JP4232537B2 - 合わせガラスの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車のフロントガラスやサイドガラス、建築物の窓ガラス等に用いられる耐衝撃性、耐貫通性、防犯性等に優れ、しかも薄肉、軽量な合わせガラスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記目的には一般に、複数のガラス板の間に有機樹脂膜(中間膜)を挟持させた構造の合わせガラスが使用されている。この有機樹脂膜には、耐衝撃性に優れるポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリビニルブチラール(PVB)樹脂膜が用いられており、この有機樹脂膜の存在により、合わせガラスの耐貫通性等が高められている。例えばポリビニルブチラール樹脂膜等の熱可塑性樹脂シートを用いる場合、通常、一対のガラス板の間に上記樹脂シートからなる中間膜を挟み、これをニップロール(押圧ロール)に通してしごくか(しごき脱気法)或いはゴムバックに入れて減圧吸引し、ガラス板と中間膜との間に残留する空気を脱気しながら予備圧着し、次いで、オートクレーブ内で加熱加圧して本圧着を行うことにより製造される。(例えば、特許文献1参照。)このように合わせガラス製造工程は、何段階かに分かれており複雑であった。
【0003】
一方、合わせガラス製造方法において従来のゴムバックを用いた予備圧着工程では、加熱すると容易に変形する熱可塑性樹脂シートを中間膜として用いているために真空プレス時にガラス−熱可塑性シート積層体(以下、単に積層体と記す場合がある)のガラス面がゴムバックから受ける圧力は、積層体の縁部に集中することから、ガラスが変形し、合わせガラスの縁部の膜厚が薄くなる問題があった。さらに、熱可塑性シートに沈み込んだ状態にある合わせガラス縁部の残存歪(残存応力)は、経時的に回復するため、合わせガラスの縁部で剥離が生じるといった問題があった。そしてさらに、ガラスの変形によって、合わせガラスの縁部より内側でもガラスと熱可塑性シート間に部分的に浮きが生じ、これが原因となって、合わせガラスの未圧着部分にシート表面のエンボス形状や気泡が残り、合わせガラスの外観を著しく損ねるといった問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−38456号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、合わせガラスの膜厚が積層体の中で均一であり、積層体の層間に剥離等が生じず、且つ、優れた透明性、接着性、耐貫通性等に優れる合わせガラスを同時に多数製造できる生産性にも優れた合わせガラス製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、
(1)繊維布に熱硬化性樹脂組成物を含浸または塗布後、乾燥させた半硬化状態の複合基板であるプリプレグを、所定の寸法に裁断した後に、2枚以上のガラス板の間に1枚または複数枚挿入して、熱盤から構成される真空プレスを用いて減圧下で加熱・加圧する合わせガラスの製造方法であって、前記真空プレスが2段以上の複数の段を持つと同時に複数セット処理可能な多段の真空プレスであり、前記プリプレグにおける繊維布の含有量が30〜70重量%であり、前記繊維布が厚み40〜150μmのガラスクロスである合わせガラスの製造方法、
である。
【0007】
本発明は、繊維布に特定の物性を持つ熱硬化性樹脂組成物を含浸または塗布・乾燥させ半硬化状態の複合基板(プリプレグ)を用いることにより、特性が優れる合わせガラスができるばかりか、多段の真空プレスを用い、高圧で処理することが可能となり、生産性に優れる合わせガラスの製造が実現できることを見出したものである。すなわち繊維布に樹脂を含浸させた複合基板(プリプレグ)を合わせガラスの中間膜として用いるので、繊維布がスペーサーの役割を果たすために高圧でプレスしても従来の単層の熱可塑性樹脂シートのように樹脂層がほとんど流れ出す心配がなく、繊維布の厚みを選択することで容易に所定の中間層厚みを確保すること可能である。また、繊維布に含浸させた複合基板(プリプレグ)は繊維布の織り目に対応した凹凸がついており、通常の樹脂シートのようにわざわざエンボス処理等施し、表面に凹凸を与えなくてもプレス時に容易に内部の空気を逃がすことが可能となり、得られる合わせガラス中に気泡等を混入し部分的に剥離することもない。
【0008】
本発明において、繊維布に含浸樹脂溶液を乾燥させ、半硬化状態のプリプレグを形成させる条件としては、含浸樹脂や溶剤の種類により異なるが、80〜250℃、0.5〜120分が適当である。これより温度が低く時間が短い場合、繊維布と加熱圧着する際、流動性が大きく、端面からのしみ出しが大きく、フィルム厚のバラツキも大きくなり、均一な厚みの複合基板とならないことがある。またこれより温度が高く時間が長い場合樹脂の熱分解や酸化劣化が起こることがあり好ましくない。
本発明において2枚もしくは3枚以上のガラス板の間に1枚または複数枚複合基板(プリプレグ)を挿入し熱盤から構成される真空プレスを用いて減圧下で加熱・加圧し、合わせガラスを得るが、このときのプレス条件としては含浸樹脂の種類やプリプレグの硬化度により異なるが、一般に50Torr以下の減圧下で室温から加熱を段階的に進め最高到達温度で70〜200℃、圧力0.1〜10MPa、保持時間5〜180分程度で行う。このとき必要に応じて熱盤とガラス板の間にプラスチックシートやゴムシート、紙等からなるクッション材を間に挿入することにより、加圧したときのガラスの破損を避けることができる。
【0009】
本発明において、繊維布としては、ガラスクロス、ガラスペーパー(不織布)等のガラス繊維基材が好ましいが、この他、合成繊維等からなる織布や不織布、鉱物繊維等からなる織布、不織布、マット類等が挙げることができる。本発明で用いる繊維布の屈折率は特に制限されないが、1.45〜1.55であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.54である。特にガラス繊維の屈折率が1.50〜1.54である場合は、ガラスのアッベ数に近い樹脂が選択でき好ましい。樹脂とガラスとのアッベ数が近いと広い波長領域において両者の屈折率が一致し、広い波長領域で高い光線透過率が得られる。繊維布の屈折率が1.55以上では、同じ屈折率でアッベ数が45以上の樹脂を選択するのが困難であり、1.45以下では特殊な組成のガラス繊維となり、コスト的に不利である。特に、1.50〜1.54の範囲であれば、SガラスやNEガラスなどの一般的なガラス繊維が適用でき、かつ同じ屈折率でアッベ数が45以上の樹脂の選択も可能である。ガラスクロスやガラスペーパーに用いられるガラスの種類としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、石英ガラスなどがあげられ、中でもアッベ数が45以上の樹脂と屈折率を一致させることができ、かつ入手が容易なSガラス、Tガラス、NEガラスが好ましい。またガラスクロスやガラスペーパーを用いる場合、フィラメントの織りかたに限定はなく、平織り、ななこ織り、朱子織り、綾織りなどが適用でき、中でも平織りが好ましい。ガラスクロスの厚みは、通常、30〜200μmであるのが好ましく、より好ましくは40〜150μmである。ガラスクロスやガラス不織布などのガラス繊維布は1枚だけでもよく、複数枚を重ねて用いてもよい。本発明に用いられる繊維布は、樹脂成分との濡れ性を改善する目的で各種のシランカップリング剤、ボランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等の表面処理剤で処理されても良く、これに限定されるものではない。
【0010】
本発明で用いるガラス板は、複合基板層により強化され優れた耐貫通特性を示すため通常の生板ガラスを用いても十分な強度を示すが、更に耐衝撃性を向上させる目的で強化ガラスや網入り磨き板ガラス等を用いることもできる。板ガラスの厚みは特に限定されないが、1.8mm以上、6mm以下が好ましく、一般的な合わせガラスに使用されるフロート板ガラス規格品を使用することができる。
【0011】
本発明で複合基板層に用いる樹脂は特に限定されないが透明性を有する繊維布に屈折率が近い硬化性樹脂が好ましくエポキシ樹脂を主成分とした樹脂組成物を挙げることができるが、必要に応じて他の樹脂と混合しても構わない。また硬化剤、硬化促進剤を配合することができる。さらに樹脂中に充填材、着色剤、補強材を配合することができる。無機充填材としては、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスパウダー、ミルドガラス、ガラスフリット、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、アルミナ、未焼成クレー、焼成クレー、硫酸バリウム等を挙げることができる。前記繊維布へ樹脂を含浸させるときの樹脂の形態としては、通常液状、とりわけ溶剤に溶解したワニスであるが、粉末状の樹脂、あるいは固形樹脂を加熱溶融した状態であってもよい。複合基材層(プリプレグ)における繊維布の含有量は、1〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%である。繊維布の含有量が下限値未満では、複合化による強度向上効果が認めらないことがあり、上限値を超えると成形が困難となることがある。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の内容を実施例により詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り以下の例に限定されるものではない。
【0013】
(実施例1)
脂環式多官能エポキシ樹脂(商品名EHPE−3150、ダイセル化学(株)製)100重量部、メチルヘキサヒドロフタル酸(商品名MH−700)82.3重量部、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール1重量部をメチルエチルケトンに常温で溶解し、高速攪拌機を用いて10分攪拌し樹脂ワニスを得た。調製した樹脂ワニスをロールスクイズ方式の含浸装置で80μmのNEガラス系ガラスクロス(日東紡製NEA−2319E、屈折率1.510)に含浸後、160℃で2分乾燥させ総厚100μmのプリプレグを得た。得られたプリプレグを所定の大きさに裁断したものを2枚用い、市販の加熱処理等の強化処理が施されていない板厚2.7mmフロートガラス板(FL3)2枚の間に挟み込み、3段の真空プレスを用いて各段に同様の組み合わせをセットし、10torrの減圧下、圧力5MPaにて室温から3℃/分で200℃まで昇温し、1時間保持後、室温まで1時間かけて冷却して板厚5.6mmの合わせガラスを3枚同時に得た。合わせガラスに用いられているプリプレグ中のガラスクロス含有率は50重量%であった。得られた合わせガラスは何れも厚みのバラツキが10μm以下で、部分的な剥離もない、透明性の優れたものであった。
【0014】
(実施例2)
ガラス板3枚の間にプリプレグを1枚ずつ挟みこんだものを各段にセットした以外は実施例1と同様の原材料、装置、条件にてプレスし板厚8.3mmの合わせガラスを3枚同時に得た。得られた合わせガラスは何れも厚みのバラツキが10μm以下で、部分的な剥離もない、透明性の優れたものであった。
【0015】
以上のようにして作製した合わせガラスについて、下記に示す評価方法により、各種特性を測定した。
a)全光線透過率
分光光度計U3200(日立製作所製)で550nmの光線透過率を測定した。
b)屈折率
アタゴ社製アッベ屈折率計DR−M2を用いて、25℃で波長589nmの屈折率を測定した。
c)打ち破り強度
得られた合わせガラスを500mm×500mmに切り出し、窓枠に取り付けた後クレセント付近をバールで打ち破る(100mmの穴があく)のに要した相対時間(厚み2.7mmのフロートガラスを打ち破る時間を1としたとき)
【0016】
【表1】
Figure 0004232537
【0017】
実施例で得られた合わせガラスは薄い複合基板層と構成されているにもかかわらず透明性を損なわずに優れた強度を示すものであった。
【0018】
【発明の効果】
本発明は、繊維布に特定の物性を持つ熱硬化性樹脂組成物を含浸または塗布・乾燥させ半硬化状態の複合基板(プリプレグ)を用いることにより、特性が優れる合わせガラスができるばかりか、多段の真空プレスを用い、高圧で処理することが可能となり、生産性に優れる合わせガラスの製造が実現できることを見出したものである。

Claims (1)

  1. 繊維布に熱硬化性樹脂組成物を含浸または塗布後、乾燥させた半硬化状態の複合基板であるプリプレグを、所定の寸法に裁断した後に、2枚以上のガラス板の間に1枚または複数枚挿入して、熱盤から構成される真空プレスを用いて減圧下で加熱・加圧する合わせガラスの製造方法であって、前記真空プレスが2段以上の複数の段を持つと同時に複数セット処理可能な多段の真空プレスであり、前記プリプレグにおける繊維布の含有量が30〜70重量%であり、前記繊維布が厚み40〜150μmのガラスクロスである合わせガラスの製造方法
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