JP4231141B2 - スイッチング電源装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、基板上に複数の電子部品が搭載されて構成されるスイッチング電源装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のスイッチング電源装置としては、例えば図6に示すような内部回路構成を備えたものが知られている。このスイッチング電源装置は、入力端子部10を介して入力された交流を所定の出力電圧を有する直流に変換し、出力端子部12を介して出力する装置である。このスイッチング電源装置では、入力端子部10に入力された交流は、ヒューズ14を介してフィルタ回路16、入力側整流回路18、入力側平滑回路20およびスイッチング回路22を通り直流電圧とされてトランス24の1次側に与えられる。ここで、スイッチング回路22は制御回路26からの制御信号に基づきトランス24に与える直流をON/OFF制御しており、これによってトランス24の2次側から交流が出力される。そして、トランス24から出力された交流は出力側整流回路28および出力側平滑回路30によって直流に変換され、出力端子部12に与えられる。
【0003】
また、このスイッチング電源装置では、出力側において、出力側平滑回路30から出力される直流の電圧を過電圧検出回路32によって検出し、その電圧値に応じた信号を制御回路26に与えるとともに、出力側平滑回路30の出力側に接続された電圧調整用可変抵抗器34の両端に現れる電位差を検出回路36で検出し、その電位差に応じた信号を制御回路26に与える。一方、入力側では、平滑回路20から出力される直流が制御回路26に与えられている。そして、このような入力に基づき制御回路26はスイッチング回路22でのON/OFF制御用の信号を作成し、上記のようにスイッチング回路22に与えるように構成されている。なお、同図中の符号38は接地用端子部である。
【0004】
図6に示すような回路は複数の電子部品により構成される。例えば、フィルタ回路16はコモンチョークコイルを、整流回路18,28は整流用ダイオードを、平滑回路20,30は平滑用の大容量の電解コンデンサを、またスイッチング回路22はパワートランジスタを、それぞれ主たる電子部品として有しており、これらの電子部品が同一の基板上に配置されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のように構成されたスイッチング電源装置においては、その装置寿命は電解コンデンサを代表とする熱の影響によって性能が大きく劣化する電子部品(以下「熱影響電子部品」と称する)によって事実上決定されてしまう。特に、スイッチング電源装置においては、整流回路18,28におけるダイオード、スイッチング回路22におけるパワートランジスタおよびトランス24などの発熱量が大きい電子部品(以下「発熱電子部品」という)が、数多く含まれているため、装置の長寿命化を図る上で、これら発熱電子部品から発生する熱による熱影響電子部品の性能劣化を防止することが重要な問題となっている。
【0006】
ここで、この問題を解消するためには、例えば熱影響電子部品を発熱電子部品から離れた位置に配置することも考えられるが、基板上の各電子部品の配置構成が複雑となったり、基板の大型化によってスイッチング電源装置が大きくなるという問題点があった。さらに、組み立てた基板にガタツキが発生し、その振動や衝撃によって基板上の半田部分にクラックなどが生じ、その結果、電子部品の接続不良や断線などが生じるおそれもあった。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであって、発熱電子部品と熱影響電子部品とを同一ケーシング内に備えたスイッチング電源装置の長寿命化を図ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、ケーシングと、前記ケーシング内に配置される第1および第2基板とを備えたスイッチング電源装置であって、上記目的を達成するため、前記第1基板の一方主面側に前記第2基板を配置して前記第1基板の一方主面と前記ケーシング内面とで形成される空間が前記第2基板によって第1および第2サブ空間に仕切られ、前記第1サブ空間内において、発熱電子部品が前記第1基板の前記一方主面上に搭載される一方、前記第2サブ空間内において、当該サブ空間に面する前記第2基板の一方主面上に、熱影響によって性能劣化する熱影響電子部品および前記ケーシングの外部から引き込まれた配線が接続される複数の端子部が搭載され、前記第1および第2基板は直交して相互に連結されて一体化された組み立て状態で、前記ケーシングの内側面に設けられたガイド手段に案内されながら前記ケーシングに対して着脱可能となっており、前記ケーシングへの基板装着により、前記第1または第2基板の一部が前記ガイド手段に設けられた基板係止手段に係止されて前記ケーシングに対して固定され、前記ケーシングは、ケーシング本体と蓋体とで構成され、前記第1基板をガイド手段によってケーシング本体に取り付けた後、前記第2基板を収納するように前記蓋体を取り付けるように構成している(請求項1)。
【0009】
この発明では、第1基板の一方主面とケーシング内面とで形成される空間が第2基板によって第1および第2サブ空間に仕切られ、熱影響電子部品およびケーシングの外部から引き込まれた配線が接続される複数の端子部の配設空間たる第2サブ空間が発熱電子部品の配設空間たる第1サブ空間から熱分離されて発熱電子部品から発生した熱が第2サブ空間の熱影響電子部品に至るのを防止する。さらに、ケーシングに基板を装着した際に、第1または第2基板の一部がガイド手段に設けられた基板係止手段に係止されるので、基板がケーシングに対して固定され、基板のガタツキを効果的に防止することができる。
【0010】
また、前記基板係止手段は、前記基板を厚み方向に保持する厚み方向係止リブと、前記基板を幅方向に保持する幅方向係止リブを有し、前記基板係止手段に対して前記基板の一部が圧入可能に構成されており、この基板圧入によって前記ケーシングに対して固定されることを特徴としている(請求項2)。このような構成によれば、ケーシングに対して基板を厚み方向および幅方向に強固に固定することができる。
【0011】
また、前記ケーシングの側面部には前記第1サブ空間を挟んで対向するように一対の開口部が設けられ、前記一対の開口部の各々は複数のスリット開口により構成され、前記複数のスリット開口に亘って前記ガイド手段が掛け渡されたことを特徴としている(請求項3)。前記一対の開口部の各々が複数のスリット開口により構成されると、スリット開口の長手方向と直交する方向の強度低下が懸念される。しかし、これらのスリット開口に亘ってガイド手段をかけ渡すことで、ガイド手段が基板のガイド機能の他にスリット開口の補強用としても機能し、開口部の強度を高めることができる。
【0012】
また、前記第1サブ空間において前記第2サブ空間に配置された前記熱影響電子部品とは異なる別の熱影響電子部品が配置されており、この熱影響電子部品が前記発熱電子部品から発生する熱の上昇対流ルートから外れた位置に配置されるように前記第1基板に取付けられたことを特徴としている(請求項4)。このような構成によれば、発熱電子部品からの熱が、上記別の熱影響電子部品に及ぶのを抑制して熱影響電子部品の性能劣化を抑制し、スイッチング電源装置の長寿命化を図ることができる。
【0013】
また、前記第1サブ空間において前記第2サブ空間に配置された熱影響電子部品とは異なる別の熱影響電子部品が配置されており、この熱影響電子部品が前記気流の方向において前記発熱電子部品に対して上流側に位置するように前記第1基板に取付けられたことを特徴としている(請求項5)。このような構成によれば、第1サブ空間で発生した熱を気流によって当該熱影響電子部品とは反対方向の下流側に運ぶことができ、発熱電子部品からの熱が上記別の熱影響電子部品に及ぶのを抑制して熱影響電子部品の性能劣化を抑制し、スイッチング電源装置の長寿命化を図ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明にかかるスイッチング電源装置の一の実施形態を示す斜視図であり、図2は図1のスイッチング電源装置の分解組立斜視図であり、図3は図1のA−A線矢視断面図である。なお、後述する各図との方向関係を明確にするために、XYZ直角座標軸が示されている。
【0016】
このスイッチング電源装置は、制御ユニット(図示省略)の底面部においてX方向に延びるディン(DIN)レール50に取付られ、入力端子部10から与えられた交流を所定電圧の直流に変換し、出力端子部12から制御ユニット内に設けられた他の装置に供給する装置であり、その回路構成は図6と同一であるため、それらについては同一符号を付して説明を省略する。
【0017】
このスイッチング電源装置では、図2に示すように、上方の開口したケーシング本体60と、その開口を覆うように設けられる蓋体70とでケーシング80が構成されており、ケーシング本体60の上端部に蓋体70が取り付けられると、後述するように種々の電子部品が搭載された2つの基板91,92を一体化してなる基板組立体90を収納可能な収納空間SPが形成される。
【0018】
より具体的には、ケーシング本体60は、その下方側におけるベース部62から周壁部64が上方に立設されて有底角筒形に構成されている。4つの周壁部64のうちディンレール50の長手方向(X方向)側に設けられた一対の周壁部64aの上端付近には、それぞれ2個の係止孔66が設けられおり、蓋体70から下方に延びる4つの係止片72の先端部がそれぞれ対応する係止孔66に係止されることでケーシング本体60に対して蓋体70が取り付け固定される。
【0019】
また、上記長手方向(X方向)に対して直交する方向(Y方向)側に設けられた周壁部64bには、収納空間SPと連通する開口部として、図3に示すようにX方向に延びる放熱用のスリット開口68が上下方向(Z方向)にほぼ等間隔で設けられている。また、この実施形態では、各周壁部64bでは、すべてのスリット開口68に亘ってZ方向に延びる5本の補強用リブ611〜615がX方向に並べて取り付けられて周壁部64bの強度補強が図られている。これらのうち補強用リブ611,612はX方向に基板91の厚みよりも若干広い間隔Δ1(図4)だけ離隔して配置されている。例えば、厚み1.6mmの基板91に対して補強用リブ611,612の間隔Δ1を2mm程度にしておく。このため、図2に示すように左右(Y方向)一対の補強用リブ611,612が基板91のガイド手段として機能し、基板91(基板組立体90)が収納空間SP内に位置決め収納される。このように、この実施形態では、補強用リブ611,612は単にスリット開口68の補強用として機能するのみならず、基板のガイド手段としても機能している。特に、スリット開口68は放熱機能を担うため、その開口面積を広く設定すべきであり、補強用リブとガイド用リブとを別個に設ける場合に比べて補強用とガイド用とを兼用させた本実施形態は開口面積を広くすることができ、放熱効果の点で有利である。なお、補強用リブ614,615については、補強用リブ611,612と同様に、ガイド手段としても機能するように構成されている。
【0020】
また、補強用リブ611,615の頂部611a,615aはケーシング本体60の開口部よりも若干高い位置まで延びており、上記のように基板91を補強用リブ611,612からなるガイド手段に沿って収納空間SPに収納すると、基板91に連結された基板92の裏面がその頂部611a,615aによって係止されるように構成されている。このように、本実施形態では、補強用リブ611,615の頂部611a,615aによって基板組立体90をケーシング80内で支持するように構成されている。
【0021】
このようにガイド手段(補強用リブ611,612)によって基板組立体90を収納空間SPに案内し、単に補強用リブ611,615の頂部611a,615aによって基板92を裏面側より支持するのみでは、ケーシング80内で基板組立体90のガタツキが発生し、その振動や衝撃によって基板上の半田部分にクラックなどが生じ、その結果、電子部品の接続不良や断線などが発生してしまうことがある。そこで、本実施形態では、この問題を解消するため、補強用リブ611,612の最下方位置に基板ガタツキ防止用のガタツキ防止用リブを設けている。
【0022】
図4は、ガタツキ防止用リブの構成を示す部分拡大断面図である。この実施形態では、同図に示すように、補強用リブ611,612には、相互に対向するように略半球状のガタツキ防止用リブ611b,612bがそれぞれ突設されている。これらガタツキ防止用リブ611b,612bの突設部分の間隔Δ2は基板91の厚みよりも若干狭くなっており、上記のようにガイド手段(補強用リブ611,612)に沿って基板91を下方位置に移動させて基板組立体90をケーシング80の収納空間SPに収納すると、その基板収納の最終段階で基板91の下方側端部911がガタツキ防止用リブ611b,612bの間に圧入され、基板91が厚み方向(X方向)に挟持され、基板厚み方向にしっかりと保持される。なお、リブ611b,612bの間隔Δ2については、基板91の厚みと同一寸法に設定してもケーシング80に対する基板のガタツキを防止することができる。
【0023】
さらに、本実施形態では、上記ガタツキ防止用リブ611b,612bと同じ高さ位置において、補強用リブ611,612の間に収納空間SPに向けて半球状の一対のガタツキ防止用リブ619が相互に対向した状態で突設されており、上記のように基板組立体90をケーシング80の収納空間SPに収納すると、その基板収納の最終段階で基板91の下方側端部911(図2)がガタツキ防止用リブ619,619の間に圧入され、基板91が幅方向(Y方向)に挟持され、基板幅方向にしっかりと保持される。
【0024】
このように、本実施形態では、ガタツキ防止用リブ611b,612bを設け、基板91を厚さ方向に保持するとともに、ガタツキ防止用リブ619,619を設けて基板91を幅方向に保持するように構成しており、ケーシング80内での基板組立体90のガタツキを防止することができ、半田部分のクラックや断線などの不具合を効果的に防止することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、基板厚み方向(X方向)の基板ガタツキを防止するために補強用リブ611,612のそれぞれにガタツキ防止用リブ611b,612bを設けているが、いずれか一方に設けるようにしてもよい。また、ガタツキ防止用リブ611b,612bを補強用リブ611,612の最下方位置にスポット的に設けているが、補強用リブ611,612の高さ方向(Z方向)に連続的に設けてもよい。また、ガタツキ防止用リブ611b,612bの形状については、半球形状に限定されるものではなく、基板91を圧入することができる形状であれば、特に限定されるものではない。
【0026】
また、基板厚み方向についてのガタツキ防止用リブ611b,612bの変形態様については、基板幅方向についてのガタツキ防止用リブ619についてもそのまま適用可能である。すなわち、基板の幅方向(Y方向)については、一方のみにガタツキ防止用リブ619を設けるだけでもよく、またガタツキ防止用リブ619を補強用リブ611,612の高さ方向(Z方向)に連続的に設けてもよく、さらにはガタツキ防止用リブ619の形状についても、基板91を圧入することができる形状であれば、特に半球状に限定されるものではない。
【0027】
図1および図2に戻って、本実施形態にかかるケーシング80がフィンガープロテクト構造を採用したことによる特徴について説明する。この実施形態では、図2に示すように基板92の一方側に入力端子部10および接地用端子部38が搭載される一方、他方側に出力端子部12が搭載され、さらに各端子が基板92に対してそれぞれ2箇所で半田付けされている。また、こうして基板92に取り付けられた各端子に対応して、蓋体70の側面部には、配線を端子部に引き込むための開口74が開設されるとともに、ネジ止め工具は挿入可能であるが人間の指は挿入不可能な程度の開口76が穿設されて開口74から端子部に挿入された配線の先端部を端子に固定可能に構成されている。このように、この実施形態では、スイッチング電源装置においてフィンガープロテクト構造を採用したことにより、次の効果が得られる。すなわち、作業者が端子に直接触れるのを効果的に防止することができる。また、端子の取付構造を簡略化することができる。また、端子と基板との接続が強固となり、振動や衝撃などによる半田部分のクラック発生を防止することができ、大電流にも対応可能となっている。
【0028】
さらに、入力端子部10、出力端子部12および接地用端子部38が蓋体70を内底面側より支持することとなり、蓋体70の強度が補強されている。このため、従来装置において補強用として用いられていたリブなどの補強構造が不要となり、その結果、蓋体70内部の収容スペース(第2サブ空間SSP2)が増大し、より多くの、またより大きな電子部品を基板92に搭載することが可能となっている。
【0029】
上記説明においては、主としてスイッチング電源装置のケーシングの構成を中心に詳細に説明してきたが、次に装置内部の構成を中心に詳述する。
【0030】
この実施形態にかかるスイッチング電源装置では、上記したように、2つの基板91,92を相互に連結することによって1つの基板組立体90が形成され、これがケーシング80の収納空間SPに収納されている。これらの基板のうち基板91は、図2に示すように、一方端部912を凸状に仕上げらた形状となっており、この基板91の表面(一方主面)に、フィルタ回路16を構成するコンデンサ161およびコモンチョークコイル162、入力側整流回路18を構成するダイオード、入力側平滑回路20を構成する電解コンデンサ201、スイッチング回路22を構成するパワートランジスタおよび放熱板221、トランス24、出力側整流回路28を構成するダイオードなどの電子部品が搭載されている。一方、基板92には、基板91の凸状端部912に係合可能な形状の凹部921が形成され、基板表面(一方主面)に、入力端子部10、接地用端子部38および出力端子部12のほかに、出力端子部12に直接接続される出力側平滑回路30を構成する電解コンデンサ301,302およびコイル303が搭載されている。
【0031】
そして、凸状端部912を上方に位置させた状態で基板91が上下方向(Z方向)に倒立した姿勢となる一方、凹部921を基板91の凸状端部912に係合させた状態で基板92はほぼ水平姿勢となっており、このような基板姿勢のまま両基板91,92は図示を省略する連結部材により機械的および電気的に接続されて基板組立体90が形成される。こうして一体化された基板組立体90は、基板91の裏面をケーシング80の内面に近接させたまま、上記したようにしてケーシング80の収納空間SPに収納される。
【0032】
図5は、ケーシングの収納空間に収納された基板組立体の状態を示す図であり、説明の便宜から、ケーシング80の図示を省略し、2点鎖線で収納空間SPを仮想的に示している。ケーシング80に収納した状態では、基板91の表面(一方主面)とケーシング80の内面とで収納空間SPとほぼ一致した空間が形成されるが、この空間が基板91の表面側に配置された基板92によって2つのサブ空間SSP1,SSP2に仕切られる。すなわち、第1サブ空間SSP1は、同図に示すように、ケーシング80の内面、基板91の表面(一方主面)および基板92の裏面(他方主面)によって囲まれた空間となり、もう一方の第2サブ空間SSP2はケーシング80の内面、基板91の凸状端部912の表面(一方主面)および基板92の表面(一方主面)によって囲まれた空間となる。
【0033】
そして、本実施形態では、熱影響電子部品に相当する電解コンデンサ301,302が第2サブ空間SSP2に配置される一方、発熱電子部品に相当する整流用ダイオード、スイッチング用パワートランジスタおよびトランス24などがすべて第1サブ空間SSP1に配置されており、基板92が熱遮蔽板として機能し、第1サブ空間SSP1内の熱が第2サブ空間SSP2内に及ぶのを防止している。また、ケーシング80の周壁部64bには、スリット開口68が複数形成されており、例えば図5の実線矢印で示すように一方側のスリット開口68(図3)を介して装置外部から空気が流れ込むと、その気流に乗って第1サブ空間SSP1に篭った熱がもう一方のスリット開口68を介して装置外部に運び出されるが、その第1サブ空間SSP1内では、気流の一部が本流から離れ、第2サブ空間SSP2側に流入しようとするが、その気流は基板92の裏面側にぶつかり、本流に戻されてスリット開口68を介して装置外部に排気される。したがって、本実施形態では、第2サブ空間SSP2が第1サブ空間SSP1に対して熱分離され、第2サブ空間SSP2内を低温に保つことができ、電解コンデンサ301,302の性能劣化を防止し、スイッチング電源装置の寿命を長く伸ばすことが可能となる。
【0034】
なお、本実施形態では、入力側平滑回路20を構成する電解コンデンサ201を第1サブ空間SSP1に配置しているが、理想的には電解コンデンサ201についても第2サブ空間SSP2に配置するのが望ましい。ただし、配線や収納スペースなどを考慮すると、本実施形態の如く第1サブ空間SSP1に配置するほうが総合的に有利な場合がある。このような場合、第1サブ空間SSP1に配置した電解コンデンサはトランス24やダイオードなどの発熱電子部品から発生する熱の影響を全く受けないというわけではないが、その発熱電子部品に対する電解コンデンサ201の配設位置を工夫することによって、熱影響を最低限に抑えることができる。すなわち、第1サブ空間SSP1で発生した熱は上方に上昇しようとするが、この実施形態では、その熱の上昇対流ルート(同図の破線矢印)から外れた位置に電解コンデンサ201を配置して発熱電子部品からの熱の影響を抑えている。また、第1サブ空間SSP1内を流れる気流(同図の実線矢印)において、電解コンデンサ201が発熱電子部品に対して上流側に位置するように配設されており、装置外部から流入した空気は比較的冷たく、また発熱電子部品から発生した熱は気流の流れに乗って電解コンデンサ201とは反対の方向に運ばれるようになっている。
【0035】
また、上記実施形態では、第1サブ空間SSP1にパワートランジスタやトランスなどのノイズ発生源となる電子部品を集中させる一方、第2サブ空間SSP2に出力端子部12に直接接続される電子部品(出力側平滑回路を構成する電子部品など)を配置しているので、かかる電子部品から出力端子部12までの距離を短くするとともに、ノイズ発生源を出力端子部から離隔することで出力端子部12から出力される直流にノイズ発生源からのノイズが含まれるのを効果的に防止することができる。
【0036】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、本発明の適用対象は、制御ユニットの底面部に配設されたディンレール50に対して鉛直方向に取り付けるタイプのスイッチング電源装置に限定されるものではなく、制御ユニットの側面部に配設されたディンレールに対してほぼ水平に取り付けるタイプや、ディンレールなどを用いずに、ケーシング80のベース部62に穿設された取付孔を介して制御ユニット等に対して直接ねじ止めするようなタイプのスイッチング電源装置にも適用することができる。
【0037】
また、上記実施形態では、図6の回路構成を有するスイッチング電源装置について本発明を適用した場合について説明したが、本発明の適用対象は図6のスイッチング電源装置に限定されるものではなく、同一のケーシングに発熱電子部品と熱影響電子部品とを配置してなるスイッチング電源装置全般に適用することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、第1基板91に対して第2基板92を組み合わせて収納空間SPを2つの第1および第2サブ空間SSP1,SSP2に仕切り、第2サブ空間SSP2内に熱影響電子部品に相当する電解コンデンサ301,302を配置しているが、さらに別の基板を追加して発熱電子部品からの熱影響電子部品の熱分離を行うようにしてもよい。例えば、この別の基板が第1サブ空間SSP1内に配置されるように当該基板を第2基板92に連結することで第1サブ空間SSP1をさらに2つに仕切り、その一方に発熱電子部品に相当する整流用ダイオード、スイッチング用パワートランジスタおよびトランス24などを配置する一方、もう一方に熱影響電子部品を配置すると、追加した基板が事実上第2基板と同一機能を有し、上記実施形態と同一の効果が得られる。この場合、追加された基板に対して補強用リブ614,615がガイド手段として機能し、またそれらの間にガタツキ防止用リブ619を設けることでそれら3枚の基板によって構成される基板組立体をケーシングに対してしっかりと固定することができる。
【0039】
なお、上記別の基板を第2基板92に連結する代わりに、第1基板91に連結することで第1サブ空間SSP1をさらに2つに仕切り、その一方に発熱電子部品に相当する整流用ダイオード、スイッチング用パワートランジスタおよびトランス24などを配置する一方、もう一方に熱影響電子部品を配置するように構成しても上記と同様の効果が得られる。
【0040】
さらに、上記実施形態では、第1基板91の表面に対して第2基板92を倒立姿勢で連結して収納空間SPを2つのサブ空間に仕切っているが、第1基板91に対する第2基板92の姿勢について特に限定されるものではなく、例えば第1基板91の一方主面とケーシング内面との間に第2基板92を第1基板91とほぼ平行に配置し、この第2基板によって第1基板の一方主面とケーシング内面とで形成される空間を2つに仕切るようにしてもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載の発明によれば、第1基板の一方主面側に第2基板を配置して第1基板の一方主面とケーシング内面とで形成される空間を第2基板によって第1および第2サブ空間に仕切り、第1サブ空間内において、発熱電子部品を第1基板の一方主面上に搭載する一方、第2サブ空間内において、当該サブ空間に面する第2基板の一方主面上に、熱影響によって性能劣化する熱影響電子部品およびケーシングの外部から引き込まれた配線が接続される複数の端子部を搭載するように構成したので、熱影響電子部品および端子部が配置される第2サブ空間を、発熱電子部品が配置される第1サブ空間から熱分離することができ、発熱電子部品から発生した熱が第2サブ空間の熱影響電子部品に至るのを防止し、熱影響電子部品の性能劣化を抑制し、スイッチング電源装置の長寿命化を図ることができる。さらに、ケーシングに基板を装着した際に、第1または第2基板の一部がガイド手段に設けられた基板係止手段に係止されるので、基板がケーシングに対して固定され、基板のガタツキを効果的に防止することができる。
【0042】
また、請求項2に記載の発明によれば、基板係止手段が、基板を厚み方向に保持する厚み方向係止リブと、基板を幅方向に保持する幅方向係止リブを有し、基板係止手段に対して基板の一部が圧入可能となっているため、この基板圧入によってケーシングに対して基板を厚み方向および幅方向に強固に固定することができる。
【0043】
また、請求項3に記載の発明によれば、ケーシングの側面部に第1サブ空間を挟んで対向するように一対の開口部を設け、開口部を構成するスリット開口に対してガイド手段を掛け渡しており、これによってガイド手段が基板のガイド機能の他にスリット開口の補強用としても機能し、開口部の強度を高めることができる。
【0044】
また、請求項4に記載の発明によれば、第2サブ空間に配置された熱影響電子部品とは異なる別の熱影響電子部品を第1サブ空間に配置する場合であっても、この別の熱影響電子部品を発熱電子部品から発生する熱の上昇対流ルートから外れた位置に配置しているので、発熱電子部品が熱影響電子部品に与える熱影響を抑制して熱影響電子部品の性能劣化を抑制し、スイッチング電源装置の長寿命化を図ることができる。
【0045】
また、請求項5に記載の発明によれば、第2サブ空間に配置された熱影響電子部品とは異なる別の熱影響電子部品を、気流の方向において発熱電子部品に対して上流側に位置させているので、第1サブ空間で発生した熱を気流によって当該熱影響電子部品とは反対方向の下流側に運ぶことができ、発熱電子部品からの熱が上記別の熱影響電子部品に及ぶのを抑制して熱影響電子部品の性能劣化を抑制し、スイッチング電源装置の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかるスイッチング電源装置の一の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のスイッチング電源装置の分解組立斜視図である。
【図3】図1のA−A線矢視断面図である。
【図4】ガタツキ防止用リブの構成を示す部分拡大断面図である。
【図5】ケーシングの収納空間に収納された基板組立体の収納状態を示す図である。
【図6】スイッチング電源装置の内部回路構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
10…入力端子部
12…出力端子部
24…トランス(発熱電子部品)
30…出力側平滑回路
38…接地用端子部
60…ケーシング本体
62…ベース部
64b…周壁部
68…スリット開口(開口部)
70…蓋体
80…ケーシング
90…基板組立体
91…(第1)基板
92…(第2)基板
201…電解コンデンサ(別の熱影響電子部品)
301,302…電解コンデンサ(熱影響電子部品)
611,612…補強用リブ(ガイド手段)
611b,612b,619…ガタツキ防止用リブ(基板係止手段)
SP…収納空間
SSP1…第1サブ空間
SSP2…第2サブ空間
Claims (5)
- ケーシングと、前記ケーシング内に配置される第1および第2基板とを備えたスイッチング電源装置において、
前記第1基板の一方主面側に前記第2基板が配置されて前記第1基板の一方主面と前記ケーシング内面とで形成される空間が前記第2基板によって第1および第2サブ空間に仕切られ、
前記第1サブ空間内において、発熱電子部品が前記第1基板の前記一方主面上に搭載される一方、
前記第2サブ空間内において、当該サブ空間に面する前記第2基板の一方主面上に、熱影響によって性能劣化する熱影響電子部品および前記ケーシングの外部から引き込まれた配線が接続される複数の端子部が搭載され、
前記第1および第2基板は直交して相互に連結されて一体化された組み立て状態で、前記ケーシングの内側面に設けられたガイド手段に案内されながら前記ケーシングに対して着脱可能となっており、
前記ケーシングへの基板装着により、前記第1または第2基板の一部が前記ガイド手段に設けられた基板係止手段に係止されて前記ケーシングに対して固定され、
前記ケーシングは、ケーシング本体と蓋体とで構成され、
前記第1基板をガイド手段によってケーシング本体に取り付けた後、前記第2基板を収納するように前記蓋体を取り付けることを特徴とするスイッチング電源装置。 - 前記基板係止手段は、前記基板を厚み方向に保持する厚み方向係止リブと、前記基板を幅方向に保持する幅方向係止リブを有し、
前記基板係止手段に対して前記基板の一部が圧入可能に構成されており、この基板圧入によって前記ケーシングに対して固定される請求項1記載のスイッチング電源装置。 - 前記ケーシングの側面部には前記第1サブ空間を挟んで対向するように一対の開口部が設けられ、
前記一対の開口部の各々は複数のスリット開口により構成され、
前記複数のスリット開口に亘って前記ガイド手段が掛け渡された請求項1または2記載のスイッチング電源装置。 - 前記第1サブ空間において前記第2サブ空間に配置された前記熱影響電子部品とは異なる別の熱影響電子部品が配置されており、この熱影響電子部品が前記発熱電子部品から発生する熱の上昇対流ルートから外れた位置に配置されるように前記第1基板に取付けられた請求項1記載のスイッチング電源装置。
- 前記第1サブ空間において前記第2サブ空間に配置された熱影響電子部品とは異なる別の熱影響電子部品が配置されており、この熱影響電子部品が前記気流の方向において前記発熱電子部品に対して上流側に位置するように前記第1基板に取付けられた請求項1記載のスイッチング電源装置。
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