JP4227381B2 - 電子写真感光体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の組成の表面保護層を有する電子写真感光体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真感光体の表面層には、帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段等により電気的あるいは機械的な影響が直接に加えられるために、それらに対する耐久性が要求される。具体的には、摺擦による電子写真感光体表面の摩耗や傷の発生及びコロナ帯電による電子写真感光体表面の劣化等に対する耐久性が要求される。また、現像とクリーニングの繰り返し等に起因した、電子写真感光体表面へのトナー付着という問題もあり、これに対しては電子写真感光体表面のクリーニング性の向上が求められている。また、感度の低下や残留電位の上昇等の悪化を招かないような電気的特性も要求されている。
【0003】
上記のような電子写真感光体表面に要求される様々な特性を満たすために、電荷発生層もしくは電荷輸送層上に樹脂を主成分とする種々の表面保護層を設ける試みがなされ、導電性粒子として金属酸化物粒子を添加することによって抵抗を制御した保護層が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、表面層中に種々の物質を添加することで電子写真感光体表面の物性を改善することも検討されている。例えば、シリコーンの低表面エネルギーに注目した添加物としては、シリコーンオイル(例えば、特許文献2参照)、ポリジメチルシロキサン、シリコーン樹脂粉体(例えば、特許文献3参照)、架橋シリコーン樹脂、(ポリカーボネート−シリコーン)ブロック共重合体、シリコーン変成ポリウレタン、シリコーン変成ポリエステル及びコロイダルシリカ含有シリコーン樹脂等が報告されている。低表面エネルギーの代表的なポリマーとしてはフッ素系高分子があり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン粉体及びフッ化カーボン粉末等が挙げられる。
【0005】
上記のように、樹脂バインダー成分中に正孔輸送性有機分子を分散した表面層以外にも電気的特性の向上のために金属酸化物粒子等の種々の物質を分散した表面保護層や電荷輸送層が提案されているが、通常のバインダー樹脂成分には正孔輸送能はないため、バインダー樹脂の含有量を多くした場合には感度の低下や残留電位の上昇等の電気的特性の悪化を招き易いという問題があった。
【0006】
また、金属酸化物等を含む表面保護層は高い硬度及び電荷輸送能を有するものが得られるが、表面抵抗が低いために画像ボケし易いという問題がある。
【0007】
上記に列挙した問題点を改善する方法として、我々は有機ケイ素変成正孔輸送性化合物を重縮合することによって得られる樹脂を含有する表面層を有する電子写真感光体を提案した(特許文献4参照)。しかし、有機ケイ素変成正孔輸送性化合物はアルコールへの溶解度が低く、浸漬コーティングに十分な塗工液濃度にするには芳香族系やエーテル、エステル又はケトン等の有機溶剤の使用が必要であった。そのため、電荷輸送層上に表面保護層を浸漬コーティングしようとすると、ポリカーボネート等のバインダー樹脂が溶解してしまうということがあった。従って、これまでの技術では浸漬コーティングする際には、無溶解性の熱硬化樹脂を用いた電荷輸送層上に有機ケイ素変成正孔輸送性化合物を用いた表面保護層を形成するか、電荷輸送層上ではなく電荷発生層上に有機ケイ素変成正孔輸送性化合物を用いた表面層を形成することしかできなかった。
【0008】
そこで我々は鋭意検討を重ねた結果、式(1)においてm/a≧0.5を満たす場合に有機ケイ素変成正孔輸送性化合物のアルコールへの溶解度が増大し、前述したような有機溶剤を使わずに、電荷輸送層を溶解することなく表面保護層を浸漬コーティングできることを見いだし、本発明に至った。
【0009】
【特許文献1】
特開昭57−30843号公報
【特許文献2】
特開昭61−132954号公報
【特許文献3】
特開平4−324454号公報
【特許文献4】
特開平11−15185号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アルコール溶液の塗工液を用いることによって、電荷輸送層を溶解することなく表面保護層を浸漬コーティングし、上記の問題点を解決することのできる、すなわち表面の耐久性があり、感度の低下や残留電位の上昇等の電気的特性の悪化を招かない機械的、電気的耐久性を両立した電子写真感光体の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に従って、支持体上に電荷発生層、電荷輸送層、表面保護層を順次積層してなる電子写真感光体の製造方法において、該電子写真感光体の表面保護層が下記式(1)で示される有機ケイ素変成正孔輸送性化合物の重縮合生成物を含有し、該表面保護層が該有機ケイ素変成正孔輸送性化合物をアルコールのみから選ばれた溶媒に溶解した溶液に浸漬されることにより形成されることを特徴とする電子写真感光体の製造方法が提供される。
【0012】
【化3】
【0013】
式中、Aはa個の芳香環を有するトリフェニルアミン構造を有する正孔輸送性基を示し、R1はメチレン基又はエチレン基、R 2 はメチル基又はエチル基、Qはメトキシ基又はエトキシ基をそれぞれ示す。また、nは2又は3、mは2又は3、aは3〜6の整数をそれぞれ示す。ただし、m/a≧0.5である。
【0015】
式(1)はクロロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン類、SiH含有物等であり、Qはメトキシ基又はエトキシ基を示し、反応性の高さと保存性のバランスにより決定される。
【0016】
式(1)の正孔輸送性基Aはa個の芳香環を有するトリフェニルアミン構造を有するものである。
【0017】
式(1)のR1 はメチレン基、エチレン基である。
【0018】
式(1)のR2 はメチル基、エチル基である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
本発明は、支持体上に電荷発生層、電荷輸送層までを形成した後、式(1)で示される有機ケイ素変成正孔輸送性化合物とアルコールのみを含有する溶液に浸漬することによって表面保護層を形成することを前提としたものである。正孔輸送性化合物は多数の芳香環を含むため、通常はアルコールには溶解しにくいが、我々の検討の結果、有機ケイ素変成によりアルコールへの溶解性が向上する。アルコールへの溶解性は、正孔輸送性基Aに含まれる芳香環の数aが大きくなるにつれ減少するが、有機ケイ素変成の数mとの関係がm/a≧0.5である場合にアルコールへの十分な溶解性を示し、前述したような有機溶剤を使わずに、電荷輸送層を溶解することなく表面保護層を浸漬コーティングできることを発見し、本発明に至った。
【0021】
また、本発明における電荷輸送性とは電荷を輸送する能力のことであり、イオン化ポテンシャルで6.2eV以下であることが好ましい。つまり、式(1)で示される有機ケイ素変成電荷輸送性化合物の重縮合生成物及びAの水素付加物は、イオン化ポテンシャルが6.2eV以下であることが好ましく、特に4.5〜6.2eVであることが好ましい。イオン化ポテンシャルが6.2eVを超えると正孔注入が起こり難く、帯電し易くなる。また、4.5eV未満では化合物が容易に酸化されるために劣化し易くなる。イオン化ポテンシャルは、大気下光電子分析法(理研計器製、光電子分光装置AC−2)によって測定される。
【0022】
また、上記有機ケイ素変成正孔輸送性化合物の重縮合生成物は、正孔輸送能として1×10-7cm2/Vsec以上のドリフト移動度を有しているものが好ましい。1×10-7cm2/Vsec未満では電子写真感光体として露光後、現像までに正孔が十分に移動できないために見かけ上感度が低減し、残留電位も高くなってしまう問題が発生する場合がある。
【0023】
正孔輸送性基Aの具体的な構造としては、下記式(2)で示されるものが好ましい。
【0024】
【化4】
【0025】
式中、R3、R4及びR5 は芳香族炭化水素環基であり、R3、R4及びR5は同一であっても異なっていてもよい。
【0026】
このように正孔輸送性基Aは、R3、R4及びR5からm個の水素原子が除かれて形成された基である。R3、R4及びR5の構造の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。(なお、正孔輸送性基Aに含まれる芳香環の数は3〜6の範囲である。)
【0027】
【化5】
【0028】
【化6】
【0029】
また、本発明では正孔輸送性基Aはトリフェニルアミン構造を有するものである。式(2)で示されるがトリフェニルアミン構造を有していない構造は好ましくない。また、アミノシラン等のシランカップリング剤には市販されているものも多く、式(1)の構造を満たすものとして3−アミノプロピルトリメトキシシラン等多く考えられるが、芳香族炭化水素基や芳香族複素環基を多く含まない構造のものは正孔輸送性を示さず、本発明の有機ケイ素変成正孔輸送性化合物とは異なる。
【0030】
式(1)の有機ケイ素変成電荷輸送性化合物の合成方法としては、公知の方法、例えば、芳香族環にビニル基を有する化合物と置換基を有する水素化ケイ素化合物とから白金系触媒、あるいは有機過酸化物等を触媒にヒドロシリル化反応を行うものが好適に用いられる。この場合に使用される白金触媒については特に限定するものではなく、通常のヒドロシリル化反応、付加型シリコーンゴムに用いられている白金触媒であればよく、塩化白金、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−フォスフィン錯体等が挙げられる。白金触媒の添加量に関しては特に制限するものではないが、残留触媒が特性に悪影響を与えないようにできる限り少量で用いることが好ましい。芳香族環にビニル基を有する化合物と置換基を有する水素化ケイ素化合物とから白金系触媒等により、付加反応により本発明の化合物を合成する場合にはビニル基のα位と反応する場合とβ位と反応する場合があり、一般には混合物が生じる。本発明においては、α位、β位のどちらに反応したのものも用いられるが、ケイ素原子と電荷輸送性基を結合している炭化水素基の炭素数が少ない場合には立体障害からはβ位に反応したものが好ましい。
【0031】
有機過酸化物としては室温以上に半減期を示すものであればよく、特に、ラウリルパーオキシド等のアルキル過酸化物が水素引き抜きを起こし難いことから好適に用いることができる。ビニル基を有しないものについては、芳香族環をホルミル化し、還元、脱水するか直接Wittig反応によりビニル基を導入する方法等により、本発明の合成原料として用いることが可能である。
【0032】
式(1)で示される有機ケイ素変成正孔輸送性化合物の加水分解、重縮合には、必ずしも触媒が必要ではないが、通常ケイ素樹脂等の加水分解、重縮合に用いられる触媒の使用を妨げるものではなく、加水分解、重縮合に要する時間、硬化温度等を考慮してジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート及びジブチル錫オクトエート等のアルキル錫有機酸塩等もしくはノルマルブチルチタネート等の有機チタン酸エステル等から適宜選択される。
【0033】
本発明は、支持体上に電荷発生層、電荷輸送層までを形成した後、式(1)で示される有機ケイ素変成正孔輸送性化合物とアルコールのみを含有する溶液に浸漬することによって表面保護層を形成することを前提としたものである。正孔輸送性化合物は多数の芳香環を含むため、通常はアルコールには溶解し難いが、我々の検討の結果、有機ケイ素変成によりアルコールへの溶解性が向上する。アルコールへの溶解性は、正孔輸送性基Aに含まれる芳香環の数aが大きくなるにつれ減少するが、有機ケイ素変成の数mとの関係がm/a≧0.5である場合にアルコールへの十分な溶解性を示す。正孔輸送性基Aに含まれる芳香環の数aは正の整数であるが、a=1〜2では正孔輸送性が発現しない場合が多く、a>7ではm/a≧0.5を満たす場合においてもアルコールへの溶解性が不十分になる傾向があるため好ましくない。従って、a=3〜6の範囲である。a=3〜6においてアルコールへの溶解性を十分にするためのケイ素変成の数mは、m/a≧0.5を満たすm=2〜3が最低限必要となる。
【0034】
本発明にかかる正孔輸送能を有する硬化性組成物を用いて電子写真感光体を製造する例を下記に示す。
【0035】
電子写真感光体の支持体(図1中の1)としては、支持体自体が導電性を有するもの、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、チタン、ニッケル、マグネシウム、インジウム、金、白金、銀又は鉄等を用いることができる。その他にアルミニウム、酸化インジウム、酸化スズ又は金等を蒸着等によりプラスチック等の誘電体基材に被膜形成し、導電層としたものや、導電性微粒子をプラスチックや紙に混合したもの等を用いることができる。これらの導電性支持体は、均一な導電性が求められると共に平滑な表面が重要である。表面の平滑性は、その上層に形成される下引き層、電荷発生層、正孔輸送層の均一性に大きな影響を与えることから、その表面粗さは0.3μm以下で用いられることが好ましい。0.3μmを超える凹凸は、下引き層や電荷発生層のような薄い層に印加される局所電場を大きく変化させてしまうためにその特性が大きく変化してしまい、電荷注入や残留電位のむら等の欠陥を生じ易いことから好ましくない。
【0036】
特に、導電性微粒子をポリマーバインダー中に分散して塗布することにより得られる導電層(図1中の2)は形成が容易であり、均質な表面を形成することに適している。この時、用いられる導電性微粒子の一次粒径は100nm以下が好ましく、より好ましくは50nm以下のものが用いられる。導電性微粒子としては、導電性酸化亜鉛、導電性酸化チタン、Al、Au、Cu、Ag、Co、Ni、Fe、カーボンブラック、ITO、酸化スズ、酸化インジウム又はインジウム等が用いられ、これらを絶縁性微粒子の表面にコーティングして用いてもよい。前記導電性微粒子の含有量は体積抵抗が十分に低くなるように使用され、好ましくは1×1010Ω・cm以下の抵抗となるように添加される。より好ましくは1×108Ω・cm以下で用いられる。
【0037】
レーザー等のコヒーレントな光源を用いて露光する場合は、干渉による画像劣化を防止するために、上記導電性支持体の表面に凹凸を形成することも可能である。この時は、電荷注入や残留電位のむら等の欠陥が生じ難いように使用する波長の1/2λ程度の凹凸を直径が数μm以下のシリカビーズ等の絶縁物を分散することにより、10μm以下の周期で形成して用いることが可能である。
【0038】
本発明においては、支持体と光導電層の中間に、注入阻止機能と接着機能をもつ下引層(図1中の3)を設けることもできる。下引き層の材料としては、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリビニルブチラール、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ゼラチン及び金属アルコキシドの縮合物等が挙げられる。下引き層の膜厚は0.1μm〜10μmであることが好ましく、特には0.3μm〜3μmであることが好ましい。
【0039】
感光層としては、電荷発生材料を含有する電荷発生層(図1中の4)と電荷輸送材料を含有する電荷輸送層(図1中の5)からなる機能分離タイプのものが用いられる。
【0040】
電荷発生材料としては、例えば、セレン−テルル、ピリリウム系染料、チオピリリウム系染料、フタロシアニン系顔料、アントアントロン系顔料、ジベンズピレンキノン系顔料、ピラントロン系顔料、トリスアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、アゾ系顔料、インジゴ系顔料、キナクリドン系顔料又はシアニン系顔料等を用いることができる。
【0041】
本発明にかかる表面保護層は、正孔輸送能を有する表面保護層(図1中の6)として用いることが可能である。
【0042】
本発明にかかる表面層では、式(1)で示される正孔輸送性化合物の重縮合生成物を含有し、機械的特性の改良や耐久性向上のために添加剤を用いることができる。このような添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定化剤、架橋剤、潤滑剤及び導電性制御剤等が用いられる。
【0043】
本発明における電荷発生層の膜厚は3μm以下であることが好ましく、特には0.01〜1μmであることが好ましい。また、電荷輸送層の膜厚は1〜40μmであることが好ましく、特には3〜30μmであることが好ましい。
【0044】
本発明における表面保護層の厚みは、1〜15μmであることが好ましい。1μm未満では保護効果が十分ではなく、15μmを超えると感光層全体の膜厚が増加することにより、画像劣化が生じ易くなってしまうことから好ましくない。
【0045】
図2に本発明にかかる電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた画像形成装置の概略構成を示す。
【0046】
図2において、21はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸22を中心に矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。電子写真感光体21は、回転過程において、一次帯電手段23によりその周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)から出力される目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された露光光24を受ける。こうして電子写真感光体21の周面に対し、目的の画像情報に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0047】
形成された静電潜像は、次いで現像手段25内の荷電粒子(トナー)で正規現像又は反転現像により可転写粒子像(トナー像)として顕画化され、不図示の給紙部から電子写真感光体21と転写手段26との間に電子写真感光体21の回転と同期して取り出されて給送された転写材27に、電子写真感光体21の表面に形成担持されているトナー像が転写手段26により順次転写されていく。この時、転写手段にはバイアス電源(不図示)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。
【0048】
トナー画像の転写を受けた転写材27は、電子写真感光体面から分離されて像定着手段28へ搬送されてトナー像の定着処理を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0049】
トナー像転写後の電子写真感光体21の表面は、クリーニング手段29によって転写残りトナー等の付着物の除去を受けて清浄面化される。近年、クリーナレスシステムも研究され、転写残りトナーを直接、現像器等で回収することもできる。更に、前露光手段(不図示)からの前露光光30により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、一次帯電手段23が帯電ローラー等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0050】
本発明においては、上述の電子写真感光体21、一次帯電手段23、現像手段25及びクリーニング手段29等の構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の画像形成装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。例えば、一次帯電手段23、現像手段25及びクリーニング手段29の少なくとも1つを電子写真感光体21と共に一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール等の案内手段32を用いて装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ31とすることができる。
【0051】
また、露光光24は、画像形成装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動又は液晶シャッターアレイの駆動等により照射される光である。
【0052】
本発明にかかる電子写真感光体は、電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、FAX、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも幅広く適用し得るものである。
【0053】
図3に本発明にかかる画像形成装置の第2の例であるフルカラー複写機の概略構成を示す。
【0054】
図においてイメージスキャナ部201は、原稿を読み取り、デジタル信号処理を行う部分である。また、プリンター部202は、イメージスキャナ201に読み取られた原稿画像に対応した画像を用紙にフルカラーでプリント出力する部分である。
【0055】
イメージスキャナ部201において、200は原稿厚板であり、原稿台ガラス203上の原稿204を固定するために用いられる。原稿204は、ハロゲンランプ205の光で照射される。原稿204からの反射光はミラー206、207に導かれ、レンズ208により3本のCCDラインセンサで構成される3ラインセンサ(以下CCDという)210上に像を結ぶ。CCD210は、原稿からの光情報を色分解して、フルカラー情報のうちレッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)成分として信号処理部209に送られる。なお、205、206は速度Vで、207は1/2Vでラインセンサの電気的走査方向(以下、主走査方向)に対して垂直方向(以下、副走査方向)に機械的に動くことにより、原稿全面を走査する。
【0056】
信号処理部211では読み取られた信号を電気的に処理し、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)及びブラック(BK)の各成分に分解し、プリンター部200に送られ、計4回の原稿走査により一回のプリントアウトが完成する。
【0057】
イメージスキャナ部201より送られてくるM、C、Y及びBKの画像信号は、レーザドライバ212に送られる。レーザドライバ212は画像信号に応じ、半導体レーザー213を変調駆動する。レーザー光は、ポリゴンミラー214、f−θレンズ215、ミラー216を介し、電子写真感光体ドラム217上を走査する。
【0058】
回転現像器218は、マゼンタ現像器219、シアン現像器220、イエロー現像器221及びブラック現像器222より構成され、4つの現像器が交互に電子写真感光体ドラムに接し、電子写真感光体ドラム217上に形成されたM、C、Y及びBKの静電潜像を対応するトナーで現像する。
【0059】
転写ドラム223は、用紙カセット224又は225より給紙された用紙を巻付け、電子写真感光体ドラム217上に現像されたトナー像を用紙に転写する。
【0060】
このようにしてM、C、Y及びBKの4色が順次転写された後に、用紙は定着ユニット226を通過して定着後、排紙される。
【0061】
【実施例】
次に、本発明に用いられる硬化性有機ケイ素高分子の合成例を示す。
【0062】
合成例1〜5に、式(1)で表される有機ケイ素変成正孔輸送性化合物の合成例を示す。また、比較合成例1〜2としてm/a<0.5となる有機ケイ素変成正孔輸送性化合物の合成例を示す。
【0063】
[合成例1]
4,4’−ビス[2−(メチルジメトキシシリル)エチル]トリフェニルアミンの合成
<N,N−ビス(4−ホルミルフェニル)アミノベンゼンの合成>
三つ口フラスコにトリフェニルアミン50.7gとDMF35.5mlを入れ、氷水冷却下、攪拌しながらオキシ塩化リン84.4mlを滴下した。滴下終了後、混合溶液を95℃で5時間反応させ、5リットルの温水へ注ぎ1時間攪拌した。その後、沈殿物を濾取し、エタノール/水(1:1)の混合溶液で洗浄し、N,N−ビス(4−ホルミルフェニル)アミノベンゼンを得た。収量36.4g。
【0064】
<N,N−ビス(4−ビニルフェニル)アミノベンゼンの合成>
水素化ナトリウム4.8g、1,2−ジメトキシエタン700mlを三つ口フラスコに取り、室温で攪拌しながらメチルトリフェニルホスフォニウムブロマイド73.2gを加えた。次に、無水エタノールを一滴加えた後、70℃で4時間反応させた。以上のようにして得られた反応混合液にN,N−ビス(4−ホルミルフェニル)アミノベンゼン30.0gを加え、70℃で5時間反応させた後、水洗し、トルエン抽出した。次いで、トルエン溶液を塩化カルシウムで脱水後、溶媒を除去し淡黄色のN,N−ビス(4−ビニルフェニル)アミノベンゼンを得た。収量18.4g。
【0065】
<N,N−ビス(4−ビニルフェニル)アミノベンゼンのヒドロシリル化>
トルエン40ml、メチルジメトキシシラン6.1g(58mmol)及びトリス(テトラメチルジビニルジシロキサン)二白金(0)のトルエン溶液0.017mmolを三つ口フラスコに取り、室温で攪拌しながらN,N−ビス(4−ビニルフェニル)アミノベンゼン2.6g(8.7mmol)のトルエン溶液20mlを滴下した。滴下終了後、70℃で3時間攪拌を行った後、溶媒を減圧下で除去し、淡黄色油状の4,4’−ビス[2−(メチルジメトキシシリル)エチル]トリフェニルアミンを得た。収量4.4g。
【0066】
この化合物のイオン化ポテンシャルを大気下光電子分析法(理研計器製、光電子分光装置AC−2)にて測定したところ、5.60eVであった。
【0067】
合成した4,4’−ビス[2−(メチルジメトキシシリル)エチル]トリフェニルアミン8.0gをイソプロパノール12.0gに溶解したところ、均一で透明な溶液となった。
【0068】
この溶液をポリカーボネート上にワイヤーバーコート法により塗布し、155℃にて3時間熱硬化したところ、ヒビ割れのない透明な膜が作製できた。
【0069】
[合成例2]
4,4’−ビス[2−(トリエトキシシリル)エチル]トリフェニルアミンの合成
合成例1と同様にN,N−ビス(4−ビニルフェニル)アミノベンゼンを得た。トルエン40ml、トリエトキシシラン9.5g(58mmol)及びトリス(テトラメチルジビニルジシロキサン)二白金(0)のトルエン溶液0.017mmolを三つ口フラスコに取り、室温で攪拌しながらN,N−ビス(4−ビニルフェニル)アミノベンゼン2.6g(8.7mmol)のトルエン溶液20mlを滴下した。滴下終了後、70℃で3時間攪拌を行った後、溶媒を減圧下で除去し、淡黄色油状の4,4’−ビス[2−(トリエトキシシリル)エチル]トリフェニルアミンを得た。収量5.3g。
【0070】
合成した4,4’−ビス[2−(トリエトキシシリル)エチル]トリフェニルアミン8.0gをイソプロパノール12.0gに溶解したところ、均一で透明な溶液となった。
【0071】
[合成例3]
4,4’−ビス[2−(メチルジメトキシシリル)エチル]−4”−メチル−トリフェニルアミンの合成
<4−メチル−トリフェニルアミンの合成>
ヨードベンゼン33.9g(166mmol)、無水炭酸カリウム22.9g(166mmol)及び銅粉7.0gを4−ニトロトルエン20mlに加え、攪拌下加熱環流を8時間行った。冷却後濾過し、濾液を除去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムを通し4−メチル−トリフェニルアミンを得た。収量13.5g。
【0072】
<4,4’−ジホルミル−4”−メチル−トリフェニルアミンの合成>
三つ口フラスコに4−メチル−トリフェニルアミン53.6g、DMF35.5mlを入れ、氷水冷却下、攪拌しながらオキシ塩化リン84.4mlを滴下した。滴下終了後、混合溶液を95℃で5時間反応させ、4リットルの温水へ注ぎ1時間攪拌した。その後、沈殿物を濾取し、エタノール/水(1:1)の混合溶液で洗浄し、4,4’−ジホルミル−4”−メチル−トリフェニルアミンを得た。収量51.5g。
【0073】
<4,4’−ジビニル−4”−メチル−トリフェニルアミンの合成>
水素化ナトリウム12.1g、1,2−ジメトキシエタン580mlを三つ口フラスコに取り、室温で攪拌しながらトリメチルホスフォニウムブロマイド108.5gを加えた。次に、無水エタノールを一滴加えた後、70℃で4時間反応させた。以上のようにして得られた反応混合液に4,4’−ジホルミル−4”−メチル−トリフェニルアミン47.9gを加え、70℃で5時間反応させた後、濾別し、濾取したケーキをエーテル抽出し濾液と一緒にし水洗した。次いで、エーテル液を塩化カルシウムで脱水後、エーテルを除去し、反応混合物を得た。これをエタノールで再結晶二回行い、針状、4,4’−ジビニル−4”−メチル−トリフェニルアミンを得た。収量40.2g。
【0074】
<4,4’−ジビニル−4”−メチル−トリフェニルアミンのヒドロシリル化>
トルエン40ml、メチルジメトキシシラン3.84g及びトリス(テトラメチルジビニルジシロキサン)二白金(0)のトルエン溶液0.54mmolを三つ口フラスコに取り、室温で攪拌しながら4,4’−ジビニル−4”−メチル−トリフェニルアミン4.71gのトルエン溶液20mlを滴下した。滴下終了後、70℃で3時間攪拌を行った後、溶媒を減圧下で除去し、淡黄色油状の4,4’−ビス[2−(メチルジメトキシシリル)エチル]−4”−メチル−トリフェニルアミンを得た。収量6.76g。
【0075】
合成した4,4’−ビス[2−(メチルジメトキシシリル)エチル]−4”−メチル−トリフェニルアミン8.0gをイソプロパノール12.0gに溶解したところ、均一で透明な溶液となった。
【0076】
この溶液を銅基板上にワイヤーバーコート法により塗布し、120℃にて12時間熱硬化し、約5μmの膜を作製した。次に、蒸着により半透明金電極を形成した。
【0077】
このサンプルに対してパルス巾3nsecの波長337nmの窒素レーザーを用いてTime−of−flight法にてドリフト移動度を測定したところ9×10-7cm2/Vsecであった。
【0078】
[合成例4]
4,4’−ビス[2−(トリエトキシシリル)エチル]−3”,4”−ジメチル−トリフェニルアミンの合成
<3,4−ジメチル−トリフェニルアミンの合成>
ヨードベンゼン33.9g(166mmol)、無水炭酸カリウム22.9g(166mmol)及び銅粉7.0gを4−ニトロ−o−キシレン25mlに加え、攪拌下加熱環流を8時間行った。冷却後濾過し、濾液を除去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムを通し3,4−ジメチル−トリフェニルアミンを得た。収量14.2g。
【0079】
<4,4’−ジホルミル−3”,4”−ジメチル−トリフェニルアミンの合成>
三つ口フラスコに3,4−ジメチル−トリフェニルアミン56.5g、DMF35.5mlを入れ、氷水冷却下、攪拌しながらオキシ塩化リン84.4mlを滴下した。滴下終了後、混合溶液を95℃で5時間反応させ、4リットルの温水へ注ぎ1時間攪拌した。その後、沈殿物を濾取し、エタノール/水(1:1)の混合溶液で洗浄し、4,4’−ジホルミル−3”,4”−ジメチル−トリフェニルアミンを得た。収量53.8g。
【0080】
<4,4’−ジビニル−3”,4”−ジメチル−トリフェニルアミンの合成>
水素化ナトリウム12.1g、1,2−ジメトキシエタン580mlを三つ口フラスコに取り、室温で攪拌しながらトリメチルホスフォニウムブロマイド108.5gを加えた。次に、無水エタノールを一滴加えた後、70℃で4時間反応させた。以上のようにして得られた反応混合液に4,4’−ジホルミル−3”,4”−ジメチル−トリフェニルアミン50.1gを加え、70℃で5時間反応させた後、濾別し、濾取したケーキをエーテル抽出し濾液と一緒にし水洗した。次いで、エーテル液を塩化カルシウムで脱水後、エーテルを除去し、反応混合物を得た。これをエタノールで再結晶二回行い、針状、4,4’−ジビニル−3”,4”−ジメチル−トリフェニルアミンを得た。収量42.0g。
【0081】
<4,4’−ジビニル−3”,4”−ジメチル−トリフェニルアミンのヒドロシリル化>
トルエン40ml、トリエトキシシラン6.0g及びトリス(テトラメチルジビニルジシロキサン)二白金(0)のトルエン溶液0.54mmolを三つ口フラスコに取り、室温で攪拌しながら4,4’−ジビニル−3”,4”−ジメチル−トリフェニルアミン4.92gのトルエン溶液20mlを滴下した。滴下終了後、70℃で3時間攪拌を行った後、溶媒を減圧下で除去し、淡黄色油状の4,4’−ビス[2−(トリエトキシシリル)エチル]−3”,4”−ジメチル−トリフェニルアミンを得た。収量7.50g。
【0082】
合成した4,4’−ビス[2−(トリエトキシシリル)エチル]−3”,4”−ジメチル−トリフェニルアミン8.0gをイソプロパノール12.0gに溶解したところ、均一で透明な溶液となった。
【0083】
[合成例5]
N,N,N’−トリス{4−〔2−(メチルジメトキシシリル)エチル〕フェニル}−N’−フェニル−ベンジジンの合成
<N,N,N’−トリス(4−ホルミルフェニル)−N’−フェニル−ベンジジンの合成>
三つ口フラスコに既知の方法により合成したN,N,N’,N’−テトラフェニル−ベンジジン67.3g、DMF35.5mlを入れ、氷水冷却下、攪拌しながらオキシ塩化リン84.4mlを滴下した。滴下終了後、混合溶液を95℃で5時間反応させ、4リットルの温水へ注ぎ1時間攪拌した。その後、沈殿物を濾取し、エタノール/水(1:1)の混合溶液で洗浄し、不純物を分取HPLCにて取り除いた後、N,N,N’−トリス(4−ホルミルフェニル)−N’−フェニル−ベンジジンを得た。収量6.3g。
【0084】
<N,N,N’−トリス(4−ビニルフェニル)−N’−フェニル−ベンジジンの合成>
水素化ナトリウム12.1g、1,2−ジメトキシエタン580mlを三つ口フラスコに取り、室温で攪拌しながらトリメチルホスフォニウムブロマイド108.5gを加えた。次に、無水エタノールを一滴加えた後、70℃で4時間反応させた。以上のようにして得られた反応混合液にN,N,N’−トリス(4−ホルミルフェニル)−N’−フェニル−ベンジジン58.4gを加え、70℃で5時間反応させた後、濾別し、濾取したケーキをエーテル抽出し濾液と一緒にし水洗した。次いで、エーテル液を塩化カルシウムで脱水後、エーテルを除去し、反応混合物を得た。これをエタノールで再結晶二回行い、針状、N,N,N’−トリス(4−ビニルフェニル)−N’−フェニル−ベンジジンを得た。収量49.1g。
【0085】
<N,N,N’−トリス(4−ビニルフェニル)−N’−フェニル−ベンジジンのヒドロシリル化>
トルエン40ml、メチルジメトキシシラン20.3g及びジクロロ(h−シクロオクタ−1,5−ジエン)白金(II)1.73mmolを三つ口フラスコに取り、室温で攪拌しながらN,N,N’−トリス(4−ビニルフェニル)−N’−フェニル−ベンジジン10.9g(19.3mmol)のトルエン溶液40mlを滴下した。滴下終了後、70℃で3時間攪拌を行った後、溶媒を減圧下で除去し、淡黄色油状のN,N,N’−トリス{4−〔2−(メチルジメトキシシリル)エチル〕フェニル}−N’−フェニル−ベンジジンを得た。収量は14.1gであった。
【0086】
合成したN,N,N’−トリス{4−〔2−(メチルジメトキシシリル)エチル〕フェニル}−N’−フェニル−ベンジジン8.0gをsec−ブタノール12.0gに溶解したところ、均一で透明な溶液となった。
【0087】
[比較合成例1]
4−[2−メチルジメトキシシリル]エチル]−トリフェニルアミンの合成
<4−(N,N−ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒドの合成>
三つ口フラスコにトリフェニルアミン101.4gとDMF35.5mlを入れ、氷水冷却下、攪拌しながらオキシ塩化リン84.4mlを滴下し、温度を95℃に上げて5時間反応させた。反応液を4リットルの温水へ注ぎ1時間攪拌した。その後、沈殿物を濾取し、エタノール/水(1:1)の混合溶液で洗浄し、4−(N,N−ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒドを得た。収量91.5g。
【0088】
<4−ビニルトリフェニルアミンの合成>
水素化ナトリウム14.6g、1,2−ジメトキシエタン700mlを三つ口フラスコに取り、室温で攪拌しながらトリメチルホスフォニウムブロマイド130.8gを加えた。次に、無水エタノールを一滴加えた後、70℃で4時間反応させた。これに4−(N,N−ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド100gを加え、70℃に温度を上げ5時間反応させた。反応液を濾過し、濾液と沈殿物のエーテル抽出液を一緒にし水洗した。次いで、エーテル液を塩化カルシウムで脱水後、エーテルを除去し、反応混合物を得た。これをエタノールから再結晶を行い、針状、淡黄色のビニルトリフェニルアミンを得た。収量83.4g。
【0089】
<4−ビニルトリフェニルアミンのヒドロシリル化>
トルエン40ml、メチルジメトキシシラン6.3g(60mmol)及びトリス(テトラメチルジビニルジシロキサン)二白金(0)のトルエン溶液0.018mmolを三つ口フラスコに取り、室温で攪拌しながら4−ビニルトリフェニルアミン8.2gのトルエン溶液20mlを滴下した。滴下終了後、70℃で3時間攪拌を行った後、溶媒を減圧下で除き、淡黄色油状の4−[2−(メチルジメトキシシリル)エチル]トリフェニルアミンを得た。収量10.5g。
【0090】
合成した4−[2−(メチルジメトキシシリル)エチル]トリフェニルアミン8.0gをイソプロパノール12.0gに溶解したところ、白色の懸濁液となり、数分後には成分が分相した液となった。
【0091】
更に、4−[2−(メチルジメトキシシリル)エチル]トリフェニルアミン8.0gをトルエン12.0gに溶解したところ、均一で透明な溶液となったが、この溶液をポリカーボネート上にワイヤーバーコート法により塗布したところ、ポリカーボネートが溶解し、平滑な膜とはならなかった。
【0092】
[比較合成例2]
N,N’−ビス{4−〔2−(トリエトキシシリル)エチル〕フェニル}−N,N’−ジフェニル−ベンジジンの合成
<N,N’−ビス(4−ホルミルフェニル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジンの合成>
三つ口フラスコに既知の方法により合成したN,N,N’,N’−テトラフェニル−ベンジジン100g、DMF35.5mlを入れ、氷水冷却下、攪拌しながらオキシ塩化リン84.4mlを滴下した。滴下終了後、混合溶液を95℃で5時間反応させ、4リットルの温水へ注ぎ1時間攪拌した。その後、沈殿物を濾取し、エタノール/水(1:1)の混合溶液で洗浄し、N,N’−ビス(4−ホルミルフェニル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジンを得た。収量88.9g。
【0093】
<N,N’−ビス(4−ビニルフェニル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジンの合成>
水素化ナトリウム12.1g、1,2−ジメトキシエタン580mlを三つ口フラスコに取り、室温で攪拌しながらトリメチルホスフォニウムブロマイド108.5gを加えた。次に、無水エタノールを一滴加えた後、70℃で4時間反応させた。以上のようにして得られた反応混合液にN,N’−ビス(4−ホルミルフェニル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン82.8gを加え、70℃で5時間反応させた後、濾別し、濾取したケーキをエーテル抽出し濾液と一緒にし水洗した。次いで、エーテル液を塩化カルシウムで脱水後、エーテルを除去し、反応混合物を得た。これをエタノールで再結晶二回行い、針状、N,N’−ビス(4−ビニルフェニル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジンを得た。収量69.7g。
【0094】
<N,N’−ビス(4−ビニルフェニル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジンのヒドロシリル化>
トルエン40ml、トリエトキシシラン31.7g及びジクロロ(h−シクロオクタ−1,5−ジエン)白金(II)1.73mmolを三つ口フラスコに取り、室温で攪拌しながらN,N’−ビス(4−ビニルフェニル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン15.7g(19.3mmol)のトルエン溶液40mlを滴下した。滴下終了後、70℃で3時間攪拌を行った後、溶媒を減圧下で除去し、淡黄色油状のN,N’−ビス{4−〔2−(トリエトキシシリル)エチル〕フェニル}−N,N’−ジフェニル−ベンジジンを得た。収量は24.3gであった。
【0095】
合成したN,N’−ビス{4−〔2−(トリエトキシシリル)エチル〕フェニル}−N,N’−ジフェニル−ベンジジン8.0gをsec−ブタノール12.0gに溶解したところ、白色の粘体となり、数分後には成分が分相した。
【0096】
更に、N,N’−ビス{4−〔2−(トリエトキシシリル)エチル〕フェニル}−N,N’−ジフェニル−ベンジジン8.0gをトルエン12.0gに溶解したところ、均一で透明な溶液となったが、この溶液をポリカーボネート上にワイヤーバーコート法により塗布したところ、ポリカーボネートが溶解し、平滑な膜とはならなかった。
【0097】
(実施例1)
引き抜き加工により得られた外径30mmのアルミニウムシリンダー上に、フェノール樹脂(商品名:プライオーフェン、大日本インキ化学工業(株)製)167質量部をメチルセロソルブ100質量部に溶解したものへ導電性硫酸バリウム超微粒子(1次粒径50nm)200質量部及び平均粒径2μmのシリコーン樹脂粒子3質量部を分散したものを浸漬コーティング法により塗工し、乾燥後の膜厚が15μmの導電層を形成した。
【0098】
上記導電層上にアルコール可溶性共重合ポリアミド(商品名:アミランCM−8000、東レ(株)製)5質量部をメタノール95質量部に溶解した溶液を浸漬コーティング法により塗工した。80℃で10分間乾燥して、膜厚が1μmの下引き層を形成した。
【0099】
次に、電荷発生層用分散液としてCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2゜)の9.0゜、14.2゜、23.9゜及び27.1゜に強いピークを有するオキシチタニルフタロシアニン顔料5質量部をシクロヘキサノン95質量部にポリビニルベンザール(ベンザール化度75%以上)2部を溶解した液に加え、サンドミルで2時間分散した。この分散液を先に形成した下引き層の上に乾燥後の膜厚が0.2μmとなるように浸漬コーティング法で塗工した。
【0100】
次に、下記構造式で示されるトリアリールアミン系化合物50質量部と、
【0101】
【化7】
ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ−200、三菱ガス化学(株)製)50質量部をクロロベンゼン400質量部に溶解して調製した溶液を、上記電荷発生層上に浸漬コーティング法により塗布し、117℃で1時間加熱乾燥して、膜厚が10μmの電荷輸送層を形成した。
【0102】
次に、合成例1で合成した4,4’−ビス[2−(メチルジメトキシシリル)エチル]トリフェニルアミン8.0質量部をイソプロパノール12.0質量部に溶解した溶液を、上記電荷輸送層上に浸漬コーティング法により塗布し、155℃で3時間加熱乾燥して、膜厚が3μmの表面保護層を形成した。
【0103】
この電子写真感光体を−600Vに帯電し、波長680nmの光を用いて電子写真特性を測定したところ、E1/2(−300Vまで帯電電位が減少するために必要な露光量)が0.15J/cm2、残留電位が−19Vと非常に良好であった。
【0104】
本電子写真感光体をキヤノン製レーザービームプリンターLBP−SXの改造機{(1/e2)を副走査方向で63.5μm、主走査方向で20μmの照射スポット径となるように改造}を用い初期帯電−600Vに設定して画像評価を行ったところ、1万枚の耐久試験後においても画像の劣化がなく、600dpi相当の入力信号においてのハイライト部の1画素再現性も十分であった。
【0105】
(実施例2)
実施例1と同様に電荷輸送層までを形成した。
【0106】
次に、合成例2で合成した4,4’−ビス[2−(トリエトキシシリル)エチル]トリフェニルアミンを用いた以外は、実施例1と同様にして表面保護層を形成した。
【0107】
この電子写真感光体を実施例1と同様に評価したところ、E1/2が0.13J/cm2、残留電位が−18Vと非常に良好であった。
【0108】
本電子写真感光体を実施例1と同様のキヤノン製レーザービームプリンターを用い、初期帯電−600Vに設定して画像評価を行ったところ、5000枚の耐久試験後の電子写真感光体の摩耗量は0.1μm以下と極めて少なく、耐久後の水の接触角も100度と良好で、画像の劣化もなく、600dpi相当の入力信号においてのハイライト部の1画素再現性も十分であった。
【0109】
(実施例3)
実施例1と同様に電荷輸送層までを形成した。
【0110】
次に、合成例4で合成した4,4’−ビス[2−(トリエトキシシリル)エチル]−3”,4”−ジメチル−トリフェニルアミンを用いた以外は、実施例1と同様にして表面保護層を形成した。
【0111】
この電子写真感光体を実施例1と同様に評価したところ、E1/2が0.13J/cm2、残留電位が−22Vと非常に良好であった。
【0112】
本電子写真感光体を実施例1と同様のキヤノン製レーザービームプリンターを用い、初期帯電−500Vに設定して画像評価を行ったとろ、1万枚の耐久試験後の電子写真感光体の摩耗量は0.3μmと極めて少なく、水の接触角は101度と良好で黒ポチ等の電荷注入及び干渉縞による画像の劣化もなく、600dpi相当の入力信号においてのハイライト部の1画素再現性も十分であった。
【0113】
(実施例4)
実施例1と同様に電荷輸送層までを形成した。
【0114】
次に、合成例5で合成したN,N,N’−トリス{4−〔2−(メチルジメトキシシリル)エチル〕フェニル}−N’−フェニル−ベンジジンを用いた以外は、実施例1と同様にして表面保護層を形成した。
【0115】
この電子写真感光体を実施例1と同様にして評価したところ、E1/2が0.12J/cm2、残留電位が−13Vと非常に良好であった。
【0116】
本電子写真感光体を実施例1と同様のキヤノン製レーザービームプリンターを用い、初期帯電−500Vに設定して画像評価を行ったとろ、1万枚の耐久試験後の摩耗量は0.25μmと極めて少なく、水の接触角は100度であり、ハイライト部、高濃度部の再現性の優れた画像が得られた。
【0117】
(比較例1)
電荷輸送層の膜厚を13μmとした以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層までを形成し、表面保護層は形成しなかった。
【0118】
この電子写真感光体を実施例1と同様に評価したところ、E1/2は0.13J/cm2であり、残留電位が−19Vと良好であったが、実施例1と同様のキヤノン製レーザービームプリンターを用い、初期帯電−500Vに設定して画像評価を行ったとろ、1万枚の耐久試験後の摩耗量は2.5μmと実施例に比べて非常に大きくなった。
【0119】
(比較例2)
実施例1と同様に電荷輸送層までを形成した。
【0120】
次に、比較合成例1で合成した4−[2−(メチルジメトキシシリル)エチル]トリフェニルアミン8.0gをトルエン12.0gに溶解した溶液を、上記電荷輸送層上に浸漬コーティング法により塗布したところ、塗布中に電荷輸送層が溶解して平滑な電子写真感光体表面にはならず、この電子写真感光体は実施例1と同様の評価はできなかった。
【0121】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、アルコールのみの溶液の塗工液を用いることによって、電荷輸送層を溶解することなく表面保護層が浸漬コーティングされ、機械的、電気的耐久性を両立した電子写真感光体の製造方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる電子写真感光体の層構成の例を示す図である。
【図2】 本発明にかかる電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた画像形成装置の概略構成の例を示す図である。
【図3】 本発明にかかる画像形成装置のフルカラー複写機の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
1 導電性支持体
2 導電層
3 下引層
4 電荷発生層
5 電荷輸送層
6 表面保護層
21 電子写真感光体
22 軸
23 帯電手段
24 露光光
25 現像手段
26 転写手段
27 転写材
28 定着手段
29 クリーニング手段
30 前露光光
31 プロセスカートリッジ
32 案内手段
Claims (1)
- 支持体上に電荷発生層、電荷輸送層、表面保護層を順次積層してなる電子写真感光体の製造方法において、該電子写真感光体の表面保護層が下記式(1)で示される有機ケイ素変成正孔輸送性化合物の重縮合生成物を含有し、該表面保護層が該有機ケイ素変成正孔輸送性化合物をアルコールのみから選ばれた溶媒に溶解した溶液に浸漬されることにより形成されることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
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