JP4233251B2 - 2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸n−ブチルとの共重合体による難水溶性化合物の可溶化方法 - Google Patents

2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸n−ブチルとの共重合体による難水溶性化合物の可溶化方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、MPCという)とメタクリル酸n−ブチル(以下、BMAという)との水溶性共重合体(以下、PMBという)を用いて、難水溶性薬物を水溶液中に均一に可溶化する技術に関し、より詳細には、難水溶性の抗癌剤や抗ウイルス剤などの薬物の可溶化技術に関する。
【0002】
【従来の技術及び解決すべき課題】
現在、多種多様な化学構造を有する化合物が、抗癌剤、抗ウイルス剤等の医薬として期待されており、また、実際に臨床治療に用いられている。しかしながら、極めて優れた薬理効果を有しているにも拘わらず、水に対する溶解性が極めて低いために投与方法が制限されたり、適切な濃度での臨床適用が困難であり、十分な治療効果が得られない化合物も少なくない。
【0003】
例えば、下記化学構造を有する難水溶性のタキソール(正式名:パクリタキセル)は、抗癌剤として優れた(いわゆる、切れ味の鋭い)薬理活性を有し、近年、広く臨床で用いられるようになってきている。
【0004】
【化2】
(分子量853.9)
タキソールは、針葉樹イチイの樹皮に微量に含まれている物質であり、主に、胃癌、乳癌、卵巣癌、肺癌に対して抗癌作用を示すことが知られている。タキソールの作用機序は次のとおりである。タキソールは細胞骨格を構成する微小管の基本タンパク質であるチューブリンに結合して微小管を過重合させ、細胞分裂を妨げる働きをする。癌細胞は、健康な細胞よりも頻繁に分裂を繰り返すので、タキソールは癌細胞を優先的に攻撃する。
【0005】
日本では1997年に、卵巣癌、非小細胞癌、乳癌への適用が認可されており、米国では、この他にカポジ肉腫にも用いられている。従来の化学療法剤では、抗癌作用が認められなかった患者に対してタキソールを投与したところ、約30%の患者で効果が認められ、今後の臨床使用の拡大が期待されている。
【0006】
しかしながら、タキソールは、上記のように、優れた薬理活性を発揮するのであるが、水に対する溶解性が極めて低い(溶解度1μg/mL以下)。そのため、投与方法に制限が設けられ、十分な治療効果が得られていないのが現状である。
【0007】
通常、癌患者に対してタキソールを投与するには、タキソール30 mgを、溶解補助剤であるポリオキシエチレンヒマシ油及び無水エタノールを用いて500 mlの生理食塩水に溶解した薬液(タキソール濃度:0.06 mg/mL)を、3時間かけて点滴する。さらに、有効量を達成するためには、この点滴を一日数回行わなければならず、患者にとって大きな負担となっている。
【0008】
また、タキソールを水に溶解させるための溶解補助剤である上記ポリオキシエチレンヒマシ油及び無水エタノールとの混合溶媒(界面活性剤として機能する)に起因する非常に重篤な副作用(例えば、初期ショックによる死亡や過敏症など)の発現が問題となっている。難水溶性薬物の可溶化には、一般に界面活性剤が使用されるため、上記のような界面活性剤による副作用の発生は多発している問題である。
【0009】
さらに、上記の副作用の他、タキソールそれ自体が有する、アレルギー反応に似た強い副作用が認められ、例えば、白血球の顕著な減少、発熱、脱毛、皮膚のしびれ感等の知感異常などが報告されている。白血球が減少した場合には白血球減少を改善する薬物を投与するなどの対症療法を行ったり、知感異常が生じたら薬剤投与量を減らすなどの対処をするなど、治療が非常に煩雑となることも多い。このような煩雑さは、患者に対して精神的、肉体的な負担が大きく、QOL(Quality of life)の観点からも問題とされている。
【0010】
タキソール以外にも、多くの難水溶性薬物において、タキソールと類似した問題が生じている。難水溶性薬物を高濃度で水に溶解させる一方、副作用を発生させない生体適合性の良い溶解補助剤を使用して、高濃度の薬物水溶液を調製することができれば、患者への負担を大きく軽減し、且つ、薬物本来の優れた薬理活性を有効に活用することが可能となり、治療効果が改善される。すなわち、難水溶性薬物の水に対する溶解性の向上は、より効果的かつ信頼性のある薬物療法の実現を可能にすると期待される。
【0011】
そこで、本発明は、難水溶性の薬物、特に抗癌剤、抗ウイルス剤等を水溶液として均一に溶解する技術を開発することを課題とした。
【0012】
ところで、本発明者である石原は、これまで、生体適合性に優れた、リン脂質極性基を有する単量体である2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下「MPC」という)と疎水性の単量体であるメタクリル酸n−ブチル(以下「BMA」という)の共重合体(以下「Poly(MPC-co-BMA)」という)を開発し、特許出願を行い、特許を取得している(特許第2890316号)。また、上記共重合体を、バイオセンサーの生体適合性を向上させるために用いることを提案し、すでに特許を取得している(特許第2947298号)。
【0013】
さらに、石原は、Polymer Journal, Vol. 31, No. 12, pp1231-1236 (1999)において、上記共重合体のうち、水溶性のPMB30W(後述する)が、疎水性薬物を、その多分子会合体(ポリマーアグリゲート)内部に安定に保持する、新規な薬物キャリアとしての利用可能性を示唆している。しかしながら、具体的な難水溶性薬物の可溶化及びその可溶化の程度については何ら言及していない。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは、鋭意検討を行い、水溶性の2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とメタクリル酸n−ブチル(BMA)との水溶性共重合体(PMB)の水溶液に、難水溶性薬物を混合することより、高濃度の均一な薬物水溶液が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0015】
すなわち、本発明の第1の態様は、難水溶性薬物を、後述する一般式(I)で示される繰り返し単位を有し、分子量5000以上を有する2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とメタクリル酸n−ブチル(BMA)との水溶性共重合体(以下、PMBということがある)の水溶液中に溶解させることを特徴とする、難水溶性薬物の可溶化方法を提供する。
【0016】
本発明においては、難水溶性薬物は、予め医薬的に許容可能な有機溶媒に溶解した溶液として、PMB水溶液に滴加・混合することが好ましい。
【0017】
本発明においては、難水溶性薬物とPMB水溶液との混合物を、加熱することによって、難水溶性薬物を可溶化させてもよい。
【0018】
後述する一般式(I)において、n:mは0.25:0.75〜0.95:0.05の範囲内であり、好ましくは0.25:0.75〜0.90:0.10の範囲内である。Rはブチル基、ステアリル基及びベンジル基からなる群から選択されることが好ましい。特に、n:mが0.30:0.70であり、Rがブチル基であることが好ましい。
【0019】
本発明においては、難水溶性薬物は、1.0μg/mL以下の水溶性を有し、且つ、24.5〜30.0 [J/m3]1/2・10-3の範囲の溶解度パラメーターを有する溶媒に溶解可能な化合物であることが好ましい。より具体的には、難水溶性薬物は、タキソール、アムホテリシンB、カンプトテシン及びアドリアマイシンからなる群から選択されることが好ましく、タキソールであることが特に好ましい。
【0020】
本発明においては、医薬的に許容可能な有機溶媒は、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドからなる群から選択されることが好ましい。
【0021】
本発明においては、水溶性共重合体(PMB)の水溶液の濃度は、0.001〜20重量%の範囲内であることが好ましく、0.1〜10重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0022】
本発明の第2の態様は、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とメタクリル酸n−ブチル(BMA)との水溶性共重合体(PMB)によって、水に対する溶解度の100倍以上の濃度で水可溶化された難水溶性薬物を含有することを特徴とする医薬組成物を提供する。
【0023】
本発明においては、難水溶性薬物は、タキソール、アムホテリシンB、カンプトテシン及びアドリアマイシンからなる群から選択されることが好ましく、タキソールであることが特に好ましい。
【0024】
本発明の第3の態様は、少なくともタキソール、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とメタクリル酸n−ブチル(BMA)との水溶性共重合体(PMB)及び水を含み、0.1〜25mg/mLの濃度でタキソールを含有する抗癌剤組成物;少なくともアムホテリシンB、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とメタクリル酸n−ブチル(BMA)との水溶性共重合体(PMB)及び水を含み、0.1〜20mg/mLの濃度でアムホテリシンBを含有する抗真菌剤組成物;少なくともカンプトテシン、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とメタクリル酸n−ブチル(BMA)との水溶性共重合体(PMB)及び水を含み、0.1〜20mg/mLの濃度でカンプトテシンを含有する抗癌剤組成物;及び、少なくともアドリアマイシン、請求項1に記載の2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とメタクリル酸n−ブチル(BMA)との水溶性共重合体(PMB)及び水を含み、0.1〜10mg/mLの濃度でアドリアマイシンを含有する抗癌剤組成物を提供する。
【0025】
本発明の第4の態様は、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とメタクリル酸n−ブチル(BMA)との水溶性共重合体(PMB)からなる、タキソールのための可溶化剤を提供する。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0027】
本発明の第1の態様である難水溶性薬物の可溶化方法は、難水溶性薬物を、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とメタクリル酸n−ブチル(BMA)との水溶性共重合体(PMB)の水溶液中に溶解させることを特徴とする。
【0028】
本発明において、「難水溶性薬物」とは、水への溶解性が1.0μg/mL以下である薬物をいう。本発明の方法で可溶化可能な難水溶性薬物は、24.5〜30.0 [J/m3]1/2・10-3の範囲の溶解度パラメーターを有する有機溶媒に溶解可能な化合物であればよい。このような溶解度パラメーターを有する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。
【0029】
本発明によって可溶化される難水溶性薬物の具体例としては、タキソール、アムホテリシンB、カンプトテシン、アドリアマイシンなどが挙げられ、これらのうち、タキソールは、水に対する溶解性を飛躍的に向上でき、極めて高濃度の水溶液が得られることから、特に好ましい。
【0030】
本発明において、「医薬的に許容可能な有機溶媒」とは、例えば、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)の他、医薬品の製造において通常に用いられている有機溶媒をいう。本発明の方法によって製造された薬液は、患者に投与されるものであるから、生体に悪影響を及ぼさない溶媒を用いることが必要とされるためである。
【0031】
本発明で用いる2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とメタクリル酸n−ブチル(BMA)との水溶性共重合体(PMB)は、一般式(I)
【0032】
【化3】
(式中、n:mは0.25:0.75〜0.95:0.05の範囲内であり、Rは水素原子又は脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である)で示される繰り返し単位を有し、分子量5000以上を有する水溶性の共重合体である。
【0033】
PMBは、優れた血液適合性を有し、生体に異物として認識されず、低濃度において多分子会合体(ポリマーアグリゲート)を形成し、安定な疎水性ドメインを水溶媒系に構築することができ、この会合体内部の疎水領域を利用して難水溶性薬物を水に可溶化せしめる機能を果たす。
【0034】
上記一般式(I)において、n:mは、好ましくは0.25:0.75〜0.90:0.10の範囲内、より好ましくは0.30:0.70〜0.80:0.20の範囲内、特にn:mが0.30:0.70であることが好ましい。
【0035】
上記一般式(I)において、Rとしては、ブチル基、ステアリル基又はベンジル基であることが好ましく、ブチル基であることが特に好ましい。
【0036】
上記一般式(I)において、n:mが0.30:0.70であり、Rがブチル基である、分子量50000のPMB(以下、PMB30Wという)が特に好ましい。PMB30Wの化学構造を下記に示す。
【0037】
【化4】
PMB30Wは、疎水性ユニット(メタクリル酸n−ブチル(BMA)ユニット)を70 mol%含むにも拘わらず水溶性であり、かつ水中に安定な疎水性ドメインを構築することができ、疎水性物質を安定に内包することができることは、前記Polymer Journal, Vol. 31, No. 12, pp1231-1236 (1999)に開示されている。
【0038】
本発明で用いるPMBは、Polymer J.,22,35,355(1990)に記載の方法に従って製造することができる。すなわち、MPC及びBMAを、好ましくは2:98〜50:50、更に好ましくは5:95〜40:60のモル比で用い、好ましくはテトラヒドロフラン及びエタノールの混合溶媒中、開始剤、好ましくはα、α´−アゾビスイソブチロニトリルの存在下で、好ましくは60〜65℃で4〜20時間反応させることにより合成することができる。
【0039】
本発明の方法において、PMB水溶液の濃度は、0.001〜20重量%であることが好ましく、0.1〜10重量%であることがより好ましい。0.001重量%未満の濃度では、難水溶性薬物を可溶化させる機能が不十分であり、また、20重量%より高い濃度では、PMB水溶液の粘性が急激に高くなるため、好ましくない。
【0040】
次に、本発明の方法による、難水溶性薬物の可溶化手順について説明する。水溶液としたときに、最終濃度が所望の薬物濃度となる量の難水溶性薬物を、PMB水溶液に添加・混合する。難水溶性薬物は、それを溶解する医薬的に許容可能な有機溶媒の少量に溶解してからPMB水溶液に滴加・混合することが望ましい。これは、難水溶性薬物の粉末を、そのままPMB水溶液に添加・混合するよりも、より可溶化されやすく、均一な水溶液が得られるからである。なお、均一な水溶液を得るためには、難水溶性薬物を溶解する有機溶媒それ自体もPMBに溶解できるものでなければならない。
【0041】
また、より高濃度の薬液を得たい場合及び難水溶性薬物とPMB水溶液との混合物が懸濁液となり、薬物が溶解しない場合には、この混合物を加熱して薬物を溶解させ、溶解した薬液を冷却することによって透明で均一な高濃度の薬液を得ることができる。加熱によって一旦溶解した薬物は冷却されても溶解状態のままである。これは、加熱により、PMB会合体の運動性が上昇し、薬物がPMB会合体の疎水領域に捕獲されやすくなるためと考えられる。また、一旦疎水領域に取り込まれた薬物は、PMB会合体とのコンジュゲートとして安定化されるため、冷却しても、溶解した状態が維持される。PMBのこのような性質により、より高濃度の患者に投与可能な薬液を提供することができるのである。
【0042】
次に、本発明の医薬組成物は、前記PMBによって水可溶化された難水溶性薬物を含有することを特徴とし、難水溶性薬物は、タキソール、アムホテリシンB、カンプトテシン及びアドリアマイシンからなる群から選択されることが好ましい。
【0043】
これらの難水溶性薬物は、水への溶解度が極めて低く、従来の溶解補助剤を用いても十分な濃度の水溶液が得られていないのが現状である。本発明の医薬組成物は、従来の溶解補助剤を用いた場合に比べ、約10〜800倍もの高濃度の水溶液である。PMBは生体適合性が良く、従来の溶解補助剤のような副作用の問題が無いので、本発明の医薬組成物を用いることによって、治療効果を大きく改善することができる。
【0044】
次に、本発明の治療剤は、少なくともタキソール、アムホテリシンB、カンプトテシン又はアドリアマイシンのいずれか1種と、PMB及び水を含み、特定の濃度で各薬物を含有する抗癌剤組成物又は抗真菌剤組成物である。
【0045】
本発明の治療剤は、従来の各治療剤組成物に比べて、高濃度の有効成分(薬物)を含有するため、高い治療効果が得られる。また、生体適合性の良いPMBを用いて可溶化しているため、従来の溶解補助剤による副作用が発生しない。
【0046】
本発明のタキソールのための可溶化剤は、上記PMBからなることを特徴とする。後述する試験例5に示されるように、PMBは、種々の難水溶性薬物を可溶化できるが、特に、タキソールについては、他の薬物に比べて極めて高濃度に可溶化することができる。従って、PMBはタキソールを水に溶解させるための可溶化剤として極めて有用である。
【0047】
【実施例】
以下、試験例及び実施例を記載して発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
試験例1
下記表1に記載のPMBの5重量%水溶液及び対照としてBMAユニットを全く含まないポリ(MPC)の10 mLに、1.0 mg/mL濃度のタキソールのエタノール溶液1 mLを室温で滴加・混合し、0.22μmのフィルタを用いて濾過した後、濾液について229 nmの波長でUV測定を行い、水溶液中のタキソール濃度を求めた。得られたタキソール濃度を下記表1に示す。
【0048】
【表1】
表1の結果から、上記PMBのうち、タキソールを最も高濃度に可溶化させることができるのは、PMB30Wであることがわかった。
試験例2
下記表2に示す濃度に調製したPMB30W水溶液及び対照として蒸留水の10 mLに、2.0 mg/mL濃度のタキソールのエタノール溶液1 mLを室温で滴加・混合し、試験例1と同様に処理して、水溶液中のタキソール濃度を求めた。得られたタキソール濃度を下記表2に示す。
【0049】
【表2】
表2の結果から、タキソール2.0 mgを溶解するには、PMB30W水溶液の濃度は、約0.09〜9重量%の範囲が特に好ましいことがわかる。
試験例3
50 mg/mLのタキソールのエタノール溶液1 を、100 mg/mL(0.1重量%)のPMB30W水溶液10 mLに室温で滴加・混合したところ、白濁状態であった。この混合物を70℃まで加熱すると、PMB30W会合体の運動性が上昇することにより、タキソールが溶解して透明になり、5.0 mg/mLの高濃度のタキソール水溶液を得た。一旦透明になったタキソール水溶液は、その後冷却しても透明のままで安定であった。
【0050】
上記実験結果から、加熱することにより、PMB30W水溶液中にタキソールを完全に溶解した、5.0 mg/mLの水溶液を得ることができることがわかる。
試験例4
下記表3に示す難水溶性薬物が、どのような溶解度パラメーター範囲の有機溶媒に可溶であるかを検討した。一方、如何なる範囲の溶解度パラメーターを有する有機溶媒であれば、PMB30Wが可溶化できるかを検討した。本試験により、如何なる種類の難水溶性薬物の有機溶媒溶液をPMB30Wによって可溶化できるかを検討した。
【0051】
下記表3に示す薬物1 mgを、表3に示す各溶媒1 mLに添加・混合し、溶解した場合を「○」、溶解しなかった場合を「×」で示した。
【0052】
【表3】
表3の結果から、PMB30Wを用いて可溶化できる難水溶性薬物は、水〜DMSOの範囲、すなわち、溶解度パラメーターが24.5〜30.0 [J/m3]1/2・10-3の範囲の有機溶媒に可溶な化合物であることがわかる。
試験例5
タキソール、アムホテリシンB及びカンプトテシン各2 mgをそれぞれDMSO 1 mLに溶解してDMSO溶液とし、下記表4に記載の各濃度のPMB30W水溶液10 mLに滴加・混合し、上記試験例と同様に濾過した。得られた濾液について、タキソールの場合には、HPLCによって、アムホテリシンB及びカンプトテシンの場合にはUV吸収によって可溶化量を測定した。
【0053】
対照として、各薬物のDMSO溶液1 mLを純水10 mLに滴加・混合し、10重量%DMSO水溶液とし、上記と同様に濾過した。得られた濾液について、上記と同様にして得られた10重量%DMSO水溶液中の各薬物の可溶化量を基準(1.0)として、上記PMB30W水溶液での可溶化量の比を下記表4に示す。
【0054】
【表4】
表4の結果から、PMB30W水溶液を用いることにより、いずれの薬物も、10重量%DMSO水溶液に比べて数倍から数百倍多量に可溶化できることがわかる。特に、タキソールについては、PMB30W濃度が0.01重量%でも、15倍の量が可溶化でき、PMB30W濃度が0.1重量%以上では、驚くべきことに580〜735倍という量が可溶化でき、他の難水溶性薬物に比べても、極めて高濃度の水溶液が得られることがわかる。
実施例1: PMB30W によるタキソールの可溶化
タキソール10 mgをメタノール1 mLに溶解して、メタノール溶液とした後、10 mg/mL(1重量%)のPMB30W水溶液10 mLに室温で滴加・混合した。得られた水溶液を上記試験例1と同様に濾過し、UV測定を行った。得られた水溶液中には凝集・沈殿は確認されず、濾液中に、全量のタキソールが可溶化されている(タキソール濃度:1.0 mg/mL)ことが確認された。
【0055】
これに対し、対照として、上記タキソールのメタノール溶液を、純水10 mLに滴加・混合したところ、凝集・沈殿が認められた。これを上記と同様に濾過後、UV測定を行ったところ、濾液中には可溶化されたタキソールは認められなかった。
実施例2〜4
タキソールの代わりに、アムホテリシンB、カンプトテシン又はアドリアマイシンを用いた以外は実施例1と同様に、PMB30W水溶液及び対照として純水への溶解性を検討したところ、タキソールと同様の結果が得られた。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、生体適合性の良いPMBを用いて難水溶性薬物を高濃度で水に溶解することができるため、従来の界面活性剤などの溶解補助剤に起因するような副作用を生じることが無く、難水溶性薬物の臨床での適用を容易にすると共に、患者への負担を軽減することができる。
【0057】
本発明によれば、特にタキソールを極めて高い濃度で溶解させることができるので、今後のタキソールの臨床適用に大きく貢献できるものである。

Claims (10)

  1. パクリタキセル、アムホテリシンB、カンプトテシン及びアドリアマイシンからなる群から選択される難水溶性薬物を、下記式
    で示される繰り返し単位を有し、数平均分子量5000以上を有する2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とメタクリル酸n−ブチル(BMA)との水溶性共重合体(以下、PMB30Wという)の水溶液中に溶解させることを特徴とする、難水溶性薬物の可溶化方法。
  2. 前記難水溶性薬物を、予め医薬的に許容可能な有機溶媒に溶解した溶液を、PMB30Wの水溶液に滴加・混合することを特徴とする、請求項1に記載の可溶化方法。
  3. 前記難水溶性薬物とPMB30Wの水溶液との混合物を加熱することを特徴とする、請求項1又は2に記載の可溶化方法。
  4. 前記医薬的に許容可能な有機溶媒が、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドからなる群から選択されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の可溶化方法。
  5. 前記PMB30Wの水溶液の濃度が、0.001〜20重量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の可溶化方法。
  6. 少なくともパクリタキセル、請求項1に記載のPMB30W及び水を含み、0.1〜25mg/mLの濃度でパクリタキセルを含有する抗癌剤組成物。
  7. 少なくともアムホテリシンB、請求項1に記載のPMB30W及び水を含み、0.1〜20mg/mLの濃度でアムホテリシンBを含有する抗真菌剤組成物。
  8. 少なくともカンプトテシン、請求項1に記載のPMB30W及び水を含み、0.1〜20mg/mLの濃度でカンプトテシンを含有する抗癌剤組成物。
  9. 少なくともアドリアマイシン、請求項1に記載のPMB30W及び水を含み、0.1〜10mg/mLの濃度でアドリアマイシンを含有する抗癌剤組成物。
  10. 請求項1に記載のPMB30Wからなる、パクリタキセルのための可溶化剤。
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