JP4235574B2 - マイクロカプセルおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
一般に、上記カプセル殻体に関しては、内包された芯物質(特に液状物質)を安定に保持し得るものが望まれるが、マイクロカプセルの殻体の厚みは非常に薄いため、芯物質が殻体に浸透したり、殻体外に滲み出すか又は漏れたりする等の、ブリードアウト現象が問題となる。ブリードアウトは、周辺汚染、マイクロカプセルの粉体特性の低下、マイクロカプセル同士の凝集、および、マイクロカプセルの基材等への接着性や密着性の低下・不良等の不具合を生じる原因となる。一方、医薬品、農薬および香料等の分野で用いられるコントロールリリース剤は、逆にこの現象を積極的に利用するものであるが、その使用時や使用後はともかく、その調製時、保存時および輸送時等の使用前の段階においては、芯物質の内包状態を一定レベルで保持する必要があるため同様に問題となる場合があった。
この問題は、上記アミノ樹脂自体が一般に脆い物性を有するということが主要因であると考えられるが、それだけとは言えない。マイクロカプセルは、前述したように、各種用途および技術分野からの要請(例えば、柔軟性や密着性など)もあって、非常に薄いカプセル殻体を備えることが求められ、その代償として十分な機械的強度を得ることができないからである。つまり、上記問題については、カプセル殻体の構成材料の種類と、カプセル殻体の特質(厚み)とが相乗的に要因となっていると考えられる。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、芯物質の不浸透性に優れるとともに、高い機械的強度をも有する殻体を備えたマイクロカプセル、および、その製造方法を提供することにある。
マイクロカプセルを得る方法、すなわち、疎水性の芯物質をマイクロカプセル化する技術としては、コアセルベーション法(相分離法)、融解分解冷却法および粉床法等のいわゆる界面沈積法や、界面重合法、インサイチュ(in−situ)法、液中硬化被膜(被覆)法(オリフィス法)および界面反応法(無機化学反応法)等のいわゆる界面反応法などを挙げることができるが、なかでも、カプセル殻体の強度や厚さ制御が容易である点や、複数層の殻体形成ができる点においては、コアセルベーション法が好適である。
したがって、本発明にかかるマイクロカプセルは、疎水性の芯物質が殻体に内包されてなるマイクロカプセルであって、前記殻体が、下記一般式:
R1−(CH2−CH2−O−)n−X−R2
(ただし、R1は炭素数5〜25の脂肪族または芳香族の疎水性基を表し、R2は重量平均分子量が300〜100,000のポリアミン構造またはポリカルボン酸構造を有するポリマー基を表し、該ポリアミンはポリエチレンイミンであり、該ポリカルボン酸は不飽和カルボン酸を30モル%以上含むモノマー成分の重合により得られる水溶性ポリカルボン酸であり、nは3〜85の整数を表す。Xは、アミノ基、イミノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と反応し得る基に由来し、該反応後に形成される基を表すが、有ってもよいし無くてもよい。)
で表される化合物(A)に由来する構成成分と、尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合化合物(B)に由来する構成成分と、を必須の構成成分としてなることを特徴とする。
R1−(CH2−CH2−O−)n−X−R2
(ただし、R1は炭素数5〜25の脂肪族または芳香族の疎水性基を表し、R2は重量平均分子量が300〜100,000のポリアミン構造またはポリカルボン酸構造を有するポリマー基を表し、該ポリアミンはポリエチレンイミンであり、該ポリカルボン酸は不飽和カルボン酸を30モル%以上含むモノマー成分の重合により得られる水溶性ポリカルボン酸であり、nは3〜85の整数を表す。Xは、アミノ基、イミノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と反応し得る基に由来し、該反応後に形成される基を表すが、有ってもよいし無くてもよい。)
で表される化合物(A)を用いるとともに、前記水溶性化合物として、尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合化合物(B)を用いることを特徴とする。
本発明のマイクロカプセルは、前述したように、疎水性の芯物質が殻体(カプセル殻体)に内包されてなるマイクロカプセルであって、前記カプセル殻体が、前述した化合物(A)に由来する構成成分と、前述した初期縮合化合物(B)(以下、化合物(B)と称することがある。)に由来する構成成分とを必須の構成成分としてなることが重要である。
本発明のマイクロカプセルを得るにあたっては、上述のような特徴的構成を有する殻体を備えたマイクロカプセルを製造できる方法であれば、従来公知の何れの方法および技術を採用してもよく、限定はされないが、後述する「本発明のマイクロカプセルの製造方法」が、より容易に得ることができる等の点で好ましい。
本発明のマイクロカプセルの製造方法は、前述したように、水溶性界面活性剤を含む水系媒体中に疎水性の芯物質を分散させ、該分散後の水系媒体に水溶性化合物を添加することにより、芯物質の表面に殻体を形成させるにあたり、上記水溶性界面活性剤として前述した化合物(A)を用いるとともに、上記水溶性化合物として前述した化合物(B)を用いるようにすることが重要である。つまり、本発明においては、水溶性化合物である化合物(B)のみならず、水溶性界面活性剤である化合物(A)も、カプセル殻体の原料化合物となる。
以下に、本発明を実施する上でのマイクロカプセルの一般的な製造方法を説明するとともに、本発明の製造方法の特徴についても詳細に説明する。本発明の実施においては、以下に示す以外の技術および条件等は、上記コアセルベーション法によるマイクロカプセルの製造方法において一般に採用され得る技術および条件等が適宜適用できる。
本発明の製造方法においては、まず、特定の水溶性界面活性剤を含む水系媒体中に疎水性の芯物質を分散させるようにする。
上記親水性の有機溶剤としては、限定はされないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン等のケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等のエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;などが好ましく挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明の製造方法に用い得る疎水性の芯物質としては、実質的に水に不溶性であり、形成されるカプセル殻体とその機能を害する程度に相互作用しないものであれば、限定はされないが、例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン、ドデシルベンゼン、ヘキシルベンゼン、フェニルキシリルエタンおよびナフテン系炭化水素などの芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、n−ヘキサン、ケロシン、パラフィン系炭化水素などの脂肪族炭化水素類;などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、必要に応じ2種以上を併用してもよい。
R1−(CH2−CH2−O−)n−X−R2 (1)
(ただし、R1は炭素数5〜25の脂肪族または芳香族の疎水性基を表し、R2は重量平均分子量が300〜100,000のポリアミン構造またはポリカルボン酸構造を有するポリマー基を表し、nは3〜85の整数を表す。Xは、アミノ基、イミノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と反応し得る基に由来し、該結合後に形成される基を表すが、有ってもよいし無くてもよい。)
で表される化合物(A)を用いるようにすることが重要である。該化合物(A)を用いることにより、前述した本発明の課題を容易に解決できる。
上記R1で表される疎水性基の炭素数は5〜25であるが、好ましくは5〜18である。上記炭素数が5未満であると、化合物(A)が十分な界面活性能を発現しないおそれがあり、25を超えると疎水性が高くなり過ぎて化合物(A)の水への溶解性が低下するおそれがある。
上記一般式(1)で表される化合物(A)の調製方法は、限定はされないが、例えば、ポリアミンまたはポリカルボン酸の水溶液に、撹拌下で、下記一般式(2)や下記一般式(3)で表される化合物を滴下し、反応させることによって得る方法等が好ましい。
(ただし、X1は、下記構造式(a):
R1−(CH2−CH2−O−)n−X2 (3)
(ただし、X2は、下記構造式(b):
上記一般式(2)で表される化合物を、化合物(A)の調製の際に使用した場合は、上記一般式(1)において、Xで表される基は存在しないことになる。一方、上記一般式(3)で表される化合物を使用した場合、上記一般式(1)において、Xで表される基が存在することになる。
本発明の製造方法においては、水溶性界面活性剤として用いる上記化合物(A)は、水系媒体中に疎水性の芯物質を分散させる前から該水系媒体に溶解させておいてもよいし、分散と同時または分散させた後に溶解させてもよく、限定はされない。
本発明の製造方法において、水系媒体中に疎水性の芯物質を分散させる方法としては、限定はされないが、通常公知の分散方法を採用すればよい。特に、芯物質が液状物質である場合は、例えば、水系媒体、疎水性芯物質および水溶性界面活性剤を含む混合物を、ディスパー、ホモミキサー(特殊機械工業(株)製)およびホモジナイザー(日本精機(株)製)等を用いて機械的に強く撹拌することにより分散させる方法;上記混合物を、静止管内混合器(ノリタケスタティックミキサー((株)ノリタケカンパニーリミテッド製)、スルーザーミキサー(住友重機械工業(株)製)、サケアミキサー((株)桜製作所製)、TK・ROSS・LPDミキサー(特殊機械工業(株)製)など)を通過させて分散させる方法;水溶性界面活性剤を含む水系媒体中に、疎水性芯物質をSPG膜(シラスポーラスグラス)やマイクロチャネル乳化装置((株)イーピーテック製)等の規制された孔を通過させ分散させる方法;などが好ましく挙げられる。
上記特定の水溶性化合物としては、尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンからなる群(以下、アミノ化合物)より選ばれる少なくとも1種とホルムアルデヒドとを反応させて得られる、初期縮合化合物(B)を用いるようにすることが重要である。初期縮合化合物(B)は、いわゆるアミノ樹脂(尿素系樹脂、メラミン樹脂、グアナミン系樹脂)の前駆体たる化合物である。特定の水溶性化合物として化合物(B)を用いることにより、アミノ樹脂を必須の構成成分とする殻体が形成できるが、前述した化合物(A)との組み合わせで用いることにより、化合物(B)から得られるアミノ樹脂中に化合物(A)に由来する構成成分が含まれてなる殻体が形成でき、前述した本発明の課題を容易に解決できる。
上記化合物(B)の原料化合物となるアミノ化合物としては、上記列挙したアミノ化合物以外に、さらに他のアミノ化合物を用いてもよく、例えば、カプリグアナミン、アメリン、アメリド、エチレン尿素、プロピレン尿素およびアセチレン尿素等が挙げられる。これら他のアミノ化合物も用いる場合は、これら他のアミノ化合物も含めて、上記化合物(B)の原料化合物となるアミノ化合物として扱うものとする。
上記化合物(B)は、通常、アセトンやジオキサン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等の有機溶媒に対して可溶であるが、水に対して実質的に不溶である。
本発明の製造方法においては、化合物(B)に由来する不溶性の反応物(アミノ樹脂)中に化合物(A)が含まれてなるカプセル殻体を、疎水性芯物質の表面に形成させることができる。このように、上記アミノ樹脂中に化合物(A)が含まれたかたちで殻体形成されるメカニズムは明らかではないが、コアセルベーション法による化合物(B)を用いた殻体形成(マイクロカプセル化)を、化合物(A)の存在下で行うようにすれば、上述のようなカプセル殻体が容易に形成できると考えられる。
上記殻体形成後、さらに熟成期間を設けてもよい。上記熟成時の温度は、限定はされないが、上記反応温度と同様であることが好ましく、熟成時間は、限定はされないが、1〜5時間が好ましく、より好ましくは1〜3時間である。
本発明の製造方法においては、上述の殻体形成および必要に応じて行う熟成により、マイクロカプセルと水系媒体とを含む調製液が得られる。
上記エポキシ化合物としては、限定はされないが、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する水溶性エポキシ化合物が好ましく、例えば、ソルビトールポリグリシジルエステル、ソロビタンポリグリシジルエステル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエステル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエステル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパンポリグリシジルエステル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエステル、エチレン,ポリエチレングリコールジグリシジルエステル、プロピレン,ポリプロピレングリコールジグリシジルエステルおよびアジピックアシドジグリシジルエステル等が好ましく用い得る。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(ただし、Aは、読み取った試料化合物の液量(mL)を表す。)
上記エポキシ化合物は、その重量平均分子量が300〜10,000であることが好ましく、より好ましくは300〜8,000、さらに好ましくは300〜5,000である。上記重量平均分子量が上記範囲を満たすことにより、エポキシ化合物層の厚みが容易となる等の優れた効果が得られる。上記重量平均分子量が、300未満であると、エポキシ化合物層の形成による柔軟性向上の効果が得られにくく、また、均一なエポキシ化合物層の形成が困難となるおそれがある。一方、10,000を超えると、マイクロカプセル調製液全体の粘度が急激に上昇し、エポキシ化合物層形成時の撹拌が困難となるおそれがあり、強制撹拌すると、マイクロカプセルが破壊されたり損傷を受けたりするおそれがある。
上記エポキシ化合物層を形成する際の温度は、前述したカプセル殻体を形成させる際の温度と同様であることが好ましい。
上記架橋剤としては、限定はされないが、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(水和物含む)、ジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアンモニウム(水和物含む)、ジチオ蓚酸およびジチオ炭酸などが挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、上記架橋剤の使用量は、限定はされないが、例えば、エポキシ化合物100重量部に対して、1〜100重量部とすることが好ましく、より好ましくは5〜80重量部、さらに好ましくは10〜80重量部である。上記架橋剤の使用量が、1重量部未満であると、エポキシ化合物層の厚みの制御等が困難となるおそれがあり、100重量部を超えると、エポキシ化合物におけるエポキシ基との反応が過剰となり、柔軟性に富むエポキシ化合物層を形成できないおそれがある。
上記単離後は、さらに粒度分布のシャープなマイクロカプセルを得るために、マイクロカプセルを分級してもよい。
上記分級は、例えば、湿式による分級方式(湿式分級)を採用することが好ましい。湿式分級とは、マイクロカプセル化により得られた調製液に対してマイクロカプセルの分級を行う方式である。上記調製液に対して分級を行うため湿式分級となる。詳しくは、上記調製液を、そのままでもしくは任意の水系媒体などで希釈して分級処理し、調製液中のマイクロカプセルを所望の粒径や粒度分布を有するものとなるよう分級する方式である。湿式分級は、例えば、ふるい式(フィルター式)、遠心沈降式および自然沈降式等の方式を用いた方法や装置により行うことができる。比較的粒子径の大きいマイクロカプセルに対しては、ふるい式が有効に使用できる。
以下、本発明のマイクロカプセルの特徴および各種物性について説明する。
本発明のマイクロカプセルにおいて言う、疎水性の芯物質、化合物(A)および化合物(B)の詳細については、上記本発明の製造方法での説明が同様に適用できる。
本発明のマイクロカプセルにおける殻体の必須構成成分である、化合物(A)に由来する構成成分の形態としては、化合物(A)1分子からなるものであってもよいし、2量体や3量体など2分子以上集まったものでもよく、限定はされない。これらのうち1種のみが殻体に含まれていてもよいし、2種以上が殻体に含まれていてもよい。
同様に、本発明のマイクロカプセルにおける殻体の必須構成成分である、化合物(B)に由来する構成成分の形態としては、各種アミノ樹脂(尿素系樹脂、メラミン樹脂、グアナミン系樹脂)が挙げられる。これらのうちの1種のみが殻体に含まれていてもよいし、2種以上が殻体に含まれていてもよい。
また、上記化合物(A)に由来する構成成分と、化合物(B)に由来する構成成分との組成比「化合物(A)/化合物(B)(重量比)」は、限定はされないが、10/90〜80/20であることが好ましく、より好ましくは15/85〜70/30、さらに好ましくは20/80〜60/40である。上記モル比が10/90未満であると、柔軟性が十分に得られず機械的強度の低い殻体となるおそれがあり、上記モル比が80/20を超えると、ブリードアウト防止能が十分でない殻体となるおそれがある。
本発明のマイクロカプセルは、高い機械的強度を有するカプセル殻体を備えてなるマイクロカプセルである。本発明のマイクロカプセルの強度(カプセル殻体の強度)については、限定はされないが、後述する実施例に記載の方法により測定される、マイクロカプセルの機械的強度が、50g以上であることが好ましく、より好ましくは100g以上、さらに好ましくは200g以上である。上記機械的強度が50g未満であると、前述した本発明の効果が得られないおそれがある。
本発明のマイクロカプセルの粒子径(体積平均粒子径)は、限定されないが、5〜500μmであることが好ましく、より好ましくは10〜300μm、さらにより好ましくは10〜200μmである。マイクロカプセルの粒子径が5μm未満である場合、芯物質を内包しないマイクロカプセルであるおそれがあり、500μmを超えると、通常マイクロカプセルとして要求される物性を保持することができなくなる、または、マイクロカプセルの強度を制御することが困難になるおそれがある。
本発明のマイクロカプセルの粒子径や、その変動係数(すなわち粒度分布のシャープさ)は、例えば、芯物質として液状物質(例えば油性液等)を用いた場合は、製造過程において、水系媒体に分散させた液滴の粒子径や粒度分布などに大きく依存する。よって、該液滴の分散条件を適宜調整して行うことによって、所望の粒子径やその変動係数を有するマイクロカプセルを得ることができる。
本発明のマイクロカプセルは、例えば、カプセル型接着剤、カプセル型化粧品、マイクロカプセル型磁性体およびマイクロカプセル型蓄熱材等の各種用途や製品に好ましく用いることができるが、これらに限定はされない。
実施例および比較例における、測定方法を以下に示す。
<マイクロカプセルの粒子径>
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(製品名:LA−910、堀場製作所社製)を用いてマイクロカプセルの体積平均粒子径を測定した。
<マイクロカプセルの殻体(シェル層)の厚さ>
マイクロカプセルの分散体から、粒子径約50μmのマイクロカプセルを任意に10個選択して取り出し、それぞれのカプセル殻体(シェル層)の厚みについて、マイクロスコープ(製品名:パワーハイスコープKH−2700、(株)ハイロックス製)で倍率を2500倍にして測定した。これらの平均値を、得られたマイクロカプセルのカプセル殻体(シェル層)の厚みとした。
マイクロカプセルの分散体からマイクロカプセルをろ別し、マイクロカプセルのペーストを得た。このペーストを、マイクロカプセル由来の固形分が10g含まれるように計量し、これに、固形分濃度10wt%のバインダー(アクリル系水溶性バインダー、成膜温度2℃)10gを添加し、さらに全体の固形分濃度が40wt%になるよう水を添加し、塗料化した。この塗料を、厚さ250μmのPETフィルムにアプリケータ(クリアランス:150μm)を用いて塗布し、30分間風乾後、100℃で10分間乾燥させることで、マイクロカプセルを塗布したシートを得た。
◎:染色無し
○:極わずかに染色有り
△:少し染色有り
×:大きく滲む状態の染色有り
<マイクロカプセルの加熱時の重量減少率>
マイクロカプセルの分散体からマイクロカプセルをろ別し、マイクロカプセルのペーストを得て、一旦このペーストを50℃の熱風乾燥機で乾燥した後の重量(重量a)を測定した。その後、110℃で2時間加熱乾燥し、さらに同温度で2時間加熱乾燥した。初めに2時間加熱乾燥した後の重量(重量b1)と、さらに2時間加熱乾燥した後(すなわち4時間加熱乾燥後))の重量(重量b2)とを測定し、各時点におけるマイクロカプセルの重量減少率(wt%)を下記式により求めた。
マイクロカプセルの実際の使用時においては、加熱により殻体を十分に乾燥させてから用いられたり、また加熱条件下で継続使用することも多いが、この加熱の際には殻体の乾燥収縮や芯物質の温度膨張が生じるため、強度(機械的強度)が低い殻体は破損・破壊してしまう。特に、芯物質として液状物質を用いた場合は、上記破損あるいは芯物質の膨張による内圧上昇でブリードアウトが促進され、該液状物質が漏れ出し蒸発等するため、加熱後のマイクロカプセルの重量は加熱前に比べて大きく減少することになる。この重量減少率の大小によっても、マイクロカプセルの機械的強度(殻体の機械的強度)およびブリードアウト防止能が客観的に評価できる。
300mLのセパラブルフラスコに、ポリエチレンイミン(製品名:エポミンSP006(Mw=600)、(株)日本触媒製)14.5gおよび水43.5gを初期仕込みし、その後、撹拌下で、予め調製しておいたエポキシ化合物(ラウリルポリオキシエチレン(n=22)グリシジルエステル、水に対する溶解率:100%)の25wt%水溶液97.2gを10分間かけて滴下した。
滴下時の液温を25℃以下に保ちながら滴下したのち、滴下終了後30分間撹拌を続け、その後70℃まで昇温し、同温度で2時間保持したのちに常温まで冷却し、分散性能を有する固形分濃度25wt%の化合物(A1)を得た。
合成例1−1において、ポリエチレンイミン(製品名:エポミンSP006(Mw=600)、(株)日本触媒製)24gおよび水72gを初期仕込みし、その後、撹拌下で、予め調製しておいたエポキシ化合物(ラウリルポリオキシエチレン(n=10)グリシジルエステル、水に対する溶解率:80%)の25wt%水溶液96gを滴下した以外は、合成例1−1と同様にして、分散性能を有する固形分濃度25wt%の化合物(A2)を得た。
〔合成例1−3〕
合成例1−1と同様のフラスコに、ポリアクリル酸(製品名:アクアリックHL−415(Mw=10,000、45wt%水溶液)、(株)日本触媒製)93.7gおよび水281.1gを初期仕込みし、その後、撹拌下で、予め調製しておいたエポキシ化合物(フェノールポリオキシエチレン(n=5)グリシジルエステル、水に対する溶解率:100%)の25wt%水溶液20gを10分間かけて滴下した。
〔合成例1−4〕
合成例1−1において、ポリエチレンイミン(Mw=180,000)83.7gおよび水334.8gを初期仕込みし、その後、撹拌下で、予め調製しておいたエポキシ化合物(セリルポリオキシエチレン(n=88)グリシジルエステル、水に対する溶解率:80%)の20wt%水溶液15gを滴下した以外は、合成例1−1と同様にして、分散性能を有する固形分濃度20wt%の化合物(A4)を得た。
100mLの丸底セパラブルフラスコに、メラミン5g、尿素5g、37wt%ホルムアルデヒド水溶液20gおよび25wt%アンモニア水1gを仕込み、撹拌しながら70℃まで昇温させた。昇温途中、65℃付近で全体が透明になった。
70℃に昇温後、同温度で1時間保持した後、30℃まで冷却し、メラミンおよび尿素とホルムアルデヒドとの初期縮合化合物である、化合物(B1)を得た。
〔合成例2−2〕
合成例2−1と同様のフラスコに、メラミン10g、37wt%ホルムアルデヒド水溶液20gおよび25wt%アンモニア水1gを仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温させた。昇温途中で全体が透明になった。
〔合成例2−3〕
合成例2−1と同様のフラスコに、メラミン8g、ベンゾグアナミン2g、37wt%ホルムアルデヒド水溶液20gおよび25wt%アンモニア水2gを仕込み、撹拌しながら75℃まで昇温させた。75℃になった時点で全体が透明になったのを確認後、すぐに30℃まで冷却し、メラミンおよびベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの初期縮合化合物である、化合物(B3)を得た。
500mL平底セパラブルフラスコに、化合物(A1)40gおよび水60gを仕込み、ディスパー(製品名:ROBOMICS、特殊機化工業社製)での撹拌下で、予め調製しておいたアルキルナフタレン94gにアゾ系の青色オイル染料6gを溶解させた青色疎水性液100gを添加し、その後、撹拌速度を徐々に上げ、800rpmで5分間撹拌し懸濁液を得た。
この懸濁液に、撹拌下で、化合物(B1)を全量添加し、35℃まで昇温し、同温度で2時間保持して、カプセル殻体としてのシェル層を形成させた。
熟成後、常温に冷却し、マイクロカプセル(1)の分散体を得た。
得られたマイクロカプセル(1)について、前述した方法により、その粒子径、シェル層の厚さ、機械的強度および加熱時の重量減少率について測定・評価した。これらの結果を表1および表2に示す。
〔実施例2〕
実施例1において、化合物(A1)の代わりに化合物(A2)を使用し、化合物(B1)の代わりに化合物(B2)を使用した以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル(2)の分散体を得た。
〔実施例3〕
実施例1において、化合物(A1)の代わりに化合物(A3)を使用し、化合物(B1)の代わりに化合物(B3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル(3)の分散体を得た。
得られたマイクロカプセル(3)について、実施例1と同様に測定・評価した結果を表1および表2に示す。
500mL平底セパラブルフラスコに、化合物(A4)40gおよび水60gを仕込み、ディスパー(製品名:ROBOMICS、特殊機化工業社製)での撹拌下で、予め調製しておいたアルキルナフタレン94gにアゾ系の青色オイル染料6gを溶解させた青色疎水性液100gを添加し、その後、撹拌速度を徐々に上げ、800rpmで5分間撹拌し懸濁液を得た。
この懸濁液に、撹拌下で、化合物(B1)を全量添加し、35℃まで昇温し、同温度で2時間保持して、カプセル殻体としてのシェル層を形成させた。
さらに、60分かけて70℃まで昇温し、同温度を2時間保持し熟成させた。
熟成後、常温まで冷却し、マイクロカプセル(4)の分散体を得た。
〔比較例1〕
スチレン・マレイン酸共重合体(原料モノマー組成比:スチレン(モル)/マレイン酸(モル)=1/1、重量平均分子量(Mw):20,000)5gを、1wt%NaOH水溶液100gに溶解させた溶液(C)を調製した。
この懸濁液に、撹拌下で、化合物(B1)を全量添加し、35℃まで昇温し、同温度で2時間保持して、カプセル殻体としてのシェル層を形成させた。
次いで、60分かけて70℃まで昇温し、同温度で2時間保持し熟成させた。
熟成後、常温に冷却し、マイクロカプセル(c1)の分散体を得た。
本発明にかかる製造方法は、上記本発明のマイクロカプセルの製造に好適である。
Claims (5)
- 疎水性の芯物質が殻体に内包されてなるマイクロカプセルであって、
前記殻体が、下記一般式:
R1−(CH2−CH2−O−)n−X−R2
(ただし、R1は炭素数5〜25の脂肪族または芳香族の疎水性基を表し、R2は重量平均分子量が300〜100,000のポリアミン構造またはポリカルボン酸構造を有するポリマー基を表し、該ポリアミンはポリエチレンイミンであり、該ポリカルボン酸は不飽和カルボン酸を30モル%以上含むモノマー成分の重合により得られる水溶性ポリカルボン酸であり、nは3〜85の整数を表す。Xは、アミノ基、イミノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と反応し得る基に由来し、該反応後に形成される基を表すが、有ってもよいし無くてもよい。)
で表される化合物(A)に由来する構成成分と、
尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合化合物(B)に由来する構成成分と、を必須の構成成分としてなる、
ことを特徴とする、マイクロカプセル。 - 水溶性界面活性剤を含む水系媒体中に疎水性の芯物質を分散させ、前記分散後の水系媒体に水溶性化合物を添加することにより、前記芯物質の表面に殻体を形成させるマイクロカプセルの製造方法において、
前記水溶性界面活性剤として下記一般式:
R1−(CH2−CH2−O−)n−X−R2
(ただし、R1は炭素数5〜25の脂肪族または芳香族の疎水性基を表し、R2は重量平均分子量が300〜100,000のポリアミン構造またはポリカルボン酸構造を有するポリマー基を表し、該ポリアミンはポリエチレンイミンであり、該ポリカルボン酸は不飽和カルボン酸を30モル%以上含むモノマー成分の重合により得られる水溶性ポリカルボン酸であり、nは3〜85の整数を表す。Xは、アミノ基、イミノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と反応し得る基に由来し、該反応後に形成される基を表すが、有ってもよいし無くてもよい。)
で表される化合物(A)を用いるとともに、
前記水溶性化合物として、尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合化合物(B)を用いる、
ことを特徴とする、マイクロカプセルの製造方法。 - 前記化合物(A)1重量部に対して前記初期縮合化合物(B)を0.1〜10重量部添加する、請求項2に記載のマイクロカプセルの製造方法。
- 前記芯物質に対する前記化合物(A)の配合割合が5〜50重量%である、請求項2または3に記載のマイクロカプセルの製造方法。
- 前記分散後の水系媒体にさらに架橋剤をも添加する、請求項2から4までのいずれかに記載のマイクロカプセルの製造方法。
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