本発明は、プリント配線板表面に表面処理として電気メッキ法を用いてメッキを行う際に用いられるものであり、メッキ層厚が問題となるものに利用できるメッキリード評価プログラム、このメッキリード評価プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えた評価装置、およびこれらメッキリード評価プログラムまたは評価装置を用いて設計されたプリント配線板に関する。
一般に、プリント配線板の表面には、部品実装用ランドや、他のユニットとの接続用の端子、摺動・接触接点用パターンなどが形成されている。これらの端子およびランドの表面は、導体(通常は銅が用いられる)そのものではなく、酸化防止のために、何らかの表面処理が成されていることが一般的である。
そして、通常、接触抵抗や耐候性が問題となる部位には金メッキ処理が施されており、部品の半田付けが行われる部位には半田メッキ処理が施されており、その他、防錆処理等が施されている場合がある。
さらに、多くの場合、このメッキ処理の工程には、電気メッキ法が使用されるため、他の配線パターンと同様な手法で、メッキリードが端子やランドからプリント配線板上に引き回されている。最終的には、このメッキリードが、プリント配線板の製品外に設定されたメッキ電流供給ラインを介してメッキ電流供給源に接続されており、メッキ電流供給ラインを介してメッキリードにメッキ電流を印加することで、電気メッキを行っている。
従来、端子および部品実装用のランドを形成するときに、プリント配線板上に形成された導体に対して実施される表面処理としての、金や半田を用いたメッキ処理の工程においては、メッキを行うか否かとラフなメッキ層の厚さの指定とのみが行われており、端子やランドの1個1個について厳密に厚さを指定することはまれである。従って、メッキリードのチェックを機械的に処理する方法が提案されていても、メッキリード付プリント配線板用のパターンフィルム作成用データ検査方法(例えば、特許文献1参照)のように、接続しているか否かをチェックするにとどまっていた。
しかし、液晶などの表示装置とプリント配線板との接続のような、多PIN(ピン)の同時接続を行う場合や、摺動接点としてプリント配線板上のランドを使う場合には、隣接するメッキ層間の厚み差が問題になるケースが出てきた。
メッキ層厚を正確にコントロールするためにはメッキリードの引き回しを詳細に検討することが必要である。従来より、メッキリードの引き回し法の改善策として、メッキリードの引き回しを均一化して改善する方法(例えば、特許文献2,3)が提案されている他、摺動端子自体を埋め込んで表面の凹凸を無くした平滑基板を採用する方法や、調整用パターンを設けて改善する方法(例えば、特許文献4参照)等が提案されている。
特開昭63−188267号公報
特開平5−315730号公報
特開昭63−104399号公報
特開平3−173494号公報
しかしながら、回路やランドの配置状況から、メッキリードをこのように希望する通りの方法で引き回す方法がいつも適用できるとは限らず、さらに、コストも高くつく場合が多く、また、具体的なメッキリードの引き回しに関する簡単で有効な評価方法もなかったといった問題があった。
ここで、隣接する摺動端子間のメッキ層厚の差が問題となるケースについて、図面を参照しつつ説明する。
図13は、従来のプリント配線板におけるメッキリードの引き回しの一例を示す平面図である。
プリント配線板100表面に設けられた導体101a,102aは、メッキリード103,104によって、製品外に設けられた電気メッキ用の電流供給ライン105に接続されている。本例においては、メッキリード103,104それぞれの長さや線幅はほとんど同じであり、導体101a,102aの面積にも大差がないため、これら導体101a,102aに電気メッキ工程にて、ニッケルメッキまたは金メッキを施した場合、導体101a,102a上に形成されるメッキ層(ニッケルメッキ層や金メッキ層)の厚さに大きな差は生じない。
しかし、プリント配線板のパターン配置の都合によって、メッキリードの引き回しに制約が生じることも多い。続いて、このような制約が生じているケースについて、図面を参照しつつ説明する。
図14は、従来の従来のプリント配線板におけるメッキリードの引き回しの他の例を示す平面図である。
本例では、メッキリード106の長さが、メッキリード107に比べかなり長くなっている上、途中にスルホール601,602が存在している。
このような場合、メッキリード106の導通抵抗とメッキリード107の導通抵抗との間には、大きな差ができることになる。その結果、一般に知られる通り、メッキリード106に接続されている導体102a表面に付くメッキ層の厚さが薄くなってしまうといった問題が生じる。
図15は、各導体に接続されているメッキリードの導通抵抗間に差がある状態でメッキ工程を実施した場合のメッキ層の状態の一例を示す断面図である。
2つの摺動端子101,102のうちの、一方の摺動端子(図面において左側に示されている摺動端子)101は、プリント配線板100上に形成された導体101aと、メッキ工程を実施することにより導体101aの上に順次形成された下地ニッケルメッキ層1101bと金メッキ層101cとからなる。また、他方の摺動端子(図面において右側に示されている摺動端子)102は、プリント配線板100上に形成された導体102aと、メッキ工程を実施することにより導体102aの上に順次形成された下地ニッケルメッキ層102bと金メッキ層102cとからなる。
これら摺動端子101,102の各メッキ層の厚さを比較すると、下地ニッケルメッキ層101b,102b、金メッキ層101c,102cともに、一方の摺動端子101を構成する下地ニッケルメッキ層101bおよび金メッキ層102bの方が厚い。そのため、摺動端子101の厚さT101は、摺動端子102の厚さT102よりかなり大きくなっている。
このような状態で摺動端子101,102が使用された場合、摺動端子101と摺動端子102との高さが異なるため、摺動子108が摺動端子101,102の表面をこするときに、摺動子108が摺動端子102から摺動端子101の方向に動くと、摺動子108が摺動端子101の角P101にぶつかり、摺動端子101に乗り上げる形となり、角P101を削ったり痛めたりするといった問題が生じていた。
また、逆に、摺動子108が摺動端子101から摺動端子102の方向に動くと、摺動子108が落ちる形になり、摺動端子102の角P102を打ち、摺動端子102を痛めることになる。同時に、摺動子108自体も痛むといった問題が生じていた。
これらの理由により、隣接するメッキ層の厚さが異なっている場合には、摺動接点の寿命や接触信頼性に関して大きな影響を受けることになる。
また、一般に被メッキ面積が増えた場合、同じ時間に同じ厚さのメッキを付けようとすれば、メッキ面積にほぼ比例した電流量を各被メッキ部に与えなければならないが、この点については、現在、メッキリードの引き回しを行うだけで精一杯であり、現実的には、考慮されていないのが現実である。
本発明は係る実情に鑑みてなされたもので、その目的は、メッキ膜厚のコントロールができることや、引き回しのチェックが容易にできることにより、製品の品質・信頼性向上に寄与することができるメッキリード評価プログラム、このメッキリード評価プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えた評価装置、およびこれらメッキリード評価プログラムまたは評価装置を用いて設計されたプリント配線板を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明のメッキリード評価プログラムは、プリント配線板表面に予め形成されている導体表面に電気メッキ法にてメッキを行うことによってメッキ層を設けて端子および/またはランドを形成する際に用いられるメッキリード評価プログラムであって、メッキリードの引き回しパターンの設計図に基づき、被メッキ導体とメッキ電流供給源との間に直接接続されているパターンのデータ、ならびに接続されていることが検出されたスルーホールおよび/またはビアホールを示すデータに接続属性を設定する工程と、この設定結果に基づき導通抵抗の値を評価する工程と、この評価結果に基づきメッキリードの引き回し経路が不適合であるか適合であるかを判断する工程と、不適合であると判断した場合にメッキリードの引き回し経路を変更する工程とをコンピュータに実行させるメッキリード評価プログラムものである。
また、前記導通抵抗の値を評価する工程において、メッキリード中に存在するスルホールおよび/またはビアホールの個数で評価を行ってもよい。
また、前記導通抵抗の値を評価する工程において、メッキリード中に存在するスルホールおよび/またはビアホールの個数と、これらスルホールおよび/またはビアホールの導通抵抗とで評価を行ってもよい。
また、前記導通抵抗の値を評価する工程において、メッキリード自体の導通抵抗で評価を行ってもよい。
また、前記導通抵抗の値を評価する工程において、メッキリード中に存在するスルホールおよび/またはビアホールの個数と、これらスルホールおよび/またはビアホールの導通抵抗と、メッキリード自体の導通抵抗とのうちの少なくとも2つを選択して組み合わせて評価を行ってもよく、さらに、前記導通抵抗の値を評価する工程において、被メッキ導体の被メッキ面積も組み合わせて評価を行ってもよい。
また、前記接続属性を設定する工程に代えて、メッキリードを構成するパターンならびにスルホールおよび/またはビアホールの接続関係を、各パターンを構成する図形要素の座標値を基にベクトル状態で処理して所定の値に変換することにより、メッキリードの導通抵抗の値を設定する工程を実行してもよい。
また、前記導通抵抗の値を評価する工程において、メッキリードを構成するパターンならびにスルホールおよび/またはビアホールの接続関係を、パターンならびにスルホールおよび/またはビアホールに関するキャドデータ(CADデータ)を基にして、ビットマップ上に展開した後、図形処理を行って前記接続関係を所定の値に変換することにより、メッキリードの導通抵抗の値を設定してもよい。
また、前記導通抵抗の値を評価する工程において、メッキリードを構成するパターンならびにスルホールおよび/またはビアホールの接続関係を、パターンならびにスルホールおよび/またはビアホールのイメージをスキャナで取り込み、ビットマップ上に展開した後、図形処理を行って前記接続関係を所定の値に変換することにより、メッキリードの導通抵抗の値を設定してもよい。
上記課題を解決するため、本発明の評価装置は、上記メッキリード評価プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えてなるコンピュータと、パターンならびにスルホールおよび/またはビアホールのイメージを取り込むスキャナとを含んでなるものである。
上記課題を解決するため、本発明のプリント配線板は、前述したメッキリード評価プログラムおよび評価装置のうちの少なくとも1つを用いて設計されたものである。
本発明のメッキリード評価プログラムは、プリント配線板表面に予め形成されている導体表面に電気メッキ法にてメッキを行うことによってメッキ層を設けて端子および/またはランドを形成する際に用いられるメッキリード評価プログラムであって、メッキリードの引き回しパターンの設計図に基づき、被メッキ導体とメッキ電流供給源との間を電気的に接続しているメッキリードの導通抵抗の値を設定する工程と、この導通抵抗の値を評価する工程と、この評価結果に基づきメッキリードの引き回し経路が不適合であるか適合であるかを判断する工程と、不適合であると判断した場合にメッキリードの引き回し経路を変更する工程とをコンピュータに実行させる構成としたので、メッキリードの引き回しを改善し、端子やランドのメッキ厚を所望の厚さにしたり、隣接端子・ランドの厚みの差を少なくすることができるといった効果や、メッキリードの引き回しのチェックが容易にできるようになるといった効果を奏するため、製品の品質および信頼性向上に寄与することができる。
また、本発明の評価装置は、上記メッキリード評価プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えてなるコンピュータと、パターンならびにスルホールおよび/またはビアホールのイメージを取り込むスキャナとを含んで構成したので、メッキリードの引き回しを改善し、端子やランドのメッキ厚を所望の厚さにしたり、隣接端子・ランドの厚みの差を少なくすることができるといった効果や、メッキリードの引き回しのチェックが容易にできるようになるといった効果を奏するため、製品の品質および信頼性向上に寄与することができる。
また、本発明のプリント配線板は、前述したメッキリード評価プログラムおよび評価装置のうちの少なくとも1つを用いて設計されたものであるので、メッキリードの引き回しを改善し、端子やランドのメッキ厚を所望の厚さにしたり、隣接端子・ランドの厚みの差を少なくすることができるといった効果や、メッキリードの引き回しのチェックが容易にできるようになるといった効果を奏するため、製品の品質および信頼性向上に寄与することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の実施例では、図や説明を簡単にするため、両面配線板の例を用いて説明を行っているが、評価手順や配線引き回し方法等、ここで説明されるすべての技法は、配線板の種類や層数、製造方法に関係なく適用できるものである。
以下、本発明の実施例1について図面を参照して説明する。
図1は、本発明のメッキリード評価プログラムの実施例1に係るプリント配線板の設計手順を実施する際に用いられる、CAD上で保持されているアートワークデータのイメージの一例を示す説明図である。なお、このイメージは、発明が解決しようとする課題を説明する際に、従来のプリント配線板におけるメッキリードの引き回しの一例として図13に示したパターンを作成するためにCAD上で保持されているアートワークデータである。また、説明図を簡略化するために、現在着目している要素である、摺導端子と、この摺導端子に接続されているメッキリードと、このメッキリードにメッキ電流を供給するメッキ電流供給ラインとのみを示しており、その他の要素については図示を省略している。
本実施例においては、メッキ電流供給源に接続されているメッキ電流供給ライン5と、被メッキ導体であり、第1摺動端子の導体である第1導体1および第2摺動端子の導体である第2導体2と、メッキ電流供給ライン5および第1導体1間を電気的に接続している第1メッキリード3とが、プリント配線板7の第1層のみに配置されており、メッキ電流供給ライン5および第2導体2間を電気的に接続している第2メッキリード4は、一部分(即ち、参照符号4a〜4cおよび参照符号4g〜4iを用いて示した直線の図形要素)が第1層に配置されているとともに、他の部分(即ち、参照符号4d〜4fを用いて示した直線の図形要素)が第1スルホール6aおよび第2スルホール6bを介してプリント配線板7の第2層を経由しているものとする。
第1メッキリード3は、参照符号3a〜3eを用いて示した5本の直線の図形要素からなり、CADデータ上では、各々の図形要素を表す「始点、終点、中心座標」等からなる「座標データ」と、線幅および各々の図形要素が存在している層等を表す属性情報からなる「数値データ」とがセットになって格納されている。
また、第2メッキリード4は、第1スルホール6aおよび第2スルホール6bを示す円形状の図形要素と、参照符号4a〜4iを用いて示した9本の直線の図形要素とからなり、第1メッキリード3と同様に、CADデータ上では、「座標データ」と「数値データ」とがセットになって格納されている。
ここで、CAD上で保持されているアートワークデータに基づき、図1に示すイメージを層別に分解した状態について、図面を参照しつつ説明する。
図2は、図1に示すイメージのうち、プリント配線板の第1層に配置される要素のイメージであり、図3は、図1に示すイメージのうち、プリント配線板の第2層に配置される要素のイメージであり、図4は、図1に示すイメージのうち、プリント配線板に施されるドリルを示すドリルデータを示すイメージである。なお、図2〜図4に示すイメージは、通常、プリント配線板を製造するときに使われるパターンフィルムやドリル加工データに相当するものである。
一般に、メッキ層厚に大きな影響を与えるパラメータとしては、第1メッキリード3および第2メッキリード4の導通抵抗や、被メッキ面積が挙げられる。また、第1メッキリード3および第2メッキリード4の導通抵抗は、第1メッキリード3および第2メッキリード4の長さと幅と厚さと、第1スルホール6aおよび第2スルホール6bの抵抗と通過するスルホールの個数に分解される。但し、スルホール1個あたりの導通抵抗およびメッキリードの厚さは1つのプリント配線板7内では、ほぼ一定と仮定されるので、評価の際は、定数を用いることで、もっぱら、それ以外の項目を評価することになる。なお、第1スルホール6aおよび第2スルホール6bの導通抵抗については、穴径や、ビアホールであるかまたは貫通しているホールであるか等に関して区分を設けて、別々の値を設定してもよい。
図5は、本発明のメッキリード評価プログラムの実施例1に係るプリント配線板の設計手順を示すフローチャートである。
本実施例のメッキリード評価プログラムに係るプリント配線板の設計手順は、プリント配線板7表面に予め形成されている第1導体1および第2導体2表面に電気メッキ法にてメッキを行うことによってメッキ層を設けて第1摺動端子および第2摺動端子を形成する際に用いられるものであり、メッキリードの引き回しパターンの設計図に基づき、被メッキ導体である第1導体1および第2導体2とメッキ電流供給ライン5との間を電気的に接続している第1メッキリード3および第2メッキリード4の導通抵抗の値を設定する工程(ステップS1)と、この導通抵抗の値を評価する工程(ステップS2)と、この評価結果に基づき第1メッキリード3および第2メッキリード4の引き回し経路が不適合であるか適合であるかを判断する工程(ステップS3)と、不適合であると判断した場合に(ステップS3での判断結果がNOであった場合に)第1メッキリード3および第2メッキリード4の引き回し経路を変更する工程(ステップS4)とからなる。なお、ステップS3での判断結果がYESであった場合には処理を終了する。
まず初めに、メッキリードの引き回しパターンの設計図に基づき、被メッキ導体である第1導体1および第2導体2とメッキ電流供給ライン5との間を電気的に接続している第1メッキリード3および第2メッキリード4の導通抵抗の値を設定する工程(図5に示すステップS1)について説明する。
まず、第1層7a上に形成されており、かつ、メッキ電流供給ライン5に直接接続されているパターンのデータをCADデータ上から検索する。
本実施例においては、図2に示すように、2本の直線の図形要素3a,4aを示すデータが見つかる。次に、これら2本の直線の図形要素3a,4aに直接接続されているパターンのデータを検索すると、直線の図形要素3b,4bを示すデータがそれぞれ見つかる。次に、これら2本の直線の図形要素3b,4bに直接接続されているパターンのデータを検索すると、直線の図形要素3c,4cを示すデータがそれぞれ見つかる。次に、これら2本の直線の図形要素3b,4bに直接接続されているパターンのデータを検索する。
このような手順を繰り返すことによって、直接接続されているパターンのデータが見つからなくなるまで検索を繰り返すと、第1メッキリード3の一部分である5本の直線の図形要素3a〜3eを示すデータと、第2メッキリード4の一部分である3本の直線の図形要素4a〜4cを示すデータと、第1導体1を示すデータとが検索される。
この検索された全データについて、接続属性としてA1を与える。次に、これら接続属性A1をもつデータと、スルホールおよび/またはビアホールのデータとを比較し、接続属性A1をもつデータが示すパターンに接続されるスルホールおよび/またはビアホールを検索し、検索の結果、接続されていることが検出されたスルホールおよび/またはビアホールを示すデータに接続属性A2を与える。
次に、接続属性A2が付与されているデータが示すスルホールおよび/またはビアホールと、第2層7b上に形成されているパターンのデータとを比較し、接続属性A2が付与されているデータが示すスルホールおよび/またはビアホールに接続されているパターンのデータを検索する。
本実施例においては、図3に示されているように、直線の図形要素4dが検索される。続いて、この直線の図形要素4dに直接接続されているパターンのデータを検索すると、直線の図形要素4eを示すデータが見つかる。次に、この直線の図形要素4eに直接接続されているパターンのデータを検索する。
第1層7aを対象に行った手順と同様にこのような手順を繰り返すことによって、直接接続されているパターンのデータが見つからなくなるまで検索を繰り返すと、第2メッキリード4の一部分である3本の直線の図形要素4d〜4fを示すデータが検索される。
この検索された3本の直線の図形要素4d〜4fを示すデータについて、接続属性としてA3を与える。次に、これら接続属性A3をもつデータと、スルホールおよび/またはビアホールのデータとを比較し、接続属性A3をもつデータが示すパターンに接続されるスルホールおよび/またはビアホールを検索し、検索の結果、接続されていることが検出されたスルホールおよび/またはビアホールを示すデータに接続属性A4を与える。
以上の手順を、接続されているパターンをすべて検索しつくすまで、繰り返し実行し、第1メッキリード3および第2メッキリード4の導通抵抗の値を設定(すなわち、接続属性を設定)する。
なお、メッキ電流供給ラインが、例えば第2層にもある場合には、このメッキ電流供給ラインをスタートとして、同じ手順を実施し、接続属性B1、B2、・・・を各パターンのデータに付与する。
ついで、全ての設定が終了したら、この設定結果に基づき導通抵抗の値を評価する工程(図5に示すステップS2)を実施して、メッキリードの電気抵抗を評価する。
ここで用いられる評価法においては、その詳細度に応じて、各種設定ができる。
最も簡単な方法は、スルホール通過回数のみで評価する方法である。なぜなら、一般には、メッキリードにある程度の線幅があるため、よほど長い引き回しをしていない限り、メッキリードの導通抵抗を左右する最も大きな要素は、スルホールの導通抵抗となるからである。その結果、評価の方法としては、CAD上で、第1摺動端子を構成する図形要素に接続される図形要素がもつ接続属性の値と、第2摺動端子を構成する図形要素に接続される図形要素がもつ接続属性の値とを比較し、同じか、もしくは経験的または実験的に決めた一定範囲内にあるかを判定し、範囲に入っていれば、良い引き回しである、入っていなければ、悪い引き回しであるとして評価する方法、即ち、何回スルホールを通ってきたかを比較する方法である。
なお、複数の層にメッキ電流供給ラインがある場合は、各層のメッキ電流供給ラインやそこへの電流供給条件等を考慮し、各層の導通抵抗を同じ重みで評価するか(即ち、接続属性A1と接続属性B1と、接続属性A3と接続属性B3とをそれぞれ同じ属性と見なすか)、それとも多少差を付けて評価するかを予め決めておく。
また、メッキリードの導通抵抗を決める主たる要素は、スルホールおよび/またはビアホールではあるが、径の違いや、スルホールとビアホールとの区別等によって、その導通抵抗の差が無視できない場合は、前述のようにスルホールおよび/またはビアホールの通過回数を単純にカウントするのでなく、通過したスルホールおよび/またはビアホール個々に設定した導通抵抗を積算して、その積算結果を比較しても良い。
詳細な評価方法としては、上述のスルホールおよび/またはビアホールの通過回数や積算導通抵抗と、メッキリード自体の導通抵抗とを合わせて評価する方法もある。
本実施例では、評価対象となる被メッキ導体である第1導体1または第2導体2に電気的に接続されている第1メッキリード3または第2メッキリード4を構成する図形要素(パターン)を特定し、各々について、その線幅、厚さおよび線長をCADデータから読み出し、このCADデータと、パターンを構成する導体の材質(多くの配線板では銅が使用されている)の比抵抗とに基づき、メッキリードの導通抵抗を計算する。そして、この計算結果と、経験的、実証的に決められた許容値とを比較して、メッキリードの引き回しの善し悪しを決定する。
続いて、前述したような評価方法を用いて評価を行った結果に基づき、第1メッキリード3および第2メッキリード4の引き回し経路が不適合であるか適合であるかを判断する工程(図5に示すステップS3)を実施する。即ち、第1メッキリード3および第2メッキリード4の引き回し経路が良い引き回しである場合にはメッキリードの引き回し経路が適合であると判断し(図5に示すステップS3での判断結果がYESになり)、第1メッキリード3および第2メッキリード4の引き回し経路が悪い引き回しである場合にはメッキリードの引き回し経路が不適合であると判断する(図5に示すステップS3での判断結果がNOになる)。
なお、被メッキ面積が広ければ、必要なメッキ電流量も多くなるが、通常、メッキ電圧は一定であるので、面積の広い部分に狭いところと同じだけメッキを付けるためには、大きな電流が必要である。即ち、被メッキ面積が広い導体に接続されているメッキリードの抵抗が、被メッキ面積が狭い導体に接続されているメッキリードの抵抗よりも、小さくなければならない。従って、さらに詳細な検討を行う場合は、被メッキ導体の表面積を計算し、メッキリードの導通抵抗と被メッキ導体の表面積の比が、一定範囲以内に入っているか否かの判定を行ってもよい。
このような手順によって、評価結果が出たら、その結果を判断する。例えば、最も簡単な例では、隣接するランド・端子を構成する導体(本実施例においては第1導体および第2導体)間で、スルホール通過回数が同じで無ければ不適合とする等である。
そして、メッキリードの引き回し経路が不適合であった場合は、第1メッキリード3および第2メッキリード4の引き回し経路を変更する工程(図5に示すステップ4)を実施して、例えば、第1メッキリード3および/または第2メッキリード4の通過経路を変更して、配線長やスルホール通過回数を見直したり、他のパターンと接続したり、メッキリードの数を追加したり、線幅を太くしたりする等の対策を施し、再度、前述した導通抵抗の値を設定する工程から各工程を順次実施する。
次に、本発明の実施例2について図面を参照して説明する。
本実施例において行ったメッキリードの導通抵抗の値を設定する工程は、基本的には、実施例1で用いた導通抵抗の値を設定する工程と同じ概念で実施されるが、CAD上に保持されている座標データ、即ちベクタデータでは、相互の接続状態を判定する計算が容易ではないため、この工程をラスタイメージを用いて実施している。即ち、ラスタイメージとは、コンピュータのメモリ上に、対象となるプリント配線板の全体が入る程度の適切な解像度をもつビットマップ空間を用意し、ここに、CADデータを展開したものである。このビットマップの分解能(即ち、1ドットが実データのどのくらいの大きさを示すか)は、CADデータの有効桁数、プリント配線板の最小線幅および線間隔、ならびにコンピュータとOSとソフトウエアとの開発環境等といった諸般の条件を検討して決定される。
本実施例では、1ドットを10μm×10μmの正方形と考え、この上にCADデータをイメージとして展開している。また、接続属性を表すために、各ドットには、4ビットのデータ長を与えている。これも使用するシステム等によって自由に決めることができるが、メッキリードとして考えた場合、メッキリードはあまり多くのスルホールを通ることが無いので、この値(4ビット)を採用している。
まず、当該配線板の全体が入るサイズで、上記解像度をもつビットマップを、プリント配線板の層数分(本実施例では、プリント配線板が両面基板なので2面)、さらにスルホールおよび/またはビアホール分(本実施例では、貫通スルホールが1種のみなので1面)用意する。例えば、プリント配線板が4層基板で、貫通スルホールが1種、1−2層ビアホール(第1層および第2層間を貫通しているビアホール)および3−4層ビアホール(第3層および第4層間を貫通しているビアホール)がある場合は3面用意する。
ついで、このビットマップの全ドットの値を0にセットする。この場合、0は、何も無いことを意味しており、プリント配線板で例えれば、パターンが無い部分を示している。
続いて、CADデータを順次呼び出し、図形要素が存在している層についてパターンデータをビットマップに展開する。さらに、スルホールおよび/またはビアホールに関するCADデータも、同様に、各スルホールおよび/またはビアホールをその穴径の丸としてビットマップに展開する。具体的には、パターンのある場所のドットの値を1にする。
こうして展開された第1層7aのイメージを図6に示す。
図6は、本発明のメッキリード評価プログラムの実施例2に係るプリント配線板の設計手順を実施する際に用いられるビットマップのうち、プリント配線板の第1層に配置される要素の一例を示した説明図である。
この図では、直線の図形要素3a〜3e,4a〜4c,4g〜4i、第1スルホール6a、第2スルホール6b、第1導体1および第2導体2の位置のドットの値が1である。例えば、このドットの値が1になっている部分を所定の色(例えば、水色)で示してもよい。
なお、このようなラスタ展開法を採用した場合、特に、パターンの接続関係の判定が困難な輪郭形式のデータでも、フォト形式と大きな差なく評価が可能である。即ち、輪郭形式のデータは、パターン形状の輪郭を囲む線幅ゼロの閉曲線で表現されているが、一旦、この輪郭線を幅1ドットでビットマップ展開した後、閉曲線の内外判定を行い、塗りつぶしを行うことによって、フォトデータを展開したとき(即ち、フォト形式を採用したとき)と同じイメージを得ることができる。
また、このようなラスタ展開法を採用した場合、フォト形式と輪郭形式とが混在しているデータの処理であっても、例えばフォト形式のデータの処理であっても、複数ファイルの合成および抜き合成で作られているデータであっても、ラスタ展開後に画像合成処理をすることで、ラスタイメージを容易に得ることができる。従って、ドットの値が1か0かという点に着目して判断すればよく、ちょうど、モノクロ2値のイメージと同じイメージになる。
この状態で、接続関係をチェックする方法は、一般に、画像処理でFILL−PAINT(フィル ペイント)と呼ばれる処理と同じである。まず、最初にメッキ電流を流し込む場所となる部位のドットの値を、現在のドットの値+1とする。例えば、最も始めのステップなら、メッキ電流供給ライン5がこれに当たるので、メッキ電流供給ライン5上の任意のドットの値を1から2に変える。次に、値を2に変えたドットに隣接するドットのうち、値が1であるドットについてその値を2に変える。このような操作を繰り返すことで、メッキ電流供給ライン5に接続されている図形要素3a〜3e,4a〜4cと第1導体1とに対応するドットの値をすべて2に変えることができる。このときのドットの値が、実施例1の接続属性値に相当する。
このような処理を実施した直後の状態を図7に示す。
図7は、図6に示すビットマップに対してラスタ展開法を採用して接続関係をチェックする処理を施した結果得られたビットマップの一例を示す説明図である。
本実施例においては、第1層7aにおいてメッキ電流供給ライン5に接続されている部分(即ち、直線の図形要素3a〜3e,4a〜4c、第1スルホール6a、第1導体1)のドットの値が2になっている。例えば、このドットの値が2になっている部分を所定の色(例えば、ピンク色)で示してもよい。一方、第1層7aにおいてメッキ電流供給ライン5に接続されていない部分のドットの値は1のままであり、例えば、その部分の色は水色のままである。
次に、このFILL−PAINTを行ったパターンのビットマップと、スルホールおよび/またはビアホールを示すビットマップとを比較する。そして、双方のビットマップの同じ位置をドット単位で順次比較し、FILL−PAINTを行ったパターンのビットマップ上においてはドットの値が2になっており、かつ、スルホールおよび/またはビアホールを示すビットマップ上においてはドットの値が1になっている位置について、その位置のドットの値を3に変える。一般に、この処理はAND(アンド)処理とよばれる。
このような処理をプリント配線板の第1層7a全面で行うと、スルホールおよび/またはビアホールに関するビットマップにおいて、第1層7a上に配置されているパターンのうち、メッキ電流供給ライン5に接続されているパターンに接続されているスルホールは、ドットの値が3に変わる。
このような処理を実施した直後の状態を図8に示す。
図8は、図7に示すビットマップとスルホールおよび/またはビアホールを示すビットマップとを比較した結果得られたビットマップの一例を示す説明図である。
本実施例においては、第1スルホール6aのドットの値が3に変わる。例えば、このドットの値が3になっている部分を所定の色(例えば、緑色)で示してもよい。
続いて、前述のような処理の結果得られたビットマップと、第2層上に形成されている図形要素を示すビットマップを使って、第1層を対象に行った処理と同様の処理を実施する。即ち、ドットの値が3になっている位置を核にFILL−PAINTを行う。
このような処理を実施した直後の状態を図9に示す。
図9は、図8に示すビットマップと第2層上に形成されている図形要素を示すビットマップとを比較した結果得られたビットマップの一例を示す説明図である。
本実施例においては、直線の図形要素4d,4e,4fの部分に相当するドットの値が4に変わる。例えば、このドットの値が4になっている部分を所定の色(例えば、橙色)で示してもよい。
以上の手順を各層で繰り返し実施して、FILL−PAINTを新たにドットの値が変わることが無くなるまで行う。
図10は、図9に示すビットマップとスルホールおよびビ/またはアホールを示すビットマップとを比較した結果得られたビットマップの一例を示す説明図である。
本実施例においては、第2スルホール6bの部分に相当するドットの値が5に変わる。
図11は、図10に示すビットマップと第1層上に形成されている図形要素を示すビットマップとを比較した結果得られたビットマップの一例を示す説明図である。
本実施例においては、直線の図形要素4g〜4iと第2導体2の部分に相当するドットの値が6に変わる。
この際、実施例1のように片面づつ処理を行ってもよく、第1層および第2層のFILL−PAINTを先に行い、続いて、このFILL−PAINTによって得られたビットマップと、スルホールおよび/またはビアホールを示すビットマップとを用いてAND処理をして、第1層および第2層共通のスルホールおよび/またはビアホールのビットマップを作り、このビットマップを用いて他方の面(他の層)に対し、FILL−PAINTを行うといった手順で処理を行ってもよい。
なお、図6〜図11に示した内容は、実施例1の手順において接続属性の値を色で示した場合ともいえる。
最終的に、前述した手順により接続チェック(接続属性の値を求める処理)が終わり、導通抵抗の値を設定する工程が終了した後、実施例1と同じ手順を実施して、この導通抵抗の値を評価する工程と、この評価結果に基づき引き回し経路が不適合であるか適合であるかを判断する工程と、不適合であると判断された場合に第1メッキリード3および第2メッキリード4の引き回し経路を変更する工程とを実施する。
次に、本発明の実施例3について図面を参照して説明する。
前述の実施例1および実施例2において示したプリント配線板の設計手順は、メッキリード評価プログラムによって実現されており、本実施例においては、このメッキリード評価プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えてなる評価装置について示している。この評価装置は、メッキリード評価プログラムに基づきCADデータを処理することで結果を得ている。
図12は、本発明の評価装置の一実施例を示す説明図である。
例えば、評価装置は、実施例2に示したプリント配線板の設計手順を実現するメッキリード評価プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体11を備えたコンピュータ12に、スキャナ13とスキャナの制御用プログラム14とを付加したものである。この評価装置では、CADデータをラスタ展開することで得たパターンのデータやスルホールおよび/またはビアホールのイメージデータを、プリント配線板製造用フォトツールやその他のプロット図、フィルム、またはプリント配線板自体からスキャナを用いて得ている。
このような評価装置を用いることによって、CADデータが無くても、またはCADを使用しなくても、メッキリードの引き回し経路をチェックすることができる。その結果、プリント配線板の製造現場等でも評価装置をスタンドアロンで(独立して)使用できる。
本発明のメッキリード評価プログラム、このメッキリード評価プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えた評価装置、およびこれらメッキリード評価プログラムまたは評価装置を用いて設計されたプリント配線板は、電子機器の回路ユニットに使用されるプリント配線板として使用されるか、またはこのプリント配線板を製造する際に使用される。
本発明のメッキリード評価プログラムの実施例1に係るプリント配線板の設計手順を実施する際に用いられるCAD上で保持されているアートワークデータのイメージの一例を示す説明図である。
図1に示すイメージのうち、プリント配線板の第1層に配置される要素のイメージである。
図1に示すイメージのうち、プリント配線板の第2層に配置される要素のイメージである。
図1に示すイメージのうち、プリント配線板に施されるドリルを示すドリルデータを示すイメージである。
本発明のメッキリード評価プログラムの実施例1に係るプリント配線板の設計手順を示すフローチャートである。
本発明のメッキリード評価プログラムの実施例2に係るプリント配線板の設計手順を実施する際に用いられるビットマップのうち、プリント配線板の第1層に配置される要素の一例を示した説明図である。
図6に示すビットマップに対してラスタ展開法を採用して接続関係をチェックする処理を施した結果得られたビットマップの一例を示す説明図である。
図7に示すビットマップとスルホールおよび/またはビアホールを示すビットマップとを比較した結果得られたビットマップの一例を示す説明図である。
図8に示すビットマップと第2層上に形成されている図形要素を示すビットマップとを比較した結果得られたビットマップの一例を示す説明図である。
図9に示すビットマップとスルホールおよび/またはビアホールを示すビットマップとを比較した結果得られたビットマップの一例を示す説明図である。
図10に示すビットマップと第1層上に形成されている図形要素を示すビットマップとを比較した結果得られたビットマップの一例を示す説明図である。
本発明の評価装置の一実施例を示す説明図である。
従来のプリント配線板におけるメッキリードの引き回しの一例を示す上面図である。
従来の従来のプリント配線板におけるメッキリードの引き回しの他の例を示す上面図である。
各導体に接続されているメッキリードの導通抵抗間に差がある状態でメッキ工程を実施した場合のメッキ層の状態の一例を示す断面図である。
符号の説明
1 第1導体
2 第2導体
3 第1メッキリード
4 第2メッキリード
5 メッキ電流供給ライン
6a 第1スルホール
6b 第2スルホール
7 プリント配線板