JP4232479B2 - 乗用型田植機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、乗用型田植機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種、従来技術としては、圃場内作業時の操縦性を向上させるために油圧式無段変速装置を装備した乗用型田植機が実用化されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−109707号公報(第1頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、ミッションケースと油圧式無段変速装置との配置を考慮して伝動構成を簡潔なものとし、小型で軽量の伝動構成を装備した乗用型田植機を得ることを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決すべく、請求項1記載の発明は、左右前輪(6)と左右後輪(7)を装備し機体上に操縦席(20)とステアリングハンドル(16)を設けた走行車両(1)に昇降用リンク装置(2)を介して田植装置(3)を装着した乗用型田植機において、側面視で後部上方を切り欠いた形状のミッションケース(11)を設け、該ミッションケース(11)の側壁面に油圧無段変速装置(HST)を固定し、該油圧無段変速装置(HST)の後部がミッションケース(11)の切り欠かれた部位に位置する構成とし、油圧無段変速装置(HST)の後部に油圧無段変速装置用ポンプ(P1)を設け、田植装置(3)の昇降やローリングを作動させる作業装置作動用油圧ポンプ(P2)を油圧無段変速装置(HST)の後部に固定してミッションケース(11)の後部上方の空間部に配置し、該走行車両(1)はエンジン(12)の動力をベルト(31)を介し油圧無段変速装置(HST)の入力軸(35)に伝動し、該油圧式無段変速装置(HST)の出力軸(36)をミッションケース(11)内に延ばしてミッションケース(11)内に伝動し、ミッションケース(11)内で前記出力軸(36)から走行一次軸(50)を介して走行二次軸(51)へ伝動すると共に前記走行一次軸(50)から植付一次軸(52)及び植付二次軸(53)を介して植付三次軸(54)へ伝動する構成とし、ミッションケース(11)の後部に左右前輪(6)を駆動するフロントアクスル(60)を設け、該フロントアクスル(60)から後輪駆動軸(62)により後輪伝動ケース(24)のリヤアクスル(61)に動力を伝達して左右サイドクラッチ機構(63)を介して左右後輪(7)を駆動する共に、ミッションケース(11)内の植付三次軸(54)からベベルギヤ(G19,G20)を介して植付部伝動軸(58)に伝動して田植装置(3)を駆動する構成とし、油圧式無段変速装置(HST)の前部にステアリングハンドル(16)に連携させたステアリング軸(14)を設け、該ステアリング軸(14)からピットマンアーム(175)を介して左右前輪(6)へ伝達されて該左右前輪(6)を操向する構成とし、ピットマンアーム(175)の後部に作動ローラ(177)を設け、該作動ローラ(177)の左右両側を囲むように平面視でコ字状に切り欠かれた切欠き部(178)を有する従動体(179)を設け、ピットマンアーム(175)の回動で作動ローラ(177)が切欠き部(178)の側面(178a)を押して従動体(179)を回動させることにより、左右後輪(7)のうち旋回中心側の後輪(7)のサイドクラッチ機構(63)を切る構成とし、油圧無段変速装置(HST)を操作する操作レバー(110)を後進操作域(R)側に操作したとき田植装置(3)を上動させるか否かを切り替える入切スイッチ(110b)を、操作レバー(110)の把持部(110a)に設けたことを特徴とする乗用型田植機としたものである。
【0006】
従って、エンジン(12)の動力はベルト(31)を介してミッションケース(11)の側壁面に固定した油圧無段変速装置(HST)の入力軸(35)に伝動され、油圧式無段変速装置(HST)の出力はミッションケース(11)内に延びた油圧式無段変速装置(HST)の出力軸(36)にてミッションケース(11)に伝達する簡潔な伝動構成となる。
【0007】
一方、側面視で後部上方を切り欠いた形状のミッションケース(11)を設け、該ミッションケース(11)の側壁面に油圧無段変速装置(HST)を固定し、該油圧無段変速装置(HST)の後部がミッションケース(11)の切り欠かれた部位に位置する構成とし、油圧無段変速装置(HST)の後部に油圧無段変速装置用ポンプ(P1)を設け、田植装置(3)の昇降やローリングを作動させる作業装置作動用油圧ポンプ(P2)を油圧無段変速装置(HST)の後部に固定してミッションケース(11)の後部上方の空間部に配置し、ミッションケース(11)内で前記出力軸(36)から走行一次軸(50)を介して走行二次軸(51)へ伝動すると共に前記走行一次軸(50)から植付一次軸(52)及び植付二次軸(53)を介して植付三次軸(54)へ伝動する構成とし、ミッションケース(11)の後部に左右前輪(6)を駆動するフロントアクスル(60)を設け、該フロントアクスル(60)から後輪駆動軸(62)により後輪伝動ケース(24)のリヤアクスル(61)に動力を伝達して左右サイドクラッチ機構(63)を介して左右後輪(7)を駆動する共に、ミッションケース(11)内の植付三次軸(54)からベベルギヤ(G19,G20)を介して植付部伝動軸(58)に伝動して田植装置(3)を駆動する構成とし、油圧式無段変速装置(HST)の前部にステアリングハンドル(16)に連携させたステアリング軸(14)を設けたので、ミッションケース(11)・油圧式無段変速装置(HST)作業装置作動用油圧ポンプ(P2)・ステアリング軸(14)の配置構成が簡潔で小型の構成となり、走行用機体の構成が小型化され、安価で且つ軽量な機体を得ることができ、優れた走行性能を発揮して、田植え作業が良好に行なえる。
【0008】
また、ステアリング軸(14)からピットマンアーム(175)を介して左右前輪(6)へ伝達されて該左右前輪(6)を操向する構成とし、ピットマンアーム(175)の後部に作動ローラ(177)を設け、該作動ローラ(177)の左右両側を囲むように平面視でコ字状に切り欠かれた切欠き部(178)を有する従動体(179)を設け、ピットマンアーム(175)の回動で作動ローラ(177)が切欠き部(178)の側面(178a)を押して従動体(179)を回動させることにより、左右後輪(7)のうち旋回中心側の後輪(7)のサイドクラッチ機構(63)を切る構成としたので、ステアリングハンドル(16)を所定量以上操作すると、ピットマンアーム(175)も回動し作動ローラ(177)が従動体(179)の切欠き部(178)の側面(178a)を押す為に、左右後輪(7)のうち旋回中心側の後輪(7)のサイドクラッチ機構(63)が切れ、旋回中心側の後輪(7)が遊転状態となるので、該後輪(7)が耕盤を傷めることなく、また、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒してしまうようなこともなく、旋回がスムーズできれいにできる。
【0009】
更に、油圧無段変速装置(HST)を操作する操作レバー(110)を後進操作域(R)側に操作したとき田植装置(3)を上動させるか否かを切り替える入切スイッチ(110b)を、操作レバー(110)の把持部(110a)に設けたので、田植作業時に畦際で操作レバー(110)を操作して後進する場合には、操作レバー(110)を後進操作域(R)側に操作すると自動的に田植装置(3)が上動するようにすれば、他の手動操作で田植装置(3)を上動させる操作が不要で操作性及び作業効率が良く、後進で機体をトラックに積み込む時や納屋に後進で機体を収容する時等には、操作レバー(110)を後進操作域(R)側に操作しても田植装置(3)が上動しないようにすれば、トラックに積み込み時に機体重心が低いままでトラックに積み込むことができて安全であり、納屋に後進で機体を収容する時に田植装置(3)が低い位置のままで後進できるので、田植装置(3)が軒や天井等の他のものに接当して破損することが未然に防止できる。
【0010】
【発明の効果】
この発明によると、乗用型田植機における走行車両(1)の伝動構成が小型化され、安価で且つ軽量なものとなって、優れた走行性能を発揮し田植え作業が良好に行なえる。また、旋回時に旋回中心側の後輪(7)が遊転状態となるので、該後輪(7)が耕盤を傷めることなく、また、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒してしまうようなこともなく、旋回がスムーズできれいにできる。更に、田植作業時に畦際で操作レバー(110)を操作して後進する場合には、操作レバー(110)を後進操作域(R)側に操作すると自動的に田植装置(3)が上動するようにすれば、他の手動操作で田植装置(3)を上動させる操作が不要で操作性及び作業効率が良く、後進で機体をトラックに積み込む時や納屋に後進で機体を収容する時等には、操作レバー(110)を後進操作域(R)側に操作しても田植装置(3)が上動しないようにすれば、トラックに積み込み時に機体重心が低いままでトラックに積み込むことができて安全であり、納屋に後進で機体を収容する時に田植装置(3)が低い位置のままで後進できるので、田植装置(3)が軒や天井等の他のものに接当して破損することが未然に防止できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施例である6条植え乗用型田植機を図面に基づき詳細に説明する。走行車両1に昇降用リンク装置2で作業装置の一種である田植装置3を装着すると共に施肥装置4を設け、全体で乗用施肥田植機として構成されている。走行車両1は、駆動輪である左右各一対の前輪6,6および後輪7,7を有する四輪駆動車両である。
【0012】
左右メインフレーム10,10の前部にミッションケース11がボルトにて固定され、左右メインフレーム10,10上にはゴムマウントM…を介してエンジン12が搭載されており、該ミッションケース11の前部側壁面に油圧無段変速装置HSTがボルトにて固定して一体に組み付けられ、また前進及び後進速度が無段変速できる油圧式無段変速装置HSTの前部にステアリング軸14が上方に突設されている。
【0013】
そして、ステアリング軸14の上端部にステアリングハンドル16が設けられ、そのステアリングハンドル16下方部に操作パネル17が設けられている。機体の上部には操縦用のフロアとなる合成樹脂よりステップが一体に形成された機体カバー19が取り付けられ、エンジン12の上方部に操縦席20が設置されている。
【0014】
機体カバー19は、機体前部から操縦席20の左右側方まで水平面で覆う前部カバー19aと機体後部の左右中央部を覆う後部中央カバー19bとから構成されている。前部カバー19aの左右両側上面には、連続した平面状のステップ面が形成されている。操縦席20は、後部中央カバー19bの上面前側に取付けられている。
【0015】
従って、田植装置3や施肥装置4に対する各種操作及び苗載台163への予備苗供給や施肥装置4への肥料供給時に、操縦者(作業者)は操縦席20左右両側の前部カバー19a上を移動するが、その時、連続した平面状のステップ面が形成されているから、作業者が足を引っ掛けてつまづくような事態が回避できて、能率良く然も安全に作業が行なえる。
【0016】
前輪6,6は、ミッションケース11の側方に変向可能に設けた前輪支持ケース22,22に軸支されている。また、後輪7,7は、後輪伝動ケース24の左右に各々軸支され、該後輪伝動ケース24は左右メインフレーム10,10の後端部を連結した横フレーム10aに突設したローリング軸25で進行方向と垂直な面内で回動自在に支持されている。
【0017】
また、左右メインフレーム10,10の前部には両者を繋ぐ平面視コ字状の前部連結フレーム10bの下部が溶接固定され、その前部連結フレーム10bに左右方向に延びる前横パイプフレーム10cが溶接固定され、更に、その前横パイプフレーム10cに上方に向けてL字状鋼板よりなる支持板10d…が溶接固定されている。そして、支持板10d…の上部に左右に2本づつ設けたカバー支持パイプ10e…の前部がボルトにて固定されている。
【0018】
そして、カバー支持パイプ10e…の各後部は、左右方向に延びる後横パイプフレーム10fにて一体に溶接固定されている。この後横パイプフレーム10fは、左右メインフレーム10,10の後端部に溶接された昇降用リンク装置2の前部を回動自在に支持する左右縦フレーム10g,10gの上部より前方に向けて延びる支持フレーム10hの前端に溶接した横角パイプ10iに連結材10j,10jを介して連結固定されている。
【0019】
そして、前記機体カバー19の後半部は、上記のカバー支持パイプ10e…及び後横パイプフレーム10f上に載置されて支持固定されている。
エンジン12の回転動力は、ベルト31を介して油圧式無段変速装置HSTの入力軸35に伝えられ、油圧式無段変速装置HSTの出力軸36はミッションケース11内に延びて駆動ギヤG1が設けられている。そして、ミッションケース11の前部には、走行一次軸50、走行二次軸51、植付一次軸52、植付二次軸53、植付三次軸54がそれぞれ平行に支承されている。
【0020】
油圧式無段変速装置HSTの出力軸36の駆動ギヤG1と走行一次軸50のギヤG2が噛合して走行一次軸50に駆動力が伝達され、走行一次軸50の変速ギヤG3・ギヤG4と走行二次軸51の変速ギヤG5・ギヤG6とがそれぞれ互いに噛合することにより、変速されて走行二次軸51に駆動力が伝達される(シフタ56にて変速ギヤG3・ギヤG4が移動されて変速ギヤG3とギヤG5とが噛合するようにした時が低速の作業速度であり、シフタ56にて変速ギヤG3・ギヤG4が移動されて変速ギヤG4とギヤG6とが噛合するようにした時が高速の路上走行速度である)。また、変速ギヤG3・ギヤG4・ギヤG5・G6がいずれのギヤとも噛合しない位置がニュートラルになる。この変速操作するチェンジレバー90は操作パネル17に設けられている。尚、チェンジレバー90の操作位置は、後から前方に操作する順に後進速、ニュートラル、作業速、路上走行速となっている。従って、圃場内で田植作業を行なう場合には、チェンジレバー90を作業速にシフトし、田植装置3の苗載台163に苗を載置し施肥装置4の肥料タンクに粒状肥料入れて、各部を駆動させて前進すると、田植作業と施肥作業が同時に行なえる。
【0021】
また、株間変速装置として、植付一次軸52に設けたギヤG7が走行一次軸50の変速ギヤG3に噛合しており(シフタ56にて変速ギヤG3・ギヤG4を移動させて、変速ギヤG3とギヤG5とが噛合する低速の作業速度の時と変速ギヤG3・ギヤG4・ギヤG5・G6がいずれのギヤとも噛合しないニュートラルの時に、ギヤG7と変速ギヤG3とは噛合している)、そして、植付一次軸52に設けたギヤG8がシフタ57にて移動されて、植付二次軸53のギヤG9若しくはギヤG10に噛合することにより植付一次変速し、更に、植付二次軸53に設けたギヤG11・ギヤG12・ギヤG13・ギヤG14と植付三次軸54に設けたギヤG15・ギヤG16・ギヤG17・ギヤG18とが常時噛合しており、一般的なキー式シフタ58aにて植付三次軸54と係合したギヤのみが伝動されることにより植付二次変速して、植付一次変速と植付二次変速とにより8段階の株間切替が行える構成となっている。一方、植付三次軸54からベベルギヤG19,G20を介して植付部伝動軸58に伝動されるが、植付三次軸54にはギヤ群ギヤG15・ギヤG16・ギヤG17・ギヤG18に対するドッグクラッチよりなる植付けクラッチCが設けられており、植付けクラッチCに操作レバーにて作動するピン55が係合して、該ドッグクラッチよりなる植付けクラッチCが切れて一定位置で植付三次軸54が停止する構成となっている(所謂、公知の苗植付け具164が一定位置で停止するための定位置停止クラッチになっている)。
【0022】
ミッションケース11の後部には、フロントアクスル60の中央部が支承され、前記走行二次軸51からギヤG6とギヤG21を介して伝動され、左右前輪6,6が駆動回転される構成となっている。尚、左右前輪支持ケース22,22は、ミッションケース11後部の左右両側に各々ボルトにて固定されたフロントアクスルケース59・59に支持される一般的な構成となっている。
【0023】
左右後輪7・7のリヤアクスル61には、フロントアクスル60に設けたベベルギヤG22と後輪駆動軸62前端部に設けたベベルギヤG23及び後輪駆動軸62後端部に設けたベベルギヤG24とリヤアクスル61に設けたベベルギヤG25により、動力が伝達される。
【0024】
リヤアクスル61は、後輪伝動ケース24内に配置され、その左右両側部にはディスク式のサイドクラッチ機構63・63を介して、左右後輪減速伝動機構64・64を経由して左右後輪7・7を駆動する構成となっている。尚、サイドクラッチ機構63・63は、板ばねによって固定ディスクに可動ディスクを押し付ける方向に付勢されており、常時はサイドクラッチが入った状態となっており、左右シフタ85I・85Iで可動ディスクを付勢方向と逆向きに移動させると、サイドクラッチ機構63・63が切れる。
【0025】
4輪ブレーキ65は、走行二次軸51の端部に設けられており、後述の機体カバー19上に設けたペダル140を踏込み操作するとブレーキが作動して走行二次軸51を制動して、左右前輪6・6及び左右後輪7・7にブレーキがかかって機体が停止する。
【0026】
一方、ミッションケース11は、側面視で後部上方が切り欠かれたような形状になっており、そのミッションケース11の左側壁面の中央部上方に油圧式無段変速装置HST前部をボルトにて固定し、油圧式無段変速装置HST後部が前記ミッションケース11の切り欠かれた部位に位置するようにして、油圧式無段変速装置HST後部に直接油圧式無段変速装置用ポンプP1(油圧ポンプP1が、更にパワーステアリングの油圧駆動源のポンプを兼用しても良い)と作業装置の一種である田植装置3を上下作動やローリング作動やピッチング作動させる油圧駆動源となる作業装置作動用油圧ポンプP2とをボルトにて固定している。そして、油圧式無段変速装置HSTの入力軸35は、油圧式無段変速装置HSTの右側壁面を貫通して油圧式無段変速装置用ポンプP1内部まで突出して設け、油圧ポンプP1・P2の駆動軸を兼用した構成となっている。即ち、油圧ポンプP1・P2は、油圧式無段変速装置HSTに直付けされ、ミッションケース11の後部上方の空間部に配置して設けられており、油圧式無段変速装置用ポンプP1・作業装置作動用油圧ポンプP2の駆動構成が簡潔なものとなっていると共に、油圧式無段変速装置HSTとミッションケース11と油圧式無段変速装置用ポンプP1・作業装置作動用油圧ポンプP2との配置が無駄のないものとなっており、駆動部の構成が小型化され、安価で且つ軽量な機体を得ることができる。
【0027】
また、側面視でミッションケース11前部上方も切り欠かれたような形状になっており、ミッションケース11前部には、ステアリング軸14が回動自在に支持されており、後述のピットマンアーム175を回動作動させる歯車伝動機構70が配されている。即ち、ステアリングハンドル16を操縦者が回動操作すると、ステアリング軸14・歯車伝動機構70・ピットマンアーム175を介して、左右前輪6・6が操向操作される構成となっている。このようにステアリング軸14よりも後方に油圧式無段変速装置HSTを配置すれば、ミッションケース11・油圧式無段変速装置HST・ステアリング軸14の配置構成が簡潔で小型の構成となり、走行用機体の構成が小型化され、安価で且つ軽量な機体を得ることができ、水田走行用機体としては優れた走行性能が発揮でき、田植え等の各種作業が良好に行なえる。
【0028】
尚、71は機体左右中心を示す一点鎖線であり、この機体左右中心線71に対して、機体平面視でミッションケース11と油圧式無段変速装置HSTとが左右に振り分けて配置された構成となっているので、機体の左右バランスも良くて、水田走行用機体としては優れた走行性能が発揮でき田植え等の各種作業が良好に行なえる。
【0029】
油圧式無段変速装置HSTは、操縦席20の右側に設けられたHST操作レバー110にて操作される。機体斜め前方から見た作動説明用斜視図に示すように、HST操作レバー110は、機体に前後方向に軸111にて回動自在に支持された操作レバー基部112に軸113にて左右方向に回動自在に支持されており、クランク状に操作される構成になっている。尚、112aは、操作レバー基部112を操作位置で止める為の一般的な皿バネよりなる付勢機構である。
【0030】
そして、操作レバー基部112は、ロッド114にて機体に回動自在に支持された位置決め軸115のアーム116に連結されている。位置決め軸115には、扇型のカム板117が固定されており、このカム板117には、HST操作レバー110がニュートラル位置Nの時にバネ118にて付勢されているポジションローラ119が嵌入する円弧溝117Nと、HST操作レバー110が前進最大速位置Fの時にバネ118にて付勢されているポジションローラ119が嵌入する円弧溝117Fと、HST操作レバー110が後進最大速位置Rの時にバネ118にて付勢されているポジションローラ119が嵌入する円弧溝117Rとが形成されている。
【0031】
また、位置決め軸115には、HST操作アーム120が設けられており、このHST操作アーム120が油圧式無段変速装置HSTのトラニオン軸121に固定されたトラニオン操作アーム122にロッド123にて連結されている。
従って、HST操作レバー110をニュートラル位置Nにしている時には、カム板117の円弧溝117Nにポジションローラ119が嵌入して、油圧式無段変速装置HSTはニュートラルに保持されて機体は停止状態である。そして、HST操作レバー110をニュートラル位置Nから前進最大速位置Fに向けて操作するほど、ロッド114・アーム116・位置決め軸115・HST操作アーム120・ロッド123・トラニオン操作アーム122・トラニオン軸121と連携して作動し、トラニオン軸121が前進方向に徐々に操作されて、機体は徐々に前進速度が速くなる。逆に、HST操作レバー110をニュートラル位置Nから後進最大速位置Rに向けて操作するほど、ロッド114・アーム116・位置決め軸115・HST操作アーム120・ロッド123・トラニオン操作アーム122・トラニオン軸121と連携して作動し、トラニオン軸121が後進方向に徐々に操作されて、機体は徐々に後進速度が速くなる。
【0032】
一方、機体に回動自在に設けたアクセル操作回動アーム130に基部が溶接固定されたアクセルペダル130aを、ステアリングハンドル16の右側の機体カバー19上にそのペダル部が位置する状態で設け、アクセル操作回動アーム130に連結された操作ワイヤー131がエンジン12のアクセル作動機構に連携しており、アクセルペダル130aを踏込むとアクセル操作回動アーム130がイ方向に回動して操作ワイヤー131をロ方向に引っ張ってアクセル作動機構を全開方向に向けて作動させてエンジン12の回転を上げる。尚、アクセル操作回動アーム130の回動軸心部にはアクセル操作回動アーム130を反イ方向に回動付勢するトルクスプリングが設けられており、アクセルペダル130aは踏込まないと常に上方に復帰するように付勢されている。
【0033】
そして、このアクセル操作回動アーム130と前記位置決め軸115に上方向に設けられたアーム133とが2つの上下操作ロッド134F・134Rにて連繋されており、HST操作レバー110をニュートラル位置Nから前進最大速位置Fに向けて操作するほど、アーム133の回動により上操作ロッド134Fを押してアクセル操作回動アーム130をイ方向に回動させて操作ワイヤー131をロ方向に引っ張ってアクセル作動機構を全開方向に向けて作動させエンジン12の回転を上げる。また、後進最大速位置Rに向けて操作するほど、アーム133の回動により下操作ロッド134Rを引いてアクセル操作回動アーム130をイ方向に回動させて操作ワイヤー131をロ方向に引っ張ってアクセル作動機構を全開方向に向けて作動させエンジン12の回転を上げる。尚、上下操作ロッド134F・134Rとアーム133とは、上下操作ロッド134F・134Rに設けた長孔134Fa・134Raを介して連繋されており、図で示すようにHST操作レバー110をニュートラル位置Nにした時に、上操作ロッド134Fの長孔134Faの右端部がアーム133の上ピン133aと接当し、下操作ロッド134Rの長孔134Raの左端部がアーム133の下ピン133bと接当した状態となっている。従って、HST操作レバー110をニュートラル位置Nから前進最大速位置Fに向けて操作するほど、アーム133の回動により上ピン133aが上操作ロッド134Fを押し作動させるが、下ピン133bは下操作ロッド134Rの長孔134Ra部を移動するだけで下操作ロッド134Rは作動しない。逆に、後進最大速位置Rに向けて操作するほど、アーム133の回動により下ピン133bが下操作ロッド134Rを引き作動させるが、上ピン133aは上操作ロッド134Fの長孔134Fa部を移動するだけで上操作ロッド134Fは作動しない。また、134Fb・134Rbは、上下操作ロッド134F・134Rの中途部に設けたターンバックルであって、上記の状態になるように、上下操作ロッド134F・134Rの長さを調節する為のものである。
【0034】
即ち、HST操作レバー110にて前進車速及び後進車速を速くするほど連動して、エンジン12の回転数も上がるように構成されている。従って、HST操作レバー110にて変速操作とエンジン12の回転数の操作が同時に行えるので、操作性が良くて作業効率が良い(アクセルペダル130aを操作する必要がない)。また、HST操作レバー110が何れの位置にあっても、上記のようにHST操作レバー110をニュートラル位置Nにした時、上操作ロッド134Fの長孔134Faの右端部がアーム133の上ピン133aと接当し、下操作ロッド134Rの長孔134Raの左端部がアーム133の下ピン133bと接当した状態となっているので、アクセルペダル130aを踏込み操作すれば自由にエンジン12の回転数を上操作できる。
【0035】
次に、田植装置3は、走行車両1に昇降用リンク装置2で昇降自在に装着されているのであるが、その昇降させる構成と田植装置3の構成について説明する。
先ず、走行車両1に基部が回動自在に設けた一般的な油圧シリンダー160のピストン上端部を昇降用リンク装置2に連結し、走行車両1に設けた油圧ポンプP2にてソレノイド油圧バルブ161を介して油圧シリンダー160に圧油を供給・排出して、油圧シリンダー160のピストンを伸進・縮退させて昇降用リンク装置2に連結した田植装置3が上下動されるように構成されている。
【0036】
田植装置3は、昇降用リンク装置2の後部にローリング軸を介してローリング自在に装着されたフレームを兼ねる植付伝動ケース162と、該植付伝動ケース162に設けられた支持部材に支持されて機体左右方向に往復動する苗載台163と、植付伝動ケース162の後端部に装着され前記苗載台163の下端より1株分づつの苗を分割して圃場に植え付ける苗植付け具164…と、植付伝動ケース162の下部にその後部が枢支されてその前部が上下揺動自在に装着された整地体であるセンターフロート165・サイドフロート166…等にて構成されている。センターフロート165・サイドフロート166…は、圃場を整地すると共に苗植付け具164…にて苗が植付けられる圃場の前方を整地するように設けられている。
【0037】
前記ミッションケース11より後方にユニバーサルジョイントを介在して延出した植付部伝動軸58により、施肥装置4及び田植装置3の植付伝動ケース162に動力が伝達される。169はセンターフロート165前部の上下位置を検出するポテンショメータにより構成されるセンターフロートセンサーであって、センターフロート165の前部上面とリンクにより連携されている。そして、センターフロートセンサー169のセンターフロート165前部の上下位置検出に基づいて、制御装置170の田植装置昇降手段によりソレノイド油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて田植装置3の上下位置を制御するように構成されている。
【0038】
即ち、センターフロート165の前部が外力にて適正範囲以上に持ち上げられた時には油圧ポンプP2にてミッションケース11内から汲み出された圧油を油圧シリンダー160に送り込んでピストンを突出させ昇降用リンク装置2を上動させて田植装置3を所定位置まで上昇せしめ、また、センターフロート165の前部が適正範囲以上に下がった時には油圧シリンダー160内の圧油をミッションケース11内に戻して昇降用リンク装置2を下動させて田植装置3を所定位置まで下降せしめ、そして、センターフロート165の前部が適正範囲にあるとき(田植装置3が適正な所定位置にある時)には油圧シリンダー160内の圧油の出入りを止めて田植装置3を一定位置に保持するように設けられている。このように、センターフロート165を田植装置3の自動高さ制御のための接地センサーとして用いている。
【0039】
171はステアリングハンドル16の下方に配置されたフィンガーレバーであって、該フィンガーレバー171を上下方向に操作するとポテンショメータにより構成されるフィンガーレバースイッチ172が作動されて、制御装置170のPTOクラッチ作動手段によりPTOクラッチ作動SOL173を操作して、動力を断接するピン55を操作して施肥装置4及び田植装置3への動力を入切り操作できるように構成されていると共に、制御装置170の田植装置昇降手段により、ソレノイド油圧バルブ161を操作して手動にて田植装置3を上下動できるように構成されている。
【0040】
即ち、フィンガーレバー171を「上」に操作すると、植付けクラッチCが切れ施肥装置4及び田植装置3の作動が停止し且つソレノイド油圧バルブ161が強制的に田植装置3を上昇する側に切換えられる。
そして、フィンガーレバー171を「上」に操作した後に、フィンガーレバー171を「下」に1回操作すると、ソレノイド油圧バルブ161がセンターフロート165の上下動にて切換えられる自動制御状態となり、田植装置3が上昇された状態であればセンターフロート165が接地して適正姿勢になるまで田植装置3は下降する。更にもう一回、フィンガーレバー171を「下」に操作すると、ソレノイド油圧バルブ161がセンターフロート165の上下動にて切換えられる自動制御状態のままで、植付けクラッチCが入り施肥装置4及び田植装置3が駆動される。以降、フィンガーレバー171を「下」に操作する度に、ソレノイド油圧バルブ161がセンターフロート165の上下動にて切換えられる自動制御状態のままで、植付けクラッチCが入りと切りに交互に切り換えられる。
【0041】
ML・MRは田植装置3の左右に設けられた左右線引きマーカであって、次工程の機体中心線を圃場に引く線引き作用状態と上方に回動された収納状態とに左右駆動モータM1・M1により切り替え作動される構成となっている。詳述すると、例えば、左線引きマーカMLが線引き作用状態にある場合に、上記のフィンガーレバー171を「上」に操作すると、制御装置170の左右線引きマーカ作動手段により左駆動モータM1を作動させて線引き作用状態にある左線引きマーカMLを収納状態とし、次に、フィンガーレバー171を「下」に操作すると、制御装置170の左右線引きマーカ作動手段により逆の右駆動モータM1を作動させて収納状態にある右線引きマーカMRが線引き作用状態になる。以後、フィンガーレバー171を「上」「下」操作する度に左右線引きマーカML・MRが交互に線引き作用状態になる。尚、操作パネル17に設けたマーカ切替えスイッチMSを自動位置にすると、上記のように左右線引きマーカML・MRが交互に線引き作用状態になり、マーカ切替えスイッチMSをOFF位置にすると、左右線引きマーカML・MRは収納状態のままでフィンガーレバー171を「上」「下」操作しても作動せず、また、マーカ切替えスイッチMSを両出し位置にすると、制御装置170の左右線引きマーカ作動手段により左右駆動モータM1・M1が共に作動して左右線引きマーカML・MRが両方とも線引き作用状態になる。
【0042】
ここで、走行車両1に対して田植装置3をピッチング作動させるピッチング機構について、説明する。
昇降用リンク装置2の上部リンクの途中に油圧式のピッチングシリンダ210を設けて、該ピッチングシリンダ210の伸縮動によって上部リンクの長さが変更されて、田植装置3を走行車両1に対して駆動ピッチング動できるようにしてある。構成を詳述すると、前上部リンク2aを中空の角パイプ材にて構成し、後上部リンク2bの前端に固定した嵌合部材2cを前上部リンク2aの後端部に摺動自在に嵌入した状態とし、前上部リンク2aに固定したピッチングシリンダ210の進退するピストン210a先端を後上部リンク2b側に固定している。従って、ピッチングシリンダ210に圧油が供給・排出されてピストン210aが進退することにより、後上部リンク2bの前端に固定した嵌合部材2cが前上部リンク2aの後端部内で摺動し、上部リンクの長さが変更される。
【0043】
一方、走行車両1の前後方向での傾斜角を検出する傾斜センサ211をメインフレーム10上に設け、走行車両1の前後傾斜姿勢の変化に拘わらずに田植装置3の圃場面に対する前後傾斜姿勢を所定の姿勢に維持するように、傾斜センサ211の検出情報に基づいて制御装置170のピッチング制御手段によりピッチングシリンダ210の制御弁212を切換作動させる。
【0044】
従って、田植装置3が所定の姿勢となるように強制ピッチング動される。例えば、泥面及び硬盤が水平な圃場での正規の走行状態から、前輪6が凹部に落ち込んで走行車両1が大きく前下がり傾斜する場合には、ピッチングシリンダ210を伸長駆動させて上部リンクの長さを長くすることにより、田植装置3の前下がり移動を相殺して田植装置3を所定の姿勢に維持する。逆に、前輪6が凸部に乗り上がる等して走行車両1が大きく前上がり傾斜する場合には、ピッチングシリンダ210を短縮駆動させて上部リンクの長さを短くすることにより、田植装置3の前上がり移動を相殺して田植装置3を所定の姿勢に維持する。
【0045】
ここで、ステアリングハンドル16にて前輪6,6が操向操作される部分の構成について説明する。
ステアリングハンドル16は、ステアリング軸14上部に固定されており、ステアリング軸の回転はミッションケース11内に設けられた歯車伝動機構70を介して減速されて出力軸174に伝動される。そして、出力軸174の下端は、ミッションケース11底面から突出してピットマンアーム175が固定されている。ピットマンアーム175の前部左右側と左右前輪支持ケース22,22とは左右ロッド176,176にて連結されている。従って、ステアリングハンドル16を回動操作すると、ステアリング軸14・歯車伝動機構70・出力軸174・ピットマンアーム175・左右ロッド176,176・左右前輪支持ケース22,22へと伝達されて、左右前輪6,6が左右操向操作される。
【0046】
一方、ピットマンアーム175の後部上面には、作動ローラ177が回転自在に設けられており、その作動ローラ177の左右両側を囲むように平面視でコ字状に切り欠かれた切欠き部178を有する従動体179がミッションケース11の底面に回動自在に支持されている。そして、従動体179の左右両側部には、左右サイドクラッチ機構63・63を操作する左右シフタ85I・85Iに連結された左右ロッド180,180の前部が連結されている。従って、ステアリングハンドル16を所定量(機体を右旋回させる意思を持って作業者が右に回す量)以上右に回すと、ピットマンアーム175も右回動し作動ローラ177がハ方行に回動し従動体179の切欠き部178の左側面178aを押す為に、従動体179を二方向に回動させ右ロッド180を引き、右シフタ85Iが操作されて右サイドクラッチ機構63が切れ、旋回中心側の右後輪7が遊転状態となるので、右後輪7が耕盤を傷めることなく、また、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒してしまうようなこともなく、右旋回がスムーズできれいにできる。逆に、ステアリングハンドル16を所定量以上左に回すと、ピットマンアーム175も左回動し作動ローラ177が反ハ方行に回動し従動体179の切欠き部178の右側面178aを押す為に、従動体179を反二方向に回動させ左ロッド180を引き、左シフタ85Iが操作されて左サイドクラッチ機構63が切れ、旋回中心側の左後輪7が遊転状態となるので、左後輪7が耕盤を傷めることなく、また、泥土を多量に持ち上げて泥面を荒してしまうようなこともなく、左旋回がスムーズできれいにできる。
【0047】
更に、ピットマンアーム175の前部上面には、左右センサ押片182、182が設けられており、ステアリングハンドル16を左右何れかに230度回転させると、ミッションケース11の底面に固定されたオートリフトスイッチ183がONになる(ステアリングハンドル16は左右に最大380度回転する)。
【0048】
次に、田植装置3を自動的に上昇させる制御構成について説明する。
先ず、チェンジレバー90を後進速に操作すると、チェンジレバー90の基部に設けた接当片190が接当してONになるバックリフトスイッチ191が設けられており、制御装置170の田植装置上昇手段によりソレノイド油圧バルブ161を制御して油圧シリンダー160にて田植装置3を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0049】
このように、チェンジレバー90を後進速に操作すると、自動的に田植装置3を最大位置まで上昇させるように構成しておくと、圃場の畦際で機体を旋回させる為等に機体を畦に向かって後進させる時に、自動的に田植装置3は最大位置まで上昇しているので、田植装置3が畦に衝突して破損することが未然に防止でき作業性が良い。
【0050】
一方、操作パネル17の操縦席20側の壁面の左右外側には、オートリフトスイッチ183がONになると自動的に田植装置3が制御装置170の田植装置上昇手段により自動上昇される状態とオートリフトスイッチ183がONになっても自動上昇されない状態とに切替えるオートリフト切替えスイッチ192aが設けられている。また、操作パネル17の操縦席20側の壁面の左右内側には、バックリフトスイッチ191がONになると自動的に田植装置3が制御装置170の田植装置上昇手段により自動上昇される状態とバックリフトスイッチ191がONになっても自動上昇されない状態とに切替えるバックリフト切替えスイッチ192bが設けられている。
【0051】
例えば、圃場から出るべく畦越えをする時には、機体の前後バランスを良くする為に田植装置3を下降させたままで前進させて畦越えを行なうが、その時、操縦者は更に前後バランスを良くする為に操縦席20から離れて機体の前端部に立ち機体の前部重量を上げて畦越えを行なう。この時、機体の進行方向が畦の影響を受けて変更されてしまった場合に、操縦者がステアリングハンドル16を操作して機体の進行方向を修正しようとした時、ステアリングハンドル16の回動操作にてオートリフトスイッチ183がONになって田植装置3が自動上昇されてしまうと、機体の前後バランスが悪くなって機体が転倒してしまう等の危険がある。このため、オートリフト切替えスイッチ192aを操作パネル17の左右外側に配置することにより、上記のように畦越え時にステアリングハンドル16の回動操作にてオートリフトスイッチ183がONになって田植装置3が自動上昇されようとした時に、操縦者は、機体前端部から容易にオートリフト切替えスイッチ192aをOFFに切替えて田植装置3の自動上昇を止めることができ、危険を回避できて安全である。
【0052】
尚、オートリフト切替えスイッチ192a及びバックリフト切替えスイッチ192bをOFFにして、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても田植装置3が自動上昇しない状態にしておくと、機体を後進で納屋等にしまう時にチェンジレバー90を後進速に操作しても田植装置3が自動上昇しないので、田植装置3を下げたまま後進することができ、納屋の入口上部や納屋内の他の部材に田植装置3をぶつけてしまうような事態が回避できる。また、扇型やひょうたん型等の変形圃場で畦際に沿って周り植えをする場合に、曲がった畦に沿ってステアリングハンドル16を回しながら植付け作業を行うが、この時に、オートリフト切替えスイッチ192aを自動位置にしていると、ステアリングハンドル16を左右何れかに230度以上回転すると自動的に田植装置3が上昇してしまい植付け作業が行えないが、オートリフト切替えスイッチ192aをOFFにしていると、ステアリングハンドル16を左右何れかに230度以上回転しても田植装置3は上昇しないので植付け作業が行え、変形圃場でも適切に苗植付け作業が行える。
【0053】
最後に、上記の実施例ではステアリング軸14よりも後方に油圧式無段変速装置HSTを配置した構成を示したが、逆に、ステアリング軸14よりも前方に油圧式無段変速装置HSTを配置すれば、機体前部に油圧式無段変速装置HSTが配置される構成となるので、機体前部に重量物が位置することとなり、機体の前後バランスが良くなって走行用機体としては優れた走行性能が発揮でき、田植え等の各種作業が良好に行なえる。また、機体前部にフロントウエイトを装着するような場合でも、機体前部に油圧式無段変速装置HSTが配置される分だけフロントウエイトの重量を軽くできて、安価で且つ軽量な機体構成を得ることができる。
【0054】
また、図13はHST操作レバー110部の実施例を示し、HST操作レバー110の把持部110aに入切スイッチ110bを設けると共に、その基部近傍に電磁ソレノイド110cを設けてあり、入切スイッチ110bを「入」に操作した状態でHST操作レバー110をニュートラル位置Nで前進操作域F側から後進操作域R側に操作すると、電磁ソレノイド110cのピン110dは突出した状態となっており、該ピン110dがソレノイド油圧バルブ161のスプール161aを押して油圧シリンダー160に圧油を供給する位置に切替えて油圧シリンダー160のピストンを伸進させて昇降用リンク装置2に連結した田植装置3を上動させる構成となっている。従って、田植作業時に畦際でHST操作レバー110を操作して後進する場合に、HST操作レバー110を後進操作域R側に操作すると自動的に田植装置3が上動するので、他の手動操作で田植装置3を上動させる操作が不要で操作性及び作業効率が良く、然も、HST操作レバー110の操作で直接油圧バルブ161を切替えるので、その構成が簡潔であり安価に構成できる。
【0055】
一方、入切スイッチ110bを「切」に操作すれば、電磁ソレノイド110cのピン110dは退入した状態となっており、HST操作レバー110をニュートラル位置Nで前進操作域F側から後進操作域R側に操作しても、該ピン110dがソレノイド油圧バルブ161のスプール161aを押さない位置になっているので、田植装置3は上動しない。従って、後進で機体をトラックに積み込む時や納屋に後進で機体を収容する時等には、この入切スイッチ110bを「切」に操作しておけば、田植装置3は上動しないので、トラックに積み込み時に機体重心が低いままでトラックに積み込むことができて安全であり、納屋に後進で機体を収容する時に田植装置3が低い位置のままで後進できるので、田植装置3が軒や天井等の他のものに接当して破損することが未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例である8条植え乗用型田植機を示す全体側面図である。
【図2】 乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】 走行車両の伝動構成を示す概略平面図である。
【図4】 走行車両要部の左側面図である。
【図5】 走行車両要部の平面図である。
【図6】 走行車両の伝動構成の展開断面図である。
【図7】 走行車両の伝動構成の側面図である。
【図8】 油圧式無段変速装置HSTの操作構成を示す斜視図である。
【図9】 左右後輪のサイドクラッチ機構の操作構成を示す平面図である。
【図10】 左右前輪の操向構成を示す斜視図である。
【図11】 チェンジレバー部の背面図である。
【図12】 制御系のブロック回路図である。
【図13】 操作レバー110部の実施例を示す作用説明用平面図である。
【符号の説明】
1;乗用型走行車両
2;昇降用リンク装置
3;田植装置
6;左右前輪
7;左右後輪
11;ミッションケース
12;エンジン
14;ステアリング軸
16;ステアリングハンドル
20;操縦席
24;後輪伝動ケース
31;ベルト
35;入力軸
36;出力軸
60;フロントアクスル
61;リヤアクスル
62;後輪駆動軸
63;左右サイドクラッチ機構
71;車両の左右中心線
HST;油圧式無段変速装置
P1;油圧式無段変速装置用ポンプ

Claims (1)

  1. 左右前輪(6)と左右後輪(7)を装備し機体上に操縦席(20)とステアリングハンドル(16)を設けた走行車両(1)に昇降用リンク装置(2)を介して田植装置(3)を装着した乗用型田植機において、側面視で後部上方を切り欠いた形状のミッションケース(11)を設け、該ミッションケース(11)の側壁面に油圧無段変速装置(HST)を固定し、該油圧無段変速装置(HST)の後部がミッションケース(11)の切り欠かれた部位に位置する構成とし、油圧無段変速装置(HST)の後部に油圧無段変速装置用ポンプ(P1)を設け、田植装置(3)の昇降やローリングを作動させる作業装置作動用油圧ポンプ(P2)を油圧無段変速装置(HST)の後部に固定してミッションケース(11)の後部上方の空間部に配置し、該走行車両(1)はエンジン(12)の動力をベルト(31)を介し油圧無段変速装置(HST)の入力軸(35)に伝動し、該油圧式無段変速装置(HST)の出力軸(36)をミッションケース(11)内に延ばしてミッションケース(11)内に伝動し、ミッションケース(11)内で前記出力軸(36)から走行一次軸(50)を介して走行二次軸(51)へ伝動すると共に前記走行一次軸(50)から植付一次軸(52)及び植付二次軸(53)を介して植付三次軸(54)へ伝動する構成とし、ミッションケース(11)の後部に左右前輪(6)を駆動するフロントアクスル(60)を設け、該フロントアクスル(60)から後輪駆動軸(62)により後輪伝動ケース(24)のリヤアクスル(61)に動力を伝達して左右サイドクラッチ機構(63)を介して左右後輪(7)を駆動する共に、ミッションケース(11)内の植付三次軸(54)からベベルギヤ(G19,G20)を介して植付部伝動軸(58)に伝動して田植装置(3)を駆動する構成とし、油圧式無段変速装置(HST)の前部にステアリングハンドル(16)に連携させたステアリング軸(14)を設け、該ステアリング軸(14)からピットマンアーム(175)を介して左右前輪(6)へ伝達されて該左右前輪(6)を操向する構成とし、ピットマンアーム(175)の後部に作動ローラ(177)を設け、該作動ローラ(177)の左右両側を囲むように平面視でコ字状に切り欠かれた切欠き部(178)を有する従動体(179)を設け、ピットマンアーム(175)の回動で作動ローラ(177)が切欠き部(178)の側面(178a)を押して従動体(179)を回動させることにより、左右後輪(7)のうち旋回中心側の後輪(7)のサイドクラッチ機構(63)を切る構成とし、油圧無段変速装置(HST)を操作する操作レバー(110)を後進操作域(R)側に操作したとき田植装置(3)を上動させるか否かを切り替える入切スイッチ(110b)を、操作レバー(110)の把持部(110a)に設けたことを特徴とする乗用型田植機。
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