JP4221928B2 - 半導体基板及び電界効果型トランジスタ並びにこれらの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速MOSFET等に用いられる半導体基板及び電界効果型トランジスタ並びにこれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、Si(シリコン)基板上にSiGe(シリコン・ゲルマニウム)層を介してエピタキシャル成長した歪みSi層をチャネル領域に用いた高速のMOSFET、MODFET、HEMTが提案されている。この歪みSi−FETでは、Siに比べて格子定数の大きいSiGeによりSi層に引っ張り歪みが生じ、そのためSiのバンド構造が変化して縮退が解けてキャリア移動度が高まる。したがって、この歪みSi層をチャネル領域として用いることにより通常の1.3〜8倍程度の高速化が可能になるものである。また、プロセスとしてCZ法による通常のSi基板を基板として使用でき、従来のCMOS工程で高速CMOSを実現可能にするものである。
【0003】
しかしながら、FETのチャネル領域として要望される上記歪みSi層をエピタキシャル成長するには、Si基板上に良質なSiGe層をエピタキシャル成長する必要があるが、SiとSiGeとの格子定数の違いから、転位等により結晶性に問題があった。このために、従来、以下のような種々の提案が行われていた。
【0004】
例えば、SiGeのGe組成比を一定の緩い傾斜で増加させたバッファ層を用いる方法、Ge(ゲルマニウム)組成比をステップ状(階段状)に変化させたバッファ層を用いる方法、Ge組成比を超格子状に変化させたバッファ層を用いる方法及びSiのオフカットウェーハを用いてGe組成比を一定の傾斜で変化させたバッファ層を用いる方法等が提案されている(U.S.Patent 5,442,205、U.S.Patent 5,221,413、PCT WO98/00857、特開平6-252046号公報等)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術では、以下のような課題が残されている。
すなわち、上記従来の技術を用いて成膜されたSiGe層は、貫通転位密度や表面ラフネスがデバイス及び製造プロセスとして要望されるレベルには及ばない状態であった。
【0006】
例えば、Ge組成比を一定の緩い傾斜で増加させたバッファ層を用いる場合、Ge組成比の傾斜構造中で発生する転位は、SiGe層に沿った方向に伸び易くなって、SiGe層の特に表面側で転位の密度を抑制することができる。しかし、まだ十分な低転位化を図ることができていない。
また、Ge組成比を階段状にしたバッファ層を用いる場合では、表面ラフネスを比較的少なくすることができるが、貫通転位密度が大きくなってしまう不都合があった。また、オフカットウェーハを用いる場合では、転位が成膜方向ではなく横に抜け易くなるが、まだ十分な低転位化を図ることができていない。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、貫通転位密度が低くかつ表面ラフネスも小さい半導体基板及び電界効果型トランジスタ並びにこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の半導体基板は、Si基板と、該Si基板上のSiGe層と、前記SiGe層上に直接又は他のSiGe層を介して配された歪みSi層とを備え、該SiGe層は、Ge組成比が表面に向けて漸次増加する傾斜組成層を有し、該傾斜組成層の厚さ方向途中位置に、該途中位置における傾斜組成層のGe組成比よりもGe組成比が低いかまたはゼロのGe低組成層を有し、前記Ge低組成層は、前記傾斜組成層におけるGe組成比の最高値に対し、1/3〜2/3の組成比に対応する厚さ方向位置に形成され、前記Ge低組成層の厚み寸法が、臨界膜厚以下に設定され、前記Ge低組成層においては、そのGe組成比が、該Ge低形成層が接する厚さ方向両側位置の前記傾斜組成層のGe組成比に対し、2/5より小さく設定されることを特徴とする。
本発明の半導体基板の製造方法は、Si基板上にエピタキシャル成長させたSiGe層を介して歪みSi層が形成された半導体基板の製造方法であって、
前記Si基板上に、SiGe層をエピタキシャル成長するSiGe層形成工程と、
前記SiGe層上に直接又は他のSiGe層を介して前記歪みSi層をエピタキシャル成長する工程とを備え、
該SiGe層形成工程は、Ge組成比を表面に向けて漸次増加させるSiGeの傾斜組成層を積層するとともに、傾斜組成層の厚さ方向途中位置に、該途中位置における傾斜組成層のGe組成比よりもGe組成比が低いかまたはゼロのGe低組成層を形成するとともに、前記Ge低組成層を、前記傾斜組成層におけるGe組成比の最高値に対し、1/3〜2/3の組成比に対応する厚さ方向位置に形成し、前記Ge低組成層の厚み寸法を臨界膜厚以下に設定し、前記Ge低組成層においては、そのGe組成比を、該Ge低形成層が接する厚さ方向両側位置の前記傾斜組成層のGe組成比に対し、2/5より小さく設定することを特徴とする。
本発明の半導体基板は、Si基板と、該Si基板上のSiGe層とを備え、該SiGe層は、Ge組成比が表面に向けて漸次増加する傾斜組成層を有し、該傾斜組成層の厚さ方向途中位置に、該途中位置における傾斜組成層のGe組成比よりもGe組成比が低いかまたはゼロのGe低組成層を有することができる。
【0009】
また、本発明の半導体基板の製造方法は、Si基板上にSiGe層をエピタキシャル成長させた半導体基板の製造方法であって、前記Si基板上に、SiGe層をエピタキシャル成長するSiGe層形成工程を備え、該SiGe層形成工程は、Ge組成比を表面に向けて漸次増加させるSiGeの傾斜組成層を積層するとともに、傾斜組成層の厚さ方向途中位置に、該途中位置における傾斜組成層のGe組成比よりもGe組成比が低いかまたはゼロのGe低組成層を形成することを特徴とする。
【0010】
また本発明の半導体基板は、Si基板上にSiGe層が形成された半導体基板であって、 上記の半導体基板の製造方法により作製されたことを特徴としている。
【0011】
本発明者らは、SiGeの成膜技術について研究を行ってきた結果、結晶中の転位が以下のような傾向を有することがわかった。
すなわち、SiGe層を成膜する際に、成膜中に発生する転位は成膜方向に対して斜め方向又は横方向(成膜方向に直交する方向:<110>方向)のいずれかに伸び易い特性を持っている。また、上記斜め方向に伸びた転位は、表面にまで貫通して貫通転位となってしまうと考えられる。Ge組成比を単純に傾斜させて成膜すると、上記斜め方向に走った転位が横方向に逃げるきっかけとなる部分(界面等)が無く、表面にまで貫通してしまうと考えられる。
【0012】
これに対し、これらの半導体基板及び半導体基板の製造方法では、Si基板上のSiGe層を、Ge組成比を表面に向けて漸次増加させるSiGeの傾斜組成層を積層するとともに、厚さ方向の少なくとも途中位置に、その位置の傾斜組成層よりもGe組成比を低いかまたはゼロのGe低組成層を形成しているので、上記斜め方向に伸びた貫通転位が一度発生した場合であっても、SiGe層内のGe低組成層部分でGeが減量しているため、転位の方位が界面に沿った向きを向きやすくなり、転位がGe低組成層界面付近およびSi基板側に閉じ込められる傾向がある。このため、前記傾斜組成層において、転位がSiGe層に沿った方向に伸びやすくなって第1のSiGe層中の特にGe低組成層より表面側で転位の密度を抑制することができる。その結果、表面に貫通する転位が低減される。また、傾斜組成層の途中に、この傾斜組成層よりもGe組成比が低い、つまり、傾斜組成層よりも固い層を挿入することにより、後述するように、表面ラフネスを、Ge組成比が一定の傾斜で変化したSiGe層の場合に比べてよりいっそう低減することが可能となる。
【0013】
本発明の半導体基板において、前記Ge低組成層は、前記傾斜組成層のGe組成比の最高値に対し、1/3〜2/3の組成比に対応する厚さ方向位置に形成されていることが好ましく、より好ましくは、前記Ge低組成層は、前記傾斜組成層のGe組成比の最高値に対し、1/2の組成比に対応する厚さ方向位置に形成されている。
【0014】
本発明における半導体基板の製造方法において、前記Ge低組成層を、前記傾斜組成層のGe組成比の最高値に対し、1/3〜2/3の組成比に対応する厚さ方向位置に形成することが好ましく、より好ましくは、前記Ge低組成層を、前記傾斜組成層のGe組成比の最高値に対し、1/2の組成比に対応する厚さ方向位置に形成する。
【0015】
このようにGe低組成層の形成位置を、Ge組成比の最高値に対して1/3〜2/3の組成比に対応する厚さ方向位置に対応する範囲に設定した場合であると、後述するように、表面に貫通する転位の密度を、Ge組成比が一定の傾斜で変化したSiGe層の場合に比べて低減することができるとともに、表面ラフネスの悪化を抑制することができる。
またGe低組成層の形成位置を、Ge組成比の最高値に対して1/2の組成比に対応する厚さ方向位置に対応して設定した場合であると、後述するように、表面に貫通する転位の密度を、Ge組成比が一定の傾斜で変化したSiGe層の場合に比べてよりいっそう低減することが可能となるとともに、表面ラフネスの悪化をさらに抑制することができる。
【0016】
また、本発明の半導体基板およびその製造方法において、前記Ge低組成層の厚み寸法が、膜厚の増加により転位を発生して格子緩和が生ずる膜厚である臨界膜厚以下に設定されていることが好ましい。このようにGe低組成層が臨界膜厚より薄く成膜されるため、Ge低組成層成膜中では膜厚に応じて歪みエネルギーが大きくなるが転位の生成は少ないため、Ge低組成層によって転位が増加することはない。Ge低組成層よりSi基板側で生成した転位は、Ge低組成層の界面に沿って伸びやすく、SiGe層表面までの転位の貫通が抑制されると共に、SiGe層表面の表面ラフネスの悪化も抑制される。
【0017】
また、本発明の半導体基板およびその製造方法において、前記Ge低組成層のGe組成比が、Ge低形成層が形成された厚さ方向位置における傾斜組成層のGe組成比に対し、2/5より小さく設定されていることが好ましい。これにより、表面に貫通する転位の密度を、Ge組成比が一定の傾斜で変化したSiGe層の場合に比べて低減することができ、より好ましくは、Ge低組成層におけるGe組成比を略0に設定することができる。これによって、より一層表面に貫通する転位の密度を低減することが可能となる。
【0018】
なお、本発明において、厚さ方向に離間してGe低組成層を複数形成することもできる。
【0019】
本発明の半導体基板は、上記本発明の半導体基板の前記SiGe層上に直接又は他のSiGe層を介して配された歪みSi層を備えていることを特徴とする。また、本発明の歪みSi層の形成方法は、Si基板上にSiGe層を介して歪みSi層を形成する方法であって、前記Si基板上に、上記本発明のSiGe層の形成方法によりSiGe層をエピタキシャル成長する工程と、該SiGe層上に直接又は他のSiGe層を介して歪みSi層をエピタキシャル成長する工程とを有することを特徴とする。
また、本発明の半導体基板は、Si基板上にSiGe層を介して歪みSi層が形成された半導体基板であって、上記本発明の歪みSi層の形成方法により前記歪みSi層が形成されていることを特徴とする。
【0020】
上記半導体基板では、上記本発明の半導体基板のSiGe層上に直接又は他のSiGe層を介して配された歪みSi層を備え、また上記歪みSi層の形成方法では、上記本発明のSiGe層の形成方法によりエピタキシャル成長したSiGe層上に直接又は他のSiGe層を介して歪みSi層をエピタキシャル成長し、また、上記半導体基板では上記本発明の歪みSi層の形成方法により歪みSi層が形成されているので、表面状態が良好なSiGe層上にSi層を形成でき、良質な歪みSi層を形成することができる。例えば歪みSi層をチャネル領域とするMOSFET等を用いた集積回路用の基板として好適である。
【0021】
本発明の電界効果型トランジスタは、SiGe層上にエピタキシャル成長された歪みSi層にチャネル領域が形成される電界効果型トランジスタであって、上記本発明の半導体基板の前記歪みSi層に前記チャネル領域が形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の電界効果型トランジスタの製造方法は、SiGe層上にエピタキシャル成長された歪みSi層にチャネル領域が形成される電界効果型トランジスタの製造方法であって、上記本発明の歪みSi層を有する半導体基板の製造方法により作製された半導体基板の前記歪みSi層に前記チャネル領域を形成することを特徴とする。
また、本発明の電界効果型トランジスタは、SiGe層上にエピタキシャル成長された歪みSi層にチャネル領域が形成される電界効果型トランジスタであって、上記本発明の電界効果型トランジスタの製造方法により作製されたことを特徴とする。
【0023】
これらの電界効果型トランジスタ及び電界効果型トランジスタの製造方法では、上記本発明の半導体基板の前記歪みSi層にチャネル領域が形成され、又は上記本発明の歪みSi層の形成方法により、チャネル領域が形成される歪みSi層が形成されるので、良質な歪みSi層により高特性な電界効果型トランジスタを高歩留まりで得ることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る第1実施形態を、図1から図4に基づいて説明する。
【0025】
図1は、本発明の半導体ウェーハ(半導体基板)Wの断面構造を示すものであり、この半導体ウェーハの構造をその製造プロセスと合わせて説明すると、まず、CZ法等で引上成長して作製されたp型あるいはn型Si基板1上に、図1及び図2に示すように、第1のSiGe層2を例えば減圧CVD法によりエピタキシャル成長する。
【0026】
この際、図2及び図3に示すように、表面側に向けて層内のGe組成比を漸次増加させた傾斜組成層2aを2層積層状態にして、第1のSiGe層2を形成する。また、これらの傾斜組成層2aの間には、厚さ方向両側に接する各傾斜組成層2aよりもGe組成比が低いGe低組成層2dを形成する。
ここで、本実施形態では、第1のSiGe層2の膜厚を1.5μmにし、これら傾斜組成層2a,2aにおいて、増加するGe組成比の傾斜率(表面に向けて増加するGe組成比の変化率)をほぼ0.2/μmとしている。これにより、第1のSiGe層2上面でのGe組成比をが0.3となるよう、傾斜組成層2a,2aでのGe組成比を、それぞれ0から0.15、および、0.15から0.3まで順次増加させている。
【0027】
Ge低組成層2dは、図3に示すように、傾斜組成層2a,2aにおいて表面に向けて漸次増加するGe組成比の最高値に対し、1/3〜2/3の組成比に対応する厚さ方向位置に形成することが好ましく、さらに、前記Ge低組成層2dを、傾斜組成層2a,2aにおいて表面に向けて漸次増加するGe組成比の最高値に対し、1/2の組成比に対応する厚さ方向位置に形成することがより好ましい。
具体的には、Ge低組成層2dは、傾斜組成層2a,2aにおいて表面に向けて漸次増加するGe組成比の最高値0.3に対し、組成比0.1〜0.2に対応する厚さ方向位置に形成することが好ましく、より好ましくは、Ge組成比の最高値0.3に対し、組成比0.15に対応する厚さ方向位置である厚さ0.75μmの傾斜組成層2a上に形成することができる。
【0028】
Ge低組成層2dの厚み寸法が、膜厚の増加により転位を発生して格子緩和が生ずる膜厚である臨界膜厚以下に設定されており、具体的には、20nm程度とされる。このように、Ge低組成層2dが臨界膜厚より薄く成膜されるため、Ge低組成層2d成膜中では膜厚に応じて歪みエネルギーが大きくなるが転位は生成しないので、Ge低組成層2dによって転位が増加することはない。このため、転位は、Ge低組成層2dの界面に沿って伸びやすく、第1のSiGe層2表面までの転位の貫通が抑制されるとともに、第1のSiGe層2表面の表面ラフネスの悪化も抑制される。ここでGe低組成層2dが臨界膜厚より厚く成膜された場合には、転位が第1のSiGe層2表面まで貫通する密度を低減することができないため、好ましくない。
【0029】
Ge低組成層2dにおいては、そのGe組成比が、Ge低形成層2dが接する厚さ方向両側位置の傾斜組成層2aのGe組成比に対し、2/5より小さく設定されていることが好ましく、本実施形態においては、Ge組成比は、0に設定されている。すなわち、Siのみの構成とされる層も、Ge低組成層2dに含まれるものである。
また、これら傾斜組成層2aにおいて、Ge低組成層2dに接する傾斜組成層2aの界面では、それぞれGe組成比が等しく設定されており、傾斜組成層2aとしては、いわば、Ge組成比は連続的に変化している。
【0030】
次に、第1のSiGe層2上に、Ge組成比が0.3で一定組成比の第2のSiGe層3を、緩和層としてエピタキシャル成長する。さらに、第2のSiGe層3上にSiをエピタキシャル成長して歪みSi層4を形成することにより、本実施形態の歪みSi層を備えた半導体ウェーハWが作製される。なお、各層の膜厚は、例えば、第1のSiGe層2が1.5μm、第2のSiGe層3が0.6〜0.8μm、歪みSi層4が15〜22nmである。
なお、上記減圧CVD法による成膜は、例えばキャリアガスとしてH2 を用い、ソースガスとしてSiH4 及びGeH4 を用いている。
【0031】
このように本実施形態の半導体ウェーハWでは、Si基板1上の第1のSiGe層2として、層内のGe組成比を漸次増加させた傾斜組成層2aを複数層積層状態にして形成し、厚み方向これらの傾斜組成層2aの間位置に、厚さ方向両側の各傾斜組成層2aよりもGe組成比が低いGe低組成層2dを形成しているので、第1のSiGe層2内のGe低組成層2d部分でGe組成比が減量しているため、転位はGe低組成層2d界面付近およびSi基板側に閉じ込められる傾向がある。その結果、転位がGe低組成層2dに沿った方向に伸びやすくなって、第1のSiGe層2の表面に貫通する転位が低減される。これにより、第1のSiGe層2表面側で転位の密度と表面ラフネスを抑制することができる。
【0032】
さらに、本実施形態における半導体ウェーハWでは、Si基板1上の第1のSiGe層2におけるGe低組成層2dが、傾斜組成層2a,2aにおいて表面に向けて漸次増加するGe組成比の最高値に対し、1/3〜2/3の組成比に対応する厚さ方向位置に形成されていることにより、表面に貫通する転位の密度を、Ge組成比が一定の傾斜で変化しただけのSiGe層の場合に比べて低減することができ、さらに、Ge低組成層2dが、傾斜組成層2a,2aにおいて表面に向けて漸次増加するGe組成比の最高値に対し、1/2の組成比に対応する厚さ方向位置に形成されていることにより、表面に貫通する転位の密度と表面ラフネスをさらに抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態における半導体ウェーハWでは、Si基板1上の第1のSiGe層2におけるGe低組成層2dが、膜厚の増加により転位を発生して格子緩和が生ずる膜厚である臨界膜厚より薄く成膜されるため、Ge低組成層2d成膜中では膜厚に応じて歪みエネルギーが大きくなるが転位は生成しないので、Ge低組成層2dによって転位が増加することはない。このため、転位は、Ge低組成層の界面に沿って伸びやすく、第1のSiGe層表面までの転位の貫通が抑制されると共に、第1のSiGe層表面の表面ラフネスの悪化も抑制される。
【0034】
また、本実施形態における半導体ウェーハWでは、Si基板1上の第1のSiGe層2におけるGe低組成層2dのGe組成比が、Ge低形成層2dが形成された厚さ方向位置における傾斜組成層2aのGe組成比に対し、2/5より小さく設定されていることにより、表面に貫通する転位の密度と表面ラフネスを、Ge組成比が一定の傾斜で変化したSiGe層の場合に比べて低減することができる。さらに、Ge低組成層2dにおけるGe組成比を0(ゼロ)に設定することで、より一層表面に貫通する転位の密度と表面ラフネスを低減することが可能となる。
【0035】
次に、本発明の上記半導体ウェーハWを用いた電界効果型トランジスタ(MOSFET)を、その製造プロセスと合わせて図4に基づいて説明する。
【0036】
図4は、本発明の電界効果型トランジスタの概略的な構造を示すものであって、この電界効果型トランジスタを製造するには、上記の製造工程で作製した半導体ウェーハW表面の歪みSi層4上にSiO2 のゲート酸化膜5及びゲートポリシリコン膜6を順次堆積する。そして、チャネル領域となる部分上のゲートポリシリコン膜6上にゲート電極(図示略)をパターニングして形成する。
【0037】
次に、ゲート酸化膜5もパターニングしてゲート電極下以外の部分を除去する。さらに、ゲート電極をマスクに用いたイオン注入により、歪みSi層4及び第2のSiGe層3にn型あるいはp型のソース領域S及びドレイン領域Dを自己整合的に形成する。この後、ソース領域S及びドレイン領域D上にソース電極及びドレイン電極(図示略)をそれぞれ形成して、歪みSi層4がチャネル領域となるn型あるいはp型MOSFETが製造される。
【0038】
このように作製されたMOSFETでは、上記製法で作製された半導体ウェーハW上の歪みSi層4にチャネル領域が形成されるので、良質な歪みSi層4により高特性なMOSFETを高歩留まりで得ることができる。
【0039】
次に、本発明に係る第2〜第4実施形態について、図5〜図7に基づいて説明する。
【0040】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、Ge低組成層2dを第1のSiGe層におけるGe組成比の最高値0.3に対し、組成比0.15に対応する厚さ方向位置に形成しているのに対し、第2実施形態では、図5に示すように、Ge低組成層2dを組成比0.075に対応する厚さ方向位置に形成している点である。
【0041】
第3実施形態と第1実施形態との異なる点は、第2実施形態と同様、図6に示すように、Ge低組成層2dを組成比0.225に対応する厚さ方向位置に形成している点である。
第4実施形態と第1実施形態との異なる点は、第2実施形態と同様、図7に示すように、Ge低組成層2dを組成比0.3に対応する厚さ方向位置、つまり、第1SiGe層2の表面位置に形成している点である。
【0042】
これらの第2〜第4実施形態では、上記第1実施形態と同様に、Si基板1上の第1のSiGe層2として、層内のGe組成比を漸次増加させた傾斜組成層2aを形成し、厚み方向これらの傾斜組成層2aの途中位置に、厚さ方向両側の各傾斜組成層2aよりもGe組成比が低いGe低組成層2dを形成しているので、第1のSiGe層2内のGe低組成層2d部分でGe組成比が減量しているため、転位はGe低組成層2d界面付近及びSi基板側に閉じ込められる傾向がある。その結果、転位がGe低組成層2dに沿った方向に伸びやすくなって、第1のSiGe層2の表面に貫通する転位が低減される。これにより、第1のSiGe層2表面側で転位の密度や表面ラフネスを抑制することができる。
【0043】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0044】
例えば、上記各実施形態では、Ge低組成層2dのGe組成比が0でない値に設定してもよい。また、傾斜組成層2aで膜厚に対して一定割合でGe組成を変化させたが、その割合を一定でなくした構造としても構わない。
また、第1のSiGe層内に複数のGe低組成層2dを厚み方向に離間して形成してもよい。
また、上記各実施形態の半導体ウェーハの歪みSi層上に、さらにSiGe層を成膜しても構わない。
【0045】
また、上記各実施形態では、MOSFET用の基板としてSiGe層を有する半導体ウェーハを作製したが、他の用途に適用する基板としても構わない。例えば、本発明の半導体基板の製造方法及び半導体基板を太陽電池や光素子用の基板に適用してもよい。すなわち、上述した各実施形態のSi基板上に最表面で65%から100%Geあるいは、100%Geとなるように第1のSiGe層及び第2のSiGe層を成膜し、さらにこの上にInGaP(インジウムガリウムリン)あるいはGaAs(ガリウムヒ素)やAlGaAs(アルミニウムガリウムヒ素)を成膜することで、太陽電池や光素子用基板を作製してもよい。この場合、低転位密度で高特性の太陽電池用基板が得られる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0047】
ここでは、上記の第1〜第4の実施形態で説明したように、表面に向かってGe組成比(Ge組成値)が0〜0.3(30%)まで増加する第1のSiGe層2と、Ge組成比(Ge組成値)が0.3(30%)で変化しない第2のSiGe層と、歪みSi層4とを成膜した。
【0048】
(実施例1)
ここで、第1のSiGe層2において、Ge低組成層2dの厚み方向積層位置を、Ge組成値でそれぞれ7.5%、15%、22.5%、30%に変化したものを作製し、これらを実験例とした。また、比較例として、Ge低組成層2dを設けず、Ge組成値が表面側に向かって単調に増加するSiGe層を有するものを作製し、これを比較例とした。
また、第1のSiGe層2の膜厚は1.5μmとして一定にするとともに、第2のSiGe層3の膜厚は0.75μmとし、Ge低組成層2dの膜厚は20nmとし、Ge低組成層2dにおけるGe組成比は0に設定した。
【0049】
これらについて、Ge組成値の傾斜構造中で発生する転位が、ウェーハ表面まで貫通した状態の発生密度(貫通転位密度)およびウェーハ表面粗さを測定した。
ここで、貫通転位密度の結果を図8に、表面ラフネスの結果を図10に示す。図において、それぞれ、黒丸で示す点は比較例のデータであり、黒四角で示す点はそれぞれのGe組成比での各実験例のデータである。
【0050】
図8の結果から、Ge低組成層2dの厚み方向積層位置が、Ge組成値が15%まで増えるに従って貫通転位密度が減少しており、積層位置のGe組成値が15%付近で最も少なくなり、また積層位置のGe組成値が15%より増えるに従ってまた上昇することがわかる。
図10の結果から、Ge低組成層2dの厚み方向積層位置が、Ge組成値が15%まで増えるに従って表面ラフネスが減少しており、積層位置のGe組成値が15%付近で最も少なくなり、また積層位置のGe組成値が15%より増えるに従ってまた上昇することがわかる。
【0051】
(実施例2)
また、第1のSiGe層2において、Ge低組成層2dの厚み方向積層位置を、Ge組成比で15%とし、Ge低組成層2dにおけるGe組成値を0%、6%、12%としたものを作製し、これらを実験例とした。また、比較例として、Ge低組成層2dを設けず、Ge組成値が表面側に向かって単調に増加するSiGe層を有するものを作製し、これを比較例とした。
ここで、第1のSiGe層2の膜厚は1.5μmとして一定にするとともに、第2のSiGe層3の膜厚は0.75μmとし、Ge低組成層2dの膜厚は20nmとした。
【0052】
これらについて、Ge組成値の傾斜構造中で発生する転位が、ウェーハ表面まで貫通した状態の発生密度(貫通転位密度)およびウェーハ表面ラフネスを測定した。
ここで、貫通転位密度の結果を図9に、表面ラフネスの結果を図11に示す。図において、それぞれ、黒丸で示す点は比較例のデータであり、黒四角で示す点はそれぞれのGe組成値での各実験例のデータである。
【0053】
図9の結果から、Ge低組成層2dにおけるGe組成値が低い方が貫通転位密度が減少することがわかる。
図9の結果から、Ge低組成層2dにおけるGe組成値が低い方が表面ラフネスが減少することがわかる。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
本発明の半導体基板及び半導体基板の製造方法によれば、Si基板上のSiGe層が、Ge組成比が表面に向けて漸次増加する傾斜組成層を有し、該傾斜組成層の厚さ方向途中位置に、該途中位置における傾斜組成層のGe組成比よりもGe組成比が低いかまたはゼロのGe低組成層を有するように形成されているので、転位はGe低組成層界面付近及びSi基板側に閉じ込められる傾向がある。その結果、表面に貫通する転位が低減される。しかも、良好な表面ラフネスも得ることができる。
【0055】
また、本発明の電界効果型トランジスタ及び電界効果型トランジスタの製造方法によれば、上記本発明の半導体基板又は上記本発明の半導体基板の製造方法により作製された半導体基板の前記歪みSi層に前記チャネル領域が形成されるので、良質な歪みSi層により高特性なMOSFETを高歩留まりで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る第1実施形態における半導体基板を示す断面図である。
【図2】 本発明に係る第1実施形態における第1のSiGe層を示す断面図である。
【図3】 本発明に係る第1実施形態における第1のSiGe層及び第2のSiGe層の膜厚に対するGe組成比を示すグラフである。
【図4】 本発明に係る第1実施形態におけるMOSFETを示す概略的な断面図である。
【図5】 本発明に係る第2実施形態における第1のSiGe層及び第2のSiGe層の膜厚に対するGe組成比を示すグラフである。
【図6】 本発明に係る第3実施形態における第1のSiGe層及び第2のSiGe層の膜厚に対するGe組成比を示すグラフである。
【図7】 本発明に係る第4実施形態における第1のSiGe層及び第2のSiGe層の膜厚に対するGe組成比を示すグラフである。
【図8】 本発明に係る実施例におけるGe低組成層2dの積層位置に対する貫通転位密度を示すグラフである。
【図9】 本発明に係る実施例におけるGe低組成層2dのGe組成値に対する貫通転位密度を示すグラフである。
【図10】 本発明に係る実施例におけるGe低組成層2dの積層位置に対する表面粗さを示すグラフである。
【図11】 本発明に係る実施例におけるGe低組成層2dのGe組成値に対する表面粗さを示すグラフである。
【符号の説明】
1 Si基板
2 第1のSiGe層
2a 傾斜組成層
2d Ge低組成層
3 第2のSiGe層
4 歪みSi層
5 SiO2ゲート酸化膜
6 ゲートポリシリコン膜
S ソース領域
D ドレイン領域
W 半導体ウェーハ(半導体基板)
Claims (8)
- Si基板と、
該Si基板上のSiGe層と、
前記SiGe層上に直接又は他のSiGe層を介して配された歪みSi層とを備え、
該SiGe層は、Ge組成比が表面に向けて漸次増加する傾斜組成層を有し、該傾斜組成層の厚さ方向途中位置に、該途中位置における傾斜組成層のGe組成比よりもGe組成比が低いかまたはゼロのGe低組成層を有し、
前記Ge低組成層は、前記傾斜組成層におけるGe組成比の最高値に対し、1/3〜2/3の組成比に対応する厚さ方向位置に形成され、
前記Ge低組成層の厚み寸法が、臨界膜厚以下に設定され ) 、
前記Ge低組成層においては、そのGe組成比が、該Ge低形成層が接する厚さ方向両側位置の前記傾斜組成層のGe組成比に対し、2/5より小さく設定されることを特徴とする半導体基板。 - 請求項1に記載の半導体基板において、
前記Ge低組成層は、前記傾斜組成層におけるGe組成比の最高値に対し、1/2の組成比に対応する厚さ方向位置に形成されていることを特徴とする半導体基板。 - SiGe層上の歪みSi層にチャネル領域を有する電界効果型トランジスタであって、
請求項1または2に記載の半導体基板の前記歪みSi層に前記チャネル領域を有することを特徴とする電界効果型トランジスタ。 - Si基板上にエピタキシャル成長させたSiGe層を介して歪みSi層が形成された半導体基板の製造方法であって、
前記Si基板上に、SiGe層をエピタキシャル成長するSiGe層形成工程と、
前記SiGe層上に直接又は他のSiGe層を介して前記歪みSi層をエピタキシャル成長する工程とを備え、
該SiGe層形成工程は、Ge組成比を表面に向けて漸次増加させるSiGeの傾斜組成層を積層するとともに、傾斜組成層の厚さ方向途中位置に、該途中位置における傾斜組成層のGe組成比よりもGe組成比が低いかまたはゼロのGe低組成層を形成するとともに、
前記Ge低組成層を、前記傾斜組成層におけるGe組成比の最高値に対し、1/3〜2/3の組成比に対応する厚さ方向位置に形成し ) 、
前記Ge低組成層の厚み寸法を臨界膜厚以下に設定し、
前記Ge低組成層においては、そのGe組成比を、該Ge低形成層が接する厚さ方向両側位置の前記傾斜組成層のGe組成比に対し、2/5より小さく設定することを特徴とする半導体基板の製造方法。 - 請求項4に記載の半導体基板の製造方法において、
前記Ge低組成層を、前記傾斜組成層におけるGe組成比の最高値に対し、1/2の組成比に対応する厚さ方向位置に形成することを特徴とする半導体基板の製造方法。 - SiGe層上にエピタキシャル成長された歪みSi層にチャネル領域が形成される電界効果型トランジスタの製造方法であって、
請求項4または5に記載の半導体基板の製造方法により作製された半導体基板の前記歪みSi層に前記チャネル領域を形成することを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法。 - Si基板上にSiGe層を介して歪みSi層が形成された半導体基板であって、
請求項4または5に記載の半導体基板の製造方法により作製されたことを特徴とする半導体基板。 - SiGe層上にエピタキシャル成長された歪みSi層にチャネル領域が形成される電界効果型トランジスタであって、
請求項6に記載の電界効果型トランジスタの製造方法により作製されたことを特徴とする電界効果型トランジスタ。
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