JP2023110863A - 記録体及びその製造方法、並びに記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】記録時におけるヘイズ度変化率が高く、優れた透過性を有する記録体の提供。【解決手段】支持体と、融解性物質、及びバインダを少なくとも含む隠蔽層と、を有する記録体であって、前記融解性物質は、芳香環を含む分岐構造を有するワックスであることを特徴とする記録体である。【選択図】図1A

Description

本発明は、記録体及びその製造方法、並びに記録方法に関する。
従来、感熱記録媒体として、着色層と融解性物質を含む隠蔽層とを積層し、当該隠蔽層を加熱した際に、当該隠蔽層が透明化されることを利用して画像形成を行うワックスタイプの感熱記録紙が広く用いられている。
前記融解性物質であるワックスとしては、例えば、低分子量ポリエチレンやカルナバワックス(例えば、特許文献1~5参照)、高級脂肪酸エステル(例えば、特許文献6参照)、水素化ヒマシ油ワックス(天然ワックス・植物系)(例えば、特許文献7参照)、脂肪族炭化水素のパラフィン(天然ワックス・石油系)(例えば、特許文献8~9参照)、特定の天然ワックス及び特定の合成ワックス(例えば、特許文献10参照)などが提案されている。また、合成ワックスとして、メタン又はエチレン重合によるポリメチレン又はポリエチレン(例えば、非特許文献1参照)なども提案されている。
本発明は、従来における諸問題を解決し、記録時におけるヘイズ度変化率が高く、優れた透過性を有する記録体を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明の記録体は、支持体と、融解性物質、及びバインダを少なくとも含む隠蔽層と、を有する記録体であって、前記融解性物質は、芳香環を含む分岐構造を有するワックスであることを特徴とする。
本発明によると、記録時におけるヘイズ度変化率が高く、優れた透過性を有する記録体を提供することができる。
図1Aは、本発明における記録体の一例を示す概略図である。 図1Bは、本発明における記録体の他の一例を示す概略図である。 図2Aは、本発明における記録体の他の一例を示す概略図である。 図2Bは、本発明における記録体の他の一例を示す概略図である。 図2Cは、本発明における記録体の他の一例を示す概略図である。
上述の特許文献1~10、及び非特許文献1を含む従来技術における画像形成方法は、感熱記録媒体として、着色層と、融解性物質を含む隠蔽層とを積層し、当該隠蔽層を加熱した際に、当該隠蔽層が透明化される記録体を用いる画像形成方法である。即ち、記録時(画像形成時)おける隠蔽層の透過性(ヘイズ度)、及び光透過率の変化を利用した画像形成方式である。
しかしながら、これら従来の提案においては、記録時(画像形成時)における隠蔽層のヘイズ度の低下度合いが少なく、十分な透過性が得られない場合があった。それに伴い、当該隠蔽層を有する記録体を用いて画像形成を行うと、十分な鮮明性が得られない場合があった。
本発明者らが鋭意検討したところ、隠蔽層に含まれる融解性物質として、芳香環を含む分岐構造を有するワックスを使用することで、透過性に優れることを知見した。透過性が改善されるメカニズムとしては、明らかになっていないが、以下の理由であると推察することができる。
芳香環を含む分岐構造を有さない化合物は、直鎖構造の分子間配列を生じやすく、結晶化しやすい。一方で、芳香環を含む分岐構造を有する化合物は、バルキーな(かさ高い)分岐構造により直鎖構造の分子間配列が阻害されるため、結晶化部が少ない。即ち、アモルファス部が多くなり粒子界面が減少することにより、当該粒子界面での光の反射が抑制され、透過性が高くなると考えられる。
したがって、本発明においては、支持体と、融解性物質、及びバインダを少なくとも含む隠蔽層と、を有する記録体であって、前記融解性物質は、芳香環を含む分岐構造を有するワックスであることによって、記録時におけるヘイズ度変化率が高く、優れた透過性を有する記録体を得ることができる。
以下、本発明の記録体について詳細を記載する。
(記録体)
本発明の記録体は、支持体と、融解性物質、及びバインダを少なくとも含む隠蔽層と、を有する記録体であって、必要に応じて、着色層、及びその他の層を有していてもよい。
<支持体>
前記支持体の材質としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、布帛(ナイロン、ポリエステル、綿等)、紙(合成紙、耐洗紙、軽量コート紙、キャストコート紙、アート紙等)などが挙げられる。
前記支持体の形状としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、フィルム、当該フィルムを積層したもの、厚みがあるカード状などが挙げられる。
前記支持体の大きさ、及び構造としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記支持体の形状がフィルム状であるとき、当該フィルム表面に対して表面処理が施されていてもよい。当該表面処理としては、例えば、マット処理、コロナ処理、金属蒸着などが挙げられる。
また、前記支持体は、後述する着色剤を含むことで、着色されていてもよい。
<隠蔽層>
前記隠蔽層は、融解性物質、及びバインダを少なくとも含有し、必要に応じて、その他の成分(A)を含有していてもよい。
<<融解性物質>>
前記融解性物質は、芳香環を含む分岐構造を有するワックスである。
ここで、本明細書における「分岐構造」とは、「主鎖に対する側鎖に水素以外の置換基を有する構造」と定義される。当該「主鎖」は最も長い直鎖を示し、当該「側鎖」は前記主鎖ではない分子鎖を示す。
ここで、本明細書における「ワックス」は、「常温において固体又は半固体である有機物であって、常温から100℃付近までの温度範囲で溶融し、溶融粘度が低いものあり、かつ融点を持つが軟化点を持たないもの」と定義される。
即ち、本明細書における「ワックス」は、一般的な樹脂と比較して非常に溶融粘度が低く、かつ融点以上でれば容易に形状が変化する。したがって、非記録時(非画像形成時)には、隠蔽層内の空隙部における光散乱によって下地を隠蔽することができ、記録時(画像形成時)には、隠蔽層内の空隙部が埋まり、光散乱を抑制することにより透過度を上昇させることができる。
なお、本明細書において、「樹脂」や「ポリマー」と表記されているものは、当該ワックスには該当しない。
前記芳香環を有する分岐構造を含むワックスは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むワックスを示す。
当該一般式(1)中、「A」は結合基、「B」及び「B」は末端基、「X」及び「X」は置換基、「Y」は芳香環基である。前記一般式(1)中、「n」及び「m」は繰り返し単位を示しており、「n」は0~1000の整数、「m」は1~1000の整数である。
当該一般式(1)中、結合基「A」としては、主鎖と芳香環基を繋ぐ基であれば特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、「-(CH)n-」基(n=0~30)、アルコキシ基、エステル基、エーテル基、アゾ基、スルフィド基、ジスルフィド基、アミド基、ウレア基などが挙げられる。
これらの中でも、合成の簡便さという観点から、「-(CH)n-」基(n=0~30)、エステル基、エーテル基が好ましい。
当該結合基「A」は、ワックス中に1種単独で含まれてもよいし、2種以上含まれてもよい。
当該一般式(1)中、末端基「B」及び「B」としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、アルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホニル基、アミノ基、ニトロ基、フェニル基などが挙げられる。当該末端基「B」、及び当該末端基「B」は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
当該一般式(1)中、置換基「X」及び置換基「X」としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、水素基、シアノ基、酸無水物、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホニル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アセチル基、ホルミル基、アルデヒド基などが挙げられる。
当該置換基「X」及び当該置換基「X」は、ワックス中に1種単独で含まれてもよいし、2種以上含まれてもよい。
当該一般式(1)中、芳香環基「Y」としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニル基、アセン基、ピリジン基、フラン基、ピロール基などが挙げられる。当該芳香環基「Y」の一部が、アルキル基、ヒドロキシル基、フェニル基、ハロゲン基、メトキシ基、スルホニル基、シアノ基、アルデヒド基などによって置換されていてもよい。これらの中でも、透過性及び鮮明性に優れるという観点から、フェニル基、アセン基が好ましい。
当該芳香環基「Y」は、ワックス中に1種単独で含まれてもよいし、2種以上含まれてもよい。
前記融解性物質として、芳香環を含む分岐構造を有するワックスを使用することによって、当該融解性物質を含む隠蔽層を、ヘイズ度変化率が高く、優れた透過性を有する透過層に変化させることができる。当該隠蔽層と、後述する着色層と併せて積層すると、当該隠蔽層のヘイズ度が低下した部分においては、着色層の着色部分を認識できるようになり、当該隠蔽層のヘイズ度が高い部分においては、着色層の着色部分が十分に隠蔽されるため、コントラスト差が生じて、鮮明性が高い画像を作製することができる。
本明細書における「ヘイズ度変化率」は、記録前(画像形成前)の記録体におけるヘイズ度に対する、記録前(画像形成前)の記録体におけるヘイズ度と記録後(画像形成後)の記録体におけるヘイズ度との差分の比率である。具体的には、以下の式により、算出することができる。
(式)・・・(記録前の記録体におけるヘイズ度-記録後の記録体におけるヘイズ度)/記録前の記録体におけるヘイズ度
当該ヘイズ度変化率としては、特に制限はないが、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
前記融解性物質の平均粒子径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、1.0μm以上10.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以上7.0μm以下であることがより好ましい。
当該融解性物質の平均粒子径が1.0μm以上であると、粒子間の空隙が小さくなることにより隠蔽性が低下し、非記録時のヘイズ度が低くなるといった問題を解消することができ好適である。
当該融解性物質の平均粒子径が10.0μm以下であると、隠蔽層表面における凹凸が大きくなり、記録時に十分に低いヘイズ度が得られなくなるといった問題を解消することができ好適である。
前記平均粒子径の測定方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、記録体の断面より観察される融解性物質の粒形態から求めることができる。断面観察は、常法により試料を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することができる。
当該TEMによる観察における融解性物質の粒子径測定値と、隠蔽層を形成するために用いる隠蔽層用塗布液における融解性物質の粒子径測定値とは実質的に一致するので、隠蔽層用塗布液における融解性物質の粒径分布によって、隠蔽層形成後における融解性物質の粒径分布を設定することができる。当該隠蔽層用塗布液における融解性物質の体積平均粒子径は、例えば、LA-960(レーザ拡散方式、株式会社堀場製作所製)などにより測定することができる。
前記融解性物質の融点としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、40℃以上180℃以下であることが好ましい。
当該融解性物質の融点が40℃以上であると、記録体保管環境下における不要なヘイズ度の低下により、形成される画像のコントラストが劣化するといった問題を解消することができる。
当該融解性物質の融点が180℃以下であると、記録時の外部刺激において、当該融解性物質が完全に融解せず、透過性が劣化するといった問題を解消することができ好適である。
前記芳香環を有する分岐構造を含むワックスとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
当該芳香環を有する分岐構造を含むワックスの市販品としては、例えば、商品名で、1160H(三井化学株式会社製)、1120H(三井化学株式会社製)などが挙げられる。
<<バインダ>>
前記バインダとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、部分ケン化エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-メタクリル酸ナトリウム共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリアクリル酸、イソブチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴムなどが挙げられる。
これらの中でも、前記支持体に対する結着性、及び画像耐性に優れる点から、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリル酸が好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記バインダの添加量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜設定することができるが、前記隠蔽層中の融解性物質100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下が好ましく、5質量部以上70質量部以下がより好ましい。
当該バインダの添加量が、前記隠蔽層中の融解性物質100質量部に対して5質量部以上であると、前記支持体との結着性が悪くなり、当該隠蔽層の剥離が生じるといった問題を解消することができ好適である。
当該バインダの添加量が、前記隠蔽層中の融解性物質100質量部に対して100質量部以下であると、隠蔽層中の融解性物質の比率が低下することから、記録時のヘイズ度が高くなり、形成される画像のコントラストが低下するといった問題を解消することができ好適である。
<<その他の成分(A)>>
前記その他の成分(A)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、隠蔽助剤、融解助剤、分散剤、着色剤、光熱変換剤などが挙げられる。
-隠蔽助剤-
前記隠蔽助剤としては、特に制限なく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ケイ素、硫酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。
-融解助剤-
前記融解助剤としては、特に制限なく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記融解性物質以外のワックス、単量体状有機疎水性物質などが挙げられる。
前記融解性物質以外のワックスとしては、特に制限なく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルナバワックス、ビーズワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、合成ワックスなどが挙げられる。
前記単量体状有機疎水性物質としては、特に制限なく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビフェニル、o-タ―フェニル、ナフタレン、アントラセンなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
-分散剤-
前記分散剤としては、特に制限なく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
-着色剤-
前記着色剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、アゾ系染顔料、フタロシアニン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、キノフタロン、アニリンブラック、酸化チタン、亜鉛華、酸化クロムなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
-光熱変換剤-
前記光熱変換剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、グラファイト、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、ジチオール金属錯体、ナフトキノン化合物、ジインモニウム化合物、アゾ化合物、酸化鉄、硫化マンガン、セシウム酸化タングステンなどが挙げられる。
前記隠蔽層の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、1μm以上15.0μm以下であることが好ましい。
前記隠蔽層の平均厚みが1μm以上であると、当該隠蔽層自体が透けてしまい、非透過部のヘイズ度高くなるため画像のコントラストが低下するといった問題を解消することができ好適である。
前記隠蔽層の平均厚みが15.0μm以下であると、記録時の熱が十分に伝わらず、透過部における融解性物質が完全に融解しないため、透過性が悪くなるといった問題を解消することができ好適である。
前記隠蔽層の平均厚みの測定方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、隠蔽層の断面を観察することにより測定することができる。断面観察は、常法により試料を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM、JEM-210、日本電子株式会社製)により、断面TEM写真を撮影することによって行うことができる。なお、サンプル数は、10とし、その平均値を平均厚みとすることができる。
<着色層>
前記着色層は、着色剤、及びバインダを含有し、更に必要に応じて、その他の成分(B)を含有していてもよい。
当該その他の成分(B)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、分散剤などが挙げられる。
当該着色剤は、上述の-着色剤-の項目に記載したものと同じものを用いることができ、当該バインダは、上述の<<バインダ>>の項目に記載したものと同じものを用いることができ、当該分散剤は、上述の-分散剤-の項目に記載したものと同じものを用いることができるため、説明を省略する。
前記着色層の形成方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、前記着色剤、前記バインダ、及び必要に応じて前記その他の成分(B)を含む着色層用塗布液を、前記支持体又は前記隠蔽層上にグラビアコータ、ワイヤーバーコータ、ロールコータ等の塗布方法により塗布して、乾燥させることにより形成することができる。
<その他の層>
前記その他の層としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オーバー層などが挙げられる。
<<オーバー層>>
本発明の記録体は、サーマルヘッドによるヘッドマッチング性の向上のため、前記隠蔽層上にオーバー層を設けてもよい。ただし、前記オーバー層を設ける場合には、前記隠蔽層に外的刺激が効率的に与えられることを阻害しないように配することが好ましい。
前記オーバー層としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、例えば、特許第3657072号、特許第3616845号、特許第7073627号、特許第7143952号などに例示されているオーバー層が挙げられる。これらの中でも、画像保護耐久性の観点から、特許第7073627号、及び特許第7143952号に例示されているオーバー層を用いることが好ましい。
前記オーバー層の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、画像保護、及びサーマルヘッドからの熱伝達性の観点から、0.01μm以上50μm以下であることが好ましい。
前記オーバー層の平均厚みの測定方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、オーバー層の断面を観察することにより測定することができる。断面観察は、常法により試料を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM、JEM-210、日本電子株式会社製)により、断面TEM写真を撮影することによって行うことができる。なお、サンプル数は、10とし、その平均値を平均厚みとすることができる。
ここで、本発明の記録体の一例について図面を参照して説明する。ただし、本発明の記録体の用途は、これらの実施形態に何ら限定されるものではない。
なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
図1Aは、本発明の記録体の一例を示す概略図であり、図1B~図2Cは、本発明の記録体の他の一例を示す概略図である。
図1Aの記録体10は、支持体2と、当該支持体2上に設けられた隠蔽層1とを有している。図1Bの記録体10は、隠蔽層1と、当該隠蔽層1上に設けられた支持体2とを有している。
図2Aは、支持体2の片面に着色層3が設けられており、支持体2における着色層3が設置されていない面に隠蔽層1が設けられている。図2Bは、支持体2、着色層3、隠蔽層1の順で積層されている。図2Cは、着色層3、隠蔽層1、支持体2の順で積層されている。なお、図示を省略しているが、隠蔽層2の上面にオーバー層を設けることもできる。
ここで、本発明の記録体の層構成としては、下層から順に、(a)隠蔽層、支持体、(b)支持体、隠蔽層、(c)隠蔽層、支持体、着色層、(d)隠蔽層、着色層、支持体、及び(e)支持体、隠蔽層、着色層のいずれかの形態をとる。
(記録体の製造方法)
本発明の記録体の製造方法は、基体上に隠蔽層用塗布液を塗布する隠蔽層形成工程を含み、必要に応じて、その他の工程を含んでいてもよい。
なお、当該「隠蔽層」は、上述の(記録体)の項目に記載したものと同じであるため、説明を省略する。
<隠蔽層形成工程、及び隠蔽層形成手段>
前記隠蔽層形成工程は、基体上に隠蔽層用塗布液を塗布する工程である。当該隠蔽層形成工程は、隠蔽層形成手段によって好適に実施することができる。
当該隠蔽層形成工程は、必要に応じて、その他の工程を含んでいてもよい。当該その他の工程は、その他の手段によって好適に実施することができる。
ここで、当該基体としては、上述の(記録体)の項目に記載した<支持体>又は<着色層>のことを示す。前記<支持体>及び前記<着色層>は、上述の(記録体)の項目に記載したものと同じであるため、説明を省略する。
ここで、当該隠蔽層用塗布液としては、上述の(記録体)の項目に記載した<隠蔽層>の材料、即ち、<<融解性物質>>及び<<バインダ>>を含み、必要に応じて<その他の成分(A)>を含むものを示す。前記<<融解性物質>>、前記<<バインダ>>、及び<その他の成分(A)>は、上述の(記録体)の項目に記載したものと同じであるため、説明を省略する。
当該隠蔽層用塗布液の製造方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、以下の方法などが挙げられる。
融解性物質としての、芳香環を含む分岐構造を有するワックスをエタノール中に添加し、分散機(例えば、六筒分散機、アイメックス株式会社製)を用いて湿式粉砕を行うことでワックス分散液を作製する。当該ワックス分散液と、前記<<バインダ>>と、必要に応じて前記<その他の成分(A)>とを混合し、隠蔽層用塗布液を作製することができる。
当該隠蔽層形成手段は、基体上に隠蔽層用塗布液を塗布する手段である。当該隠蔽層形成手段としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、グラビアコータ、ワイヤーバーコータ、ロールコータ等による塗布手段が挙げられる。
<その他の工程、及びその他の手段>
当該その他の工程としては、乾燥工程などが挙げられる。当該その他の手段としては、乾燥手段などが挙げられる。当該乾燥工程は、当該乾燥手段によって好適に実施することができる。
(記録方法)
本発明の記録方法は、記録体に記録する記録方法であって、前記記録体における着色の色相と、前記記録体における隠蔽層の色相とのコントラストにより画像を形成することを特徴とする。
具体的には、前記記録方法は、外部刺激によって隠蔽層中に含まれる融解性物質を融解し、当該隠蔽層を透過させることで透過部と非透過部とのコントラスト差によって画像を形成する方法である。
前記記録体は、着色層を有する上述の記録体と同じものであるため、説明を省略する。
前記外部刺激としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱、光、電磁波、圧力などが挙げられる。
当該外部刺激が熱である場合、加熱手段として熱ペンやサーマルヘッドなどが挙げられる。
前記記録体中に光熱変換剤が含まれていれば、レーザ光を用いた画像形成も可能である。
前記記録方法の具体例としては、支持体乃至着色層上面に、隠蔽層として白色不透明の融解性物質を塗布した層に対して、熱ペン等の加熱体を当てることで表面の融解性物質を融かし、着色層を顕色させる方法などが挙げられる。この場合、染料等を用いた感熱発色方式に比し、耐光性や耐温湿性等に強い利点を持ち、着色層の色を変えることでモノカラーでの発色が可能である。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明の範囲はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断りのない限り、「質量部」及び「質量%」である。
(実施例1)
<隠蔽層用塗布液の調製>
融解性物質としての、芳香環を含む分岐構造を有するワックス(1160H、三井化学株式会社製)を固形分20質量%になるようにエタノール中に添加した。六筒分散機(アイメックス株式会社製)を用いて、湿式粉砕してワックス分散液を作製した。レーザ回折散乱式粒子径分布測定装置(LA-960、株式会社堀場製作所製)を用いて、当該ワックス分散液におけるワックスが、体積平均粒子径5μm以下に粉砕されていることを確認した。
次に、当該ワックス分散液100部と、ポリアクリル酸水溶液(BASFジャパン株式会社製、固形分34質量%)5部とを混合し、隠蔽層用塗布液を得た。
<隠蔽層用塗布液の塗工>
支持体としての、平均厚み20.0μmのポリエステルフィルム(ルミラー、東レ株式会社製)の片面に隠蔽層用塗布液を塗布し、40℃で30秒間乾燥して、平均厚み7.0μmの隠蔽層を形成し記録体を得た。
<隠蔽層における融解性物質の平均粒子径の測定>
隠蔽層における融解性物質の平均粒子径は、隠蔽層の断面より観察される融解性物質の粒形態から求めた。断面観察は、常法により試料を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM、JEM-210、日本電子株式会社製)により、断面TEM写真を撮影した。断面TEM写真中5個の融解性物質の粒子径を測定し、その平均値を融解性物質の平均粒子径とした。
<平均厚みの測定>
各層の平均厚みは、各層の断面を観察することにより求めた。断面観察は、常法により試料を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM、JEM-210、日本電子株式会社製)により、断面TEM写真を撮影した。サンプル数は10とし、その平均値を平均厚みとした。
(実施例2~3、比較例1~5)
前記<隠蔽層用塗布液の調製>において、融解性物質を表1~2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~3、及び比較例1~5の記録体を作製した。なお、比較例5の酸化ポリエチレンワックスは、芳香環を含まないが分岐構造を有するワックスである。
(実施例4~5)
前記<隠蔽層用塗布液の調製>において、以下の合成例1~2により得られたワックスに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4~5の記録体を作製した。
(合成例1:実施例4の芳香環を含む分岐構造を有するワックス合成)
エチレン系重合体ワックス(HP10A、三井化学株式会社製)100gを、攪拌しながら160℃に加熱し溶融させた。次いで、温度を保持した状態で、溶融状態の1-エテニル-4-エトキシベンゼン(Sigma-Aldrich Japan製)35g、及びジ-tert-ブチルペルオキシド(Sigma-Aldrich Japan製)6gを、2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応させた後、溶融状態のまま真空中(10mmHg)で1時間かけて脱気処理して揮発分を除去した。その後、冷却して実施例4の芳香環を含む分岐構造を有するワックスを得た。
(合成例2:実施例5の芳香環を含む分岐構造を有するワックス合成)
合成例1における1-エテニル-4-エトキシベンゼンを、4-エテニル-1,1’-ビフェニル(Sigma-Aldrich Japan製)に変更した以外は同様の方法で、実施例5の芳香環を含む分岐構造を有するワックスを得た。
Figure 2023110863000003
Figure 2023110863000004
[透過性の評価]
実施例1~5、及び比較例1~5の記録体を、120℃ホットプレートにて隠蔽層非塗工面より30秒間加熱後、常温で30秒間放冷した。その後、ヘイズメータ(HZ-1、スガ試験機株式会社製)を用いて測定を行い、下記評価基準に基づき評価した。結果を表3に示した。
―評価基準―
〇:ヘイズ度が、20未満である
×:ヘイズ度が、20以上である
[鮮明性の評価]
<着色層用塗布液の作製>
着色剤としてのカーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製)100部と、ポリアクリル酸水溶液(BASFジャパン株式会社製、固形分34質量%)150部とを、固形分30質量%になるようにエタノール中に添加した。六筒分散機(アイメックス株式会社製)を用いて湿式粉砕し、レーザ回折散乱式粒子径分布測定装置(LA-960、株式会社堀場製作所製)を用いて、前記カーボンブラックが、体積平均粒子径0.2μm以下に粉砕されていることを確認し、着色層用塗布液を得た。
<着色層用塗布液の塗工>
実施例1~5、及び比較例1~5の記録体において、隠蔽層用塗布液が塗工されていない支持体面に着色層用塗布液を塗布し、40℃で30秒間乾燥して、平均厚み1μmの着色層を形成した。
実施例1~5、及び比較例1~5の記録体を120℃ホットプレートにて隠蔽層非塗工面より30秒間加熱後、常温で30秒間放冷した。その後、反射濃度計(濃度分光濃度計、x-lite社製)を用いて測定を行い、下記評価基準で評価した。
―評価基準―
〇:反射濃度値が、1.20以上である
×:反射濃度値が、1.20未満である
Figure 2023110863000005
表3の結果から、実施例1~5の記録体は、比較例1~3及び5の記録体に比べて、高い透過性及び高い鮮明性が得られることが分かった。また、比較例4は加熱前の透過性が高く、下地を透過していることから加熱後との変化が見られず、記録体としての体をなしていなかった。
(応用例1)
<隠蔽層用塗布液の調製>
融解性物質としての、芳香環を含む分岐構造を有するワックス(1160H、三井化学株式会社製)を固形分20質量%になるようにエタノール中に添加した。六筒分散機(アイメックス株式会社製)を用いて湿式粉砕して、ワックス分散液を作製した。レーザ回折散乱式粒子径分布測定装置(LA-960、株式会社堀場製作所製)を用いて、当該ワックス分散液におけるワックスが、体積平均粒子径5μm以下に粉砕されていることを確認した。
光熱変換剤としての、セシウム酸化タングステン(住友金属鉱山株式会社製)100部と、ポリアクリル酸(BASFジャパン株式会社製)50部とを、固形分20質量%になるようにエタノール中に添加した。六筒分散機(アイメックス株式会社製)を用いて湿式粉砕して、セシウム酸化タングステン分散液を作製した。レーザ回折散乱式粒子径分布測定装置(LA-960、株式会社堀場製作所製)を用いて、当該セシウム酸化タングステン分散液における前記セシウム酸化タングステンが、体積平均粒子径0.1μm以下に粉砕されていることを確認した。
前記ワックス分散液100部と、前記セシウム酸化タングステン分散液0.5部と、ポリアクリル酸水溶液(BASFジャパン株式会社製、固形分34質量%)6部とを混合し、隠蔽層用塗布液を得た。
<隠蔽層用塗布液の塗工>
支持体としての、平均厚み20.0μmのポリエステルフィルム(ルミラー、東レ株式会社製)の片面に隠蔽層用塗布液を塗布し、40℃で30秒間乾燥して、平均厚み7.0μmの隠蔽層を形成し記録体を得た。
[透過性の評価]
半導体レーザ光源として、半導体レーザ LIMO25-F100-DL808(中心波長:808nm、LIMO社製)を備えた半導体レーザ装置を用いて、上記記録体に照射距離152mm、線速1,000mm/sとなるように調整して画像を記録した。このとき、記録エネルギーを5mJ/mm~30mJ/mmとなるように画像記録を行い、飽和濃度になる記録エネルギーを飽和記録エネルギーとした。記録された記録体を、ヘイズメータ(HZ-1、スガ試験機株式会社製)を用いて透過性の測定を行い、下記評価基準で評価した。結果を表4に示した。
―評価基準―
〇:ヘイズ度が、20未満である
×:ヘイズ度が、20以上である
Figure 2023110863000006
表4の結果から、応用例1の記録体は、高い透過性を有することが分かった。
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1>
支持体と、
融解性物質、及びバインダを少なくとも含む隠蔽層と、を有する記録体であって、
前記融解性物質は、芳香環を含む分岐構造を有するワックスであることを特徴とする記録体である。
<2>
前記融解性物質は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む、前記<1>に記載の記録体である。
一般式(1)中、「A」は結合基、「B」及び「B」は末端基、「X」及び「X」は置換基、「Y」は芳香環基、「n」は0~1000の整数、「m」は1~1000の整数である。
<3>
前記芳香環基は、フェニル基、及びアセン基のいずれかである、前記<2>に記載の記録体である。
<4>
前記融解性物質の平均粒子径は、1.0μm以上10.0μm以下である、前記<1>から前記<3>のいずれかに記載の記録体である。
<5>
前記バインダの含有量は、前記隠蔽層中の融解性物質100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下である、前記<1>から前記<4>のいずれかに記載の記録体である。
<6>
着色層を有する、前記<1>から前記<5>のいずれかに記載の記録体である。
<7>
隠蔽層用塗布液を基体上に塗布する隠蔽層形成工程を含むことを特徴とする記録体の製造方法である。
<8>
前記<6>に記載の記録体に記録する記録方法であって、
前記着色層の色相と、前記隠蔽層の色相とのコントラストにより画像を形成することを特徴とする記録方法である。
前記<1>~<6>に記載の記録体、前記<7>に記載の記録体の製造方法、及び前記<8>に記載の記録方法によれば、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
1 隠蔽層
2 支持体
3 着色層
10 記録体
特開平07-290838号公報 特開平08-073835号公報 特開平08-183256号公報 特開平08-183257号公報 特開昭63-141782号公報 特開2004-345111号公報 特許第0252967号公報 特許第0467966号公報 特許第0488717号公報 特許第0664015号公報
友重 徹、藤井 弘保、「合成ワックス」、高分子、1977年、26巻、9月号、p.637-642

Claims (8)

  1. 支持体と、
    融解性物質、及びバインダを少なくとも含む隠蔽層と、を有する記録体であって、
    前記融解性物質は、芳香環を含む分岐構造を有するワックスであることを特徴とする記録体。
  2. 前記融解性物質は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む、請求項1に記載の記録体。
    一般式(1)中、「A」は結合基、「B」及び「B」は末端基、「X」及び「X」は置換基、「Y」は芳香環基、「n」は0~1000の整数、「m」は1~1000の整数である。
  3. 前記芳香環基は、フェニル基、及びアセン基のいずれかである、請求項2に記載の記録体。
  4. 前記融解性物質の平均粒子径は、1.0μm以上10.0μm以下である、請求項1から3のいずれかに記載の記録体。
  5. 前記バインダの含有量は、前記隠蔽層中の融解性物質100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下である、請求項1から3のいずれかに記載の記録体。
  6. 着色層を有する、請求項1から3のいずれかに記載の記録体。
  7. 基体上に隠蔽層用塗布液を塗布する隠蔽層形成工程を含むことを特徴とする記録体の製造方法。
  8. 請求項6に記載の記録体に記録する記録方法であって、
    前記着色層の色相と、前記隠蔽層の色相とのコントラストにより画像を形成することを特徴とする記録方法。

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