JP4222060B2 - 自動車の前部車体構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ダッシュロアパネル、ダッシュアッパパネル、カウルパネル(またはカウルレイン)およびカウルフロントとを有するカウルを備えたような自動車の前部車体構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上述例の自動車の前部車体構造としては次のような構造がある。
すなわち、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュロアパネルと、このダッシュロアパネルの上端から前方および後方上方に向って延びるダッシュアッパパネルと、このダッシュアッパパネルの後端からフロントウインド部材としてのフロントウインドガラス前端側に向って延びてフロントウインドガラス前端を支持するカウルアッパパネルと、ダッシュアッパパネルの前端から上方に向って延びボンネット後端を支持するカウルフロントパネルとを有するカウルを備えたものにおいて、エンジンルーム内の左右両側に設けられたサスペンションタワー部(以下単にサスタワーと略記する)を車幅方向に連結する平板状の連結部材を設け、この連結部材にて左右のサスタワー間を橋渡すと共に、該連結部材を後方に延出して、この連結部材の後方延出部をカウル(詳しくはカウルフロントパネルとダッシュアッパパネルとの接合部)に締結したものである(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−25360号公報。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この従来公報に開示されたものによれば、左右のサスタワーおよびカウルを上述の連結部材にて連結するので、車体剛性およびカウル剛性の向上を図ることができる利点がある反面、上述の連結部材はカウルを構成するパネルとは別体のものであるから、別部材としての連結部材が必要となって、部品点数が多くなり、また車両重量も大となる問題点があった。
【0005】
一方、ボンネットの後端がダッシュロアパネルの上端よりも車両前方に位置する構成においては、フロントワイパやエンジンルーム内の制動倍力装置(いわゆるマスタバック)等のエンジン部材のメンテナンス性が要求される。
【0006】
そこで、この発明は、ダッシュアッパ両側をサスタワー上面まで延出して連結し、このダッシュアッパ延出部とエプロンレインとの双方に連結される左右のブラケットを設け、これら左右のブラケットおよびダッシュアッパに対して着脱可能なカウルフロントを設けることにより、ダッシュアッパに加えて、カウルフロントが上記ブラケットを介してサスタワー間に橋渡されて、車体剛性およびカウル剛性を大幅に向上させることができ、しかも別部材が不要で、カウルを構成する部材にて橋渡し構造を確保するとができ、さらにカウルフロントの着脱構造により、メンテナンス性をも確保することができる自動車の前部車体構造の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明による自動車の前部車体構造は、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュロアと、上記ダッシュロアの上端から前方および後方上方に向って延びるダッシュアッパと、上記ダッシュアッパ後端からフロントウインド部材前端に向って延びフロントウインド部材前端を支持するカウルパネルと、ダッシュアッパ前端から前方上方に向って延びボンネット後端を支持するカウルフロントとを有するカウルを備えてなる自動車の前部車体構造であって、ダッシュアッパ両側がサスタワー上面まで延出されて連結され、ダッシュアッパ延出部と、フロントサイドフレームに沿って車両の前後方向に延びるエプロンレインとの双方に連結される水平部、並びに、該水平部の前端から上方に延びる縦壁部とを有するブラケットを車幅方向両側に備え、上記カウルフロント両側をブラケットに対して着脱可能に連結すると共に、カウルフロント中間部をダッシュアッパ前端部に対して着脱可能に連結したものである。
【0008】
上記構成によれば、ダッシュアッパはその両側の延出部が直接サスタワー上面に連結されており、カウルフロントの両側は左右のブラケット(ダッシュアッパ延出部とエプロンレインとの双方に連結されたブラケット)を介してサスタワーに連結されている。
【0009】
このように上述のダッシュアッパに加えて、カウルフロントが上述のブラケットを介してサスタワー間に橋渡されているので、車体剛性およびカウル剛性を大幅に向上させることができ、しかも、別部材が不要でカウルを構成する部材(カウルフロント参照)にて橋渡し構造を確保することができる。
さらに、カウルフロントの着脱構造により、メンテナンス性をも確保することができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記ダッシュアッパは前方に延びる水平部と、該水平部から上方に延びる縦壁部と、該縦壁部から前方に延びるダッシュアッパ延出部とを備え、上記ブラケットの縦壁部がダッシュアッパの縦壁部に連結されたものである。
上記構成によれば、縦壁部相互の連結構造により、ブラケット支持剛性および両者(ブラケットとダッシュアッパ)の連結強度の向上を図ることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記ブラケットの車外側折曲げ部がヒンジピラーに連結されたものである。
上記構成によれば、上述のブラケットはダッシュアッパ延出部とエプロンレインとヒンジピラーとの三者に連結されるので、該ブラケットの支持剛性のさらなる向上を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記カウルフロントの上端およびブラケットの上端にはそれぞれ同方向に延びるフランジ部が形成され、これら各フランジ部が連結されたものである。
上記構成によれば、カウルフロントおよびブラケットに対するフランジ部の形成により、ねじれ剛性の向上を図ることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記カウルフロントの上部のみが衝撃吸収部材で形成されたものである。
上記構成の衝撃吸収部材は、カウルフロントの下部を構成する鋼板部に対して板厚が小さいもので形成してもよく、または樹脂パネルにて形成してもよい。
【0014】
上記構成によれば、車体強度を確保しつつ、歩行者と両者との衝突時においては、ボンネット上に傾倒する歩行者の頭部保護に対する障害値を低減することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記衝撃吸収部材は樹脂パネルに設定されたものである。
上記構成によれば、成形性の容易化を達成することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、車幅方向で所定範囲のカウルフロントが下方に後退して樹脂パネルが配設され、上記樹脂パネルが配設される部分のフランジ部を緩斜角で上方に傾斜させてカウルフロント鋼板部のフランジ部と連結させたものである。
【0017】
上記構成によれば、サスタワー間に折曲部を形成することなく、樹脂パネルのフランジ部とカウルフロント鋼板部のフランジ部とが橋渡されるので、全体的に均一な剛性を確保することができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記ブラケットの縦壁部の中間に中間水平部を形成し、該中間水平部にワイパ取付け部が形成されたものである。
上記構成によれば、中間水平部の形成によりブラケットの強度向上を図ることができ、しかも、ワイパ取付け専用のブラケットを別途設ける必要がなくなり、部品点数を削減することができる。
【0019】
【実施例】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は自動車の前部車体構造を示し、図1において、エンジンルーム1と車室2とを仕切るダッシュロアパネル3を設け、このダッシュロアパネル3の上端3aから前方および後方上方に向って延びるダッシュアッパパネル4を設けている。
【0020】
上述のダッシュアッパパネル4の後端4aからフロントウインド部材としてのフロントウインドガラス5の傾斜下端つまり車両前後方向の前端に向って延びて該フロントガラス5の前端を支持するカウルパネル6(つまりカウルレイン)を設けている。
【0021】
このカウルパネル6はカウルアッパパネル7とカウルロアパネル8とを接合して、車幅方向に延びるカウル閉断面9を形成したものである。
また、上述のダッシュアッパパネル4の前端から前方上方に向ってボンネット10の後端を支持するカウルフロント11を設けている。
【0022】
このカウルフロント11はその上部のみが衝撃吸収部材としての樹脂パネル12で形成され、その他の部位はカウルフロント鋼板部13(樹脂パネル非配設部)で形成されている。
【0023】
さらに、後端がカウルパネル6に支持され前端がカウルフロント11の樹脂パネル12上端に支持されて上述のボンネット10後端のシール部14が当接されるカウルグリル15を設けている。なお、図示の便宜上、このカウルグリル15に形成される外気導入用のスリット状の開口部は省略している。
【0024】
ここで、上述のボンネット10の下面にはボンネットレインフォースメント16を接合固定する一方、上記各要素4,6,7,8,9,11,12,13にてカウル部17が構成されている。
【0025】
図2は樹脂パネル12を取外した状態で示す図1の要部の平面図、図3は図2のA−A線矢視断面図、図4は図2のB−B線矢視断面図、図5は図2のC−C線矢視断面図、図6は図2のD−D線矢視断面図、図7は図2のE−E線矢視断面図である。
【0026】
また図8は樹脂パネル12を取付けた状体で示す斜視図、図9は樹脂パネル12を取外した状態で示す図8の要部拡大図、図10は樹脂パネル12を取外した状態で示す斜視図、図11は樹脂パネル12およびカウルフロント鋼板部13から成るカウルフロント11を取外した状態で示す図10の要部拡大図である。
【0027】
なお、以下の説明においては自動車の前部車体構造における右側部の構成について説明するが、左側部は、樹脂パネル12およびカウルフロント鋼板部13の構成以外の点については概ね右側部のそれと左右対称または左右略対称に形成されている。
【0028】
図2、図8に示すように車体前部には車両の前後方向に延びるフロントサイドフレーム18が設けられると共に、このフロントサイドフレーム18に沿って同方向に延びるエプロンレインフォースメントインナ19が設けられ、このフロントサイドフレーム18とエプロンレインフォースメントインナ19との間にはフロントサスペンション装置の上部を支持するサスペンションタワー部20(以下単にサスタワーと略記する)が取付けられている。
【0029】
図3、図8、図11に示すようにサスタワー20の前部には該サスタワー20、エプロンレインフォースメントインナ19、フロントサイドフレーム18に接合されたホイールエプロンフロント21が設けられ、サスタワー20の後部には該サスタワー20、エプロンレインフォースメントインナ19、フロントサイドフレーム18、ダッシュロアパネル3に接合されたホイールエプロンリヤ22が設けられている。
【0030】
図2、図3、図4、図8、図9、図10、図11に示すように上述のダッシュアッパパネル4は略凹状の断面形状を有し、このダッシュアッパパネル4は図1、図8、図11に示すように前端フランジ部4bと、この前端フランジ部4bから下部後方に傾斜するスラント部4cと、このスラント部4cの下端から後方に延びる底部4dと、この底部4dの後端から上部後方に傾斜するスラント部4eとを備えている。
【0031】
また上述のダッシュアッパパネル4においてサスタワー20と近接する車両右寄りの部位には上方に膨らむ膨出部4fが形成されるので、図2、図8で示す仮想線αの部分においてダッシュアッパパネル4を分割形成し、プレス成形等の機械加工の容易化を図ってもよい。
【0032】
図3、図4、図11に示すように、上述のダッシュアッパパネル4の両側(但し、図面では右側のみを示す)はサスタワー20の上面まで延出され、ダッシュアッパ延出部4gが設けられ、このダッシュアッパ延出部4gがサスタワー20の上面に溶接手段等により接合固定されている。
【0033】
また図3に示すように、上述のダッシュアッパパネル4の前側のスラント部4cにおいて後述するブラケットが配設される部分は、前方に延びる水平部4hと、この水平部4hから上方に延びる縦壁部4iとが形成されている。
【0034】
さらに図2、図8に示すように、ダッシュアッパパネル4の後側のスラント部4eには外気を取入れるための空調用外気導入口23が形成されている。
また図6、図7に示すように、ダッシュアッパパネル4の車幅方向外端部4jはエプロンレインフォースメントインナ19の上側段部に接合固定されている。
【0035】
このエプロンレインフォースメントインナ19には図2、図6、図7、図11に示すように接合部19aが一体形成されており、この接合部19aはヒンジピラーインナ24に接合固定されている。
【0036】
さらに図2、図10、図11に示すように上述のダッシュアッパパネル4の車幅方向外端に一体形成された折曲げ部4kもヒンジピラーインナ24に接合固定されている。
ところで、図2〜図11の各図に示すようにダッシュアッパパネル4の車幅方向両側にはブラケット25を設けている。
【0037】
このブラケット25はダッシュアッパ延出部4gと、エプロンレインフォースメントインナ19との双方に接合固定される水平部25aと、この水平部25aの前端から上方に延びる縦壁部25bと、複数の車外側折曲部25cと、前端に位置して車幅方向に延びるフランジ部25dと、上述の縦壁部25bの上下方向中間に形成された中間水平部25eと、上述の水平部25aの内方前部に設けられた膨出状の座面25fとが一体形成された剛性部材である。
【0038】
そして、上述の水平部25aは図4、図5、図6に示すようにダッシュアッパパネル4の車幅方向外端部4j、底部4dおよびエプロンレインフォースメントインナ19に接合固定されると共に、スラント部4cを介してダッシュアッパ延出部4gに連結されている。
【0039】
またブラケット25の縦壁部25bは図3、図4に示すようにダッシュアッパパネル4の縦壁部4iに接合固定されている。詳しくはブラケット25の水平部25aの前側と縦壁部25bの下側とのコーナ部分が、図3に示すようにダッシュアッパパネル4の水平部4hと縦壁部4iとにそれぞれ接合固定されている。
【0040】
さらにブラケット25の車外側折曲部25cはヒンジピラーインナ24に接合固定される一方、中間水平部25eにはワイパ取付け部26が形成されている。ところで、図1で示したようにカウルフロント11はその上端がボンネット10のシール部14まで延出され、上端から所定範囲が樹脂パネル12で構成され、この樹脂パネル12の下端から下方が鋼板製のカウルフロント鋼板部13で構成されている。
【0041】
樹脂製のカウルフロント樹脂部としての樹脂パネル12は図1、図8に示すように車幅方向に延びる前端フランジ部12aと、この前端フランジ部12aの後部から前高後低状に傾斜する傾斜部12bと、この傾斜部12bの下端から後方に向けて一体形成され、かつ車幅方向に延びる後端フランジ部12cとを備えている。
【0042】
カウルフロント鋼板部13は、図1、図3、図9に示すように車幅方向に延びる前端フランジ部13aと、この前端フランジ部13aの後端から下方に延びる縦壁部13bと、この縦壁部13bの下端から後方に向けて一体形成され、かつダッシュアッパパネル4の前端フランジ部4bの形状と対応するように車幅方向に延びる後端フランジ部13cとを備えている。
【0043】
上述の樹脂パネル12とカウルフロント鋼板部13とから成るカウルフロント11は図1に示すようにダッシュアッパパネル4を介してダッシュロアパネル3に連結されているが、カウルフロント鋼板部13には図2に示すように車幅方向に所定間隔を隔てて複数の締結部27…が形成されていて、これらの各締結部27…は図1、図4に示すようにボルト28、ナット29等の締結部材を用いてダッシュアッパパネル4およびブラケット25の座面25f着脱可能に取付けられている。
【0044】
なお、この実施例ではナット29をダッシュアッパパネル4の前端フランジ部4b下面(図1参照)およびブラケット25の座面25fの下面(図4参照)に溶接固定して、ボルト28を上方から着脱すべく構成しているが、ボルト28とナット29の上下関係はこの逆の構成であってもよい。
【0045】
ここで、上述のダッシュアッパパネル4における膨出部4fの前端には図11に示すように、前端フランジ部4bに連続するフランジ部4mが形成されていて、このフランジ部4mにはカウルフロント鋼板部13の締結部27と対応する締結部30,30が設けられている。
また同図に示すようにブラケット25の座面25fにもカウルフロント鋼板部13の締結部27と対応するブラケット側の締結部31が設けられている。
【0046】
さらに上述のカウルフロント鋼板部13における縦壁部13bの車外側には図5、図9に示すように舌片13dが一体形成されていて、この舌片13dに形成された締結部32は図5に示すようにボルト33、ナット34等の締結部材を用いてブラケット25の所定部に着脱可能に取付けられている。
【0047】
つまり、カウルフロント11の下側を構成するカウルフロント鋼板部13の上端と、ブラケット25の上端とにはそれぞれ同方向(車幅方向)に延びる前端フランジ部13aおよびフランジ部25dが形成され、これら各フランジ部13a,25dが舌片13dおよびボルト33、ナット34を用いて、着脱可能に締結されたものである。
【0048】
要するに、カウルフロント鋼板部13の両側はブラケット25に対して着脱可能に連結されると共に、カウルフロント鋼板部13の中央側はダッシュアッパパネル4の前端に対して着脱可能に連結されたものである。
【0049】
このようにして上述のカウルフロント鋼板部13はダッシュアッパ延出部4gに設けられるブラケット25を介してサスタワー20に連結されている。
また図1、図8に示すようにカウルフロント樹脂部としての樹脂パネル12と、カウルフロント鋼板部13との締結部にはそれぞれ同方向に延びる水平フランジとしての後端フランジ部12cおよび前端フランジ部13aが車幅方向に渡って形成され、これらの各フランジ部12c,13aが図1に示すボルト35、ナット36等の複数の締結部材を用いて着脱可能に締結されている。
【0050】
図1、図12、図13で示すように車幅方向において所定範囲のカウルフロント11が斜め下方に後退して樹脂パネル12が配設され、この樹脂パネル12が配設される部分のフランジ部12cを図12、図13に示す如く、なだらかな曲率を有する緩斜角で上方に傾斜させ、この緩斜角部37を含んで樹脂パネル12の後端フランジ部12cとカウルフロント鋼板部13の前端フランジ部13aとを連続されている。
【0051】
この実施例においては図12、図13に正面図で示す図示上の右側(車両の左側)においてエンジンルーム1内に搭載されるバッテリ(図示せず)と対向する部分はカウルフロント11の全高に渡ってカウルフロント鋼板部13が存在し、それ以外の部分はカウルフロント11の上側に樹脂パネル12が、また下側にカウルフロント鋼板部13が位置するように構成されている。換言すれば、カウルフロント鋼板部13は車幅方向の略全幅に渡って形成され、樹脂パネル12はカウルフロント11の上側において車幅方向の過半部に渡るように形成されている。
【0052】
なお、図13においては樹脂パネル12とカウルフロント鋼板部13とに便宜上、ハッチングを施して、これら両者12,13の形成領域を明白に成した。 なお、図中、Fは車両前方を示し、INは車両内方を示し、OUTは車両外方を示すものである。
【0053】
このように上記実施例の自動車の前部車体構造は、エンジンルーム1と車室2とを仕切るダッシュロアパネル3と、上記ダッシュロアパネル3の上端3aから前方および後方上方に向って延びるダッシュアッパパネル4と、上記ダッシュアッパパネル後端4aからフロントウインドガラス5の前端に向って延びフロントウインドガラス5の前端を支持するカウルパネル6と、ダッシュアッパパネル4の前端から前方上方に向って延びボンネット10の後端を支持するカウルフロント11とを有するカウル部17を備えてなる自動車の前部車体構造であって、ダッシュアッパパネル4の両側がサスタワー20上面まで延出されて連結され、ダッシュアッパパネル延出部4gと、フロントサイドフレーム18に沿って車両の前後方向に延びるエプロンレインフォースメントインナ19との双方に連結される水平部25a、並びに、該水平部25aの前端から上方に延びる縦壁部25bとを有するブラケット25を車幅方向の左右両側に備え、上記カウルフロント11の両側をブラケット25,25に対して着脱可能に連結すると共に、カウルフロント11の中間部をダッシュアッパパネル4の前端部に対して着脱可能に連結したものである。
【0054】
この構成によれば、ダッシュアッパパネル4はその両側の延出部4gが直接サスタワー20上面に連結されており、カウルフロント11の両側は左右のブラケット25(ダッシュアッパパネル延出部4gとエプロンレインフォースメントインナ19との双方に連結されたブラケット25)を介してサスタワー20に連結されている。
【0055】
このように上述のダッシュアッパパネル4に加えて、カウルフロント11が上述のブラケット25を介して左右のサスタワー20,20間に橋渡されているので、車体剛性およびカウル剛性を大幅に向上させることができ、しかも、別部材が不要でカウル部17を構成する部材(カウルフロント11参照)にて橋渡し構造を確保することができる。
さらに、カウルフロント11の着脱構造により、メンテナンス性をも確保することができる。つまり、ワイパのみをメンテナンスする際にはカウルフロント11の上側のみを取外すとよく、エンジンルーム1内のエンジン部品をメンテナンスする際にはカウルフロント11の全体を取外すとよい。
【0056】
また、上記ダッシュアッパパネル4は前方に延びる水平部4h(図3参照)と、該水平部4hから上方に延びる縦壁部4iと、該縦壁部4iから前方に延びるダッシュアッパパネル延出部4gとを備え、上記ブラケット25の縦壁部25bがダッシュアッパパネル4の縦壁部4iに連結されたものである。
この構成によれば、縦壁部4i,25b相互の連結構造により、ブラケット25の支持剛性および両者(ブラケット25とダッシュアッパパネル4)の連結強度の向上を図ることができる。
【0057】
さらに、上記ブラケット25の車外側折曲げ部25cがヒンジピラーインナ24に連結されたものである。
この構成によれば、上述のブラケット25はダッシュアッパパネル延出部4gとエプロンレインフォースメントインナ19とヒンジピラーインナ24との三者に連結されるので、該ブラケット25の支持剛性のさらなる向上を図ることができる。
【0058】
加えて、上記カウルフロント11の上端(詳しくはカウルフロント鋼板部13の上端)およびブラケット25の上端にはそれぞれ同方向に延びるフランジ部13a,25dが形成され、これら各フランジ部13a,25dが連結されたものである。
この構成によれば、カウルフロント11およびブラケット25に対するフランジ部13a,25dの形成により、ねじれ剛性の向上を図ることができる。
【0059】
また、上記カウルフロント11の上部のみが衝撃吸収部材(樹脂パネル12参照)で形成されたものである。
この構成によれば、車体強度を確保しつつ、歩行者と両者との衝突時においては、ボンネット10上に傾倒する歩行者の頭部保護に対する障害値を低減することができる。
【0060】
さらに、上記衝撃吸収部材は樹脂パネル12に設定されたものである。
この構成によれば、成形性の容易化を達成することができる。
【0061】
しかも、車幅方向で所定範囲のカウルフロント11が下方に後退して樹脂パネル12が配設され、上記樹脂パネル12が配設される部分のフランジ部12cを図12、図13で示したように緩斜角(緩斜角部37参照)で上方に傾斜させてカウルフロント鋼板部13のフランジ部13aと連結させたものである。
【0062】
この構成によれば、サスタワー20,20間に直角形状に折れ曲がるような折曲部を何等形成することなく、樹脂パネル12のフランジ部12cとカウルフロント鋼板部13のフランジ部13aとが橋渡されるので、全体的に均一な剛性を確保することができる。
【0063】
加えて、上記ブラケット25の縦壁部25bの中間に中間水平部25eを形成し、該中間水平部25eにワイパ取付け部26が形成されたものである。
この構成によれば、中間水平部25eの形成によりブラケット25の強度向上を図ることができ、しかも、ワイパ取付け専用のブラケットを別途設ける必要がなくなり、部品点数を削減することができる。なお、実施例で示したようにブラケット25の縦壁部25bの一部をリヤ側に膨出するタワー形状と成すと、該ブラケット25の強度をさらに向上させることができる。
【0064】
図14は自動車の前部車体構造の他の実施例を示し、先の実施例においては、カウルフロント11を構成する上側の樹脂パネル12と下側のカウルフロント鋼板部13とを着脱可能に締結して、メンテナンス性の向上を図ったが、図14に示すこの実施例においてはカウルフロント11を構成する上側の樹脂パネル12と下側のカウルフロント鋼板部13を接着剤等により接合して、両者12,13を分離不能に固定したものである。
【0065】
このように構成すると、盗難防止性の向上を図ることができる。図14に示すこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図14において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0066】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のダッシュロアは、実施例のダッシュロアパネル3に対応し、
以下同様に、
ダッシュアッパは、ダッシュアッパパネル4に対応し、
フロントウインド部材は、フロントウインドガラス5に対応し、
カウルは、カウル部17に対応し、
エプロンレインは、エプロンレインフォースメントインナ19に対応し、
ヒンジピラーは、ヒンジピラーインナ24に対応し、
衝撃吸収部材は、樹脂パネル12に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0067】
【発明の効果】
この発明によれば、ダッシュアッパ両側をサスタワー上面まで延出して連結し、このダッシュアッパ延出部とエプロンレインとの双方に連結される左右のブラケットを設け、これら左右のブラケットおよびダッシュアッパに対して着脱可能なカウルフロントを設けたので、ダッシュアッパに加えて、カウルフロントが上記ブラケットを介してサスタワー間に橋渡されて、車体剛性およびカウル剛性を大幅に向上させることができ、しかも別部材が不要で、カウル部を構成する部材にて橋渡し構造を確保するとができ、さらにカウルフロントの着脱構造により、メンテナンス性をも確保することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の自動車の前部車体構造を示す側面図。
【図2】 図1の要部平面図。
【図3】 図2のA−A線矢視断面図。
【図4】 図2のB−B線矢視断面図。
【図5】 図2のC−C線矢視断面図。
【図6】 図2のD−D線矢視断面図。
【図7】 図2のE−E線矢視断面図。
【図8】 樹脂パネルを取付けた状態の斜視図。
【図9】 樹脂パネルを取外した状態の拡大斜視図。
【図10】 カウルフロント鋼板部を取付けた状態の斜視図。
【図11】 カウルフロント鋼板部を取り外した状体の拡大斜視図。
【図12】 カウルフロントの構成を示す略正面図。
【図13】 樹脂パネルとカウルフロント鋼板部との形成領域を示す説明図。
【図14】 本発明の自動車の前部車体構造の他の実施例を示す側面図。
【符号の説明】
1…エンジンルーム
2…車室
3…ダッシュロアパネル
4…ダッシュアッパパネル
4g…ダッシュアッパ延出部
4h…水平部
4i…縦壁部
5…フロントウインドガラス(フロントウインド部材)
6…カウルパネル
10…ボンネット
11…カウルフロント
12…樹脂パネル(樹脂吸収部材)
12c,13a,25d…フランジ部
13…カウルフロント鋼板部
17…カウル部
18…フロントサイドフレーム
19…エプロンレインフォースメント(エプロンレイン)
20…サスタワー
24…ヒンジピラーインナ(ヒンジピラー)
25…ブラケット
25a…水平部
25b…縦壁部
25c…車外側折曲げ部
25e…中間水平部
26…ワイパ取付け部
Claims (8)
- エンジンルームと車室とを仕切るダッシュロアと、
上記ダッシュロアの上端から前方および後方上方に向って延びるダッシュアッパと、
上記ダッシュアッパ後端からフロントウインド部材前端に向って延びフロントウインド部材前端を支持するカウルパネルと、
ダッシュアッパ前端から前方上方に向って延びボンネット後端を支持するカウルフロントとを有するカウルを備えてなる自動車の前部車体構造であって、
ダッシュアッパ両側がサスタワー上面まで延出されて連結され、
ダッシュアッパ延出部と、フロントサイドフレームに沿って車両の前後方向に延びるエプロンレインとの双方に連結される水平部、並びに、該水平部の前端から上方に延びる縦壁部とを有するブラケットを車幅方向両側に備え、
上記カウルフロント両側をブラケットに対して着脱可能に連結すると共に、
カウルフロント中間部をダッシュアッパ前端部に対して着脱可能に連結した
自動車の前部車体構造。 - 上記ダッシュアッパは前方に延びる水平部と、該水平部から上方に延びる縦壁部と、
該縦壁部から前方に延びるダッシュアッパ延出部とを備え、
上記ブラケットの縦壁部がダッシュアッパの縦壁部に連結された
請求項1記載の自動車の前部車体構造。 - 上記ブラケットの車外側折曲げ部がヒンジピラーに連結された
請求項1または2記載の自動車の前部車体構造。 - 上記カウルフロントの上端およびブラケットの上端にはそれぞれ同方向に延びるフランジ部が形成され、
これら各フランジ部が連結された
請求項1記載の自動車の前部車体構造。 - 上記カウルフロントの上部のみが衝撃吸収部材で形成された
請求項4記載の自動車の前部車体構造。 - 上記衝撃吸収部材は樹脂パネルに設定された
請求項5記載の自動車の前部車体構造。 - 車幅方向で所定範囲のカウルフロントが下方に後退して樹脂パネルが配設され、
上記樹脂パネルが配設される部分のフランジ部を緩斜角で上方に傾斜させてカウルフロント鋼板部のフランジ部と連結させた
請求項6記載の自動車の前部車体構造。 - 上記ブラケットの縦壁部の中間に中間水平部を形成し、
該中間水平部にワイパ取付け部が形成された
請求項1〜7の何れか1に記載の自動車の前部車体構造。
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