JP4223667B2 - 磁気ディスク装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボイスコイルモータ(以下、VCMと略す)を用いて位置決めを行なう磁気ディスク装置に係り、VCMの逆起電圧を用いて行う速度制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
VCMの逆起電圧検出器は、例えば、特開平11−25625号公報に開示されているように、非動作時に磁気ヘッドを円板面の退避エリアへ退避させる機構を持つ、いわゆるロードアンロード方式の磁気ディスク装置において、磁気ヘッドのロード・アンロード時の速度制御に用いられている。従来方式の逆起電圧検出手段としては、図2に示すようにVCMコイル端子電圧からVCM駆動電流に比例する電圧を減算する方式が広く知られている。図において、VCMコイル1は図示のように抵抗値Rmの抵抗4、インダクタンス値Lmのインダクタンス5、それと検出すべき逆起電圧6の3つの要素の直列接続としてモデリングできる。VCMコイル1は電流検出用抵抗3と直列に図示しないドライバ回路に接続され、ドライバ回路により電流2が制御される。このような回路においてオペアンプ26に接続されている抵抗27、28の抵抗値R1、R2をRm=R2/R1×Rsを満たすような値に取り、オペアンプ29に接続されている抵抗30〜33の抵抗値R3、R4の比をG=R4/R3と置くと、検出される逆起電圧信号Bemf_hは次式で表わすことができる。
【0003】
【数1】
Figure 0004223667
【0004】
(数1)式による、従来の逆起電圧検出器の測定原理について、図9に示したブロック図を用いて、更に詳しく説明する。ここにおいてVCMコイルは、抵抗RmとインダクタンスLmと検出すべき逆起電圧Bemfの直列接続でモデル化できることは上述の通りである。このVCMコイルのインピーダンスZはRm+sLmで表わすことができる。ここでsは微分演算子である。ブロック112は[VCMコイル端子電圧Vs]⇒[VCMコイル電流Im]の変換係数、すなわち、VCMコイルのインピーダンスの逆数を表わしている。
【0005】
104はVCMコイル電流Imであり、このImは、101のVCM端子電圧Vsと、アクチュエータの移動によって生ずる102の逆起電圧Bemfとの差分電圧(103)に、VCMコイルのインピーダンスの逆数を乗じた形で表わすことができる。
【0006】
従来技術の逆起電圧検出器では、このVCMコイル電流Im(104)から、VCMコイルの抵抗Rmによる電圧降下Vrm(105)を算出し、この電圧降下分をVCM端子電圧(101)から差し引くことにより逆起電圧信号Bemf_h(106)を求めるというものであった。このブロック図において、ブロック113は[VCMコイル電流Im]⇒[VCMコイル抵抗値による電圧降下Vrm]の変換係数、すなわち、VCMコイルの抵抗値Rmを表わしている。
【0007】
以上の原理的流れにより、次に示す(数2)式が得られる。
【0008】
【数2】
Figure 0004223667
【0009】
この原理式を、図2に示す実際の従来方式の逆起電圧検出器の回路と対応させると、先に示した(数1)式が得られる。
【0010】
このように、従来方式では逆起電圧検出値にはVCMコイル電流Imの微分に比例する項が含まれる。すなわち、(数1)式の右辺の括弧内第二項sLm・Imはラプラス変換表示の微分演算子sを含み、この項はVCMコイル電流Imの微分に比例する項となる。よって、VCMコイル電流Imが変化している時、および変化した直後にはこの微分項による過渡応答のため正しい逆起電圧を検出することができない。このため、この逆起電圧検出器を用いたロードアンロード制御系では制御サンプル周期を十分に大きく取る(例えば700マイクロ秒(μs))ことでこの微分項による過渡応答を整定させ、この影響を排除していた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来方式の逆起電圧検出器における制御サンプル周期の制約は、逆起電圧信号の利用範囲を狭めている。逆起電圧は速度に比例するため、これを信号品質の良い状態で、すなわち、上記の微分項による過渡応答の問題なく、高速制御サンプル周期下の高速な電流変化にも影響を受けずに、逆起電圧を検出できれば前述のロード・アンロード制御以外にも種々の制御への応用が可能となり、その利用価値は高い。他の利用法としては、例えば、通常動作中の逆起電圧監視による磁気ヘッド位置決め制御系の異常動作の検出、および異常動作検出時の逆起電圧を用いたブレーキ制御などの用途が考えられる。
【0012】
しかし、近年の磁気ディスク装置の制御サンプル周期は大きいものでも200マイクロ秒(μs)以下であり、小さいものになると100マイクロ秒(μs)以下となる。このため、サンプリング周期が700μs程度の従来の逆起電圧検出器は、通常位置決め動作時に速度信号として利用することができないという問題があった。以上の点に鑑み、本発明は高品質な逆起電圧信号、すなわち、上記の微分項による過渡応答の問題なく、高速制御サンプル周期下の高速な電流変化にも影響を受けずに、逆起電圧信号を検出することができる逆起電圧検出器を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明では上記目的を達成するため、VCMによりアクチュエータを駆動して位置決めを行なう位置決め装置であって、VCMコイルに生ずる逆起電圧を検出する手段として、VCMコイルの端子電圧を検出し、その値を定数倍かつ帯域制限した信号を出力する第1の回路手段と、ボイスコイルモータの駆動電流を検出し、前記駆動電流に比例した電圧信号を出力する第2の回路手段と、前記第1の回路手段の出力と前記第2の回路手段の出力の差分を取る演算手段を設ける。第1の回路手段は、従来方式で問題となっていたVCMコイル電流の微分に比例する項を排除する効果を持っている。
【0014】
また、第1の回路手段を1次のアナログローパスフィルタとし、その時定数がVCMコイルのインダクタンス値と抵抗値との比に略等しいように構成する。この構成により、逆起電圧の検出演算が容易となる。
【0015】
また、第1の回路手段が持つ帯域制限手段が1次のディジタルローパスフィルタであって、その時定数がVCMコイルのインダクタンス値と抵抗値との比に略等しいように構成している。この構成により、逆起電圧の検出演算が容易となる。
【0016】
また、ローパスフィルタは、このフィルタのゲインを規定する抵抗と、フィルタの時定数を規定するコンデンサとがICチップの外に実装され、かつ、第2の回路手段及び演算手段がオペアンプを用いた係数アンプであって、この係数アンプのゲインを規定する抵抗がICチップの外に実装される。この構成により、フィルタ及び係数アンプのゲイン、ならびに、前記フィルタの時定数調整の余裕を大きくすることができる。
【0017】
また、VCMにより磁気ヘッドを有するアクチュエータを駆動し、ヘッドをディスク上に位置決めする磁気ディスク装置であって、VCMコイルの端子電圧を検出し、その値を定数倍かつ帯域制限した信号を出力する第1の回路手段と、ボイスコイルモータの駆動電流を検出し、駆動電流に比例した電圧信号を出力する第2の回路手段と、第1の回路手段の出力と第2の回路手段との出力の差分を取る演算手段とからなるVCMのコイル逆起電圧を検出する逆起電圧検出器を有しており、逆起電圧検出器にて検出された逆起電圧を用いたフィードバック制御系によりアクチュエータに速度制御する機能を設けている。逆起電圧検出器としては上記の記載の検出器を用いる。この構成により、磁気ディスク装置における磁気ヘッドの速度制御を実現することができる。
【0018】
また、本発明を含むVCM駆動回路により、外付けのオペアンプ回路無しで逆起電圧検出器を構成することが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0020】
図1は、本発明による逆起電圧検出器の第1の実施の形態を示している。VCMコイル1は図示のように抵抗値Rmの抵抗4、インダクタンス値Lmのインダクタンス5、それと検出すべき逆起電圧6の3つの要素の直列接続としてモデリングできる。VCMコイル1は電流検出用抵抗3と直列に図示しないドライバ回路に接続され、ドライバ回路により電流2が制御される。
【0021】
VCMコイル2の両端は、オペアンプ12、抵抗13、14、16、17、コンデンサ15、18により構成されるローパスフィルタに接続されている。このローパスフィルタが本発明の第1の回路手段の一例である。
【0022】
このローパスフィルタはゲインA1=R4/R3、フィルタ時定数Tm=C×R4の1次のローパスフィルタである。ゲインA1は、VCMコイル2に印加可能な最大電圧に対してもオペアンプ12の出力値が飽和しないように選ぶ。また、フィルタ時定数TmはTm=Lm/Rmが成立つようにC、R4を選ぶ。
【0023】
電流検出抵抗3の両端には、オペアンプ7、抵抗8、9、10、11により構成される係数アンプが接続されている。この係数アンプが本発明の第2の回路手段の一例である。
【0024】
この係数アンプのゲインはA2=R2/R3であり、A2=A1×Rm/RsとなるようにR2、R3を選ぶ。オペアンプ7、12の出力はオペアンプ19、抵抗20、21、22、23により構成される減算アンプに接続されている。この減算アンプが本発明の演算手段の一例である。
【0025】
減算アンプ出力Bemf_hは、リファレンス電圧VrefによってAD変換器24の入力レンジの中心にシフトされており、減算アンプのゲインA3は、逆起電圧6のダイナミックレンジに対し、G×Bemf+VrefがAD変換器24の入力レンジに収まるように選ぶ。以上のような回路構成により、オペアンプ19の出力Bemf_hは次の(数3)式で表わされる。
【0026】
【数3】
Figure 0004223667
【0027】
(数3)式により、オペアンプ19の出力信号Bemf_hは、逆起電圧6をゲインG倍し、時定数Tmの1次遅れ要素で帯域制限した信号であることが分かる。本発明の出力信号を表わす(数3)式を従来技術の逆起電圧検出器の出力信号を表わす(数1)式と比較すると(数3)式には電流の微分項に比例する誤差要因がなく、帯域制限によりノイズ低減された理想的な逆起電圧信号であり、高速サンプル検出が可能である。オペアンプ19の出力信号Bemf_hはAD変換器24によって符号化され、マイクロコンピュータ25に取り込まれ、VCMの速度制御に利用される。
【0028】
ここにおいて、本発明において用いている(数3)式の導出の流れについて、詳しく説明を加える。従来技術の逆起電圧検出器がVCMコイル電流の微分項を含み、高速サンプリング時に先に述べたごとき欠点を有する原因は、従来検出器がVCMコイル電流による電圧降下を見積もる時にVCMコイルのインダクタンスを無視している点にある。
【0029】
図10には、VCMコイル電流による電圧降下を見積もる時にVCMコイルのインダクタンスを考慮した逆起電圧検出器のブロック図を示す。図10において、図9と同一の部分には同じ符号を付している。この検出器では、図9におけるブロック113の抵抗Rmの代わりに、ブロック114としてVCMコイルのインピーダンスRm+sLmを用いている。ブロック114はブロック112の逆特性であるから、信号103と信号107、信号108と信号102とは明らかに等しくなる。ここで信号102は逆起電圧Bemfである。
【0030】
信号108はブロック115の一次ローパスフィルタ(時定数Tm)により、検出ノイズがカットされ、逆起電圧信号109が得られる。以上の流れにより検出される逆起電圧Bemf_hは(数4)式で表わすことができる。
【0031】
【数4】
Figure 0004223667
【0032】
しかしながら、図10で示した構成はブロック114の部分に微分要素を含むため、実際には実現が難しいという問題がある。
【0033】
これに対し、本発明の検出器はこの問題を解決したものである。すなわち、図11のブロック図に示したように、本発明の逆起電圧検出器は、図10において、ブロック115のローパスフィルタの時定数TmをTm=Lm/Rmとした時と等価な逆起電圧検出器を微分要素無しで、構成することができる。
【0034】
【数5】
Figure 0004223667
【0035】
すなわち、ブロック図から、Bemf_hはまず(数5)式の第1の等号で示す式で表わされ、順次これを展開して行くことにより、最後の等号で表わされる式により、本ブロック図、すなわち、本発明の逆起電圧検出器による検出値Bemf_hは、図10の逆起電圧検出器において、Tm=Lm/Rmとした場合の値に等しいことが示された。
【0036】
この原理式を実際の本発明の回路図である図1と対応させることにより数2が得られる。
【0037】
図3は、本発明による逆起電圧検出器の第2の実施の形態を示している。本例では第1の実施の形態においてオペアンプ19を用いて行なっていた回路演算を、マイクロコンピュータ内の数値演算として行なっているところが特徴である。以下、構成要素について説明する。
【0038】
図3において、図1と共通の要素に関しては同一符号を用いている。VCMコイル2の両端は、第1の実施の形態と同様、オペアンプ12、抵抗13、14、16、17、コンデンサ15、18により構成されるゲインA1’=R4’/R3’、フィルタ時定数Tm=C’×R4’の1次ローパスフィルタに接続されている。このローパスフィルタが本発明の第1の回路手段の例である。
【0039】
ゲインA1’、リファレンス電圧Vrefは、VCMコイル2に印加可能な最大電圧に対してもマイクロコンピュータ34内のAD変換器37の入力レンジを超えないように選ぶ。フィルタ時定数Tmは第1の実施の形態と同様、Tm=Lm/Rmが成立つようにC’、R4’を選ぶ。
【0040】
電流検出抵抗3の両端には、オペアンプ7、抵抗8、9、10、11により構成される係数アンプが接続されている。この係数アンプは本発明の第2の回路手段の例である。
【0041】
この係数アンプのゲインはA2’=R2’/R3’であり、A2’=A1’×Rm/RsとなるようにR2’、R3’を選ぶ。オペアンプ7、12の出力はスイッチ35を用いてマイクロコンピュータ34内のAD変換器37にて符号化され、スイッチ36、サンプラ38、39によってサンプリングされる。スイッチ35と36、サンプラ38、39は連動しており、オペアンプ7の出力をサンプリングする時はスイッチ35、36がそれぞれa側、a’側に接続されてサンプラ39が起動し、オペアンプ12の出力をサンプリングするときはスイッチ35、36がそれぞれb側、b’側に接続されてサンプラ38が起動する。サンプリングされたオペアンプ7、12の出力は演算手段であるマイクロコンピュータ34内で減算され、逆起電圧信号Bemf_hが得られる。
【0042】
図4は本発明による逆起電圧検出器の第3の実施の形態を示している。本例では第2の実施の形態においてオペアンプ12を用いて行なっていたVCMコイル2の端子電圧の帯域制限演算を、マイクロコンピュータ内のディジタルフィルタで行なっているところが特徴である。本実施例においては、オペアンプ12、抵抗13,14,16,17、及び、マイクロコンピュータ内のディジタルフィルタ40により、本発明の第1の回路手段を構成している。第2の回路手段は前記図3における第3の実施形態の場合と同様である。
【0043】
オペアンプ回りの回路の相違点はオペアンプ12に接続されていたコンデンサ15、18がないことだけであり、ゲイン、すなわち抵抗8〜11、抵抗13、14、16、17の値は第2の実施の形態の場合と同じである。スイッチ35、36、AD変換器37、サンプラ38、39も第2の実施の形態で説明したのと同様な動作でオペアンプ7、12の出力を取り込み、符号化する。オペアンプ12の出力はサンプリングの後、ディジタルフィルタ40により帯域制限され、オペアンプ7の出力のサンプリング値とは演算手段マイクロコンピュータ34内で減算され、逆起電圧信号Bemf_hが得られる。
【0044】
図5は本発明による逆起電圧検出回路を用いて速度制御を行なう磁気ディスク装置の実施の形態を示している。図において、57はデータを記録する磁気ディスクであり、図示しないスピンドルモータによってディスク中心58を中心に一定速度で回転するように制御されている。磁気ディスク57に対し、データの読み書きを行なう磁気ヘッド59は、アクチュエータアームおよびサスペンション60によって支持されており、VCM62の発する駆動力によってアクチュエータ回転中心61を中心に回転し、図示しない所望のデータトラックへ移動できる。上記これらの構成要素は、ハウジング56に収められ密閉されている。50はVCMドライバであり、信号線52を介してVCM62の制御を行なっている。オペアンプ55の回路はVCM62の端子電圧を帯域制限するためのローパスフィルタ回路である。このローパスフィルタが本発明の第1の回路手段に相当する。
【0045】
このローパスフィルタのゲイン、リファレンス電圧Vrefは、VCM62に印加可能な最大電圧に対してもマイクロコンピュータ41内のAD変換器47の入力レンジを超えないように選ぶ。オペアンプ55の出力は、スイッチ45、46をそれぞれb’側、b側にオンしてAD変換器47によって符号化され、サンプラ49によって演算手段であるマイクロコンピュータ41内に数値として取り込まれて信号63となる。VCMドライバ50は、VCM62に流れる電流を電流検出用抵抗51にて検出し、電流検出信号66を出力するオペアンプ回路54を持ち、電流指令値65と電流検出信号66を比較し電流制御を行なう電流制御回路67を有している。電流検出信号66は、スイッチ45、46をそれぞれa’側、a側にオンしてAD変換器47によって符号化され、サンプラ48によってマイクロコンピュータ41内に取り込まれる。取り込まれた値は定数ゲイン44によりG倍され、信号64となる。
【0046】
このようにしてマイクロコンピュータ41内の信号として読み込まれた信号63、64の差分演算により、逆起電圧検出信号Bemf_hが算出される。逆起電圧検出信号Bemf_hは、目標逆起電圧Tbemfと差分量が演算され、その差分量からディジタル補償器42にて操作量が計算されDA変換器43に送られる。DA変換器43の出力である電流指令値65はVCMドライバ50内のVCMコイル電流制御回路67により電流に変換され、VCM62を駆動する。以上の構成において、目標逆起電圧Tbemf=0にするとポジション信号を用いないでアクチュエータにブレーキをかける制御をかけることができる。また、Tbemf≠0とすると、ロードアンロード方式の磁気ディスク装置におけるロードアンロード動作の際の速度制御と同様の速度制御が行なうことができる。また、従来の逆起電圧検出器よりも信号品質の高い、すなわち、上記の微分項による過渡応答の問題なく、高速制御サンプル周期下の高速な電流変化にも影響を受けずに検出された逆起電圧信号を用いることにより、速度制御系のサンプリング周期を小さくし、制御帯域を向上することが可能な優れた速度制御系を構成することが可能となる。
【0047】
以上の実施例において用いた回路はICチップとして実装される。ただし、第1の回路手段を構成し、ゲインを規定する抵抗及び該フィルタの時定数を規定するコンデンサ、並びに、第2の回路手段および演算手段を構成する係数アンプのゲインを規定する抵抗は、ゲイン及び時定数調整の裕度確保のため、ICチップの外に実装されることが望ましい。
【0048】
図6及び図7には、本発明の効果をより明確に示すため、本発明の方式(図1)と、本発明の回路から第1の回路手段における帯域制限手段を除いた逆起電圧検出器(図8)を磁気ディスク装置に適用した際に得られる逆起電圧信号の応答波形をそれぞれ示した。図8は図1からコンデンサ15,18を取り除いた回路であり、図2の従来技術である逆起電圧検出器と同じ動作をする。この例に用いた磁気ディスク装置の制御サンプリング周期は約50μsである。図6、図7の両図は、シーク動作中の応答波形であり、VCMアクチュエータは、領域Iで加速、領域IIで等速度運動、領域IIIで減速している。逆起電圧は速度に比例するため、この動作において逆起電圧が正しく検出されていれば、その波形は台形状になる。
【0049】
図6は、本発明による逆起電圧の応答波形である。波形124は第1の回路手段によって帯域制限されたVCM端子電圧信号、波形122は第2の回路手段の出力、すなわちVCMコイルの抵抗電圧降下信号を示している。波形124と波形122の差分である逆起電圧検出信号123は、ほぼ台形状の波形を示しており、約50μsという高速制御サンプル周期下の高速な電流変化にも影響を受けずに安定して逆起電圧が検出できていることがわかる。
【0050】
図7は本発明の第1の回路の帯域制限手段を除いた逆起電圧検出器の応答波形である。波形121は帯域制限されていないVCM端子信号、波形122は図6と同様にVCMコイルの抵抗電圧降下信号を示している。波形121と波形122の差分である逆起電圧信号120は、VCM電流の微分項に起因する過渡応答が顕著に現れており、かかる短周期の制御周期においては、安定した逆起電圧測定が困難であることがわかる。
【0051】
本比較の結果により、本発明の方式は磁気ディスク装置の磁気ヘッドの速度制御において必要な高速制御性を可能とする方式であることがわかる。
【0052】
以上、図面を用いて本発明の望ましい実施の形態について述べた。これらの実施の形態は本発明を実現する手段の例に過ぎず、本発明の一般性を限定するものではない。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、VCM型アクチュエータ駆動時に生ずる逆起電圧を,高速制御サンプル周期下の高速な電流変化にも影響を受けずに検出でき、これを用いて高速・高帯域な速度制御系を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による逆起電圧検出器の第1の実施の形態を示す図である。
【図2】従来方式の逆起電圧検出器の形態を示す図である。
【図3】本発明による逆起電圧検出器の第2の実施の形態を示す図である。
【図4】本発明による逆起電圧検出器の第3の実施の形態を示す図である。
【図5】本発明による逆起電圧検出回路を用いた磁気ディスク装置の実施の形態を示す図である。
【図6】本発明による逆起電圧検出回路を用いて検出した出力信号波形の一例を示す図である。
【図7】本発明による逆起電圧検出回路において第1の回路手段から帯域制限回路を除いた方式により検出した出力信号波形の一例を示す図である。
【図8】本発明による逆起電圧検出回路から第1の回路手段から帯域制限回路を除いた方式としての逆起電圧検出回路を示す図である。
【図9】従来の逆起電圧検出器の測定原理を示すブロック図である。
【図10】逆起電圧検出器の測定において、VCMコイル電流による電圧降下を見積もる時に、VCMコイルのインダクタンスをも考慮した場合の測定原理を示すブロック図である。
【図11】本発明の逆起電圧検出器の測定原理を示すブロック図である。
【符号の説明】
1…VCMコイル、2…VCM電流、3、51…電流検出用抵抗、4…VCMコイル抵抗、5…VCMコイルインダクタンス、6…VCM逆起電圧、7、12、19、26、29、54、55…オペアンプ、8〜11、13、14、16、17、20〜23、27、28、30〜33…抵抗、15、18…コンデンサ、24、37、47…AD変換器、25、34、41…マイクロコンピュータ、35、36、45、46…切替えスイッチ、38、39、48、49…サンプラ、40…ディジタルローパスフィルタ、42…ディジタル補償器、43…DA変換器、44…定数ゲイン、50…VCMドライバ、51…スピンドル制御信号線、52…VCM制御信号線、56…磁気ディスク装置の筐体、57…磁気ディスク、58…磁気ディスク回転中心、59…磁気ヘッド、60…アクチュエータアームおよびサスペンション、61…アクチュエータ回転中心、62…ボイスコイルモータ、63…電流指令値、64…電流検出値、65…電流制御回路、101…VCM端子電圧、102…逆起電圧、103…差分電圧、104…VCMコイル電流、105…電圧降下、106…逆起電圧信号、112、113、114、115、116…ブロック、107、108、110…信号、109、111…逆起電圧信号、120、123…逆起電圧信号、121…VCM端子電圧信号、122…VCMコイル電圧降下信号、124…帯域制限されたVCM端子電圧信号。

Claims (6)

  1. ボイスコイルモータによりアクチュエータを駆動して位置決めを行なう磁気ディスク装置において、
    前記ボイスコイルモータのインダクタンス値Lmと抵抗値Rmとの比Lm/Rmに略等しい時定数を有し、前記ボイスコイルモータのコイル端子電圧を検出し、前記ボイスコイルメータのコイル端子電圧を定数倍かつ帯域制限した信号として出力する第1の回路手段と、
    前記ボイスコイルモータの駆動電流を検出し、前記駆動電流に比例した電圧信号を出力する第2の回路手段と、
    前記第1の回路手段の出力と前記第2の回路手段の出力の差分を取る演算手段とを有する逆起電圧検出器を有することを特徴とする磁気ディスク装置。
  2. 前記逆起電圧検出器において、前記第1の回路手段が1次のアナログローパスフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク装置。
  3. 前記逆起電圧検出器において、前記第1の回路手段が1次のディジタルローパスフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク装置。
  4. 前記逆起電圧検出器において、前記第1の回路手段が請求項2又は3記載のローパスフィルタであって、該フィルタのゲインを規定する抵抗と、該フィルタの時定数を規定するコンデンサがICチップの外に実装されることを特徴とする請求項2又は3に記載の磁気ディスク装置。
  5. 前記逆起電圧検出器において、前記第1の回路手段が請求項2ないし3記載のローパスフィルタであって、該フィルタのゲインを規定する抵抗と、該フィルタの時定数を規定するコンデンサがICチップの外に実装され、かつ、前記第二の回路手段及び前記演算手段がオペアンプを用いた係数アンプであって、該係数アンプのゲインを規定する抵抗がICチップの外に実装されることを特徴とする請求項2又は3に記載の磁気ディスク装置。
  6. 前記逆起電圧検出器にて検出された逆起電圧信号を用いたフィードバック制御系によりアクチュエータを速度制御する機能を持つことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の磁気ディスク装置。
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