JP4225400B2 - アクティブマトリックス発光デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は機械的導電スイッチを有するアクティブマトリックス発光デバイスに関し、特に少ないパターニング工程で作製でき、大画面化が可能なアクティブマトリックス発光デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
TFTを用いたアクティブマトリックス駆動方式による発光ディスプレイはメモリー性があり、パッシブマトリックス駆動方式よりも必要輝度が低く、ちらつきのないきれいな画像を提供できるという利点を有する。図22はTFTを用いたアクティブマトリックス駆動方式による有機ELディスプレイの等価回路を示す。有機EL素子110を含む1画素分の駆動回路は、(1) データ信号ライン101からの表示信号DATAが印加されるドレインと、走査信号ライン102からの走査信号SCANが印加されるゲートとを有し、走査信号SCANによりオンオフするスイッチング用TFT 111と、(2) TFT 111のソースとグランドGNDとの間に接続され、TFT 111のオン時に供給される表示信号(データ信号ライン101の信号)により充電され、TFT 111のオフ時には充電電圧Vgを保持するコンデンサ112と、(3) ドレインが駆動電源電圧Vdを供給する電源ライン117に接続され、ソースが有機EL素子110の陽極に接続されるとともに、ゲートにコンデンサ112からの保持電圧Vgが供給されることにより、有機EL素子110を電流駆動する駆動用TFT 114とを有する。有機EL素子110の陰極はグランドGNDに接続されており、駆動電源電圧Vdは例えば10Vのような正電位である。
【0003】
しかし特に電流注入型発光素子の場合、TFTのゲート電圧と電流特性が揃った駆動用ドランジスタを基板面全体にわたって形成するのは非常に難しい。そのため、特開2000-259098号は、図23に示すように、陽極と陰極の間に発光層を有するEL素子110と、EL素子110と電源電位間に接続されEL素子110を電流Idで駆動する駆動用薄膜トランジスタ(TFT)104と、表示信号ライン101に接続され、走査信号ラインSCAN102の選択信号に応じてオンオフするスイッチング用TFT 111と、スイッチング用TFT 111を介して入力された表示信号電圧を保持し、保持電圧Vgを駆動用TFT 104のゲートに供給するコンデンサ112とを備え、駆動用TFT 104はトランジスタサイズ及びしきい値電圧が異なる複数のTFT 140,141を直列接続してなるアクティブ型EL表示装置を提案している。しかし複数のTFTを具備する構成では、TFTを製造する工程が煩雑になるだけでなく、TFTが発光した光を一部吸収してしまい、光の取り出し効率が低下するという問題がある。
【0004】
TFT方式とは異なり、特開2000-35591号に開示のアクティブマトリックス素子は、静電力によって作動する機械的導電スイッチを用いるアクティブマトリックス駆動法を用いている。このアクティブマトリックス素子は、図24(a) に示すように、マトリックス状に形成された走査信号ライン225及びデータ信号ライン216と、それらの交差部に設けられたマトリックス駆動手段と、各マトリックス駆動手段によって駆動される光機能素子とを有し、各マトリックス駆動手段は静電気力によって作動する機械的導電スイッチ233からなる。機械的導電スイッチ233は、静電気応力によって変形する可撓性絶縁薄膜223と、可撓性絶縁薄膜223上の導電膜229と、データ信号ライン216と、光機能素子のコンデンサ電極227aとを備えている。
【0005】
このアクティブマトリックス素子235では、図24(a) に示すように、第1走査信号ライン213に対して、走査信号ライン(第2走査信号ライン)225が同電位であると、可撓性絶縁薄膜223は静電気力を受けず撓まない。従って、絶縁層215上に形成されたデータ信号ライン216とコンデンサ電極227aとは電気的に接続することなく非導通状態を保つ。一方図23(b) に示すように、第1走査信号ライン213に対して、走査信号ライン225に電圧Vgを印加すると、可撓性絶縁薄膜223が静電気力によって基板211側に撓み、可撓性絶縁薄膜223の下方に位置するデータ信号ライン216及びコンデンサ電極227aに導電膜229が電気的に接続する。これによりデータ信号ライン216とコンデンサ電極227aとの電位が等しくなる。また走査信号ライン225の電圧をゼロにすると、可撓性絶縁薄膜223は弾性力により元の位置に復帰し、データ信号ライン216及びコンデンサ電極227aから離れる。これにより図24(a) に示す状態となって、データ信号ライン216とコンデンサ電極227とは再び非導通状態となる。
【0006】
特開2000-35591号のアクティブマトリックス素子は、走査信号ラインとデータ信号ラインをマトリックス状に形成した交差部に機械的導電スイッチを設けた構造を有するので、半導体の成膜や不純物ドーピング工程が不要となる。また光の取り出し側に発光する光を吸収するTFTが一切ないため発光効率が高くなる。
【0007】
しかし、特開2000-35591号の技術では走査信号ラインが2本必要であるので、データ信号ラインを含めてパターニングされた電極が合計3本必要であり、製造工程が煩雑であるという問題がある。その上、精細な2つの走査信号ラインを平行に形成する必要があるため、製造歩留まりが悪く、コスト高になるという問題もある。
【0008】
従って本発明の目的は、少ないパターニング工程で作製することができ、さらに大画面化が可能な機械的導電スイッチ式アクティブマトリックス発光素子を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明のアクティブマトリックス発光デバイスは、(a) 透明基板と、(b) 前記透明基板の上に形成された透明電極と、前記透明電極上に2次元状に配列された複数個の発光層と、各発光層の背面に形成された背面電極とからなる発光素子と、(c) 前記発光素子の背面に設けられた可撓性絶縁薄膜と、(d) 前記可撓性絶縁薄膜の内面にストライプ状に形成され、前記発光素子の背面電極に間隙を置いて対向するデータ信号ライン列と、(e) 前記可撓性絶縁薄膜の外面に前記データ信号ライン列と直交するようにストライプ状に形成された走査信号ライン列とを有し、前記走査信号ライン列に流れる走査信号により前記走査信号ライン列と前記透明電極との間に静電気力が生じて前記可撓性絶縁薄膜は内側に撓み、もって前記データ信号ライン列と前記背面電極又はそれと導通する導電体とが接続して、前記発光素子が駆動されることを特徴とする。
【0010】
好ましい実施例では、前記透明電極に導通する第一の電極と、前記発光素子の背面電極に導通する第二の電極とからなるコンデンサ電極と、前記第一の電極と前記第二の電極との間に形成された誘電体層とからなるコンデンサが各発光素子の背面に設けられており、前記データ信号ライン列は前記コンデンサ電極に対向している。
【0011】
透明電極は2次元状に複数個の発光素子にわたって導通しているのが好ましく、特に基板の全面に連続的に形成されているのが好ましい。
【0012】
発光素子は有機発光素子であるのが好ましく、有機EL素子であるのがより好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
[1] アクティブマトリックス発光素子
本発明の好ましい一実施例によるアクティブマトリックス発光素子の構造を図1を参照して説明する。このアクティブマトリックス発光デバイスは、透明基板1と、透明基板1上に形成された発光素子3と、内側にデータ信号ライン23が形成され、外側に走査信号ライン28が形成された可撓性絶縁薄膜27とからなる。発光素子3は、透明基板1の上面全体に形成された透明電極2と、前記透明電極2上に形成された発光層31と、前記発光層31上に形成された背面電極32とからなる。またデータ信号ライン23及び走査信号ライン28は複数設けられていて、それぞれデータ信号ライン列及び走査信号ライン列を形成している。各データ信号ライン23と各走査信号ライン28とは各発光素子3上で交叉するように互いに直交している。透明電極2と、走査信号ライン列23と、データ信号ライン列23と、可撓性絶縁薄膜27とは機械的導電スイッチ40を構成する。
【0014】
透明基板1に形成された透明電極2はコモン電極として例えばグランド電位にするのが好ましいので、透明基板1の全面に形成されているのが好ましい。発光素子3は有機発光層31と背面電極32とからなる。
【0015】
機械的導電スイッチ40は、間隙をもって発光素子3を覆うように形成された可撓性絶縁薄膜27と、可撓性絶縁薄膜27の内面に設けられたデータ信号ライン23と外面に設けられた走査信号ライン28とからなる。データ信号ライン23と走査信号ライン28とは各発光素子3上で交叉するように直交しているのが好ましい。なお図示の例ではデータ信号ライン23は可撓性絶縁薄膜27に埋設された構造を有するが、これは作製上の便宜によるためであって、この構造に限定されない。
【0016】
本発明の好ましい別の実施例によるアクティブマトリックス発光素子の構造を図2〜4を参照して説明する。このアクティブマトリックス発光デバイスは、発光素子3を有する透明な第一の基板1と、コンデンサ6を有する第二の基板11と、データ信号ライン及び走査信号ラインを有する機械的導電スイッチ40とを具備する。
【0017】
第一の基板1には透明電極2が形成されているが、透明電極2はコモン電極として例えばグランド電位にするのが好ましいので、少なくとも各発光素子が導通するように第一の基板1上に形成されているのが好ましく、特に第一の基板1の全面に形成されているのが好ましい。発光素子3は有機発光層31と背面電極32とからなり、各発光素子3に隣接して突起状電極部5が透明電極2に導通して設けられているのが好ましい。突起状電極部5の高さは発光素子3の高さと同じである。
【0018】
発光素子3上に配置されているのは第二の基板11である。第二の基板11は各発光素子3に対して2つのコンタクトホール12a,12bを有し、コンタクトホール12aによりコンデンサ6の第一の電極16は発光素子3の背面電極に接続し、コンタクトホール12bによりコンデンサ6の第二の電極18は突起状電極部5に接続する。なお発光素子3は0.1μm程度と非常に薄いので、突起状電極部5を設けずに直接透明電極2に接続しても良い。
【0019】
コンデンサ6は基本的には誘電体層17を挟んで第一の電極16と第二の電極18とが対向する構造を有するが、大きな容量を有するために積層型にするのが好ましい。図示のように積層型コンデンサ6の場合、誘電体層17を介して第一の電極16と第二の電極18と交互に積層した構造を有する。コンデンサ6の面積及び積層数は、所望の容量値に応じて適宜設定することができる。
【0020】
機械的導電スイッチ40は、間隙をもってコンデンサ6を覆うように形成された可撓性絶縁薄膜27と、可撓性絶縁薄膜27の内面に設けられたデータ信号ライン23と外面に設けられた走査信号ライン28とからなる。データ信号ライン23と走査信号ライン28とは各発光素子3上で交叉するように直交しているのが好ましい。なお図示の例ではデータ信号ライン23は可撓性絶縁薄膜27に埋設された構造を有するが、これは作製上の便宜によるためであって、この構造に限定されない。
【0021】
図4は図2のアクティブマトリクス素子の等価回路を示す。機械的導電スイッチ40は走査信号ライン28の走査信号により駆動され、導通するとデータ信号ライン23のデータ信号に応じてコンデンサ6に電荷が蓄積される。走査信号が次の列に移って機械的導電スイッチ40が開放しても、充電されたコンデンサ6の放電により、発光素子3は駆動され、発光する。このように、各発光素子3からなる画素は走査信号がスキャンされても十分な時間発光を続けることができる。
【0022】
[2] アクティブマトリックス発光デバイスの作製
本発明のアクティブマトリックス発光デバイスとして、コンデンサを有するものを製造する方法を添付図面を参照して詳細に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
【0023】
(1) 発光素子用の第一の積層体の形成
図5に示すように、ガラス等からなる透明基板1上に透明電極2として例えば酸化インジウムスズ(ITO)の薄膜を形成する。下記の通り、基板1及び透明電極2の材質としては種々のものを使用することができる。その製膜法としては、スパッタリング法、電子線蒸着法、CVD法、ゾルゲル法等何れでも良い。透明電極2の製膜条件は、有機発光素子の発光特性上、抵抗が低くて透過率が高く、表面平滑性の良い薄膜を形成し得るように設定するのが好ましい。この観点から、スパッタリング法が特に好ましい。スパッタリング条件としては、スパッタ電圧、Ar+O2の圧力、酸素分圧、基板温度等であり、これらの製膜条件をスパッタ装置の種類に応じて適宜設定する。
【0024】
基板1の全面に透明電極2を形成した後、従来のアクティブマトリックス駆動式有機EL装置では大抵透明電極2のパターニングが必要であるが、本発明ではそのパターニングは必ずしも必要ではない。透明電極2のパターニングを行わないと製造工程数が減り、製造コストの低減及び生産効率の向上に非常に大きく寄与する。特にプラスチック基板のようにロールコーティング法により透明電極2を形成することのできる基板では、透明電極2のパターニング工程が時間的に律速になることがあるので、透明電極2のパターニングを不要にできる本発明は非常に有効である。
【0025】
(2) 有機発光層の形成
図6(c) に示すように、透明電極2上に有機発光素子3を形成する。有機発光素子3は透明電極2上に形成した有機発光層31及び背面電極32からなる。有機発光層31及び背面電極32の形成法は塗布法でも蒸着法でも良い。その方法としては例えば蒸着法の場合、図6(b) に例示するように所望のサイズの開口部4aを有するマスク4を用いて有機発光素子3を作製することが考えられる。マスク4としては、例えば化学エッチングやドライエッチングを用いて開口部4aを設けたステンレススチール(SUS)板等を用いることができる。基板1の透明電極2上にマスク4を配置し、蒸着法により有機発光層31を形成し、次いでその上に背面電極32を形成する。
【0026】
(3) 第二の基板へのコンタクトホールの形成
ガラス等からなる第二の基板11にコンタクトホール12を設ける。コンタクトホール12は、図7に示すように、有機発光素子3の透明電極2及び背面電極32に対応する位置に1つの有機発光素子3に対して2つ設ける。なお背面電極32と透明電極2とは段差があるため、図8に示すように、透明電極2上に有機発光素子3と同じ高さの突起状電極部5を設けても良い。しかし有機発光素子3の膜厚は0.1μm程度と非常に薄いため、通常電極を設けなくても良いことが多い。コンタクトホール12はコンデンサの両電極と有機発光素子3の両電極とを電気的に接続させるために設けるもので、他の方法で電気的接続をとっても構わない。もちろん有機発光素子3の上に直接コンデンサを形成しても良いが、その場合にはコンタクトホール12は必要でない。
【0027】
(4) コンデンサ形成
(a) 第一のコンデンサ電極の形成
図9に示すように、各コンタクトホール12の周りに第一のコンデンサ電極16を設ける。図示の例では透明電極2と電気的接続をとるコンタクトホール12側に第一のコンデンサ電極16を設けているが、有機発光素子3の背面電極32側に設けても良い。
【0028】
(b) コンデンサ誘電体層の形成
図10に示すように、所定の形状及びサイズの開口部を有するマスク(図示せず)を用いて、第一のコンデンサ電極16の上にコンデンサ用誘電体層17を積層する。誘電材はできるだけ高誘電率であるのが望ましく、例えばSiO2、BaxSr1-xTiO2、SrTiO3、酸化タンタル等を使用することができる。
【0029】
(c) コンデンサの積層
図11に示すように、誘電体層17上に第二のコンデンサ電極18を他方のコンタクトホール12に接するように形成し、第一のコンデンサ電極16と、誘電体層17と第二のコンデンサ電極18とによりコンデンサ6を形成する。この単層のコンデンサ6が所望の容量を有していれば良いが、容量が不足する場合にはさらにこの上にコンデンサを積層する。積層工程は、図12に示すように、第二のコンデンサ電極18の上に、下方の誘電体層17と接続するように第二の誘電体層17'を形成し、次いで第一のコンデンサ電極16と接続するように新たなコンデンサ電極19を形成する。このようにして2層に積層されたコンデンサ6が得られる。さらに同様にして誘電体層とコンデンサ電極とを順次形成すると、所望の容量を有する3層以上の積層コンデンサが得られる。また積層構造にすることにより薄膜コンデンサの特性が生成条件によりばらつくのを低減することができる。なお最上部の電極19は駆動の観点から背面電極32に接続するのが好ましいので、偶数層のコンデンサ電極を形成する場合は、最初に形成するコンデンサ電極を有機発光素子3の背面電極32と導通するコンタクトホール12側に形成すればよく、また奇数層のコンデンサ電極を形成する場合は、図示の例のように透明電極2と導通するコンタクトホール12側に形成すれば良い。
【0030】
(5) 絶縁膜の形成
コンデンサ6上に機械的導電スイッチ40を形成するために、まずコンデンサ6を形成した第二の基板11上に絶縁膜8を形成する。図13に示すように、絶縁膜8は最上部のコンデンサ電極19(透明電極2と導通する)及びコンタクトホール12の周囲だけを残し、全面に形成する。なお図中では、コンデンサ6の構成を省略してある。
【0031】
(6) 機械的導電スイッチの形成
まず図14に示すように、コンデンサ電極19上の絶縁膜8の形成していない部分6aに、電極部9を形成する。続いてフォトレジストを全面に塗布した後、図15に示すように、電極部9上だけにフォトレジストが残るように露光・現像する。その後ハードベーク(例えば200℃で1時間)により、図16に示すように、フォトレジスト21のパターンエッジに大きなテーパ21aを設ける。このフォトレジスト層21は最終的に除去されるもので、犠牲層と呼ぶことができる。
【0032】
次に図17に示すように、各電極部9が一列に連なる位置にデータ信号ライン23を形成する。さらに図18に示すように、犠牲層21とデータ信号ライン23の上からフォトレジスト25を全面に塗布し、データ信号ライン23と直交するようにコンデンサ電極列上を延在するストライプ26の形状にフォトレジスト25が除去されるように、フォトレジスト25の露光及び現像を行う。
【0033】
その上から図19(a)に示すように窒化珪素等の絶縁材からなる可撓性絶縁薄膜27及び電極材(ITO等)からなる走査信号ライン28を順次スパッタリング法により製膜する。このとき絶縁を確保するために、可撓性絶縁薄膜27の幅を走査信号ライン28の幅よりも僅かに大きくするのが好ましい。このようにして、コンデンサ電極9の上に犠牲層としてのフォトレジスト層21を介して、データ信号ライン23、絶縁膜27及び走査信号ライン28が順次積層された積層体を得る。最後にエッチングによりフォトレジスト25及び犠牲層21を除去すると、機械的導電スイッチ40が得られる。
【0034】
(7) アクティブマトリックス発光素子の形成
有機発光素子3を形成した第一の基板1と、機械的導電スイッチ40を形成した第二の基板11とを接合し、コンタクトホール12,12を通じて第一のコンデンサ電極16を有機発光素子3の背面電極32に電気的に接続するとともに、第二のコンデンサ電極18を透明電極2に電気的に接続する。図20は、このようにして得られたアクティブマトリックス素子の断面を拡大して示す。なお第一及び第二のコンデンサ電極16,18と透明電極2及び背面電極32との接続は上記と逆にしても良い。
【0035】
[3] アクティブマトリックス発光素子のさらに別の例
図21(a) 及び(b) は本発明のアクティブマトリックス発光素子のさらに別の例を示す。このアクティブマトリックス発光素子は、透明基板1と、透明基板1の全面に形成された透明電極2と、透明電極2上に形成された発光素子3と、発光素子3の背面電極32上に直接形成されたコンデンサ6(背面電極32と、背面電極32上に形成された誘電体層17と、誘電体層17上に形成されたコンデンサ電極19からなる)と、コンデンサ電極19と対向する位置で可撓性絶縁薄膜27の内面にストライプ状に形成されたデータ信号ライン23と、データ信号ライン23と直交するとともにコンデンサ電極19の列の上を通るようにストライプ状に可撓性絶縁薄膜27上に形成された走査信号ライン列28とを有する。この例では、コンデンサ電極19とデータ信号ライン23との間に一定の間隔を保つために、各発光素子3の間の位置で基板1と可撓性絶縁薄膜27とに固定された複数の支持部29が設けられている。支持部29はSiO2のような絶縁体により形成することができる。この例では、第二の基板11を用いることなく、コンデンサ6を発光素子3の背面電極32上に直接形成している。
【0036】
[4] アクティブマトリックス発光素子のスイッチング動作
図1に示すアクティブマトリックス発光素子を例にとって、スイッチング動作を説明する。限定的ではないが、基板1の透明電極2(発光素子の陽極)がグランドされている(0Vである)とする。
【0037】
各走査信号ライン28には各データ信号ライン23に送られるバイアスに比べて十分負のバイアスの走査信号が流れるようになっている。そのため走査信号ライン28に走査信号が流れるとき、走査信号ライン28と透明電極2との間で静電引力が生じ、データ信号ライン23と背面電極32とが接続する。データ信号ライン23と背面電極32との接続により、機械的導電スイッチ40がON状態になり、発光素子3は駆動される。走査信号が次の走査信号ライン28に移ると、可撓性絶縁薄膜27は弾性力により元の位置に復帰し、データ信号ライン23は背面電極32から離れ、データ信号ライン23と背面電極32とは再び非導通状態となる。
【0038】
特記しておくべきことは、走査信号ライン28にかける電位は、任意に設定でき(もちろん駆動ドライバの制限はあるものの)、データ信号ライン23の電位が機械的導電スイッチ40の静電引力を妨げないような十分負のバイアスをかけることは可能であるため、データ信号ライン23のバイアスがスイッチングを妨げることはない。
【0039】
図2に示すアクティブマトリックス発光素子の場合も、例えば第一の基板1の透明電極2(発光素子3の陽極)がグランドされている(0Vである)とすると、透明電極2に導通している第二のコンデンサ電極18は0Vである。
【0040】
走査信号ライン28にはデータ信号ライン23に送られるバイアスに比べて十分負のバイアスが印加されている。すると走査信号ライン28と第二のコンデンサ電極18(従って透明電極2)との間で静電引力が生じ、データ信号ライン23と最上部のコンデンサ電極19とが接続する。データ信号ライン23とコンデンサ電極19との接続中にコンデンサ6に十分電荷が蓄積されるように、データ信号ライン23に所定の負のバイアスをかけてある。そのため、走査信号により機械的導電スイッチ40がONされている間に、コンデンサ6に電荷が蓄積される。
【0041】
走査信号が次の走査信号ライン28に移ると、可撓性絶縁薄膜27は弾性力により元の位置に復帰し、データ信号ライン23はコンデンサ電極19から離れ、データ信号ライン23とコンデンサ電極19とは再び非導通状態となる。しかしコンデンサ6に電荷が蓄積されているので、各発光素子からなる画素は点灯し続ける。この放電時間が通常のディスプレイに用いられる60Hzに相当する時間(1/60秒間)続けば、十分メモリー性があることを意味する。
【0042】
図20のアクティブマトリックス発光素子の動作も同様である。このアクティブマトリックス発光素子3では、透明電極2に対して走査信号ライン28が同電位であると、図20(a) に示すように、可撓性絶縁薄膜27は静電気力を受けないので、撓まない。従って、データ信号ライン23とコンデンサ電極19とは、電気的に接続することなく非導通状態を保つ。
【0043】
一方、図20(c) に示すように、透明電極2に対して、走査信号ライン28に電圧Vgを印加すると、可撓性絶縁薄膜27が静電気力によって基板1側に撓み、可撓性絶縁薄膜27の下面に形成されたデータ信号ライン23はコンデンサ電極19に電気的に接続する。これにより、データ信号ライン23とコンデンサ電極19との電位が等しくなり、発光素子3を駆動するための電荷がコンデンサ6に蓄積される。
【0044】
[5] 発光素子の構成
本発明のアクティブマトリックス発光デバイスに用いる有機発光素子の全体構成は、基板上に透明電極/発光性有機薄膜層/背面電極、透明電極/発光性有機薄膜層/電子輸送性有機薄膜層/背面電極、透明電極/ホール輸送性有機薄膜層/発光性有機薄膜層/電子輸送性有機薄膜層/背面電極、透明電極/ホール輸送性有機薄膜層/発光性有機薄膜層/背面電極、透明電極/発光性有機薄膜層/電子輸送性有機薄膜層/電子注入層/背面電極、透明電極/ホール注入層/ホール輸送性有機薄膜層/発光性有機薄膜層/電子輸送性有機薄膜層/電子注入層/背面電極等をこの順に積層した構成であるが、これらを逆に積層した構成でもよい。発光性有機薄膜層は蛍光発光性化合物及び/又は燐光発光性化合物を含有し、通常透明電極から発光が取り出される。各層に用いる化合物の具体例については、例えば「月刊ディスプレイ」1998年10月号別冊の「有機ELディスプレイ」(テクノタイムズ社)等に記載されている。
【0045】
(1) 基板
基板は、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルやポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン、テフロン、ポリテトラフルオロエチレン−ポリエチレン共重合体等の高分子材料等からなるものであってよい。基板は単一材料で形成しても、2種以上の材料で形成してもよい。中でも、フレキシブルな有機薄膜素子を形成するためには高分子材料が好ましく、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性及び加工性に優れ、且つ低通気性及び低吸湿性であるポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンや、ポリクロロトリフルオロエチレン、テフロン、ポリテトラフルオロエチレン−ポリエチレン共重合体等のフッ素原子を含む高分子材料がより好ましい。
【0046】
基板の形状、構造、大きさ等は有機薄膜素子の用途及び目的に応じて適宜選択することができる。形状は板状とするのが一般的である。構造は単層構造であっても積層構造であってもよい。基板は単一の部材で形成しても、2以上の部材で形成してもよい。また少なくとも第一の基板は無色透明である。
【0047】
基板の電極側の面、電極と反対側の面又はその両方に透湿防止層(ガスバリア層)を設けてもよい。透湿防止層を構成する材料としては窒化ケイ素、酸化ケイ素等の無機物を用いるのが好ましい。透湿防止層は高周波スパッタリング法等により成膜できる。また基板には必要に応じてハードコート層やアンダーコート層を設けてもよい。
【0048】
(2) 透明電極
透明電極は有機化合物層にホール(正孔)を供給する陽極としての機能を有するが、陰極として機能させることもできる。以下、透明電極を陽極とする場合について説明する。
【0049】
透明電極の形状、構造、大きさ等は特に制限されず、有機薄膜素子の用途及び目的に応じて適宜選択することができる。透明電極を形成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等を用いることができ、好ましくは仕事関数が4eV以上の材料を用いる。具体例としては、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、半導性金属酸化物(酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等)、金属(金、銀、クロム、ニッケル等)、これら金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、無機導電性物質(ヨウ化銅、硫化銅等)、有機導電性材料(ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等)及びこれとITOとの積層物等が挙げられる。
【0050】
透明電極は印刷法、コーティング法等の湿式方法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方法、CVD法、プラズマCVD法等の化学的方法等によって基板上に形成することができる。形成方法は透明電極材料との適性を考慮して適宜選択すればよい。例えば、透明電極の材料としてITOを用いる場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等を用いればよい。また透明電極の材料として有機導電性材料を用いる場合には、湿式製膜法を用いてよい。
【0051】
透明電極のパターニングはフォトリソグラフィー等による化学的エッチング、レーザ等を用いた物理的エッチング等により行うことができる。またマスクを用いた真空蒸着法やスパッタリング法、リフトオフ法、印刷法等によりパターニングしてもよい。
【0052】
透明電極の形成位置は有機薄膜素子の用途及び目的に応じて適宜選択してよいが、基板上に形成するのが好ましい。このとき透明電極は基板の表面全体に形成しても一部のみに形成してもよい。
【0053】
透明電極の厚さはその材料に応じて適宜選択すればよいが、通常10 nm〜50μmであり、好ましくは50 nm〜20μmである。透明電極の抵抗値は103Ω/□以下とするのが好ましく、102Ω/□以下とするのがより好ましい。透明電極は無色透明であっても有色透明であってもよい。透明電極側から発光を取り出すためには、その透過率は60%以上とするのが好ましく、70%以上とするのがより好ましい。透過率は分光光度計を用いた公知の方法に従って測定することができる。
【0054】
また「透明導電膜の新展開」(沢田豊監修、シーエムシー刊、1999年)等に詳細に記載されている電極も本発明に適用できる。特に耐熱性の低いプラスチック基板を用いる場合は、透明電極材料としてITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で製膜するのが好ましい。
【0055】
(3) 有機発光層
有機発光層は発光性有機薄膜層、電子輸送性有機薄膜層、ホール輸送性有機薄膜層、電子注入層、ホール注入層からなる。各層に用いる化合物の具体例については、例えば「月刊ディスプレイ」1998年10月号別冊の「有機ELディスプレイ」(テクノタイムズ社)等に記載されている。
【0056】
(a) 発光性有機薄膜層
発光性有機薄膜層は少なくとも一種の発光性化合物を含有する。発光性化合物は特に限定的ではなく、蛍光発光性化合物であっても燐光発光性化合物であってもよい。また蛍光発光性化合物及び燐光発光性化合物を同時に用いてもよい。発光輝度及び発光効率の点から燐光発光性化合物を用いるのが好ましい。
【0057】
蛍光発光性化合物としては、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリデン化合物、金属錯体(8-キノリノール誘導体の金属錯体、希土類錯体等)、高分子発光性化合物(ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等)等が使用できる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
燐光発光性化合物は、好ましくは三重項励起子から発光することができる化合物であり、オルトメタル化錯体及びポルフィリン錯体が好ましい。ポルフィリン錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。燐光発光性化合物は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0059】
オルトメタル化錯体とは、山本明夫著「有機金属化学 基礎と応用」,150頁及び232頁,裳華房社(1982年)、H. Yersin著「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」,71〜77頁及び135〜146頁,Springer-Verlag社(1987年)等に記載されている化合物群の総称である。オルトメタル化錯体を形成する配位子は特に限定されないが、2-フェニルピリジン誘導体、7,8-ベンゾキノリン誘導体、2-(2-チエニル)ピリジン誘導体、2-(1-ナフチル)ピリジン誘導体又は2-フェニルキノリン誘導体であるのが好ましい。これら誘導体は置換基を有してもよい。またこれらのオルトメタル化錯体形成に必須の配位子以外に他の配位子を有していてもよい。オルトメタル化錯体を形成する中心金属としては、遷移金属であればいずれも使用可能であり、本発明ではロジウム、白金、金、イリジウム、ルテニウム、パラジウム等を好ましく用いることができる。このようなオルトメタル化錯体を含む有機化合物層は、発光輝度及び発光効率に優れている。オルトメタル化錯体については、特願2000-254171号に具体例が記載されている。
【0060】
本発明で用いるオルトメタル化錯体は、Inorg. Chem., 30, 1685, 1991、Inorg. Chem., 27, 3464, 1988、Inorg. Chem., 33, 545, 1994、Inorg. Chim. Acta, 181, 245, 1991、J. Organomet. Chem., 335, 293, 1987、J. Am. Chem. Soc., 107, 1431, 1985等に記載の公知の方法により合成することができる。
【0061】
発光性有機薄膜層中の発光性化合物の含有量は特に制限されないが、例えば0.1〜70質量%であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましい。発光性化合物の含有量が0.1質量%未満であるか又は70質量%を超えると、その効果が十分に発揮されないことがある。
【0062】
発光性有機薄膜層は必要に応じてホスト化合物、ホール輸送材料、電子輸送材料、電気的に不活性なポリマーバインダー等を含有してもよい。なおこれらの材料の機能は1つの化合物により同時に達成できることがある。例えば、カルバゾール誘導体はホスト化合物として機能するのみならず、ホール輸送材料としても機能する。
【0063】
ホスト化合物とは、その励起状態から発光性化合物へエネルギー移動が起こり、その結果その発光性化合物を発光させる化合物である。その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8-キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、ポリシラン化合物、ポリ(N-ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。ホスト化合物は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0064】
ホール輸送材料は、陽極からホールを注入する機能、ホールを輸送する機能、及び陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特に限定されず、低分子材料であっても高分子材料であってもよい。その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、ポリシラン化合物、ポリ(N-ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0065】
電子輸送材料は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、及び陽極から注入されたホールを障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特に限定されない。その具体例としては、例えばトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8-キノリノール誘導体等の金属錯体、メタロフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。
【0066】
ポリマーバインダーとしては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等が使用可能である。ポリマーバインダーを含有する発光性有機薄膜層は、湿式製膜法により容易に大面積に塗布形成することができる。
【0067】
発光性有機薄膜層の厚さは10〜200 nmとするのが好ましく、20〜80 nmとするのがより好ましい。厚さが200 nmを超えると駆動電圧が上昇することがある。一方10 nm未満であると有機薄膜素子が短絡することがある。
【0068】
(b) ホール輸送性有機薄膜層
有機薄膜素子は、必要に応じて上記ホール輸送材料からなるホール輸送性有機薄膜層を有してよい。ホール輸送性有機薄膜層は上記ポリマーバインダーを含有してもよい。ホール輸送性有機薄膜層の厚さは10〜200 nmとするのが好ましく、20〜80 nmとするのがより好ましい。厚さが200 nmを超えると駆動電圧が上昇することがあり、10 nm未満であると有機薄膜素子が短絡することがある。
【0069】
(c) 電子輸送性有機薄膜層
有機薄膜素子は、必要に応じて上記電子輸送材料からなる電子輸送性有機薄膜層を有してもよい。電子輸送性有機薄膜層は上記ポリマーバインダーを含有してもよい。電子輸送性有機薄膜層の厚さは10〜200 nmとするのが好ましく、20〜80 nmとするのがより好ましい。厚さが200 nmを超えると駆動電圧が上昇することがあり、10 nm未満であると有機薄膜素子が短絡することがある。
【0070】
(4) 背面電極
背面電極は有機化合物層に電子を注入する陰極としての機能を有するが、陽極として機能させることもできる。以下、背面電極を陰極とする場合について説明する。
【0071】
背面電極の形状、構造、大きさ等は特に制限されず、有機薄膜素子の用途及び目的に応じて適宜選択することができる。背面電極を形成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等を用いることができ、好ましくは仕事関数が4.5 eV以下の材料を用いる。具体例としては、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(Mg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、希土類金属(イッテルビウム等)等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させるためには2種以上を併用するのが好ましい。これら材料の中で、電子注入性の観点からはアルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性の観点からはアルミニウムを主体とする材料が好ましい。ここでアルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独のみならず、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金又は混合物(リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金等)を指す。背面電極の材料としては、特開平2-15595号、特開平5-121172号等に詳述されているものも使用できる。
【0072】
背面電極は印刷法、コーティング法等の湿式方法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方法、CVD法、プラズマCVD法等の化学的方法等によって形成することができる。形成方法は背面電極材料との適性を考慮して適宜選択すればよい。例えば背面電極の材料として2種以上の金属等を用いる場合、その材料を同時又は順次にスパッタして形成できる。
【0073】
背面電極の形成位置は有機薄膜素子の用途及び目的に応じて適宜選択してよいが、有機化合物層上に形成するのが好ましい。このとき背面電極は有機化合物層の表面全体に形成しても一部のみに形成してもよい。また背面電極と有機化合物層との間にアルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物等からなる誘電体層を0.1〜5nmの厚さで形成してもよい。誘電体層は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0074】
背面電極の厚さはその材料に応じて適宜選択すればよいが、通常10 nm〜5μmであり、好ましくは50 nm〜1μmである。背面電極は透明であっても不透明であってもよい。透明背面電極は、上記材料の層を1〜10 nmの厚さに薄く製膜し、更にITOやIZO等の透明導電性材料を積層して形成してもよい。
【0075】
【発明の効果】
以上の通り、本発明のアクティブマトリックス発光デバイスは機械的導電スイッチを用いるので、TFTアクティブマトリックス素子に設けられる定電流供給ライン(Supply line)が不要となる。さらにTFT式アクティブマトリックス素子の駆動に用いるスイッチング用TFTや駆動用TFTが不要である。そのため半導体成膜のパターニング工程がなくなり、製造コストが低減する。また本発明のアクティブマトリックス発光デバイスでは機械的導電スイッチを背面電極の裏側に形成するため、駆動部が発光した光を吸収したり電極が光を反射したりすることがなく、発光効率が高いという利点を有する。
【0076】
さらに本発明のアクティブマトリックス発光デバイスは、一対の走査信号ラインを有する特開2000-35591号の機械的導電スイッチ式アクティブマトリックス素子と異なり、機械的導電スイッチをONするのに要する走査信号ラインは1つで良いので、パターニング工程が少ないのみならず、一対の走査信号ラインのずれによるスイッチング特性の悪化の問題を回避することができる。
【0077】
さらに各発光素子の背面電極の背面で機械的導電スイッチとの間にコンデンサを形成する場合、コンデンサ電極層と誘電体層との積層数を調整することによりコンデンサの容量を調節することができるので、機械的導電スイッチをONにしておく時間(画素の点灯時間)を最適化することができる。そのため特開2000-35591号のアクティブマトリックス素子と異なり、画素の点灯時間より短いサイクルで走査信号ラインに走査信号を送給することができるので、アクティブマトリックス発光デバイスの高速化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例によるアクティブマトリックス素子を示す部分拡大断面図である。
【図2】 本発明の他の実施例によるアクティブマトリックス素子を示す部分拡大断面図である。
【図3】 図2のアクティブマトリックス素子の分解図である。
【図4】 図2のアクティブマトリックス素子の等価回路を示す図である。
【図5】 透明電極を形成した第一の基板を示し、(a) は平面図であり、(b) は断面図である。
【図6】 第一の基板上に透明電極を介して有機発光層及び背面電極からなる発光素子(画素)を形成する様子を示し、(a) は発光素子を形成するためのマスクを透明電極付き第一の基板上に配置した状態を示す断面図であり、(b) はマスクの開口パターンを示す平面図であり、(c) は発光素子を形成した第一の基板を示す断面図である。
【図7】 画素を形成した第一の基板と、コンタクトホールを形成した第二の基板との位置関係を示す断面図である。
【図8】 画素の間に電極を形成した第一の基板と、コンタクトホールを形成した第二の基板との位置関係を示す断面図である。
【図9】 画素を形成した第一の基板と、コンタクトホールの周囲に第一のコンデンサ電極を形成した第二の基板との位置関係を示す断面図である。
【図10】 画素を形成した第一の基板と、コンタクトホールの周囲に第一のコンデンサ電極及びコンデンサ誘電体層を形成した第二の基板との位置関係を示す断面図である。
【図11】 画素を形成した第一の基板と、コンタクトホールの周囲にコンデンサを形成した第二の基板との位置関係を示す断面図である。
【図12】 画素を形成した第一の基板と、コンタクトホールの周囲に積層型コンデンサを形成した第二の基板との位置関係を示す断面図である。
【図13】 積層型コンデンサを形成した第二の基板の上面全体に、コンデンサ電極の一部及びコンタクトホールの周囲を除いて可撓性絶縁薄膜を形成した状態を示す図であり、(a) は平面図であり、(b) はA−A'断面図である。
【図14】 図13の第二の基板のうちコンデンサ電極が露出した部分に電極を形成した状態を示す図であり、(a) は平面図であり、(b) はB−B'断面図であり、(c) はC−C'断面図である。
【図15】 図14の第二の基板の電極上にさらにフォトレジスト層を形成した状態を示す図であり、(a) は平面図であり、(b) はD−D'断面図である。
【図16】 図15の第二の基板のフォトレジスト層の外周部をテーパ状にした状態を示す図であり、(a) は平面図であり、(b) はE−E'断面図である。
【図17】 図16の第二の基板のフォトレジスト層上にデータ信号ラインを形成した状態を示す図であり、(a) は平面図であり、(b) はF−F'断面図である。
【図18】 図17の第二の基板の上面全体にフォトレジスト層を形成した後、露光・現像により走査信号ライン列の部分だけストライプ状にフォトレジストを除去した状態を示す平面図である。
【図19】 図18の第二の基板のフォトレジストの除去部分に可撓性絶縁薄膜及び走査信号ライン列を形成した状態を示す図であり、(a) は平面図であり、(b) はG−G'断面図である。
【図20】 本発明の別の実施例によるアクティブマトリックス素子を示す断面図である。
【図21】 本発明のさらに別の実施例によるアクティブマトリックス素子を示す図であり、(a) は断面図であり、(b) は平面図であり、(c) は走査信号により可撓性絶縁薄膜が撓んでデータ信号ラインとコンデンサ電極とが導通した状態を示す断面図である。
【図22】 従来のTFT式アクティブマトリックス素子の等価回路を示す図である。
【図23】 特開2000-259098号に開示のTFT式アクティブマトリックス素子の等価回路を示す図である。
【図24】 特開2000-35591号に開示のアクティブマトリックス素子を示す断面図であり、(a) はデータ信号ラインとコンデンサ電極とが非導通の状態を示し、(b) はデータ信号ラインとコンデンサ電極とが導通した状態を示す。
【符号の説明】
1・・・第一の基板
2・・・透明電極
3・・・発光素子
31・・・有機発光層
32・・・背面電極
4・・・マスク
5・・・突起状電極部
6・・・コンデンサ
8・・・絶縁膜
11・・・第二の基板
12・・・コンタクトホール
16・・・コンデンサの第一の電極
17・・・コンデンサ用誘電体層
18・・・コンデンサの第二の電極
19・・・コンデンサの最上の電極
23・・・データ信号ライン
27・・・可撓性絶縁薄膜
28・・・走査信号ライン
40・・・機械的導電スイッチ
Claims (5)
- (a) 透明基板と、(b) 前記透明基板の上に形成された透明電極と、前記透明電極上に2次元状に配列された複数個の発光層と、各発光層の背面に形成された背面電極とからなる発光素子と、(c) 前記発光素子の背面に設けられた可撓性絶縁薄膜と、(d) 前記可撓性絶縁薄膜の内面にストライプ状に形成され、前記発光素子の背面電極に間隙を置いて対向するデータ信号ライン列と、(e) 前記可撓性絶縁薄膜の外面に前記データ信号ライン列と直交するようにストライプ状に形成された走査信号ライン列とを有し、前記走査信号ライン列に流れる走査信号により前記走査信号ライン列と前記透明電極との間に静電気力が生じて前記可撓性絶縁薄膜は内側に撓み、もって前記データ信号ライン列と前記背面電極又はそれと導通する導電体とが接続して、前記発光素子が駆動されることを特徴とするアクティブマトリックス発光デバイス。
- 請求項1に記載のアクティブマトリックス発光デバイスにおいて、前記透明電極に導通する第一の電極と、前記発光素子の背面電極に導通する第二の電極とからなるコンデンサ電極と、前記第一の電極と前記第二の電極との間に形成された誘電体層とからなるコンデンサが各発光素子の背面側に設けられており、前記データ信号ライン列は前記コンデンサ電極に対向していることを特徴とするアクティブマトリックス発光デバイス。
- 請求項1又は2に記載のアクティブマトリックス発光デバイスにおいて、前記透明電極が2次元状に複数個の発光素子にわたって導通していることを特徴とするアクティブマトリックス発光デバイス。
- 請求項3に記載のアクティブマトリックス発光デバイスにおいて、前記透明電極が前記基板の全面に連続的に形成されていることを特徴とするアクティブマトリックス発光デバイス。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のアクティブマトリックス発光デバイスにおいて、前記発光素子が有機発光素子であることを特徴とするアクティブマトリックス発光デバイス。
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