JP4232323B2 - 扉開閉装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータを駆動源として扉を開閉する扉開閉装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、モータを駆動源として扉を開閉する扉開閉装置が種々提供されている。このような扉開閉装置においては、モータを制御することで加速、減速、一旦停止並びに徐行というように扉の移動速度を制御するのが一般的であり、扉を所定の位置で減速したり一旦停止したりするために、電源投入直後の記憶装置に何も記憶されていない初期状態において扉の移動する全長(移動範囲)を予め計測(これを「長さ学習」という)しておいて記憶装置に記憶する方法がよく採用されている。
【0003】
上記長さ学習の方法として、通常は電源投入直後の扉の位置が判らないため、一旦扉を全開位置又は全閉位置まで移動した後に全開位置から全閉位置又は全閉位置から全開位置まで移動させる1動作で扉の移動範囲を計測するものがある。そして、このようにして扉の移動範囲を計測し、加速域、定速域、減速域等を設定して扉の速度制御を行うことができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の扉開閉装置を屋内の扉(いわゆる内装扉)を開閉する用途に用いる場合、全開位置又は全閉位置における扉の衝突音を低減して静音化を図る必要があり、そのために全開位置および全閉位置に設けた方立にゴムクッション等の消音部材を取り付けて衝突音を和らげることがある。このような場合、扉の消音部材への当たり具合等によって全開位置又は全閉位置と認識する位置が異なったりすることがあるため、計測した扉の移動範囲が実際の扉の移動範囲と異なるという問題が生じる。例えば、位置検出信号が移動距離に応じた個数のパルス信号として得られる場合、ゴムクッションの具合により計測した移動範囲に応じたパルス数よりも少ないパルス数で全開位置又は全閉位置に到達した場合と、指などが扉に挟まれているためにパルス数が少ない場合との区別がつかなくなり、計測した移動範囲まで必ず扉を閉めに行くということになれば、指詰めなどの安全上の問題が生じることが考えられる。また逆に、上述のような指詰め防止のために、計測した移動範囲に達しない場合は何かの障害物に当たったと判断して反転動作するような対策が取られるのが一般的であるが、このようにすれば、上述のようにゴムクッションの具合でパルス数が少なくても反転動作してしまうため、正常動作にも関わらず反転動作するという誤動作が発生することになる。
【0005】
本願発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、全開位置又は全閉位置における扉の当たり具合によって扉の移動範囲が異なることが認識可能な扉開閉装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、モータを駆動源として扉を全開位置と全閉位置の間で移動させる扉開閉装置であって、駆動源としてのモータと、扉の移動を開始させるための起動信号を出力する起動信号出力手段と、扉の位置を検出する位置検出手段と、位置検出手段の検出結果に応じてモータへの通電を調整することにより扉の移動速度を制御する制御手段と、扉の移動速度を制御するために必要な種々のパラメータを記憶する記憶手段とを備え、制御手段は、記憶手段にパラメータが記憶されていない初期状態において、起動信号出力手段から起動信号が出力されると扉を少なくとも全開位置から全閉位置および全閉位置から全開位置まで略一定の速度で移動させ、その際の位置検出手段の検出結果に基づいて全開位置から全閉位置までの扉の移動範囲を計測して長さパラメータとして記憶手段に記憶するものであって、移動範囲の複数回分の計測値の差分が所定値以下の場合には計測動作を終了するとともに、複数回分の計測値の最小値を長さパラメータとして記憶手段に記憶することを特徴とし、例えば衝突音を低減して静音化を図るために全開位置および全閉位置に設けた方立にゴムクッション等の消音部材を取り付けているような場合、扉の消音部材への当たり具合等によって扉の移動範囲が変化することがあれば、移動範囲の計測時に移動範囲に変化があることが認識可能となり、ロバスト性を有した長さパラメータの設定が行える。また、現実的には移動範囲の変化が考えられる要因より少し大きな値、例えば全開位置又は全閉位置に設けた方立に取り付けられたゴムクッションの厚さ以上で人間の指の厚み以下に前記所定値を設定しておけばよく、これにより、扉の移動範囲が変化する要因を考慮しつつ移動範囲の計測が完了できる。しかも、長さパラメータを記憶手段に記憶した後の通常動作時に指詰め等に対しても安全で且つ障害物がないにも関わらず扉の移動方向を反転するという誤動作の発生を防ぐことが可能となる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、制御手段は、移動範囲の計測中にモータの負荷が変化しても扉の移動を継続するようにモータへの通電を調整することを特徴とし、移動範囲の計測時にいたずらなどによって扉が押し戻されても計測を続けることができ、計測のやり直しを行うことがなくなるようにできる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、制御手段は、移動範囲の計測中に所定時間を超えて位置検出手段から検出結果が得られない場合はモータを停止させることを特徴とし、障害物等がない場合には扉が方立等に衝突した位置を全開位置又は全閉位置とできるために正しい移動範囲が計測可能となるとともに所定時間でモータが停止されるためにモータや制御手段の過熱に対する保護ができる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1又は2又は3の発明において、制御手段は、移動範囲の計測中に所定時間を経過しても全開位置又は全閉位置に達したことが位置検出手段で検出されない場合はモータを停止させることを特徴とし、所定時間でモータが停止されるため、扉を少しずつ動作させるように負荷をかけるようないたずらに対してモータや制御手段を異常な過熱から保護することができる。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れかの発明において、制御手段は、移動範囲の計測時に扉を全開位置から全閉位置および全閉位置から全開位置まで移動させてモータを停止させた後の所定時間経過時点における位置検出手段の検出結果から移動範囲を計測することを特徴とし、全開位置や全閉位置に設けられた方立にゴムクッションなどの消音部材を取り付けているような場合に、全開位置又は全閉位置へのモータの過剰な押しつけ要因を取り除くことができるため、ゴムクッションがあるときの自然状態の移動範囲が計測でき、誤動作をさらに確実に防ぐことができる。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1の発明において、制御手段は、移動範囲の複数回分の計測値間の差分が所定値以上の場合、記憶手段に長さパラメータを記憶せずに異常報知手段により異常報知を行うことを特徴とし、構成上考えられる移動範囲の計測の誤差要因を超えるような異常が発生した場合に異常の発生を使用者に報知することができる。その結果、使用者に対して異常となる要因を取り除いた後に再度移動範囲の計測をやり直すように促すことができる。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1の発明において、制御手段は、記憶手段に記憶された長さパラメータを用いて扉の移動速度を制御する定常動作時において、扉が長さパラメータの値に応じた距離を移動した後も所定時間だけモータを駆動させることを特徴とし、長さパラメータの値より長い距離を扉が移動する必要がある場合にも確実に全開位置又は全閉位置まで扉を移動させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、扉の駆動源として可動子が直進移動するリニアモータを用いて引き戸式の扉を開閉するようにした実施形態について説明する。但し、回転形のモータの回転運動をギアやベルト等の伝達機構を用いて直進運動に変換したものを駆動源として用いてもよい。
【0016】
図2および図3に示すように、引き戸式の扉6の上部に永久磁石21を具備する可動子2を取り付け、外枠5の一部を構成して扉6の上部を保持する鴨居51に、可動子2と対向するように固定子1を設けている。また、鴨居51の内部には後述する制御回路ブロック4が収納されている。なお、外枠5は鴨居51を上枠とし、鴨居51の両端部に設けられて縦枠となる方立52と、鴨居51と対向するように建物の床面に設置されて下枠となる敷居53とで構成される。敷居53には扉6の下部に取付けられている戸車61を案内するための案内レール54が取り付けてあり、鴨居51には後述する固定子1を保護するとともに扉6がスムーズに移動(摺動)するように合成樹脂製の鴨居キャップ55が取り付けられている。また、方立52には扉6が衝突した際の衝撃音を抑えるために消音部材として複数個のゴムクッション56が取り付けられている。而して、扉6は鴨居キャップ55と案内レール54により長手方向に移動可能なように略保持され、鴨居51と2つの方立52と敷居53に四方を囲まれた範囲内で移動可能となる。
【0017】
ここで、扉6を移動させるリニアモータは、図3〜図5に示すように、コイル11及び鉄心12からなり進行方向に沿って複数個配列された電磁石、各電磁石を磁気的に結合する固定子ヨーク13で構成される固定子1と、進行方向に沿って複数の磁極が交互に異極となるように電磁石と対向して配設された永久磁石21、永久磁石21の磁極22同士を磁気的に結合する可動子ヨーク23で構成される可動子2と、固定子1に対する可動子2の相対的な位置を検出する複数の磁気センサ31を具備した磁気センサブロック3と、永久磁石21との相互作用により可動子2を移動させる推力を生じさせるように磁気センサブロック3により検出した可動子2の位置に応じたタイミングで各コイル11への通電を制御する制御回路ブロック4とを備えている。
【0018】
固定子ヨーク13は軟磁性材料により可動子2の移動方向に沿った長尺形状に形成され、電磁石を固着するための複数の穴(図示せず)が一定間隔で列設されている。また、コイル11は合成樹脂等の絶縁性材料により形成されたコイルボビン14の周囲に巻回されており、このコイルボビン14の中央部に設けた円筒形の貫通穴に鉄心12を挿着することで電磁石が構成されている。そして、このように構成された複数個の電磁石を、固定子ヨーク13に設けた上記穴に鉄心12の一端側に突設した突起を嵌合し、かしめ等の適宜の方法で固着することによって固定子1が構成してある。本実施形態ではコイル11の相数を3相としてあり、これらのコイル11をY結線し、2相ずつ通電する方式を採用している。
【0019】
可動子2を構成する永久磁石21は移動方向において複数の磁極22が交互に異極になるように設けられており、隣接する磁極22の間の距離(間隔)は一定となっている。この可動子2は1つの磁性体に複数の磁極22ができるように着磁して形成するか、複数個の永久磁石を可動子ヨーク23に取り付けることによって形成される。なお、複数個の永久磁石を可動子ヨーク23に取り付けた構造においては、各永久磁石がそれぞれ1つの磁極を構成する。
【0020】
ここで、本実施形態では固定子1において隣接する一対の電磁石間の距離(間隔)を一定として配列してあり、さらに可動子2の長さと移動距離に応じた一定間隔毎に、電磁石の間隔を上記一定距離よりも永久磁石21の磁極22の2極分だけ広くした空間が設けてあって、この空間に磁気センサブロック3が配置される。
【0021】
磁気センサブロック3は、プリント基板32上に磁気センサ31を3個配置してなり、絶縁材料製のスペーサ33を介して固定子ヨーク13にネジ止め等により固着されている。本実施形態では、磁気センサ31として、磁極22が切り替わる時点でホール素子のアナログ出力がハイレベルとローレベルに切り替えるようにした回路をホール素子に一体化したホールICを用いている。もちろんホール素子と上記回路を別個に設けた構成としてもよい。この磁気センサブロック3はスペーサ33を介して固定子ヨーク13にネジ止め等により固着されており、スペーサ33によって鉄心12とほぼ同じ高さに配置されている。
【0022】
一方、制御回路ブロック40は、図1に示すように直流電源から成る電源部41と、例えば逆起防止用ダイオードDが逆並列に接続された6つのスイッチ素子Qのブリッジ回路で構成されコイル1の各相(U相、V相、W相の3相)を切り換える出力部42と、出力部42の各スイッチ素子Qをスイッチング制御する制御部43と、制御部43に対して扉6の移動を開始させるための起動信号を出力する起動スイッチ44と、後述する長さパラメータ等の各種のデータを記憶するための不揮発性メモリ(EEPROM)からなる記憶部45とを備えている。また、制御部43は、例えばCPUを主構成要素とし、起動スイッチ44が閉成されてCPUの入力ポートに起動信号が入力されると、磁気センサ31からの位置検出信号を入力し、所定のプログラムに基づいて出力部42のスイッチ素子Qを順次オンオフする。この制御回路ブロック40により、固定子1の3相のコイル11の内の2つの相のコイル11に常時電流を流すことにより、永久磁石21を有する可動子2との間で可動子2の長手方向に沿って移動する進行磁界を発生し、この進行磁界によって永久磁石21との間で大略直線的な長手方向に向けて移動し得る推力を得ることができる。
【0023】
ところで、磁気センサブロック3は本来コイル1の各相を切り替えるタイミングを検出するためのものであって、図6(a)〜(c)に示すようにU,V,Wの各相に対応した3個の磁気センサ31から出力されるパルス状の信号を検出信号として出力している。本実施形態では、制御部43において何れかの相の検出信号の立ち上がりに同期して立ち上がるとともに何れかの相の検出信号の立ち下がりに同期して立ち下がるようなパルス信号を作成して位置検出信号としている(図6(d)参照)。すなわち、永久磁石21の隣接する磁極22の間隔は一定であるから、上記位置検出信号のパルス数をカウントすることにより基準位置(例えば、扉6の全開位置又は全閉位置)からの移動距離として扉6の位置を知ることができ、磁気センサブロック3で位置検出手段を構成している。但し、磁気センサブロック3を兼用する代わりに別途扉6の位置を検出するセンサ等を設けてもよい。
【0024】
ここで、制御部43にはCPUのメモリ以外に不揮発性の記憶部45が設けてあるから、この記憶部45に後述する長さパラメータ等を書き込むことにより、一旦パラメータを決定するとCPUの主電源をオフしても電源再投入後は瞬時に記憶部45に記憶されているパラメータを読み込み、再度パラメータ決定のための学習動作などをしなくてよいような構成としている。また、起動スイッチ44は扉6を動作させるためのトリガ信号(起動信号)を出力するスイッチで、人が操作する押釦スイッチやワイヤレスリモコン、あるいは検知エリア内の人の存非を検知して上記起動信号(検知信号)を出力する人体検知センサ等の種々の構成が可能である。
【0025】
ところで本実施形態では、固定子1において磁気センサブロック3に隣接する電磁石以外は、隣接する各一対の電磁石の間隔を一定として配列してあり、また、可動子2の磁極22の間隔も一定としてある。可動子2の磁極22の1極分の長さをLとすると、電磁石を一定ピッチで配置してある部位における電磁石間の距離は、10L/6になるように構成してある。また、磁気センサブロック3における隣接した磁気センサ31同士の間隔を2L/3としてある。
【0026】
図4並びに図5におけるU,V,Wの記号は各電磁石(コイル11)の相(励磁相)を示している。ここで、アポストロフィが付加されている相のコイル11は、アポストロフィが付加されていない同相のコイル11と巻線方向が逆向きになっていることを意味している。例えば、Uに対応するコイル11に上から見て右回りに通電されるときは、U’に対応するコイル11には左回りに通電される。つまり、コイル11の巻方向を同じ向きにしておけば、図示例ではコイル11をU,V’、W、U’、V、W’の順で配列してあり、これらのコイル11を2相ずつ順次通電することにより、U,V→V,W→W,U→U,Vというように循環的に通電する。また、それぞれのコイル11はY結線されていることから、アポストロフィが付加されていないもの同士またはアポストロフィが付加されているもの同士の2相は逆向きに通電される。例えば、図5においてU,Wが励磁されるときに、Uに対応するコイル11とWに対応するコイル11とは逆向きに通電される。言い換えると、固定子1において隣接している2個ずつのコイル11が同時に同じ向きに通電され、通電されている2個のコイル11の組の左右に隣接しているコイル11には通電されず、通電されないコイル11を挟んで左右両側のコイル11の組は互いに逆向きに通電されることになる。
【0027】
ところで従来技術で説明したように、扉6を所定の位置で減速したり一旦停止したりするために、電源投入直後の記憶部45に何も記憶されていない初期状態において扉6の移動範囲を予め計測する長さ学習を行って移動範囲を示す長さパラメータを記憶部45に記憶する必要がある。
【0028】
次に図7のフローチャートを参照して本実施形態における長さパラメータの学習(扉6の移動範囲の計測)動作について説明する。
【0029】
まず、制御部43のCPUが具備するメモリにも記憶部45にも長さパラメータについての情報が何も記憶されていない初期状態で電源を投入したとする。本実施形態における位置センサは絶対位置を検出するセンサでなく磁気センサを用いて相対位置を検出するセンサであるため、電源投入直後の状態では、扉6がどの位置にあるのか判らない。そこで制御部43では、起動スイッチ44がオンされて扉6を開方向へ動作させるための起動信号が入力されたなら開方向へ、起動スイッチ44がオフされて扉6を閉方向へ動作させるための起動信号が入力されたなら閉方向へ扉6を徐行速度で移動させるように速度制御を行う。すなわち、制御部43では扉6の現在位置から全開位置又は全閉位置までの距離が不明であるので、扉6を安全に全開位置又は全閉位置に到達させるために通常時よりも低速の所定の徐行速度で移動させるのである。以後、初期状態で開方向への起動信号が入力したとして説明を進めていくが、閉方向への起動信号が入力された場合は開と閉が入れ替わるだけで動作としては同じである。
【0030】
開方向に動作をはじめた扉6は障害物等がなければ、全開位置の方立52に衝突して停止する。そして、一定時間経過後に制御部43が扉6を徐行速度で閉方向へ移動させる動作を開始する。この動作においても全閉位置の方立52に衝突して扉6は停止する。このとき、制御部43では、扉6の閉動作の開始から終了までの位置検出信号の立ち上がりと立ち下がりの両方をカウントし、そのカウント値を移動範囲L1としてメモリに記憶する。さらに扉6を全閉位置から全開位置まで移動させる開動作においても同様に、扉6の開動作の開始から終了までの位置検出信号の立ち上がりと立ち下がりの両方をカウントし、そのカウント値を移動範囲L2としてメモリに記憶する。そして、制御部43はメモリに記憶した2つの計測値L1,L2を比較し、両者の差分の絶対値(|L1−L2|)が所定の閾値X以上であれば障害物があるなどの何らかの外部要因により異常が発生したと判断して、記憶部45に長さパラメータを記憶せずに発光ダイオードを点滅させるなどして異常報知を行い、さらにメモリをクリアして次の起動信号の入力を待つ待機状態となる。
【0031】
一方、2つの計測値L1,L2の差分の絶対値が所定の閾値X以下であり且つ両者が同じ値ならば(L1=L2)、制御部43は計測値L1(=L2)を長さパラメータLとし、両者の値が異なれば小さい方の計測値を長さパラメータLとしてCPUのメモリに記憶するとともに記憶部45にも記憶する。ここで、上記閾値Xは方立52に取り付けられたゴムクッション56の厚みより大きく且つ指よりは小さな値に設定している。その結果、最も小さい計測値(長さの学習値)が扉6の全開位置と全閉位置の間の移動範囲を示す長さパラメータとして記憶部45に記憶される。このように扉6を少なくとも全開位置から全閉位置および全閉位置から全開位置まで徐行速度で移動させたときの位置検出信号に基づいて全開位置から全閉位置までの扉6の移動範囲を計測して長さパラメータを求めているので、例えば衝突音を低減して静音化を図るために全開位置および全閉位置に設けた方立52にゴムクッション56等の消音部材を取り付けているような場合、扉6の消音部材への当たり具合等によって扉6の移動範囲が変化することがあれば、移動範囲の計測時に移動範囲に変化があることが認識可能となり、ロバスト性を有した長さパラメータの設定が行えるという利点がある。また、本実施形態では、上述のように移動範囲の複数回分の計測値L1,L2の差分(絶対値)が所定の閾値X以下の場合には計測動作を終了するようにしており、この閾値Xを、現実的には移動範囲の変化が考えられる要因より少し大きな値、例えば全開位置又は全閉位置に設けた方立52に取り付けられたゴムクッション56の厚さ以上で人間の指の厚み以下に設定しているため、扉6の移動範囲が変化する要因を考慮しつつ移動範囲の計測が完了できるものである。さらに制御部43では、複数回分の計測値L1,L2の最小値を長さパラメータとして記憶部45に記憶するようにしているので、長さパラメータを記憶部45に記憶した後の通常動作時に指詰め等に対しても安全で且つ障害物がないにも関わらず扉6の移動方向を反転するという誤動作の発生を防ぐことが可能となる。なお、本実施形態では全開位置から全閉位置および全閉位置から全開位置までの一往復(2動作)で長さ学習を行うようにしているが、磁気センサブロック3からなる位置検出手段の精度などを考えて、3動作以上で学習を完了するようにしてもよい。
【0032】
ところで制御部43は、移動範囲の計測中に扉6が障害物に当たったり、手で押し戻されたりしてリニアモータの負荷が変化しても、扉6の移動を継続するように出力部42を制御しているので、移動範囲の計測時にいたずらなどによって扉が押し戻されても計測を続けることができ、計測のやり直しを行うことがなくなるようにできるという利点がある。また、制御部43では、移動範囲の計測中に所定時間を超えて位置検出信号が入力されない場合は扉6が全開位置又は全閉位置に達したものと判断して出力部42のスイッチ素子Qをすべてオフしてリニアモータを停止させており、障害物等がない場合には扉6が方立52等に衝突した位置を全開位置又は全閉位置とできるために正しい移動範囲が計測可能となるとともに所定時間でリニアモータが停止されるために出力部42や制御部43の過熱に対する保護ができるという利点がある。さらに、制御部43では、移動範囲の計測中に所定時間を経過しても全開位置又は全閉位置に達したことが検出されない場合には出力部42のスイッチ素子Qをすべてオフしてリニアモータを停止させるようにしており、所定時間でリニアモータが停止されるため、扉6を少しずつ動作させるように負荷をかけるようないたずらに対して出力部42や制御部43を異常な過熱から保護することができるという利点がある。さらにまた、移動範囲の計測時に扉6を全開位置から全閉位置および全閉位置から全開位置まで移動させてリニアモータを停止させた後の所定時間経過時点における位置検出信号から移動範囲を計測するようにすれば、全開位置や全閉位置に設けられた方立52にゴムクッション56などの消音部材を取り付けているような場合に、全開位置又は全閉位置への扉6の過剰な押しつけ要因を取り除くことができる。そのため、ゴムクッション56があるときの自然状態の移動範囲が計測でき、誤動作をさらに確実に防ぐことができる。
【0033】
次に、長さパラメータを記憶部45に記憶した後に通常の速度制御を行う扉開閉動作に移るのであるが、速度制御方法については、加速域、定速域、減速域を設けて、全開位置および全閉位置の手前で扉6を一旦停止し、最後は徐行速度で扉6を移動させる、という一般的な自動ドアの動作概念に基づいた任意の方法が採用可能である。制御部43では位置検出信号のパルス数をカウントすることにより扉6が全開位置又は全閉位置(方立52)に到達したと判断したら、そのまま出力部42を制御して扉6を同方向へ移動させる推力を加え続け、所定時間だけ扉6を方立52の方へ押し付ける動作を行った後、出力部42のスイッチ素子Qをすべてオフする。このようにすれば、方立52のゴムクッション56の具合により、学習した長さパラメータの値よりも長い距離を移動させなければ扉6が完全に閉まり切らないというような場合にも、上記押し付け動作により扉6を閉め切ることができる。また、指詰め等が発生した場合は位置検出信号のパルス数のカウントが少ない状態で扉6が移動しなくなるので、制御部43では扉6が移動しなくなったことを検知して扉6を開く方向へ反転動作するようにしており、指詰め等に対する安全性を確保することができるとともに、正常動作にも関わらず扉6が反転動作するというような誤動作をなくすることができる。
【0034】
【発明の効果】
請求項1の発明は、モータを駆動源として扉を全開位置と全閉位置の間で移動させる扉開閉装置であって、駆動源としてのモータと、扉の移動を開始させるための起動信号を出力する起動信号出力手段と、扉の位置を検出する位置検出手段と、位置検出手段の検出結果に応じてモータへの通電を調整することにより扉の移動速度を制御する制御手段と、扉の移動速度を制御するために必要な種々のパラメータを記憶する記憶手段とを備え、制御手段は、記憶手段にパラメータが記憶されていない初期状態において、起動信号出力手段から起動信号が出力されると扉を少なくとも全開位置から全閉位置および全閉位置から全開位置まで略一定の速度で移動させ、その際の位置検出手段の検出結果に基づいて全開位置から全閉位置までの扉の移動範囲を計測して長さパラメータとして記憶手段に記憶するものであって、移動範囲の複数回分の計測値の差分が所定値以下の場合には計測動作を終了するとともに、複数回分の計測値の最小値を長さパラメータとして記憶手段に記憶するので、例えば衝突音を低減して静音化を図るために全開位置および全閉位置に設けた方立にゴムクッション等の消音部材を取り付けているような場合、扉の消音部材への当たり具合等によって扉の移動範囲が変化することがあれば、移動範囲の計測時に移動範囲に変化があることが認識可能となり、ロバスト性を有した長さパラメータの設定が行え、また、現実的には移動範囲の変化が考えられる要因より少し大きな値、例えば全開位置又は全閉位置に設けた方立に取り付けられたゴムクッションの厚さ以上で人間の指の厚み以下に前記所定値を設定しておけばよく、これにより、扉の移動範囲が変化する要因を考慮しつつ移動範囲の計測が完了でき、しかも、長さパラメータを記憶手段に記憶した後の通常動作時に指詰め等に対しても安全で且つ障害物がないにも関わらず扉の移動方向を反転するという誤動作の発生を防ぐことが可能となるという効果がある。
【0037】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、制御手段は、移動範囲の計測中にモータの負荷が変化しても扉の移動を継続するようにモータへの通電を調整するので、移動範囲の計測時にいたずらなどによって扉が押し戻されても計測を続けることができ、計測のやり直しを行うことがなくなるようにできるという効果がある。
【0038】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、制御手段は、移動範囲の計測中に所定時間を超えて位置検出手段から検出結果が得られない場合はモータを停止させるので、障害物等がない場合には扉が方立等に衝突した位置を全開位置又は全閉位置とできるために正しい移動範囲が計測可能となるとともに所定時間でモータが停止されるためにモータや制御手段の過熱に対する保護ができるという効果がある。
【0039】
請求項4の発明は、請求項1又は2又は3の発明において、制御手段は、移動範囲の計測中に所定時間を経過しても全開位置又は全閉位置に達したことが位置検出手段で検出されない場合はモータを停止させるので、所定時間でモータが停止されるため、扉を少しずつ動作させるように負荷をかけるようないたずらに対してモータや制御手段を異常な過熱から保護することができるという効果がある。
【0040】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れかの発明において、制御手段は、移動範囲の計測時に扉を全開位置から全閉位置および全閉位置から全開位置まで移動させてモータを停止させた後の所定時間経過時点における位置検出手段の検出結果から移動範囲を計測するので、全開位置や全閉位置に設けられた方立にゴムクッションなどの消音部材を取り付けているような場合に、全開位置又は全閉位置へのモータの過剰な押しつけ要因を取り除くことができるため、ゴムクッションがあるときの自然状態の移動範囲が計測でき、誤動作をさらに確実に防ぐことができるという効果がある。
【0041】
請求項6の発明は、請求項1の発明において、制御手段は、移動範囲の複数回分の計測値間の差分が所定値以上の場合、記憶手段に長さパラメータを記憶せずに異常報知手段により異常報知を行うので、構成上考えられる移動範囲の計測の誤差要因を超えるような異常が発生した場合に異常の発生を使用者に報知することができ、その結果、使用者に対して異常となる要因を取り除いた後に再度移動範囲の計測をやり直すように促すことができるという効果がある。
【0042】
請求項7の発明は、請求項1の発明において、制御手段は、記憶手段に記憶された長さパラメータを用いて扉の移動速度を制御する定常動作時において、扉が長さパラメータの値に応じた距離を移動した後も所定時間だけモータを駆動させるので、長さパラメータの値より長い距離を扉が移動する必要がある場合にも確実に全開位置又は全閉位置まで扉を移動させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態を示す概略回路構成図である。
【図2】同上の全体構成図である。
【図3】同上の側面断面図である。
【図4】同上の要部概略構成図である。
【図5】同上の要部概略構成図である。
【図6】(a)〜(c)は磁気センサの出力信号、(d)は位置検出信号をそれぞれ示す波形図である。
【図7】同上の動作説明用のフローチャートである。
【符号の説明】
3 磁気センサブロック
11 コイル
31 磁気センサ
42 出力部
43 制御部
44 起動スイッチ
45 記憶部
Claims (7)
- モータを駆動源として扉を全開位置と全閉位置の間で移動させる扉開閉装置であって、駆動源としてのモータと、扉の移動を開始させるための起動信号を出力する起動信号出力手段と、扉の位置を検出する位置検出手段と、位置検出手段の検出結果に応じてモータへの通電を調整することにより扉の移動速度を制御する制御手段と、扉の移動速度を制御するために必要な種々のパラメータを記憶する記憶手段とを備え、制御手段は、記憶手段にパラメータが記憶されていない初期状態において、起動信号出力手段から起動信号が出力されると扉を少なくとも全開位置から全閉位置および全閉位置から全開位置まで略一定の速度で移動させ、その際の位置検出手段の検出結果に基づいて全開位置から全閉位置までの扉の移動範囲を計測して長さパラメータとして記憶手段に記憶するものであって、移動範囲の複数回分の計測値の差分が所定値以下の場合には計測動作を終了するとともに、複数回分の計測値の最小値を長さパラメータとして記憶手段に記憶することを特徴とする扉開閉装置。
- 制御手段は、移動範囲の計測中にモータの負荷が変化しても扉の移動を継続するようにモータへの通電を調整することを特徴とする請求項1記載の扉開閉装置。
- 制御手段は、移動範囲の計測中に所定時間を超えて位置検出手段から検出結果が得られない場合はモータを停止させることを特徴とする請求項1又は2記載の扉開閉装置。
- 制御手段は、移動範囲の計測中に所定時間を経過しても全開位置又は全閉位置に達したことが位置検出手段で検出されない場合はモータを停止させることを特徴とする請求項1又は2又は3記載の扉開閉装置。
- 制御手段は、移動範囲の計測時に扉を全開位置から全閉位置および全閉位置から全開位置まで移動させてモータを停止させた後の所定時間経過時点における位置検出手段の検出結果から移動範囲を計測することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の扉開閉装置。
- 制御手段は、移動範囲の複数回分の計測値間の差分が所定値以上の場合、記憶手段に長さパラメータを記憶せずに異常報知手段により異常報知を行うことを特徴とする請求項1記載の扉開閉装置。
- 制御手段は、記憶手段に記憶された長さパラメータを用いて扉の移動速度を制御する定常動作時において、扉が長さパラメータの値に応じた距離を移動した後も所定時間だけモータを駆動させることを特徴とする請求項1記載の扉開閉装置。
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