JP4231618B2 - スライド式アームの給脂装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クレーンや油圧ショベル等に用いられるテレスコープ式に組み立てられたスライド式アームまたはブームの、摺動部を潤滑するグリースを供給する給脂装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、テレスコープ式に組み立てられたスライド式アームまたはブームの摺動部のグリース給脂方法については各種あるが、一例として実開昭62−17693号公報に開示されたものがある。
【0003】
図6は実開昭62−17693号公報に開示された多段伸縮ブームの給脂装置の側面断面図であり、ブーム最縮小状態のブーム基端部を示している。図6は4段伸縮ブームの場合について示しており、最外側のブーム筒50内にブーム筒51を、ブーム筒51内にブーム筒52を、ブーム筒52内にブーム筒53を、順次伸縮自在に嵌挿して構成している。最外側のブーム筒50を除くブーム筒51,52,53の基端部上側に、それぞれ、隣接する外側ブームの内面と摺動自在に当接するスライドプレート(本願の摺動パッドに相当する。以後、摺動パッドと言う)54,55,56を配設している。摺動パッド54,55,56の上方に位置した最外側のブーム筒50に細径の貫通穴を設けてあり、この貫通穴に給脂ニップル60,61,62を設けている。これらの給脂ニップル60,61,62に、グリースガン等で給脂するようにしている。ブーム筒51には摺動パッド55の上方に位置して給脂孔63が穿設され、給脂孔63の周囲のブーム筒51には上方に開口した油脂溜66が設けられている。ブーム筒52には摺動パッド56の上方に位置して給脂孔64が穿設され、給脂孔64の周囲のブーム筒52には上方に開口した油脂溜67が設けられている。また、ブーム筒51には油脂溜67の上方に位置して給脂孔65が穿設されており、給脂孔65の周囲のブーム筒51には上方に開口した油脂溜68が設けられている。
【0004】
上記構成において給脂する場合には、各ブーム筒51,52,53を最縮小状態にしておく。給脂ニップル60に給脂されたグリースは摺動パッド54に給脂される。給脂ニップル61に給脂されたグリースは、先ず油脂溜66に入り、給脂孔63から摺動パッド55に給脂される。給脂ニップル62に給脂されたグリースは、先ず油脂溜68に入り、次に給脂孔65から次の油脂溜67に入り、給脂孔64を経て摺動パッド56に給脂される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記実開昭62−17693号公報に開示された給脂装置においては、各給脂ニップル60,61,62はブーム最縮小状態のときに各油脂溜66,67,68及び各摺動パッド54,55,56の上方に位置するようになっているため、給脂する場合には各ブーム筒51,52,53を確実に最縮小状態にする必要があり、従って給脂のための準備作業に時間がかかって作業性が良くない。また、各ブーム筒51,52,53の位置がずれた状態で給脂した場合には、各摺動パッド54,55,56には給脂されず、グリースは不必要な箇所に無駄に供給されるという問題がある。さらに、ブーム最縮小状態で給脂後に各ブーム筒51,52,53を伸長すると、油脂溜66,67のグリースはブーム筒内の不必要な箇所に落下するので、グリースを無駄に消費するという問題がある。また、最基端側に位置する摺動パッド54には油脂溜が設けられてないため、他に比べてグリースの給脂間隔を短くする必要がある。
【0006】
本発明は上記の問題点に着目し、ブームまたはアームの伸縮位置にかかわらず給脂可能であり、必要な箇所にのみ給脂してグリースを無駄に消費することがなく、給脂時間間隔を長くできるスライド式アームの給脂装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段、作用および効果】
上記の目的を達成するために、本発明に係るスライド式アームの給脂装置の第1発明は、複数の筒状アームを順次テレスコープ式に伸縮自在に嵌挿してなるスライド式アームの摺動部に潤滑用のグリースを供給するスライド式アームの給脂装置において、内側アームの先端部に複数個のグリースフィッティングよりなる集中給脂口を設けるとともに、内側アームの外周面の摺動部近傍に内面から外周面に貫通する複数個の貫通孔を設け、前記貫通孔と前記集中給脂口とを接続するグリース配管を内側アームの内側を経由して布設した構成としている。
【0008】
第1発明によれば、内側アームの所定個所に集中給脂口を設けて一個所で給脂できるようにしたため、給脂時に作業者が移動する必要がない。そして、給脂を要する内側アーム外周面の摺動部と前記集中給脂口とをグリース配管により接続したので、スライド式アームの伸縮位置に関係なく、任意の伸縮位置で摺動部に給脂することができる。従って、給脂時にアーム最縮小状態にする準備作業が不要となり、給脂作業が容易に、かつ短時間でできるので、作業性を向上できる。
【0009】
第2発明は、第1発明に基づき、前記貫通孔を、内側アームの基端部外周面の所定箇所に配設された複数個の摺動パッドの前方に近接して設け、貫通孔の周囲の内側アーム外周面に前記集中給脂口から給脂するグリースを貯溜するグリース溜を設けて前記摺動パッドを潤滑する構成としている。
【0010】
第2発明によれば、グリース溜を摺動パッドの前方に近接して設けたため、スライド式アームが伸縮しても、必要な箇所(ここでは、摺動パッド)にのみグリースを給脂することができる。また、グリース溜により、不必要な箇所にグリースが漏れることが少ないため、グリースの無駄な消費を防止できて経済的であると共に、給脂時間間隔を長くすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係るスライド式アームの給脂装置の実施形態について、図面を参照して詳述する。
【0012】
図1は本発明の給脂装置を備えたスライド式アーム1の一例を示す側面断面図であり、図2は図1のA−A矢視図である。図1、図2において、三角断面形状の外側アーム2には、前先端部にバケット等の作業機8を有する相似断面形状の内側アーム3が伸縮自在に挿嵌されている。内側アーム3の基端部の外周面の、上先端部と下部左右の先端部との3箇所にはそれぞれ摺動パッド4,5,6が取着されており、その外周面は外側アーム2の内面に当接していて摺動面を形成している。摺動パッド4,5,6の前方には隣接して所定の範囲を囲み、かつ外方に開口したグリース溜10,11,12がそれぞれ設けられている。グリース溜10,11,12の外周方向長さC1,C2,C3は、摺動パッド4,5,6の外周方向長さD1,D2,D3より長く設定されている。グリース溜10,11,12のほぼ中央部には内側アーム3の外周面を内側から外方に貫通した細径の貫通孔20a,21a,22aがそれぞれ穿設されており、各貫通孔20a,21a,22aには内側アーム3の内側からニップル20,21,22がそれぞれ取着されている。外側アーム2と内側アーム3とは伸縮シリンダ7により連結され、伸縮シリンダ7を伸縮することによりスライド式アーム1は伸縮する。
【0013】
図3は、図1のZ視図で、作業機8側から見た内側アーム3の前面図である。図1、図3において、内側アーム3の前面の上部には、グリースフィッティング31,32,33が取着され、集中給脂口30を構成している。図1、図2、図3において、集中給脂口30のグリースフィッティング31,32,33とグリース溜10,11,12とはグリース配管23,24,25によりそれぞれ接続され、グリース配管23,24,25は内側アーム3の内面に沿って設けられている。
【0014】
図4は内側アーム3の基端部の斜視図である。図2、図4に示すように、グリース溜10,11,12にはそれぞれスポンジ13,14,15が挿入され、スポンジ13,14,15にはほぼ中央部にそれぞれ穴16,17,18が設けられている。
【0015】
図5は図1のP部詳細図である。スライド式アーム1の摺動面に給脂する場合には、アームの任意の伸縮位置でグリースフィッティング31,32,33からグリースガン等で給脂する。給脂されたグリースはグリース配管23,24,25を経てそれぞれグリース溜10,11,12内に供給される。そして図5に示すようにグリースGはスポンジ13の穴16内およびスポンジ13と外側アーム2との間に入り、スポンジ13を押し下げてグリース溜10内に貯留される。内側ブーム3が摺動すると、グリース溜10内のグリースGは前述の幅C1だけ外側ブーム2の内面に塗布され、摺動パッド4の摺動面を潤滑する。グリース溜10内に貯留されたグリースはスポンジ13により常に摺動面に押しつけられる。他の2ヵ所の摺動パッド5,6部においても同様に潤滑される。
【0016】
本実施形態に係るスライド式アームの給脂装置によると、集中給脂口30に集めたグリースフィッティング31,32,33から給脂することにより各グリース配管23,24,25を経由して各グリース溜10,11,12内に供給されるので、スライド式アーム1の任意の伸縮位置で給脂可能となって、給脂時の度にアーム最縮小状態にする必要がなく、また給脂のために作業者が移動する必要もないから、給脂作業が非常に容易となり、短時間で給脂できる。
【0017】
また、グリース溜10,11,12内のグリースは必要箇所のみを潤滑するため、グリースの消費量を少なくできる。また、各摺動パッド4,5,6に対してグリース溜10,11,12を設けたため、全摺動パッド4,5,6の給脂時間間隔を長くすることができる。さらに、グリース溜10,11,12内のグリースはスポンジ13,14,15により常に摺動面に押しつけられるので、グリースの貯溜量が少なくなっても確実に摺動面を潤滑でき、潤滑効果を長期間維持して給脂時間間隔を長くできる。
【0018】
グリース溜10,11,12の外周方向長さC1,C2,C3を摺動パッド4,5,6の外周方向長さD1,D2,D3より長く設定しているため、スポンジ13,14,15による潤滑が摺動パッド4,5,6の全面に行き渡り、摺動パッド4,5,6の偏磨耗が少なく寿命を長くできる。
さらに、グリース溜10,11,12と集中給脂口30とを接続するグリース配管23,24,25を内側アーム3の内面に沿って布設したため、配管が損傷する畏れは無く、耐久性がよい。
【0019】
尚、上記実施形態では油圧ショベルの作業機アームを一例として説明したが、本発明は他の機械のスライド式アーム及びブーム等に適用しても差し支えない。また、伸縮部材の断面形状は略三角形の例で説明したが、矩形等の他の断面形状であっても同様の効果を得ることができる。
【0020】
以上説明したように、本発明によると、スライド式アームの内側アームの外周面の摺動部とアーム先端部に設けたグリース集中給脂口とをグリース配管で接続し、集中給脂口から給脂するようにしたため、アームの伸縮位置に関係なく何時でも給脂可能となり、しかも作業者は給脂口個所を移動する必要がないので、給脂時の作業性を格段に向上できる。また、給脂したグリースを貯溜するグリース溜を、給脂の必要な摺動部に近接した、摺動部と同じ内側アームの外周面に設けたので、必要な個所のみにグリースが塗られ、しかもアームが伸縮してもグリース溜のグリースが無駄に漏れることがないから、給脂時間間隔を長くできる。さらに、必要な個所のみに確実に給脂されるので、給脂消費量を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の給脂装置を有するスライド式アームの側面断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のZ視図で、内側アームの前面図である。
【図4】内側アーム基端部の斜視図である。
【図5】図1のP部詳細図である。
【図6】従来の多段伸縮ブームの給脂装置の側面断面図である。
【符号の説明】
1:スライド式アーム、2:外側アーム、3:内側アーム、4,5,6:摺動パッド、10,11,12:グリース溜、13,14,15:スポンジ、16,17,18:穴、20,21,22:ニップル、20a,21a,22a:貫通孔、23,24,25:グリース配管、30:集中給脂口、31,32,33:グリースフィッティング。

Claims (2)

  1. 複数の筒状アームを順次テレスコープ式に伸縮自在に嵌挿してなるスライド式アームの摺動部に潤滑用のグリースを供給するスライド式アームの給脂装置において、
    内側アーム(3) の先端部に複数個のグリースフィッティング(31,32,33)よりなる集中給脂口(30)を設けるとともに、内側アーム(3) の外周面の摺動部近傍に内面から外周面に貫通する複数個の貫通孔(20a,21a,22a)を設け、前記貫通孔(20a,21a,22a)と前記集中給脂口(30)とを接続するグリース配管(23,24,25)を内側アーム(3) の内側を経由して布設した
    ことを特徴とするスライド式アームの給脂装置。
  2. 請求項1記載のスライド式アームの給脂装置において、
    前記貫通孔(20a,21a,22a)を、内側アーム(3) の基端部外周面の所定箇所に配設された複数個の摺動パッド(4,5,6) の前方に近接して設け、貫通孔(20a,21a,22a)の周囲の内側アーム(3) 外周面に前記集中給脂口(30)から給脂するグリースを貯溜するグリース溜(10,11,12)を設けて前記摺動パッド(4,5,6) を潤滑する
    ことを特徴とするスライド式アームの給脂装置。
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