JP4228517B2 - 扉開閉装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータを駆動源として扉を開閉する扉開閉装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、モータを駆動源として扉を開閉する扉開閉装置が種々提供されている。このような扉開閉装置においては、モータを制御することで加速、減速、一旦停止並びに徐行というように扉の移動速度を制御するのが一般的であり、扉を所定の位置で減速したり一旦停止したりするために、扉の移動する全長を予め測定しておいて記憶装置に記憶する方法がよく採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、扉には重量が異なる種々の種類のものが存在するが、扉開閉装置としては重量の違いや移動時の摩擦抵抗等の違いに関係なく同じように扉を移動させることが望まれる。そして、従来では、ブレーキング時の制動距離を測定し、負荷によってブレーキングの強さを変更したり(特開昭61−62375号公報参照)、あるいは実際のブレーキ終了点と目標点を比較してブレーキ開始点を調整する(特開昭62−107190号公報)ことが行われていた。しかしながら、このような従来例では、全開位置と全閉位置の間で種々の重量の扉に対して安定した速度制御を行うことができかった。
【0004】
本願発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、安定した速度制御のために扉の重さや摩擦力の大きさを総合した負荷推定を可能とした扉開閉装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、モータを駆動源として扉を全開位置と全閉位置の間で移動させる扉開閉装置であって、駆動源としてのモータと、扉の移動を開始させるための起動信号を出力する起動信号出力手段と、扉の位置を検出する位置検出手段と、位置検出手段の検出結果に応じてモータへの通電経路に挿入されるスイッチ要素のデューティ比を変化させることにより扉の移動速度を制御する制御手段と、全開位置から全閉位置までの扉の移動範囲を示す長さパラメータ及び扉の重量や摩擦抵抗を含む負荷の大きさを示す負荷パラメータを含み、扉の移動速度を制御するために必要な種々のパラメータを記憶する記憶手段とを備え、制御手段は、スイッチ要素のデューティ比を決定するデューティ指令値を出力してなり、記憶手段にパラメータが記憶されていない初期状態において、起動信号出力手段から起動信号が出力されると、扉を全開位置から全閉位置又は全閉位置から全開位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの所定区間毎に出力したデューティ指令値を足し合わせた値を負荷パラメータとして記憶手段に記憶し、記憶部に記憶した負荷パラメータの値に応じて移動速度を制御するための制御ゲインを設定することを特徴とし、負荷の大きさに比例するようにデューティ比の値が変化することから、扉の重さや摩擦力の大きさを総合した負荷推定が可能となる。しかも、推定した負荷パラメータに応じて扉の移動速度を制御するため、負荷の大きさに関わらず安定した速度制御を行うことができる。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、制御手段は、起動信号出力手段から起動信号が出力されると、扉を全開位置と全閉位置の間で少なくとも一往復させ、そのときの所定区間毎に出力したデューティ指令値を足し合わせた値を移動方向毎に求めて負荷パラメータとして記憶手段に記憶することを特徴とし、扉を支えている構造物の傾きなどにより開閉方向で摩擦力が異なるような場合でも、開閉方向それぞれにおいて個別に扉の重さや摩擦力の大きさを総合した負荷推定を行うことができる。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、制御手段は、全開位置と全閉位置の間の複数区間毎に負荷パラメータを求めて記憶手段に記憶することを特徴とし、区間毎の負荷変動がわかるため、より詳細に負荷推定が行える。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、制御手段は、求めた負荷パラメータの値が所定の下限値を下回る場合、記憶手段に記憶した負荷パラメータに基づいて扉の移動速度を制御する際に加速時および減速時におけるデューティ比を所定値以下に抑制することを特徴とし、駆動源としてリニアモータを用いたような場合に、扉重量が軽くて吸引力により扉が持ち上げられるといったトラブルを防止することができる。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れかの発明において、制御手段は、求めた負荷パラメータの値が所定の上限値を上回る場合、記憶手段に記憶せずに異常報知手段により異常報知を行うことを特徴とし、駆動源であるモータの能力を超えたような負荷状態にあることがわかり、扉重量などがモータの能力に適合しているものかどうかを再点検するようにユーザに知らせることができる。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1の発明において、位置検出手段は、扉の移動速度に応じた周期でパルス状の検出信号を出力し、制御手段は、記憶手段にパラメータが記憶されていない初期状態において、起動信号出力手段から起動信号が出力されると、扉を全開位置から全閉位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの位置検出手段から出力される検出信号に基づいて扉の長さパラメータを求めて記憶手段に記憶するとともに、引き続いて扉を全閉位置から全開位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの所定区間毎に出力したデューティ指令値を足し合わせた値を負荷パラメータとして記憶手段に記憶するか、あるいは、起動信号出力手段から起動信号が出力されると、扉を全閉位置から全開位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの位置検出手段から出力される検出信号に基づいて扉の長さパラメータを求めて記憶手段に記憶するとともに、引き続いて扉を全開位置から全閉位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの所定区間毎に出力したデューティ指令値を足し合わせた値を負荷パラメータとして記憶手段に記憶することを特徴とし、一度起動信号を出力することで続けて必要なパラメータを測定できる。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1の発明において、位置検出手段は、扉の移動速度に応じた周期でパルス状の検出信号を出力し、制御手段は、記憶手段にパラメータが記憶されていない初期状態において、起動信号出力手段から起動信号が出力されると、扉を全開位置から全閉位置又は全閉位置から全開位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの位置検出手段から出力される検出信号に基づいて扉の長さパラメータを求めて記憶手段に記憶するとともに、所定区間毎に出力したデューティ指令値を足し合わせた値を負荷パラメータとして記憶手段に記憶することを特徴とし、一度でいろいろな負荷に対応した速度制御に必要な複数のパラメータを測定でき、初期のパラメータ設定に要する時間の短縮が図れる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、扉の駆動源として可動子が直進移動するリニアモータを用いて引き戸式の扉を開閉するようにした実施形態について説明する。但し、回転形のモータの回転運動をギアやベルト等の伝達機構を用いて直進運動に変換したものを駆動源として用いてもよい。
【0014】
図2および図3に示すように、引き戸式の扉6の上部に永久磁石21を具備する可動子2を取り付け、外枠5の一部を構成して扉6の上部を保持する鴨居51に、可動子2と対向するように固定子1を設けている。また、鴨居51の内部には後述する制御回路ブロック4が収納されている。なお、外枠5は鴨居51を上枠とし、鴨居51の両端部に設けられて縦枠となる方立52と、鴨居51と対向するように建物の床面に設置されて下枠となる敷居53とで構成される。敷居53には扉6の下部に取付けられている戸車61を案内するための案内レール54が取り付けてあり、鴨居51には後述する固定子1を保護するとともに扉6がスムーズに移動(摺動)するように合成樹脂製の鴨居キャップ55が取り付けられている。また、方立52には扉6が衝突した際の衝撃音を抑えるために消音部材として複数個のゴムクッション56が取り付けられている。而して、扉6は鴨居キャップ55と案内レール54により長手方向に移動可能なように略保持され、鴨居51と2つの方立52と敷居53に四方を囲まれた範囲内で移動可能となる。
【0015】
ここで、扉6を移動させるリニアモータは、図3〜図5に示すように、コイル11及び鉄心12からなり進行方向に沿って複数個配列された電磁石、各電磁石を磁気的に結合する固定子ヨーク13で構成される固定子1と、進行方向に沿って複数の磁極が交互に異極となるように電磁石と対向して配設された永久磁石21、永久磁石21の磁極22同士を磁気的に結合する可動子ヨーク23で構成される可動子2と、固定子1に対する可動子2の相対的な位置を検出する複数の磁気センサ31を具備した磁気センサブロック3と、永久磁石21との相互作用により可動子2を移動させる推力を生じさせるように磁気センサブロック3により検出した可動子2の位置に応じたタイミングで各コイル11への通電を制御する制御回路ブロック4とを備えている。
【0016】
固定子ヨーク13は軟磁性材料により可動子2の移動方向に沿った長尺形状に形成され、電磁石を固着するための複数の穴(図示せず)が一定間隔で列設されている。また、コイル11は合成樹脂等の絶縁性材料により形成されたコイルボビン14の周囲に巻回されており、このコイルボビン14の中央部に設けた円筒形の貫通穴に鉄心12を挿着することで電磁石が構成されている。そして、このように構成された複数個の電磁石を、固定子ヨーク13に設けた上記穴に鉄心12の一端側に突設した突起を嵌合し、かしめ等の適宜の方法で固着することによって固定子1が構成してある。本実施形態ではコイル11の相数を3相としてあり、これらのコイル11をY結線し、2相ずつ通電する方式を採用している。
【0017】
可動子2を構成する永久磁石21は移動方向において複数の磁極22が交互に異極になるように設けられており、隣接する磁極22の間の距離(間隔)は一定となっている。この可動子2は1つの磁性体に複数の磁極22ができるように着磁して形成するか、複数個の永久磁石を可動子ヨーク23に取り付けることによって形成される。なお、複数個の永久磁石を可動子ヨーク23に取り付けた構造においては、各永久磁石がそれぞれ1つの磁極を構成する。
【0018】
ここで、本実施形態では固定子1において隣接する一対の電磁石間の距離(間隔)を一定として配列してあり、さらに可動子2の長さと移動距離に応じた一定間隔毎に、電磁石の間隔を上記一定距離よりも永久磁石21の磁極22の2極分だけ広くした空間が設けてあって、この空間に磁気センサブロック3が配置される。
【0019】
磁気センサブロック3は、プリント基板32上に磁気センサ31を3個配置してなり、絶縁材料製のスペーサ33を介して固定子ヨーク13にネジ止め等により固着されている。本実施形態では、磁気センサ31として、磁極22が切り替わる時点でホール素子のアナログ出力がハイレベルとローレベルに切り替えるようにした回路をホール素子に一体化したホールICを用いている。もちろんホール素子と上記回路を別個に設けた構成としてもよい。この磁気センサブロック3はスペーサ33を介して固定子ヨーク13にネジ止め等により固着されており、スペーサ33によって鉄心12とほぼ同じ高さに配置されている。
【0020】
一方、制御回路ブロック40は、図1に示すように直流電源から成る電源部41と、例えば逆起防止用ダイオードDが逆並列に接続された6つのスイッチ素子Qのブリッジ回路で構成されコイル1の各相(U相、V相、W相の3相)を切り換える出力部42と、出力部42の各スイッチ素子Qをスイッチング制御する制御部43と、制御部43に対して扉6の移動を開始させるための起動信号を出力する起動スイッチ44と、後述する負荷パラメータ等の各種のデータを記憶するための不揮発性メモリ(EEPROM)からなる記憶部45とを備えている。また、制御部43は、例えばCPUを主構成要素とし、起動スイッチ44が閉成されてCPUの入力ポートに起動信号が入力されると、磁気センサ31からの位置検出信号を入力し、所定のプログラムに基づいて出力部42のスイッチ素子Qを順次オンオフする。この制御回路ブロック40により、固定子1の3相のコイル11の内の2つの相のコイル11に常時電流を流すことにより、永久磁石21を有する可動子2との間で可動子2の長手方向に沿って移動する進行磁界を発生し、この進行磁界によって永久磁石21との間で大略直線的な長手方向に向けて移動し得る推力を得ることができる。
【0021】
ところで、磁気センサブロック3は本来コイル1の各相を切り替えるタイミングを検出するためのものであって、図6(a)〜(c)に示すようにU,V,Wの各相に対応した3個の磁気センサ31から出力されるパルス状の信号を検出信号として出力している。本実施形態では、制御部43において何れかの相の検出信号の立ち上がりに同期して立ち上がるとともに何れかの相の検出信号の立ち下がりに同期して立ち下がるようなパルス信号を作成して位置検出信号としている(図6(d)参照)。すなわち、永久磁石21の隣接する磁極22の間隔は一定であるから、上記位置検出信号のパルス数をカウントすることにより基準位置(例えば、扉6の全開位置又は全閉位置)からの移動距離として扉6の位置を知ることができ、磁気センサブロック3で位置検出手段を構成している。但し、磁気センサブロック3を兼用する代わりに別途扉6の位置を検出するセンサ等を設けてもよい。
【0022】
ここで、制御部43にはCPUのメモリ以外に不揮発性の記憶部45が設けてあるから、この記憶部45に後述する負荷パラメータ等を書き込むことにより、一旦パラメータを決定するとCPUの主電源をオフしても電源再投入後は瞬時に記憶部45に記憶されているパラメータを読み込み、再度パラメータ決定のための学習動作などをしなくてよいような構成としている。また、起動スイッチ44は扉6を動作させるためのトリガ信号(起動信号)を出力するスイッチで、人が操作する押釦スイッチやワイヤレスリモコン、あるいは検知エリア内の人の存非を検知して上記起動信号(検知信号)を出力する人体検知センサ等の種々の構成が可能である。
【0023】
ところで本実施形態では、固定子1において磁気センサブロック3に隣接する電磁石以外は、隣接する各一対の電磁石の間隔を一定として配列してあり、また、可動子2の磁極22の間隔も一定としてある。可動子2の磁極22の1極分の長さをLとすると、電磁石を一定ピッチで配置してある部位における電磁石間の距離は、10L/6になるように構成してある。また、磁気センサブロック3における隣接した磁気センサ31同士の間隔を2L/3としてある。
【0024】
図4並びに図5におけるU,V,Wの記号は各電磁石(コイル11)の相(励磁相)を示している。ここで、アポストロフィが付加されている相のコイル11は、アポストロフィが付加されていない同相のコイル11と巻線方向が逆向きになっていることを意味している。例えば、Uに対応するコイル11に上から見て右回りに通電されるときは、U’に対応するコイル11には左回りに通電される。つまり、コイル11の巻方向を同じ向きにしておけば、図示例ではコイル11をU,V’、W、U’、V、W’の順で配列してあり、これらのコイル11を2相ずつ順次通電することにより、U,V→V,W→W,U→U,Vというように循環的に通電する。また、それぞれのコイル11はY結線されていることから、アポストロフィが付加されていないもの同士またはアポストロフィが付加されているもの同士の2相は逆向きに通電される。例えば、図5においてU,Wが励磁されるときに、Uに対応するコイル11とWに対応するコイル11とは逆向きに通電される。言い換えると、固定子1において隣接している2個ずつのコイル11が同時に同じ向きに通電され、通電されている2個のコイル11の組の左右に隣接しているコイル11には通電されず、通電されないコイル11を挟んで左右両側のコイル11の組は互いに逆向きに通電されることになる。
【0025】
ここで、制御部43の速度制御について簡単に説明する。例えば、記憶部45には加速時、定速時、減速時等における移動速度の目標値が予め記憶させてあり、制御部43では、実際の扉6の移動速度が記憶部45から読み出した目標値に略一致するように出力部42の各スイッチ素子Qのデューティ比を可変している。具体的には制御部43のCPUから与えられるデューティ指令値に応じてスイッチ素子Qのデューティ比が決定される。すなわち、制御部43のCPUは単位時間当たりの位置検出信号のパルス数をサンプリングして扉6の移動速度を算出し、算出した移動速度と目標値との差(偏差)を求め、例えば、今回までのサンプリングで求めた偏差に対してそれぞれの偏差の値に応じた制御ゲイン(一般的なPI制御における比例ゲイン)を乗算した値を加算して得た新たなデューティ指令値に応じてスイッチ素子Qのデューティ比を可変することにより、偏差を減少させて扉6の移動速度を目標値に略一致させるように制御している。なお、各偏差に応じた制御ゲインは予め記憶部45に記憶させてある。
【0026】
ところで、従来技術において説明したように、扉開閉装置としては扉6の重量の違いや移動時の摩擦抵抗等の違いに関係なく同じように扉6を移動させることが望まれており、このためには扉6の重量や摩擦抵抗等を含む負荷の大きさを示す負荷パラメータに応じて最適な制御ゲインを設定すればよい。そこで、本発明では記憶部45に負荷パラメータが記憶されていない初期状態において、実際に扉6を移動させて負荷パラメータを求める(学習する)ことで負荷推定を行い、学習した負荷パラメータに応じて最適な制御ゲインを設定することで負荷の大きさに関係なく常に安定した速度制御が行えるようにしている。
【0027】
次に図7のフローチャートを参照して本実施形態における負荷パラメータの学習(負荷推定)動作について説明する。
【0028】
まず、制御部43のCPUが具備するメモリにも記憶部45にも負荷パラメータについての情報が何も記憶されていない初期状態で電源を投入したとする。このとき、扉6の移動範囲(全開位置から全閉位置までの距離)のデータである長さパラメータが記憶部45に記憶されているものとする。本実施形態における位置センサは絶対位置を検出するセンサでなく磁気センサを用いて相対位置を検出するセンサであるため、電源投入直後の状態では、扉6がどの位置にあるのか判らない。そこで制御部43では、起動スイッチ44がオンされて扉6を開方向へ動作させるための起動信号が入力されたなら開方向へ、起動スイッチ44がオフされて扉6を閉方向へ動作させるための起動信号が入力されたなら閉方向へ扉6を徐行速度で移動させるように速度制御を行う。すなわち、制御部43では扉6の現在位置から全開位置又は全閉位置までの距離が不明であるので、扉6を安全に全開位置又は全閉位置に到達させるために通常時よりも低速の所定の徐行速度で移動させるのである。以後、初期状態で開方向への起動信号が入力したとして説明を進めていくが、閉方向への起動信号が入力された場合は開と閉が入れ替わるだけで動作としては同じである。
【0029】
開方向に動作をはじめた扉6は障害物等がなければ、全開位置の方立52に衝突して停止する。そして、一定時間経過後に制御部43が扉6を徐行速度で閉方向へ移動させる動作を開始する。この動作においても全閉位置の方立52に衝突して扉6は停止する。このとき、この閉動作の開始から終了まで一定の徐行速度で動作するように制御部43でデューティ比を変化させるように出力部42にデューティ指令値を出力している。制御部43では、静止状態の扉6が移動し始めてから徐行速度に到達するまでの時間を考慮に入れて、閉動作開始から一定距離を経過してから、一定の徐行速度になるように指令しているデューティ指令値を、例えば磁気センサブロック3の出力から得た位置検出信号と同期させて一定距離ごとに計測してCPUのメモリに一時保存する。ここで、扉6の移動範囲のデータが長さパラメータとして記憶部45に記憶されているので、位置検出信号のパルス数を計測して全閉位置に到達する直前までデューティ指令値をメモリに一時保存しておく。そして、全閉位置に到達したら、CPUはメモリに一時保存したそれぞれの位置でのデューティ指令値を足し合わせた値を負荷パラメータWとしてメモリに一時保存する。すなわち、CPUでは位置検出信号に基づいて算出した扉6の移動速度が所定の徐行速度に略一致するようにデューティ比を可変するデューティ指令値を出力部42に出力しており、扉6の重量や摩擦力の大きさなどに応じて所定の徐行速度に速度制御するためのデューティ指令値が変化することになる。よって、上述のように扉6を所定の徐行速度で移動させた場合の一定区間のデューティ指令値から負荷パラメータWを求めて負荷推定を行うことができるのである。
【0030】
ここで、制御部43のCPUにおいては、求めた負荷パラメータWと、駆動源となるリニアモータの性能等に基づいて予め設定されている閾値W1,W2(W1<W2)とを比較し、W<W1ならば負荷小、W1<W<W2ならば負荷中、W2<Wならば負荷大というように負荷パラメータWの値に応じて負荷レベルを大中小の3段階に区別するとともに、各負荷レベルに応じた最適な制御ゲインを速度制御用のプログラムから読み出し、さらに求めた負荷パラメータWと読み出した制御ゲインを記憶部45に記憶し、負荷パラメータWの学習動作を完了して通常動作における起動信号の入力待機状態となる。そして、起動信号が入力されれば、制御部43は記憶部45に記憶された制御ゲインを用いて扉6の移動速度を制御するのである。このように負荷の大きさに応じて最適な制御ゲインが選択されて実際の速度制御が行われるため、負荷の大きさに関わらずに常に同様な位置−速度特性となるような制御を行うことが可能になる。なお、負荷の大きさを4段階以上に区別するようにしてもよい。
【0031】
ここで、負荷パラメータWの値が閾値W1よりも小さい値に設定された下限値以下の場合、制御部43は負荷パラメータWに基づいて扉6の移動速度を制御する際に加速時および減速時におけるデューティ比を所定値以下に抑制するようにしてもよい。すなわち、駆動源としてリニアモータを用いた場合に、扉6の重量が軽くて磁気吸引力により扉6が持ち上げられるといったトラブルが発生する虞があり、上述のように加速時および減速時にデューティ比を所定値以下に抑制することで上記トラブルを防止することができる。また、求めた負荷パラメータWの値が閾値W2よりも大きい値に設定された上限値以上の場合、記憶部45に記憶せずに発光ダイオードを点滅させるなどして異常報知を行うようにすれば、駆動源であるリニアモータの能力を超えたような負荷状態にあることがわかり、扉6の重量などがリニアモータの能力に適合しているものかどうかを再点検するようにユーザに知らせることができるという利点がある。
【0032】
ところで、本実施形態では全開位置から全閉位置又は全閉位置から全開位置まで扉6を移動させることで負荷パラメータを求める用にしているが、より高精度の速度制御を行うために、扉6を全開位置と全閉位置の間で少なくとも一往復させて移動方向毎に負荷パラメータを求めるようにしてもよい。このようにすれば、扉6を支えている構造物(鴨居51や敷居53)の傾きなどにより開閉方向で摩擦力が異なるような場合でも、開閉方向それぞれにおいて個別に扉6の重さや摩擦力の大きさを総合した負荷推定を行うことができる。また、開閉方向毎に求めた負荷パラメータの平均値((開方向の負荷パラメータ+閉方向の負荷パラメータ)/2)を計算して負荷パラメータとすれば、開閉方向による傾き要因を取り除くことができるため、より正確な負荷推定が行えるという利点を有する。あるいは、全開位置と全閉位置の間の複数区間毎に負荷パラメータを求めるようにすれば、区間毎の負荷変動がわかるため、より詳細に負荷推定が行える。
【0033】
また本実施形態では予め長さパラメータの学習が完了しているとして説明したが、制御部43のメモリにも記憶部45にも長さパラメータや負荷パラメータについての情報が何も記憶されていない初期状態で起動信号が入力されたなら、制御部43が扉6を全開位置から全閉位置又は全閉位置から全開位置まで徐行速度で移動させたときの位置検出信号に基づいて扉6の移動範囲(長さパラメータ)を求め、さらに引き続いて扉6を全開位置から全閉位置又は全閉位置から全開位置まで徐行速度で移動させて負荷パラメータを求めるようにすれば、一度起動スイッチ44を操作して起動信号を出力するだけで続けて必要なパラメータを測定できるという利点がある。あるいは、制御部43のメモリにも記憶部45にも長さパラメータや負荷パラメータについての情報が何も記憶されていない初期状態で起動信号が入力されたなら、制御部43が扉6を全開位置から全閉位置又は全閉位置から全開位置まで徐行速度で移動させたときの位置検出信号に基づいて扉6の移動範囲(長さパラメータ)を求めるとともに所定区間でのデューティ比の値に基づいて負荷パラメータを求めるようにすれば、一度でいろいろな負荷に対応した速度制御に必要な複数のパラメータ(長さパラメータおよび負荷パラメータ)を測定でき、初期のパラメータ設定に要する時間の短縮が図れるという利点がある。
【0034】
【発明の効果】
請求項1の発明は、モータを駆動源として扉を全開位置と全閉位置の間で移動させる扉開閉装置であって、駆動源としてのモータと、扉の移動を開始させるための起動信号を出力する起動信号出力手段と、扉の位置を検出する位置検出手段と、位置検出手段の検出結果に応じてモータへの通電経路に挿入されるスイッチ要素のデューティ比を変化させることにより扉の移動速度を制御する制御手段と、全開位置から全閉位置までの扉の移動範囲を示す長さパラメータ及び扉の重量や摩擦抵抗を含む負荷の大きさを示す負荷パラメータを含み、扉の移動速度を制御するために必要な種々のパラメータを記憶する記憶手段とを備え、制御手段は、スイッチ要素のデューティ比を決定するデューティ指令値を出力してなり、記憶手段にパラメータが記憶されていない初期状態において、起動信号出力手段から起動信号が出力されると、扉を全開位置から全閉位置又は全閉位置から全開位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの所定区間毎に出力したデューティ指令値を足し合わせた値を負荷パラメータとして記憶手段に記憶し、記憶部に記憶した負荷パラメータの値に応じて移動速度を制御するための制御ゲインを設定するので、負荷の大きさに比例するようにデューティ比の値が変化することから、扉の重さや摩擦力の大きさを総合した負荷推定が可能となり、しかも、推定した負荷パラメータに応じて扉の移動速度を制御するため、負荷の大きさに関わらず安定した速度制御を行うことができるという効果がある。
【0035】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、制御手段は、起動信号出力手段から起動信号が出力されると、扉を全開位置と全閉位置の間で少なくとも一往復させ、そのときの所定区間毎に出力したデューティ指令値を足し合わせた値を移動方向毎に求めて負荷パラメータとして記憶手段に記憶するので、扉を支えている構造物の傾きなどにより開閉方向で摩擦力が異なるような場合でも、開閉方向それぞれにおいて個別に扉の重さや摩擦力の大きさを総合した負荷推定を行うことができるという効果がある。
【0036】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、制御手段は、全開位置と全閉位置の間の複数区間毎に負荷パラメータを求めて記憶手段に記憶するので、区間毎の負荷変動がわかるため、より詳細に負荷推定が行えるという効果がある。
【0038】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、制御手段は、求めた負荷パラメータの値が所定の下限値を下回る場合、記憶手段に記憶した負荷パラメータに基づいて扉の移動速度を制御する際に加速時および減速時におけるデューティ比を所定値以下に抑制するので、駆動源としてリニアモータを用いたような場合に、扉重量が軽くて吸引力により扉が持ち上げられるといったトラブルを防止することができるという効果がある。
【0039】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れかの発明において、制御手段は、求めた負荷パラメータの値が所定の上限値を上回る場合、記憶手段に記憶せずに異常報知手段により異常報知を行うので、駆動源であるモータの能力を超えたような負荷状態にあることがわかり、扉重量などがモータの能力に適合しているものかどうかを再点検するようにユーザに知らせることができるという効果がある。
【0040】
請求項6の発明は、請求項1の発明において、位置検出手段は、扉の移動速度に応じた周期でパルス状の検出信号を出力し、制御手段は、記憶手段にパラメータが記憶されていない初期状態において、起動信号出力手段から起動信号が出力されると、扉を全開位置から全閉位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの位置検出手段から出力される検出信号に基づいて扉の長さパラメータを求めて記憶手段に記憶するとともに、引き続いて扉を全閉位置から全開位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの所定区間毎に出力したデューティ指令値を足し合わせた値を負荷パラメータとして記憶手段に記憶するか、あるいは、起動信号出力手段から起動信号が出力されると、扉を全閉位置から全開位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの位置検出手段から出力される検出信号に基づいて扉の長さパラメータを求めて記憶手段に記憶するとともに、引き続いて扉を全開位置から全閉位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの所定区間毎に出力したデューティ指令値を足し合わせた値を負荷パラメータとして記憶手段に記憶するので、一度起動信号を出力することで続けて必要なパラメータを測定できるという効果がある。
【0041】
請求項7の発明は、請求項1の発明において、位置検出手段は、扉の移動速度に応じた周期でパルス状の検出信号を出力し、制御手段は、記憶手段にパラメータが記憶されていない初期状態において、起動信号出力手段から起動信号が出力されると、扉を全開位置から全閉位置又は全閉位置から全開位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの位置検出手段から出力される検出信号に基づいて扉の長さパラメータを求めて記憶手段に記憶するとともに、所定区間毎に出力したデューティ指令値を足し合わせた値を負荷パラメータとして記憶手段に記憶するので、一度でいろいろな負荷に対応した速度制御に必要な複数のパラメータを測定でき、初期のパラメータ設定に要する時間の短縮が図れるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態を示す概略回路構成図である。
【図2】同上の全体構成図である。
【図3】同上の側面断面図である。
【図4】同上の要部概略構成図である。
【図5】同上の要部概略構成図である。
【図6】(a)〜(c)は磁気センサの出力信号、(d)は位置検出信号をそれぞれ示す波形図である。
【図7】同上の動作説明用のフローチャートである。
【符号の説明】
3 磁気センサブロック
11 コイル
31 磁気センサ
42 出力部
43 制御部
44 起動スイッチ
45 記憶部
Claims (7)
- モータを駆動源として扉を全開位置と全閉位置の間で移動させる扉開閉装置であって、駆動源としてのモータと、扉の移動を開始させるための起動信号を出力する起動信号出力手段と、扉の位置を検出する位置検出手段と、位置検出手段の検出結果に応じてモータへの通電経路に挿入されるスイッチ要素のデューティ比を変化させることにより扉の移動速度を制御する制御手段と、全開位置から全閉位置までの扉の移動範囲を示す長さパラメータ及び扉の重量や摩擦抵抗を含む負荷の大きさを示す負荷パラメータを含み、扉の移動速度を制御するために必要な種々のパラメータを記憶する記憶手段とを備え、制御手段は、スイッチ要素のデューティ比を決定するデューティ指令値を出力してなり、記憶手段にパラメータが記憶されていない初期状態において、起動信号出力手段から起動信号が出力されると、扉を全開位置から全閉位置又は全閉位置から全開位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの所定区間毎に出力したデューティ指令値を足し合わせた値を負荷パラメータとして記憶手段に記憶し、記憶部に記憶した負荷パラメータの値に応じて移動速度を制御するための制御ゲインを設定することを特徴とする扉開閉装置。
- 制御手段は、起動信号出力手段から起動信号が出力されると、扉を全開位置と全閉位置の間で少なくとも一往復させ、そのときの所定区間毎に出力したデューティ指令値を足し合わせた値を移動方向毎に求めて負荷パラメータとして記憶手段に記憶することを特徴とする請求項1記載の扉開閉装置。
- 制御手段は、全開位置と全閉位置の間の複数区間毎に負荷パラメータを求めて記憶手段に記憶することを特徴とする請求項1又は2記載の扉開閉装置。
- 制御手段は、求めた負荷パラメータの値が所定の下限値を下回る場合、記憶手段に記憶した負荷パラメータに基づいて扉の移動速度を制御する際に加速時および減速時におけるデューティ比を所定値以下に抑制することを特徴とする請求項1記載の扉開閉装置。
- 制御手段は、求めた負荷パラメータの値が所定の上限値を上回る場合、記憶手段に記憶せずに異常報知手段により異常報知を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の扉開閉装置。
- 位置検出手段は、扉の移動速度に応じた周期でパルス状の検出信号を出力し、制御手段は、記憶手段にパラメータが記憶されていない初期状態において、起動信号出力手段から起動信号が出力されると、扉を全開位置から全閉位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの位置検出手段から出力される検出信号に基づいて扉の長さパラメータを求めて記憶手段に記憶するとともに、引き続いて扉を全閉位置から全開位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの所定区間毎に出力したデューティ指令値を足し合わせた値を負荷パラメータとして記憶手段に記憶するか、あるいは、起動信号出力手段から起動信号が出力されると、扉を全閉位置から全開位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの位置検出手段から出力される検出信号に基づいて扉の長さパラメータを求めて記憶手段に記憶するとともに、引き続いて扉を全開位置から全閉位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの所定区間毎に出力したデューティ指令値を足し合わせた値を負荷パラメータとして記憶手段に記憶することを特徴とする請求項1記載の扉開閉装置。
- 位置検出手段は、扉の移動速度に応じた周期でパルス状の検出信号を出力し、制御手段は、記憶手段にパラメータが記憶されていない初期状態において、起動信号出力手段から起動信号が出力されると、扉を全開位置から全閉位置又は全閉位置から全開位置まで略一定の速度で移動させ、そのときの位置検出手段から出力される検出信号に基づいて扉の長さパラメータを求めて記憶手段に記憶するとともに、所定区間毎に出力したデューティ指令値を足し合わせた値を負荷パラメータとして記憶手段に記憶することを特徴とする請求項1記載の扉開閉装置。
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