JP4231112B2 - (メタ)アクリル酸系エステル、重合体及び製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の基を有する(メタ)アクリル酸系エステル、該単量体を重合してなる重合体、該単量体の製造方法、該重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体膜の主成分はタンパク質と脂質であり、脂質のなかにはリン脂質と糖脂質がある。リン脂質は生体全体の生命維持において多くの機能をもつことが知られている。そのため、リン脂質特性基を有する各種の化合物が検討されている。リン脂質特性基であるホスホリルコリン基を有するモノマーおよびこれから得られる種々のポリマーは、人工臓器用等の医用材料、バイオセンサー等のセンサー類などに応用する試みが数多くなされている(例えば、特開昭59−43342号公報、特開昭63−222183号公報など)。
一方、天然界において糖質のポリマーは、通常糖鎖のつながった多糖類として存在している。近年、細胞への認識機構の研究が進むに従って、種々の認識現象において糖タンパク質や糖脂質などの糖鎖構造が極めて重要な働きをしていることが明らかとなってきた。細胞膜上で抗原抗体の接着や、食作用等における細胞間相互作用において、細胞膜上での抗原抗体反応、ウイルスなどの感染などに糖鎖部分が大きく関与していることが分かってきている。
その一方で、細胞による認識を受けにくい糖鎖構造も知られている。こうした特定の組織や細胞による糖鎖の認識機構を薬物の吸収、分布、放出制御の各過程にうまく利用することによって、効果的なDDS(ドラッグデリバリーシステム)の構築が試みられている。
【0003】
近年、側鎖に糖成分をもつ合成ポリマーが各種検討されている。それらの糖鎖を有する化合物は、分子生物学分野における糖鎖認識モデルとして、あるいは認識機構をもった機能材料の開発の点から興味がもたれている。
さらに、自然界にはセルロース、デンプン、ヘパリンなど様々な多糖類が存在する。これらの多糖類の中には、特異的な細胞認識には関与しないものもあり、DDSの高分子キャリア型製剤用の素材としても有用と考えられている。医療用材料として糖をみたときには、溶解性が低いため用途が限定される面や、新たな機能を付与する場合、より強度を必要とするなどの多くの問題点があり、天然物そのままでは用いることができない。このため、医用材料やセンサーなどの分野でいわゆる糖化合物(糖誘導体)を生体適合性材料として利用するためには、比較的高分子量で、かつ強固な膜または繊維や安定な微粒子、ミセルなどに成形でき、しかも容易に製造できる糖化合物が要望されていた。
【0004】
これまでも糖構造を有するモノマーおよびこれを構成成分とするポリマーが合成されている。例えば、重合性の二重結合基を有する糖化合物としては、次の(1)〜(5)の技術が知られている。
(1)W. A. P. Black, et al., J. Chem. Soc. 第4433頁(1963年)にはグルコース残基をもつメタクリレートモノマーとポリマーが示されている。
(2)T. Nakaya, et al., Makromol. Chem. 第175巻, 第3319頁(1974年)には、長鎖アルキル鎖を介した、イソプロピリデングルコフラノースのメタクリレートモノマーとポリマーが示されている。
(3)Y. C. Lee, et al., Anal. Biochem., 第95巻, 第260頁(1979年)、Methods Enzymol., 第83巻,第294頁(1982年)にはグルコース残基をもつアクリルアミドモノマーとポリマーが示されている。
(4)小林、住友、日本化学会誌、第406頁(1980年)にはグルコース残基をもつスチリルモノマーとポリマーが示されている。
(5)国際公開特許、WO90/04598号公報にはグルコース残基をもつメタクリレートモノマー(GEMA)とそのポリマーが開示されている。
前記の(1)〜(4)の技術では、糖ポリマーはいずれもその合成にあたって多くのステップを必要とし、大量に入手する事が困難であることから、応用検討が困難であった。
前記の(5)のGEMAを重合して得られる重合体は、物性及び生体適合性が必ずしも十分ではなかった。
以上のように、生体適合性、製膜性や繊維や他の単量体との共重合体としたり、他の重合体、オリゴマーとブレンドしたり低分子物を添加、包含させ安定な微粒子、ミセルなどへの成形性を有する化合物は得られていないのが現状である。
また、糖類残基含有重合体としては、一部従来より知られているが、これらの糖残基含有重合体は、製膜性等の成形性、生体適合性を兼ね備えた十分に満足できるものではなかった。
【0005】
またこれらを得るため糖類残基及びホスホリルコリン類似基の両方を含有する単量体は知られていなかった。また、なおかつ糖構造をポリマー中に組み込むことができる化合物の高純度で簡便な合成法についても知られていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、新規の糖類残基及びホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリル酸系エステルを提供することにある。
本発明の第2の目的は、該単量体を重合してなる重合体を提供することにある。
本発明の第3の目的は、該単量体の製造方法を提供することにある。
さらに 本発明の第4の目的は、該重合体の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点に鑑み鋭意検討した結果、特定の糖類残基及びホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリル酸系エステルを高純度で製造し、この化合物をラジカル重合することによって重合体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は次の(1)〜(4)である。
【0008】
(1)下記の一般式[1]
【化10】
[ただし、式中、R1は水素原子またはメチル基、R2、R5は、−(BO)k-1B−基(ただし、Bは炭素数2〜12のアルキレン基を示し、kはオキシアルキレン基の平均付加モル数で1〜100の数を示す。)で示されるオリゴオキシアルキレン基、Bの繰り返し単位は同一物の繰り返しでも異なったものの組み合わせでもよく、R3及びR4は炭素数1〜18の炭化水素基、mは1〜6の整数を表す。
また、{Glula.は、下記の式
【化11】
で示されるグルコノラクトンの反応基}
で表される(メタ)アクリル酸系エステル。
【0009】
(2)下記の一般式[3]
【化12】
[ただし、式中、R1、R2、R3、R4、R5、Glula.は、前記に同じ。また、mは1〜6の整数を表す。また、−M−は、一般式[1]で表される単量体以外のラジカル重合性単量体に由来する基であり、また、aは、一般式[1]に基づく構成単位によるモル分率で0.01〜1であり、bは前記のラジカル重合性単量体に基づく構成単位のモル分率で0.99〜0であり、pは重合体の繰り返し単位数で1〜1000の数を示す。]
で表される(メタ)アクリル酸系エステル重合体。
【0010】
(3)次の工程▲1▼〜▲3▼からなる一般式[1]で表される(メタ)アクリル酸系エステルの製造方法。
工程▲1▼;下記一般式[4]
【化13】
(ただし、式中、R1、R2は、前記に同じ。)
で表される水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルと
下記の一般式[5]
【化14】
(ただし、mは前記に同じ。)
で表される環状有機リン化合物を反応させて、下記式[6]
【化15】
(ただし、R1、R2は前記と同じ、mは前記と同じ整数を示す)
で表される環状有機リン化合物残基を有する(メタ)アクリル酸系エステルを合成する。
【0011】
工程▲2▼;下記の式[7]または式[8]
【化16】
で示されるグルコノラクトンと下記の一般式[9]
【化17】
(ただし、R3、R4、R5は、前記に同じ。)
で表されるN,N−(ジアルキル)ジアミンとを反応して、下記一般式[10]
【化18】
(ただし、R3、R4、R5は、前記に同じ。)
で表されるN’−グルコンアミドアルキル−N,N−(ジアルキル)アミンを合成する。
工程▲3▼;前記工程▲1▼の環状有機リン化合物残基を有する(メタ)アクリル酸エステルと前記工程▲2▼のN’−グルコンアミド−N,N−アルキル(ジアルキル)アミンを反応させる。
【0012】
(4)前記の一般式[1]の単量体と一般式[1]の単量体以外のラジカル重合性単量体(M)をラジカル重合することからなる一般式[3]で表される(メタ)アクリル酸系エステル重合体の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
一般式[1]、[3]、[4]、[6]において、R1は水素原子またはメチル基を示す。
また、一般式[1]、[3]、[4]、[10]において、R2、R5は、−(BO)k-1B−基(ただし、Bは炭素数2〜12のアルキレン基を示し、kはオキシアルキレン基の平均付加モル数で1〜100の数を示す。)で示されるオリゴオキシアルキレン基、Bの繰り返し単位は同一物の繰り返しでも異なったものの組み合わせでもよい。
このような繰り返し単位基の具体的なものとしては、例えば、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、トリメチレンオキシ基、ブチレンオキシ基、テトラメチレンオキシ基などのアルキレンオキシ基等の2価の炭化水素基などが挙げられる。また例えば、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、ヘキサデカメチレン基などが挙げられる。
【0014】
一般式[1]、[3]、[9]、[10]において、R3、R4は、炭素数1〜18の炭化水素基を示す。炭素数が18より多いと反応性が低下すること、入手が困難であることから好ましくない。これらの炭化水素基は直鎖であっても分岐していてもよい。このような基の具体的なものとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。
また、一般式[1]、[3]、[5]、[6]において、mは1〜6の整数を示す。mが7以上の場合は原料の入手性、合成の困難性および目的とする開環4級化反応が起きにくいことから好ましくない。より好ましくは、mは2〜4の数である。
【0015】
一般式[1]、[3]において、Glula.はグルコノラクトンの反応した基を示す。その構造としては、便宜的に式[2]で示される。
【化19】
【0016】
一般式[3]において、−M−は、一般式[1]で表される単量体以外のラジカル共重合可能な単量体に基づく構成単位の残基である。その単量体としては、カルボン酸基、スルホン酸基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜16の芳香族炭化水素基あるいは炭素数7〜16の2価の芳香族基置換炭化水素基を有するものでもよく、これらの基は直鎖であっても分岐していてもよい。
具体的には、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;スチレン、クロルスチレン、クロルメチルスチレン等のスチレン系単量体;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;エチレン、プロピレン等の炭化水素系単量体、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリル酸アミド等のアミド系単量体;トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン等のビニルシラン系単量体;ジエチルフマレート、ジエチルマレエート等の二塩基酸エステル単量体等を挙げることができる。
【0017】
一般式[3]において、a、bはそれぞれ単量体に基づく構成単位のモル分率を表し、a=0.01〜1の数、b=0.99〜0の数を示す。より好ましくは、a=0.3〜1、b=0.7〜0の数である。
一般式[3]において、pは重合体の繰り返し単位数を示し、1〜1000の整数を示す。好ましくは、pは3〜500の数である。
【0018】
次の(a)に本発明の一般式[1]の単量体および(b)に本発明の一般式[3]の重合体の製造方法を示す。
(a)(メタ)アクリル酸系エステルの製造;
一般式[1]で表わされる(メタ)アクリル酸系エステルは、次のような工程▲1▼〜▲3▼からなる方法によって製造することができる。まず、各工程を次式の反応式によって示す。
【0019】
【化20】
【0020】
【化21】
【0021】
次に各工程について詳細に述べる。
工程▲1▼;前記一般式[4]で表される水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルと前記一般式[5]で表される環状有機リン化合物を反応させて前記一般式[6]で表される環状有機リン化合物残基を有する(メタ)アクリル酸エステルを合成する。工程▲2▼;グルコノラクトンを前記の一般式[9]で表されるN,N−(ジアルキル)ジアミンとを反応させて、前記の一般式[10]で表される化合物を合成する。
工程▲3▼;前記工程▲1▼の環状有機リン化合物残基を有する(メタ)アクリル酸エステルと前記工程▲2▼のN’−グルコンアミドアルキル−N,N−(ジアルキル)アミンを反応させて一般式[1]で表される(メタ)アクリル酸系エステルを合成する。
【0022】
工程▲1▼において、原料として用いる一般式[4]で示される水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルは、分子中に(メタ)アクリル酸部分と水酸基を含有しているばよいが、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステル、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル酸エステル、炭素数2〜4のポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
一般式[5]で表される環状有機リン化合物としては、従来公知の方法により、合成することができる。例えば、三塩化リンと対応するジオールを反応させ環状亜リン酸クロリドを合成し、これを酸化するか、あるいはオキシ塩化リンと対応するジオールを反応させる。例えば、ジオールとして、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、分岐のブチレングリコール等が挙げられる。前記の一般式[4]で示される水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルと一般式[5]で表される環状有機リン化合物を反応させて、一般式[6]で表される環状有機リン化合物残基を有する(メタ)アクリル酸エステルを合成する。
【0023】
工程▲2▼において、用いる一方の原料としては、グルコノラクトンであり、γ−体、δ−体のどちらでもよい。また、市販品でも合成品でも用いてよい。市販品としては、例えば、協和発酵株式会社、あるいは藤沢薬品株式会社のグルコノデルタラクトンが挙げられる。
さらにもう一方の原料としては、前記の一般式[9]で示されるN,N−(ジアルキル)ジアミンである。具体的には、例えば、N,N−ジメチルプロピルジアミン、N,N−ジエチルプロピルジアミン、N,N−ジプロピルプロピルジアミン、N,N−ジメチルブチルジアミン、N,N−ジエチルブチルジアミン、N,N−ジプロピルブチルジアミン、N,N−ジメチルアミノエチルオキシエチルアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルオキシプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルオキシプロピルアミン、N,N−ジプロピルアミノプロピルオキシプロピルアミン等が挙げられる。
【0024】
工程▲3▼;前記工程▲1▼の環状有機リン化合物残基を有する(メタ)アクリル酸エステルと前記工程▲2▼のN’−グルコンアミドアルキル−N、N−(ジアルキル)アミンを反応させる。
【0025】
これらの化合物の精製条件としては、洗浄、再結晶、再沈殿、クロマト分離が好ましく挙げられる。
【0026】
前記一般式[1]で表される化合物を製造する際の溶媒としては、反応物および生成物を溶解し得るものであればよい。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロホルム、ジクロルメタン等の溶媒が挙げられる。
【0027】
(b)一般式[3]で表される重合体の製造;
(メタ)アクリル酸系エステルの重合体は次のようにして製造できる。
(b)前記一般式[1]で示される(メタ)アクリル酸系エステルと一般式[1]で示される(メタ)アクリル酸系エステル以外のラジカル重合性単量体とを従来公知の方法で重合して製造できる。重合方法としては、通常のラジカル重合が用いられる。重合開始剤としては、特に限定されないが、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等のアゾ化合物;過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、コハク酸ジアシルペルオキシド等の有機化酸化物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の無機過酸化物等が挙げられる。その使用量は、0.001〜10重量%(対単量体)である。
【0028】
重合に用いる溶媒としては、重合体が溶解する極性溶媒、例えば、DMF、DMAc、DMSO、トルエン、キシレン、メタノール等の単独溶媒、あるいはこれらの適当な比率による混合溶媒が好ましく挙げられる。
重合反応終了後、反応溶液をエタノール等の有機溶媒に投入し、再沈殿精製を繰り返して得られた固体分を室温〜35℃で1〜20時間程度減圧乾燥して精製して本発明の重合体を得ることができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明の糖類残基およびホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリル酸系エステルは、生体適合性を付与する単量体原料として有用である。特に、該単量体を重合してなる糖類残基およびホスホリルコリン類似基含有重合体は、生体適合性のある重合体として有用である。また、本発明の(メタ)アクリル酸系エステルの製造方法はグルコノラクトンを使用するので糖類残基の水酸基を保護する必要がなく、工程が少なくて、容易に合成することができる。
【0030】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。
なお各実施例で製造した重合体の数平均分子量は、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法でポリスチレンカラムによって標準ポリスチレンを基準に測定した。
【0031】
実施例1;2−[(3−D−グルコンアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]エチル−2’−(メタクリロイルオキシ)エチルホスフェート(MPcG=Ic)の合成
合成1;2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホリルエチルメタクリレート(=OPEMA;Ia)の合成
2−ヒドロキシメタクリレート(=2−HEMA)6.509g(50mmol)トリエチルアミン(=TEA)6.073g(60mmol)2−クロロ−1,3,2−ジオキソホスホラン7.126g(50mmol)をTHF200mlに溶解し、窒素雰囲気下で−20〜−10℃、20分間かき混ぜて反応した。粗生成物をろ過してTEA・HCl塩を除去し、エバポレーターで濃縮して粘稠な液状のIaの化合物を11g得た(収率;93%)。その化合物Iaの1H−NMR、IR分析を行った。
【0032】
結果は、次のとおり。
1H−NMR(δ(ppm):TMS/CDCl3)
1.90−2.00;S×3;C=C(CH3)COO−
1.70−2.50;m ;−O−C−CH2−CO
4.20−4.70;b ;C=C(C)COOCH2CH2OPOCH2−CH2−O
4.82−4.86;tri;−CH2(C)−
5.60、6.20;s×2;CH2−C(C)−COO−
IR分析の結果;(液セル;cm-1)
2900cm-1;−CH
1200 ;−OCOCH3
以上の結果から得られたIaの化合物の構造が次式のものであることを確認した。
【0033】
【化22】
【0034】
合成2;N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−D−グルコンアミド(Ib)の合成
N,N−ジメチルプロピレンジアミン、92.4g(0.9mol)D−グルコノラクトン、104.6g(0.6mol)、メタノール200mlを反応容器に採り、窒素雰囲気下で、80℃、24時間かき混ぜて反応した。粗生成物をろ過して、ろ液を減圧乾燥して未反応の原料、溶媒を取り除いた後、エタノールに溶解し、アセトンで沈澱させる操作を2回繰り返し生成物Ibの化合物を86.0g得た(収率;76.7%)。その化合物Ibの1H−NMR、IR分析を行った。結果は、次のとおり。
【0035】
1H−NMR(δ(ppm):TMS/CD3OD)
1.9 ;m;>N−C−CH2−CN<
2.3 ;s;−N(CH3)2
2.5 ;t;>N−CH2−C
3.4 ;t;−CH2−NH−CO
3.8−4.3;m;−CH2−OH、>CH−OH
IR分析の結果;(KBrタブレット;cm-1)
3300cm-1;−OH
2900 ;−CH
1650 ;−CONH−
以上の結果から得られたIaの化合物の構造が次式のものであることを確認した。
【0036】
【化23】
【0037】
合成3;MPcG(Ic)の合成
前記の合成1で得られたIaの化合物(OPEMA)11.81g(50.01mmol)と前記の合成2で得られたIbの化合物14.02g(50.01mmol)を溶媒DMF、300mlに溶解し、窒素雰囲気下で、60℃、15時間かき混ぜて反応した。粗生成物を減圧加熱した後、メタノールに溶解し、エーテルで1回、エタノールで2回再沈澱を行って生成物Icを12.25g得た(収率;47.4%)。その化合物Icの1H−NMR、IR分析を行った。結果は、次のとおり。
【0038】
1H−NMR(δ(ppm):TMS/CD3OD)
2.0 ;s;CH3−C=C−
2.9 ;s;−N+(CH3)2
3.1−3.5;t;−CH2−NHCO−
3.4 ;t;−CH2−NH−CO
3.8−4.4;m;−CH2−OH、>CH−OH、−P−OCH2−、−COOCH2−
5.7 ;s;H(cis)−C=C−
6.2 ;s;H(trans)−C=C−
IR分析の結果;(液セル;cm-1)
3300cm-1;−OH
2950 ;−CH
1720 ;−C=O
1650 ;−CONH−
1630 ;−C=C−
1200 ;−O−P=O
1050−1080;−P−O−C
以上の結果から得られたIcの化合物の構造が次式のものであることを確認した。
【0039】
【化24】
【0040】
実施例2;MPcGのホモ重合体(重合体II−A)の合成
実施例1の合成3で得られたIcの化合物1.03g(1.99mmol)、またラジカル重合開始剤として、AIBN、4mg、溶媒メタノール、7mlを重合容器に採り、溶かして、窒素置換した後、70℃、15時間反応した。さらに反応溶液をエタノール100ml中に投入して、沈殿精製を2回繰り返し行い、減圧乾燥して重合体(II−A)、0.36g得た(収率;34.9%)。
その重合体(II−A)の1H−NMR、IR分析、分子量測定を行った。
結果は、次のとおり。
1H−NMR(δ(ppm):TMA/CD3OD)
2.0 ;CH3−C−
2.9 ;−N+(CH3)2
3.1−3.5;−CH2−NHCO−、−CH2−N+−CH2−
3.8−4.4;−CH2−OH、>CH−O−、−P−O−CH2−、−COO−CH2−
IR分析の結果;(KBrタブレット;cm-1)
3300cm-1 ;−OH
2950 ;−CH
1720 ;−C=O
1650 ;−CONH−
1220 ;−O−P=O
1050−1080;−P−O−C
以上の結果から得られた重合体(II−A)の構造が次式のものであることを確認した。
【0041】
【化25】
数平均分子量;42,000
P=81
【0042】
以上の結果から、本発明の実施例1で単量体が得られた。また、実施例2で重合体が得られた。
Claims (3)
- 請求項1記載の一般式[1]で表される単量体と前記一般式[1]で表される単量体以外のラジカル重合性単量体(M)をラジカル重合してなる下記の一般式[3]
- 請求項1記載の一般式[1]で表される単量体と前記一般式[1]で表される単量体以外のラジカル重合性単量体(M)をラジカル重合することからなる請求項2記載の一般式[3]で表される(メタ)アクリル酸系エステル重合体の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP24913897A JP4231112B2 (ja) | 1997-09-12 | 1997-09-12 | (メタ)アクリル酸系エステル、重合体及び製造方法 |
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