JP4232094B2 - 高温剪断接着性能に優れた軟質樹脂成形体用組成物及びそれから得られた軟質樹脂成形体 - Google Patents
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可撓性を有する耐熱性材料としては例えば加硫ゴムが挙げられる。加硫ゴムは耐熱性材料として、種々の用途に広く使用されている。しかしながら、耐熱性材料として加硫ゴムを使用する場合、一般に、未加硫の状態で成形したゴムを加硫する必要がある。
アクリル系共重合体のなかでも無溶剤型アクリル系共重合体は、主に塊状重合法により得られるものであり、溶剤を含まない。
前記の無溶剤型アクリル系共重合体を得るために使用する化合物、例えばアクリル酸、メタクリル酸、スチレン及びこれらの誘導体のような二重結合を有する化合物は、一般にラジカル重合開始剤の存在下に溶液重合法〔(ソリューション法、例えば、乳化重合法(エマルジョン重合法)〕、懸濁重合法(サスペンジョン重合法等)又は塊状重合法(バルク法)によって重合可能である。
しかしながら、近年、これら塊状重合の問題点は触媒の選択、開始剤を兼ねたモノマーの使用などによって解決され、高効率で分子量分布の比較的均一な重合体を得ることができるようになった(例えば、特許文献1ないし6参照)。
更に詳しくは、本発明の目的は、常温で液状であるが、短時間加熱することにより、加硫工程のように複雑な反応制御を要せず簡単に硬化させることができる組成物であって、比較的高温下での長期安定性に優れた成形体を与え得る組成物を提供することにある。
A:官能基として1分子当たり平均2.2個以上2.7個以下の水酸基を含有し、数平均分子量8000〜30000の常温で流動性を有する無溶剤型アクリル系共重合体、
B:官能基として1分子当たり平均1.3個以上2.1個以下の水酸基を含有し、数平均分子量2000〜7000の常温で流動性を有する無溶剤型アクリル系共重合体、及び
C:官能基としてイソシアネート基を含有し、常温で流動性を有する液状イソシアネート化合物
を含むことを特徴とする。
また本発明は、本発明の軟質樹脂成形体用組成物を硬化させて得られた軟質樹脂成形体にも関するものである。
本成形体は、剪断保持試験において、100℃で500時間、更には1000時間経過後でさえも、2枚のアルミニウム板相互の初期位置からのズレが生じないという、優れた耐熱剪断接着力の保持能を有するものを得ることができる。
また、本発明の組成物は、成形体を製造する際にも、従来の加硫工程のように複雑な反応の制御を要せず、常温で液状の組成物を短時間加熱することにより簡単に硬化させることができ、比較的高温下で長期にわたり優れた剪断接着性能を維持することができる本発明の成形体を容易に得ることができる。
更に、成分Aとしてのアクリル系共重合体は、ガラス転移温度(Tg,DSC法にて測定した値)が−60℃〜−30℃であることが好ましい。成分Aとしてのアクリル系共重合体のガラス転移温度が−30℃を越える場合は、本組成物が硬くなりすぎて、充分な可撓性を有する成形体が得られ難くなる傾向がある。また、成分Aとしてのアクリル系共重合体のガラス転移温度が−60℃未満の場合は、本組成物が柔らかくなりすぎて、充分な強度を有する成形体が得られ難くなる傾向がある。
また、成分Aとしてのアクリル系共重合体は、常温(好ましくは1013hPa、25℃)の下で流動性を示す必要があり、40Pa・s以下の粘度を有するものであることが好ましい。成分Aとしてのアクリル系共重合体の粘度が40Pa・sより高いと流動性が低下し、本成形体の製造時(例えば、成分Bや成分Cとの混合時)などにおける作業性に劣る傾向がある。
成分Aとしてのアクリル系共重合体は更に、本成形体の製造時にボイドの発生がないように、溶剤分を含有しない形態(無溶剤型)を持つ必要がある。
成分Aとしてのアクリル系共重合体の分子量が8000未満の場合は、本組成物を硬化して得られた本成形体が硬くなる(硬度が高くなる)傾向があり、逆に成分Aとしてのアクリル系共重合体の分子量が30000を越える場合は、硬化前の液状の成分Aの粘度が高くなりすぎ、他の成分との混合時の作業性が悪化する。また成分Aの粘度が高くなりすぎると、ボイドが生成し易くなり成分C(硬化剤)との均質な混合を困難なものとするため、本組成物を接着剤として使用する場合の接着状態の信頼性の点で好ましくない。
更に、成分Bとしてのアクリル系共重合体は、ガラス転移温度(Tg,DSC法にて測定した値)が−60℃〜−30℃であることが好ましい。成分Bとしてのアクリル系共重合体のガラス転移温度が−20℃を越える場合は、本組成物が硬くなりすぎて、充分な可撓性を有する成形体が得られ難くなる傾向がある。また、成分Bとしてのアクリル系共重合体のガラス転移温度が−60℃未満の場合は、本組成物が柔らかくなりすぎて、充分な強度を有する成形体が得られ難くなる傾向がある。
成分Bとしてのアクリル系共重合体は更に、本成形体の製造時にボイドの発生がないように、溶剤分を含有しない形態(無溶剤型)を持つ必要がある。
成分Bは成分Aと比較して平均分子量が小さく、また1分子当たりに含まれる平均官能基数が少ないため成分Aよりも流動性がよく、それ故、成分Aと混合する際に、混合系全体の粘度を低下させることができる利点がある。更に、成分Bは1分子当たりに含まれる平均官能基数が適度に低いため、程良いタック性を発現でき、本組成物の感圧接着性能を向上させることができる。
成分Cの液状イソシアネート化合物は、常温(好ましくは1013hPa、25℃)の下で液状であり、且つ1013hPa下で100℃、10分間加熱後の重量減少値が加熱前の重量に対して3%以下である実質的に溶媒を含まないものが望ましい。
前記の加熱重量減少値は、メトラートレド(株)社製EG53型ハロゲン水分計を用い、常圧(1013hPa)の下で、試料5gを100℃、10分間加熱した時の加熱前後の重量変化より算出した値である。
C1:カルボジイミド変性メチレンジフェニルジイソシアネート、
C2:メチレンジフェニルジイソシアネート、及び
C3:メチレンジフェニルジイソシアネートとジオールとのプレポリマー
を含有し、成分C1の割合が成分Cの全質量に基づき10〜97質量%である化合物が好ましい。
本組成物に特定の機能を付与するために、例えば難燃性を向上させるために、水酸化アルミニウム等の充填剤を添加することも可能である。
また、増量剤として炭酸カルシウム等を配合することも何ら問題はない。
前記充填剤はまた、同一又は異なる組成であって粒径の異なるものを組み合わせて使用することも可能である。充填剤の添加量を多くする必要がある場合などは特に、粒径の異なる数種類の充填剤を組み合わせることにより、本組成物の粘度を低下することができるので好ましい。
3級アミンとして、具体的には、トリエチレンジアミン(TEDA)、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。
有機スズ化合物としては、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート(DBTDL)、ジブチルチンジマレエート(DBTDM)等が挙げられる。
また、混合撹拌された配合物(例えば、成分Aと成分Bとの配合物)は、未分散の充填剤等の固まりを除去する目的で、必要に応じて濾過を行っても何ら問題はない。
前記混合撹拌に当たり、前記撹拌機で撹拌後脱泡したり、スタティックミキサーにより混合撹拌することができる。混合撹拌の操作において、液中に生じた気泡は減圧下で脱泡することが好ましい。
本発明の成形体はASKER−C硬度計において25℃での硬度が50以下、好ましくは40以下である。本成形体は、硬度が50より高いと柔軟性が低下するので、充分な柔軟性(可撓性)を確保するため、硬度は50以下とする必要がある。
本成形体の硬度の調整は、成分Aと成分Bの比率、成分Cである液状イソシアネート化合物の種類、充填剤の種類や添加量により適宜調整することができる。本成形体の硬度は、硬化反応が完結した時点での硬度を示す。
本組成物から得られた本成形体は、耐熱性に優れていると同時にASKER−C硬度計における硬度(25℃)が50以下である等、充分な可撓性を持ち、曲面等の非平面への追従性に優れた軟質樹脂成形体である。
後述の剪断保持試験についても、25mm×25mmの接着面積に、10g/cm2 の荷重を加えた状態での剪断保持試験において、100℃で500時間、更には1000時間経過後でさえも、2枚のアルミニウム板相互の初期位置からのズレが生じない本成形体を、本組成物を硬化させて得ることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。
本発明の組成物及び比較例の組成物の原料であるアクリル系モノマーの例及びイソシアネート化合物の例(特に、3官能性イソシアネート化合物の例)を下記表1に示す。
下記表4に示す無溶剤型アクリル系共重合体(アクリル樹脂)、液状イソシアネート化合物、触媒、消泡剤、脱水剤及び光安定剤を表4に示す割合(質量%)で配合し、混合撹拌後、充分に脱泡して本発明の組成物を得た。触媒、消泡剤、脱水剤及び光安定剤は、下記のものを用いた。
触媒:「U−340」,日東化成株式会社製
消泡剤:「SAG−47」,日本ユニカー株式会社製
脱水剤:「ゼオラムA3」,東ソー株式会社製
光安定剤:「Irganox 1135」,チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製
実施例と同様、下記表5に示す無溶剤型アクリル系共重合体(アクリル樹脂)、液状イソシアネート化合物、触媒、消泡剤、脱水剤及び光安定剤を表5に示す割合(質量%)で配合し、混合撹拌後、充分に脱泡して比較例の組成物を得た。
本発明の成形体及び比較例の成形体の高温剪断接着性能(耐熱剪断接着力の保持能)の試験(剪断保持試験)は、JIS K 0237の8.3.3に準拠した方法にて行った。以下、図1に基づいて試験方法を説明する。図1(a)に示すように、シート状の本発明の成形体及び比較例の成形体を25mm×25mm(厚さ1.5mm)の寸法にカットして試験片1を作成し、2枚のアルミニウム板2,3(寸法:30mm×100mm,厚さ3mm)の間に挟み、5kgf(49N)の力を15分間加えて密着させた。この積層体のうちの1枚のアルミニウム板2を固定し、もう1枚のアルミニウム板3に100gのおもり4を吊るし、100℃(又は80℃にて試験してもよい)のオーブン中で500時間保持し、図1(b)に示すように、2枚のアルミニウム板相互の初期位置〔アルミニウム板3の上端をアルミニウム板2の表面に投影させた位置;図1(b)におけるL1 ;例えば、アルミニウム板2の端面に線などの印を付けておくと判り易い〕からのズレ5〔図1(b)の右側の図におけるL1 とL2 との間隔;図1(b)におけるL2 は、500時間保持後の、アルミニウム板3の上端をアルミニウム板2の表面に投影させた位置;例えば、アルミニウム板2の端面に線などの印を付けておくと判り易い〕を測定した。なお、試験片1の性状により、図1(b)のように2枚のアルミニウム板2,3がズレるのみならず、試験片1の変形を伴う場合があるが、全て同様の方法にて、2枚のアルミニウム板相互の初期位置からのズレを測定することができる。
2,3:アルミニウム板
4:おもり
5:ズレ
Claims (6)
- A:官能基として1分子当たり平均2.2個以上2.7個以下の水酸基を含有し、数平均分子量8000〜30000の常温で流動性を有する無溶剤型アクリル系共重合体、
B:官能基として1分子当たり平均1.3個以上2.1個以下の水酸基を含有し、数平均分子量2000〜7000の常温で流動性を有する無溶剤型アクリル系共重合体、及び
C:官能基としてイソシアネート基を含有し、常温で流動性を有する液状イソシアネート化合物
を含むことを特徴とする軟質樹脂成形体用組成物。 - 成分Cが少なくとも、
C1:カルボジイミド変性メチレンジフェニルジイソシアネート、
C2:メチレンジフェニルジイソシアネート、及び
C3:メチレンジフェニルジイソシアネートとジオールとのプレポリマー
を含有し、成分C1の割合が成分Cの全質量に基づき10〜97質量%であることを特徴とする請求項1記載の軟質樹脂成形体用組成物。 - 成分Cとして、分子内に少なくとも3個のイソシアネート基を含有するイソシアネート化合物を更に含むことを特徴とする請求項2記載の軟質樹脂成形体用組成物。
- 成分A又は成分Bが、沸点が200℃以上のモノマーを主体とするモノマー混合物から得られた無溶剤型アクリル系共重合体であって、成分A又は成分Bの構造単位中に前記モノマーが80質量%以上含まれることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項記載の軟質樹脂成形体用組成物。
- 剪断保持試験において、100℃で500時間経過後も、2枚のアルミニウム板相互の初期位置からのズレが生じないことを特徴とする、請求項1又は2記載の軟質樹脂成形体用組成物を硬化させて得られた軟質樹脂成形体。
- 剪断保持試験において、100℃で500時間経過後も、2枚のアルミニウム板相互の初期位置からのズレが生じないことを特徴とする、請求項3記載の軟質樹脂成形体用組成物を硬化させて得られた軟質樹脂成形体。
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