JP4226792B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解質二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、携帯電話などの携帯機器向けの非水電解質二次電池として、リチウムイオン二次電池が商品化されている。この電池としては、密閉容器内に、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)のような活物質を含む正極と、黒鉛質材料や炭素質材料を含む負極と、前記正極及び前記負極の間に介在されるセパレータと、リチウム塩を溶解した有機溶媒からなる非水電解液とが収納された構成を有するものが知られている。
【0003】
前記電解液の溶媒としては、低粘度、低沸点の非水溶媒が用いられている。このような非水溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)やエチレンカーボネート(EC)のような環状カーボネート、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)のような鎖状カーボネート等が知られている。環状カーボネートまたは鎖状カーボネートを含む非水溶媒を備える非水電解液は、正極と反応し難いという利点を有する。
【0004】
しかしながら、環状カーボネートまたは鎖状カーボネートを含む非水溶媒を備える非水電解液が用いられた非水電解質二次電池は、初充電時あるいは高温で貯蔵した際に非水溶媒が分解して炭酸ガス(CO2)を発生するため、内圧が上昇しやすく、開放弁作動による液漏れで密閉性が低下したり、急激な内圧上昇で破裂に至るという問題点を有する。また、発生した炭酸ガスの量が開放弁の作動や破裂に至らないような量であったとしても、炭酸ガスが二次電池中に残存したままであると、炭酸ガスにより充放電反応が阻害されるため、長寿命を得られなくなる。さらに、電池の薄型化のために密閉容器の壁の厚さを薄くすると、発生した炭酸ガスにより容器が膨れるという問題点を生じる。容器の膨れは、電池が電子機器に納まらなくなったり、電子機器が誤作動する等の不具合を招く。特に、非水溶媒として、MEC、DECまたはDMCを含む場合に、炭酸ガスの発生が顕著になる。
【0005】
上述したような問題点を解決するために、炭酸ガスを発生しない新規な非水電解質に関する種々の研究がなされているものの、いまだ炭酸ガスを全く発生しない理想的な非水電解質は開発されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、初充電時及び高温貯蔵時に発生する炭酸ガスにより内圧が上昇するのが抑制され、安全性及び充放電サイクル特性が向上された非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る非水電解質二次電池は、密閉容器と、前記密閉容器内に収納され、リチウムを吸蔵・放出する正極と、前記密閉容器内に収納され、リチウムを吸蔵・放出する負極と、前記密閉容器内に収納され、非水溶媒と電解質からなる非水電解質とを具備する非水電解質二次電池において、
前記密閉容器内に、炭酸ガスを吸収するリチウム複合酸化物Li 4 SiO 4 が存在し、前記Li 4 SiO 4 は電池理論容量1mAh当り4mg以下の量で存在していることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る非水電解質二次電池は、密閉容器と、前記密閉容器内に収納され、リチウムを吸蔵・放出する正極と、前記密閉容器内に収納され、リチウムを吸蔵・放出する負極と、前記密閉容器内に収納され、非水溶媒と電解質からなる非水電解質とを具備する非水電解質二次電池において、
前記非水電解質中に、炭酸ガスを吸収するリチウム複合酸化物Li 4 SiO 4 が含有されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る非水電解質二次電池は、密閉容器と、前記密閉容器内に収納され、リチウムを吸蔵・放出する正極と、前記密閉容器内に収納され、リチウムを吸蔵・放出する負極と、前記密閉容器内に収納され、非水溶媒と電解質からなる非水電解質とを具備する非水電解質二次電池において、
前記負極中に、炭酸ガスを吸収するリチウム複合酸化物Li 4 SiO 4 が含有されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る非水電解質二次電池は、密閉容器と、前記密閉容器内に収納され、リチウムを吸蔵・放出する正極及び負極を含む電極群と、前記密閉容器内に収納され、非水溶媒と電解質からなる非水電解質とを具備する非水電解質二次電池において、
前記密閉容器と前記電極群との間に存在する空間内に、リチウム複合酸化物Li 4 SiO 4 を含有する炭酸ガス吸収層を存在させることを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係る非水電解質二次電池は、正極及び負極を含む電極群と、前記電極群に含有される非水電解質と、前記電極群及び前記非水電解質が収納される密閉容器とを具備する非水電解質二次電池において、前記密閉容器内に、炭酸ガスを吸収する性質を有するリチウム複合酸化物を存在させることを特徴とするものである。
【0012】
電極群の構造としては、(a)正極及び負極を含む積層物か、(b)前記積層物を渦巻き状に捲回した渦巻型か、(c)前記積層物を扁平形状に捲回した扁平型か、(d)前記積層物を1回以上折り曲げた扁平型などを挙げることができる。前記積層物においては、正極と負極の間にセパレータを配置するか、あるいは電解質層を配置することができる。さらに、正極とセパレータの間並びに負極とセパレータの間に電解質層を配置することも可能である。
【0013】
密閉容器としては、例えば、外装缶と蓋体を有するもの、袋状のものなどを使用することができる。
【0014】
密閉容器は、例えば、フィルム材、金属板、プラスチック等から形成することができる。
【0015】
フィルム材としては、例えば、金属フィルム、熱可塑性樹脂などの樹脂シート、可撓性を有する金属層の片面または両面に熱可塑性樹脂のような樹脂層が被覆されている多層シート等から形成することができる。前記樹脂製シートおよび前記樹脂層は、1種類の樹脂もしくは2種類以上の樹脂からそれぞれ形成することができる。前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを挙げることができる。特に、融点が150℃以上のポリプロピレンは、ヒートシール部の封止強度を向上することができるため、望ましい。一方、前記金属層は、1種類の金属もしくは2種類の以上の金属から形成することできる。また、前記金属層及び前記金属フィルムは、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス、ニッケル、銅などからそれぞれ形成することができる。中でも、軽量で、水分を遮断する機能が高いアルミニウムが好ましい。
【0016】
密閉容器を構成するフィルム材の厚さは、0.3mm以下にすることが好ましい。フィルム材の厚さが0.3mmより厚いと、薄型化の効果が小さい、つまり重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を十分に高くすることが困難になる。フィルム材の厚さは、0.25mm以下にすることが好ましく、更に好ましい範囲は0.2mm以下である。また、厚さが0.05mmより薄いと、落下等の物理的な衝撃により変形や破損し易くなる。このため、厚さの下限値は0.05mmにすることが好ましい。
【0017】
金属板としては、例えば、アルミニウム系金属、鉄、ステンレス等を挙げることができる。アルミニウム系金属としては、例えば純アルミニウム、0.05重量%以下のMgおよび0.2重量%以下のCuを含むアルミニウム合金を挙げることができる。このようなアルミニウム系金属としては、例えばJISの合金番号でA1050、A1100、A1200、A3003等を挙げることができる。
【0018】
金属製の密閉容器の形状は、有底円筒形の外装缶に蓋がレーザ溶接もしくはかしめ固定により取り付けられているもの、有底矩形筒状の外装缶に蓋がレーザ溶接もしくはかしめ固定により取り付けられているものなどにすることができる。また、金属製密閉容器には、防爆のための開放弁を形成することができる。
【0019】
金属製密閉容器の場合、板厚を0.5mm以下にすることが好ましい。板厚が0.5mmより厚いと、薄型化の効果が小さい、つまり重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を十分に高くすることが困難になる。また、板厚を0.1mm未満にすると、強度が低下して外装缶に収納された電極群を十分に保護することが困難になる可能性がある。このため、板厚は、0.1mm以上、0.5mm以下にすることが好ましい。更に好ましい範囲は0.2〜0.3mmである。
【0020】
プラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ナイロン、ABS樹脂などを挙げることができる。
【0021】
リチウム複合酸化物には、例えば、リチウムオルソシリケート(Li4SiO4)、リチウムメタシリケート(Li2SiO3)、リチウムジルコネート(Li2ZrO3)、リチウムアルミネート(LiAlO2)、リチウムフェライト(LiFeO2)及びリチウムチタネート(Li2TiO3)よりなる群から選択される1種類以上の酸化物を使用することができる。Li4SiO4やLi2SiO3のようなケイ酸リチウムは、非水電解質二次電池の使用温度範囲(−20℃〜150℃の範囲)内において炭酸ガスを速やかに吸収することができるため、リチウム複合酸化物には、Li4SiO4か、Li2SiO3か、もしくはLi4SiO4とLi2SiO3の両者を使用することが好ましい。
【0022】
リチウムオルソシリケート(Li4SiO4)は、大気中の炭酸ガスのような極低濃度(大気中の炭酸ガスの濃度は約300ppm)で存在する炭酸ガスを常温において速やかに吸収する特性を有し、具体的にはリチウムオルソシリケート1mlあたり約700〜900ml(標準状態)の炭酸ガスを吸収することが可能である。また、Li4SiO4は、原料に二酸化珪素(SiO2)を使用していることから低コスト化を期待することができ、軽量で(例えば、Li2ZrO3と比較して20%も軽量)、非伝導性で、しかも非水電解質に対して化学的に安定である。さらに、Li4SiO4が炭酸ガスを吸収すると、下記反応式(1)及び(2)に示すように、炭酸リチウム(Li2CO3)が生成するため、負極の表面にLi2CO3を含有する保護皮膜(固体電解質皮膜)を形成することができる。
【0023】
Li4SiO4+CO2 → Li2SiO3+Li2CO3 (1)
Li2SiO3+CO2 → SiO2+Li2CO3 (2)
リチウムフェライト(LiFeO2)及びリチウムチタネート(Li2TiO3)は、電子伝導性を有するため、この炭酸ガス吸収材によって内部短絡を生じないような方法で密閉容器内に充填することが望ましい。
【0024】
電池理論容量(電池設計容量)1mAh当りのリチウム複合酸化物の存在量は、4mg/mAh以下にすることが好ましい。これは次のような理由によるものである。存在量が4mg/mAhを超えると、高い重量エネルギー密度が得られないばかりか、電池の内部抵抗が上昇して高い充電容量を得られなくなる可能性がある。一方、最小存在量は、0.1μg/mAhにすることが好ましい。存在量を0.1μg/mAh未満にすると、電池内で発生した炭酸ガスを十分に吸収することができなくなる恐れがある。よって、存在量は、0.1μg/mAh以上、4mg/mAh以下にすることが好ましい。より好ましい範囲は、0.2mg/mAh以上、2mg/mAh以下で、最も好ましい範囲は0.3mg/mAh以上、0.91mg/mAh以下である。
【0025】
密閉容器内のリチウム複合酸化物の同定は、以下の方法により測定することが可能である。
【0026】
(1)サンプルの採取
正極、負極、セパレータ、絶縁板、スペーサ、密閉容器等については、その断片をサンプルとすることができる。
【0027】
正極及び負極については、断片の代わりに、後述する(c;坩堝C)で説明する方法により分離された正極合剤層、負極合剤層をサンプルとして使用することができる。サンプルである正極合剤層及び負極合剤層は、塊状でも、粉末状でも良い。
【0028】
絶縁板及び密閉容器については、断片の代わりに、後述する(d;坩堝D)で説明する方法により分離された材料膜をサンプルとして使用することができる。サンプルである材料膜は、塊状でも、粉末状でも良い。
【0029】
非水電解質については、2通りの方法でサンプリングすることができる。
【0030】
(I)非水電解質が液体の場合、濾過し、得られた残渣を乾燥させ、サンプルとする。
(II)後述する(a;坩堝A)で説明する方法により得られる残渣をサンプルとして使用する。
【0031】
(2)前述した(1)の方法で得られたサンプルに含まれるリチウム複合酸化物の結晶構造と組成をX線回折装置(XRD)及び薄膜X線回折装置(TF−XRD)により同定する。この際、X線として放射光を使用すると、強いX線を得ることができるため、約1mg程度の試料での分析が可能である。
【0032】
また、電池内のリチウム複合酸化物の存在量は、以下の方法により測定することが可能である。
【0033】
二次電池を解体後、以下の手順に従ってリチウム複合酸化物の元素分析を行う。
【0034】
(a)Arガス雰囲気中で非水電解質二次電池をカッターで切断した後、メタノール溶液の入ったポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製ビーカーに入れ、超音波洗浄器を使用して洗浄を行う。この操作はメタノール溶液を変えて3回繰り返す。この洗浄操作によって、リチウム複合酸化物と非水電解質の混合物がメタノール中に抽出される。洗浄に使用したメタノール溶液をガラスビーカーに移し入れ、加熱によりメタノールを蒸発させると、リチウム複合酸化物と非水電解質を含む残渣が得られる。この残渣を坩堝Aに移す。
【0035】
(b)セパレータを坩堝Bに移す。二次電池が絶縁板を備える場合には、この絶縁板も坩堝Bに移す。
【0036】
(c)正極及び負極をn−メチルピロリドン溶媒で濡らし、正極合剤層を正極集電体から剥離させると共に、負極合剤層を負極集電体から剥離させる。得られた正極合剤層及び負極合剤層を坩堝Cに移す。
【0037】
(d)密閉容器の内面(蓋を備える場合には蓋の内面も含まれる)をn−メチルピロリドン溶媒で濡らし、これらの表面に付着している材料膜を剥離させる。剥離させたものを坩堝Dに移す。
【0038】
各坩堝A〜Dにアルカリ剤を添加し、アルカリ融解を行う。融解後、溶液化し、Si元素についてはモリブデンブルー吸光光度法あるいは誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)で定量を行い、Fe、Al、Ti、Zrの各元素については誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)で定量を行う。一方、原子吸光法でリチウムの定量を行う。測定量に基づき、リチウム複合酸化物の各構成元素の量を算出し、この値からリチウム複合酸化物の存在量を決定する。
【0039】
リチウム複合酸化物は、以下の(1)〜(5)に説明する方法で密閉容器内に存在させることができる。
【0040】
(1)正極に含有させる。
(2)負極に含有させる。
(3)セパレータに含有させる。
(4)非水電解質に含有させる。
(5)密閉容器と電極群との間に存在する空間内に、リチウム複合酸化物を含有する炭酸ガス吸収層を存在させる。
【0041】
前述した(1)〜(5)の方法は、単独で使用しても良いが、2つ以上の方法を組み合わせて使用しても良い。中でも、(2)、(4)、(5)の方法が好ましい。
【0042】
以下、各方法について詳細に説明する。
【0043】
1)正極
この正極は、炭酸ガスを吸収する性質を有するリチウム複合酸化物及び活物質を含有する正極合剤層と、前記正極合剤層が担持される正極集電体とを備える。
【0044】
このような正極は、例えば、活物質、リチウム複合酸化物の粉末、導電剤および結着剤を適当な溶媒に懸濁し、得られた懸濁物を正極集電体に塗布し、乾燥した後、加圧成形を施すことにより作製される。このような方法によると、正極中にリチウム複合酸化物を分散させることができる。
【0045】
前記正極活物質としては、種々の酸化物、例えば二酸化マンガン、リチウムマンガン複合酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物、リチウム含有コバルト化合物、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物、リチウム含有鉄酸化物、リチウムを含むバナジウム酸化物や、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどのカルコゲン化合物などを挙げることができる。中でも、リチウム含有コバルト酸化物(例えば、LiCoO2)、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物(例えば、LiNi0.8Co0.22)、リチウムマンガン複合酸化物(例えば、LiMn24、LiMnO2)を用いると、高電圧が得られるために好ましい。
【0046】
前記導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。
【0047】
前記結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等を用いることができる。
【0048】
正極活物質、導電剤および結着剤の配合割合は、正極活物質80〜95重量%、導電剤3〜20重量%、結着剤2〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
【0049】
集電体には、例えば、アルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔、タングステン箔等を使用することができる。
【0050】
2)負極
この負極は、炭酸ガスを吸収する性質を有するリチウム複合酸化物及びリチウムを吸蔵・放出する炭素質物を含有する負極合剤層と、前記負極合剤層が担持される負極集電体とを備える。
【0051】
この負極は、例えば、リチウムを吸蔵・放出する炭素質物とリチウム複合酸化物粉末と結着剤とを溶媒の存在下で混練し、得られた懸濁物を負極集電体に塗布し、乾燥した後、所望の圧力で1回プレスもしくは2〜5回多段階プレスすることにより作製される。このような方法によると、負極中にリチウム複合酸化物を分散させることができる。
【0052】
リチウムを吸蔵・放出する炭素質物としては、例えば、黒鉛、コークス、炭素繊維、球状炭素などの黒鉛質材料もしくは炭素質材料、熱硬化性樹脂、等方性ピッチ、メソフェーズピッチ、メソフェーズピッチ系炭素繊維、メソフェーズ小球体など(特に、メソフェーズピッチ系炭素繊維が好ましい)に500〜3000℃で熱処理を施すことにより得られる黒鉛質材料または炭素質材料等を挙げることができる。中でも、熱処理の温度を2000℃以上にすることにより得られ、(002)面の面間隔d002が0.34nm以下である黒鉛結晶を有する黒鉛質材料を用いるのが好ましい。このような黒鉛質材料を炭素質物として含む負極を備えた非水電解液二次電池は、電池容量および大電流特性を大幅に向上することができる。面間隔d002は、0.336nm以下であることが更に好ましい。
【0053】
前記結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いることができる。
【0054】
炭素質物及び結着剤の配合割合は、炭素質物90重量%以上、結着剤10重量%以下であることが好ましい。特に、炭素質物は負極を作製した状態で50〜200g/m2の範囲にすることが好ましい。
【0055】
集電体としては、例えば、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔、タングステン箔、モリブテン箔等を用いることができる。
【0056】
本発明は、前述したリチウムを吸蔵・放出する炭素質物を含む負極を備える非水電解質二次電池の他に、金属酸化物か、金属硫化物か、もしくは金属窒化物を含む負極を備える非水電解質二次電池や、リチウム金属またはリチウム合金からなる負極を備える非水電解質二次電池にも同様に適用することができる。
【0057】
金属酸化物としては、例えば、スズ酸化物、ケイ素酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブ酸化物、タングステン酸化物等を挙げることができる。
【0058】
金属硫化物としては、例えば、スズ硫化物、チタン硫化物等を挙げることができる。
【0059】
金属窒化物としては、例えば、リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等を挙げることができる。
【0060】
リチウム合金としては、例えば、リチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等を挙げることができる。
【0061】
3)セパレータ
セパレータにリチウム複合酸化物を含有させる際、セパレータの表面の少なくとも一部に、リチウム複合酸化物を含有する炭酸ガス吸収層を形成することが好ましい。炭酸ガス吸収層は、セパレータに全面的に形成するのではなく、リチウムイオンおよび非水電解質の透過を妨げないように分散的に形成することが好ましい。
【0062】
炭酸ガス吸収層は、例えば、リチウム複合酸化物の粉末と結合剤を適宜な溶媒に懸濁し、この懸濁物をセパレータの表面の少なくとも一部に塗布し、乾燥することにより形成される。結合剤としては、非水電解質に対して安定であり、かつリチウム複合酸化物の炭酸ガス吸収力を阻害しない限り、特に限定されるものではない。例えば、正極並びに負極で使用する結着剤を使用することができる。リチウム複合酸化物と結合剤との割合は、結合剤を3〜10重量%の範囲内にすることが好ましい。より好ましい結合剤の割合は3〜4重量%である。また、溶媒には、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルフォルムアミド(DMF)等を使用することができる。
【0063】
炭酸ガス吸収層の厚さは、50μm以下にすることが好ましい。炭酸ガス吸収層の厚さが50μmを超えると、体積あたりの容量が低下する恐れがある。また、炭酸ガス吸収層の厚さを0.1μm未満にすると、非水電解質の酸化分解により発生した炭酸ガスを十分に吸収することができなくなる恐れがある。よって、厚さのより好ましい範囲は、1μm〜50μmの範囲内である。さらに好ましい厚さは、10μm〜25μmの範囲内である。
【0064】
炭酸ガス吸収層は、多孔質構造を有することが好ましい。多孔質構造の炭酸ガス吸収層は、多孔質である分、比表面積を多くすることができるため、炭酸ガス吸収量を増加させることが可能になる。多孔質構造の炭酸ガス吸収層は、例えば、リチウム複合酸化物及び結合剤を含む懸濁液をセパレータに塗布し、乾燥することにより形成することができる。
【0065】
以下、炭酸ガス吸収材が含有されるセパレータについて説明する。
【0066】
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を用いることができる。中でも、ポリエチレンか、あるいはポリプロピレン、または両者からなる多孔質フィルムは、二次電池の安全性を向上できるため、好ましい。
【0067】
セパレータの厚さは、30μm以下にすることが好ましい。厚さが30μmを越えると、正負極間の距離が大きくなって内部抵抗が大きくなる恐れがある。また、厚さの下限値は、5μmにすることが好ましい。厚さを5μm未満にすると、セパレータの強度が著しく低下して内部ショートが生じやすくなる恐れがある。厚さの上限値は、25μmにすることがより好ましく、また、下限値は10μmにすることがより好ましい。
【0068】
セパレータは、120℃の条件で1時間の放置したときの熱収縮率が20%以下であることが好ましい。熱収縮率は、15%以下にすることがより好ましい。
【0069】
セパレータは、多孔度が30〜60%の範囲であることが好ましい。これは次のような理由によるものである。多孔度を30%未満にすると、セパレータにおいて高い電解液保持性を得ることが困難になる恐れがある。一方、多孔度が60%を超えると、十分なセパレータ強度を得られなくなる恐れがある。多孔度のより好ましい範囲は、35〜50%である。
【0070】
セパレータは、空気透過率が600秒/100cm3以下であることが好ましい。空気透過率が600秒/100cm3を超えると、セパレータにおいて高いリチウムイオン移動度を得ることが困難になる恐れがある。また、空気透過率の下限値は、100秒/100cm3にすることが好ましい。空気透過率を100秒/100cm3未満にすると、十分なセパレータ強度を得られなくなる恐れがあるからである。空気透過率の上限値は500秒/100cm3にすることより好ましく、また、下限値は150秒/100cm3にすることより好ましい。
【0071】
セパレータの4辺のうち少なくとも1辺が、正極及び負極の端部より延出していることが好ましい。セパレータの延出寸法は、負極の端部より0.25mm以上とすることが望ましい。延出寸法が不足すると、内部ショートが生じ易くなる。セパレータの4辺全てが正極及び負極の端部より延出していることが内部ショートを防止する点で望ましい。
【0072】
4)非水電解質
リチウム複合酸化物は、非水電解質中に分散される。以下、非水電解質について説明する。
【0073】
この非水電解質には、例えば、液状非水電解質、ゲル状非水電解質、高分子固体電解質が挙げられる。
【0074】
液状非水電解質は、例えば、非水溶媒に電解質を溶解することにより調製される。
【0075】
ゲル状非水電解質は、例えば、非水溶媒と電解質を高分子材料に溶解させ、熱処理等でゲル化することにより得られる。前記高分子材料としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ジアクリル酸(C10)等が挙げられる。
【0076】
固体非水電解質は、例えば、電解質を高分子材料に溶解し、固体化することにより得られる。前記高分子材料としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、あるいはアクリロニトリル、フッ化ビニリデンまたはエチレンオキシドを単量体として含む共重合体等が挙げられる。
【0077】
ゲル状非水電解質または固体非水電解質を用いる場合、正極と負極の間にゲル状非水電解質または固体非水電解質の層を介在させても良い。このような構成にする際には、セパレータを使用しなくても良い。
【0078】
以下、非水電解質に含まれる非水溶媒及び電解質について説明する。
【0079】
非水溶媒としては、リチウム二次電池の溶媒として公知の非水溶媒を用いることができ、特に限定はされないが、プロピレンカーボネート(PC)及びエチレンカーボネート(EC)よりなる群から選択される1種類以上からなる第1の溶媒と、PC及びECより低粘度であり且つドナー数が18以下である溶媒1種以上から構成される第2の溶媒とからなる混合溶媒を主体とする非水溶媒を用いることが好ましい。かかる混合溶媒を主体とする非水溶媒を含む非水電解質は、負極の表面に保護皮膜を形成することができるため、充電により負極にリチウムが挿入されるのに伴ってリチウムと溶媒和した非水溶媒が負極にコインターカレーションするのを抑制することができる。
【0080】
第2の溶媒としては、鎖状カーボンが好ましく、中でもジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、トルエン、キシレン、酢酸メチル(MA)、ギ酸メチル(MF)などが挙げられる。かかる第2の溶媒は、単独または2種以上の混合物の形態で用いることができる。特に、第2の溶媒のドナー数は、16.5以下であることがより好ましい。
【0081】
第2の溶媒の粘度は、25℃において28mp以下であることが好ましい。
【0082】
第1の溶媒と第2の溶媒からなる混合溶媒中の第1の溶媒の配合量は、体積比率で10〜80%であることが好ましい。より好ましい第1の溶媒の配合量は、体積比率で20〜75%である。
【0083】
第1の溶媒と第2の溶媒からなる混合溶媒のうちより好ましいのは、ECとMEC、ECとPCとMEC、ECとMECとDEC、ECとMECとDMC、ECとMECとPCとDECの混合溶媒である。この混合溶媒中のMECの体積比率は30〜80%とすることが好ましい。より好ましいMECの体積比率は、40〜70%の範囲である。また、第1の溶媒と第2の溶媒からなる混合溶媒として、ECとγ―BLの混合溶媒も好ましい。この混合溶媒中のγ―BLの体積比率は30〜80%であることが好ましい。
【0084】
電解質としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3SO22]などのリチウム塩が挙げられる。かかる電解質には、前述した種類の中から選ばれる1種以上もしくは2種類以上のリチウム塩を使用することができる。中でも、LiPF6、LiBF4を用いるのが好ましい。
【0085】
電解質の非水溶媒に対する溶解量は、0.5〜2モル/Lとすることが望ましい。
【0086】
非水電解質には、負極表面に形成される保護皮膜の安定性を向上させる目的で、添加物を含有させることが好ましい。かかる添加物としては、例えば、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ビニレンカーボネート(VC)、エチレンサルファイト(ES)及びプロピレンサルファイト(PS)よりなる群から選択される少なくとも1種類からなる有機溶媒等を挙げることができる。非水溶媒全体に占める添加物の体積比率は、5%以下とすることが望ましい。特に、負極表面に皮膜を緻密に形成する観点から、非水溶媒全体に占める添加物の体積比率は0.01%以上、5%以下にすることがより好ましい。
【0087】
非水電解質には、水を含有させることができる。水の添加量は、700ppm〜1000ppmの範囲内にすることが望ましい。水を添加することによって、水と負極表面の皮膜との化学反応により炭酸ガスが生成するが、この炭酸ガスをリチウム複合酸化物で吸収することができるため、水を添加した際の内圧上昇を抑制することができる。
【0088】
非水電解質には、正極や負極のような電極及びセパレータの濡れ性を向上させる観点から、界面活性剤を含むことが好ましい。前記界面活性剤としては、例えば、トリオクチルホスフェート(TOP)などを挙げることができる。
【0089】
非水電解質には、フッ化水素をトラップさせる機能を有する物質(例えば、炭酸リチウム)を添加しても良い。
【0090】
非水電解質として液状非水電解質を用いる場合、液状非水電解質の量は、電池単位容量100mAh当たり0.2〜0.6gにすることが好ましい。
【0091】
(5)密閉容器と電極群との間に存在する空間内に、リチウム複合酸化物を含有する炭酸ガス吸収層を存在させる。例えば、以下に説明する(i)〜(iii)の構成が挙げられる。(i)〜(iii)のうち2つ以上の構成を組み合わせることも可能である。
【0092】
(i)電極群の表面の少なくとも一部を炭酸ガス吸収層で被覆する。
(ii)電極群の周囲に炭酸ガス吸収層を配置する。
(iii)密閉容器内に存在する電極群以外の電池構成部材に炭酸ガス吸収層を形成する。
【0093】
特に、前述した(i)、(ii)によると、二次電池の製造工程に大きな変更を加えずに炭酸ガス吸収層を形成することができるため、好ましい。
【0094】
炭酸ガス吸収層は、電極群の表面と対向していることが望ましい。このような構成にすることによって、非水電解質の分解により生成した炭酸ガスを迅速に吸収することが可能になる。特に、炭酸ガス吸収層が電極群の表面のうち最外層と対向していることが好ましい。
【0095】
炭酸ガス吸収層は、例えば、リチウム複合酸化物及び結合剤を溶媒に分散させ、得られた懸濁液を塗布し、乾燥させることにより得られる。結合剤の種類と添加量、溶媒としては、前述したセパレータにおいて説明したのと同様な構成にすることができる。なお、炭酸ガス吸収層は、乾燥時の溶媒の蒸発により薄くなる分を考慮して予め厚めに塗布することが好ましい。
【0096】
炭酸ガス吸収層は、多孔質構造を有することが好ましい。多孔質構造の炭酸ガス吸収層は、多孔質である分、比表面積を多くすることができるため、炭酸ガス吸収量を増加させることが可能になる。多孔質構造の炭酸ガス吸収層は、例えば、前述した懸濁液塗布法により形成することができる。
【0097】
炭酸ガス吸収層の厚さは、200μm以下にすることが好ましい。炭酸ガス吸収層の厚さが200μmを超えると、体積あたりの容量が低下する恐れがある。また、炭酸ガス吸収層の厚さを2μm未満にすると、非水電解質の酸化分解により発生した炭酸ガスを十分に吸収することができなくなる恐れがある。よって、厚さのより好ましい範囲は、5μm〜50μmの範囲内である。さらに好ましい厚さは、10μm〜25μmの範囲内である。
【0098】
炭酸ガス吸収層には、炭酸ガス吸収層を補強する目的で担体に保持させることができる。担体としては、例えば、和紙、紙、高分子ゲル、不織布、非水電解質に非可溶な高分子から作られた補強繊維からなる織布もしくは不織布、微多孔質フィルム等を用いることができる。担体は、多孔質構造を有することが好ましい。
【0099】
次いで、電極群以外の電池構成部材について説明する。
【0100】
非水電解質二次電池として、外装缶と、前記外装缶内に収納され、正極及び負極を含む電極群と、前記外装缶内に収納される非水電解質と、前記外装缶の底部内面と前記電極群の間に配置される絶縁板と、前記外装缶の開口部に取り付けられる蓋体と、前記外装缶内の電極群と前記蓋体の間に配置されるスペーサと、前記外装缶または前記蓋体に形成される防爆のための開放弁とを具備する場合、電極群以外の電池構成部材に炭酸ガス吸収層を形成するには、以下の方法が挙げられる。また、(A)〜(D)のうちの2種類以上を組み合わせることが可能である。
【0101】
(A)前記外装缶の内面の少なくとも一部に炭酸ガス吸収層を形成する。
(B)前記蓋体の内面の少なくとも一部に炭酸ガス吸収層を形成する。
(C)前記絶縁板の表面の少なくとも一部に炭酸ガス吸収層を形成する。
(D)前記スペーサの表面の少なくとも一部に炭酸ガス吸収層を形成する。
(E)開放弁形成領域を含む内面に炭酸ガス吸収層を形成する。
【0102】
また、非水電解質二次電池として、フィルム製密閉容器と、前記容器内に収納され、正極及び負極を含む電極群と、前記容器内に収納される非水電解質とを具備する場合、電極群以外の電池構成部材に炭酸ガス吸収層を形成するには、例えば、(F)前記密閉容器の内面の少なくとも一部に炭酸ガス吸収層を形成することができる。
【0103】
前述した(C)及び(D)において、絶縁板及びスペーサの電極群と対向する面に炭酸ガス吸収層をそれぞれ形成することが好ましい。このような構成にすることによって、非水電解質の分解により生成した炭酸ガスを迅速に吸収することが可能になる。
【0104】
炭酸ガス吸収層に含まれるリチウム複合酸化物は、絶縁板及びスペーサの絶縁機能が損なわれるのを回避する観点から、非伝導性を有することが望ましい。中でも、Li4SiO4、Li2SiO3が好ましい。
【0105】
前述した(F)において、フィルム材からなる密閉容器の内面に炭酸ガス吸収層を形成する場合には、フィルム材の片面の目的とする領域に炭酸ガス吸収層を形成し、この炭酸ガス吸収層形成面を内側にしてヒートシールを施すことにより密閉容器を作製すると良い。炭酸ガス吸収層は、例えば、リチウム複合酸化物及び結合剤を溶媒に懸濁させ、得られた懸濁液をフィルム材に塗布し、乾燥することにより形成される。結合剤の種類と添加量、溶媒としては、前述したセパレータにおいて説明したのと同様な構成にすることができる。なお、密閉容器の封止強度を高めるため、フィルム材のヒートシール領域には、炭酸ガス吸収層を形成しないことが望ましい。この場合は、例えば、フィルム材のヒートシール領域をカバーシートで覆い、この状態で懸濁液を塗布すると良い。カバーシートの厚さは、作製したい炭酸ガス吸収層の厚さより10μm以上厚いことが好ましい。これには以下のような理由がある。フィルム材に懸濁液を塗布し、乾燥させた後に、溶媒の蒸発などにより、炭酸ガス吸収層が薄くなる恐れがあるからである。また、ヒートシール領域の幅は、5mm以下にすることが好ましく、さらに好ましい範囲は2mm以下である。
【0106】
なお、本発明に係る非水電解質二次電池においては、以下に説明する構成にすることができる。
【0107】
すなわち、正極で非水溶媒が酸化され、非水溶媒の液面から発生した炭酸ガスを毛細管現象を利用して炭酸ガスのみを通気孔を通過させ、通気層を有する炭酸ガス吸収材保有の空間に導入し、そこで、炭酸ガス吸収材により炭酸ガスを吸収させてもよい。前記通気層は、炭酸ガスを速やかに透過、拡散させることのできるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、ポリプロピレン繊維などを用いることができる。
【0108】
炭酸ガスだけを透過させるためには、通気孔を利用するほか、気相透過膜を用いることができる。気相透過膜としては、炭酸ガスを選択的に透過させるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルイミドおよび酢酸セルロースよりなる群から選択される少なくとも1種類の材料を使用することができる。気相透過膜は、リチウム複合酸化物と非水電解質の間に配置され、リチウム複合酸化物と非水電解質との接触を少なくすることができる。
【0109】
以上詳述したように本発明に係る非水電解質二次電池は、密閉容器と、前記密閉容器内に収納される正極と、前記密閉容器内に収納される負極と、前記密閉容器内に収納される非水電解質とを具備する。このような非水電解質二次電池においては、初充電時または高温貯蔵時に非水電解質が正極で分解されて炭酸ガスを発生するが、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、炭酸ガスを吸収する性質を有するリチウム複合酸化物が、非水電解質に対して安定で、かつ二次電池の使用温度範囲(常温付近)において炭酸ガスを吸収することを見出した。従って、前記密閉容器内に、炭酸ガスを吸収する性質を有するリチウム複合酸化物を存在させることによって、充放電特性を損なうことなく、炭酸ガスを吸収して内圧上昇を抑制することができる。その結果、破裂や液漏れを回避することができるため、安全性を向上することができ、かつ充放電サイクル寿命を向上することができる。また、電池の薄型化を図るために密閉容器の壁の厚さを薄くした際に、容器がガス圧で膨れて変形するのを抑制することが可能になると共に、正極で分解されやすい非水溶媒(例えば、環状カーボネート、鎖状カーボネート)を使用することが可能になる。よって、環状カーボネートや鎖状カーボネートが持つ負極と反応し難いという特長を生かして充放電サイクル寿命に優れる薄型非水電解質二次電池を提供することが可能になる。
【0110】
本発明に係る非水電解質二次電池において、電池理論容量1mAh当りのリチウム複合酸化物存在量を4mg以下にすることによって、高い重量エネルギー密度と低い内部抵抗を維持しつつ、炭酸ガスによる内圧上昇を抑制することができるため、破裂及び液漏れが少なくて安全性が高く、かつ重量エネルギー密度及び充放電サイクル寿命に優れる非水電解質二次電池を実現することができる。
【0111】
本発明に係る非水電解質二次電池において、非水電解質中にリチウム複合酸化物を含有させることによって、リチウム複合酸化物の有効表面積を多くすることができ、また、リチウム複合酸化物の非水電解質の酸化分解で発生した炭酸ガスの多くは非水溶媒中に溶存するため、炭酸ガスを迅速に吸収することが可能になる。その結果、特に初充電時の内圧上昇を大幅に抑制することができ、二次電池中の炭酸ガス存在量を少なくすることができるため、炭酸ガスにより充放電反応が阻害されるのを抑制することができ、充放電サイクル寿命を向上することができる。
【0112】
本発明に係る非水電解質二次電池において、炭酸ガスの吸収により炭酸リチウム(Li2CO3)を生成するリチウム複合酸化物(例えば、Li4SiO4、Li2SiO3)を使用することによって、負極の表面にLi2CO3含有の保護皮膜(固体電解質皮膜)を形成することができるため、負極にリチウムが吸蔵される際に非水溶媒がコインターカレーションするのを抑制することができる。その結果、負極の劣化を抑制することができるため、充放電サイクル特性と高温保存特性を改善することができる。特に、炭酸ガスの吸収により炭酸リチウムを生成するリチウム複合酸化物を負極に含有させると、保護皮膜を負極表面に十分に形成することが可能になるため、充放電サイクル特性を大幅に改善することができる。但し、電池理論容量1mAh当りのリチウム複合酸化物存在量が4mgを超えると、負極において、リチウムを吸蔵・放出する物質の含有量が低下すると共に、保護皮膜が厚くなってリチウムの吸蔵・放出反応が阻害されるため、優れた充放電サイクル特性を得ることが困難になる恐れがある。
【0113】
本発明に係る非水電解質二次電池において、密閉容器と電極群との間に存在する空間内に、リチウム複合酸化物を含有する炭酸ガス吸収層を存在させることによって、密閉容器内における炭酸ガス吸収層の位置を固定することができるため、密閉容器内におけるリチウム複合酸化物の分布を常に均一な状態に維持しておくことができる。その結果、特に高温貯蔵時に炭酸ガスを安定して吸収することができるようになるため、高温貯蔵時の安全性を大幅に改善することができる。また、電極群の外側に炭酸ガス吸収層が配置されているため、炭酸ガス吸収材が充放電反応を阻害するのを回避することができ、放電容量及び充放電サイクル寿命を向上することができる。
【0114】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0115】
(実施例1)
<正極の作製>
まず、リチウムコバルト酸化物(LixCoO2;ただし、Xは0≦X≦1である)粉末91重量%をアセチレンブラック3重量%、グラファイト3重量%および結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)3重量%と溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加えて混合し,スラリーを調製した。前記スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した後、乾燥し、プレスすることにより電極密度が3g/cm3の正極合剤層が集電体の両面に担持された構造の正極を作製した。
【0116】
<負極の作製>
炭素質材料として3000℃で熱処理したメソフェーズピッチ系炭素繊維(繊維径が8μm、平均繊維長が20μm、平均面間隔(d002)が0.3360nm)の粉末を93重量%と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)7重量%と、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)とを混合し、スラリーを調製した。前記スラリーを厚さが12μmの銅箔からなる集電体の両面に塗布し、乾燥し、プレスすることにより電極密度が1.4g/cm3の負極合剤層が集電体に担持された構造の負極を作製した。
【0117】
<セパレータ>
厚さが25μm、120℃、1時間での熱収縮が20%で、多孔度が50%のポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレータを用意した。
【0118】
<非水電解液の調整>
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)の混合溶媒(混合体積比率1:2)に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)をその濃度が1Mになるように溶解させて、非水電解液を調製した。
【0119】
<電極群の作製>
前記正極の集電体に帯状の正極リードを溶接し、前記負極の集電体に帯状の負極リードを溶接した後、前記正極および前記負極をその間に前記セパレータを介して捲回し、電極群を作製した。
【0120】
<電池の組立て>
リチウムオルソシリケート(Li4SiO4)97重量%と結合剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)3重量%を溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させ、懸濁液を調製した。有底角筒形をなし、板厚が0.25mmのアルミニウム系金属製外装缶の内側面に前記懸濁液を電池理論容量1mAh当りのリチウム複合酸化物存在量が0.36mg/mAhになるように塗布し、乾燥させることにより炭酸ガス吸収層を形成した。このような外装缶内に前記電極群及び前記電解液をそれぞれ収納して、図1〜図3に示す構造を有し、厚さが4.8mmで、幅が30mmで、高さが40mmの外形寸法を持つ理論容量(設計容量)が550mAhの角型リチウムイオン二次電池を組み立てた。
【0121】
すなわち、例えば角型リチウムイオン二次電池の斜視図を図1に示したように、角型の密閉容器1は、例えばアルミニウム合金からなる有底矩形筒状をなす外装缶2の開口部にアルミニウム系金属からなる蓋体3を例えばレーザ溶接により気密に接合した構造を有する。前記外装缶2は、例えば正極端子を兼ね、底部内面に絶縁フィルム4(例えば、ポリイミド樹脂から形成されている)が配置されている。電極群5は、前記密閉容器1の外装缶2内に収納されている。前記電極群5は、例えば負極6とセパレータ7と正極8とを前記正極8が最外周に位置するように渦巻状に捲回した後、扁平状にプレス成形することにより作製される。中心付近にリード取出穴を有する例えば合成樹脂からなるスペーサ9(絶縁板;例えば、ポリプロピレン樹脂から形成されている)は、前記外装缶2内の前記電極群5上に配置されている。
【0122】
前記蓋体3の中心付近には、負極端子の取出し穴10が開口されている。注入孔11は、前記取出し穴10から離れた前記蓋体3の箇所に開口されている。電解液は、前記注入孔11を通して前記外装缶2内に注入されている。負極端子12は、前記蓋体3の穴10にガラス製または樹脂製の絶縁材13を介してハーメティクシールされている。前記負極端子12の下端面には、リード14が接続され、かつこのリード14の他端は前記電極群5の負極6に接続されている。例えば金属円板からなる封止部材15は、前記蓋体3の前記注入孔11を通して電解液を注入した後において前記注入孔11周囲の前記蓋体3に対して超音波溶接により接合され、前記注入孔11を気密封止している。
【0123】
上部側絶縁紙17は、前記蓋体3の外表面全体に被覆されている。スリット18を有する下部側絶縁紙19は、前記外装缶2の底面に配置されている。二つ折りされたPTC(Positive Thermal Coefficient)素子20は、一方の面が前記外装缶2の底面と前記下部側絶縁紙19の間に介装され、かつ他方の面が前記スリット18を通して前記絶縁紙19の外側に延出されている。外装チューブ21は、前記外装缶2側面から上下面の絶縁紙17、19の周辺まで延出するように配置され、前記上部側絶縁紙17および下部側絶縁紙19を前記外装缶2に固定している。このような外装チューブ21の配置により、外部に延出された前記PTC素子20の他方の面が前記下部側絶縁紙19の底面に向けて折り曲げられる。正極リード22は、一端が正極8に接続され、かつ他端が蓋体3の下面に接続されている。
【0124】
図2に示すように、前記外装缶2の底面には、刻印によって、直線部の両端にV字部を持つ形状を持つ薄肉部からなる開放弁23が形成されている。この開放弁23は、密閉容器1内の内圧が上昇した際、このガス圧により破断し、密閉容器1内のガスを外部に放出して爆発を未然に防ぐ役割をなす。
【0125】
また、外装缶2の内側面には、図3に示すように、リチウム複合酸化物を含有する炭酸ガス吸収層24が形成されている。この炭酸ガス吸収層24は、前記電極群5の最外周(最外層)と対向している。
【0126】
(実施例2)
外装缶の内側面に炭酸ガス吸収層を形成する代わりに、非水電解液中に粒径が1〜10μmのリチウムオルソシリケート(Li4SiO4)の微粒子を200mg添加すること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な構成の角形リチウムイオン二次電池を組み立てた。
【0127】
参考例3)
外装缶の内側面に炭酸ガス吸収層を形成する代わりに、非水電解液中に粒径が1〜10μmのリチウムメタシリケート(Li2SiO3)の微粒子を200mg添加すること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な構成の角形リチウムイオン二次電池を組み立てた。
【0128】
(実施例4)
外装缶の内側面に炭酸ガス吸収層を形成する代わりに、スペーサ9の電極群5と対向する面及び絶縁フィルム4の電極群5と対向する面に、以下に説明する方法で炭酸ガス吸収層を形成すること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な構成の角形リチウムイオン二次電池を組み立てた。
【0129】
すなわち、リチウムオルソシリケート(Li4SiO4)97重量%と結合剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)3重量%をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させ、懸濁液を調製した。得られた懸濁液をスペーサ9の電極群5と対向する面及び絶縁フィルム4の電極群5と対向する面に塗布し、乾燥させることにより炭酸ガス吸収層を形成した。
【0130】
参考例5)
外装缶の内側面に炭酸ガス吸収層を形成する代わりに、スペーサ9の電極群5と対向する面及び絶縁フィルム4の電極群5と対向する面に、以下に説明する方法で炭酸ガス吸収層を形成すること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な構成の角形リチウムイオン二次電池を組み立てた。
【0131】
すなわち、リチウムメタシリケート(Li2SiO3)97重量%と結合剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)3重量%をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させ、懸濁液を調製した。得られた懸濁液をスペーサ9の電極群5と対向する面及び絶縁フィルム4の電極群5と対向する面に塗布し、乾燥させることにより炭酸ガス吸収層を形成した。
【0132】
(実施例6)
外装缶の内側面に炭酸ガス吸収層を形成する代わりに、図4及び図5に示すように、扁平型電極群5の最外周(最外層)を、90%のリチウムオルソシリケート(Li4SiO4)と10%のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含有する炭酸ガス吸収シート25で被覆すること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様にして、図4及び図5に示す構造を有し、厚さが4.8mmで、幅が30mmで、高さが40mmの外形寸法を持つ理論容量(設計容量)が550mAhの角型リチウムイオン二次電池を組み立てた。なお、図4及び図5において、前述した図1〜図2と同様な部材については図1〜図2と同符号を付して説明を省略する。
【0133】
参考例7)
外装缶の内側面に炭酸ガス吸収層を形成する代わりに、図4及び図5に示すように、扁平型電極群5の最外周(最外層)を、90%のリチウムメタシリケート(Li2SiO3)と10%のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含有する炭酸ガス吸収シート25で被覆すること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様にして、図4及び図5に示す構造を有し、厚さが4.8mmで、幅が30mmで、高さが40mmの外形寸法を持つ理論容量(設計容量)が550mAhの角型リチウムイオン二次電池を組み立てた。
【0134】
(実施例8)
外装缶の内側面に炭酸ガス吸収層を形成する代わりに、以下に説明する方法で作製された負極を用いること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な角形リチウムイオン二次電池を組み立てた。
【0135】
すなわち、炭素質材料として3000℃で熱処理したメソフェーズピッチ系炭素繊維(繊維径が8μm、平均繊維長が20μm、平均面間隔(d002)が0.3360nm)の粉末を93重量%と、リチウムオルソシリケート(Li4SiO4)粉末2重量%と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)5重量%とを混合し、スラリーを調製した。前記スラリーを厚さが12μmの銅箔からなる集電体の両面に塗布し、乾燥し、プレスすることにより電極密度が1.4g/cm3の負極合剤層が集電体に担持された構造の負極を作製した。
【0136】
参考例9)
外装缶の内側面に炭酸ガス吸収層を形成する代わりに、以下に説明する方法で作製された負極を用いること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な角形リチウムイオン二次電池を組み立てた。
【0137】
すなわち、炭素質材料として3000℃で熱処理したメソフェーズピッチ系炭素繊維(繊維径が8μm、平均繊維長が20μm、平均面間隔(d002)が0.3360nm)の粉末を93重量%と、リチウムメタシリケート(Li2SiO3)粉末2重量%と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)5重量%とを混合し、スラリーを調製した。前記スラリーを厚さが12μmの銅箔からなる集電体の両面に塗布し、乾燥し、プレスすることにより電極密度が1.4g/cm3の負極合剤層が集電体に担持された構造の負極を作製した。
【0138】
(実施例10)
外装缶の内側面に炭酸ガス吸収層を形成する代わりに、以下に説明する方法で外装缶2の底部内面(開放弁23を含む領域)に炭酸ガス吸収層を形成すること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な角形リチウムイオン二次電池を組み立てた。
【0139】
すなわち、前述した実施例1で説明したのと同様な外装缶2の底部内面に、リチウムオルソシリケート(Li4SiO4)97重量%とポリフッ化ビニリデン(PVdF)3重量%を含有する混合物をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させた懸濁液を塗布し、乾燥させることにより炭酸ガス吸収層を形成した。
【0140】
参考例11)
外装缶の内側面に炭酸ガス吸収層を形成する代わりに、以下に説明する方法で外装缶2の底部内面(開放弁23を含む領域)に炭酸ガス吸収層を形成すること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な角形リチウムイオン二次電池を組み立てた。
【0141】
すなわち、前述した実施例1で説明したのと同様な外装缶2の底部内面に、リチウムメタシリケート(Li2SiO3)97重量%とポリフッ化ビニリデン(PVdF)3重量%を含有する混合物をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させた懸濁液を塗布し、乾燥させることにより炭酸ガス吸収層を形成した。
【0142】
参考例12)
90%のリチウムジルコネート(Li2ZrO3)と10%のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含有する炭酸ガス吸収シート25を用い、かつ電池理論容量1mAh当りのリチウム複合酸化物添加量を下記表1に示す値に変更すること以外は、前述した実施例6で説明したのと同様な構成の角型リチウムイオン二次電池を組み立てた。
【0143】
参考例13)
90%のリチウムアルミネート(LiAlO2)と10%のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含有する炭酸ガス吸収シート25を用い、かつ電池理論容量1mAh当りのリチウム複合酸化物添加量を下記表1に示す値に変更すること以外は、前述した実施例6で説明したのと同様な構成の角型リチウムイオン二次電池を組み立てた。
【0144】
参考例14)
90%のリチウムフェライト(LiFeO2)と10%のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含有する炭酸ガス吸収シート25を用い、かつ電池理論容量1mAh当りのリチウム複合酸化物添加量を下記表1に示す値に変更すること以外は、前述した実施例6で説明したのと同様な構成の角型リチウムイオン二次電池を組み立てた。
【0145】
参考例15)
90%のリチウムチタネート(Li2TiO3)と10%のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含有する炭酸ガス吸収シート25を用い、かつ電池理論容量1mAh当りのリチウム複合酸化物添加量を下記表1に示す値に変更すること以外は、前述した実施例6で説明したのと同様な構成の角型リチウムイオン二次電池を組み立てた。
【0146】
(比較例1)
炭酸ガス吸収材を使用しないこと以外は、前述した実施例1で説明したのと同様にして角型リチウムイオン二次電池を組み立てた。
【0147】
(比較例2)
エチレンカーボネート(EC)とγ−ブチロラクトン(γ−BL)の混合溶媒(混合体積比率1:2)にホウフッ化リチウム(LiBF4)をその濃度が1.5Mになるように溶解させて調製された非水電解液を用い、かつ炭酸ガス吸収材を使用しないこと以外は、前述した実施例1で説明したのと同様にして角型リチウムイオン二次電池を組み立てた。
【0148】
得られた実施例1,2,4,6,8,10、参考例3,5,7,9,11〜15および比較例1〜2のリチウムイオン二次電池について、初期充電を施した。初期充電においては、110mA(0.2C相当)4.2Vの定電流・定電圧充電を10時間行い、初期充電後の電池の膨れ状態を調べ、その結果を下記表1に示す。続いて、放電は110mAの定電流放電を行い、カットオフ電圧は3.0Vで電池容量の確認を行った。これら二次電池に550mA(1.0C相当)で4.2Vまで定電流定電圧充電を3時間かけて施した後、550mA(1.0C相当)で3.0Vカットの定電流放電を行う充放電サイクル試験を500サイクルまで行い、500サイクル目の容量維持率(1サイクル目の放電容量を100%とする)を求め、その結果を下記表1に示す。なお、表1には、電池の理論容量1mAh当りのリチウム複合酸化物存在量を併記する。
【0149】
また、実施例1,2,4,6,8,10、参考例3,5,7,9,11〜15および比較例1〜2のリチウムイオン二次電池について、初期充電並びに電池容量の確認を行った後、これらの電池を550mA(1.0C相当)、4.2Vまで定電流・定電圧充電を3時間かけて施した後、4.2Vの充電状態で85℃、150時間貯蔵後の電池の膨れ状態を調べ、その結果を表1に示す。
【0150】
【表1】
Figure 0004226792
【0151】
表1から明らかなように、EC及びMECを含む非水電解質を備え、炭酸ガス吸収材としてリチウム複合酸化物を含む実施例1〜2,4,6,8,10の二次電池は、初期充電時及び高温貯蔵時の容器の膨れが小さく、かつ500サイクル時の容量維持率が比較例1〜2に比べて高いことがわかる。
【0152】
これに対し、EC及びMECを含む非水電解質を備え、炭酸ガス吸収材を使用しない比較例1の二次電池は、初期充電後の膨れが1mmで、高温貯蔵後の膨れが5mmと大きくなることがわかる。一方、EC及びγ−BLを含む非水電解質を備え、炭酸ガス吸収材を使用しない比較例2の二次電池は、初期充電時及び高温貯蔵時の容器の膨れを小さくできるものの、500サイクル時の容量維持率が60%と低くなることがわかる。
【0153】
特に、リチウム複合酸化物としてリチウムオルソシリケート(Li4SiO4)を用いる場合、Li4SiO4を非水電解質に添加した実施例2の二次電池は、初期充電後の膨れを実施例1,4,6,8,10の二次電池に比べて小さくできることがわかる。また、実施例8のように負極にLi4SiO4を添加すると、初期充電後の膨れが0.4mmと実施例2に比べて大きくなるものの、500サイクル時の容量維持率は実施例2に比べて高くなることがわかる。
【0154】
一方、リチウム複合酸化物としてリチウムオルソシリケート(Li4SiO4)を用いる場合、密閉容器と電極群の空間内に、Li4SiO4を含有する炭酸ガス吸収層を存在させる実施例1,4,6,10の二次電池は、高温貯蔵時の膨れが実施例2,8に比べて小さくなることがわかる。
【0155】
(実施例16〜20)
電池の理論容量1mAh当りの負極のリチウム複合酸化物含有量を下記表2に示すように変更すること以外は、前述した実施例2で説明したのと同様な角型リチウムイオン二次電池を組み立てた。
【0156】
実施例16〜20の二次電池について、前述したのと同様にして初期充電後の膨れ、500サイクル時の容量維持率及び高温貯蔵後の膨れを測定し、その結果を下記表2に示す。なお、表2には、前述した実施例8の結果を併記する。
【0157】
【表2】
Figure 0004226792
【0158】
表2から明らかなように、リチウム複合酸化物の存在量が多くなるほど、初期充電後及び高温貯蔵後の膨れが小さくなり、また、リチウム複合酸化物の存在量が少ない方が500サイクル時の容量維持率に優れることがわかる。特に、実施例8,17,18の二次電池は、初期充電後及び高温貯蔵後の膨れを抑えつつ、500サイクル時の容量維持率を高くできることがわかる。
【0159】
(実施例21)
<正極の作製>
まず、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2;但し、Xは0≦X≦1である)粉末90.5重量%、アセチレンブラック2.5重量%、グラファイト3重量%、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)4重量%およびN−メチルピロリドン(NMP)溶液を混合することによりスラリーを調製した。前記スラリーを厚さ10μmのアルミニウム箔からなる正極集電体に塗布し、乾燥後、プレスすることにより電極密度が3.0g/cm3の正極を作製した。得られた正極は、正極集電体の両面に厚さが48μmの正極合剤層が担持された構造を有していた。なお、正極合剤層の合計厚さは96μmである。
【0160】
<負極の作製>
炭素質物として3000℃で熱処理したメソフェーズピッチ系炭素繊維を用意した。前記炭素繊維は、平均繊維径が8μmで、平均繊維長が20μmで、面間隔(d002)が0.336nmであった。前記炭素質物の粉末93重量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)7重量%及びNMP溶液を混合することによりスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さが10μmの銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、乾燥し、プレスすることにより電極密度が1.35g/cm3の負極を作製した。得られた負極は、負極集電体の両面に厚さが45μmの負極合剤層が担持された構造を有していた。なお、負極合剤層の合計厚さは90μmである。
【0161】
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)の混合溶媒(混合体積比率1:2)に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)をその濃度が1Mになるように溶解させて、非水電解液を調製した。
【0162】
<電極群の作製>
厚さが27μm、多孔度が50%、空気透過率が90秒/100cm3のポリエチレン製セパレータを用意した。前記正極と前記負極をその間にセパレータを介在して渦巻き状に捲回した後、これを径方向に加圧することにより偏平形状に成形し、厚さが2.7mmで、幅が30mm、高さが50mmの電極群を作製した。
【0163】
<電池組み立て>
リチウムオルソシリケート(Li4SiO4)97重量%と結合剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)3重量%をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させ、懸濁液を調製した。アルミニウム箔の両面がポリプロピレンで被覆された多層構造を持つ厚さ0.1mmのラミネートフィルムの片面にヒートシール部を除いて前記懸濁液を電池理論容量1mAh当りのリチウム複合酸化物存在量が0.36mg/mAhになるように塗布し、乾燥させることにより炭酸ガス吸収層を形成した。炭酸ガス吸収層面が内側になるようにラミネートフィルムをヒートシールで袋状に加工した。これに前記電極群を収納し、得られたものを電池厚さが2.75mmになるようにホルダで挟んだ。ホルダに挿入直後、電極群にかかる圧力は0.5kg/cm2であった。接着性を有する高分子であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)を有機溶媒であるジメチルフォルムアミド(DMF)(沸点が153℃)に0.3重量%溶解させた。得られた溶液を前記ラミネートフィルム内の電極群に電池容量0.6mLとなるように注入し、前記溶液を前記電極群の内部に浸透させると共に、前記電極群の表面全体に付着させた。
【0164】
次いで、前記ラミネートフィルム内の電極群に80℃で真空乾燥を12時間施すことにより前記有機溶媒を蒸発させ、正極、負極及びセパレータの空隙に接着性を有する高分子を保持させて正極、負極及びセパレータが一体化させると共に、前記電極群の表面に多孔質な接着部を形成した。
【0165】
次いで、ホルダを解除した。電極群をホルダにより挟んでいたトータル時間は、120分であった。前記ラミネートフィルム内の電極群に前記非水電解液を2g注入し、図6〜図8に示す構造を有し、厚さが2.75mmで、幅が32mmで、高さが55mmの薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0166】
図6〜図8に示すように、ラミネートフィルム製の密閉容器31内には、電極群32が収納されている。電極群32は、正極、セパレータ及び負極からなる積層物が偏平形状に捲回された構造を有する。密閉容器31の内面には、容器31の長辺側の両端部とリードが延出されている端部に形成されているヒートシール部34を除き、炭酸ガス吸収層33が形成されている。炭酸ガス吸収層33は、電極群32の最外周(最外層)と対向している。電極群32の前記積層物は、図7の下側から、セパレータ35、正極合剤層36と正極集電体37と正極合剤層36を備えた正極38、セパレータ35、負極合剤層39と負極集電体40と負極合剤層39を備えた負極41、セパレータ35、正極合剤層36と正極集電体37と正極合剤層36を備えた正極38、セパレータ35、負極合剤層39と負極集電体40を備えた負極41がこの順番に積層された構造を有する。前記電極群32の最外周は、負極集電体40が位置している。帯状の正極リード42は、一端が電極群32の正極集電体37に接続され、かつ他端が密閉容器31から延出されている。一方、帯状の負極リード43は、一端が電極群32の負極集電体40に接続され、かつ他端が密閉容器31から延出されている。なお、炭酸ガス吸収層33を構成するリチウム複合酸化物が電子伝導性を有する場合、内部短絡を回避する観点から、電極群32の最外層(最外周)はセパレータ35であることが好ましい。
【0167】
(実施例22)
前述した実施例21で説明したのと同様な正極、セパレータ、負極、セパレータの順序に積層した後、渦巻き状に捲回した。これを90℃で加熱プレスすることにより、厚さが2.7mmで、幅が30mm、高さが50mmの電極群を作製した。
【0168】
前述した実施例21で説明したのと同様な非水電解液中に粒径が1〜10μmのリチウムシリケート(Li4SiO4)の微粒子を200mg添加した。
【0169】
アルミニウム箔の両面がポリプロピレンで被覆された多層構造を持つ厚さ0.1mmのラミネートフィルムをヒートシールで袋状に加工した。これに前記電極群を収納し、80℃で24時間真空乾燥を施した。
【0170】
前記電極群が収納されたラミネートフィルムパック内に前記非水電解液を注入した後、前記ラミネートフィルムパックをヒートシールにより完全密閉し、厚さが2.75mmで、幅が32mmで、高さが55mmの薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0171】
(実施例23)
実施例21で説明したのと同様な炭素質物の粉末93重量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)5重量%、リチウムオルソシリケート(Li4SiO4)粉末2重量%及びNMP溶液を混合することによりスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さが10μmの銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、乾燥し、プレスすることにより電極密度が1.35g/cm3の負極を作製した。得られた負極は、負極集電体の両面に厚さが45μmの負極合剤層が担持された構造を有していた。なお、負極合剤層の合計厚さは90μmである。
【0172】
得られた負極と、前述した実施例21で説明したのと同様な正極並びにセパレータを用意し、正極、セパレータ、負極、セパレータの順序に積層した後、渦巻き状に捲回した。これを90℃で加熱プレスすることにより、厚さが2.7mmで、幅が30mm、高さが50mmの電極群を作製した。
【0173】
アルミニウム箔の両面がポリプロピレンで被覆された多層構造を持つ厚さ0.1mmのラミネートフィルムをヒートシールで袋状に加工した。これに前記電極群を収納し、80℃で24時間真空乾燥を施した。
【0174】
前記電極群が収納されたラミネートフィルムパック内に前述した実施例21で説明したのと同様な非水電解液を注入した後、前記ラミネートフィルムパックをヒートシールにより完全密閉し、厚さが2.75mmで、幅が32mmで、高さが55mmの薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0175】
(比較例3)
炭酸ガス吸収層を形成しないこと以外は、前述した実施例21で説明したのと同様な薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0176】
得られた実施例21〜23および比較例3のリチウムイオン二次電池について、初期充電を施した。初期充電においては、100mA(0.2C相当)4.2Vの定電流・定電圧充電を10時間行い、初期充電後の電池の膨れ状態を調べ、その結果を下記表3に示す。続いて、放電は100mAの定電流放電を行い、カットオフ電圧は3.0Vで電池容量の確認を行った。これら二次電池に500mA(1.0C相当)で4.2Vまで定電流定電圧充電を3時間かけて施した後、500mA(1.0C相当)で3.0Vカットの定電流放電を行なう充放電サイクル試験を500サイクルまで行い、500サイクル目の容量維持率(1サイクル目の放電容量を100%とする)を求め、その結果を下記表3に示す。なお、表3には、電池の理論容量1mAh当りのリチウム複合酸化物存在量を併記する。
【0177】
また、実施例21〜23および比較例3のリチウムイオン二次電池について、初期充電並びに電池容量の確認を行った後、これらの電池を500mA(1.0C相当)、4.2Vまで定電流・定電圧充電を3時間かけて施した後、4.2Vの充電状態で85℃、150時間貯蔵後の電池の膨れ状態を調べ、その結果を表3に示す。
【0178】
【表3】
Figure 0004226792
【0179】
表3から明らかなように、実施例21〜23の薄型二次電池は、高温貯蔵試験後の炭酸ガス残存量が1mL以下で、比較例3の二次電池に比べて、初期充電時及び高温貯蔵時の容器の膨れが小さく、かつ500サイクル時の容量維持率が高いことがわかる。
【0180】
なお、前述した実施例では、外装缶2の底面に開放弁23を形成したが、開放弁23は、例えば、外装缶2の側面、蓋体3等に形成することができる。
【0181】
また、前述した実施例では、正極と負極と前記正極と前記負極の間に配置されるセパレータとを含む積層物が扁平形状に捲回された構造の電極群を使用する例を説明したが、電極群の形状は特に限定されず、例えば、前記積層物を渦巻き状に捲回した渦巻型電極群、図9に示すように、負極6と正極8をその間にセパレータ7を介在させながら5回折り曲げることにより得られた扁平型電極群、図10に示すように、負極6と正極8をその間にセパレータ7を介在させながら交互に積層した積層型電極群などを使用することができる。
【0182】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明に係る非水電解質二次電池によれば、非水電解質の分解反応で生成する炭酸ガスによる内圧上昇を抑制することができ、安全性と充放電サイクル寿命を向上することができる等の顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の角形リチウムイオン二次電池を示す部分切欠斜視図。
【図2】図1の角形リチウムイオン二次電池の外装缶を示す斜視図。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図。
【図4】実施例6の角形リチウムイオン二次電池を示す部分切欠斜視図。
【図5】図4の角形リチウムイオン二次電池の電極群を示す斜視図。
【図6】実施例21の薄型リチウムイオン二次電池を示す平面図。
【図7】図6の薄型リチウムイオン二次電池を示す断面図。
【図8】図7のA部を示す拡大断面図。
【図9】本発明に係る非水電解質二次電池の電極群の別な例を示す側面図。
【図10】本発明に係る非水電解質二次電池の電極群のさらに別な例を示す側面図。
【符号の説明】
1…密閉容器、
2…外装缶、
3…蓋体、
4…絶縁フィルム、
5…電極群、
6…負極、
7…セパレータ、
8…正極、
9…スペーサ、
23…開放弁、
24…炭酸ガス吸収層、
25…炭酸ガス吸収シート、
31…密閉容器、
32…電極群、
33…炭酸ガス吸収層、
35…セパレータ、
38…正極、
41…負極。

Claims (4)

  1. 密閉容器と、前記密閉容器内に収納され、リチウムを吸蔵・放出する正極と、前記密閉容器内に収納され、リチウムを吸蔵・放出する負極と、前記密閉容器内に収納され、非水溶媒と電解質からなる非水電解質とを具備する非水電解質二次電池において、
    前記密閉容器内に、炭酸ガスを吸収するリチウム複合酸化物Li 4 SiO 4 が存在し、前記Li 4 SiO 4 は電池理論容量1mAh当り4mg以下の量で存在していることを特徴とする非水電解質二次電池。
  2. 密閉容器と、前記密閉容器内に収納され、リチウムを吸蔵・放出する正極と、前記密閉容器内に収納され、リチウムを吸蔵・放出する負極と、前記密閉容器内に収納され、非水溶媒と電解質からなる非水電解質とを具備する非水電解質二次電池において、
    前記非水電解質中に、炭酸ガスを吸収するリチウム複合酸化物Li 4 SiO 4 が含有されていることを特徴とする非水電解質二次電池。
  3. 密閉容器と、前記密閉容器内に収納され、リチウムを吸蔵・放出する正極と、前記密閉容器内に収納され、リチウムを吸蔵・放出する負極と、前記密閉容器内に収納され、非水溶媒と電解質からなる非水電解質とを具備する非水電解質二次電池において、
    前記負極中に、炭酸ガスを吸収するリチウム複合酸化物Li 4 SiO 4 が含有されていることを特徴とする非水電解質二次電池。
  4. 密閉容器と、前記密閉容器内に収納され、リチウムを吸蔵・放出する正極及び負極を含む電極群と、前記密閉容器内に収納され、非水溶媒と電解質からなる非水電解質とを具備する非水電解質二次電池において、
    前記密閉容器と前記電極群との間に存在する空間内に、リチウム複合酸化物Li 4 SiO 4 を含有する炭酸ガス吸収層を存在させることを特徴とする非水電解質二次電池。
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