JP4235574B2 - マイクロカプセルおよびその製造方法 - Google Patents

マイクロカプセルおよびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4235574B2
JP4235574B2 JP2004062827A JP2004062827A JP4235574B2 JP 4235574 B2 JP4235574 B2 JP 4235574B2 JP 2004062827 A JP2004062827 A JP 2004062827A JP 2004062827 A JP2004062827 A JP 2004062827A JP 4235574 B2 JP4235574 B2 JP 4235574B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
compound
microcapsule
shell
water
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004062827A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005246320A (ja
Inventor
光雄 串野
誠 松本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Shokubai Co Ltd filed Critical Nippon Shokubai Co Ltd
Priority to JP2004062827A priority Critical patent/JP4235574B2/ja
Publication of JP2005246320A publication Critical patent/JP2005246320A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4235574B2 publication Critical patent/JP4235574B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Manufacturing Of Micro-Capsules (AREA)

Description

本発明は、マイクロカプセルおよびその製造方法に関する。
隔壁層となる殻体(以下、カプセル殻体とも言う。)に、疎水性の芯物質(例えば油性の液状物質など)が内包されてなるマイクロカプセルはよく知られており、ノンカーボン紙等の感圧あるいは感熱の各種記録材料、圧力測定フィルム等の各種シート、医薬品や農薬等としてのコントロールリリース剤、接着剤、食品、防錆剤、示温材などといった各種用途においてその有用性が認められている。
一般に、上記カプセル殻体に関しては、内包された芯物質(特に液状物質)を安定に保持し得るものが望まれるが、マイクロカプセルの殻体の厚みは非常に薄いため、芯物質が殻体に浸透したり、殻体外に滲み出すか又は漏れたりする等の、ブリードアウト現象が問題となる。ブリードアウトは、周辺汚染、マイクロカプセルの粉体特性の低下、マイクロカプセル同士の凝集、および、マイクロカプセルの基材等への接着性や密着性の低下・不良等の不具合を生じる原因となる。一方、医薬品、農薬および香料等の分野で用いられるコントロールリリース剤は、逆にこの現象を積極的に利用するものであるが、その使用時や使用後はともかく、その調製時、保存時および輸送時等の使用前の段階においては、芯物質の内包状態を一定レベルで保持する必要があるため同様に問題となる場合があった。
従来、このようなブリードアウトの問題を解消し得るマイクロカプセルとしては、そのカプセル殻体が、尿素類やメラミンやグアナミン類の化合物と、ホルムアルデヒドとの反応により得られるいわゆるアミノ樹脂(尿素系樹脂、メラミン樹脂、グアナミン系樹脂)またはこれらを架橋した樹脂からなるマイクロカプセルが知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。このような樹脂または架橋樹脂は、非常に緻密な構造を有するものであるため、カプセル殻体は芯物質たる液状物質等の不浸透性に極めて優れたものとなり、内包した芯物質を十分に安定して保持し得るマイクロカプセルが得られる。
特公昭46−30282号公報 特開平5−154375号公報
しかしながら、上記アミノ樹脂からなるカプセル殻体は、非常に脆く、弱い衝撃や圧力によっても破壊されたり損傷を受けたりし易いという問題があった。
この問題は、上記アミノ樹脂自体が一般に脆い物性を有するということが主要因であると考えられるが、それだけとは言えない。マイクロカプセルは、前述したように、各種用途および技術分野からの要請(例えば、柔軟性や密着性など)もあって、非常に薄いカプセル殻体を備えることが求められ、その代償として十分な機械的強度を得ることができないからである。つまり、上記問題については、カプセル殻体の構成材料の種類と、カプセル殻体の特質(厚み)とが相乗的に要因となっていると考えられる。
例えば、ノーカーボン紙や圧力測定フィルムなどの用途においては、最終的にカプセル殻体を破壊し内包物である液状物質を流出させることを目的とするものがあり、必要時以外に破壊してしまうという不具合を防ぐためには、カプセル殻体に適度に機械的強度を持たせる必要があるがその調整は容易ではなかった。よって、非常に薄いカプセル殻体としながらも、その調製時等や各種用途への使用時や使用後などにおいて、撹拌や加圧などの外的負荷に対する機械的強度を容易に向上させ調整することは、従来から常に課題とされているうえ、近年の技術水準からみても、より一層優れたものが要求されている。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、芯物質の不浸透性に優れるとともに、高い機械的強度をも有する殻体を備えたマイクロカプセル、および、その製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。具体的には、カプセル殻体に関し、上記アミノ樹脂が有する前述の優れた物性を生かしつつ、付加的に高い機械的強度をも持たせることについて試行錯誤および検討を繰り返した。その結果、殻体の形成材料として、上記アミノ樹脂を得させる化合物(後述する初期縮合化合物(B))を用いるとともに、さらに特定の化合物(後述する化合物(A))も用い、各々の化合物に由来する構成成分がカプセル殻体の必須の構成成分となるようにして得られたマイクロカプセルであれば、前記課題を一挙に解決できることを見出した。
マイクロカプセルを得る方法、すなわち、疎水性の芯物質をマイクロカプセル化する技術としては、コアセルベーション法(相分離法)、融解分解冷却法および粉床法等のいわゆる界面沈積法や、界面重合法、インサイチュ(in−situ)法、液中硬化被膜(被覆)法(オリフィス法)および界面反応法(無機化学反応法)等のいわゆる界面反応法などを挙げることができるが、なかでも、カプセル殻体の強度や厚さ制御が容易である点や、複数層の殻体形成ができる点においては、コアセルベーション法が好適である。
そして、このコアセルベーション法においては、一般に、水系媒体中に疎水性の芯物質を分散させるために水溶性界面活性剤(分散剤)が用いられ、該分散後の水系媒体にカプセル殻体の原料となる水溶性化合物を添加するようにするが、上記水溶性界面活性剤として、前記特定の化合物(後述する化合物(A))を使用するとともに、上記水溶性化合物として、上記アミノ樹脂を得させる化合物(後述する初期縮合化合物(B))を使用するようにすれば、芯物質の表面に、上記アミノ樹脂を得させる化合物に由来する構成成分と、前記特定の化合物に由来する構成成分とを含んでなるカプセル殻体を容易に形成でき、前記課題を一挙に解決できることを見出した。
以上の知見に基づき、本発明は完成された。
したがって、本発明にかかるマイクロカプセルは、疎水性の芯物質が殻体に内包されてなるマイクロカプセルであって、前記殻体が、下記一般式:
−(CH−CH−O−)−X−R
(ただし、Rは炭素数5〜25の脂肪族または芳香族の疎水性基を表し、Rは重量平均分子量が300〜100,000のポリアミン構造またはポリカルボン酸構造を有するポリマー基を表し、該ポリアミンはポリエチレンイミンであり、該ポリカルボン酸は不飽和カルボン酸を30モル%以上含むモノマー成分の重合により得られる水溶性ポリカルボン酸であり、nは3〜85の整数を表す。Xは、アミノ基、イミノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と反応し得る基に由来し、該反応後に形成される基を表すが、有ってもよいし無くてもよい。)
で表される化合物(A)に由来する構成成分と、尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合化合物(B)に由来する構成成分と、を必須の構成成分としてなることを特徴とする。
本発明にかかるマイクロカプセルの製造方法は、水溶性界面活性剤を含む水系媒体中に疎水性の芯物質を分散させ、前記分散後の水系媒体に水溶性化合物を添加することにより、前記芯物質の表面に殻体を形成させるマイクロカプセルの製造方法において、前記水溶性界面活性剤として下記一般式:
−(CH−CH−O−)−X−R
(ただし、Rは炭素数5〜25の脂肪族または芳香族の疎水性基を表し、Rは重量平均分子量が300〜100,000のポリアミン構造またはポリカルボン酸構造を有するポリマー基を表し、該ポリアミンはポリエチレンイミンであり、該ポリカルボン酸は不飽和カルボン酸を30モル%以上含むモノマー成分の重合により得られる水溶性ポリカルボン酸であり、nは3〜85の整数を表す。Xは、アミノ基、イミノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と反応し得る基に由来し、該反応後に形成される基を表すが、有ってもよいし無くてもよい。)
で表される化合物(A)を用いるとともに、前記水溶性化合物として、尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合化合物(B)を用いることを特徴とする。
本発明によれば、疎水性の芯物質が殻体に内包されてなり、該殻体が、尿素系樹脂やメラミン樹脂やグアナミン系樹脂といったいわゆるアミノ樹脂からなる殻体と同等程度に芯物質の不浸透性に優れ、なおかつ、高い機械的強度をも有する、マイクロカプセルを容易に提供することができ、さらに、このようなマイクロカプセルの製造方法も容易に提供することができる。
以下、本発明にかかるマイクロカプセルおよびその製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
本発明のマイクロカプセルは、前述したように、疎水性の芯物質が殻体(カプセル殻体)に内包されてなるマイクロカプセルであって、前記カプセル殻体が、前述した化合物(A)に由来する構成成分と、前述した初期縮合化合物(B)(以下、化合物(B)と称することがある。)に由来する構成成分とを必須の構成成分としてなることが重要である。
本発明のマイクロカプセルを得るにあたっては、上述のような特徴的構成を有する殻体を備えたマイクロカプセルを製造できる方法であれば、従来公知の何れの方法および技術を採用してもよく、限定はされないが、後述する「本発明のマイクロカプセルの製造方法」が、より容易に得ることができる等の点で好ましい。
以下では、まず本発明のマイクロカプセルの製造方法について詳しく説明し、引き続き、本発明のマイクロカプセルの特徴および各種物性について説明する。
本発明のマイクロカプセルの製造方法は、前述したように、水溶性界面活性剤を含む水系媒体中に疎水性の芯物質を分散させ、該分散後の水系媒体に水溶性化合物を添加することにより、芯物質の表面に殻体を形成させるにあたり、上記水溶性界面活性剤として前述した化合物(A)を用いるとともに、上記水溶性化合物として前述した化合物(B)を用いるようにすることが重要である。つまり、本発明においては、水溶性化合物である化合物(B)のみならず、水溶性界面活性剤である化合物(A)も、カプセル殻体の原料化合物となる。
本発明の製造方法は、いわゆるコアセルベーション法(相分離法)に分類されるマイクロカプセルの製造方法と言える。
以下に、本発明を実施する上でのマイクロカプセルの一般的な製造方法を説明するとともに、本発明の製造方法の特徴についても詳細に説明する。本発明の実施においては、以下に示す以外の技術および条件等は、上記コアセルベーション法によるマイクロカプセルの製造方法において一般に採用され得る技術および条件等が適宜適用できる。
本発明の製造方法においては、まず、特定の水溶性界面活性剤を含む水系媒体中に疎水性の芯物質を分散させるようにする。
本発明の製造方法に用い得る水系媒体としては、限定はされないが、例えば、水、あるいは、親水性の有機溶剤と水との混合液を用いることができる。親水性の有機溶剤と水とを併用する場合は、水の配合割合が95〜70重量%とすることが好ましく、より好ましくは95〜80重量%である。
上記親水性の有機溶剤としては、限定はされないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン等のケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等のエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;などが好ましく挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明の製造方法においては、上記水系媒体に、上述した水や親水性の有機溶剤とは別に、さらに他の溶剤を併用してもよい。上記他の溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロペンタン、ペンタン、イソペンタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アミニルサクワレン、石油エーテル、テルペン、ヒマシ油、大豆油、パラフィン、ケロニンなどが挙げられる。上記他の溶剤を併用する場合、その使用量は、上述した親水性の有機溶剤や水からなる水系媒体に対して30重量%以下であることが好ましく、より好ましくは25重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。
本発明の製造方法に用い得る疎水性の芯物質としては、実質的に水に不溶性であり、形成されるカプセル殻体とその機能を害する程度に相互作用しないものであれば、限定はされないが、例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン、ドデシルベンゼン、ヘキシルベンゼン、フェニルキシリルエタンおよびナフテン系炭化水素などの芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、n−ヘキサン、ケロシン、パラフィン系炭化水素などの脂肪族炭化水素類;などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、必要に応じ2種以上を併用してもよい。
上記芯物質を水系媒体に分散させる量は、限定はされないが、例えば、水系媒体100重量部に対して5〜70重量部用いることが好ましく、より好ましくは10〜65重量部である。上記芯物質の分散量が、5重量部未満であると、濃度が低いためカプセル殻体の形成に長時間を要し目的のマイクロカプセルが調製されないおそれや、特に芯物質が液状物質である場合は、粒径分布の広いマイクロカプセルとなり生産効率の低下を招くおそれがある。一方、70重量部を超える場合は、芯物質粒子どうしが凝集するおそれや、特に芯物質が液状物質である場合は、液滴の融合(合一)が生じるおそれのほか、逆懸濁液となりマイクロカプセルが製造できなくなるおそれがある。
本発明の製造方法においては、上記特定の水溶性界面活性剤として下記一般式(1):
−(CH−CH−O−)−X−R (1)
(ただし、Rは炭素数5〜25の脂肪族または芳香族の疎水性基を表し、Rは重量平均分子量が300〜100,000のポリアミン構造またはポリカルボン酸構造を有するポリマー基を表し、nは3〜85の整数を表す。Xは、アミノ基、イミノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と反応し得る基に由来し、該結合後に形成される基を表すが、有ってもよいし無くてもよい。)
で表される化合物(A)を用いるようにすることが重要である。該化合物(A)を用いることにより、前述した本発明の課題を容易に解決できる。
上記一般式(1)においては、Rは、炭素数5〜25の脂肪族または芳香族の疎水性基を表すが、具体的には、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基およびベヘニル基などの脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、p−テルフェニル基、インデニル基、ナフチル基およびインデニル−ナフチル基などの芳香族炭化水素基が挙げられるが、これらに限定はされない。
上記Rで表される疎水性基の炭素数は5〜25であるが、好ましくは5〜18である。上記炭素数が5未満であると、化合物(A)が十分な界面活性能を発現しないおそれがあり、25を超えると疎水性が高くなり過ぎて化合物(A)の水への溶解性が低下するおそれがある。
上記一般式(1)においては、「−(CH−CH−O−)」は、ポリエーテル構造(ポリエチレンオキシド構造)を有するポリマー基であり、その構造単位「CH−CH−O−」の数nは3〜85であることが重要であるが、上記nは、好ましくは5〜60、より好ましくは5〜50である。上記nが3未満であると、疎水性基とのバランスにもよるが、水系媒体に対する溶解性が十分に発揮されず水不溶性となるおそれがあり、85を超えると、水系媒体に対する溶解性が高くなりすぎ、不溶物として析出されにくく、化合物(A)由来の構成成分が殻体中に十分に含有されないおそれがある。また、得られるマイクロカプセルの殻体の物性について見れば、nが上記好ましい範囲であれば、殻体に適度な柔軟性を付与することができ、ひいては殻体の機械的強度を向上させることができる。
上記一般式(1)においては、Xは、アミノ基、イミノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と反応(結合反応)し得る基に由来し、該反応(結合反応)後に形成される基を表すが、一般式(1)中に有ってもよいし無くてもよい。ここで、上記アミノ基、イミノ基およびカルボキシル基とは、詳しくは、ポリアミン構造を有するポリマー中に存在し得るアミノ基およびイミノ基、ならびに、ポリカルボン酸構造を有するポリマー中に存在し得るカルボキシル基のことをいうとするが、これらの基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と反応し得る基としては、下記一般式(3)中のXで表される基が例示できる。上記Xで表される基としては、具体的には、下記構造式(b)で表される基に由来する「−CH−CH−S−」や、イソシアネート基に由来する「−NH−CO−」や、オキサゾリン基に由来する「−CO−NH−CH−CH−」や、アルデヒド基に由来する「−CH(OH)−」や、カルボキシル基に由来する「−CO−」や、アミノ基に由来する「−NH−」や、イミノ基に由来する「=N−」等が例示できる。
上記一般式(1)においては、Rは、重量平均分子量が300〜100,000のポリアミン構造またはポリカルボン酸構造を有するポリマー基を表すが、上記重量平均分子量は、好ましくは300〜50,000である。上記重量平均分子量が、300未満であると、不溶物として析出されにくく、殻体の形成に長時間を要するおそれがあるほか、強度の高いカプセル殻体が得られないおそれがあり、100,000を超えると、反応系全体の粘度が急激に上昇し、撹拌が困難となるおそれがあり、また、強制撹拌すると、芯物質が液状物質である場合に、液滴粒径の制御が困難となり小さくなり過ぎるおそれがある。
上記ポリアミン構造を有するポリマー基としては、限定はされないが、第1級アミノ基および/または第2級アミノ基を含むポリアミンの構造を有するポリマー基、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリエーテルアミン、ポリビニルアミン、変性ポリビニルアミン、ポリアルキルアミン、ポリアミド、ポリアミンエピクロルヒドリン、ポリジアルキルアミノアルキルビニルエーテル、ポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミングラフトポリアミドアミンおよびプロトン化ポリアミドアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有するポリマー基等が挙げられる。
上記ポリカルボン酸構造を有するポリマー基としては、限定はされないが、アクリル酸、メタクリル酸、α−ヒドロキシアクリル酸、クロトン酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸および酢酸ビニルなどの不飽和カルボン酸を30モル%以上含むモノマー成分の重合により得られる水溶性ポリカルボン酸の構造を有するポリマー基等が挙げられる。
上記一般式(1)で表される化合物(A)の調製方法は、限定はされないが、例えば、ポリアミンまたはポリカルボン酸の水溶液に、撹拌下で、下記一般式(2)や下記一般式(3)で表される化合物を滴下し、反応させることによって得る方法等が好ましい。
−(CH−CH−O−)n−1−X (2)
(ただし、Xは、下記構造式(a):
Figure 0004235574
で表される基を表す。)
−(CH−CH−O−)−X (3)
(ただし、Xは、下記構造式(b):
Figure 0004235574
で表される基、イソシアネート基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基およびイミノ基等からなる群より選ばれるいずれか1種を表す。すなわち、Xは、アミノ基、イミノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と反応(結合反応)し得る基を表す。)
上記一般式(2)で表される化合物を、化合物(A)の調製の際に使用した場合は、上記一般式(1)において、Xで表される基は存在しないことになる。一方、上記一般式(3)で表される化合物を使用した場合、上記一般式(1)において、Xで表される基が存在することになる。
上記反応させる際の反応温度としては、限定はされないが、ポリアミンを使用する場合は、10〜90℃が好ましく、より好ましくは15〜80℃であり、ポリカルボン酸を使用する場合は、20〜100℃が好ましく、より好ましくは20〜90℃である。また、反応時間は、限定はされないが、0.5〜5時間が好ましく、より好ましくは1〜5時間である。
本発明の製造方法においては、水溶性界面活性剤として用いる上記化合物(A)は、水系媒体中に疎水性の芯物質を分散させる前から該水系媒体に溶解させておいてもよいし、分散と同時または分散させた後に溶解させてもよく、限定はされない。
本発明の製造方法においては、上記化合物(A)の配合割合については、疎水性の芯物質に対して1〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは3〜25重量%、さらに好ましくは5〜25重量%である。上記化合物(A)の配合割合が、1重量%未満であると、疎水性の芯物質の分散状態を十分に安定に保持することができず芯物質粒子どうしが凝集するおそれや、特に芯物質が液状物質である場合は、液滴の融合(合一)が生じるおそれがある。一方、30重量%を超えると、反応系全体の粘度が急激に上昇し、撹拌が困難となるおそれがあり、また、強制撹拌すると、芯物質が液状物質である場合に、液滴粒径の制御が困難となり小さくなり過ぎるおそれがある。また、得られるマイクロカプセルの殻体の物性について見れば、化合物(A)の配合割合が上記好ましい範囲であれば、殻体に適度な柔軟性を付与することができ、ひいては殻体の機械的強度を向上させることができる。
本発明の製造方法においては、上記化合物(A)とともに、本発明の効果を妨げない範囲で、その他の化合物を用いることができる。上記その他の水溶性界面活性剤としては、例えば、ポリビニルアルコール類、各種界面活性剤類、ゼラチンやアラビアゴム等の天然高分子分散剤、スチレン・マレイン酸共重合体およびその塩等の合成高分子分散剤、などが挙げられる。
本発明の製造方法において、水系媒体中に疎水性の芯物質を分散させる方法としては、限定はされないが、通常公知の分散方法を採用すればよい。特に、芯物質が液状物質である場合は、例えば、水系媒体、疎水性芯物質および水溶性界面活性剤を含む混合物を、ディスパー、ホモミキサー(特殊機械工業(株)製)およびホモジナイザー(日本精機(株)製)等を用いて機械的に強く撹拌することにより分散させる方法;上記混合物を、静止管内混合器(ノリタケスタティックミキサー((株)ノリタケカンパニーリミテッド製)、スルーザーミキサー(住友重機械工業(株)製)、サケアミキサー((株)桜製作所製)、TK・ROSS・LPDミキサー(特殊機械工業(株)製)など)を通過させて分散させる方法;水溶性界面活性剤を含む水系媒体中に、疎水性芯物質をSPG膜(シラスポーラスグラス)やマイクロチャネル乳化装置((株)イーピーテック製)等の規制された孔を通過させ分散させる方法;などが好ましく挙げられる。
本発明の製造方法においては、疎水性芯物質を分散させた後の水系媒体に、特定の水溶性化合物を添加することにより、疎水性芯物質の表面に殻体を形成させるようにする。
上記特定の水溶性化合物としては、尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンからなる群(以下、アミノ化合物)より選ばれる少なくとも1種とホルムアルデヒドとを反応させて得られる、初期縮合化合物(B)を用いるようにすることが重要である。初期縮合化合物(B)は、いわゆるアミノ樹脂(尿素系樹脂、メラミン樹脂、グアナミン系樹脂)の前駆体たる化合物である。特定の水溶性化合物として化合物(B)を用いることにより、アミノ樹脂を必須の構成成分とする殻体が形成できるが、前述した化合物(A)との組み合わせで用いることにより、化合物(B)から得られるアミノ樹脂中に化合物(A)に由来する構成成分が含まれてなる殻体が形成でき、前述した本発明の課題を容易に解決できる。
上記化合物(B)については、(i)尿素およびチオ尿素(以下、尿素系化合物)のうちの少なくとも1種とホルムアルデヒドとを反応させて得られたものである場合は、尿素系樹脂の構成成分となり得る初期縮合化合物となり、(ii)メラミンとホルムアルデヒドとを反応させて得られたものである場合は、メラミン樹脂の構成成分となり得る初期縮合化合物となり、(iii)ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンからなる群(以下、グアナミン系化合物)より選ばれる少なくとも1種とホルムアルデヒドとを反応させて得られたものである場合は、グアナミン系樹脂の構成成分となり得る初期縮合化合物となる。また、(iv)尿素系化合物、メラミンおよびグアナミン系化合物のうちの2種以上とホルムアルデヒドとを反応させて得られたものである場合は、尿素系樹脂、メラミン樹脂およびグアナミン系樹脂のうちの2種以上が混在してなる樹脂の構成成分となり得る初期縮合化合物となる。上記化合物(B)としては、これら初期縮合化合物のうちのいずれか1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、限定はされない。
上記化合物(B)を得るアミノ化合物とホルムアルデヒドとの反応においては、一般に、溶媒として水が用いられる。したがって、反応形態としては、ホルムアルデヒドを水溶液(ホルマリン)の状態にしたものにアミノ化合物を添加して反応させる方法や、トリオキサンやパラホルムアルデヒドを水に添加して水中でホルムアルデヒドが発生し得るようにした水溶液にアミノ化合物を添加して反応させる方法等が好ましく挙げられ、なかでも、前者の方法が、ホルムアルデヒド水溶液の調製槽が必要ないこと、入手が容易であることなど、経済性の点でより好ましい。また、上記反応形態は、アミノ化合物とホルムアルデヒドとが混合状態で反応する形態であればよく、例えば、ホルムアルデヒドの水溶液にアミノ化合物を添加する形態以外に、アミノ化合物にホルムアルデヒドの水溶液を添加する形態であってもよい。なお、上記反応は、公知の撹拌装置等による撹拌下で行うことが好ましい。
上記アミノ化合物としては、なかでも、尿素系化合物、メラミン、尿素系化合物とメラミンとの共縮合物、および、メラミンとグアナミン系化合物との共縮合物が好ましく、より好ましくは、尿素系化合物、メラミン、および、尿素系化合物とメラミン化合物との共縮合物、さらに好ましくは、メラミン、および、尿素系化合物とメラミンとの共縮合物である。
上記化合物(B)の原料化合物となるアミノ化合物としては、上記列挙したアミノ化合物以外に、さらに他のアミノ化合物を用いてもよく、例えば、カプリグアナミン、アメリン、アメリド、エチレン尿素、プロピレン尿素およびアセチレン尿素等が挙げられる。これら他のアミノ化合物も用いる場合は、これら他のアミノ化合物も含めて、上記化合物(B)の原料化合物となるアミノ化合物として扱うものとする。
上記化合物(B)を得る反応において、反応させるアミノ化合物とホルムアルデヒドとのモル比「アミノ化合物(モル)/ホルムアルデヒド(モル)」は、限定はされないが、1/0.5〜1/10であることが好ましく、より好ましくは1/1〜1/8、さらに好ましくは1/1〜1/6である。上記モル比が1/10未満であると、ホルムアルデヒドの未反応物が多くなるおそれがあり、1/0.5を超えると、アミノ化合物の未反応物が多くなるおそれがある。なお、水を溶媒として用いて上記反応を行う場合に、水に対するアミノ化合物およびホルムアルデヒドの添加量、すなわち、仕込み時点におけるアミノ化合物およびホルムアルデヒドの濃度は、反応に支障の無い限りにおいて、より高濃度であることが望ましい。
上記化合物(B)は、限定はされないが、水混和度(重縮合率の度合の指標)が100〜5000%の初期縮合化合物であることが好ましく、より好ましくは200〜3000%である。なお、ここでいう水混和度は、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの反応により得られる初期縮合化合物5gを採取し、15℃に保ちながら水を滴下した場合に、白濁を生じさせるのに要した水の重量と初期縮合化合物との重量比「水(g)/初期縮合化合物(g)」に100を乗じた値である。上記水混和度が5000%を超えると、親水性が大きく、殻体形式に長時間を要し、生産性が劣るおそれがあり、100%未満であると、適度な柔軟性を有し機械的強度の高い殻体が得られないおそれがある。また、上記化合物(B)の重縮合率の度合は、上記水混和度のほか、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)、LC(液体クロマトグラフィー)などでも管理でき、なかでも操作性や再現性等から水混和度での管理が好ましい。
上記化合物(B)を得るアミノ化合物とホルムアルデヒドとの反応時の反応温度は、上述した水混和度により、反応の進行状態を経時的かつ即時的に把握し所望の反応終点(目標点)を正確に見極めることができるように、65〜75℃の温度範囲内であることが好ましく、所望の反応終点が認められた時点で、反応液を冷却する等の操作により終了すればよい。これにより、上記化合物(B)を含む反応液が得られる。また、反応時間は、限定はされず、適宜設定できる。
上記化合物(B)は、通常、アセトンやジオキサン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等の有機溶媒に対して可溶であるが、水に対して実質的に不溶である。
上記化合物(B)の添加量は、限定はされないが、前記化合物(A)1重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。化合物(B)の添加量を調整することで、形成されるカプセル殻体の厚みを容易にコントロールできる。上記化合物(B)の添加量が、0.1重量部未満であると、十分な量および十分な厚みのカプセル殻体が形成できないおそれがあり、10重量部を超えると、カプセル殻体の成分組成に大きな偏りが生じ、殻体強度が低下するおそれがある。また、得られるマイクロカプセルの殻体の物性について見れば、上記化合物(B)の添加量が、0.1重量部未満であると、厚みが不十分であることから機械的強度およびブリードアウト防止能が低い殻体となるおそれがあり、10重量部を超えると、柔軟性に乏しくなることから機械的強度の低い殻体となるおそれがある。
上記化合物(B)の水系媒体への添加方法は、限定はされず、一括添加であってもよいし、逐次添加(連続的添加および/または間欠的添加)であってもよい。
本発明の製造方法においては、化合物(B)に由来する不溶性の反応物(アミノ樹脂)中に化合物(A)が含まれてなるカプセル殻体を、疎水性芯物質の表面に形成させることができる。このように、上記アミノ樹脂中に化合物(A)が含まれたかたちで殻体形成されるメカニズムは明らかではないが、コアセルベーション法による化合物(B)を用いた殻体形成(マイクロカプセル化)を、化合物(A)の存在下で行うようにすれば、上述のようなカプセル殻体が容易に形成できると考えられる。
本発明の製造方法において、カプセル殻体を形成させる際の温度(疎水性芯物質を分散させ水溶性化合物を添加した水系媒体の温度)は、限定されないが、25℃〜85℃が好ましく、より好ましくは30℃〜70℃、さらに好ましくは35℃〜60℃である。
上記殻体形成後、さらに熟成期間を設けてもよい。上記熟成時の温度は、限定はされないが、上記反応温度と同様であることが好ましく、熟成時間は、限定はされないが、1〜5時間が好ましく、より好ましくは1〜3時間である。
本発明の製造方法においては、上述の殻体形成および必要に応じて行う熟成により、マイクロカプセルと水系媒体とを含む調製液が得られる。
本発明の製造方法においては、必要に応じて、上記マイクロカプセルの調製液に、さらに化合物(A)を添加し、化合物(B)を添加してもよい。こうすることで、先に形成されたカプセル殻体の上にさらに同様の殻体を形成することができ、結果として、複数層からなる殻体が形成されたマイクロカプセルが得られる。複数層からなる殻体が形成されたマイクロカプセルは、例えば、単層の殻体で得られていた物性をさらに向上させることができるほか、カプセル殻体の内側の層と外側の層とで、構成成分の組成を変化させることで、異なる物性を発現させることもできる。具体的には、カプセル殻体本来の性能を有しつつ、さらに粘着性や高い親水性や柔軟性等の物性を容易に導入できるといった効果が得られる。
本発明の製造方法においては、上述のようにして単層または複数層からなる殻体形成を行った後のマイクロカプセルの調製液に、さらにエポキシ化合物(エポキシ基を有する化合物)を添加し、上記殻体表面にエポキシ化合物からなる層を形成させることができる。こうすることにより、より一層柔軟性に富む機会的強度の高い殻体とすることができる。
上記エポキシ化合物としては、限定はされないが、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する水溶性エポキシ化合物が好ましく、例えば、ソルビトールポリグリシジルエステル、ソロビタンポリグリシジルエステル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエステル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエステル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパンポリグリシジルエステル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエステル、エチレン,ポリエチレングリコールジグリシジルエステル、プロピレン,ポリプロピレングリコールジグリシジルエステルおよびアジピックアシドジグリシジルエステル等が好ましく用い得る。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記エポキシ化合物は、水に対する溶解率が50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは100重量%である。上記溶解率が上記範囲を満たすことにより、エポキシ化合物層の形成が均一かつ速やかになされ、また、該エポキシ化合物層の厚みの制御が容易となる等の優れた効果が得られる。なお、エポキシ化合物の水に対する溶解率は、以下の測定方法により求められる値であるとする。すなわち、300mLのビーカーに、試料化合物(エポキシ化合物)25.0gを精秤し、水225gを添加し、マグネチックスターラーで1時間強く撹拌して試料化合物を溶解させた後、1時間静置し、ビーカーの底部に沈降した未溶解の試料化合物(油状物)を抜き取り、10mL(もしくは5mL)のメスシリンダーに入れ、さらに30分静置後、試料化合物(油状物)の液量(mL)を小数点以下第1位まで読み取り、その値を下記式に代入して、試料化合物(エポキシ化合物)の水に対する溶解率(%)を算出する。
水に対する溶解率(%)=100−(A/21)×100
(ただし、Aは、読み取った試料化合物の液量(mL)を表す。)
上記エポキシ化合物は、その重量平均分子量が300〜10,000であることが好ましく、より好ましくは300〜8,000、さらに好ましくは300〜5,000である。上記重量平均分子量が上記範囲を満たすことにより、エポキシ化合物層の厚みが容易となる等の優れた効果が得られる。上記重量平均分子量が、300未満であると、エポキシ化合物層の形成による柔軟性向上の効果が得られにくく、また、均一なエポキシ化合物層の形成が困難となるおそれがある。一方、10,000を超えると、マイクロカプセル調製液全体の粘度が急激に上昇し、エポキシ化合物層形成時の撹拌が困難となるおそれがあり、強制撹拌すると、マイクロカプセルが破壊されたり損傷を受けたりするおそれがある。
上記エポキシ化合物の添加量は、限定はされないが、マイクロカプセル1重量部に対して0.5〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。エポキシ化合物の添加量を調製することで、形成されるエポキシ化合物層の厚みを容易にコントロールできる。上記添加量が、0.5重量部未満であると、エポキシ化合物層の形成による柔軟性向上の効果が得られないおそれがあり、10重量部を超えても、特に差し支えはないが、添加量に見合う機械的強度や柔軟性等の効果の向上が認められず、経済性に劣るおそれがある。
上記エポキシ化合物層を形成する際の温度は、前述したカプセル殻体を形成させる際の温度と同様であることが好ましい。
上記エポキシ化合物層を形成する際は、エポキシ化合物以外に、架橋剤を添加することができる。架橋剤をさらに添加し使用することで、形成されるエポキシ化合物層の強度、ひいてはカプセル殻体の強度をより高めることができ、その後のマイクロカプセルの単離や洗浄工程において殻体が破壊したり損傷を受けたりすることを効果的に抑制できる。上記架橋剤の添加のタイミングは、限定はされず、エポキシ化合物とともに添加してもよいし、エポキシ化合物の添加前や添加後に添加してもよいが、エポキシ化合物の添加後に添加することが好ましい。
上記架橋剤としては、限定はされないが、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(水和物含む)、ジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアンモニウム(水和物含む)、ジチオ蓚酸およびジチオ炭酸などが挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、上記架橋剤の使用量は、限定はされないが、例えば、エポキシ化合物100重量部に対して、1〜100重量部とすることが好ましく、より好ましくは5〜80重量部、さらに好ましくは10〜80重量部である。上記架橋剤の使用量が、1重量部未満であると、エポキシ化合物層の厚みの制御等が困難となるおそれがあり、100重量部を超えると、エポキシ化合物におけるエポキシ基との反応が過剰となり、柔軟性に富むエポキシ化合物層を形成できないおそれがある。
本発明の製造方法においては、マイクロカプセル化工程によりマイクロカプセルを調製した後、必要に応じてマイクロカプセルを単離してもよい。例えば、マイクロカプセルの調製後、吸引濾過や自然濾過にて該マイクロカプセルを水系媒体等から分離して単離することができる。
上記単離後は、さらに粒度分布のシャープなマイクロカプセルを得るために、マイクロカプセルを分級してもよい。
上記分級は、例えば、湿式による分級方式(湿式分級)を採用することが好ましい。湿式分級とは、マイクロカプセル化により得られた調製液に対してマイクロカプセルの分級を行う方式である。上記調製液に対して分級を行うため湿式分級となる。詳しくは、上記調製液を、そのままでもしくは任意の水系媒体などで希釈して分級処理し、調製液中のマイクロカプセルを所望の粒径や粒度分布を有するものとなるよう分級する方式である。湿式分級は、例えば、ふるい式(フィルター式)、遠心沈降式および自然沈降式等の方式を用いた方法や装置により行うことができる。比較的粒子径の大きいマイクロカプセルに対しては、ふるい式が有効に使用できる。
また、不純物を除去し、製品品質を向上させるため、得られたマイクロカプセルを洗浄する操作を行うことも好ましい。
以下、本発明のマイクロカプセルの特徴および各種物性について説明する。
本発明のマイクロカプセルにおいて言う、疎水性の芯物質、化合物(A)および化合物(B)の詳細については、上記本発明の製造方法での説明が同様に適用できる。
本発明のマイクロカプセルにおける殻体の必須構成成分である、化合物(A)に由来する構成成分の形態としては、化合物(A)1分子からなるものであってもよいし、2量体や3量体など2分子以上集まったものでもよく、限定はされない。これらのうち1種のみが殻体に含まれていてもよいし、2種以上が殻体に含まれていてもよい。
上記化合物(A)に由来する構成成分の含有割合は、限定はされないが、殻体全体に対し、10〜80重量%であることが好ましく、より好ましくは15〜70重量%、さらに好ましくは20〜60重量%である。上記含有割合が、10重量%未満であると、柔軟性が十分に得られず機械的強度の低い殻体となるおそれがあり、80重量%を超えると、ブリードアウト防止能が十分でない殻体となるおそれがある。
同様に、本発明のマイクロカプセルにおける殻体の必須構成成分である、化合物(B)に由来する構成成分の形態としては、各種アミノ樹脂(尿素系樹脂、メラミン樹脂、グアナミン系樹脂)が挙げられる。これらのうちの1種のみが殻体に含まれていてもよいし、2種以上が殻体に含まれていてもよい。
化合物(B)に由来する構成成分の含有割合は、限定はされないが、殻体全体に対し、20〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは30〜85重量%、さらに好ましくは40〜80重量%である。上記含有割合が、20重量%未満であると、ブリードアウト防止能が十分でない殻体となるおそれがあり、90重量%を超えると、柔軟性に乏しく機械的強度の低い殻体となるおそれがある。
また、上記化合物(A)に由来する構成成分と、化合物(B)に由来する構成成分との組成比「化合物(A)/化合物(B)(重量比)」は、限定はされないが、10/90〜80/20であることが好ましく、より好ましくは15/85〜70/30、さらに好ましくは20/80〜60/40である。上記モル比が10/90未満であると、柔軟性が十分に得られず機械的強度の低い殻体となるおそれがあり、上記モル比が80/20を超えると、ブリードアウト防止能が十分でない殻体となるおそれがある。
本発明のマイクロカプセルにおける殻体の構成成分としては、上述した必須の構成成分以外の他の構成成分を、前述した本発明の効果が損なわれない範囲で含んでいてもよく、限定はされない。上記他の構成成分としては、例えば、化合物(A)と併用し得る、前述したその他の化合物に由来する構成成分が挙げられ、具体的には、ポリビニルアルコール類に由来する構成成分、各種界面活性剤類に由来する構成成分、ゼラチンやアラビアゴム等の天然高分子分散剤に由来する構成成分、スチレン・マレイン酸共重合体およびその塩等の合成高分子分散剤に由来する構成成分、などが挙げられる。
本発明のマイクロカプセルは、高い機械的強度を有するカプセル殻体を備えてなるマイクロカプセルである。本発明のマイクロカプセルの強度(カプセル殻体の強度)については、限定はされないが、後述する実施例に記載の方法により測定される、マイクロカプセルの機械的強度が、50g以上であることが好ましく、より好ましくは100g以上、さらに好ましくは200g以上である。上記機械的強度が50g未満であると、前述した本発明の効果が得られないおそれがある。
本発明のマイクロカプセルの形状は、限定されないが、真球状や楕円球状等の粒子状であることが好ましい。
本発明のマイクロカプセルの粒子径(体積平均粒子径)は、限定されないが、5〜500μmであることが好ましく、より好ましくは10〜300μm、さらにより好ましくは10〜200μmである。マイクロカプセルの粒子径が5μm未満である場合、芯物質を内包しないマイクロカプセルであるおそれがあり、500μmを超えると、通常マイクロカプセルとして要求される物性を保持することができなくなる、または、マイクロカプセルの強度を制御することが困難になるおそれがある。
本発明のマイクロカプセルの粒子径(体積平均粒子径)の変動係数は、30%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下である。上記変動係数が30%を超える場合は、マイクロカプセルとして有効な粒子径を有するものの存在率が低下し、数多くのマイクロカプセルを用いる必要が生じるおそれがある。
本発明のマイクロカプセルの粒子径や、その変動係数(すなわち粒度分布のシャープさ)は、例えば、芯物質として液状物質(例えば油性液等)を用いた場合は、製造過程において、水系媒体に分散させた液滴の粒子径や粒度分布などに大きく依存する。よって、該液滴の分散条件を適宜調整して行うことによって、所望の粒子径やその変動係数を有するマイクロカプセルを得ることができる。
本発明のマイクロカプセルの殻体の厚みは、限定はされないが、湿潤状態で、0.5〜10μmであることが好ましく、より好ましくは1〜10μm、さらにより好ましくは2〜10μmである。上記殻体の厚みが0.5μm未満である場合は、殻体としての十分な強度が得られないおそれがあり、10μmを超える場合は、特に問題はないが、マイクロカプセルの単位重量あたりの芯物質の重量が減少することになり、好ましいとは言い難い。
本発明のマイクロカプセルは、例えば、カプセル型接着剤、カプセル型化粧品、マイクロカプセル型磁性体およびマイクロカプセル型蓄熱材等の各種用途や製品に好ましく用いることができるが、これらに限定はされない。
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「リットル」を単に「L」と記すことがある。また、「重量%」を「wt%」と記すことがある。
実施例および比較例における、測定方法を以下に示す。
<マイクロカプセルの粒子径>
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(製品名:LA−910、堀場製作所社製)を用いてマイクロカプセルの体積平均粒子径を測定した。
<マイクロカプセルの殻体(シェル層)の厚さ>
マイクロカプセルの分散体から、粒子径約50μmのマイクロカプセルを任意に10個選択して取り出し、それぞれのカプセル殻体(シェル層)の厚みについて、マイクロスコープ(製品名:パワーハイスコープKH−2700、(株)ハイロックス製)で倍率を2500倍にして測定した。これらの平均値を、得られたマイクロカプセルのカプセル殻体(シェル層)の厚みとした。
<マイクロカプセルの機械的強度(殻体の機械的強度)>
マイクロカプセルの分散体からマイクロカプセルをろ別し、マイクロカプセルのペーストを得た。このペーストを、マイクロカプセル由来の固形分が10g含まれるように計量し、これに、固形分濃度10wt%のバインダー(アクリル系水溶性バインダー、成膜温度2℃)10gを添加し、さらに全体の固形分濃度が40wt%になるよう水を添加し、塗料化した。この塗料を、厚さ250μmのPETフィルムにアプリケータ(クリアランス:150μm)を用いて塗布し、30分間風乾後、100℃で10分間乾燥させることで、マイクロカプセルを塗布したシートを得た。
次に、鉛筆硬度計(安田精機製作所(株)製)を用い、白色普通紙上にマイクロカプセルの塗布面を下にして上記シートを置いた。その後、PETフィルム側から、7Hの鉛筆を使用して荷重を50g、100g、200g、300gと架けた各場合の、白色普通紙の青く染まる色汚染度を観察し、マイクロカプセルの機械的強度を以下の規準により評価した。
◎:染色無し
○:極わずかに染色有り
△:少し染色有り
×:大きく滲む状態の染色有り
<マイクロカプセルの加熱時の重量減少率>
マイクロカプセルの分散体からマイクロカプセルをろ別し、マイクロカプセルのペーストを得て、一旦このペーストを50℃の熱風乾燥機で乾燥した後の重量(重量a)を測定した。その後、110℃で2時間加熱乾燥し、さらに同温度で2時間加熱乾燥した。初めに2時間加熱乾燥した後の重量(重量b)と、さらに2時間加熱乾燥した後(すなわち4時間加熱乾燥後))の重量(重量b)とを測定し、各時点におけるマイクロカプセルの重量減少率(wt%)を下記式により求めた。
重量減少率(%)=〔{重量a−(重量bまたは重量b)}/重量a〕×100
マイクロカプセルの実際の使用時においては、加熱により殻体を十分に乾燥させてから用いられたり、また加熱条件下で継続使用することも多いが、この加熱の際には殻体の乾燥収縮や芯物質の温度膨張が生じるため、強度(機械的強度)が低い殻体は破損・破壊してしまう。特に、芯物質として液状物質を用いた場合は、上記破損あるいは芯物質の膨張による内圧上昇でブリードアウトが促進され、該液状物質が漏れ出し蒸発等するため、加熱後のマイクロカプセルの重量は加熱前に比べて大きく減少することになる。この重量減少率の大小によっても、マイクロカプセルの機械的強度(殻体の機械的強度)およびブリードアウト防止能が客観的に評価できる。
〔合成例1−1〕
300mLのセパラブルフラスコに、ポリエチレンイミン(製品名:エポミンSP006(Mw=600)、(株)日本触媒製)14.5gおよび水43.5gを初期仕込みし、その後、撹拌下で、予め調製しておいたエポキシ化合物(ラウリルポリオキシエチレン(n=22)グリシジルエステル、水に対する溶解率:100%)の25wt%水溶液97.2gを10分間かけて滴下した。
滴下時の液温を25℃以下に保ちながら滴下したのち、滴下終了後30分間撹拌を続け、その後70℃まで昇温し、同温度で2時間保持したのちに常温まで冷却し、分散性能を有する固形分濃度25wt%の化合物(A1)を得た。
〔合成例1−2〕
合成例1−1において、ポリエチレンイミン(製品名:エポミンSP006(Mw=600)、(株)日本触媒製)24gおよび水72gを初期仕込みし、その後、撹拌下で、予め調製しておいたエポキシ化合物(ラウリルポリオキシエチレン(n=10)グリシジルエステル、水に対する溶解率:80%)の25wt%水溶液96gを滴下した以外は、合成例1−1と同様にして、分散性能を有する固形分濃度25wt%の化合物(A2)を得た。
〔合成例1−3〕
合成例1−1と同様のフラスコに、ポリアクリル酸(製品名:アクアリックHL−415(Mw=10,000、45wt%水溶液)、(株)日本触媒製)93.7gおよび水281.1gを初期仕込みし、その後、撹拌下で、予め調製しておいたエポキシ化合物(フェノールポリオキシエチレン(n=5)グリシジルエステル、水に対する溶解率:100%)の25wt%水溶液20gを10分間かけて滴下した。
滴下時の液温を25℃以下に保ちながら滴下したのち、滴下終了後30分間撹拌を続け、その後70℃まで昇温し、同温度で2時間保持したのちに常温まで冷却し、分散性能を有する固形分濃度25wt%の化合物(A3)を得た。
〔合成例1−4〕
合成例1−1において、ポリエチレンイミン(Mw=180,000)83.7gおよび水334.8gを初期仕込みし、その後、撹拌下で、予め調製しておいたエポキシ化合物(セリルポリオキシエチレン(n=88)グリシジルエステル、水に対する溶解率:80%)の20wt%水溶液15gを滴下した以外は、合成例1−1と同様にして、分散性能を有する固形分濃度20wt%の化合物(A4)を得た。
〔合成例2−1〕
100mLの丸底セパラブルフラスコに、メラミン5g、尿素5g、37wt%ホルムアルデヒド水溶液20gおよび25wt%アンモニア水1gを仕込み、撹拌しながら70℃まで昇温させた。昇温途中、65℃付近で全体が透明になった。
70℃に昇温後、同温度で1時間保持した後、30℃まで冷却し、メラミンおよび尿素とホルムアルデヒドとの初期縮合化合物である、化合物(B1)を得た。
〔合成例2−2〕
合成例2−1と同様のフラスコに、メラミン10g、37wt%ホルムアルデヒド水溶液20gおよび25wt%アンモニア水1gを仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温させた。昇温途中で全体が透明になった。
60℃に昇温後、同温度で15分間保持した後、30℃まで冷却し、メラミンとホルムアルデヒドとの初期縮合化合物である、化合物(B2)を得た。
〔合成例2−3〕
合成例2−1と同様のフラスコに、メラミン8g、ベンゾグアナミン2g、37wt%ホルムアルデヒド水溶液20gおよび25wt%アンモニア水2gを仕込み、撹拌しながら75℃まで昇温させた。75℃になった時点で全体が透明になったのを確認後、すぐに30℃まで冷却し、メラミンおよびベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの初期縮合化合物である、化合物(B3)を得た。
〔実施例1〕
500mL平底セパラブルフラスコに、化合物(A1)40gおよび水60gを仕込み、ディスパー(製品名:ROBOMICS、特殊機化工業社製)での撹拌下で、予め調製しておいたアルキルナフタレン94gにアゾ系の青色オイル染料6gを溶解させた青色疎水性液100gを添加し、その後、撹拌速度を徐々に上げ、800rpmで5分間撹拌し懸濁液を得た。
この懸濁液に、撹拌下で、化合物(B1)を全量添加し、35℃まで昇温し、同温度で2時間保持して、カプセル殻体としてのシェル層を形成させた。
次いで、60分かけて70℃まで昇温し、同温度で2時間保持し熟成させた。
熟成後、常温に冷却し、マイクロカプセル(1)の分散体を得た。
得られたマイクロカプセル(1)について、前述した方法により、その粒子径、シェル層の厚さ、機械的強度および加熱時の重量減少率について測定・評価した。これらの結果を表1および表2に示す。
〔実施例2〕
実施例1において、化合物(A1)の代わりに化合物(A2)を使用し、化合物(B1)の代わりに化合物(B2)を使用した以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル(2)の分散体を得た。
得られたマイクロカプセル(2)について、実施例1と同様に測定・評価した結果を表1および表2に示す。
〔実施例3〕
実施例1において、化合物(A1)の代わりに化合物(A3)を使用し、化合物(B1)の代わりに化合物(B3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル(3)の分散体を得た。
得られたマイクロカプセル(3)について、実施例1と同様に測定・評価した結果を表1および表2に示す。
〔実施例4〕
500mL平底セパラブルフラスコに、化合物(A4)40gおよび水60gを仕込み、ディスパー(製品名:ROBOMICS、特殊機化工業社製)での撹拌下で、予め調製しておいたアルキルナフタレン94gにアゾ系の青色オイル染料6gを溶解させた青色疎水性液100gを添加し、その後、撹拌速度を徐々に上げ、800rpmで5分間撹拌し懸濁液を得た。
この懸濁液に、撹拌下で、化合物(B1)を全量添加し、35℃まで昇温し、同温度で2時間保持して、カプセル殻体としてのシェル層を形成させた。
さらに、同温度を保持しながら、上記フラスコの内容物に、化合物(A1)20g添加した後、エポキシ化合物としてのポリグリセロールポリグリシジルエステル(ナガセケムテック(株)製、製品名:デナコールEX521、重量平均分子量:732、水に対する溶解率:100%)10gを水50gに溶解させた水溶液を10分間滴下し、次いで、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム3水和物2gを水100gに溶解させた水溶液を10分間滴下した。同温度を2時間保持し、2層目のシェル層を形成させた。
さらに、60分かけて70℃まで昇温し、同温度を2時間保持し熟成させた。
熟成後、常温まで冷却し、マイクロカプセル(4)の分散体を得た。
得られたマイクロカプセル(4)について、実施例1と同様に測定・評価した結果を表1および表2に示す。また、マイクロスコープ((株)ハイロックス製、製品名:パワーハイスコープKH−2700)で倍率を2500倍にして観察したところ、マイクロカプセル(4)は、カプセル殻体としてのシェル層が2層形成されていることが確認できた。
〔比較例1〕
スチレン・マレイン酸共重合体(原料モノマー組成比:スチレン(モル)/マレイン酸(モル)=1/1、重量平均分子量(Mw):20,000)5gを、1wt%NaOH水溶液100gに溶解させた溶液(C)を調製した。
500mL平底セパラブルフラスコに、溶液(C)を仕込み、ディスパー(製品名:ROBOMICS、特殊機化工業社製)での撹拌下で、予め調製しておいたアルキルナフタレン94gにアゾ系の青色オイル染料6gを溶解させた青色疎水性液100gを添加し、その後、撹拌速度を徐々に上げ、800rpmで5分間撹拌し懸濁液を得た。
この懸濁液に、撹拌下で、化合物(B1)を全量添加し、35℃まで昇温し、同温度で2時間保持して、カプセル殻体としてのシェル層を形成させた。
次いで、60分かけて70℃まで昇温し、同温度で2時間保持し熟成させた。
熟成後、常温に冷却し、マイクロカプセル(c1)の分散体を得た。
得られたマイクロカプセル(c1)について、実施例1と同様に測定・評価した結果を表1および表2に示す。
Figure 0004235574
Figure 0004235574
本発明のマイクロカプセルは、例えば、ノンカーボン紙等の感圧あるいは感熱の各種記録材料、圧力測定フィルム等の各種シート、医薬品や農薬等としてのコントロールリリース剤、接着剤、食品、化粧品、磁性体、蓄熱材、防錆剤および示温材等の各種用途や製品に、好適に用いることができる。
本発明にかかる製造方法は、上記本発明のマイクロカプセルの製造に好適である。

Claims (5)

  1. 疎水性の芯物質が殻体に内包されてなるマイクロカプセルであって、
    前記殻体が、下記一般式:
    −(CH−CH−O−)−X−R
    (ただし、Rは炭素数5〜25の脂肪族または芳香族の疎水性基を表し、Rは重量平均分子量が300〜100,000のポリアミン構造またはポリカルボン酸構造を有するポリマー基を表し、該ポリアミンはポリエチレンイミンであり、該ポリカルボン酸は不飽和カルボン酸を30モル%以上含むモノマー成分の重合により得られる水溶性ポリカルボン酸であり、nは3〜85の整数を表す。Xは、アミノ基、イミノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と反応し得る基に由来し、該反応後に形成される基を表すが、有ってもよいし無くてもよい。)
    で表される化合物(A)に由来する構成成分と、
    尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合化合物(B)に由来する構成成分と、を必須の構成成分としてなる、
    ことを特徴とする、マイクロカプセル。
  2. 水溶性界面活性剤を含む水系媒体中に疎水性の芯物質を分散させ、前記分散後の水系媒体に水溶性化合物を添加することにより、前記芯物質の表面に殻体を形成させるマイクロカプセルの製造方法において、
    前記水溶性界面活性剤として下記一般式:
    −(CH−CH−O−)−X−R
    (ただし、Rは炭素数5〜25の脂肪族または芳香族の疎水性基を表し、Rは重量平均分子量が300〜100,000のポリアミン構造またはポリカルボン酸構造を有するポリマー基を表し、該ポリアミンはポリエチレンイミンであり、該ポリカルボン酸は不飽和カルボン酸を30モル%以上含むモノマー成分の重合により得られる水溶性ポリカルボン酸であり、nは3〜85の整数を表す。Xは、アミノ基、イミノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と反応し得る基に由来し、該反応後に形成される基を表すが、有ってもよいし無くてもよい。)
    で表される化合物(A)を用いるとともに、
    前記水溶性化合物として、尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合化合物(B)を用いる、
    ことを特徴とする、マイクロカプセルの製造方法。
  3. 前記化合物(A)1重量部に対して前記初期縮合化合物(B)を0.1〜10重量部添加する、請求項2に記載のマイクロカプセルの製造方法。
  4. 前記芯物質に対する前記化合物(A)の配合割合が5〜50重量%である、請求項2または3に記載のマイクロカプセルの製造方法。
  5. 前記分散後の水系媒体にさらに架橋剤をも添加する、請求項2から4までのいずれかに記載のマイクロカプセルの製造方法。
JP2004062827A 2004-03-05 2004-03-05 マイクロカプセルおよびその製造方法 Expired - Fee Related JP4235574B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004062827A JP4235574B2 (ja) 2004-03-05 2004-03-05 マイクロカプセルおよびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004062827A JP4235574B2 (ja) 2004-03-05 2004-03-05 マイクロカプセルおよびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005246320A JP2005246320A (ja) 2005-09-15
JP4235574B2 true JP4235574B2 (ja) 2009-03-11

Family

ID=35027313

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004062827A Expired - Fee Related JP4235574B2 (ja) 2004-03-05 2004-03-05 マイクロカプセルおよびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4235574B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110102330A (zh) * 2019-05-21 2019-08-09 大连理工大学 一种Co@N,S(two)-Kb高分散核壳结构催化剂、制备方法及其应用

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4676718B2 (ja) * 2004-06-02 2011-04-27 セイコーエプソン株式会社 電気泳動表示装置用シートおよびその用途
JP5049738B2 (ja) * 2006-12-06 2012-10-17 株式会社日本触媒 多層マイクロカプセルおよびその製造方法
JP5406058B2 (ja) * 2010-01-19 2014-02-05 株式会社日本触媒 トナー用添加剤および静電荷像現像用トナー
CN114177850B (zh) * 2021-04-14 2024-04-26 云起(青岛)材料科技有限公司 一种空气微胶囊及其制备方法、保暖纤维素纤维及其制备方法和应用

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110102330A (zh) * 2019-05-21 2019-08-09 大连理工大学 一种Co@N,S(two)-Kb高分散核壳结构催化剂、制备方法及其应用

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005246320A (ja) 2005-09-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CA2278993C (en) Low-formaldehyde dispersion of microcapsules of melamine-formaldehyde resins
KR880002539B1 (ko) 마이크로캡슐의 제조방법
US8853284B2 (en) Wax dispersion formulations, method of producing same, and uses
Su et al. Preparation and characterization of polyurethane microcapsules containing n‐octadecane with styrene‐maleic anhydride as a surfactant by interfacial polycondensation
JP5371968B2 (ja) マイクロカプセル、その使用および製造方法
RU2286845C2 (ru) Частицы в форме сердцевины в оболочке и способ их приготовления
KR102593856B1 (ko) 수성 볼펜용 잉크 조성물
JP2012140600A (ja) 蓄熱マイクロカプセルとその製造方法
JP6153944B2 (ja) マイクロカプセル
JP4235574B2 (ja) マイクロカプセルおよびその製造方法
JP5049738B2 (ja) 多層マイクロカプセルおよびその製造方法
EP0475707B1 (en) Hot-melt ink composition
Mikolajek et al. Control of the surface morphology of ceramic/polymer composite inks for inkjet printing
JP4209308B2 (ja) マイクロカプセルの製造方法
JP6718259B2 (ja) ボールペン用水性インク組成物
JP4676718B2 (ja) 電気泳動表示装置用シートおよびその用途
JP5201783B2 (ja) マイクロカプセル
KR20230038208A (ko) 수지 분산 조성물
US11352504B2 (en) Metal particle annular structure, insulator-coated metal particle annular structure, and composition
JPS6111138A (ja) マイクロカプセルの製造方法
JP3175519B2 (ja) ワックス含有水性分散体およびそれを含有して成る水性樹脂組成物
JPWO2018180966A1 (ja) マイクロカプセル及びその製造方法
JP2006198556A (ja) マイクロカプセル
WO2023177360A1 (en) Biodegradable microcapsules based on crystalline materials and synthesis process
JP2023110863A (ja) 記録体及びその製造方法、並びに記録方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050912

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20070125

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080930

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20081030

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20081209

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20081215

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111219

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121219

Year of fee payment: 4

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees