JP4236540B2 - ワイヤソー - Google Patents
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このワイヤソーの一種としてレジンボンドワイヤソーがあり、高抗張力金属を芯線として用い、ポリアミド、ポリイミド樹脂等の有機材料またはガラス等の無機材料をバインダーとしてこれに砥粒を分散含有させたもので芯線を被覆するという構成のものである。
ワイヤソーの切断性能に最も影響を与えるのは芯線表面に固着された砥粒の固着状態であり、主に砥粒数、砥粒間隔、偏芯量が重要な要素となる。砥粒の固着状態が悪いと、早期に砥粒が脱落し、最終的にはボンド材が剥離する。ボンド材の剥離によって、切断速度は急速に低下し、加工面の精度も悪くなるとともに、ワイヤソーの寿命が短くなる。
そのため、砥粒が脱落することによるボンド材の剥離を防止して、高能率の加工を行うためには、砥粒固着状態を最適なものとすることが必要となる。
ワイヤソー表面の砥粒固着状態を良好なものとすることを目的としたワイヤソーの製造方法が、特許文献1に開示されている。
砥粒間隔の標準偏差が200μmを超えると、砥粒配列の分散性が悪く、砥粒が凝集した部分では被削材の加工面精度が低下し、砥粒間隔が広い部分でボンド材の剥離が生じやすい。従って、砥粒間隔の標準偏差を200μm以下とすることによって、砥粒配列のばらつきによって生じる加工面精度の低下やボンド材の剥離を抑制することができる。
厚い砥粒層に対する薄い砥粒層の厚みの比が0.6未満であると、砥粒層の偏芯が大きく、被削材の加工面精度が悪く、偏摩耗を生じやすい。従って、厚い砥粒層に対する薄い砥粒層の厚みの比を0.6以上とすることによって、被削材の加工面精度を良好に保ち、偏摩耗の発生を抑制することができる。
ボンド材中に金属粉末や無機粉末等の骨材が含まれていると、骨材を砥粒として判定していまい、正確な砥粒分布の判定が困難となり、判定結果に誤差を生じやすい。また、ボンド材の光透過率が80%未満であると、芯線と砥粒層との位置関係を測定することが困難となり、正確な砥粒分布の判定が難しい。従って、ボンド材中に骨材を含まず、ボンド材の光透過率を80%以上とすることによって、砥粒分布の判定を正確に行って、砥粒の脱落とボンド材の剥離を防止して切断性能に優れたワイヤソーを実現することができる。
感光性樹脂は熱硬化性樹脂に比べて硬化速度が格段に速いため、ボンド材として感光性樹脂を用いることにより、砥粒分布の判定を迅速に行うことができ、ワイヤソーの生産性を高めることができる。
(1)芯線の周囲にボンド材によって砥粒を固着したワイヤソーを透過した光を用いて前記ワイヤソーの画像を撮影し、撮影されたワイヤソーの画像の明度に基づいて砥粒の輪郭を検知して前記砥粒の分布状態を検査するワイヤソーの検査方法によって検出された前記砥粒の投影面積に基づいて前記投影面積を制御し、砥粒層の投影面積に対する前記砥粒の投影面積が20%以上80%以下となるように形成したことにより、目詰まりを抑制して加工能率を維持しつつ、砥粒の脱落とボンド材の剥離を防止して切断性能に優れたワイヤソーを実現することができる。
まず、本発明のワイヤソーを製造するために用いられるワイヤソーの検査方法と検査装置について説明する。
図1において、ワイヤソー1の長手方向に対して垂直な2軸方向に、CCDカメラ2が配置され、このCCDカメラ2に対向してワイヤソー1を挟んでLED光源3が配置されている。CCDカメラ2にはカメラ用電源4が接続され、LED光源3にはLED光源用電源5が接続されている。2つのカメラ用電源4にはカメラ切替器6が接続され、カメラ切替器6と2つのLED光源3は制御装置7に接続され、制御装置7は演算装置8に接続されている。演算装置8には、その周辺機器としてのディスプレイ9、キーボード10,およびマウス11が接続されている。
図2(a)に、CCDカメラ2によって撮影されたワイヤソー1の静止画像の一例を示す。ワイヤソー1は、芯線21の周囲にボンド材22を用いて砥粒23を固着してなるものであるが、この検査方法においてはまず、画像の明度を読み取って、明度が大きく変化する位置に曲線Iを引く。この曲線Iはワイヤソー1と空間との境界であると判断できるため、曲線Iの立ち上がり部をワイヤソー1の両端と定義し、この両端から等距離の点を通ってワイヤソーの長手方向に直線Iを引き、この直線Iをワイヤソー1の中心線とする。次に、砥粒23の輪郭部の明度を基準値として設定し、この明度を持つ点を繋いで曲線IIを引き、砥粒23の輪郭線とする。
まず、砥粒数が閾値以上であるかについて判定する。ここでは、ワイヤソー1の長手方向について長さLの部分に、左右それぞれに砥粒23が5個ずつ固着されているものを示しており、たとえば、長さLの部分に固着されている砥粒数が5個以上であるものを良品と判定する。この判定は、ワイヤソーの左側、右側のいずれについても行い、
左側の砥粒数≧5
右側の砥粒数≧5
のとき良と判定してステップ2に進み、それ以外のときは不可と判定して砥粒数を赤で表示して検査を終了する。
砥粒を含む砥粒層の厚さとワイヤソーの外径との比率を判定する。ワイヤソー1の外径Wに対する、左側の砥粒23の厚さWLと、右側の砥粒23の厚さWRとの和の比が0.55以上であるとき、すなわち
(WL+WR)/W≧0.55
を満たすとき良と判定してステップ3に進み、0.55より小さいときは不可と判定してその数値を赤で表示して検査を終了する。
芯線21の右側と左側での砥粒23を含む砥粒層の厚さの偏りについて判定する。左側の砥粒23の厚さWLと、右側の砥粒23の厚さWRとの比が、0.9以上であれば良と判定してステップ3に進み、0.6以上0.9未満であれば可と判定してステップ3に進む。すなわち、
WL≧WRのとき、
WR/WL≧0.9 :良の判定
0.6≦WR/WL<0.9 :可の判定
WL≦WRのとき、
WL/WR≧0.9 :良の判定
0.6≦WL/WR<0.9 :可の判定
とし、それ以外のときは不可と判定してその数値を赤で表示して検査を終了する。
砥粒層中での砥粒の投影面積が閾値以上であるかについて判定する。砥粒層におけるボンド材の厚みが、左側においてWL、右側においてWRであるとすると、砥粒層の投影面積は図示する部分について左側でL×WL、右側でL×WRである。この砥粒層の投影面積に対して、砥粒の投影面積の総和の比をとって、
0.20≦(SL1+SL2+SL3+SL4+SL5)/(L×WL)≦0.80
0.20≦(SR1+SR2+SR3+SR4+SR5)/(L×WR)≦0.80
の条件を満たすときには良と判定してステップ5に進み、それ以外のときは不可と判定してその数値を赤で表示して検査を終了する。
以上のステップ1からステップ4までは前処理段階の検査工程であり、固着している砥粒数が十分でないものや、砥粒層が偏芯しているものを排除することによって、砥粒間隔の良否判定に誤判定が生じるのを防ぐために設けたものである。
図2における直線VIの間隔を検出することによって得られる砥粒間隔の標準偏差について判定を行い、砥粒の分散状態についての良否を判定する。
砥粒間隔の標準偏差は、芯線を挟んで右側の砥粒と左側の砥粒のいずれもが良と判定される条件を満たしているときに良と判定される。すなわち、左側の砥粒間隔を総称してLLとし、右側の砥粒間隔を総称してLRとしたときに、
LLの標準偏差≦25、かつLRの標準偏差≦25
のときに良と判定し、この範囲を除いて
LLの標準偏差≦70、かつLRの標準偏差≦70
のときに可と判定する。
なお、以上の標準偏差における数値は、静止画像における画素数を意味しており、これらの数値の単位は画素のドット数となる。このドット数を砥粒間隔に換算すると、標準偏差の上限は200μmとなる。
なお、上記の説明における数値は一例であって、上記のものに限定されず、必要に応じて適宜定めることができる。
また、測定に使用できる光源としては、蛍光灯、ハロゲンランプ、LED等の白色光を用いることができる。
図4に、ワイヤソーの砥粒の分布状態を制御しつつワイヤソーを製造する工程を図示する。
砥粒が混入された樹脂を貯留するボンド槽31内に芯線32を通過させ、ボンド槽31を通過した被覆ワイヤ33の被覆厚みをダイス34により均一化する。
ダイス34の周囲には、図4(b)に示すように、被覆ワイヤ33が通過する方向に対して垂直な平面内で直交する2軸(X軸、Y軸)方向に、ダイス位置制御部35が設けられている。
ダイス34を通過した被覆ワイヤ33は、紫外線照射装置等からなる樹脂硬化部36により被覆層の液状樹脂が硬化される。
その後、被覆ワイヤ33は振れ防止用の第2のV溝プーリー40を通過する。この第2のV溝プーリー40を通過する際に、X軸方向観察用カメラ41によって、被覆ワイヤ33の砥粒層のX軸方向の厚みが測定される。
その後、被覆ワイヤ33は挟み込みローラ37を通過した後、巻き取られる。
また、砥粒の間隔の標準偏差が200μm以下であるワイヤソーを形成することは、ボンド槽31内を攪拌して砥粒と樹脂との分散性を高めることによって可能である。
さらに、芯線を挟んでその両側に形成された砥粒層について、厚い砥粒層に対する薄い砥粒層の厚みの比が0.6以上であるワイヤソーを形成するためには、ダイス位置制御部35によってダイス34の位置を調整して、ダイス34の中心を被覆ワイヤ33が通過するように制御することによって可能である。
ワイヤソーを形成する芯線及び砥粒は以下の通りである。
芯線:φ0.18mm
砥粒:Niコート砥粒 40/60μm
試験条件は以下の通りである。
切断装置:単線切断装置
ワイヤ速度:平均400m/min
ワイヤテンション:19.5N
被切断材:ソーダガラス 20mm幅
表2からわかるように、砥粒間隔の標準偏差が200μmを超えると、面粗さが劣化している。これは、砥粒間隔の標準偏差が200μmを超えると、砥粒配列の分散性が悪いために、砥粒が凝集した部分では被削材の加工面精度が低下し、砥粒間隔が広い部分ではボンド材の剥離が生じやすいという事態を生じて、面粗さを良好な状態に保てなくなるからである。
表3からわかるように、偏芯量が0.6未満であると、切れ味、切れ味低下率、ワイヤ摩耗率、面粗さのいずれもが劣化している。これは、砥粒層の偏芯が大きいために、被削材の加工面精度が悪く、偏摩耗を生じやすいためである。
2 CCDカメラ
3 LED光源
4 カメラ用電源
5 LED光源用電源
6 カメラ切替器
7 制御装置
8 演算装置
9 ディスプレイ
10 キーボード
11 マウス
21 芯線
22 ボンド層
23 砥粒
31 ボンド槽
32 芯線
33 被覆ワイヤ
34 ダイス
35 ダイス位置制御部
36 樹脂硬化部
37 挟み込みローラ
38 第1のV溝プーリー
39 Y軸方向観察用カメラ
40 第2のV溝プーリー
41 X軸方向観察用カメラ
Claims (3)
- 芯線の周囲に、光透過率が80%以上であるボンド材によって砥粒を固着したワイヤソーの前記ボンド材を透過した光を用いて前記ワイヤソーの画像を撮影し、撮影されたワイヤソーの画像の明度に基づいて砥粒の輪郭を検知して前記砥粒の分布状態を検査するワイヤソーの検査方法によって検出された前記砥粒の投影面積に基づいて前記投影面積を制御し、砥粒層の投影面積に対する前記砥粒の投影面積が20%以上80%以下となるように形成し、前記ワイヤソーの検査方法によって検出された当該ワイヤソーの長手方向に隣り合う前記砥粒の輪郭の中心間隔である砥粒間隔に基づいて前記砥粒間隔を制御し、前記砥粒間隔の標準偏差が200μm以下となるように形成したことを特徴とするワイヤソー。
- 前記ワイヤソーの検査方法によって検出された偏芯量に基づいて前記偏芯量を制御し、芯線を挟んでその両側に形成された砥粒層について、厚い砥粒層に対する薄い砥粒層の厚みの比が0.6以上となるように形成したことを特徴とする請求項1記載のワイヤソー。
- 前記ボンド材が紫外線硬化樹脂からなることを特徴とする請求項1または2記載のワイヤソー。
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