JP4222769B2 - 熱圧着方法及び熱圧着装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属製薄板状の積層部材などの被圧着体を熱圧着するのに適した熱圧着方法及び熱圧着装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、インクジェット印刷装置は、その印刷密度を向上させるために、微小ノズルが微小間隔で配置されたノズル部に、微量のインキを送り込む配管を形成した配管部が必要である。しかし、このような極小の配管部は、パイプにより作製したのでは極小化に限度があり、また、他に適当な方法がなかった。
したがって、この配管部が装置全体の小型化の妨げとなるだけでなく、印刷密度のさらなる向上を妨げていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来の配管部は、その小型化を一層押し進めるために適当な手法がないために、各種装置の性能向上を妨げているが、この問題を打開するために、熱圧着の手法を採用することが考えられる。
例えば、前述したような微量インキ供給のための配管構造を微小化するためには、インキ流路などを構成する部分を除去した薄板を積層し、熱圧着により融着してマニフォールド化することが効果的であると考えられる。
【0004】
しかし、この方法は、薄板を密着させるために、金属の溶融温度まで加熱する必要がある。しかも、接合すべき金属同士の溶融温度が異なっている場合には、双方の金属の接合面が融ける前に、溶融温度の低い方の薄板が変形してしまうので、接合すべき金属同士は、同一の溶融温度のものでなければならない。
また、薄板の加工による孔の断面形状の粗さがそのまま配管内面の粗さになり、インキなどの流路の摩擦抵抗を大きくする可能性がある。
【0005】
本件出願人は、既に、材料の選択や製作が容易で、配管内摩擦抵抗などによる内蔵微細空隙の性能の劣化がなく、従来の製品に比べ遙に小型化が可能な、微細空隙内蔵体とその製造方法を提案している。
【0006】
上記熱圧着方法は、熱圧着工程において、金属製の薄板状の積層部材からなる被圧着体(以下、製品ということがある)を、炉の中に設置した後、圧着治具によって高温に加熱しながら、圧力をかける。
このとき、上記提案では、溶融温度を下げて熱圧着を行うことができる利点がある。
しかし、上記提案の前処理を行わない場合には、圧着治具と被圧着体が溶着してしまうおそれがあるため、例えば、(1)粉末状の剥離材を散布したり、(2)圧着治具に窒化チタンのコーティングやDLC処理などを行って、溶着が発生しないようにすることが考えられる。
【0007】
しかし、前者(1)の剥離材の場合には、熱圧着工程後に、その剥離材を剥離する必要があり、通常は、製品にバフ掛けなどを行う。このため、製品の厚みが減り、予め削り代を考慮した設計が必要になるうえに、削りムラが発生する可能性がある。また、製品に微細管などがある場合には、その管内に粉末がつまることもある。さらに、圧着治具に、均一に粉末を散布することが難しいために、熱圧着ムラが発生しやすい。
【0008】
また、後者(2)の圧着治具に予め表面処理を行う場合には、定期的に、表面処理を行う必要があり、熱圧着工程中に、治具表面に傷が入ったときは、そこから溶着が始まるため、圧着治具と製品が失われる危険性がある。
【0009】
本発明の課題は、熱圧着後の後処理や、圧着治具の表面処理などの前処理が不要で、被圧着体と圧着治具との溶着を低コストで防止することを可能にする熱圧着方法及び熱圧着装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、金属製の被圧着体を構成する複数枚の薄板状の積層部材の所定部分に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記各積層部材を積層することにより前記貫通孔を連通させて所定の三次元形状の微細空隙を形成する積層工程と、前記被圧着体と金属製の圧着治具との間に金属製の剥離層を有する合いシートを挿入する挿入工程と、前記被圧着体を前記圧着治具によって熱圧着する熱圧着工程と、を備えた熱圧着方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面などを参照しながら、本発明の実施の形態をあげて、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明による熱圧着装置の実施形態を示す図である。
この実施形態の熱圧着装置100は、炉101と、圧着治具102と、油圧シリンダー103と、金属合い紙(合いシート)104等とを備えている。
【0018】
炉101は、熱圧着を行う高温加熱が可能な炉であって、この実施形態では、真空中で、900〜1100℃の温度を2時間程度かける。
圧着治具102は、製品(被圧着体)10を、通常、上下から押さえる部材である。この圧着治具102の材質は、製品10の伸縮に合わせるために、製品10と同種の金属にすることが望ましく、例えば、SUS304やSUS430などが用いられている。
油圧シリンダー103は、製品10に圧力を掛けるように圧着治具102を駆動する駆動手段である。
【0019】
金属合い紙104は、圧着治具102と製品10との間に挟んで使用され、圧着治具102と製品10とが溶着するのを防止する部材である。この金属合い紙104は、SUSにアルミニウムを含有させた析出硬化型ステンレス鋼などの金属(例えば、日本冶金製430Aなど)であり、使用前に、炉101内で、1000℃程度に加熱することにより、その表面にアルミニウムを析出させ、析出したアルミニウムが酸化アルミニウム(アルミナ,Al2 O3 )の剥離層を形成し、各部材の溶着(治具102と合い紙104の溶着、合い紙104と製品10との溶着)を防止する。
【0020】
析出硬化型ステンレス鋼としては、上述した日本冶金製の430Aの他に、日本高周波鋼業製のKTA17−7,KMS18−14,KMS18−17、日新製鋼製のNCA1、日本金属製のSUS631、日本金属工業製のNTK405,NTK631,NTKNY−80A等を使用することができる。
【0021】
この金属合い紙104は、その熱膨張率が製品10や圧着治具102と略同じであることが好ましい。
【0022】
製品10は、80μm〜2mm程度の厚みを持ち、各部材にデザインに基づいたエッチングを施し、複数枚を積層し、熱圧着することにより、流路が貫通する等の3次元形状を作り込んだものである。
図2は、図1の装置で製造される被圧着体(製品)の一例を構成する単位配管部品の一つを示した説明図(斜視図)である。
この製品10は、例えば、インクジェット印刷装置の構造部材となる微細配管の集合体であるマニフォールドを例にしたものであり、薄板11、12、13等から構成されている。
【0023】
薄板11には、表裏に貫通する貫通孔11bが開けられている。同様に、薄板12、13にも、別の形状の貫通孔12b、13bが開けられている。各薄板の貫通孔11a、12b、13bなどがつながって、インクなどを通す微細空隙Bを形成する。
【0024】
図2の微細空隙Bは、インクジェット印刷装置の駆動部にインクを供給するための配管部品の例であり、他の同種の部品又は他の類似部品とを組み合わせた集合体として使用するのが一般的である。図2では、配管となる空隙を点線で示し、これに接続されるべき外部の配管の位置を2点鎖線で示してある。
【0025】
図2の例では、薄板11、12、13の3枚を重ねて熱圧着する。それぞれの素材となる薄板11、12、13は、厚みが80μm〜0.2mm程度のSUS304の板であって、微細空隙Bを構成すべき所定の箇所に、それぞれ表裏に貫通する孔11b、12b、13bが設けてある。薄板11は最上段に、薄板12は中段に、薄板13は最下段になるよう積み重ねられる。
【0026】
図3、図4、図5は、それぞれ薄板11、薄板12、薄板13を示す斜視図である。
薄板11、12、13は、積層して加熱しながら圧着したときに、貫通孔11b、12b、13bは相互につながって3次元形状のインク供給のための配管部(微細空隙)Bを形成する。
【0027】
例えば、インクジェット印刷装置は、微細配管を必要とする装置の小型化の場合、インキ供給用の配管構造として、インキ流路の一部となる微細空隙を作りこんだ積層板(薄板)を積み重ね、熱圧着により融着したマニフォールドを使用することができる。
【0028】
次に、図6及び図7を参照しながら、本実施形態の熱圧着方法を具体的に説明する。
金属合い紙104は、炉101に入れ、1000℃で60分程度熱し、図6に示すように、金属合い紙104の表面に、アルミニウムを析出させ、そのアルミニウムが酸化した酸化アルミニウム層(アルミナ層)である剥離層104aを形成した。
【0029】
これと並行して、上述した流路を3次元形状に形成した薄板11、12、13は、位置決めピン(不図示)などによって位置決めして、アーク溶接などによって仮止めを行った。そして、図7に示すように、仮止めされた各薄板11、12、13を、金属合い紙104で挟み込む形で、炉101に入れた。
【0030】
炉101内では、圧着治具102を介して、油圧シリンダー103によって、上下から圧力(70〜80kg/cm2 )を加えた。そのままの状態で、炉101内を真空引きして(0.005MPa)、溶融温度(SUS304の場合には、1000℃程度)に設定し、6時間加熱を行った後に、6時間除冷を行い、各薄板11、12、13の熱圧着を行った。
圧着後に、圧着治具102を開放して、製品10を取り出したところ、圧着治具102と製品10とは、溶着していなかった。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、金属合い紙104は、SUSにアルミニウムを含有させた金属であり、使用前に、炉101内で、1000℃程度に加熱することにより、その表面にアルミニウムを析出させ、析出したアルミニウムが酸化アルミニウムの剥離層104aを形成するので、圧着治具102と金属合い紙104の溶着、金属合い紙104と製品10との溶着を防止することができる。
【0032】
上述したように溶着しない理由は、次のように考えられる。金属合い紙104は、部材を付ける面(表面)を、熱圧着する前に、事前準備として、炉内101で焼き固めておく。すると、表面にアルミニウムが析出し、析出したアルミニウムが酸化して、表面に酸化アルミニウムの膜(アルミナ層)が生成される。
通常は、SUS同士は、2枚の部材を熱圧着させたときに、鉄、クロム、ニッケルの成分が、お互いに行き交うことによって、接合部分が他の部分と変わらないようになって行き、金属成分の移動速度がある速度になったとき(均衡したとき)に、接合が完了する。
【0033】
ここで、アルミニウムの析出速度は、他の成分(鉄やクロム)に比べて速く、析出は、アルミニウム、クロム、鉄の順番となる。したがって、対向する面に他の金属部材があるときには、アルミニウムとしか接合できない。アルミニウムが析出されると、酸素があるので、すぐに、アルミナ層になる。つまり、他の金属成分と接合する前に酸素と結合して、アルミナ層になってしまう。このアルミナ層がある場合には、他の金属の移動速度は、4桁くらい遅くなることが実験によって確認されている。
【0034】
アルミニウムが析出された後に、クロムが析出されるが、アルミナ層ができている間に、製品の熱圧着が完了してしまう。したがって、これだけでも十分であるが、本実施形態の場合には、さらに、クロムが析出され、鉄という順番であるので、SUS同士の接合は、この3種類の成分が適当に金属結合しないと、結合した状態にならないので、圧着治具102と金属合い紙104の界面、金属合い紙104と製品10の界面が溶着しないと考えられる。
【0035】
本発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、種々の変形又は変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)被圧着体は、上述した製品の他に、次のような微細空隙内蔵体であってもよい。例えば、図8は、微細空隙内蔵体の微細配管の集合体であるマニフォールドをより具体的に示したものであり、図中左下の楕円形で囲んだ部分は、マニフォールドの一部を拡大したもので、全体の斜視図の楕円形の点線で囲んだ部分に相当する。この場合には、薄板1には、表裏に貫通する貫通孔1a、1a・・・1aが開けられている。同様に、薄板2、3にも、別の形状の貫通孔2a,3aが開けられている。各薄板の貫通孔1a、2a・・・3aなどがつながって、インクなどを通す微細空隙Aを形成する。
【0036】
(2)インクジェット印刷装置の構成部品の例で説明したが、他にも、ディスペンサー等の微小インク吐出/供給装置、燃料電池の部品、ディーゼルエンジンのパーティキュレート補修フィルターなどの製造にも、本発明を適用することができる。
【0037】
(3)薄板の表裏を貫通する貫通孔は、上述した説明では、エッチング法により作製しているが、他の穿孔方法によっても行なってもよい。その方法によっては、薄板の表面処理を行った後に、貫通孔を作るための加工を行ってもよい場合もある。
これらの貫通孔によって構成される空隙は、上述した説明では、一つの入り口に対して、複数の出口のあるマニホールドなどの配管類について述べたが、外部に通じる開放口が一つだけもよく、さらに、熱交換のヒートパイプに使用される部品のように、外部に通じる場所がなく、微細空隙内蔵体の内部に空隙が密封されているものであってもよい。なお、微細空隙の形状が異なるものであっても、本発明の趣旨に沿うものであれば、そのいずれもが本発明に含まれる。
【0038】
(4)金属合い紙を挿入する例で説明したが、圧着治具をアルミニウムを含む金属にして、炉内でその表面にアルミナ層を形成して剥離層とすることもできる。この場合に、従来の技術で説明した前処理と異なり、炉内でアルミナ層を形成できるうえ、アルミナ層は次々に生成されるので、従来の技術のような不都合はない。
【0039】
(5)合いシートとして、セラミックシートを挟むことも考えられるが、高価でで、一度しか使えず、使い捨てとなり、コストアップになるうえ、使っている途中に割れが入るおそれがあるので、本発明とは異なるものである。
【0040】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、本発明によれば、被圧着体と熱圧着しない金属製の剥離層が形成される合いシート、又は、被圧着体と熱圧着しない金属製の剥離層が形成される圧着治具を用いたので、熱圧着後の後処理や圧着治具の前処理をすることなく、熱圧着をする際に、圧着治具と合いシートの溶着若しくは合いシートと被圧着体との溶着、又は、圧着治具と被圧着体の溶着を防止することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による熱圧着装置の実施形態を示す図である。
【図2】本実施形態の熱圧着装置で圧着される製品の一つを示した説明図(斜視図)である。
【図3】図2の製品の最上層の薄板を示す斜視図である。
【図4】図2の製品の中間層の薄板を示す斜視図である。
【図5】図2の製品の最下層の薄板を示す斜視図である。
【図6】本実施形態による熱圧着方法で使用される金属合い紙を説明する図である。
【図7】本実施形態による熱圧着方法で使用される金属合い紙を説明する図である。
【図8】本実施形態による熱圧着装置で製造されるほか製品をより具体的に示す斜視図である。
【符号の説明】
100 熱圧着装置
101 炉
102 圧着治具
103 油圧シリンダー
104 金属合い紙(合いシート)
104a 剥離層(アルミナ層)
10 製品
11、12、13 薄板
B 微細空隙(配管)
Claims (1)
- 金属製の被圧着体を構成する複数枚の薄板状の積層部材の所定部分に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記各積層部材を積層することにより前記貫通孔を連通させて所定の三次元形状の微細空隙を形成する積層工程と、
前記被圧着体と金属製の圧着治具との間に金属製の剥離層を有する合いシートを挿入する挿入工程と、
前記被圧着体を前記圧着治具によって熱圧着する熱圧着工程と、を備えた熱圧着方法。
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