジスタを例えば、スイッチング素子やメモリセル用のキャパシタに適用することも可能である。例えば、画素用のキャパシタなどにも適用できる。従って、このような薄膜トランジスタを、液晶ディスプレイ,有機ELディスプレイ,フラットパネルディスプレイなどの各種ディスプレイに適用することによって、容量や画素が安定した表示装置を提供できる。
なお、本製造方法における上記酸化膜形成工程は、例えば、酸化膜の改質方法として利用可能である。具体的には、従来、ゲート酸化膜は、CVD法による堆積法や熱酸化法によって形成されてきた。しかし、これらの方法では、高品質なゲート酸化膜を均一に形成ができない。すなわち、従来のゲート酸化膜は、不均一な酸化膜である。
そこで、このような不均一なゲート酸化膜に対して、電圧印加法および/または2段階酸化法を行うことは好ましい。例えば、CVD法などによってゲート酸化膜を形成した後、電圧印加法および2段階酸化法の少なくとも一方によって、そのゲート酸化膜を処理することが好ましい。これにより、CVD法などによって形成された不均一なゲート酸化膜を、均一化することが可能となる。すなわち、電圧印加法および2段階酸化法を、不均一なゲート酸化膜の膜質を改善するゲート酸化膜の改質方法として利用できる。
このように、例えば、CVD法等によって形成された不均一な酸化膜に対して、前記本製造方法における酸化膜形成工程の処理を施すことによって、不均一な酸化膜の膜厚を、均一にすることができる。従って、不均一な酸化膜を、信頼性の高い酸化膜に改質することができる。
すなわち、通常、TFT等のトランジスタの酸化膜(例えば、ゲート酸化膜)は、CVD法により形成される。ところが、CVD法は、基板上に酸化膜を堆積する方法であるため、特に、凹凸形状を有する基板に対して、均一な酸化膜を形成できない。このため、従来使用されている酸化膜の品質は、不充分である。
そこで、酸化膜形成工程を行うことにより、このような不充分な酸化膜が形成された基板を、活性酸化種を含む溶液に浸漬する。これにより、上記基板は、酸化力の強い高酸化性溶液によって、直接酸化される。その結果、酸化膜の膜厚を均一にすることができ、信頼性の高い酸化膜を形成できる。
なお、上記の説明では、化学酸化膜として、特に絶縁性を得るために、高品質・高信頼性を要求されるゲート酸化膜について説明したが、化学酸化膜の種類はこれに限定されるものではなく、酸化性溶液によって酸化物を形成するどのような用途の酸化膜にも適用可能である。
また、上記酸化膜形成工程では、電圧印加法や2段階酸化法における、印加電圧の大きさや酸化性溶液の濃度や、その工程の処理時間を調節することによって、化学酸化膜の膜厚の制御も可能である。上記のように、酸化膜形成工程では、高品質な化学酸化膜を形成できるため、化学酸化膜の薄膜化が可能である。従って、薄膜化した化学酸化膜を備えた薄膜トランジスタは、従来よりも駆動電圧が低くなる。
〔製造例4〕
ここでは、製造例1のように、第1の化学酸化膜(二酸化シリコン膜41)を形成した後、二酸化シリコン膜41を形成した基板を、40%(wt)の硝酸水溶液に浸漬したまま、共沸硝酸水溶液となるまで加熱(濃縮)することによって、第2の化学酸化膜(二酸化シリコン膜42)を形成した場合(連続酸化)と、40%(wt)の硝酸水溶液と共沸硝酸水溶液とを独立して設け、40%(wt)の硝酸水溶液を用いて第1の化学酸化膜(二酸化シリコン膜41)を形成した後、二酸化シリコン膜41を形成した基板を、共沸硝酸水溶液に浸漬することによって、第2の化学酸化膜(二酸化シリコン膜42)を形成した場合(不連続酸化)とを比較した。
具体的には、連続酸化では、まず、RCA洗浄した基板を、40wt%硝酸に10分浸漬する。その後、その基板を浸漬したまま、硝酸が共沸状態となるまで加熱する。そして、共沸硝酸となってから、2時間浸漬する。
一方、不連続酸化では、まず、RCA洗浄した基板を、40wt%硝酸に10分浸漬する。次に、40wt%硝酸から、基板を取り出し、洗浄後、共沸硝酸に2時間浸漬する。
このようにして形成した二酸化シリコン膜を比較したところ、図22に示すように、連続酸化では、比較的厚い4nm程度の二酸化シリコン膜が形成されたのに対し、不連続酸化では、約1nm程度の二酸化シリコン膜しか形成されなかった。
また、図21に示すように、連続酸化によるTFT多結晶薄膜の酸化では、不連続酸化の場合よりも短時間で厚い化学酸化膜を形成することが可能であった。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、請求項に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。