JP4222860B2 - 有機複屈折膜を用いた偏光分離素子の作製方法およびそれに用いる有機複屈折膜の接着装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機複屈折膜を用いた偏光分離素子の作製方法および偏光分離素子の作製に用いる有機複屈折膜の接着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ディスク用ピックアップでは、光源からの入射光と光ディスクからの反射光(情報信号)を分離して、反射光(情報信号)を効率良く受光素子に導くために、偏光分離素子が用いられている。従来はプリズムを接着したビームスプリッタとλ/4波長板の組み合わせが用いられていたが、ピックアップの小型化、低コスト化の要求に答えるため、ビームスプリッタの替わりに薄型の偏光分離素子が実現できる複屈折回折格子型偏光分離素子が開発されつつある。
【0003】
直交する2つの偏光成分を分離する方法として、特開2000−75130号公報(特許文献1)では透明基板上に入射光の異なる振動面に対し屈折率が異なる有機複屈折膜を接着し、かつ有機複屈折膜表面に周期的な凹凸格子(以降回折格子と略す)を形成した偏光分離素子が提案されている。なお有機複屈折膜は延伸した有機高分子材料からなる。
【0004】
上記の偏光分離素子では、接着剤を用いて有機複屈折膜を透明基板へ接着する際に、回折格子面内で光路を一定とするため接着層厚さを均一にする必要がある。また接着層に気泡が入ると光(入射光、出射光)が気泡によって散乱し回折効率が低下するため、気泡を巻きこまないような接着法が必要となる。
以上の点から、透明基板へ有機複屈折膜を接着する方法は貼り合せ光ディスクで用いられているスピンナー法が適している。
【0005】
図14は、スピンナー法による貼り合せ光ディスクの作製工程を示す図である。以下、図面に沿って説明する。
【0006】
(a)第1の基板61のハブ63をスピンテーブル12のセンターピン62にさし込み、スピンテーブル12を回転させながら第1の基板61に紫外線硬化型接着剤13を滴下する。
【0007】
(b)第1の基板61の周辺部まで紫外線硬化型接着剤が広がったらスピンテーブル12の回転を停止する。
【0008】
(c)その後、第2の基板64のハブ63をスピンテーブル12のセンターピン62にさし込み、第1の基板61と第2の基板64を接触させる。
【0009】
(d)その後、スピンテーブル12を回転させ、余分な紫外線硬化型接着剤を振り切り接着層厚さを一定にする。
【0010】
(e)その後、スピンテーブル12の回転を停止し、紫外線を照射して接着層を硬化し、貼り合せ光ディスクを完成させる。
【0011】
しかしながら上記の方法を有機複屈折膜の接着に用いる場合、以下の問題が発生していた。
【0012】
偏光分離素子は大きさが数mm程度であるため、直径4〜8インチの透明基板に接着された有機複屈折膜上に数10〜数100個の回折格子をアレイ状に作製し、その後、ダイシングによって個々の偏光分離素子を取り出している。また1枚の基板から取れる偏光分離素子数を多くするため、有機複屈折膜や透明基板にはハブを設けていない。
【0013】
そのため、スピンテーブルに透明基板を真空吸着し、その後、透明基板の中央に紫外線硬化型接着剤を滴下し、スピンテーブルを回転して紫外線硬化型接着剤を透明基板全面に広げた後、有機複屈折膜を透明基板上に乗せるが、有機複屈折膜にはハブがないためセンターピンで固定できず、フリーな状態で透明基板に乗る。
【0014】
一般的には載置装置を用いて有機複屈折膜を接着剤が塗付された透明基板に乗せているが、スピンテーブルの回転中心に有機複屈折膜の中心を正確に合せることは載置装置の機械的精度の点から困難な場合が多い。
【0015】
そのため、有機複屈折膜がスピンテーブルの回転中心に乗っていない場合、図15に示すような問題点が生じる。
【0016】
すなわち、図15(a)に示すように、有機複屈折膜15、紫外線硬化型接着剤13などがフリーな状態で透明基板11に乗っているので、スピンテーブル12を回転させると、同図(b)に示すように、有機複屈折膜15が位置ずれを起こす。位置ずれが大きい場合は透明基板11から有機複屈折膜15がはみ出してしまう場合もある。
【0017】
紫外線照射によって接着剤を硬化させた後、回折格子を形成するためリソグラフィー/ドライエッチングを行うが、装置内や工程間の搬送は基板側面をクランプして行うことが多く、透明基板11から有機複屈折膜15がはみ出していると搬送が困難になり、回折格子を形成できない。
【0018】
そのため、スピンテーブルの回転中に有機複屈折膜の位置ずれが発生した場合は、スピンテーブルの回転を停止し、適切な位置へ有機複屈折膜を戻す作業を行い、再びスピンテーブルを回転させる必要があり、上記の作業を繰り返すことによって貼り合せ工程のスループットを遅くしていた。また上記の作業のため、スピンテーブルの回転時間を一定にすることができず、基板間で接着層厚さが不均一になる問題も発生していた。
【0019】
スピンテーブルの回転中に有機複屈折膜の位置ずれを起こさせないためには、回転中に紫外線を照射する方法が考えられる。例えば貼り合せ光ディスクの作製方法では、特開平10−334521号公報(特許文献2)や特開2000−268416号公報(特許文献3)において、回転中に紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を硬化する方法が提案されている。
【0020】
【特許文献1】
特開2000−75130号公報
【特許文献2】
特開平10−334521号公報
【特許文献3】
特開2000−268416号公報
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した偏光分離素子の作製においては、接着層厚さを均一化するため基板をある程度回転させた後に紫外線を照射しなければならないので、有機複屈折膜の位置ずれを完全に防止することは困難であった。
【0022】
また、載置装置に画像認識機能を搭載し、スピンテーブルの回転中心と有機複屈折膜の中心を検出し、載置装置にフィードバック制御を掛けながらスピンテーブルの回転中心に有機複屈折膜の中心を置く場合は、スピンテーブルの回転中心と有機複屈折膜の中心との位置合せ精度を著しく向上できるため、スピンテーブルの回転中に有機複屈折膜の位置ずれが起きにくい。
【0023】
しかしながら、載置装置にCCD等を用いた検出機構やフィードバック機構を設ける必要があり、載置装置のコストが上昇する。また貼り合せ時に位置検出やフィードバック制御を行うため、貼り合せ工程のスループットが低下してしまう。そのため安価に偏光分離素子を作製することが困難になる。
【0024】
更に、接着層厚さを均一化するためスピンテーブルを回転させて余分な接着剤を振り切る工程において、振り切られた接着剤がミストとなり、有機複屈折膜上に付着してしまう。
【0025】
また、有機複屈折膜は有機高分子材料からなるため、貼り合せ工程のハンドリング中に有機複屈折表面にキズが付き易かった。接着後、有機複屈折膜表面に回折格子を形成するため、フォトリソグラフィー/エッチングを行うが、有機複屈折膜表面に接着剤ミストやキズがあると、リソグラフィー工程でパターン欠陥が生じ、偏光分離素子の製造歩留を低下させていた。
【0026】
本発明は、上記問題点を解消し、透明基板に有機複屈折膜を接着する際に有機複屈折膜の透明基板からのはみ出しや位置ズレを抑制することができ、偏光分離素子の製造歩留を向上できる偏光分離素子の作製方法および偏光分離素子の作製に用いる有機複屈折膜の接着装置を提供することを目的としている。以下、請求項毎の目的を述べる。
【0027】
a)請求項1〜4、6〜9記載の偏光分離素子の作製方法は、透明基板に有機複屈折膜を接着する際に有機複屈折膜の透明基板からのはみ出しや位置ズレを抑制することを目的としている。
【0028】
b)請求項5、10記載の偏光分離素子の作製方法は、基板周辺の接着剤を除去しつつ、人体に対しより安全な作業環境を構築することを目的としている。
【0031】
c)請求項11および12記載の有機複屈折膜の接着装置は、透明基板に有機複屈折膜を接着する際に有機複屈折膜の透明基板からのはみ出しや位置ズレを起こすことを抑制できる装置の構造を提供することを目的としている。
【0032】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、次のような特徴ある構成を採用した。以下、請求項毎の特徴を述べる。
【0033】
(1)請求項1記載の発明は、透明基板上に入射光の異なる振動面に対して屈折率が異なる有機複屈折膜を接着する接着工程と、前記有機複屈折膜上に周期的なマスクパターンを形成し、該マスクパターンを用いて有機複屈折膜をエッチングして周期的な回折格子を形成する回折格子形成工程を有する偏光分離素子の作製方法において、前記接着工程が、透明基板上に紫外線硬化型接着剤を塗布し、その後、紫外線硬化型接着剤上に有機複屈折膜を乗せ、その後、透明基板を回転数R1で回転して有機複屈折膜表面を平坦化し、その後、透明基板の回転を止めた状態で有機複屈折膜を透明基板上で滑動して位置を修正した後、有機複屈折膜が位置ずれを生じない回転数R2で透明基板を回転しながら第1の紫外線を照射し、かつ紫外線硬化型接着剤を溶解し有機複屈折膜を溶解しない有機溶媒を滴下して透明基板の周辺部の紫外線硬化型接着剤を除去する工程を有することを特徴としている。
【0034】
(2)請求項2記載の発明は、請求項1において、回転数R2の回転中の第1の紫外線照射によって前記紫外線硬化型接着剤を半硬化し、回転数R2の回転終了後に第2の紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を完全硬化することを特徴としている。
【0035】
(3)請求項3記載の発明は、請求項1または2において、有機複屈折膜は、透明基板と接着する面と対向する面に保護膜が付いており、第1の紫外線を照射した後に有機複屈折膜から保護膜を剥離することを特徴としている。
【0036】
(4)請求項4記載の発明は、請求項2において、有機複屈折膜は、透明基板と接着する面と対向する面に保護膜が付いており、透明基板に第2の紫外線を照射した後に有機複屈折膜から保護膜を剥離することを特徴としている。
【0037】
(5)請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれかにおいて、有機溶媒が、イソプロピルアルコールまたはアセトンの少なくとも一方であることを特徴としている。
【0038】
(6)請求項6記載の発明は、透明基板上に入射光の異なる振動面に対して屈折率が異なる有機複屈折膜を接着する接着工程と、有機複屈折膜上に周期的なマスクパターンを形成し、該マスクパターンを用いて有機複屈折膜をエッチングして周期的な回折格子を形成する回折格子形成工程を有する偏光分離素子の作製方法において、接着工程が、有機複屈折膜上に紫外線硬化型接着剤を塗布し、その後、紫外線硬化型接着剤上に透明基板を乗せ、その後、有機複屈折膜を回転数R1で回転し、その後、有機複屈折膜の回転を止めた状態で透明基板を有機複屈折膜上で滑動して位置を修正した後、透明基板が位置ずれを生じない回転数R2で有機複屈折膜を回転しながら第1の紫外線を照射し、かつ紫外線硬化型接着剤を溶解し有機複屈折膜を溶解しない有機溶媒を噴霧して透明基板の周辺部の紫外線硬化型接着剤を除去する工程を有することを特徴としている。
【0039】
(7)請求項7記載の発明は、請求項6において、回転数R2の回転中の第1の紫外線照射によって紫外線硬化型接着剤を半硬化し、回転数R2の回転終了後に第2の紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を完全硬化することを特徴としている。
【0040】
(8)請求項8記載の発明は、請求項6または7において、有機複屈折膜は、透明基板と接着する面と対向する面に保護膜が付いており、第1の紫外線を照射した後に有機複屈折膜から保護膜を剥離することを特徴としている。
【0041】
(9)請求項9記載の発明は、請求項7において、有機複屈折膜は、透明基板と接着する面と対向する面に保護膜が付いており、透明基板に第2の紫外線を照射した後に有機複屈折膜から保護膜を剥離することを特徴としている。
【0042】
(10)請求項10記載の発明は、請求項6から9のいずれかにおいて、有機溶媒が、イソプロピルアルコールまたはアセトンの少なくとも一方であることを特徴としている。
【0046】
(11)請求項11および12記載の発明は、有機複屈折膜を保持するスピンテーブルと、該スピンテーブルを回転させる回転機構と、有機複屈折膜に紫外線硬化型接着剤を塗布する塗布機構と、有機複屈折膜上に塗布された紫外線硬化型接着剤上に透明基板を載置する載置機構と、紫外線硬化型接着剤を溶解しかつ前記有機複屈折膜を溶解しない有機溶媒を前記透明基板に噴霧するリンス機構と、透明基板を有機複屈折膜上で滑動して位置を修正する位置調整機構と、透明基板に紫外線を照射する紫外線照射機構を有すること、およびスピンテーブルの有機複屈折膜と接触する面が多孔質であることを特徴としている。
【0047】
【発明の実施の形態】
<実施例1>
図1は、本発明の偏光分離素子の作製方法の一例(実施例1)を示す図である。また、図2は、図1の(e)の工程(位置ずれの修正)の詳細を説明する斜視図である。
【0048】
以下、図1に沿って説明する。
(a)直径100mm、厚さ1.0mmのショット製光学ガラスBK7からなる透明基板11をスピンテーブル12に乗せ、真空吸着によってスピンテーブル12に固定した。その後、スピンテーブルを10rpmで回転させながら、透明基板11の中央部にディスペンサー14を用いて粘度500cp、屈折率1.52のアクリル系の紫外線硬化型接着剤13を3〜5g滴下した。
【0049】
(b)その後、スピンテーブル12を400rpmで回転させ、透明基板11全面に紫外線硬化型接着剤13を広げ、その後、スピンテーブル12の回転を停止した。
【0050】
(c)その後、有機複屈折膜15の中心をスピンテーブル12の回転中心にほぼ合せながら、載置装置(図示せず)を用いて紫外線硬化型接着剤13の上に直径90mm、厚さ80μmの有機複屈折膜15を乗せた。
【0051】
(d)その後、スピンテーブル12を再び回転して3ステップで回転数を上昇して回転数をR1(1100rpm)として、余分な紫外線硬化型接着剤を振り切って有機複屈折膜15表面を平坦化した。
【0052】
(e)その後、スピンテーブル12の回転を停止して有機複屈折膜15の位置ずれを観察したところ、有機複屈折膜15は透明基板11からはみ出していた。その後、図2に詳細を示すように、調整治具16を用い、有機複屈折膜15のはみ出した側の端部を透明基板11の中心側へ押し、透明基板11上を滑るように有機複屈折膜15を動かし(以後、滑るように動かすことを滑動と略す)、有機複屈折膜15の位置修正(つまり透明基板11から有機複屈折膜15がはみ出さない位置へ有機複屈折膜15を動かす。概ね有機複屈折膜15の中心をスピンテーブル12の回転中心に合せるのが良い)を行った。
【0053】
(f)その後、透明基板11を回転数R2(R2=100rpm)で回転させながら、高圧水銀灯を用いて第1の紫外線を照射し、紫外線硬化型接着剤13を徐々に硬化させた。
【0054】
なお、上記(e)の工程で有機複屈折膜15の中心をスピンテーブル12の回転中心にほぼ合わせており、回転数R2が比較的小さいため、回転数R2の回転中には有機複屈折膜15は位置ずれを起こさない。
【0055】
また、回転数R2の回転中に紫外線硬化型接着剤13を溶解し有機複屈折膜15を溶解しない有機溶媒17(本実施例ではイソプロピルアルコールを使用)を透明基板11の端に滴下した。その結果、回転数R2の回転終了後では透明基板11の周辺部の紫外線硬化型接着剤13は除去されていた。
【0056】
(g)その後、スピンテーブル12の回転を停止し、有機複屈折膜15を接着した透明基板(以下、基板と略す)11をスピンテーブル12から外し、有機複屈折膜15上にポジレジストを0.8μmの厚さに塗布し、60℃30分のプリベークを行った。
【0057】
その後、基板11を縮小投影露光装置(NA=0.45、σ=0.6、波長;i線)に装着し、1.6μmのラインアンドスペースパターンのレチクルを用いて露光を行い、現像液NMD-3を用いて現像を行い、周期的なレジストパターンを完成させた。その後、前記のレジストパターン上に真空蒸着法によってAlを100nm成膜し、その後、レジストをアセトンを用いて剥離し、前記のレジストパターンを反転した金属パターンを作製した。
【0058】
その後、ECRエッチング装置を用いて酸素ガスを主成分とするエッチングガス雰囲気中で前記の金属パターンをマスクとして有機複屈折膜を深さ3μmエッチングした。
【0059】
その後、リン酸系のAlエッチング液を用いて金属パターンを除去し、凹凸格子(回折格子)18を完成させた。
【0060】
(h)その後、平面加工したφ200mm、厚み50mmのステンレス台上に回折格子18を形成した基板11を置き、回折格子18面に光学的に等方的なアクリル系紫外線硬化型接着剤(等方性接着剤)19をマイクロシリンジで1.0mL滴下した。
【0061】
そして、両面を光学研磨した直径100mm、厚み1mmの対向透明基板(材質;ショット製光学ガラスBK7)20に乗せ、更に対向透明基板20上に光学研磨した光学ガラスを乗せ、対向透明基板20に100gf/cm2の圧力を加え、等方性接着剤19を被接着面全面に広げた。
【0062】
なお、対向透明基板20の被接着面と対向する面には入射光の反射が最小となるよう反射防止膜(図示せず)を形成している。この状態で対向透明基板20を通して紫外光を照射し、等方性接着剤19を硬化した。
【0063】
(i)その後、ダイシングソー21を用いて5mm角に切りだし、155個の偏光分離素子22を完成させた。
【0064】
なお、一部の基板はダイシングソー21を用いて切断し後、断面を金属顕微鏡(倍率200倍)で観察し、基板直径方向での接着層厚さを測定した。図3は、その測定結果を示す図である。基板11の直径方向での接着層厚さの変動は5μm以下であり、透明基板11を回転して余分な紫外線硬化型接着剤13を振り切り、有機複屈折膜15の表面を平坦化した後は有機複屈折膜15を透明基板11上で滑るように動かしても接着層厚さ変動に影響はないことが判った。
【0065】
本方法によると、(d)の工程において透明基板11の回転数R1の回転によって有機複屈折膜15の位置ずれが発生した場合、(e)の工程で透明基板11の回転を止めた状態で透明基板11上で有機複屈折膜15を滑動させ、有機複屈折膜15の位置を修正して透明基板11から有機複屈折膜15がはみ出さないようにし、(f)の工程で有機複屈折膜15が位置ずれを起こさない回転数R2で透明基板11を回転しながら第1の紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤13を硬化させるので、透明基板11からの有機複屈折膜15のはみ出しを完全に防止できる。その結果、次工程以降の装置間および装置内で搬送不良が起こらず、偏光分離素子22の製造歩留を向上できる。
【0066】
なお、回転数R2は透明基板11の回転中に有機複屈折膜15が位置ずれを起こさないようにするため、比較的低速な回転であることが望ましい。また、回転数R2の回転中に紫外線硬化型接着剤13を溶解するために透明基板11の端に滴下した有機溶媒17を振り切るためには、ある程度の回転数(R2)が必要になる。
【0067】
本実施例で用いたイソプロピルアルコールは低粘度の溶媒なので、50rpmで回転させれば十分に振り切ることが可能なので、回転数R2としては50〜700rpm程度にするのが良い。
【0068】
また、本方法によると、有機複屈折膜15で被覆されていない透明基板11周辺の紫外線硬化型接着剤13は透明基板11を回転数R2で回転させながら、紫外線硬化型接着剤13を溶解しかつ有機複屈折膜15を溶解しない有機溶媒17を滴下するため、透明基板11の周辺部にある紫外線硬化型接着剤13は除去される。
【0069】
また、透明基板11を回転数R2で回転させながら前記の有機溶媒17を滴下するため、有機溶媒17には遠心力がかかり、有機複屈折膜15と透明基板11とで挟まれた領域にある紫外線硬化型接着剤13へは染み込みにくいので、第1の紫外線を照射することによって透明基板11と有機複屈折膜15は十分な接着面積が得られる。
【0070】
その結果、基板11の周辺部には接着剤13が残らないので、装置間や装置内の搬送で基板周辺部をハンドリングしても基板周辺部からの異物発生が非常に少ないので、偏光分離素子の製造歩留を向上できる。
【0071】
なお、本実施例では有機溶媒17としてイソプロピルアルコールを用いたが、前記の有機溶媒はイソプロピルアルコールに限定される必要は無く、紫外線硬化型接着剤を溶解しかつ有機複屈折膜を溶解しない有機溶媒であれば何ら構わない。
【0072】
しかしながら、貼り合せ光ディスク等の貼り合せ工程で広く用いられているアクリル系やエポキシ系紫外線硬化型接着剤は、イソプロピルアルコールとアセトンに非常によく溶解するので、有害性の大きい他の有機溶媒よりイソプロピルアルコールやアセトンを用いることは、作業環境や装置安全性の面からより望ましい。
【0073】
また、本実施例では透明基板をスピンテーブルに固定した後、スピンテーブルを回転させながら透明基板の中央部にアクリル系紫外線硬化型接着剤を滴下して接着剤を塗布したが、接着剤の塗布方法は本方法に限定される必要は無く、透明基板をスピンテーブルに固定した後、スピンテーブルを停止したまま透明基板の中央部に接着剤を滴下し、その後、スピンテーブルを回転させて透明基板全面に接着剤を広げても良く、あるいはロールコート法、スプレー法等によって紫外線硬化型接着剤を塗布しても良い。
【0074】
<実施例2>
図4は、本発明の偏光分離素子の作製方法の別の一例(実施例2)を示す図である。
【0075】
(a)直径100mm、厚さ1.0mmのショット製光学ガラスBK7からなる透明基板11をスピンテーブル12に乗せ、真空吸着によってスピンテーブル12に固定した。その後、スピンテーブル12を10〜50rpmで回転させながら、透明基板11の中央部にディスペンサー14を用いて粘度600cp、屈折率1.58のエポキシ系の紫外線硬化型接着剤13を3〜10g滴下した。
【0076】
(b)その後、スピンテーブル12を300〜500rpmで回転させ、透明基板11全面に紫外線硬化型接着剤13を広げ、その後、スピンテーブル12の回転を停止した。
【0077】
(c)その後、有機複屈折膜15の中心をスピンテーブル12の回転中心にほぼ合せながら、載置装置(図示せず)を用いて紫外線硬化型接着剤13の上に直径90mm、厚さ80μmの有機複屈折膜15を乗せた。
【0078】
(d)その後、スピンテーブル12を再び回転(回転数R1=1000〜3000rpm)し、余分な紫外線硬化型接着剤13を振り切って、有機複屈折膜15の表面を平坦化した。
【0079】
(e)その後、スピンテーブル12の回転を停止し、図2に示すように、調整治具16を用いて有機複屈折膜15のはみ出した側の端部を透明基板11の中心側へ押し、有機複屈折膜15を透明基板11上で滑動させ、有機複屈折膜15の位置修正(つまり、透明基板11から有機複屈折膜15がはみ出さない位置へ有機複屈折膜15を動かす。概ね有機複屈折膜15の中心をスピンテーブル12の回転中心に合せるのが良い)を行った。
【0080】
(f)その後、透明基板11を回転数R2(R2=50〜700rpm)で回転させながら、高圧水銀灯を用いて第1の紫外線を照射し紫外線硬化型接着剤13を徐々に半硬化させた。
【0081】
なお、(e)の工程で有機複屈折膜の中心をスピンテーブル12の回転中心にほぼ合わせており、回転数R2が比較的小さいため、回転数R2の回転中には有機複屈折膜15は位置ずれを起こさない。
【0082】
また、回転数R2の回転中に紫外線硬化型接着剤13を溶解し有機複屈折膜15を溶解しない有機溶媒(本実施例ではアセトンを使用)を透明基板11の端に滴下した。その結果、回転数R2の回転終了後では透明基板11の周辺部の紫外線硬化型接着剤13は除去されていた。
【0083】
(g)その後、スピンテーブル12の回転を停止し、有機複屈折膜15側から高圧水銀灯を用いて第2の紫外線を照射し、紫外線硬化型接着剤13を完全に硬化させた。
【0084】
(h)その後、透明基板11をスピンテーブル12から外して、実施例1と同様にリソグラフィー/エッチングによって有機複屈折膜15上に回折格子18を形成した。
【0085】
(i),(j)その後、回折格子18上に光学的に等方的なエポキシ系紫外線硬化型接着剤(等方性接着剤)19塗布し、更に直径100mm、厚み1mmの対向透明基板(材質;ショット製光学ガラスBK7)20を接着し、ダイシングソー21を用いて5mm角に切りだし、個々の偏光分離素子22を完成させた。
【0086】
本方法によると、(d)の工程において透明基板11の回転数R1の回転によって有機複屈折膜15の位置ずれが発生した場合、(e)の工程で透明基板11の回転を止めた状態で透明基板11上で有機複屈折膜15を滑動させ、有機複屈折膜15の位置を修正して透明基板11から有機複屈折膜15がはみ出さないようにし、(f)の工程で有機複屈折膜15が位置ずれを起こさない回転数R2で透明基板11を回転させながら第1の紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤13を半硬化して有機複屈折膜15を透明基板11に固定するので、透明基板11からの有機複屈折膜15のはみ出しを完全に防止できる。その結果、次工程以降の装置間および装置内で搬送不良が起こらず、偏光分離素子22の製造歩留を向上できる。
【0087】
また、第1の紫外線照射によっても紫外線硬化型接着剤13は完全硬化しない(紫外線硬化型接着剤は第1の紫外線照射によって半硬化する)ので、紫外線硬化型接着剤13を溶解する有機溶媒(本実施例ではアセトンを使用)17を滴下することによって、容易に除去することができ紫外線硬化型接着剤13の残さがより少なくなる。
【0088】
そのため装置間や装置内の搬送で透明基板11周辺部をハンドリングしても基板周辺部からの異物発生はより少なくなるので、偏光分離素子22の製造歩留をより向上できる。
【0089】
<実施例3>
図5は、本発明の偏光分離素子の作製方法の別の一例(実施例3)を示す図である。
【0090】
(a),(b)実施例2と同様に、直径100mm、厚さ1.0mmのショット製光学ガラスBK7からなる透明基板11をスピンテーブル12に真空吸着してエポキシ系の紫外線硬化型接着剤13を滴下し、スピンテーブル12を回転させて紫外線硬化型接着剤13を透明基板11全面に均一に塗布した。
【0091】
(c)その後、一面に粘着剤151を介して有機高分子からなる保護膜152が付いた有機複屈折膜(直径90mm、厚さ100μm)15を、その中心をスピンテーブル12の回転中心にほぼ合せ、かつ保護膜152の付いていない面を被接着面となるように、紫外線硬化型接着剤13の上に載置装置を用いて乗せた。
【0092】
(d)その後、スピンテーブル12を再び回転(回転数R1=1000〜3000rpm)し、余分な紫外線硬化型接着剤13を振り切って、保護層152の表面を平坦化した。
【0093】
(e)その後、スピンテーブル12の回転を停止し、調整治具16を用いて有機複屈折膜15のはみ出した側の端部を透明基板11の中心側へ押し、有機複屈折膜15を透明基板11上で滑動させ、有機複屈折膜15の位置修正を行った。
【0094】
(f)その後、透明基板11を回転数R2(R2=50〜700rpm)で回転させながら、高圧水銀灯を用いて第1の紫外線を照射し紫外線硬化型接着剤13を徐々に半硬化させた。
【0095】
なお、(e)の工程で有機複屈折膜15の中心をスピンテーブル12の回転中心にほぼ合わせており、回転数R2が比較的小さいため、回転数R2の回転中には有機複屈折膜15は位置ずれを起こさない。
【0096】
また、回転数R2の回転中に紫外線硬化型接着剤13を溶解し有機複屈折膜15を溶解しない有機溶媒(本実施例ではアセトンを使用)17を透明基板11端に滴下した。その結果、回転数R2の回転終了後では透明基板11の周辺部の紫外線硬化型接着剤13は除去されていた。
【0097】
なお、第1の紫外線は保護膜152での吸収を考慮して、実施例2の1.2倍のエネルギーで照射した。
【0098】
(g)その後、スピンテーブル12の回転を停止し、保護膜152上から高圧水銀灯を用いて第2の紫外線を照射し、紫外線硬化型接着剤13を完全硬化させた。なお、第2の紫外線は保護膜152での吸収を考慮して、実施例2の1.2倍のエネルギーで照射した。
【0099】
(h)その後、ピンセットを用いて、有機複屈折膜15から保護膜152を剥離した。
【0100】
(i)その後、透明基板11をスピンテーブル12から外して、実施例2と同様に、リソグラフィー/エッチングによって有機複屈折膜15上に回折格子18を形成した。
【0101】
(j),(k)その後、回折格子18上に光学的に等方的なエポキシ系紫外線硬化型接着剤(等方性接着剤)19を塗布して直径100mm、厚み1mmの対向透明基板(材質;ショット製光学ガラスBK7)20を接着し、さらにダイシングソー21を用いて5mm角に切りだし、個々の偏光分離素子22を完成させた。
【0102】
本方法によると、透明基板11と有機複屈折膜15の貼り合せ工程は、有機複屈折膜15の面のうち回折格子18を形成する面を保護膜152で被覆した状態で行うことができるので、貼り合せ工程で回折格子18を形成する面にキズや異物を付ける確率が著しく減少する。そのためリソグラフィー工程において異物やキズによって発生するパターン欠陥を低減でき、偏光分離素子22の製造歩留を向上できる。
【0103】
<実施例4>
図6は、本発明の偏光分離素子の別の作製方法の一例(実施例4)を示す図である。
【0104】
(a),(b)実施例2と同様に、直径100mm、厚さ1.0mmのショット製光学ガラスBK7からなる透明基板11をスピンテーブル12に真空吸着してエポキシ系紫外線硬化型接着剤13を滴下し、スピンテーブル12を回転させて紫外線硬化型接着剤13を透明基板11全面に均一に塗布した。
【0105】
(c)その後、一面に粘着剤151を介して有機高分子からなる保護膜152が付いた有機複屈折膜(直径90mm、厚さ70μm)15を、その中心をスピンテーブル12の回転中心にほぼ合せ、かつ保護膜152の付いていない面を被接着面となるように、紫外線硬化型接着剤13の上に載置装置を用いて乗せた。
【0106】
(d)その後、スピンテーブル12を再び回転(回転数R1=1000〜3000rpm)し、余分な紫外線硬化型接着剤13を振り切って、保護膜152表面を平坦化した。
【0107】
(e)その後、スピンテーブル12の回転を停止し、調整治具16を用いて有機複屈折膜15のはみ出した側の端部を透明基板11の中心側へ押し、有機複屈折膜15を透明基板11上で滑動させ、有機複屈折膜15の位置修正を行った。
【0108】
(f)その後、透明基板11を回転数R2(R2=50〜700rpm)で回転させながら、高圧水銀灯を用いて第1の紫外線を照射し紫外線硬化型接着剤13を徐々に半硬化させた。
【0109】
なお、(e)の工程で有機複屈折膜15の中心をスピンテーブル12の回転中心にほぼ合わせており、回転数R2が比較的小さいため、回転数R2の回転中には有機複屈折膜15は位置ずれを起こさない。
【0110】
また、回転数R2の回転中に紫外線硬化型接着剤13を溶解し有機複屈折膜15を溶解しない有機溶媒(本実施例ではアセトンを使用)17を透明基板11端に滴下した。その結果、回転数R2の回転終了後では透明基板11の周辺部の紫外線硬化型接着剤13は除去されていた。
【0111】
なお、第1の紫外線は保護膜152での吸収を考慮して、実施例2の1.2倍のエネルギーで照射した。
【0112】
(g)その後、スピンテーブル12の回転を停止し、ピンセットを用いて有機複屈折膜15から保護膜152を剥離した。
【0113】
(h)その後、高圧水銀灯を用いて第2の紫外線を照射し、紫外線硬化型接着剤13を完全硬化させた。
【0114】
(i)その後、透明基板11をスピンテーブル12から外して、実施例2と同様に、リソグラフィー/エッチングによって有機複屈折膜15上に回折格子18を形成した。
【0115】
(j),(k)その後、回折格子18上に光学的に等方的なエポキシ系紫外線硬化型接着剤(等方性接着剤)19を塗布し、直径100mm、厚み1mmの対向透明基板(材質;ショット製光学ガラスBK7)20を接着し、さらにダイシングソー21を用いて5mm角に切りだし、個々の偏光分離素子22を完成させた。
【0116】
本方法によっても、実施例3と同様に、有機複屈折膜15の面のうち回折格子18を形成する面を保護膜152で被覆した状態で行うことができ、貼り合せ工程で回折格子18を形成する面にキズや異物を付ける確率を著しく低減できる。
【0117】
<実施例5>
図7は、本発明の偏光分離素子の作製方法の別の一例(実施例5)を示す図である。
【0118】
本実施例ではスピンテーブル12の四隅にピン23を立て、スピンテーブル12に有機複屈折膜15を固定し、紫外線硬化型接着剤13を塗布後、有機複屈折膜15よりも大きい透明基板11を乗せる方法を採用している。
【0119】
以下、図7に沿って具体的に説明する。
(a)有機複屈折膜15を固定するスピンテーブル12の四隅に、図8に詳細を示したように、後述の(d)の工程で紫外線硬化型接着剤13の上に載置する透明基板11の側面に近接ないし接触することが可能なピン23を設けておく。本実施例では透明基板11の直径方向で対向する4箇所にピン23を設けた。
【0120】
なお、(b)の工程では四隅のピンの上方から有機複屈折膜15をスピンテーブル12に乗せるようにする。
【0121】
(b),(c)直径90mm、厚さ90μmの有機複屈折膜15をスピンテーブル12に乗せ、真空吸着によってスピンテーブル12に固定した。その後、屈折率1.52、粘度500cpのアクリル系の紫外線硬化型接着剤13を有機複屈折膜全面に塗布した。
【0122】
(d)その後、透明基板11の中心をスピンテーブル12の回転中心にほぼ合せながら、載置装置を用いて紫外線硬化型接着剤13の上に直径100mm、厚さ1.0mmのショット製光学ガラスBK7からなる透明基板11を乗せた。
【0123】
その際、透明基板11の側面はスピンテーブル12に設けたピン23と近接するようにしておく。
【0124】
(e)その後、スピンテーブル12に回転数R1(R1=1500rpm)の回転を与え、紫外線硬化型接着剤13を振り切り、接着層厚さを透明基板11面内で一定にした。なお、四隅のピン23はスピンテーブル12に固定されているため、回転数R1の回転によって有機複屈折膜15と同時に回転することになる。
【0125】
(f)その後、スピンテーブル12の回転を停止し、調整治具を用いて透明基板11をずれた方向と反対方向に押し、透明基板11を有機複屈折膜15上で滑動させて透明基板11の位置修正(つまり、透明基板11から有機複屈折膜15がはみ出さない位置へ透明基板11を動かす。概ね透明基板11の中心をスピンテーブルの回転中心に合せるのが良い)を行った。
【0126】
(g)その後、有機複屈折膜15を回転数R2(R2=70rpm)で回転させながら、高圧水銀灯を用いて透明基板11を通して第1の紫外線を照射し紫外線硬化型接着剤13を徐々に半硬化させた。
【0127】
なお、(f)の工程で透明基板11の中心をスピンテーブル12の回転中心にほぼ合わせており、回転数R2が比較的小さいため、回転数R2の回転中には透明基板11は位置ずれを起こさない。
【0128】
また、回転数R2の回転中に紫外線硬化型接着剤13を溶解し有機複屈折膜15を溶解しない有機溶媒(本実施例ではイソプロピルアルコールを使用)17を透明基板11端に噴霧した。その結果、回転数R2の回転終了後では透明基板11の周辺部の紫外線硬化型接着剤13は除去されていた。
【0129】
(h)その後、スピンテーブル12の回転を停止し、透明基板11側から高圧水銀灯を用いて第2の紫外線を照射し、紫外線硬化型接着剤13を完全硬化させた。
【0130】
(i)その後、透明基板11をスピンテーブル12から外して、実施例1と同様に、リソグラフィー/エッチングによって有機複屈折膜15上に回折格子18を形成した。
【0131】
(j),(k)その後、回折格子18上に光学的に等方的なアクリル系紫外線硬化型接着剤(等方性接着剤)19を塗布し、直径100mm、厚み1mmの対向透明基板(材質;ショット製光学ガラスBK7)20を接着し、さらにダイシングソー21を用いて5mm角に切りだし、個々の偏光分離素子22を完成させた。
【0132】
本方法によると、(e)の工程において有機複屈折膜15の回転数R1の回転によって透明基板11の位置ずれが発生した場合、(f)の工程で有機複屈折膜15の回転を止めた状態で、透明基板11を有機複屈折膜15上で滑動させ、透明基板11の位置を修正して透明基板11から有機複屈折膜15がはみ出さないようにし、(g)の工程で透明基板11が位置ずれを起こさない回転数R2で有機複屈折膜15を回転しながら第1の紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤13を半硬化させて有機複屈折膜15に透明基板11を固定するので、透明基板11からの有機複屈折膜15のはみ出しを完全に防止できる。その結果、次工程以降の装置間および装置内で搬送不良が起こらず、偏光分離素子22の製造歩留を向上できる。
【0133】
なお、回転数R2は有機複屈折膜15の回転中に透明基板11が位置ずれを起こさないようにするため、比較的低速な回転であることが望ましい。また、回転数R2の回転中に紫外線硬化型接着剤13を溶解するために透明基板11端に噴霧した有機溶媒17を振り切るためには、ある程度の回転数が必要になる。
【0134】
本実施例で用いたイソプロピルアルコールは低粘度の溶媒なので、50rpmで回転させれば十分に振り切ることが可能なので、回転数R2としては50〜700rpm程度にするのが良い。
【0135】
また、本方法によると、有機複屈折膜15で被覆されていない透明基板11周辺の紫外線硬化型接着剤13は有機複屈折膜15を回転数R2で回転させながら、紫外線硬化型接着剤13を溶解しかつ有機複屈折膜15を溶解しない有機溶媒17を噴霧するため、透明基板11の周辺部にある紫外線硬化型接着剤13は除去される。
【0136】
また、有機複屈折膜15を回転数R2で回転させながら前記有機溶媒17を噴霧するため、有機溶媒17には遠心力がかかり、有機複屈折膜15と透明基板11とで挟まれた領域にある紫外線硬化型接着剤13へは染み込みにくいので、第1の紫外線を照射することによって透明基板11と有機複屈折膜15は十分な接着面積が得られる。
【0137】
その結果、透明基板11周辺部には紫外線硬化型接着剤13が残らないので、装置間や装置内の搬送で透明基板11の周辺部をハンドリングしても基板周辺部からの異物発生が非常に少ないので、偏光分離素子22の製造歩留を向上できる。
【0138】
更に、スピンテーブル12の四隅にピン23を設けることにより、有機複屈折膜15の回転数R1の回転によって透明基板11が位置ずれを起こす場合、透明基板11はスピンテーブル12の四隅にピン23に当たり位置ずれが大きくならない。そのため(e)の工程では透明基板11を僅かに滑動するだけで位置修正が可能になるので、位置修正作業を簡便化できる。
【0139】
本実施例ではスピンテーブル12の四隅にピン23を設けているが、ピン23を1〜3個あるいは5個以上設けた場合や、ピン23を全く設なかった場合も本発明に含まれるものとする。
【0140】
本実施例ではスピンテーブル12に有機複屈折膜15を真空吸着で固定している。スピンテーブル12の吸着穴が大きいと、有機複屈折膜15が引きこまれてしまい表面に凹部ができて好ましくない。
【0141】
従って、スピンテーブル12の吸着穴を有機複屈折膜15の膜厚に対し十分小さくすることが望ましい。しかし機械加工の精度を考慮すると微細な穴を加工することは容易ではない。
【0142】
そこで、スピンテーブル12の有機複屈折膜15と接触する面をアルミナやジルコニア等の多孔質材料で作り、該多孔質材料のマイクロポアを吸着穴に用いると、有機複屈折膜15が吸着穴に引き込まれず、接着後平滑な有機複屈折膜15表面を得ることができる。
【0143】
なお、接着後の有機複屈折膜15の平面性はスピンテーブル12の平面性にも強く影響されるため、通常のスピンテーブル12よりも吸着面の平面性を向上させておく必要がある。
【0144】
なお、本実施例では有機溶媒17としてイソプロピルアルコールを用いたが、前記の有機溶媒17はイソプロピルアルコールに限定される必要は無く、紫外線硬化型接着剤13を溶解しかつ有機複屈折膜15を溶解しない有機溶媒であれば何ら構わない。
【0145】
しかしながら、貼り合せ光ディスク等の貼り合せ工程で広く用いられているアクリル系やエポキシ系の紫外線硬化型接着剤は、イソプロピルアルコールとアセトンに非常によく溶解するので、有害性の大きい他の有機溶媒よりイソプロピルアルコールやアセトンを用いることは、作業環境や装置安全性の面からより望ましい。
【0146】
また、本実施例では、有機複屈折膜15をスピンテーブル12に固定した後、スピンテーブル12を回転させながら有機複屈折膜15の中央部にアクリル系の紫外線硬化型接着剤13を滴下する方法で接着剤を塗布したが、紫外線硬化型接着剤の塗布方法は本方法に限定される必要は無く、有機複屈折膜15をスピンテーブル12に固定した後、スピンテーブル12を停止したまま有機複屈折膜15の中央部に紫外線硬化型接着剤を滴下し、その後、スピンテーブルを回転させて有機複屈折膜全面に紫外線硬化型接着剤を広げても良く、あるいはロールコート法、スプレー法等によって紫外線硬化型接着剤を塗布しても良い。
【0147】
<実施例6>
図9は、本発明の偏光分離素子の作製方法の別の一例(実施例6)を示す図である。
【0148】
本実施例でもスピンテーブル12の四隅にピン23を立て、スピンテーブル12に有機複屈折膜15を固定し、紫外線硬化型接着剤13を塗布後、有機複屈折膜15よりも大きい透明基板11を乗せる方法を採用している。
【0149】
以下、図面に沿って詳細に説明する。
(a)有機複屈折膜15を固定するスピンテーブル12の四隅に、後述する(d)の工程で紫外線硬化型接着剤13の上に載置する透明基板11の側面に近接ないし接触することが可能なピン23を設けておく。本実施例では透明基板11の直径方向で対向する4箇所にピンを23設けた。
【0150】
(b),(c)一面に粘着剤152を介して有機高分子からなる保護膜152が付いた有機複屈折膜(直径90mm、厚さ80μm)15をスピンテーブル12に乗せ、真空吸着によってスピンテーブル12に固定した。
【0151】
その後、屈折率1.58、粘度600cpのエポキシ系の紫外線硬化型接着剤13を有機複屈折膜15の全面に塗布した。
【0152】
(d)その後、透明基板11の中心をスピンテーブル12の回転中心にほぼ合せながら、載置装置を用いて紫外線硬化型接着剤13の上に直径100mm、厚さ1.0mmのショット製光学ガラスBK7からなる透明基板11を乗せた。
その際、透明基板11の側面はスピンテーブル12に設けたピン23と近接するようにしておく。
【0153】
(e)その後、スピンテーブル12に回転数R1(R1=1000〜3000rpm)の回転を与え、紫外線硬化型接着剤13を振り切り、接着層厚さを透明基板11面内で一定にした。なお、四隅のピン23はスピンテーブル12に固定されているため、回転数R1の回転によって有機複屈折膜5と同時に回転することになる。
【0154】
(f)その後、スピンテーブル12の回転を停止し、調整治具16を用いて、透明基板11をずれた方向と反対方向に押し、透明基板11を有機複屈折膜15上で滑動させて透明基板11の位置修正(つまり、透明基板11から有機複屈折膜15がはみ出さない位置へ透明基板11を動かす。概ね透明基板11の中心をスピンテーブル12の回転中心に合せるのが良い)を行った。
【0155】
(g)その後、有機複屈折膜5を回転数R2(R2=50〜700rpm)で回転させながら、高圧水銀灯を用いて透明基板11を通して第1の紫外線を照射し紫外線硬化型接着剤13を徐々に半硬化させた。
【0156】
なお、(f)の工程で透明基板11の中心をスピンテーブル12の回転中心にほぼ合わせており、回転数R2が比較的小さいため、回転数R2の回転中には透明基板11は位置ずれを起こさない。
【0157】
また、回転数R2の回転中に紫外線硬化型接着剤13を溶解し有機複屈折膜15を溶解しない有機溶媒(本実施例ではアセトンを使用)17を透明基板11端に噴霧した。その結果、回転数R2の回転終了後では透明基板11の周辺部の紫外線硬化型接着剤13は除去されていた。
【0158】
(h)その後、スピンテーブル12の回転を停止し、透明基板11側から高圧水銀灯を用いて第2の紫外線を照射し、紫外線硬化型接着剤13を完全硬化させた。
【0159】
(i)そして、スピンテーブル12から基板を外し、ピンセットなどを用いて有機複屈折膜15から保護膜152を剥離した。
【0160】
(j)その後、リソグラフィー/エッチングによって有機複屈折膜15上に回折格子18を形成した。
【0161】
(k),(l)その後、回折格子18上に光学的に等方的なエポキシ系紫外線硬化型接着剤(等方性接着剤)19を塗布し、直径100mm、厚み1mmの対向透明基板(材質;ショット製光学ガラスBK7)20を接着し、さらにダイシングソー21を用いて5mm角に切りだし、個々の偏光分離素子22を完成させた。
【0162】
本方法によると、有機複屈折膜15の面のうち回折格子18を形成する面を保護膜152で被覆した状態で行うことができる。特に実施例5と異なり、有機複屈折膜15はスピンテーブル12と接触しないので、回折格子18を形成する有機複屈折膜15表面にキズが付きにくく、スピンテーブル12に有機複屈折膜15を固定し紫外線硬化型接着剤13を塗布後、有機複屈折膜15よりも大きい透明基板11を乗せる方法では有効である。
【0163】
なお、本実施例では、第2の紫外線を照射した後に有機複屈折膜15から保護膜152を剥離したが、実施例3と同様に、第1の紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤13を半硬化させた後に、スピンテーブル12から基板を外し、有機複屈折膜15から保護膜152を剥離し、その後、透明基板11に第2の紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤13を完全硬化させても何ら構わない。
【0164】
以上のように実施例1〜6の作製方法によると、有機複屈折膜15の接着工程では、透明基板11からの有機複屈折膜15のはみ出しを抑制できることから、偏光分離素子22の製造歩留を向上することが可能となる。また、有機複屈折膜15を透明基板11に接着して作製しているので、従来のプリズムを接着したビームスプリッタよりも小さい偏光分離素子22を作製できる。
【0165】
更に、本発明によると、回転数R1の回転後に1度のみ位置修正を行えば良いので、従来位置ずれ修正のため行われていた作業(スピンテーブル12の回転中に有機複屈折膜15の位置ずれが発生した場合、スピンテーブル12の回転を停止し、適切な位置へ有機複屈折膜15を戻し、再びスピンテーブル12を回転させる)が不要となり、スピンテーブル12の回転時間を一定にすることができ、透明基板11間で接着層厚さを均一にできる。
【0166】
<実施例7>
図10は、本発明に係る光ピックアップの構成の一例(実施例7)を示す図である。
【0167】
本実施例のCD用光ピックアップでは、レーザーダイオード31から出射された波長約780nmの光は、実施例2で作製した偏光分離素子32、コリメータレンズ33、λ/4波長板34、対物レンズ35を通った後、CD(図ではCD-RW)36を照射する。
【0168】
また、CD36の記録ピットからの反射光はλ/4波長板34で直線偏光になった後、偏光分離素子32で回折してフォトダイオード37に導かれ、フォーカス検出、トラック検出、信号検出などが行われる。
【0169】
本実施例の光ピックアップを用い、CD−RWに信号を記録し、その後、同じ光ピックアップで信号の再生を行った所、プリズムを接着したビームスプリッタとλ/4波長板を組み合わせた従来のCD用光ピックアップと同等の再生信号出力を得ることができ、本実施例の光ピックアップが小形ながら従来の光ピックアップと同等の記録/再生特性を持つことが確認できた。
【0170】
また、本実施例のピックアップでは、偏光分離素子32がプリズムを接着したビームスプリッタよりも小さくなっており、従来の光ピックアップと比較して小型化が実現できていた。
【0171】
<実施例8>
図11は、本発明に係る光ピックアップの構成の別の一例(実施例8)を示す図である。
【0172】
本実施例のDVD用光ピックアップでは、レーザーダイオード41から出射された波長約680nmの光は、上記実施例5で作製された偏光分離素子42、コリメータレンズ43、λ/4波長板44、対物レンズ45を通った後、DVD46を照射する。
【0173】
また、DVD46の記録ピットからの反射光は、λ/4波長板44で直線偏光になった後、偏光分離素子42で回折してフォトダイオード47に導かれ、フォーカス検出、トラック検出、信号検出などが行われる。
【0174】
本実施例の光ピックアップを用い、DVD−ROMから情報信号の再生を行った所、プリズムを接着したビームスプリッタとλ/4波長板を組み合わせた従来のDVD用光ピックアップと同等の信号出力を得ることができ、本実施例の光ピックアップが小形ながら従来の光ピックアップと同等の再生特性を持つことが確認できた。
【0175】
また、本実施例のピックアップでは、偏光分離素子42がプリズムを接着したビームスプリッタよりも小さくなっているため、従来の光ピックアップよりも小型になっている。
【0176】
<実施例9>
図12は、本発明に係る有機複屈折膜15の接着装置の一例(実施例9)を示す図である。
【0177】
本実施例の接着装置は、透明基板11を保持するスピンテーブル12と、前記スピンテーブル12を回転させるステッピングモーター等からなる回転機構(図示されていない)と、前記透明基板11に紫外線硬化型接着剤13を塗布するディスペンサー14からなる塗布機構と、2本の吸着アーム54によって有機複屈折膜15の両端を保持し、透明基板11上に塗布された紫外線硬化型接着剤13上に有機複屈折膜15を載置する載置機構55と、紫外線硬化型接着剤13を溶解しかつ有機複屈折膜15を溶解しない有機溶媒を透明基板11に滴下するリンス機構56と、有機複屈折膜15を透明基板11上で滑動して位置を修正する位置調整機構(図では調整機構)53と、透明基板11に紫外線を照射する高圧水銀灯やメタルハライドランプ等からなる紫外線照射機構57から構成されている。
【0178】
なお、位置調整機構53はXY方向に可動できる2軸アーム52の先端に調整治具16が付いており、調整治具16で有機複屈折膜15を押し、透明基板11上を滑らせる機構になっている。
【0179】
次に、本実施例の接着装置を用いて有機複屈折膜15を接着する手順を次に述べる。
直径165mm、厚さ1.0mmのショット製光学ガラスBK7からなる透明基板11をスピンテーブル12に乗せ、真空吸着によってスピンテーブル12に固定する。
【0180】
その後、透明基板11の中央部にロボットアーム51によってディスペンサー14を移動し、スピンテーブル12を20rpmで回転させながら、透明基板11の中央部にディスペンサー14を用いて屈折率1.58のエポキシ系の紫外線硬化型接着剤を10g滴下する。
【0181】
その後、ディスペンサー14を元の位置に戻し、スピンテーブル12を300rpmで回転させ、透明基板11全面に紫外線硬化型接着剤を広げ、その後、スピンテーブル12の回転を停止する。
【0182】
その後、直径155mm、厚さ80μmの有機複屈折膜15の両端を載置機構55の2本の吸着アーム54に真空吸着して保持し、載置機構55を透明基板11上へ移動し、有機複屈折膜15の中心をスピンテーブル12の回転中心にほぼ合せながら2本の吸着アーム54の真空吸着を徐々に解除して紫外線硬化型接着剤の上に有機複屈折膜15を乗せる。
【0183】
その後、載置機構55を元の位置に戻し、スピンテーブル12を1400rpmで回転(回転数R1)させ、紫外線硬化型接着剤を振り切り、有機複屈折膜15表面を平坦化する。
【0184】
その後、スピンテーブル12の回転を停止し、2軸アーム52を動かして調整治具16を有機複屈折膜15側面に突き当て、有機複屈折膜15の位置ズレに応じて2軸アーム52をXY方向に動かし有機複屈折膜15を調整治具16で押し、有機複屈折膜15を透明基板11上で滑るように動かし(滑動)、有機複屈折膜15の位置修正を行う。
【0185】
位置調整終了後、位置調整機構53を元の位置に戻す。その後、透明基板11上に紫外線照射機構57とリンス機構56を移動し、スピンテーブル12を80rpmで回転(回転数R2)させる。回転数R2の回転中に有機複屈折膜15側から第1の紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を半硬化させる。
【0186】
また、回転数R2の回転中に紫外線硬化型接着剤を溶解しかつ有機複屈折膜15を溶解しない有機溶媒(本実施例ではアセトンを使用)を透明基板11端に滴下して、透明基板11周辺部に残っていた紫外線硬化型接着剤を除去する。
【0187】
その後、スピンテーブル12の回転を停止し、リンス機構56を元の位置に戻す。そして紫外線照射機構57を用いて有機複屈折膜15側から第2の紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を完全硬化させる。
【0188】
紫外線照射終了後、紫外線照射機構57を元の位置に戻し、スピンテーブル12の真空吸着を解除して有機複屈折膜15を接着した透明基板11を取り出す。
【0189】
上記のように本実施例の接着装置を用いると、実施例2の偏光分離素子の作製方法を容易に実現できるため、透明基板11の周辺部にある紫外線硬化型接着剤は除去され、かつ透明基板11からの有機複屈折膜15のはみ出しを防止できる。
【0190】
また、有機複屈折膜の一面に粘着剤を介して有機高分子からなる保護膜が付いた有機複屈折膜15を用いると、実施例3、4の偏光分離素子の作製方法を実現できる。
【0191】
更に、第1の紫外線照射によって紫外線硬化型接着剤を完全硬化させると、実施例1の偏光分離素子の作製方法が実現できる。
【0192】
<実施例10>
図13は、本発明に係る有機複屈折膜15の接着装置の一例(実施例10)を示す図である。
【0193】
本実施例の接着装置は、有機複屈折膜15を保持するスピンテーブル12と、前記スピンテーブル12を回転させるステッピングモーター等からなる回転機構(図示されていない)と、前記有機複屈折膜15に紫外線硬化型接着剤を塗布するディスペンサー14からなる塗布機構と、2本の吸着アーム54によって透明基板11の両端を保持し、有機複屈折膜15上に塗布された紫外線硬化型接着剤上に透明基板11を載置する載置機構55と、透明基板11側面に近接する4個のピン23と、硬化前の紫外線硬化型接着剤を溶解しかつ有機複屈折膜15を溶解しない有機溶媒を透明基板11に噴霧するリンス機構56と、透明基板11を有機複屈折膜15上で滑動して位置を修正する位置調整機構(図では調整機構)53と、透明基板11に紫外線を照射する高圧水銀灯やメタルハライドランプ等からなる紫外線照射機構57から構成されている。
【0194】
次に、本実施例の接着装置を用いて有機複屈折膜を接着する手順を次に述べる。
直径155mm、厚さ80μmの有機複屈折膜15をスピンテーブル12に乗せ、真空吸着によってスピンテーブル12に固定する。その後、有機複屈折膜15の中央部にロボットアーム51によってディスペンサー14を移動し、スピンテーブル12を20rpmで回転させながら、有機複屈折膜15の中央部にディスペンサー14を用いて屈折率1.58のエポキシ系紫外線硬化型接着剤を11g滴下する
【0195】
なお、スピンテーブル12は有機複屈折膜15と接触する面が多孔質のアルミナから形成されており、スピンテーブル12表面の表面粗さは3um以下に抑えられている。
【0196】
その後、ディスペンサー14を元の位置に戻し、スピンテーブル12を300rpmで回転させ、有機複屈折膜15全面に紫外線硬化型接着剤を広げ、その後、スピンテーブル12の回転を停止する。
【0197】
その後、直径165mm、厚さ1.5mmのショット製光学ガラスBK7からなる透明基板11の両端を載置機構55の2本の吸着アーム54に真空吸着して保持し、載置機構55を有機複屈折膜15上へ移動し、透明基板11の中心をスピンテーブル12の回転中心にほぼ合せ、透明基板11を斜めに倒すように吸着アーム54を動かして紫外線硬化型接着剤の上に透明基板11を乗せる。その際スピンテーブル12に固定された複数のピン23は透明基板11側面と0.5〜1.5mmの距離で近接させるようにする。
【0198】
その後、載置機構55を元の位置に戻し、スピンテーブル12を3ステップで400rpmから900rpmに回転数を上げ(回転数R1=900rpm)、紫外線硬化型接着剤を振り切り、接着層厚さを面内で一定にした。
【0199】
その後、スピンテーブル12の回転を停止し、2軸アーム52を動かして調整治具16を透明基板11側面に突き当て、透明基板11の位置ズレに応じて2軸アーム52をXY方向に動かし透明基板11を調整治具16で押し、有機複屈折膜15上で透明基板11を滑るように動かし(滑動)、透明基板11の位置修正を行う。
【0200】
位置調整終了後、位置調整機構53を元の位置に戻す。その後、透明基板11上に紫外線照射機構57とリンス機構56を移動し、スピンテーブル12を100rpmで回転(回転数R2)させる。回転数R2の回転中に透明基板11側から第1の紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を半硬化させる。
【0201】
また、回転数R2の回転中に紫外線硬化型接着剤を溶解しかつ有機複屈折膜を溶解しない有機溶媒(本実施例ではアセトンを使用)を透明基板11端に噴霧して、透明基板11周辺部に残っていた紫外線硬化型接着剤を除去する。
【0202】
その後、スピンテーブル12の回転を停止し、リンス機構56を元の位置に戻す。そして紫外線照射機構57を用いて透明基板11側から第2の紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を完全硬化させる。
【0203】
紫外線照射終了後、紫外線照射機構を元の位置に戻し、スピンテーブル12の真空吸着を解除して有機複屈折膜15を接着した透明基板11を取り出す。
【0204】
上記のように本実施例の接着装置を用いると、実施例5の偏光分離素子の作製方法を実現できるため、透明基板の周辺部にある紫外線硬化型接着剤は除去され、かつ透明基板からの有機複屈折膜のはみ出しを防止できる。
【0205】
また、有機複屈折膜の一面に粘着剤を介して有機高分子からなる保護膜が付いた有機複屈折膜を用いると、実施例6の偏光分離素子の作製方法を実現できる。
【0206】
【発明の効果】
以下、本発明の効果を請求項毎に述べる。
【0207】
a)請求項1記載の偏光分離素子の作製方法によれば、回転数R1の回転によって有機複屈折膜の位置ずれが発生した場合、透明基板の回転を止めた状態で透明基板上で有機複屈折膜を滑動し、有機複屈折膜の位置を修正して透明基板から有機複屈折膜がはみ出さないようにした後、有機複屈折膜が位置ずれを起こさない回転数R2で透明基板を回転しながら第1の紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を硬化させるので、透明基板からの有機複屈折膜のはみ出しを完全に防止できる。その結果、次工程以降の装置間および装置内で搬送不良が起こらず、偏光分離素子の製造歩留を向上できる。
【0208】
また、有機複屈折膜で被覆されていない透明基板周辺の紫外線硬化型接着剤は透明基板を回転数R2で回転させながら、紫外線硬化型接着剤を溶解しかつ有機複屈折膜を溶解しない有機溶媒を滴下するため、透明基板の周辺部にある紫外線硬化型接着剤は除去される。
【0209】
また、透明基板を回転数R2で回転させながら前記の有機溶媒を滴下するため、有機溶媒には遠心力がかかり、有機複屈折膜と透明基板とで挟まれた領域にある紫外線硬化型接着剤へは染み込みにくいので、第1の紫外線を照射することによって透明基板と有機複屈折膜は十分な接着面積が得られる。
【0210】
その結果、基板周辺部には接着剤が残らないので、装置間や装置内の搬送で基板周辺部をハンドリングしても基板周辺部からの異物発生が非常に少ないので、偏光分離素子の製造歩留を向上できる。
【0211】
b)請求項2記載の偏光分離素子の作製方法によれば、回転数R1の回転によって有機複屈折膜の位置ずれが発生した場合、透明基板の回転を止めた状態で透明基板上で有機複屈折膜を滑動し、有機複屈折膜の位置を修正して透明基板から有機複屈折膜がはみ出さないようにした後、有機複屈折膜が位置ずれを起こさない回転数R2で透明基板を回転しながら第1の紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を半硬化して有機複屈折膜を透明基板に固定させるので、透明基板からの有機複屈折膜のはみ出しを完全に防止できる。
【0212】
また、第1の紫外線照射によっても紫外線硬化型接着剤は完全硬化しないので、紫外線硬化型接着剤を溶解する有機溶媒を滴下することによって、容易に除去することができ紫外線硬化型接着剤の残さがより少なくなる。
【0213】
c)請求項3記載の偏光分離素子の作製方法によれば、有機複屈折膜は透明基板と接着する面と対向する面に保護膜が付いており、第1の紫外線を照射した後に有機複屈折膜から保護膜を剥離する工程からなり、また請求項4に記載の偏光分離素子の作製方法によれば、有機複屈折膜は透明基板と接着する面と対向する面に保護膜が付いており、透明基板に第2の紫外線を照射した後に有機複屈折膜から保護膜を剥離する工程からなるため、透明基板と有機複屈折膜の貼り合せ工程は、有機複屈折膜の面のうち回折格子を形成する面を保護膜で被覆した状態で行うことができるので、貼り合せ工程で回折格子を形成する面にキズや異物を付ける確率が著しく減少する。
【0214】
そのため、リソグラフィー工程において異物やキズによって発生するパターン欠陥を低減でき、偏光分離素子の製造歩留を向上できる。
【0215】
d)請求項5記載の偏光分離素子の作製方法によれば、有機溶媒がイソプロピルアルコールまたはアセトンの少なくとも一方であるため、貼り合せ工程で広く用いられているアクリル系やエポキシ系紫外線硬化型接着剤を非常によく溶解するので、基板周辺に接着剤残が残りにくい。また、イソプロピルアルコールやアセトンは人体に対し有害性が小さいので、より安全な作業環境を構築できる。
【0216】
e)請求項6記載の偏光分離素子の作製方法によれば、有機複屈折膜の回転数R1の回転によって透明基板の位置ずれが発生した場合、有機複屈折膜の回転を止めた状態で、透明基板を有機複屈折膜上で滑動して透明基板から有機複屈折膜がはみ出さないようにし、その後、透明基板が位置ずれを起こさない回転数R2で有機複屈折膜を回転しながら第1の紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を硬化させるので、透明基板からの有機複屈折膜のはみ出しを完全に防止できる。
【0217】
また、有機複屈折膜で被覆されていない透明基板周辺の紫外線硬化型接着剤は有機複屈折膜を回転数R2で回転させながら、紫外線硬化型接着剤を溶解しかつ有機複屈折膜を溶解しない有機溶媒を噴霧するため、透明基板の周辺部にある紫外線硬化型接着剤は除去される。
【0218】
また、有機複屈折膜を回転数R2で回転させながら前記の有機溶媒を噴霧するため、有機溶媒には遠心力がかかり、有機複屈折膜と透明基板とで挟まれた領域にある紫外線硬化型接着剤へは染み込みにくいので、第1の紫外線を照射することによって透明基板と有機複屈折膜は十分な接着面積が得られる。
【0219】
f)請求項7記載の偏光分離素子の作製方法によれば、有機複屈折膜の回転数R1の回転によって透明基板の位置ずれが発生した場合、有機複屈折膜の回転を止めた状態で、透明基板を有機複屈折膜上で滑動して透明基板から有機複屈折膜がはみ出さないようにし、その後、透明基板が位置ずれを起こさない回転数R2で有機複屈折膜を回転しながら第1の紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を半硬化させて有機複屈折膜に透明基板を固定するので、透明基板からの有機複屈折膜のはみ出しを完全に防止できる。
【0220】
また、第1の紫外線照射によっても紫外線硬化型接着剤は完全硬化しないので、紫外線硬化型接着剤を溶解する有機溶媒を噴霧することによって、容易に除去することができ紫外線硬化型接着剤の残さがより少なくなる。
【0221】
g)請求項8および9記載の偏光分離素子の作製方法によれば、透明基板と有機複屈折膜の貼り合せ工程は、有機複屈折膜の面のうち回折格子を形成する面を保護膜で被覆した状態で行うことができるので、貼り合せ工程で回折格子を形成する面にキズや異物を付ける確率が著しく減少する。
【0222】
h)請求項10記載の偏光分離素子の作製方法によれば、有機溶媒がイソプロピルアルコールまたはアセトンの少なくとも一方であるため、貼り合せ工程で広く用いられているアクリル系やエポキシ系紫外線硬化型接着剤を非常によく溶解するので、基板周辺に接着剤残が残りにくい。また、イソプロピルアルコールやアセトンは人体に対し有害性が小さいので、より安全な作業環境を構築できる。
【0226】
i)請求項11および12記載の有機複屈折膜の接着装置によれば、請求項6〜10の偏光分離素子の作製方法を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る偏光分離素子の作製法の一例(実施例1)を示す図である。
【図2】有機複屈折膜の位置ずれ修正を説明するための詳細図である。
【図3】実施例1での接着層膜厚を説明するための図である。
【図4】本発明に係る偏光分離素子の作製法の別の一例(実施例2)を示す図である。
【図5】本発明の偏光分離素子の作製法の別の一例(実施例3)を示す図である。
【図6】本発明に係る偏光分離素子の作製法の別の一例(実施例4)を示す図である。
【図7】本発明に係る偏光分離素子の作製法の別の一例(実施例5)を示す図である。
【図8】実施例5でのピン配置を示す図である。
【図9】本発明に係る偏光分離素子の作製法の別の一例(実施例6)を示す図である。
【図10】本発明に係るCD用光ピックアップの一例(実施例7)を示す図である。
【図11】本発明に係るDVD用光ピックアップの一例(実施例8)を示す図である。
【図12】本発明に係る有機複屈折膜の接着装置の一例(実施例9)を示す図である。
【図13】本発明に係る有機複屈折膜の接着装置の別の一例(実施例10)を示す図である。
【図14】貼り合せ光ディスクの作製工程を示す図である。
【図15】有機複屈折膜の位置ずれを示す概念図である。
【符号の説明】
11:透明基板(基板)、
12:スピンテーブル、
13:紫外線硬化型接着剤、
14:ディスペンサー、
15:有機複屈折膜、
151:粘着剤、
152:保護膜、
16:調整治具、
17:有機溶媒、
18:回折格子(凹凸格子)、
19:等方性接着剤、
20:対向透明基板、
21:ダイシングソー、
22:偏光分離素子、
23:ピン、
31,41:レーザーダイオード、
32,42:偏光分離素子、
33,43:コリメータレンズ、
34,44:λ/4波長板、
35,45:対物レンズ、
36:CD(CD-RW)、
37,47:フォトダイオード、
46:DVD、
51:ロボットアーム、
52:2軸アーム、
53:位置調整機構(調整機構)、
54:吸着アーム、
55:載置機構、
56:リンス機構、
57:紫外線照射機構。
Claims (12)
- 透明基板上に入射光の異なる振動面に対して屈折率が異なる有機複屈折膜を接着する接着工程と、前記有機複屈折膜上に周期的なマスクパターンを形成し、該マスクパターンを用いて有機複屈折膜をエッチングして周期的な回折格子を形成する回折格子形成工程を有する偏光分離素子の作製方法において、前記接着工程が、透明基板上に紫外線硬化型接着剤を塗布し、その後、紫外線硬化型接着剤上に有機複屈折膜を乗せ、その後、透明基板を回転数R1で回転して有機複屈折膜表面を平坦化し、その後、透明基板の回転を止めた状態で有機複屈折膜を透明基板上で滑動して位置を修正した後、有機複屈折膜が位置ずれを生じない回転数R2で透明基板を回転しながら第1の紫外線を照射し、かつ紫外線硬化型接着剤を溶解し有機複屈折膜を溶解しない有機溶媒を滴下して透明基板の周辺部の紫外線硬化型接着剤を除去する工程を有することを特徴とする偏光分離素子の作製方法。
- 請求項1記載の偏光分離素子の作製方法において、前記回転数R2の回転中の第1の紫外線照射によって前記紫外線硬化型接着剤を半硬化し、前記回転数R2の回転終了後に第2の紫外線を照射して前記紫外線硬化型接着剤を完全硬化することを特徴とする偏光分離素子の作製方法。
- 請求項1または2記載の偏光分離素子の作製方法において、前記有機複屈折膜は、前記透明基板と接着する面と対向する面に保護膜が付いており、前記第1の紫外線を照射した後に前記有機複屈折膜から前記保護膜を剥離することを特徴とする偏光分離素子の作製方法。
- 請求項2項記載の偏光分離素子の作製方法において、前記有機複屈折膜は、前記透明基板と接着する面と対向する面に保護膜が付いており、前記透明基板に第2の紫外線を照射した後に有機複屈折膜から保護膜を剥離することを特徴とする偏光分離素子の作製方法。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載の偏光分離素子の作製方法において、前記有機溶媒がイソプロピルアルコールまたはアセトンの少なくとも一方であることを特徴とする偏光分離素子の作製方法。
- 透明基板上に入射光の異なる振動面に対して屈折率が異なる有機複屈折膜を接着する接着工程と、前記有機複屈折膜上に周期的なマスクパターンを形成し、該マスクパターンを用いて有機複屈折膜をエッチングして周期的な回折格子を形成する回折格子形成工程を有する偏光分離素子の作製方法において、前記接着工程が、前記有機複屈折膜上に紫外線硬化型接着剤を塗布し、その後、前記紫外線硬化型接着剤上に透明基板を乗せ、その後、前記有機複屈折膜を回転数R1で回転し、その後、前記有機複屈折膜の回転を止めた状態で透明基板を有機複屈折膜上で滑動して位置を修正した後、前記透明基板が位置ずれを生じない回転数R2で前記有機複屈折膜を回転しながら第1の紫外線を照射し、かつ前記紫外線硬化型接着剤を溶解し前記有機複屈折膜を溶解しない有機溶媒を噴霧して前記透明基板の周辺部の紫外線硬化型接着剤を除去する工程を有することを特徴とする偏光分離素子の作製方法。
- 請求項6に記載の偏光分離素子の作製方法において、回転数R2の回転中の第1の紫外線照射によって前記紫外線硬化型接着剤を半硬化し、回転数R2の回転終了後に第2の紫外線を照射して前記紫外線硬化型接着剤を完全硬化することを特徴とする偏光分離素子の作製方法。
- 請求項6または7記載の偏光分離素子の作製方法において、前記有機複屈折膜は、前記透明基板と接着する面と対向する面に保護膜が付いており、前記第1の紫外線を照射した後に前記有機複屈折膜から前記保護膜を剥離することを特徴とする偏光分離素子の作製方法。
- 請求項7項記載の偏光分離素子の作製方法において、前記有機複屈折膜は、前記透明基板と接着する面と対向する面に保護膜が付いており、前記透明基板に第2の紫外線を照射した後に前記有機複屈折膜から前記保護膜を剥離することを特徴とする偏光分離素子の作製方法。
- 請求項6から9のいずれか1項に記載の偏光分離素子の作製方法において、前記有機溶媒が、イソプロピルアルコールまたはアセトンの少なくとも一方であることを特徴とする偏光分離素子の作製方法。
- 有機複屈折膜を保持するスピンテーブルと、該スピンテーブルを回転させる回転機構と、前記有機複屈折膜に紫外線硬化型接着剤を塗布する塗布機構と、前記有機複屈折膜上に塗布された紫外線硬化型接着剤上に透明基板を載置する載置機構と、前記紫外線硬化型接着剤を溶解しかつ前記有機複屈折膜を溶解しない有機溶媒を前記透明基板に噴霧するリンス機構と、前記透明基板を前記有機複屈折膜上で滑動して位置を修正する位置調整機構と、前記透明基板に紫外線を照射する紫外線照射機構を有することを特徴とする有機複屈折膜の接着装置。
- 請求項11に記載の有機複屈折膜の接着装置において、
前記スピンテーブルの有機複屈折膜と接触する面が多孔質であることを特徴とする有機複屈折膜の接着装置。
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