JP4222593B2 - 電子写真用トナー及び製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、1成分現像又は2成分現像装置を備える電子写真装置に用いるトナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カラープリンターや複写機等の電子写真装置は、オフィスのOA化が進むにつれて近年ますます需要が高まり、それと共に電子写真もより高画質のものが要望されるようになっている。電子写真装置で形成する画像の品質は、使用する電子写真用トナーの粒径によっても影響を受けることが知られており、高画質で微細な画像を得るために、より小粒径のトナーが用いられるようになってきている。
【0003】
電子写真用トナーは通常、材料の混合、溶融混練、圧延冷却、粉砕及び分級の工程を経て製造される。電子写真用トナーとして小粒径のものが求められる現状に対応すべく、トナーを製造する際の材料の粉砕性が注目されるようになっている。粉砕性がよくないと、トナーを現像剤として電子写真に用いた際に感光体フィルミング等の問題を引き起こし、特に長期に亘って使用したときに画質の劣化となって現れる。
【0004】
ところで、トナー材料の粉砕性は、その硬さと相関がある。トナーの硬さに注目した従来技術として、特開昭62−209466号公報には、ビッカース硬さが2〜8kg/mm2である硬度付与作用を有する樹脂を含むことを特徴とするトナー組成物が開示されている。しかし、このトナー組成物の狙いは、長期に亘り安定な保形性、低温定着性、耐オフセット性を有するようにすることであり、3種の樹脂を機能分離して用いるものであって、トナーの粉砕性には着目しておらず、この点で十分ではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明では、小粒径化が進んでも、粉砕しやすく、耐摩耗性のある電子写真用トナー及びその製造方法を提供することを目的とする。さらには、電子写真装置において、耐久特性として問題になる帯電特性の変化、感光体、現像ローラやドクターローラ等へのフィルミング発生を無くし、画質劣化を生じないような電子写真用トナー及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、トナーを製造するある段階での硬度を評価することにより、本発明の目的を達成できることを見出した。すなわち、本発明は以下の(1)〜(2)からなる。
【0007】
(1)電子写真用トナーの製造方法であって、少なくとも樹脂、顔料及び電荷制御剤を混合し、該混合物を、溶融固化したチップ状の混練物のマイクロビッカース硬度を荷重50g以下で測定場所を変え、繰返し測定したとき、測定値の最大値が18以下であり、かつ、最大値と最小値の差が2以上となるように混練し、圧延冷却し、粉砕し、分級することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
【0008】
(2)上記混練物の内部に5μm以上の軟らかい部分が存在することを特徴とする(1)に記載の電子写真用トナーの製造方法。
【0016】
以下に本発明について詳しく説明する。
本発明に係るトナーは、製造工程に次のような混練工程を経て製造される。まず、樹脂、着色剤としての顔料及び電荷制御剤、必要に応じて添加剤等を混合機により充分に混合する。その後、熱混練機を用いて構成材料をよく混練し、圧延冷却後、切断を行なう。切断後に、溶融固化したチップ状の混練物が得られる。本発明では、この混練物のビッカース硬度を規定する。なお、混練以外の工程を含むトナーの製造方法については、発明の実施の形態の欄に後述する。
【0017】
このトナー混練物のマイクロビッカース硬度Hvは、粉砕性と相関があり、Hvが大きいと粉砕性が悪く、製造時の単位時間当たりのトナー収率が低下する。この傾向は、トナーの小粒径化に伴ない顕著になり、粉砕性を向上させる工夫が必要になってきている。Hvの値は、後述する実施例及び比較例の評価結果である図1及び図2で示すように、粉砕性を良くするには最大値が18以下で、かつ、繰返し測定したときの最大値と最小値の差を2以上にする必要があった。つまり、本発明者らの検討により、トナー混練物の硬度が硬くてもその中に軟らかい部分が存在していれば、すなわち混練物の硬度にある程度の分布があれば、粉砕性が向上することが分かった。Hvは5未満では、トナーの耐久特性が悪くなり、ドクターブレードへの固着、フィルミングやトナー飛散等が発生し易くなる。Hvが18より大きくなると、粉砕の収率が悪くなり、環境(エネルギー)問題やコスト問題に影響してくる。
【0018】
この混練物の硬度測定は、マイクロビッカース硬度測定装置(例:アカシ製・MVK−G1型)にて行なう。測定法はJIS Z2251−80、JIS B7734−91に準ずる。測定荷重は、50g以下の範囲でクラックや陥没現象が生じない条件を選択する。このとき、測定荷重は変化してもHv値は変化しないが、測定精度を高くするために測定するチップ状の混練物が割れない範囲でなるべく大きい値を用いることが好ましい。また、微小な部分の硬さの分布を測定する必要があるため、出来るだけ圧痕のサイズが小さくなるように荷重を調整する必要がある。測定の繰り返し数は多い方がよいが、通常10回程度測定すれば十分である。また、実際に測定する際には、まず荷重50gで測定し、チップ状混練物に割れが生じた場合には45gで測定する。45gでも割れが生じた場合には40g、と5g刻みで荷重を減らし、割れのないところで最大の荷重で測定することが好ましい。
【0019】
トナー混練物の硬度は、プレ混合条件、混練工程での混練条件(スクリュー形状、混練回転数、温度、真空度、冷却有無等)、圧延冷却工程での圧延冷却条件(冷却温度、回転数、プレス圧等)や混練物の組成、構造によって変化する。特に、混練物の内部構造は硬度の測定結果に重要な役割を果たし、光学顕微鏡により観察した結果、以下のような状態のとき硬度に望ましい分布が生じることが分かった。
▲1▼混練物内部に5μm以上の微小な軟らかい部分が点在する。
▲2▼混練物の内部に、10μm以上の楕円状の柔かい部分が点在する。
▲3▼混練物の内部に、縞状の軟らかい部分が硬い部分の中に存在している。
ここで、▲3▼の状態は、縞状の部分がチップ状の混練物全体に分布している状態を指す。混練物中に軟らかい部分があれば、その位置を測定したときのHvは最小値を与え、軟らかい部分の周囲の硬い部分を測定したときのHvは最大値を与えることになる。上述のように本発明のトナーを製造するための混練物ではこの差は2以上である。硬度は、測定位置を変えながら繰り返し測定し、表面の分布の様子を調べることが好ましい。
【0020】
本発明において、5μm以上の軟らかい部分とは、チップ状混練物の内部の構造を反映して硬度測定をする混練物表面に現れた軟らかい部分について、その部分を円形とみなしたときの直径が5μm以上であることを言う。10μm以上の楕円状とは、同様にチップ状混練物の表面に現れた軟らかい部分を楕円とみなしたときの長径が10μm以上であることを言う。チップ状混練物の表面に光学顕微鏡で観察されるこのような軟らかい部分は、混練物内部の構造を反映している。そのため、このような表面が観察されるときには、混練物の内部に直径5μm以上のほぼ球形の軟らかい部分が点在する、又は、全長が10μm以上のほぼ楕円体状の軟らかい部分が点在することを示している。
【0021】
また、光学顕微鏡で観察した結果、軟らかい部分は他の着色した部分に比較して、透明に見えるか又は白く見える。したがって、この部分は樹脂やワックス等で構成されていると考えられる。
【0022】
これらの内部構造は、上記混練条件や圧延冷却条件によって決まり、それぞれの条件を複合的に適切に組み合わせることで形成できる。また、人為的に樹脂と相溶しない材料を細かく分布させるようにしてこの内部構造を実現させてもよい。この軟らかい部分の状態の違いは、基本的にはバレル温度や混練回転数等の混練工程の条件により制御できる。具体的には、以下のように変化する。
バレル温度……………… 低い → 中 → 高い
軟らかい部分の形状……▲3▼縞状 → ▲2▼楕円状 → ▲1▼微細な点状
混練回転数……………… 低い → 中 → 高い
軟らかい部分の形状……▲3▼縞状 → ▲2▼楕円状 → ▲1▼微細な点状
【0023】
しかし、これら軟らかい部分の形状の傾向は複合的に変化するので、例えばバレル温度を序々に高くしていったときに、縞状構造が観察されることなく楕円状の軟らかい部分が観察され始めることもある。さらに、この2条件の他の要因も密接に関係してくるので、適当な硬度の分布を得るためには他の条件も適当に選択することが望ましい。具体的条件の組み合わせとしては、後述する実施例に示すとおりである。
【0024】
このような内部構造が得られたとしても、より望ましい混練物の状態として、軟らかい部分以外の領域はトナ―の構成材料が均一な状態であることが挙げられる。つまり、着色された均一な状態の中に軟らかい部分が点在している構造をしていることが好ましい。この構造を実現するためには、プレ混合工程時に顔料を直接樹脂や電荷制御剤と一緒に投入するのではなく、顔料を予め樹脂中に均一に分散させ、細かいブロック状にしたものを用いて投入し、混練するとよい。
【0025】
混練物中の軟らかい部分は、粉砕時に他の部分より軟らかいために細かく粉砕され、分級工程で微分として処理される。すなわち、この混練物は良好な粉砕性を示し、より小粒径のトナーを製造する際にも顕著な効果がある。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に本発明についてさらに具体的に説明する。
本発明のトナーは、少なくとも樹脂、顔料及び電荷制御剤を含む。樹脂としては、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンメタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、テルペン樹脂、ポリオール樹脂等がある。
【0027】
ビニル樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体:スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体:ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等がある。
【0028】
ポリエステル樹脂としては以下のA群に示したような2価のアルコールと、B群に示したような二塩基酸塩からなるものであり、さらにC群に示したような3価以上のアルコールあるいはカルボン酸を第三成分として加えてもよい。
【0029】
A群:エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3,3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2,0)−2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等。
【0030】
B群:マレイン酸、フマール酸、メサコニン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタール酸、イソフタール酸、テレフタール酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、リノレイン酸、又はこれらの酸無水物又は低級アルコールのエステル等。
【0031】
C群:グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコール、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上のカルボン酸等。
【0032】
ポリオール樹脂としては、エポキシ樹脂と、2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物又はそのグリシジルエーテルとエポキシ基と反応する活性水素を分子中に1個有する化合物と、エポキシ樹脂と反応する活性水素を分子中に2個以上有する化合物を反応してなるもの等がある。
【0033】
本発明で用いる顔料としては以下のものが用いられる。下記の顔料は1種又は2種以上を使用することができる。
【0034】
黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物が挙げられる。
【0035】
黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキが挙げられる。
【0036】
橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGKが挙げられる。
【0037】
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bが挙げられる。
【0038】
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
【0039】
青色顔料としては、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBCが挙げられる。
【0040】
緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ等がある。
【0041】
特にカラートナーにおいては、良好な顔料の均一分散が必須となり、顔料を直接大量の樹脂中に投入するのではなく、一度高濃度に顔料を分散させたマスターバッチを作製し、それを希釈する形で投入する方式が用いられている。この場合、一般的には、分散性を助けるために溶剤が使用されていたが、環境への悪影響等の問題があり、本発明のトナーにおいては溶剤を用いずに水を用いて顔料を分散させることができる。実際に、後述する実施例では、水を使用して分散させた。水を使用する場合、マスターバッチ中の残水分が問題にならないように、温度コントロールが重要になる。
【0042】
本発明のトナーでは電荷制御剤をトナー粒子内部に配合(内添)している。しかし、電荷制御剤をトナー粒子に内添した後、さらにトナー粒子と混合(外添)して用いてもよい。電荷制御剤によって、現像システムに応じた最適の電荷量コントロールが可能となり、特に本発明では、粒度分布と電荷量とのバランスを更に安定したものとすることが可能である。
【0043】
トナーを正電荷性に制御するものとして、ニグロシン及び四級アンモニウム塩、トリフェニルメタン系染料、イミダゾール金属錯体や塩類を、単独あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。また、トナーを負電荷性に制御するものとしてサリチル酸金属錯体や塩類、有機ホウ素塩類、カリックスアレン系化合物等が用いられる。
【0044】
また、本発明におけるトナーには、定着時のオフセット防止のために離型剤を内添することも可能である。離型剤としては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス等の天然ワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキルリン酸エステル等がある。これら離型剤の融点は65〜90℃であることが好ましい。この範囲より低い場合には、トナーの保存時のブロッキングが発生しやすくなり、この範囲より高い場合には定着ローラ温度が低い領域でオフセットが発生しやすくなる場合がある。
【0045】
本発明に係るトナーを作製する方法の一例としては、まず、前述した樹脂、着色剤としての顔料、電荷制御剤、離型剤、その他の添加剤等をヘンシェルミキサーの如き混合機により充分に混合する。その後、上記課題を解決するための手段の欄で説明した混練工程を経る。このとき、混練機としては、バッチ式の2本ロール、バンバリーミキサーや連続式の2軸押出し機、例えば神戸製鋼所社製KTK型2軸押出し機、東芝機械社製TEM型2軸押出し機、KCK社製2軸押出し機、池貝鉄工社製PCM型2軸押出し機、栗本鉄工所社製KEX型2軸押出し機や、連続式の1軸混練機、例えばブッス社製コ・ニーダ等の熱混練機を用いて構成材料をよく混練し、圧延冷却後、切断を行なう。この切断後のチップ状の混練物について、同様に上述したビッカース硬度の測定を行って評価する。
【0046】
切断後のトナー混練物は破砕を行ない、ハンマーミル等を用いて粗粉砕し、更にジェット気流を用いた微粉砕機や機械式粉砕機により微粉砕し、旋回気流を用いた分級機やコアンダ効果を用いた分級機により所定の粒度に分級する。その後、無機微粉体等からなる添加剤を粒子表面に付着もしくは固着させ、250メッシュ以上の篩を通過させ、粗大粒子、凝集粒子を除去し本発明のトナーを得る。さらに2成分現像剤として使用する場合は、後述する磁性キャリアと所定の混合比率で混合することによって2成分現像剤とする。
【0047】
本発明のトナーの重量平均粒径は5〜10μmであり、さらに好ましくは6〜8μmである。重量平均粒径5μm未満では長期間の使用でのトナー飛散による機内の汚れ、低湿環境下での画像濃度低下、感光体クリーニング不良等という問題が生じやすい。また重量平均粒径が10μmを超える場合では100μm以下の微小スポットの解像度が充分でなく非画像部への飛び散りも多く画像品位が劣る傾向となる。
【0048】
本発明のトナーは、接触又は非接触現像方式に使用する1成分現像剤として用いる。接触又は非接触現像方式は、公知の様々なものを使用できる。例えば,アルミスリーブを用いた接触現像法、導電性ゴムベルトを用いた接触現像法、アルミ素管の表面にカーボンブラック等を含む導電性樹脂層を形成した現像スリーブを用いる非接触現像法等がある。
【0049】
また、1成分現像方式においては、トナー供給部の出口にトナー層を均一にするためのローラ状のブレードを設けた現像方式に、本発明のトナーを用いることが好ましい。このような方式の場合には、感光体へのフィルミングだけではなく、ドクターローラへのフィルミングが発生する。このため、トナー層が均一に形成できないばかりかトナー帯電が不均一になり、トナー電荷量も小さくなる。このため現像不良が生じる。しかし本発明のトナーを用いると、ドクターローラへのフィルミングは発生せず、安定した現像が行なわれ、耐久特性に優れた方式となる。
【0050】
また、1成分現像方式において、トナー供給部の中にトナーのくみ上げ量を安定化するための供給ローラを設けた現像方式に、本発明のトナーを用いることができる。このような方式の場合には、感光体へのフィルミングだけではなく、供給ローラへのフィルミングが発生する。このため、トナーの安定供給が出来ないばかりかトナー帯電が不均一になり、トナー電荷量が小さくなる。このため現像不良が生じる。しかし、本発明のトナーを用いると、供給ローラへのフィルミングは発生せず、安定した現像が行なわれ、耐久特性に優れた方式となる。
【0051】
また、磁性トナーとする場合には、トナー粒子の中に磁性体の微粒子を内添すればよい。磁性体としては、フェライト、マグネタイト、鉄、ニッケル、コバルト、それらの合金等の強磁性体等が考えられる。磁性体の平均粒径は0.1〜1μmが好ましい。磁性体の含有量はトナー100重量部に対して、10から70重量部であることが好ましい。
【0052】
2成分現像剤に使用されるキャリアとしては公知のものが使用可能であり、例えば鉄粉、フェライト粉、ニッケル粉、マグネタイト粉の如き磁性粒子あるいはこれら磁性粒子の表面をフッ素系樹脂、ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂等で処理したもの、あるいは磁性粒子が樹脂中に分散されている磁性粒子分散樹脂粒子等が挙げられる。
【0053】
これら磁性キャリアの平均粒径は30〜500μmがよい。好ましくは30〜100μmがよい。キャリアの平均粒径がこの範囲にあると、本発明のトナーと組み合わせることにより、現像機内部のトナー濃度が2〜10重量%の範囲内において、トナーの帯電量をより均一にすることができる。30μm未満ではキャリア粒子の感光体上への付着等が生じやすく、さらにトナーとの撹拌効率が悪くなりトナーの均一な帯電量が得られにくくなる。また100μmを超える場合では、細かい画像再現性が悪くなる。
【0054】
また、前述したように本発明の2成分現像剤は流動性向上剤として無機微粉体をトナーに添加して用いることが可能である。トナーに添加する無機微粉体としては、Si、Ti、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、In、Ga、Ni、Mn、W、Fe、Co、Zn、Cr、Mo、Cu、Ag、V、Zr等の酸化物や複合酸化物が挙げられる。これらのうち二酸化珪素(シリカ)、二酸化チタン(チタニア)、アルミナの微粒子が好適に用いられる。無機微粉体はトナーに対して0.1〜2重量%使用されるのが好ましい。0.1重量%未満では、トナー凝集を改善する効果が乏しくなり、2重量%を超える場合は、細線間のトナー飛び散り、機内の汚染、感光体の傷や摩耗等の問題が生じやすい傾向がある。
【0055】
さらに、本発明のトナーは疎水化処理剤等により表面改質処理することが有効である。疎水化処理剤の代表例としては以下のものが挙げられる。ジメチルジクロルシラン、トリメチルクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルジクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、p−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、クロルメチルトリクロルシラン、ヘキサフェニルジシラザン、ヘキサトリルジシラザン等である。
【0056】
また、本発明の現像剤には、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の添加剤、例えばテフロン(登録商標)粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末;あるいは酸化セリウム粉末、炭化珪素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末等の研磨剤;あるいは例えばカーボンブラック粉末、酸化亜鉛粉末、酸化スズ粉末等の導電性付与剤を現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0057】
以下、実施例を説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。なお、以下の配合における部数は全て重量部である。
【0058】
―実施例1―
樹脂 ポリオール樹脂 100部
顔料 マゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド57) 5部
電荷制御剤 サリチル酸亜鉛塩 5部
離型剤 低分子量ポリエチレン 5部
上記原材料をミキサーで十分に混合した後、2軸押出し機により混練物温度120℃混練機回転数80rpmで溶融混練した。得られた混練物の荷重25gにおけるマイクロビッカース硬度及び粉砕フィード量は後述する表1のようになった。この混練物を光学顕微鏡で観察したところ、その内部には縞状の軟らかい部分や10μm以上の楕円状の軟らかい部分が多数存在していた。
【0059】
得られた混練物を圧延冷却後カッターミルで粗粉砕し、ジェット気流を用いた微粉砕機で粉砕後、旋回式風力分級装置を用いて、平均粒径が7μmの粒度分布に分級し、母体着色粒子を得た。さらに、母体着色粒子100部に対して、シリカ微粉末1部をスーパーミキサーにて混合し、本発明のトナーを得た。さらに、本トナーを平均粒径100μmのフェライト粒子にシリコン樹脂を表面にコートしたキャリア97.5部に対し、2.5部の割合で混合し、2成分現像剤を作製した。
【0060】
得られた現像剤を、潜像担持体がOPCドラム感光体で、クリーニング方式がブレードクリーニングである複写機にセットし、連続複写の耐久試験を行った。トナーの評価は、フィルミングの発生時期で評価した。その結果は下記の表1に示した。表1において、評価項目はトナー混練物のマイクロビッカース硬度Hvを10回測定したときの最大値及び最小値、Hv(最大値−最小値)の値、粉砕フィード量、耐久試験時のフィルミングが発生した時点のコピー枚数である。粉砕フィード量は大きいほど粉砕性がよいことを示す。さらに、トナー混練物の最大Hvと粉砕フィード量との関係を後述する実施例2〜6及び比較例1、2の結果と共に図1に示す。
【0061】
―実施例2―
樹脂 ポリエステル樹脂 100部
顔料 カーボンブラック 7部
電荷制御剤 サリチル酸亜鉛塩 5部
上記原材料を、混練回転数を130rpmに上げた以外は実施例1と同様の方法で、混練、粉砕及び分級を行ない、平均粒径が7μmの粒度分布に分級した。さらに、母体着色粒子100部に対して、シリカ微粉末1部をスーパーミキサーにて混合し、1成分現像剤すなわち本発明のトナーを得た。
【0062】
実施例1と同様の測定を行ったところ、得られたトナー混練物の荷重50gにおけるマイクロビッカース硬度、粉砕フィード量は下記の表1のようになった。トナー混練物を光学顕微鏡で観察したところ、その内部には、5μm以上の微小な軟らかい部分や10μm以上の楕円状の軟らかい部分が点在していた。また、本トナーはOPCドラム及びドクターブレードを用いた1成分現像装置で連続複写の耐久試験を行った。トナー評価の結果を下記の表1及び図1に示す。また、Hvの最大値と最小値の差と、粉砕フィード量との関係を後述する実施例3〜6及び比較例2の結果と共に図2に示す。
【0063】
上記原材料を実施例2と同様の方法で混練、粉砕及び分級を行ない、平均粒径が7μmの粒度分布に分級した。さらに、得られた母体着色粒子100部に対して、シリカ微粉末1部をスーパーミキサーにて混合し、1成分現像剤すなわち本発明のトナーを得た。
【0064】
実施例2と同様の測定を行ったところ、本実施例のトナー混練物の荷重50gにおけるマイクロビッカース硬度、粉砕フィード量は下記の表1のようになった。本トナー混練物を光学顕微鏡で観察したところ、その内部には、楕円状の軟らかい部分が点在していた。また、本トナーはOPCドラム及びドクターローラを用いた1成分現像装置で連続複写の耐久試験を行った。トナー評価の結果を下記の表1、図1及び図2に示す。
【0065】
―実施例4―
樹脂 スチレン−メチルアクリレート共重合体 100部
磁性体 四三酸化鉄 80部
電荷制御剤 サリチル酸亜鉛塩 4部
上記原材料を実施例1と同様の方法で混練、粉砕及び分級を行ない、平均粒径が7μmの粒度分布に分級し、母体着色粒子を得た。さらに、得られた母体着色粒子100部に対して、シリカ微粉末を1部スーパーミキサーにて混合し、1成分現像剤すなわち本発明のトナーを得た。なお、本実施例では、磁性体が顔料を兼ねる。
【0066】
実施例1と同様の測定をしたところ、本実施例のトナー混練物の荷重50gにおけるマイクロビッカース硬度、粉砕フィード量は下記の表1のようになった。本トナー混練物を光学顕微鏡で観察したところ、その内部には縞状の軟らかい部分が存在していた。また、本トナーはOPCドラム及びドクターローラを用いた1成分現像装置で連続複写の耐久試験を行った。トナー評価の結果を下記の表1、図1及び図2に示す。
【0067】
―実施例5―
実施例3の母体着色粒子製造において、水を使用して分散させたマスターバッチを用いた以外は、実施例3と同様にしてトナーを作製し、同様の測定を行った。トナー混練物を光学顕微鏡で観察したところ、その内部には5μm以上の軟らかい部分が点在していた。また、本トナーはOPCドラム及びドクターローラを用いた1成分現像装置で連続複写の耐久試験を行った。得られたトナー混練物の荷重50gにおけるマイクロビッカース硬度、粉砕フィード量及びトナー評価の結果を下記の表1、図1及び図2に示す。
【0068】
―実施例6―
実施例2において、ポリエステル樹脂の代りにスチレンアクリル樹脂を使用した以外は、実施例2と同様にして、トナーを作製した。
実施例2と同様の測定をしたところ、得られたトナー混練物の荷重50gにおけるマイクロビッカース硬度、粉砕フィード量は下記の表1のようになった。トナー混練物を光学顕微鏡で観察したところ、その内部には楕円状の軟らかい部分が存在していた。また、本トナーはOPCドラム及びドクターブレ―ドを用いた1成分現像装置で連続複写の耐久試験を行った。トナー評価の結果を下記の表1、図1及び図2に示す。
【0069】
―比較例1―
実施例1で混練工程のバレル温度を80℃に下げ、混練物硬度の最大値と最小値の差が1になるようにした以外は実施例1と同様にして、2成分現像剤を作製し、実施例1と同様の評価を行なった。トナー混練物を光学顕微鏡で観察したところ、その内部には縞状の軟らかい部分が多数存在していた。トナー評価の結果を下記の表1及び図1に示す。
【0070】
―比較例2―
実施例2で混練工程の混練回転数を180rpmに上げ、混練物硬度の最大値と最小値の差が1.1になるようにした他は実施例2と同様にして、トナーを作製し、実施例2と同様の評価を行なった。トナー混練物を光学顕微鏡で観察したところ、その内部には5μm以上の軟らかい部分は存在していなかった。トナー評価の結果を表1、図1及び図2に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1及び図1、2から、トナー混練物の硬度Hvの最大値を18以下で、最大値と最小値との差を2以上にすることにより、粉砕性が良くて耐久特性のよいトナーが得られること分かる。
【0073】
【発明の効果】
本発明では、混練工程後の溶融固化したチップ状の混練物のマイクロビッカース硬度の最大値が18以下で、最大値と最小値との差が2以上になるように、溶融混練後の冷却固化した物の状態を規定することにより、小粒径トナーでも粉砕しやすい特徴を持ち、長期安定性に優れているトナーを提供することが出来る。そのため、連続して多数枚の画像を現像する時でも、他の部材との摩擦によりトナーが粉砕されることもなく、いつまでも安定した電荷量のトナーを現像部に供給することができる。加えて、耐久特性として問題になる帯電特性の変化、トナー飛散、感光体、現像ローラやドクターローラ等へのフィルミング発生を無くし、画質劣化を生じないようにすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例及び比較例で得られたトナー混練物の最大硬度Hvと粉砕フィード量の関係を表すグラフである。
【図2】 実施例及び比較例で得られたトナー混練物の、最大硬度と最小硬度の差と粉砕フィード量の関係を表すグラフである。
Claims (2)
- 電子写真用トナーの製造方法であって、少なくとも樹脂、顔料及び電荷制御剤を混合し、該混合物を、溶融固化したチップ状の混練物のマイクロビッカース硬度を荷重50g以下で測定場所を変え、繰返し測定したとき、測定値の最大値が18以下であり、かつ、最大値と最小値の差が2以上となるように混練し、圧延冷却し、粉砕し、分級することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
- 上記混練物の内部に5μm以上の軟らかい部分が存在することを特徴とする請求項1に記載の電子写真用トナーの製造方法。
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