つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
この発明の乾留焼却炉は、乾留ガス化方式および二次燃焼方式の焼却炉であり、着火手段を有するガス化室と、助燃バーナを有する燃焼室と、前記燃焼室の温度を計測する燃焼室温度センサとを主要部として備える。
前記ガス化室には、投入扉が開閉可能に設けられており、廃棄物などの被焼却物が投入され収容される。また、前記ガス化室には、収容された被焼却物に点火するための着火手段が設けられている。この着火手段は、前記ガス化室の前記投入扉や側壁などに設けられ、補助燃料を燃焼させるバーナが好適に用いられる。さらに、前記ガス化室には、前記着火バーナにて点火された前記被焼却物を燃焼(乾留を含む)させるために、前記ガス化室内に空気を導入するガス化空気路が接続されている。このガス化空気路を介した前記ガス化室内への空気供給は通常、前記ガス化室の炉床から行われる。さらに、前記ガス化室には、このガス化室内の温度を計測するガス化室温度センサが設けられる。
前記燃焼室は、前記ガス化室の上部や中央部と連通可能に設けられる。この際、典型的には前記燃焼室は、水平方向または垂直方向に配置される。前記燃焼室を水平に配置する場合には、前記ガス化室の上壁または側壁と、前記燃焼室の左右方向一端部とを接続する。一方、前記燃焼室を垂直に配置する場合には、前記ガス化室の側壁または上壁と、前記燃焼室の下端部とを接続する。このようにして、前記燃焼室は、一端部が前記ガス化室と連通して設けられる。そして、そのような燃焼室の他端部には、上方へ延出して排気筒(煙突)が設けられ、外気と連通される。さらに、前記燃焼室には、助燃バーナが設けられる。この助燃バーナは、補助燃料を燃焼させるものであり、前記燃焼室の前記一端部に設けられる。
前記燃焼室には、前記助燃バーナに近接して、前記ガス化室からの乾留ガスの導入部が設けられる。また、この導入部へ燃焼空気を導入するために、前記燃焼室には燃焼空気路が接続されている。このようにして、燃焼室の一端部には、助燃バーナに近接して、乾留ガスとその燃焼空気が導入され燃焼されるので、前記導入部を乾留ガスバーナと呼ぶこともできる。さらに、前記燃焼室には、この燃焼室内の温度を計測する燃焼室温度センサが設けられている。本実施形態では、この燃焼室温度センサは、前記燃焼室の出口付近に設けられる。ここで燃焼室の温度とは、燃焼室における燃焼反応がほぼ完了した燃焼ガス温度を意味する。
前記着火バーナ、前記ガス化空気路、前記助燃バーナ、および前記燃焼空気路には、送風機から空気が送り込まれる。本実施形態では、一つの共通の送風機から前記各所に、空気が供給可能とされている。この送風機から、前記着火バーナ、前記ガス化空気路、前記助燃バーナ、および前記燃焼空気路のそれぞれに送り込まれる空気量は、それぞれに設けられた空気量調整手段により調整される。
この各空気量調整手段としては、典型的にはダンパが使用される。これらのダンパは、駆動モータあるいはソレノイドなどの作動により弁体の開度を変更するものである。このダンパは、次のような構成のものとすることができる。すなわち、前記ガス化空気路や燃焼空気路または前記各バーナへの空気の配管に設けられ、管路の長手方向と垂直な回転軸まわりに回転可能に保持された板材からなる弁体としてもよい。
この際、特にガス化空気路のダンパは、前記回転軸を管状の弁箱内で板状の弁体の中央に配置したバタフライ式でもよいが、好ましくは、板状の弁体の一側端部に配置し管を蓋する片持ち式とする。本実施形態では、ガス化空気路のダンパは、片持ち式を採用している。乾留ガス化工程では、空気が少しでも漏れると燃焼異常を起こす虞があり、閉止特性が重要となるが、片持ち式によれば、管端に蓋をすることになり管路の全閉が確実かつ容易にできるので、乾留ガスの制御を確実に行える。また、片持ち式のダンパは、バタフライ式のダンパと比較して、回転に対する制御範囲はおよそ20°くらいと狭いが回転角度に対する空気流量特性における直線性が開度が小さい範囲において優れているので、閉止特性および小流量域で精密な制御が必要な乾留ガス化制御には最適な特性を備えている。
前記各ダンパは、その弁体の開度を変更することで、その管路の流通空気量を調整するものである。従って、これら各ダンパの停止位置を調整することで、運転工程などに応じて、前記ガス化室、前記燃焼室、および前記各バーナへのそれぞれの送風量を変化させることができる。
また、本実施形態においては、前記送風機による空気の吐出圧(風圧,送風圧)は、ほぼ一定に保持可能に制御される。送風機の特性として、送風量を変えると風圧も変化するが、風圧をほぼ所定圧に保持しつつ、送風量を変化可能とする。そのために、前記送風機は、その回転数を制御可能なものが使用される。典型的には、インバータ制御にて回転数を制御可能な送風機が使用される。そして、前記送風機と前記各ダンパとの間の空間には、その空間内の圧力を計測する圧力センサが設けられており、その圧力センサの出力に基づき、前記送風機の回転数を制御可能としている。
前記ガス化室や前記燃焼室およびそれらに設けた各バーナへの送風量や風圧、および前記各バーナへの補助燃料の供給量、前記各バーナへの空気と補助燃料の供給を伴う前記各バーナの作動などは、制御手段(制御器)により制御される。具体的には、前記制御器は、前記各ダンパの停止位置をそれぞれ制御することで、前記着火バーナへの空気供給量、前記ガス化空気路を介した前記ガス化室への空気供給量、前記助燃バーナへの空気供給量、および前記燃焼空気路を介した前記燃焼室への空気供給量を変更可能である。また、前記制御器は、前記圧力センサの出力に基づき前記送風機の回転数をインバータ制御することで、前記送風機から前記各ダンパを通過させる空気の風圧を一定にすることができる。さらに、前記制御器は、燃料供給管に設けられたバルブを開閉制御することにより、前記各バーナへの補助燃料の供給量の切替を行う。
このような制御は、予め設定された手順(プログラム)に従い、前記ガス化室および前記燃焼室に設けた前記各温度センサ、および前記各ダンパと前記送風機との間に設けた前記圧力センサの出力、さらには前記制御器自身が把握する経過時間などを用いてなされる。
つぎに、前記乾留焼却炉を用いた典型的な焼却作業について説明する。この焼却炉は、被焼却物を順次投入して連続焼却するのではなく、バッチ処理により焼却を行うものである。つまり、最初にガス化室内へ被焼却物を投入収容した後、予熱工程、着火工程、乾留工程、おき火工程、およびポストパージ(冷却)工程の順に焼却処理がなされ、これら一連の工程が済むまでは、前記ガス化室に新たに被焼却物が投入されることはない。
ところで本実施形態では、前記助燃バーナは、その燃焼量を一定量に維持可能に燃焼を制御される。具体的には、前記燃焼室の全発熱量が所定状態に維持されるように、補助燃料の供給量が所望状態に維持されて燃焼状態が保持される。この際、本実施形態では、助燃バーナへの供給空気量を調整するダンパも、助燃バーナの運転時には一定状態に固定的に維持される。このような助燃バーナの一定量燃焼は、本実施形態では少なくとも乾留工程における助燃バーナの運転時に行われる。あるいは、乾留工程に加えて、着火工程やおき火工程においても、助燃バーナの一定量燃焼を行ってもよい。この場合、助燃バーナ用空気ダンパは、一定量に固定しておけばよく、その開度調整は不要となる。また、この助燃バーナは、高燃焼量と低燃焼量とを選択できるようにし、着火工程およびおき火工程において前記燃焼室温度の低下を防ぐ目的で高燃焼とし、乾留工程においては、被焼却物のガス化量を増加するために低燃焼とすることができる。
前記予熱工程は、ダイオキシン類を分解することができる温度以上に、早期に前記燃焼室温度が上昇するように予熱する工程である。そのために、まず、前記助燃バーナを作動させることにより、前記燃焼室内を設定された着火開始温度まで予熱する。つまり、前記燃焼室内で補助燃料を燃焼させることで、前記燃焼室内の温度を上昇させる。そして、燃焼室温度が所定の着火開始温度に到達すると、予熱工程の一環としても機能する着火工程へ移行する。
前記着火工程は、前記助燃バーナに加えて、前記着火バーナも運転を開始し、その炎で前記ガス化室内の被焼却物に着火する工程である。つまり、前記着火バーナにより補助燃料を燃焼させて前記被焼却物に着火する。この着火工程では、前記ガス化室へ所定量(廃棄物定格焼却能力の理論空気量以下(20%程度が望ましい。))の空気を供給することで、ガス化室内の未燃廃棄物への着火域の広がりとガス化室発熱の増加による燃焼室温度上昇とを促進している。そして、乾留工程では、前記燃焼室は、ダイオキシン類を分解することができる温度以上(約800℃以上)に保持するのがよいが、その温度まで早期に到達させ、且つ被焼却物への着火を確実にするために、本実施形態では、比較的早期に着火バーナが運転を開始し、しかも設定された燃焼室の着火終了温度まであるいは一定時間になるまで連続運転を継続する。この着火工程では、ガス化空気路および燃焼空気路の各ダンパは、所定状態で開かれた状態に維持される。
着火工程にて前記燃焼室内の温度が前記着火終了温度以上になるか、あるいは着火工程における運転時間が設定時間だけ経過すると、乾留工程へ移行する。この乾留工程への移行に伴い、前記着火バーナは作動を停止する。これ以降、前記着火バーナは、乾留ガスの発生を促す必要があるときに作動を再開する。具体的には、水分の多いゴミなどで燃焼室温度が十分上がらない場合に、前記ガス化室の温度を上げるために作動を再開することもある。
乾留とは、前記ガス化室内への供給空気量を制限した状態で、前記ガス化室内の前記被焼却物を加熱することにより、この被焼却物から乾留ガスを発生させることをいう。この乾留工程は、前記被焼却物を蒸し焼き状態で燃焼するものともいえる。そして、この乾留工程は、前記ガス化室内で乾留ガスを発生させながら、この発生した乾留ガスを前記燃焼室内で燃焼させ、さらにこの燃焼排ガスを前記排気筒上部から排出する工程である。この乾留工程にて安定的に乾留状態が維持される。
さらに具体的に説明すると、この乾留工程は、前記被焼却物をダイオキシン類の発生が少ない乾留ガス化方式にて焼却処理するものであり、前記ガス化室内で発生したダイオキシン類を前記燃焼室内で熱分解する工程である。しかも、前記燃焼室内の燃焼において発生するダイオキシン類も、前記燃焼室内を800℃以上とすることにより、この燃焼室内で熱分解される。
乾留工程においては、前記助燃バーナは、その燃焼量が一定に維持されており、設定された燃焼停止温度に達しない限り作動を継続する。一般的に、燃焼室内で燃焼可能な被焼却物の燃焼量(=焼却能力kg/h)は、(燃焼室容積m3×燃焼室負荷kcal/m3/h−助燃バーナの低位発熱量kcal/h)/被焼却物の低位発熱量(kcal/kg)と定義される。被焼却物や乾留ガスバーナ特性、燃焼室構造などにより燃焼室負荷は変わるが、燃焼室負荷は、一般的に採用される値は15万〜30万kcal/m3hでおおむね25万kcal/m3hである。この定義から、被焼却物の焼却時、燃焼室で燃焼可能な熱量は、「被焼却物の焼却熱量+助燃バーナの低位発熱量」が一定値を取ることが分かる。燃焼室の可能全燃焼量とはこの値を指す。なお、燃焼室負荷は、前記の一般的な値に限定されるものではない。この発明の実施例においては、乾留バーナおよび燃焼室構造によるとガス化燃焼、燃焼室空気の予熱効果、燃焼室断熱効果などにより燃焼室負荷は300万kcal/m3hに達している。
本発明は、助燃バーナの燃焼量を、前記燃焼室の可能全燃焼量に対し約60%〜5%,好ましくは、30%〜20%に設定される。助燃バーナの燃焼量が少ないほどゴミ焼却量が増えるが、少なくし過ぎると予熱能力あるいはおき火段階での加熱能力が低下し燃焼室温度が低下する。但し、前述のように助燃バーナを高燃焼または低燃焼と切り替え可能としてもよく、その場合でも乾留工程では低燃焼で一定に維持し、予熱工程およびおき火工程において、高燃焼と低燃焼とを燃焼室温度の変化に基づき制御することができる。
また、前記燃焼空気路の燃焼空気ダンパも所定状態に維持されて、前記燃焼室への供給空気量も所定量以上の一定に維持される。この所定量以上とは、当該焼却炉で燃焼させる被焼却物の最大焼却量に相当する必要な空気量(通常空気比1.5〜2程度)である。こうして前記助燃バーナの燃焼量および前記燃焼室への供給空気量を一定に維持しておくことで、乾留工程では、前記燃焼室の温度に基づき、前記ガス化室への供給空気量を調整するだけで、前記ガス化室における乾留ガスの発生と、その発生した乾留ガスの前記燃焼室における燃焼とを、安定して行うことができる。そのために、前記制御器は、前記燃焼室温度センサの出力に基づき、前記ガス化空気路のガス化空気ダンパの開度を調整する。
前記乾留工程の前記制御により、乾留が安定して行われるが、乾留の進行に伴い、燃焼室温度を所定に維持できず低下してくる。このようにして、乾留が不十分な状況で燃焼室温度が低下する場合に備えるために所定の最低乾留工程時間が経過し、かつ設定された移行温度まで燃焼室の温度が低下した後、おき火工程へ移行する。
あるいは、乾留工程からおき火工程への移行は、前記ガス化室へ供給すべき空気量が設定値を超えたことに基づいて行ってもよい。つまり、乾留の進行に伴い前記ガス化室へ供給すべき空気量は増大する傾向にあるが、その供給空気量が設定値を超えると、乾留終盤と判定するのである。この場合のおき火判定は、典型的には、次のようにしてなされる。すなわち、前記ガス化空気ダンパの全開を、マイクロスイッチ(リミットスイッチを含む)などの位置検出器にて検出し、その検出信号に基づき乾留工程終盤を把握する。この際、前記全開を検出した時点、またはそれから所望の時間遅れをもたせて(具体的には数分程度の所定時間経過後)、前記燃焼空気ダンパを絞っておき火工程へ移行する。ここで、ガス化空気ダンパの「全開」とは、おき火に必要な最大風量を供給可能な開度という。
前記おき火工程は、乾留ガスが発生した残りの前記被焼却物(炭化した状態の前記被焼却物)を置火(いわゆる「おき」)の状態で燃焼させる工程である。このおき火工程においても、前記助燃バーナは、補助燃料を燃焼させる。また、ガス化空気ダンパは、原則として一定開度を維持し、燃焼空気ダンパは、原則としておき火燃焼量に対応した絞った状態に維持される。そして、このおき火工程においても、前記乾留工程のときと同様、前記燃焼室からの燃焼排ガスは、前記排気筒から排出される。そして、このようなおき火工程が設定時間経過するか、あるいはガス化室温度が設定温度まで低下すると、おき火工程を終了し、ポストパージ工程へ移行する。
前記ポストパージ工程は、前記ガス化室および前記燃焼室を冷却する工程である。このポストパージ工程においては、前記両バーナをともに停止させ、前記ガス化空気路および前記燃焼空気路などから空気を供給して、前記ガス化室および前記燃焼室を冷却する。そして、所定時間に亘る前記ポストパージ工程が終了するか、前記ガス化室内の温度が所定温度以下になると、前記ガス化室内に残った未燃物(灰など)を取り出し、焼却処理を終了する。
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の乾留焼却炉の一実施例の概略構成を示す説明図である。本実施例の乾留焼却炉は、乾留ガス化方式および二次燃焼方式により、廃棄物などの被焼却物を焼却処理する装置である。本実施例の乾留焼却炉は、着火バーナ1を有し被焼却物(不図示)を収容するガス化室2と、助燃バーナ3を有しガス化室2内に収容した被焼却物から発生させた乾留ガスを燃焼させる燃焼室4と、この燃焼室4からの燃焼排ガスを装置外へ排出する排気筒5と、ガス化室2や燃焼室4およびそれらに設けた前記各バーナ1,3に空気を供給する送風機6と、前記各バーナ1,3および前記送風機6などを制御する制御器7を主要部として備える。
ガス化室2は、被焼却物を収容するように、たとえば角型状に形成されている。本実施例のガス化室2には、正面の上下に、被焼却物の投入扉8と焼却後の灰出し扉9とが開閉可能に設けられており、側面に、着火バーナ1が設けられている。この着火バーナ1には、補助燃料が供給可能とされ、その給油ライン(不図示)に設けた電磁弁(不図示)などを介して、その補助燃料が供給される。そして燃焼量は、各バーナ1,3のノズルにより略決定される。
本実施例の着火バーナ1は、ガス化室2の中央部よりやや下方に配置されており、先端部をガス化室2内へ向けて横向きに設けられている。この着火バーナ1には、送風機6に接続される着火バーナ空気路10を介して、送風機6からの空気が供給可能とされている。そして、その着火バーナ空気路10には、着火バーナ1の手前に着火バーナダンパ11が設けられており、着火バーナ1への供給空気量を調整可能である。本実施例の着火バーナダンパ11は、ソレノイドにより弁体の上下位置を変更して開度を調整するものである。
また、ガス化室2には、ガス化室2内の温度を計測するためのガス化室温度センサ12が設けられる。本実施例のガス化室温度センサ12は、ガス化室2の排ガス出口部付近に設けられる。さらに、ガス化室2内には、ガス化室2内に空気を導入するガス化空気路13が接続されている。このガス化空気路13は、送風機6からの空気をガス化室2の炉床からガス化室2内に導入するものであり、その管路には、ガス化空気ダンパ14が設けられている。
図2および図3は、本実施例のガス化空気ダンパ14の構成を示す図であり、図2は概略断面図、図3は概略斜視図である。これらの図に示すように、本実施例の板材からなるガス化空気ダンパ14は、管路(ガス化空気路)13の中途に設けたボックス26内に配置され、前記管路13の長手方向と垂直な回転軸15まわりに、駆動モータ16により回転可能とされた板材からなる。このガス化空気ダンパ14は、前記ボックス26内において、ガス化空気路13を構成する管体の端面に蓋をするよう当接する位置まで閉鎖可能である。
前記駆動モータ16は、励磁時間に比例した回転角度を得ることができるモータ、たとえばシンクロナスモータとする。前記回転軸15は、前記板材(ガス化空気ダンパ)14の一側端部に配置されている。そして、駆動モータ16の回転が、ギアボックス27内に収容された減速歯車(不図示)を介して回転軸15に伝達されることで、ガス化空気ダンパ14が回転される。前記回転軸15の回転角度を制御して、ガス化空気ダンパ14の停止位置を調節することで、ガス化空気路13からガス化室2へ供給する空気量を調整できる。このような片持ち式のガス化空気ダンパ14は、ガス化空気路13の全閉を容易にし、乾留ガスの制御を確実にできる。
ガス化室2の上部には、燃焼室4が接続される。本実施例の燃焼室4は、水平に配置された細長い円筒状とされており、その一端部(基端部)の周側壁にガス化室2が接続される。図4は、本実施例の燃焼室4を示す概略断面図であり、ガス化室2が接続される基端部を示している。燃焼室4の基端部には、助燃バーナ3が設けられる。この助燃バーナ3には、油ポンプ(不図示)により油圧をかけて補助燃料が供給可能とされ、その補助燃料の供給量はノズルチップ28で略一定とされている。また、この助燃バーナ3には、助燃バーナ空気路17を介して送風機6からの空気が供給される。そして、その助燃バーナ空気路17には、助燃バーナ3への供給空気量を決定する助燃バーナダンパ18が設けられている。本実施例の助燃バーナダンパ18は、助燃バーナ空気路17の管路の長手方向と直角方向に配置された回転軸まわりに回転可能に設けられた板材からなる。従って、その回転停止位置を調整することで、助燃バーナ3への供給空気量を調整することができるが、本実施例では所定の開度に固定される。
さらに、燃焼室4には燃焼空気路19が接続される。この燃焼空気路19は、ガス化室2からの乾留ガスを助燃バーナ3にて燃焼させるために、乾留ガスに空気を混合するためのものである。本実施例では、燃焼室4は、内筒20と外筒21とから二重の円筒状に形成されており、その二重の筒体20,21間の隙間が、燃焼空気路19の末端部として利用される。この場合、二重の筒体20,21は、燃焼室4の壁を構成し、内筒20内が燃焼室4として機能する。
送風機6からの燃焼空気は、燃焼空気ダンパ22を介して、前記二重の筒体20,21の先端部へ供給される。そして、その供給された空気は、内外の筒体20,21間の隙間を介して、その基端部へ導かれ、内筒20の基端部に配置したバーナ筒29内に供給される。さらに、内筒20の基端部のバーナ筒29には、ガス化室2からの乾留ガスも供給され、助燃バーナ3により乾留ガスを燃焼させる乾留ガスバーナ23が構成される。
この乾留ガスバーナ23について、さらに具体的に説明する。図4に示すように、燃焼室4を構成する内筒20の基端部には、内筒20よりも小径の円筒形状のバーナ筒29が同軸上に配置されている。バーナ筒29の基端部には、フランジ30が設けられ、このフランジ30に外筒21の基端部が接合されて、バーナ筒29と外筒21との間の円筒状空間は、外筒21の基端部において閉塞されている。これと同様に、図示していないが、内筒20と外筒21との間の円筒状空間は、外筒21の先端部においても閉塞されている。
円筒状のバーナ筒29には、その周側壁に複数個の第一開口31,31…が、周方向および軸方向に離間して、それぞれ貫通形成されている。また、バーナ筒29の先端部には、径方向外側へ延出してツバ部32が形成されており、このツバ部32の外周縁が、内筒20の基端部の内周面に当接されている。そして、このツバ部32にも、周方向に等間隔に複数個の第二開口33が貫通形成されている。さらにツバ部32の外周縁と内筒20の内周面との間に僅かに隙間を空けて配置し、その隙間を第二開口33としてもよい。
バーナ筒29は、内筒20の基端部から基端側へ延出して配置されるが、その延出部に貫通形成された開口にガス化室2との接続管34が設けられる。これにより、ガス化室2からの乾留ガスは、接続管34を介してバーナ筒29内へ導入される。また、外筒21の先端部の周側壁に形成した開口(不図示)から供給される燃焼空気は、外筒21と内筒20との隙間を通って、外筒21とバーナ筒29との隙間へ導かれる。そして、その燃焼空気は、バーナ筒29の周側壁に形成された第一開口31や、ツバ部32に形成された第二開口33を介して、バーナ筒29や内筒20内へ導入される。バーナ筒29の基端部には、先端側へ向けて助燃バーナ3が設けられているので、前記バーナ筒29内へ供給された乾留ガスおよび燃焼空気は、混合して助燃バーナ3の火炎により着火され、燃焼室4(内筒20)内で燃焼可能である。
ところで、前記二重の筒体20,21に空気が流れることにより、燃焼室4の冷却を図ることができる。また、筒体20の内面にセラミックファイバー製の円筒体35を挿入することで、断熱している。これにより、燃焼室温度の上昇を可能とし、また筒体20,21の冷却を行うことができ、二重の効果を発揮する。
上述したように、燃焼室4の基端部には、助燃バーナ3が設けられており、燃焼空気路19からの空気が助燃バーナ3の近傍に流入することで、助燃バーナ3からの混合気と乾留ガスの混合が均等かつ良好となり、燃焼性が向上する。しかも、助燃バーナ3の近傍は、ガス化室2と燃焼室4との接続部でもあるので、乾留ガスに空気を効果的に混合することができる。
燃焼室4の先端部には、円筒状の排気筒5が上方へ延出して設けられる。そして、この排気筒5の下端部で、且つ前記燃焼室4の先端部と対面した周側壁には、図1に示すように、燃焼室出口の温度を計測する燃焼室温度センサ24が設けられる。
前記送風機6は、前記着火バーナ1、前記ガス化空気路13、前記助燃バーナ3、および前記燃焼空気路19に共通的に空気を送り込むファンである。本実施例の送風機6は、インバータ制御にて送風圧が一定となるように回転数を制御可能としている。そして、前記送風機6と前記各ダンパ11,14,18,22との間の空間には、その空間内の圧力を計測する圧力センサ25が設けられており、その圧力センサ25の出力に基づき、前記送風機6の回転数を制御可能としている。
前記制御器7は、前記ガス化室2や前記燃焼室4およびそれらに設けた各バーナ1,3への送風量や風圧、および前記各バーナ1,3への補助燃料の供給などを制御する。具体的には、前記各ダンパ11,14,22の駆動手段をそれぞれ制御することで、前記着火バーナ1への空気供給量、前記ガス化空気路13を介した前記ガス化室2への空気供給量、および前記燃焼空気路19を介した前記燃焼室4への空気供給量を変更できる。但し、本実施例では、助燃バーナダンパ18は、所定状態に固定されているので、助燃バーナ3の作動時には一定量の空気が助燃バーナ3に供給される。
また、前記制御器7は、前記圧力センサ25の出力に基づき前記送風機6の回転数をインバータ制御することで、前記送風機6から前記各ダンパ11,14,18,22へ送る空気の風圧を一定にすることができる。さらに、前記各バーナ1,3への補助燃料の供給は、給油ライン(不図示)に設けられた前記電磁弁(不図示)を開閉制御することでなされる。
このような制御は、予め設定された手順(プログラム)に従い、ガス化室2および燃焼室4(排気筒5)に設けた各温度センサ12,24、および圧力センサ25の出力、さらには制御器7自身が把握する経過時間などを用いてなされる。この制御器7による工程制御は、前記温度センサ24による温度制御を基本とし、これに時間制御を付加したものとしている。
つぎに、本実施例の乾留焼却炉の運転について説明する。まず、乾留焼却炉の運転開始に際し、投入扉8を開けて被焼却物をガス化室2内へ投入し、投入扉8を閉めて被焼却物をガス化室2内に収容する。つぎに、あらかじめ決められたプログラムに従い、制御器7により被焼却物の焼却処理がなされる。具体的には、つぎに述べるような基本的焼却作業が通常行われる。
この基本的焼却作業は、バッチ処理であり、このバッチ処理は、図5に示すように、プレパージ工程、予熱工程、着火工程、乾留工程、おき火工程、およびポストパージ工程とからなる。そして、これら作業中には、送風機6を作動させるが、ガス化室2や燃焼室4への各供給空気量は、それぞれに設けたダンパ14,22の停止位置を調節することで設定される。その際、圧力センサ25の出力に基づいて、送風機6の回転数を制御することで、所定の風圧で空気を供給できる。したがって、各工程において所望の送風量を安定して供給することができる。
プレパージ工程は、各バーナ1,3を停止した状態で燃焼空気ダンパ22のみを開けて、燃焼空気路19から燃焼室4内へ空気を送り込むことで、ガス化室2および燃焼室4内の空気を外部へ排出して、安全確保を図る工程である。所定時間だけプレパージ工程を継続した後、予熱工程へ移行する。
予熱工程は、ダイオキシン類を分解することができる温度以上に、燃焼室内を予熱する工程である。より早く温度を上昇させるために、まず、ガス化空気ダンパ14と燃焼空気ダンパ22を閉じた状態で、助燃バーナ3のみを作動させて、燃焼室4内で補助燃料を燃焼させることにより、設定された着火開始温度まで燃焼室4内を予熱する。本実施例では、助燃バーナ3には、所定の補助燃料および空気が一定供給され、燃焼室4内の温度を600〜700℃まで予熱する。燃焼室4内の温度が着火開始温度以上になると、予熱工程と並行して着火工程が開始される。
着火工程は、助燃バーナ3に加えて、着火バーナ1も運転を開始し、その炎でガス化室2内の被焼却物に着火する工程であり、本実施例では予熱工程の一環としても機能する工程である。つまり、ガス化室2内で補助燃料を燃焼させ、しかも前記被焼却物に着火しガス化室に一定の送風量を加えることで廃棄物の発熱を燃焼室の温度上昇に加えて迅速に、燃焼室温度を設定された着火終了温度まで上昇させる。ここでは、着火終了温度として900℃を設定しており、その着火終了温度になるか、あるいは、設定時間だけ着火バーナ1を連続的に作動させた後、着火工程および予熱工程を終了し乾留ガス化工程へ移行する。この着火工程は、被焼却物に確実に着火させて乾留に至らせるためのための工程でもある。この着火工程においては、ガス化空気ダンパ14および燃焼空気ダンパ22は、所定状態に開かれた状態に維持される。
ここで、ガス化空気ダンパ14は、本実施例ではその駆動モータとして一定時間駆動した量分の回転移動量が得られる駆動モータ(たとえばシンクロナスモータ)を使用しており、前記プレパージ工程にて閉止位置まで戻してリミットスイッチなどで原点確認を行っているので、その閉止位置から設定時間だけ励磁して、所望の開放位置に維持すればよい。
乾留工程に入ると、着火バーナ1の作動を停止する。これ以降、着火バーナ1は、乾留ガスの発生を促す必要があるとき作動を再開される。つまり、着火バーナ1は、乾留の状況に応じて作動と停止が調整される。具体的には、着火バーナ1は、乾留ガスの発生が少なくなり、燃焼室4内の温度が800℃以下になると作動を再開して、被焼却物を加熱することにより乾留ガスの発生を促す。そして、燃焼室4内の温度が820℃になると停止する。但し、このような着火バーナ1の作動は、乾留工程の前半に一定時間のみ行われる。
乾留工程において、助燃バーナ3は、一定の燃焼量で作動を継続する。但し、燃焼室温度が燃焼停止温度(ここでは1100℃)を越えると、停止するよう制御する。また、乾留工程中、燃焼室4には継続して、燃焼空気路19から乾留ガスの焼却量に対応する一定量の燃焼空気が供給される。一方、ガス化空気路13を介したガス化室2への空気供給は、燃焼室温度センサ24による燃焼室温度に基づき、ガス化空気ダンパ14を自動調整することでなされる。
乾留工程中、助燃バーナ3の火炎と、ガス化室2からの乾留ガス、および燃焼空気路19からの燃焼空気が、乾留ガスバーナ23(助燃バーナと乾留ガスと燃焼用空気とを含む部分)において混合し、燃焼室4内に燃焼火炎が形成される。この燃焼室の出口に配置された燃焼室温度センサ24は、燃焼室4に充満する火炎の先端温度を検出し、その温度を一定にするようガス化空気ダンパ14の開度調整をすることで、燃焼室4の最大燃焼量にごみ燃焼量を調整することになる。
乾留工程中、ガス化空気路13からガス化室2内への空気供給量は、被焼却物の燃焼量に必要とする理論空気量以下(空気比0.1〜0.2)に制限される。これにより、被焼却物を蒸し焼き状態とし、被焼却物から乾留ガスが発生する。もし、供給空気量を増やすと乾留ガス化量が増加し、場合によっては一定の燃焼空気では空気不足となり、黒煙の発生につながることもある。逆にガス化室2への供給空気量が少ないと、乾留ガス化量が減少し、焼却が遅れることになる。そこで、本実施例では、次に述べるように、ガス化空気ダンパ14を燃焼室温度が一定になるようにガス化空気ダンパ14の開度を自動調整する。
本実施例のガス化空気ダンパ14の開度自動調整は、燃焼室温度センサ24により認識される現在の燃焼室温度Tとその変化勾配Xに基づき行われる。その際、図6に示されるテーブルが使用される。つまり、乾留中の狙い温度を中心に複数の温度範囲を設定する。この狙い温度は、T2とT3との間の幅の中央値を意味する。図6では、T1℃以上、T1〜T2℃、T2〜T3℃、T3〜T4℃、T4℃未満の五つの領域を設定した。また、温度変化勾配(単に温度勾配と称することもできる)Xは、現在と所定時間t1秒前(たとえば10秒前)との温度差により求め、その値がt2(t1よりも小さい)秒以上温度変化勾配比較値(ここではXa℃/sec、Xb℃/sec、−Xc℃/sec、または−Xd℃/sec)を超えるかにより、いずれの温度変化勾配区分に属するかを判定する。図6では、温度変化勾配区分として、Xa℃/sec以上、Xb〜Xa℃/sec、Xb〜−Xc℃/sec、−Xc〜−Xd℃/sec、−Xd℃/sec未満の五つを設定した。
そして、その燃焼室温度Tと温度変化勾配Xに応じて、ガス化空気ダンパ14の駆動用シンクロナスモータの励磁時間を割り当てている。この励磁時間は、燃焼室温度が狙い温度から外れる程、また温度変化勾配が大きい程、長い時間になるように設定される。図6のテーブルにおける数値(ショット数nij(i=1〜5,j=a〜e))に、所定の秒数を掛け算して励磁時間が設定される。本実施例ではショット数nijに、整数値(0を含む)を割り当てている。図6において、nijがマイナスのショット数の場合(この場合図6では−nijと表示)は、ガス化空気路13を閉める方向に、ガス化空気ダンパ14を駆動する場合を示している。逆に、プラスのショット数の場合は、ガス化空気路13を開ける方向に、ガス化空気ダンパ14を駆動する場合を示している。通常、図6においてショット数は、左上(n1a)へ行くほど大きなマイナス値に設定され、右下(n5e)へ行くほど大きなプラス値に設定される。
たとえば、あるnijが−3の場合、所定時間の3倍の時間だけ駆動モータ16を励磁して、ガス化空気ダンパ14を閉める方向に作動することになる。このような制御は、所定の周期で行われるが、燃焼室温度が前記テーブルの上下限温度に達した場合(T1℃以上またはT4℃以下)や、温度変化勾配Xが逆になった場合には、直ちに駆動モータ16を制御するようにしてもよい。また、駆動モータ16の回転方向が切り替わる際には、前記ギアボックス27内の減速用歯車(不図示)のバックラッシを考慮して、その分だけ余分に前記駆動モータ16を駆動する。
このようにして、基本的には、図6のテーブルに従った制御がなされるが、設定された上限温度(T4℃より高温に設定)を超えると、ガス化空気ダンパ14を一旦閉止位置に戻し、燃焼室温度が前記狙い温度になった時点で、前記閉止する直前の元の開度の設定割合(たとえば80%)まで開くよう制御される。この制御は、ガス化空気ダンパ14を一旦閉止位置まで戻す際、その戻し時間を計測しておき、その時間の設定割合だけ駆動モータを励磁して開くよう制御すればよい。
このようにして、乾留工程では、ガス化室2内で乾留ガスを発生させながら、この乾留ガスを燃焼室4内で燃焼させる。その燃焼排ガスは、排気筒5より大気中へ排出される。この乾留工程においては、被焼却物をダイオキシン類の発生が少ない乾留ガス化方式にて焼却処理できる。その際、ガス化室2内で発生したダイオキシン類も、燃焼室4内で熱分解することができる。さらに、燃焼室4内の燃焼において発生したダイオキシン類も、燃焼室4内で熱分解することができる。
前記乾留工程の前記制御により、乾留が安定して行われるが、乾留の進行に伴い、ガス化量が減少し、燃焼室温度を所定に維持できず低下してくる。このようにして、所定の最低乾留工程時間が経過し、設定された移行温度(750℃)まで燃焼室4の温度が低下した後、おき火工程へ移行する。このおき火工程は、乾留ガスが発生した残りの被焼却物,すなわち炭化した状態の被焼却物をおき火の状態(いわゆる「おき」の状態)で燃焼させる工程である。
ところで、このような乾留工程からおき火工程への移行は、適切になされなければならない。乾留中は一定の焼却速度が得られるが、終盤になると焼却速度が低下するので、それに対応した燃焼空気量に調整するために、燃焼空気ダンパを絞る操作を行い、おき火工程へ円滑に移行させなければならない。この移行を適切な時期にせず、移行が遅れると空気過剰によるCOの発生、燃焼不良が発生する。逆に、移行が早すぎると、空気量不足で黒煙の発生が起こることもある。そのために、本実施例では、前記最低乾留時間と前記移行温度が調整されている。
このおき火工程において、助燃バーナ3のみを作動させる。このおき火工程においても、乾留工程のときと同様、燃焼室4からの燃焼排ガスは、排気筒5を介して大気中へ排出される。ところで、おき火工程においては、ガス化空気ダンパ14は原則として灰化に必要な設定開度を維持し、燃焼空気ダンパ22は原則としておき火の被焼却物の焼却量に対応した絞った一定の開度を維持する。
おき火工程の進行に伴い、被焼却物が燃え尽きるので、徐々にガス化室内の温度は低下する。そして、ガス化室2内の温度が所定温度,たとえば350℃以下になるか、設定時間の経過により、被焼却物がほぼ燃焼し尽くしたと判断されるので、ポストパージ工程へ移行する。
ポストパージ工程は、ガス化室2および燃焼室4を冷却する工程である。このポストパージ工程においては、両バーナ1,3をともに停止させ、ガス化空気路13や燃焼空気路19などから空気を導入することにより、ガス化室2および燃焼室4を冷却する。そして、設定時間に亘るポストパージ工程が終了すると、送風を停止し、焼却処理を終了する。
本実施例によれば、特に乾留工程において、助燃バーナ3の燃焼量は小さく保持した状態で、ガス化空気ダンパ14を調整することでガス化量を一定に維持するようにして、燃焼室4の最大燃焼量に調整するので、助燃バーナ3の燃料の節約ができる。また、燃焼室温度とガス化室温度により適正な焼却工程を進行することができるので、従来のタイマーなどで設定する場合のように被焼却物の量や質によって工程時間を変化させる必要がなくなり、完全自動焼却が可能となる。さらに、従前は、ガス化空気ダンパは複数段の切替制御を行っており、それでは工程の切替時に急激にガス化空気量が変動するので、発煙などを発生し易かったが、本実施例によれば、無段階的に制御を行うので、安定した燃焼を可能とする。
なお、本発明の乾留焼却炉およびその運転方法は、上記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、図6のテーブルにおいて、燃焼室温度および温度変化勾配の分け方は、適宜に変更可能である。また、上記実施例において記載した各温度は、一例であることは言うまでもない。
また、前記実施例では、乾留工程からおき火工程への移行は、最低乾留工程時間が経過し且つ燃焼室4が移行温度まで低下することを条件としたが、ガス化室2へ供給すべき空気量に基づいておき火工程への移行を判定してもよい。これは、乾留の進行に伴いガス化室2へ供給すべき空気量が増大するので、この供給空気量が設定値を超えると、乾留終盤と判定するのである。本実施例では、ガス化空気ダンパ14が、ガス化空気路13を全開とする位置まで開かれると、乾留終盤と判定する。
図7は、このようなおき火判定をなすためのガス化空気ダンパ14の概略斜視図である。本実施例も基本的には、前記実施例と同様の構成であるから、以下では両者の異なる点を中心に説明し、また対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
図7の実施例も、前記図2および図3と同様に、ガス化空気路13を構成する管路の中途に、その管路の直径よりも大きなボックス26を介在させている。図7では、直方体形状のボックス26の上下面に、それぞれ管体36,37が接続されており、全体としてガス化空気路13が構成されている。そして、少なくとも一方の管体(図7では下側の管体)37は、ボックス26の内部へ突出して配置されており、この突出部の先端面に、板状のガス化空気ダンパ14が開閉可能に設けられる。
本実施例のガス化空気ダンパ14も、前記管体37の長手方向と垂直な回転軸15まわりに、駆動モータ16により回転可能とされた板材である。このガス化空気ダンパ14は、前記ボックス26内において、ガス化空気路13を構成する管体37の端面に蓋をするよう当接する位置まで閉鎖可能である。前記回転軸15は、板状のガス化空気ダンパ14の一側端部に配置されている。そして、駆動モータ16の回転が、ギアボックス27内に収容された減速歯車(不図示)を介して回転軸15に伝達されることで、ガス化空気ダンパ14が回転される。この回転軸15の回転角度を制御して、ガス化空気ダンパ14の停止位置を調節することで、ガス化空気路13からガス化室2へ供給する空気量を調整できる。
ガス化空気ダンパ14が前記管体37の端面に蓋をする全閉位置と、ガス化空気ダンパ14が前記管体37の端面から設定分だけ開かれた全開位置とは、マイクロスイッチ38,39により検出される。ここで、ガス化空気ダンパ14の全開位置は、送風圧や弁サイズなどにより異なるが、たとえば全閉状態から回転軸15まわりに数度から10度程度開いた位置に設定される。
本実施例では、前記ボックス26の側壁外面に、全閉用と全開用の二つのマイクロスイッチ38,39を上下に離間して設けている。そして、前記回転軸15から径方向外側へ延出して、棒状の操作アーム40を設け、この操作アーム40の先端部にて各マイクロスイッチ38,39を操作することで、ガス化空気ダンパ14の全閉位置と全開位置とが検出される。つまり、ガス化空気ダンパ14が全閉位置にくると、操作アーム40の先端部が全閉用マイクロスイッチ38を操作して、ガス化空気路13が閉じられたことが検出される。逆に、ガス化空気ダンパ14が設定まで開かれると、操作アーム40の先端部が全開用マイクロスイッチ39を操作して、ガス化空気路13が設定まで開かれたことが検出される。これら検出信号は、制御器7に送られ、ガス化空気ダンパ14の閉止または全開が認識される。
ガス化空気ダンパ14の全開の検出は、乾留工程からおき火工程への移行判定に利用される。つまり、ガス化空気ダンパ14が全開となった時点、またはそれから所望の時間遅れをもたせて(具体的には数分程度の所定時間経過後)、前記燃焼空気ダンパ22を絞っておき火工程へ移行する。これら制御は、制御器7にて行われる。